説明

水に難溶性の物質の製剤を製造する方法

本発明は、水に難溶性の物質の製剤を製造する方法に関し、ここで、該難溶性物質は、共重合体中に非晶質に組み込まれて存在し、該共重合体は、i)30から80重量%のN-ビニルラクタム、ii)10から50重量%の酢酸ビニル、及びiii)10から50重量%のポリエーテルの混合物のラジカルによって開始される重合によって得られ、但し、成分i)、ii)及びiii)の合計は、100重量%に等しいことを条件とし、ここで、該難溶性物質の該共重合体への組み込みは、該難溶性物質の融点を上回る温度で起こる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸ビニル及びN-ビニルラクタムをポリエーテルの存在下で重合させることによって得られる共重合体に難水溶性物質を組み込むことによって難水溶性物質の製剤を製造する方法に関する。組み込みは、押出しによって、及び難水溶性物質の融点を上回る温度で実施され、これらの物質は、押し出された製剤中に非晶質形態で存在する。
【0002】
対応する共重合体は、難水溶性物質の可溶化剤として好適である。
【背景技術】
【0003】
特に生物活性物質の均質な製剤の製造において、疎水性の、即ち、難水溶性物質の可溶化は、非常に大きな実際的意義を増している。
【0004】
可溶化は、界面活性化合物である可溶化剤による、特定の溶媒、特に水に難溶性又は不溶性である物質の可溶化を意味するものと理解される。このような可溶化剤は、難水溶性又は水不溶性物質を、これらの物質の化学構造が、その過程で何ら変化を受けることなく、透明な、最高で乳白色の水溶液に変換することが可能である(Rompp Chemie Lexikon、第9版、5巻、4203頁、Thieme Verlag、Stuttgart、1992年を参照されたい)。
【0005】
製造される可溶化物(solubilizate)において、難水溶性又は水不溶性物質は、水溶液、例えば、疎水性ドメイン又はミセル中に形成する界面活性化合物の分子会合中にコロイド状に溶解された形態で存在する。得られる溶液は、視覚的に透明から乳白色外観を有する安定な又は準安定な単相系である。
【0006】
可溶化剤は、例えば、化粧品製剤及び食品製剤の外観を、それらの製剤を透明にすることによって改善することができる。さらに、医薬製剤の場合、薬剤のバイオアベイラビリティー、したがって効能は、可溶化剤の使用によって増強され得る。
【0007】
可溶化剤に対する一つのさらなる望ましい要件は、難溶性物質と、いわゆる「固溶体」を形成する能力である。「固溶体」という用語は、物質が、固体マトリックス、例えば、ポリマーマトリックス中にコロイド分散形態又は理想的には分子分散形態で分布している状態を表す。このような固溶体は、例えば、難溶性活性成分の固体医薬投与形態で使用される場合、活性成分の改善された放出をもたらす。このような固溶体に対する一つの重要な要件は、それらが貯蔵の過程でさえ長期間安定していることであり、これは、活性成分が析出しないことを意味する。さらに、固溶体の能力又は、換言すれば、最大限の活性成分含量を有する安定な固溶体を形成する能力も重要である。
【0008】
固溶体の形成において、可溶化剤の固溶体を形成する基本的な能力に加えて、可溶化剤の吸湿性も重要な役割を果たす。周囲空気から過剰な水を吸収する可溶化剤は、固溶体の潮解及び活性成分の望ましくない結晶化をもたらす。投与形態への加工の過程においても、大きすぎる吸湿性は問題を提示し得る。
【0009】
多くの既知のポリマー可溶化剤は、それらが安定な固溶体を形成しないという不利点を有する。さらに、水溶液系における可溶化に関する限り、それらは、まだ改善の余地を残している。加工性についても、既知の可溶化剤のいくつかは、それらの粘着性の傾向により、それらが、十分に自由な流動性のある粉末ではないため、不利点を有する。
【0010】
ドイツ特許第19935063号は、ビニルラクタム及び酢酸ビニルに基づくポリアルキレンオキシド含有グラフトポリマー、並びにガス水和物阻害剤としてのそれらの使用を開示している。
【0011】
