説明

気流式微粉砕装置

【課題】微細、均一化した高精度の微粉粒体を効率よく得ることができ小型・簡易な構成かつ低廉なコストで発熱防止が可能な気流式微粉砕装置を提供する。
【解決手段】気流式微粉砕装置1は、上流側より原料供給機2、粉砕機3、製品捕集機4及びその内部に設ける排気ブロア5を備える。原料供給機2は原料ホッパ6に接続する管体7の途中に通気開閉手段8を設ける。原料投入の際には通気開閉手段8は開放状態とし投入完了後に通気開閉手段8を閉鎖して粉砕室18内の空気の流れを止めながらブロア吸引を行ない減圧下で粉砕を行なう。原料回収時は通気開閉手段8を開放状態とし排気ブロア5を全開にして粉砕室18から製品捕集機4までの空気の流れを起こし粉砕物を一気に吸い上げ製品捕集機4に送り込む。粉砕物の排出が完了したら一連のバッチ処理を連続的に繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固形原料を微粉粒体に粉砕する微粉砕装置に関し、特に回転軸方向に気流と共に固形原料を送りながらブレードやライナーによる衝撃及びせん断、気流内の粒子相互摩擦、高周波振動による圧壊等により常温微粉砕する気流式微粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気流式微粉砕装置は、高速回転するローターブレードにより、粉砕室内で高速旋回気流を発生し、衝撃、圧縮、セン断、摩砕、高周波振動などの作用を持って、原料を超微粒化している。
【0003】
高速回転式微粉砕装置の内、いわゆる水平軸形の軸流ミルは、ブレードとライナー間で衝撃粉砕を行い、高速回転するブレードの背後や縁辺に高速渦流をつくり、これに起因する空気振動等によって微粉砕を行っている。
【0004】
従来の気流式微粉砕装置としては、例えば特許文献1に記載されるような構造があった。
【特許文献1】特開2001−29819号公報
【0005】
この微粉砕装置においては、粉砕室の後段に排出ファンが設けられており、又粉砕機と原料供給機及び排気ブロアは常に連通して排気を行なっているため、粉砕室の内部には常に原料供給口側より排出口側に向って軸方向に空気の流れがあった。
【0006】
又、粉砕室の隣接する回転子間には仕切板が設けられ、粉砕室は複数の小室に分割されていた。この粉砕室において空気と均一に混合された粉砕原料は回転子の切線方向に加速された後、複数の円形の仕切板で形成された各小室の中で粉砕され、上述の軸方向気流に乗っている粒子を、それぞれの小室が捕捉して粉砕作業を遂行し、次第に排出口側に送り出しながら粗粉砕粒子が排出されないようにしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の気流式微粉砕装置は、粉砕室において常に入口より排出口に向って軸方向に空気の流れがあったため、粉体は粉砕室に長く留まることができず従来の粉粒体以上のより微細な、より均一化した高精度の微粉粒体を効率よく得ることは非常に困難であった。
【0008】
又、従来の気流式微粉砕装置を用いて、より微細な製品を得ようとする場合には、粉砕原料の発熱防止が不可欠であり、この目的のために強力なファンを設置したり、強力な冷却装置を設けたりしていた。このような発熱防止対策は、装置の大型化、複雑化につながり、装置自体が高価格になると共に粉砕コストも上昇する欠点があった。
【0009】
この発明は、従来の気流式微粉砕装置が有する上記の問題点を解消すべくなされたものであり、従来の粉粒体以上のより微細な、より均一化した高精度の微粉粒体を効率よく得ることができ、小型・簡易な構成かつ低廉なコストで発熱防止が可能な気流式微粉砕装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の気流式微粉砕装置は、円筒形の粉砕室の中心部に回転軸を貫通し、この回転軸に突設する回転子の先端に複数のブレードを装着し、前記粉砕室の内面にあってこれらのブレード外端に対向するライナーを有する粉砕機と、この粉砕機の一端に連通する原料供給機と、前記粉砕機の他端に接続する製品捕集機及び排気ブロアを備える気流式微粉砕装置において、前記原料供給機は、原料ホッパと粉砕機の原料供給口とを接続する管体に通気開閉手段を設けることを特徴とするものである。
【0011】
通気開閉手段は原料投入の際には開放状態とし、投入後にはこれを閉鎖することで粉砕機内に流入する空気を遮断密閉する構造である。
【0012】
原料供給は粉砕機の構造に合わせ、回転部の負荷が超過しないよう適量投入する。原料投入時には排気ブロアによる吸引を部分的に行い投入作業を補助する。投入完了後に通気開閉手段を閉鎖し、粉砕室内の空気の流れを止めながらブロア吸引を行ない、減圧下で粉砕を行なう。粉砕室の内圧を下げた状態で、原料を機内に留め、滞留時間を長くして所定時間粉砕する。粉砕は回転部の負荷が所定値に低減するまで行なう。
【0013】
