説明

気液混合流体生成装置、気液混合流体生成方法、処理装置及び処理方法

【課題】最低限の圧力で送液を行い、液体に気体を溶解させる。
【解決手段】気液混合流体生成装置3は、容器3aと、その容器3a内に連通し、気体が溶存した液体を容器3a内に供給するための液体供給流路3bと、容器3aを密閉状態及び開放状態に切替可能であり、液体供給流路3bから容器3aへ送液を行う間、容器3aを開放状態にして容器3aの内圧を、液体供給流路3b内の液体を容器3aに向かって押す圧力未満にする内圧調整部3dと、容器3a内に連通し、液体が供給された密閉状態の容器3a内の空間に気体を供給するための気体供給流路3eとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、気液混合流体生成装置、気液混合流体生成方法、処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気液混合流体生成装置は、液体に気体を溶解させて気液混合流体を生成する装置であり、例えば、液体中に微小気泡を発生させてその微小気泡を含む液体により処理対象物を処理する処理装置に用いられている。この処理装置は、気液混合流体生成装置に加え、例えば、基板処理装置や加工装置、浄化装置などを備えている。
【0003】
ここで、基板処理装置は、半導体ウエハやガラス基板などの基板表面に、微小気泡を含む液体を処理液として供給し、その処理液により基板表面を処理する装置である。この基板処理装置としては、例えば、処理液により基板表面を洗浄する洗浄装置や処理液により基板表面からレジスト膜を除去するレジスト除去装置などが挙げられる。
【0004】
また、加工装置は、ダイシングブレードやドリルなどの加工具により、金属材や基板などの被加工物を加工する装置であり、その加工具により加工される被加工物の加工箇所に、潤滑、冷却及び洗浄を目的として、微小気泡を含む液体を処理液として供給するものである。
【0005】
また、浄化装置は、浄化対象となる液中に微小気泡を発生させ、その微小気泡を液中のフロックに付着させることで、水面上にフロックを浮上させて液中からフロックを分離したり、あるいは、水中の油分に微小気泡を付着させることで、水面上に油分を浮上させて液中から油分を分離したりする装置である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−112587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のような装置では、送液のために高圧ポンプなどの圧力を上げる機構が必要となるため、コストが上昇してしまい、さらに、圧力を上げる機構によって送液時に脈動が発生するため、液供給が不安定になってしまう。また、圧力を上げる機構をメンテナンスする必要も生じてしまう。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、最低限の圧力で送液を行い、液体に気体を溶解させることができる気液混合流体生成装置、気液混合流体生成方法、処理装置及び処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る気液混合流体生成装置は、容器と、容器内に連通し、気体が溶存した液体を容器内に供給するための液体供給流路と、容器を密閉状態及び開放状態に切替可能であり、液体供給流路から容器へ送液を行う間、容器を開放状態にして容器の内圧を、液体供給流路内の液体を容器に向かって押す圧力未満にする内圧調整部と、容器内に連通し、液体が供給された密閉状態の容器内の空間に気体を供給するための気体供給流路とを備える。
【0010】
本発明の実施形態に係る気液混合流体生成方法は、気体が溶存した液体を供給するための液体供給流路が連通する容器を開放状態にして容器の内圧を、液体供給流路内の液体を容器に向かって押す圧力未満にし、容器内に液体を供給する工程と、液体を供給した開放状態の容器を密閉状態にする工程と、液体を供給した密閉状態の容器内の空間に気体を供給する工程とを有する。
【0011】
本発明の実施形態に係る処理装置は、容器と、容器内に連通し、気体が溶存した液体を容器内に供給するための液体供給流路と、容器を密閉状態及び開放状態に切替可能であり、液体供給流路から容器へ送液を行う間、容器を開放状態にして容器の内圧を、液体供給流路内の液体を容器に向かって押す圧力未満にする内圧調整部と、容器内に連通し、液体が供給された密閉状態の容器内の空間に気体を供給するための気体供給流路と、容器内に連通し、容器内の液体を処理対象物に供給するための処理液供給流路とを備える。
【0012】
本発明の実施形態に係る処理方法は、気体が溶存した液体を供給するための液体供給流路が連通する容器を開放状態にして容器の内圧を、液体供給流路内の液体を容器に向かって押す圧力未満にし、容器内に液体を供給する工程と、液体を供給した開放状態の容器を密閉状態にする工程と、液体を供給した密閉状態の容器内の空間に気体を供給する工程と、気体を供給した容器内の液体を処理対象物に供給する工程とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、最低限の圧力で送液を行い、液体に気体を溶解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の一形態に係る処理装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す処理装置が備える気液混合流体生成装置の概略構成を示す分解斜視図である。
【図3】図1に示す処理装置が備える各開閉弁の制御を説明するための説明図である。
【図4】図1に示す処理装置が備える気液混合流体生成装置が行う気液混合流体生成(給水及び加圧溶解)のタイミングを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る処理装置1は、半導体ウエハやガラス基板などの処理対象物Wを処理する複数(例えば、図1では四台)の基板処理装置2と、それらの基板処理装置2に気液混合流体を生成して供給する気液混合流体生成装置3と、各部を制御する制御装置4とを備えている。
【0017】
基板処理装置2は、ステージ上の処理対象物Wの中心を回転中心として処理対象物Wを平面内で回転させながら、その回転状態の処理対象物Wに対して処理液を供給し、処理対象物Wの表面を処理する装置である。この基板処理装置2としては、例えば、処理液により処理対象物Wの表面を洗浄する洗浄装置や処理液により処理対象物Wの表面からレジスト膜を除去するレジスト除去装置などが挙げられる。
【0018】
このような基板処理装置2は、処理対象物Wの表面に処理液を供給するための処理液供給流路2aを有しており、この処理液供給流路2aには、開閉弁2bや微小気泡発生部材2cなどが設けられている。
【0019】
処理液供給流路2aは、気液混合流体生成装置3から供給された気液混合流体(気体が溶存した液体)が流れる流路であり、その端部に位置する開口から処理液が吐出される。この処理液供給流路2aとしては、例えば、パイプやチューブなどの配管を用いることが可能である。また、開閉弁2bは処理液供給流路2aの開閉を制御する弁であり、圧縮空気などの空気が供給されると閉状態から開状態となる。この空気の供給は制御装置4により制御される。また、微小気泡発生部材2cは、処理液中に微小気泡を発生させる貫通孔を有するオリフィス部材である。この微小気泡発生部材2cは、貫通孔を通過する液体中の溶存気体を減圧して開放し、その液体中に多量の微小気泡を発生させる。この多量の微小気泡を含む液体が処理液として使用されることになる。
【0020】
ここで、微小気泡は、マイクロバブル(MB)やマイクロナノバブル(MNB)、ナノバブル(NB)などの概念を含む気泡である。例えば、マイクロバブルは10μm〜数十μmの直径を有する気泡であり、マイクロナノバブルは数百nm〜10μmの直径を有する気泡であり、ナノバブルは数百nm以下の直径を有する気泡である。
【0021】
なお、本実施形態では、前述の微小気泡発生部材2cとしてオリフィス部材を用いているが、これに限るものではなく、例えば、ベンチュリ管などを用いることが可能であり、液体中に微小気泡を発生させることが可能な構造の部材を用いれば良く、その構造は特に限定されるものではない。