開閉手段を閉鎖することで粉砕室入口を塞ぎ、粉砕室から製品捕集機までの空気の流れをできるだけ止める。原料回収時は、開閉手段を徐々に開けながら開放状態とし、ブロアを全開にして粉砕室から製品捕集機までの空気の流れを起こし粉砕物を一気に吸い上げ製品捕集機に送り込む。
【0014】
粉砕物の排出が完了したら、再度原料投入、開閉手段の閉鎖、粉砕及び製品回収の一連のバッチ処理を繰り返し、原料投入が無くなるまでこのバッチ処理を連続的に繰り返す。
【0015】
請求項2記載の気流式微粉砕装置の粉砕機は、原料供給口側の粉砕室前段と円筒形の粉砕室の境に下がり壁を設けることを特徴とするものである。
【0016】
下がり壁は粉砕室の天井側から垂下する構成で、粉砕時に原料が粉砕室前段側にキックバックされるのを防止する。
【0017】
請求項3記載の気流式微粉砕装置の粉砕機は、原料供給口の近傍に不活性ガスを前記粉砕室に噴射するノズルを有することを特徴とするものである。
【0018】
不活性ガスとしては例えばCO2、N2等を用い、粉砕室に直接噴射できるようにする。
【発明の効果】
【0019】
この発明の気流式微粉砕装置は、原料ホッパと粉砕機の原料供給口とを接続する管体に通気開閉手段を設けるので、原料投入後に粉砕機内に流入する空気を遮断密閉することができる。
【0020】
粉砕室内の空気の流れを止めながらブロア吸引を行ない、減圧下で粉砕を行なうことで、粉砕室内の温度を下げることができ、品温上昇を軽減できる。又、粉砕室から製品捕集機までの空気の流れを止めることができるので、原料の粉砕室滞留時間を長くできる。
【0021】
従ってより微細な微粉粒体を得ることができる。原料回収時は、開閉手段を開放状態としブロアにより粉砕物を一気に吸い上げ製品捕集機に送り込むことができる。
【0022】
原料投入、開閉手段の閉鎖、粉砕、開閉手段の開放及び製品回収の一連のバッチ処理を繰り返すことで、小型・簡易な構成かつ低廉なコストで製品の発熱防止が可能で、しかもより均一化した微粉粒体が得られる。
【0023】
請求項2記載の気流式微粉砕装置の粉砕機は、原料供給口側の粉砕室前段と円筒形の粉砕室の境に下がり壁を設けるので、粉砕時に原料が粉砕室前段側にキックバックされるのを防止できる。
【0024】
請求項3記載の気流式微粉砕装置は、粉砕室に不活性ガスを噴射するノズルを有するので、空気の流入を阻止する効果が向上し、酸素による製品の変色(酸化)を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次にこの発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は気流式微粉砕装置のライン構成図、図2は同装置の粉砕機の断面図である。気流式微粉砕装置1は、上流側より原料供給機2、粉砕機3、製品捕集機4及びその内部に設ける排気ブロア5を備える。
【0026】
原料供給機2は原料ホッパ6に接続する管体7の途中に通気開閉手段8を設ける。製品捕集機4は、粉砕機3の排出口9に接続する管体10の途中にサイクロン11、管体端部にバグフィルタ12及び排気ブロア5を内設するバグフィルタ集塵機13を配する。又サイクロン11とバグフィルタ集塵機13を連結する管体10の途中にはダンパ14を設ける。
【0027】
サイクロン11の下方には粉砕品回収容器15を配置してサイクロン下回収粉砕品16を集め、バグフィルタ集塵機13ではバグフィルター回収粉砕品17を集める。
【0028】
粉砕機3は、円筒形の粉砕室18の中心部に回転軸19を貫通し、この回転軸19を複数の軸受20で支持しながら、駆動モーター21及び回転軸19に固定する図示しないプーリにより回転する。図2に示すように粉砕室18を貫通する回転軸19にはロータ22を固定し、これに翼状のブレード23を装着する。
【0029】
粉砕室18の内面にあってこれらのブレード23の外端に対向してライナー24を装着し、ライナー24には回転軸19と平行な固定刃25を突設する。なお、粉砕室18の外周には、図示しない冷却ジャケットが設けられており、冷却水が循環している。
【0030】
排出口9側のロータ22には分級翼26を設け、ライナー24との間隙が分級隙間を形成する。粉砕室18の原料供給口側にはケーシング27により粉砕室前段28が、排出口側には粉砕室後段29が設けられている。
【0031】
隣接するブレード23,23間には仕切板30を設け、原料供給口側の粉砕室前段28と円筒形の粉砕室18の境に下がり壁31を設ける。
【0032】
粉砕室18は、回転軸19の駆動により粉砕用のブレード23が超高速で回転し、その回転方向の慣性力と遠心力とにより回転軸19を中心に渦巻状に半径方向外側へ向う高速気流を発生させる。この高速気流により半径方向外側へ加速されながら粉体同士が衝突したり、ブレード23により叩打されたりしてライナー24の内壁面に激突する。この時内壁面には固定刃25を突設するので、高速に加速された粉体が衝突と反発を繰り返す際に一層強い衝撃力、せん断力、圧縮力を受けて、微粉化作用が一層促進され、破砕効率を著しく向上させる。