【0022】
気液混合流体生成装置3は、タンクなどの容器3aと、その容器3a内に液体を供給するための液体供給流路3bと、その液体供給流路3bを通過する液体に気体を混合する気液混合器3cと、容器3aの内圧を調整する内圧調整部3dと、容器3a内及び気液混合器3c内に気体を供給するための気体供給流路3eと、容器3a内の液体(気体が溶存した液体)を排出するための液体排出流路3fとを備えている。
【0023】
容器3aは、液体を貯留する容器である。この容器3a内には、液量を検出する複数(例えば、図1では二個)の液量検出スイッチ11、12が設けられている。これらの液量検出スイッチ11、12は制御装置4に電気的に接続されており、その検出信号が制御装置4に入力される。例えば、液量検出スイッチ11は、液量が満杯状態である所定量以上になると、オン状態となって満杯状態を知らせるための検出信号を制御装置4に送信する。また、液量検出スイッチ12は、液量が空状態である所定量以下になると、オン状態となって空状態を知らせるための検出信号を制御装置4に送信する。また、容器3a内には、液体供給流路3bから供給される液体の勢いを抑止する板材13が液体供給流路3bの開口に対向させて設けられている。
【0024】
液体供給流路3bは、液体貯留部(例えば、工場内で純水(DIW)を貯留している液体貯留部など)と容器3aとを接続する流路である。この液体供給流路3bの一端が容器3aの下面(底面)に接続されており、容器3a内に連通している。なお、液体供給流路3bとしては、例えば、パイプやチューブなどの配管を用いることが可能である。このような液体供給流路3bには、開閉弁21が気液混合器3cより上流側に位置付けられて設けられており、さらに、逆止弁22が気液混合器3cより下流側に位置付けられて設けられている。開閉弁21は液体供給流路3bの開閉を制御する弁であり、圧縮空気などの空気が供給されると閉状態から開状態となる。この空気の供給は制御装置4により制御される。逆止弁22は、容器3a側から気液混合器3cに液体が逆流することを防止する弁である。
【0025】
気液混合器3cは、液体供給流路3bの流路途中に設けられており、その内部を通過する液体中に、気体供給流路3eを介して供給された気体を混合するものである。この気液混合器3cとしては、例えば、T字管やアスピレータなどを用いることが可能であるが、液体中に気体を混合することが可能な構造であれば良く、その構造は特に限定されるものではない。
【0026】
内圧調整部3dは、容器3a内に連通し、その容器3a内の気体を排気する気体排出流路31を有している。この気体排出流路31には、開閉弁32や絞り弁33が設けられている。開閉弁32は気体排出流路31の開閉を制御する弁であり、圧縮空気などの空気が供給されると閉状態から開状態となる。この空気の供給は制御装置4により制御される。絞り弁33は、気体排出流路31を流れる気体の流量を調整するための弁である。この気体の流量は、開閉弁32が開状態となると容器3aの内圧が所望の内圧となるように所定値に設定されている。なお、所望の内圧は、液体供給流路3b内の液体を容器3aに向かって押す圧力(例えば、工場内の液体貯留部から液体が送液される場合の送液力)未満に設定されている。
【0027】
ここで、容器3a内への液体の供給時間(給水時間)を短縮するためには、容器3aの内圧と送液力との差を大きくする(例えば、容器3aの内圧を大気圧(例えば、0.1MPa)とする)。一方、給水中、気液混合器3cにより液体に含まれた気体の溶解量、すなわち気体の溶解度をできるだけ減少させずに維持するためには、容器3aの内圧は送液力より小さく、できるだけその送液力に近い圧力であることが望ましい。例えば、送液力が0.2MPaである場合には、容器3aの内圧は0.2MPaより小さく、できるだけその0.2MPaに近い圧力であることが望ましい。
【0028】
このような内圧調整部3dでは、開閉弁32が開状態となり、気体排出流路31が開かれると、液体を収容した容器3a内の空間に存在する気体が気体排出流路31を介して排出される。このため、容器3aの内圧が液体供給流路3b内の液体を容器3aに向かって押す圧力未満になり、液体供給流路3b内の液体は容器3a内に流入する。このように液体が容器3a内に供給されることになる。なお、内圧調整部3dは開閉弁32の制御により容器3aを密閉状態及び開放状態に切り替えることが可能である。
【0029】
気体供給流路3eは、気体貯留部(例えば、工場内で気体(Gas)を貯留している気体貯留部)と、容器3a及び気液混合器3cとを接続する流路である。この気体供給流路3eとしては、例えば、パイプやチューブなどの配管を用いることが可能である。このような気体供給流路3eは、途中で二本に分岐され、その二本のうち一方の第1の気体供給流路3e1が容器3aに接続されており、もう一方の第2の気体供給流路3e2が気液混合器3cに接続されている。なお、第1の気体供給流路3e1の一端が容器3aの上面(天井面)に接続されており、容器3a内に連通している。
【0030】
第1の気体供給流路3e1には、エアレギュレータ41や開閉弁42が設けられている。エアレギュレータ41は、気体の圧力を調整するためのレギュレータであり、気体の圧力を所定値(例えば、0.4MPa)に維持する。この所定値は、容器3a内の液体に所望の圧力をかける値に設定されている。開閉弁42は、第1の気体供給流路3e1の開閉を制御する弁であり、圧縮空気などの空気が供給されると閉状態から開状態となる。この空気の供給は制御装置4により制御される。
【0031】
ここで、容器3aが密閉状態である場合に、開閉弁42が開けられると、気体が第1の気体供給流路3e1を介して、液体を収容した容器3a内の空間に流入する。このとき、容器3a内の液体には、気体による圧が加わり、容器3a内の液体の圧力が上昇する。この加圧溶解により、液体に対する気体の溶解度が増加することになり、結果として、気体の溶解量が増加することになる。
【0032】
第2の気体供給流路3e2には、エアレギュレータ51や開閉弁52、絞り弁53、流量計54、逆止弁55が設けられている。エアレギュレータ51は、気体の圧力を調整するためのレギュレータであり、気体の圧力を所定値に維持する。開閉弁52は、第2の気体供給流路3e2の開閉を制御する弁であり、圧縮空気などの空気が供給されると閉状態から開状態となる。この空気の供給は制御装置4により制御される。絞り弁53は、第2の気体供給流路3e2を流れる気体の流量を調整するための弁である。流量計54は、第2の気体供給流路3e2を流れる気体の流量を計測する。逆止弁55は、気液混合器3c側から流量計54に液体が逆流することを防止する弁である。なお、気体の圧力及び流量は、気液混合器3cにより所望量の気体が液体中に混合されるように所定値に設定されている。
【0033】
ここで、気体としては、例えば、空気、あるいは、窒素(N)などの不活性ガス、また、酸素(O)などの酸化性ガスなど、各種のガスを用いることが可能である。また、本実施形態では、第1の気体供給流路3e1により容器3a内に直接供給する気体と、気液混合器3cに供給する気体としては、同じ種類の気体を用いているが、これに限るものではなく、異なる種類の気体を用いるようにしても良い。例えば、容器3a内に直接供給する気体としては、窒素を用い、気液混合器3cに供給する気体としては、酸素を用いるようにしても良い。
【0034】
液体排出流路3fは、容器3a内と各基板処理装置2とを接続する流路である。この液体排出流路3fの一端が容器3aの下面(底面)に接続されており、容器3a内に連通している。なお、液体排出流路3fとしては、例えば、パイプやチューブなどの配管を用いることが可能である。このような液体排出流路3fには、各基板処理装置2の全ての処理液供給流路2aが接続されている。これにより、容器3a内の加圧溶解後の液体(気体が溶存した液体、すなわち気液混合流体)は液体排出流路3fを介して各基板処理装置2の処理液供給流路2aに流入することになる。
【0035】