【0033】
原料投入の際には通気開閉手段8は開放状態とし、粉砕室前段28に原料を投入する。このとき排気ブロア5を運転し、ダンパ14は部分開放(例えば1/5開放)として吸引を部分的に行い投入作業を補助する。
【0034】
原料の投入量は、駆動モータ21の負荷が超過しないよう監視しながら適量投入する。投入完了後に通気開閉手段8を閉鎖して粉砕室18内の空気の流れを止めながらブロア吸引を行ない、減圧下で粉砕を行なう。
【0035】
なお、粉砕原料が温度に弱いものや酸化しやすいものの場合には、粉砕機3の原料供給口の下がり壁31近傍にノズル32を設け、例えばCO2、N2等の不活性ガスを通気開閉手段8が閉鎖する直前、又は直後に粉砕室18に噴射すると、略完全に空気との遮断が可能となり、粉砕中の温度を低く抑えて温度上昇による品質劣化を防いだり、酸素による変色(酸化)を抑えることができる。
【0036】
下がり壁31は粉砕時に原料が粉砕室前段28側にキックバックされるのを防止する。粉砕は駆動モータ21が無負荷に低減するまで行なう。原料回収時は、通気開閉手段8を徐々に開けながら開放状態とし、排気ブロア5を全開にして粉砕室18から粉砕室後段29、更に製品捕集機4までの空気の流れを起こし粉砕物を一気に吸い上げ製品捕集機4に送り込む。
【0037】
粉砕物の排出が完了したら、再度原料投入、開閉手段の閉鎖、粉砕及び製品回収の一連のバッチ処理を繰り返し、原料投入が無くなるまでこのバッチ処理を連続的に繰り返す。
【実施例】
【0038】
図1及び図2に示す気流式微粉砕装置を用い従来型の連続処理方式と本発明の装置で用いたバッチ処理方式とを比較した。原料にはテン茶(覆いを被せて日光を遮り育てた新芽を蒸した後、揉まずに乾燥させたもの)を用いた。諸条件は以下の通りである。
【0039】
なお、バッチ処理時間3分とし、クリアランス3mm、回転数8120rpmは共通とした。
【0040】
|連続処理1 |連続処理2 |バッチ処理1 |バッチ処理2
投入量 | 1kg | 1kg | 2kg | 2kg
処理時間(秒)| 208 | 214 | 1300 | 1497
品温(℃) | 46.5 | 41.9 | 36.1 | 38.0
処理能力(kg/h) | | |
| 17.3 | 16.8 | 5.5 | 4.8
回収量(kg)| | | |
(サイクロン)| 0.8 | 1.0 | 1.7 | 1.85
(フィルタ) | 0.2 | 0.0 | 0.3 | 0.15
平均粒径(μm) | | |
(サイクロン)| 25.07| 17.77| 14.45 | 16.47
(フィルタ) | 8.741| 8.857| 5.348 | 6.1
10μm以下 | | | |
回収量(kg)| 0.49 | 0.45 | 1.21 | 1.07
10μm以下 | | | |
回収率(%) | 48.9 | 45.4 | 60.7 | 53.3
【0041】
粉砕後の温度はバッチ処理の方が明らかに低く、減圧による品温上昇の軽減が実証された。又、10μm以下の回収率も高くなりより細かい粉砕が可能なことを証明した。又、品温上昇を抑えたことで製品(お茶)の香り・風味・色合いの評価も高かった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】気流式微粉砕装置のライン構成図である。
【図2】気流式微粉砕装置の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 気流式微粉砕装置
2 原料供給機
3 粉砕機
4 製品捕集機
5 排気ブロア
6 原料ホッパ
7 管体
8 通気開閉手段
9 排出口
10 管体
18 粉砕室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の粉砕室の中心部に回転軸を貫通し、この回転軸に突設する回転子の先端に複数のブレードを装着し、前記粉砕室の内面にあってこれらのブレード外端に対向するライナーを有する粉砕機と、この粉砕機の一端に連通する原料供給機と、前記粉砕機の他端に接続する製品捕集機及び排気ブロアを備える気流式微粉砕装置において、前記原料供給機は、原料ホッパと粉砕機の原料供給口とを接続する管体に通気開閉手段を設けることを特徴とする気流式微粉砕装置。
【請求項2】
前記粉砕機は、原料供給口側の粉砕室前段と円筒形の粉砕室の境に下がり壁を設けることを特徴とする請求項1記載の気流式微粉砕装置。
【請求項3】
前記粉砕機は、原料供給口の近傍に不活性ガスを前記粉砕室に噴射するノズルを有することを特徴とする請求項1、請求項2記載の気流式微粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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