制御装置4は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータなどの制御部と、基板処理に関する基板処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部とを備えている。この制御装置4は、基板処理情報や各種プログラムに基づいて、気液混合流体生成装置3を制御し、気液混合流体を生成し、その生成した気液混合流体を各基板処理装置2に供給し、各基板処理装置2を個別に制御し、基板処理を行う。この基板処理では、基板処理装置2の開閉弁2bが開けられると、処理液供給流路2aが開状態となり、処理液はその処理液供給流路2aを流れ、その一端の開口から回転する処理対象物Wの表面に供給される。この処理液は、微小気泡発生部材2cを通過し、多量の微小気泡を含む液体である。
【0036】
ここで、気液混合流体生成装置3の各部の配置について説明する。
【0037】
図2に示すように、容器3aは支持台14の上面に設置されている。この容器3aの上面には、各開閉弁32、42、52が一列に設置され、さらに、各エアレギュレータ41、51も設置される。また、容器3aの外周近傍には、流量計54が設けられる。支持台14の下面(裏面)には、気液混合器3c及び開閉弁21が設置される。これらの各部は各流路、すなわち液体供給流路3b、気体供給流路3e(第1の気体供給流路3e1及び第2の気体供給流路3e2)及び液体排出流路3fにより接続される。このようにして気液混合流体生成装置3が構成される。
【0038】
次に、前述の処理装置1が行う処理動作、すなわち微小気泡発生動作(気液混合流体生成動作も含む)について説明する。なお、説明の簡略化のため、開閉弁21を開閉弁V1とし、開閉弁52を開閉弁V2とし、開閉弁32を開閉弁V3とし、開閉弁42を開閉弁V4とし、各開閉弁2bを開閉弁V5として説明する。
【0039】
図3に示すように、各開閉弁V1〜V5の開閉が制御され、給水、加圧及び送液が順番に実行される。なお、各開閉弁V1〜V5は制御装置4による空気の供給制御に応じて開状態と閉状態に切り替えられる。
【0040】
まず、給水では、各開閉弁V1、V2、V3が開けられ、各開閉弁V4、V5が閉じられる(図1及び図3参照)。開閉弁V3が開けられると、気体排出流路31が開状態となり、液体を収容した容器3a内の空間の気体が気体排出流路31を介して排出される。これにより、容器3a内の内圧は所望の内圧まで減圧され、この減圧により液体が液体供給流路3bを流れる。さらに、開閉弁V3と同時に開閉弁V2が開けられると、第2の気体供給流路3e2が開状態となり、気体が第2の気体供給流路3e2を介して気液混合器3cに供給される。このとき、液体は液体供給流路3bを流れ、気液混合器3cを通過するため、その気液混合器3cにより液体には気体が溶解され、その後、気体が溶存した液体が容器3a内に流入する。その液体が容器3a内に所定量(液量が満杯状態である所定量)以上に供給されると、液量検出スイッチ11がオン状態となり、検出信号が制御装置4に送信される。これに応じて、制御装置4は給水が完了したことを判断し、次の加圧を行う。
【0041】
加圧では、各開閉弁V1、V2、V3が閉じられ、開閉弁V4が開けられ、開閉弁V5は閉状態に維持される(図1及び図3参照)。開閉弁V3が閉じられると、容器3aは密閉状態となり、開閉弁V4が開けられると、第1の気体供給流路3e1が開状態となり、気体が第1の気体供給流路3e1を介して、液体を収容した容器3a内の空間に流入する。このとき、容器3a内の液体には、気体による圧が加わり、容器3a内の液体の圧力が上昇するため、液体に対する気体の溶解度、すなわち気体の溶解量が増加することになる。この加圧溶解により、気体の溶解量が増加した液体(気液混合流体)を得ることが可能となる。制御装置4は加圧開始から所定時間が経過したか否かを判断し、加圧開始から所定時間経過したと判断した場合、次の送液を行う。
【0042】
送液では、各開閉弁V1、V2、V3は閉状態に維持され、開閉弁V4が開状態に維持され、各開閉弁V5が個別に開けられる(図1及び図3参照)。容器3a内の加圧溶解後の液体、すなわち気液混合流体は、容器3a内の空間に供給された気体の圧力により、液体排出流路3fを介して、各基板処理装置2の処理液供給流路2aに流入する。開閉弁V5が開けられると、処理液供給流路2aは開状態となり、その処理液供給流路2aに流入した液体は微小気泡発生部材2cを通過し、処理液供給流路2aの開口から吐出され、処理対象物Wの表面に供給される。ただし、液体が微小気泡発生部材2cを通過する際には、貫通孔を通過する液体中の溶存気体が減圧されて開放され、その液体中に多量の微小気泡が発生する。この多量の微小気泡を含む液体が処理液として処理液供給流路2aの開口から吐出される。
【0043】
なお、微小気泡発生部材2cと処理液供給流路2aの開口との離間距離、すなわちその部分の配管長さを調整することによって、開口から吐出される微小気泡の大きさを調整することが可能である。例えば、その配管長さを長くすると、処理液供給流路2aの開口から吐出される液体の微小気泡の大きさを大きくすることが可能である。これは、微小気泡を含む液体が処理液供給流路2aを流れる最中に、その微小気泡同士がくっついて一体となることがあるためである。一方、配管長さを短くすると、処理液供給流路2aの開口から吐出される液体の微小気泡の大きさを発生時の小さいサイズと同程度に維持することができる。
【0044】
また、気液混合器3cに供給される気体の圧力が液体の圧力より大きい場合には、自動給水を実現することが可能であり、開閉弁21及び開閉弁52は不要となるので、構成を簡略化することができる。
【0045】
ここで、前述の給水及び加圧(加圧溶解)を実行するタイミングについて説明する。
【0046】
図4に示すように、各基板処理装置2(例えば、第1から第4の四台)は順次洗浄及び乾燥を繰り返す。このとき、各基板処理装置2では、洗浄開始タイミングが所定時間だけ順次ずれているが、洗浄時間及び乾燥時間は同じである。また、処理対象物W、例えばウエハの出し入れ(ウエハ出入)や着脱(チャック及びアンチャック)などに要する時間も同じである。
【0047】
まず、処理済のウエハが基板処理装置2内から出され、次に、処理前のウエハが基板処理装置2内に入れられ、吸着機構や静電機構などの固定機構によりステージ上に固定される(チャック)。その後、ステージが平面内で回転し、前述の微小気泡を含む液体が処理液としてステージ上のウエハ表面に供給され、ウエハの洗浄が行われる。所定の洗浄時間後、ステージの回転が維持された状態で、処理液の供給が止められ、ステージの回転によるウエハの乾燥が行われる。所定の乾燥時間後、ステージの回転が止められる。このような洗浄及び乾燥が、ウエハの出し入れ(ウエハ出入)及び着脱(チャック及びアンチャック)を介して繰り返される。
【0048】
ここで、前述の洗浄が各基板処理装置2によって行われている最中には、各基板処理装置2に対して気液混合流体を供給する必要があるため、第1の基板処理装置2の洗浄開始(処理開始)から第4の基板処理装置2の洗浄終了(処理終了)までの洗浄期間(処理期間)、気液混合流体が各基板処理装置2に供給されており、前述の給水及び加圧溶解は実行されない。一方、第4の基板処理装置2の洗浄終了から次の第1の基板処理装置2の洗浄開始までの期間では、気液混合流体の生成、すなわち給水及び加圧溶解が実行される。その後、再び、第1の基板処理装置2の洗浄開始から第4の基板処理装置2の洗浄終了までの洗浄期間では、前述と同様に、気液混合流体が各基板処理装置2に供給されており、前述の給水及び加圧溶解は実行されない。このように、気液混合流体の供給と、気液混合流体の生成(給水及び加圧溶解)とが繰り返される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、容器3aを開放状態にしてその容器3aの内圧を、液体供給流路3b内の液体を容器3aに向かって押す圧力未満にし、その後、液体が供給された密閉状態の容器3a内の空間に気体を供給する。すなわち、内圧調整部3dにより容器3aが開放状態にされると、容器3aの内圧が、液体供給流路3b内の液体を容器3aに向かって押す圧力未満になる。これにより、気体が溶存した液体が液体供給流路3bを介して容器3a内に供給される。その後、前述の液体が供給された密閉状態の容器3a内の空間に、気体が第1の気体供給流路3e1を介して供給される。これにより、容器3a内の液体には、気体による圧が加わり、容器3a内の液体の圧力が上昇する。このため、液体に対する気体の溶解度が増加することになり、結果として、気体の溶解量が増加することから、液体に対する気体の溶解効率を向上させることができる。
【0050】
特に、内圧調整部3dによる容器3aの内圧調整により、液体が容器3a内に供給されるため、容器3a内に液体を送るための高圧ポンプが不要となり、最低限の圧力で液体を容器3a内に供給し、その容器3a内の液体に気体を溶解させることができる。また、高圧ポンプが不要となるため、コストを抑えることができ、さらに、送液時の脈動を抑止し、その脈動による他の装置などの損傷を防止することが可能になったり、脈動による液供給のむらを防止することが可能になったりする。加えて、高圧ポンプが有するような駆動部分が存在しないため、消耗品が発生することを防止し、メンテナンスフリーを実現することができる。
【0051】
なお、前述のように、内圧調整部3dによる容器3aの内圧調整により、ポンプ無しで容器3a内に液体を供給することが可能であるが、送液のため、内圧調整に加え、ポンプを用いるようにしても良い。この場合には、高圧ポンプ以外の最低限のもの、例えば、低圧のポンプを用いることが可能となる。このときも、送液時の脈動が抑止されるので、その脈動によるポンプの損傷を防止することができる。
【0052】
また、第1の気体供給流路3e1から容器3a内の空間に流入した気体により、液体排出流路3fから容器3a内の液体を排出させることから、容器3a内の液体は気体による圧により液体排出流路3fを流れることになるため、容器3a内の液体を送液するための高圧ポンプなどが不要となる。これにより、コストを抑えることができ、さらに、高圧ポンプによる脈動を防止することができる。加えて、高圧ポンプが有するような駆動部分が存在しないため、消耗品が発生することを防止することができる。
【0053】
また、気体の供給開始から所定時間が経過したか否かを判断する判断部として機能する制御装置4を設け、その制御装置4により気体の供給開始から所定時間が経過したと判断された場合、第1の気体供給流路3e1から容器3a内の空間に流入した気体により、液体排出流路3fから容器3a内の液体を排出させることから、容器3a内の液体には気体による圧が十分に加えられ、液体に対する気体の溶解度、すなわち気体の溶解量が確実に増加することになる。これにより、気体の溶解量が増加した液体を確実に得ることが可能となるので、微小気泡発生部材2cにより液体中に微小気泡を所望量発生させることができる。
【0054】
また、内圧調整部3dは、容器3a内の液体が供給される複数の処理対象物Wのうち最後の処理完了から次の最初の処理開始までの間に、容器3aを開放状態にして容器3aの内圧を、液体供給流路3b内の液体を容器3aに向かって押す圧力より小さくすることから、前述の最後の処理完了から次の最初の処理開始までの間に、気体が溶存した液体が液体供給流路3bを介して容器3a内に供給される。これにより、容器3aに対する給水のために処理が停止することが無くなり、全体の処理時間を短縮することができる。
【0055】
また、液体供給流路3bを流れる液体に溶存した気体と、第1の気体供給流路3e1を流れる気体として、異なる種類の気体を用いた場合には、用途に応じて、処理液として用いる液体に様々な気体を溶解させることができる。
【0056】
なお、前述の実施の形態においては、基板処理装置2を例に説明したが、これに限るものではなく、その基板処理装置2にかえて加工装置や浄化装置(例えば、背景技術に記載したような加工装置や浄化装置)であってもよい。
【0057】
また、液体供給流路3b内から液体が供給される際の容器3aの内圧は、前述のとおり、気体の溶解度をできるだけ減少させずに維持するため、送液される力未満であって、その送液力に近い圧力であることが望ましい。しかし、その内圧は、液体供給路3bの液体を容器3aに向かって押す圧力未満であればよく、容器3aを開放した状態で液供給を行ってもよい。
【0058】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1 処理装置
2a 処理液供給流路
3 気液混合流体生成装置
3a 容器
3b 液体供給流路
3d 内圧調整部
3e 気体供給流路
3f 液体排出流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器内に連通し、気体が溶存した液体を前記容器内に供給するための液体供給流路と、
前記容器を密閉状態及び開放状態に切替可能であり、前記液体供給流路から前記容器へ送液を行う間、前記容器を開放状態にして前記容器の内圧を、前記液体供給流路内の前記液体を前記容器に向かって押す圧力未満にする内圧調整部と、
前記容器内に連通し、前記液体が供給された密閉状態の前記容器内の空間に気体を供給するための気体供給流路と、
を備えることを特徴とする気液混合流体生成装置。
【請求項2】
前記容器内に連通し、前記容器内の前記液体を排出するための液体排出流路を備え、
前記気体供給流路から前記容器内の空間に流入した前記気体により、前記液体排出流路から前記容器内の前記液体を排出させることを特徴とする請求項1記載の気液混合流体生成装置。
【請求項3】
前記気体の供給開始から所定時間が経過したか否かを判断する判断部を備え、
前記判断部により前記気体の供給開始から前記所定時間が経過したと判断された場合、前記気体供給流路から前記容器内の空間に流入した前記気体により、前記液体排出流路から前記容器内の前記液体を排出させることを特徴とする請求項2記載の気液混合流体生成装置。
【請求項4】
前記内圧調整部は、前記容器内の前記液体により処理される複数の処理対象物のうち最後の処理完了から次の最初の処理開始までの間に、前記容器を開放状態にして前記容器の内圧を、前記液体供給流路内の前記液体を前記容器に向かって押す圧力より小さくすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の気液混合流体生成装置。
【請求項5】
前記液体供給流路を流れる前記液体に溶存する前記気体と、前記気体供給流路を流れる前記気体とは、異なる種類の気体であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の気液混合流体生成装置。
【請求項6】
気体が溶存した液体を供給するための液体供給流路が連通する容器を開放状態にして前記容器の内圧を、前記液体供給流路内の前記液体を前記容器に向かって押す圧力未満にし、前記容器内に前記液体を供給する工程と、
前記液体を供給した開放状態の前記容器を密閉状態にする工程と、
前記液体を供給した密閉状態の前記容器内の空間に気体を供給する工程と、
を有することを特徴とする気液混合流体生成方法。
【請求項7】
容器と、
前記容器内に連通し、気体が溶存した液体を前記容器内に供給するための液体供給流路と、
前記容器を密閉状態及び開放状態に切替可能であり、前記液体供給流路から前記容器へ送液を行う間、前記容器を開放状態にして前記容器の内圧を、前記液体供給流路内の前記液体を前記容器に向かって押す圧力未満にする内圧調整部と、
前記容器内に連通し、前記液体が供給された密閉状態の前記容器内の空間に気体を供給するための気体供給流路と、
前記容器内に連通し、前記容器内の前記液体を処理対象物に供給するための処理液供給流路と、
を備えることを特徴とする処理装置。
【請求項8】
気体が溶存した液体を供給するための液体供給流路が連通する容器を開放状態にして前記容器の内圧を、前記液体供給流路内の前記液体を前記容器に向かって押す圧力未満にし、前記容器内に前記液体を供給する工程と、
前記液体を供給した開放状態の前記容器を密閉状態にする工程と、
前記液体を供給した密閉状態の前記容器内の空間に気体を供給する工程と、
前記気体を供給した前記容器内の前記液体を処理対象物に供給する工程と、
を有することを特徴とする処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−17916(P2013−17916A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151176(P2011−151176)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】