欧州特許第953347号は、可溶化剤としてのポリアルキレンオキシド含有グラフトポリマーの使用を開示している。これに記載された酢酸ビニル及びポリアルキレンオキシドのグラフトポリマーは、しばしば粉末ではないが、代わりに粘る液体であり、このことは応用の点で不利である。
【0012】
国際公開第2007/051743号は、医薬、化粧品、食品工業、農業又は他の産業用途のための可溶化剤としての、水溶性又は水分散性のN-ビニルラクタム、酢酸ビニル及びポリエーテルの共重合体の使用を開示している。対応するグラフトポリマーは、溶融した活性成分と共に加工することもできることが、その中に概括的に記載されている。
【0013】
国際公開第2009/013202号は、N-ビニルラクタム、酢酸ビニル及びポリエーテルのこのようなグラフトポリマーを、押出機中で溶融し、粉末又は液体活性成分と混合することができることを開示しており、この押出しは、活性成分の融点をかなり下回る温度で記載されている。
【0014】
しかし、溶融されたグラフトポリマーと粉末又は液体活性成分との混合では、十分に高く、同時に安定な活性成分の充填を達成し得ない。特に、活性成分の安定なX線非晶質状態の達成は、満足のいく程度に常に可能というわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】ドイツ特許第19935063号
【特許文献2】欧州特許第953347号
【特許文献3】国際公開第2007/051743号
【特許文献4】国際公開第2009/013202号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Rompp Chemie Lexikon、第9版、5巻、4203頁、Thieme Verlag、Stuttgart、1992年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
難水溶性物質を改善された溶解性を有する製剤中に組み込むための改善された方法を可能にすることが、本発明の一つの目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、難水溶性物質の製剤を製造するための方法が見出されており、前記難溶性物質は、共重合体中に非晶質の組み込まれた形態で存在し、前記共重合体は、
i)30から80重量%のN-ビニルラクタム、
ii)10から50重量%の酢酸ビニル、及び
iii)10から50重量%のポリエーテル
の混合物のフリーラジカルで開始される重合によって得られ、
但し、成分i)、ii)及びiii)の合計が100重量%に等しいことを条件とし、この方法は、生物活性物質の融点を上回る温度で組み込むことを含む。
【0019】
本発明の一実施形態において、
i)30から70重量%のN-ビニルラクタム、
ii)15から35重量%の酢酸ビニル、及び
iii)10から35重量%のポリエーテル
から得られる好ましいポリマーが使用される。
【0020】
特に好ましく使用されるポリマーは、
i)40から60重量%のN-ビニルラクタム、
ii)15から35重量%の酢酸ビニル、及び
iii)10から30重量%のポリエーテル
から得られる。
【0021】
非常に特に好ましい使用のためのポリマーは、
i)50から60重量%のN-ビニルラクタム、
ii)25から35重量%の酢酸ビニル、及び
iii)10から20重量%のポリエーテル
から得られる。
【0022】
好ましい組成及び特に好ましい組成についても、成分i)、ii)、及びiii)の合計が、100重量%に等しいという条件は当てはまる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
有用なN-ビニルラクタムには、N-ビニルカプロラクタム又はN-ビニルピロリドン又はそれらの混合物が含まれる。好ましいのは、N-ビニルカプロラクタムを使用することである。
【0024】
使用されるグラフトベースは、ポリエーテルである。有用なポリエーテルは、好ましくはポリアルキレングリコールである。ポリアルキレングリコールは、1000から100 000Da[ダルトン]、好ましくは1500から35 000Da、より好ましくは1500から10 000Daの分子量を有し得る。分子量は、DIN 53240に測定されたOH数から求める。
【0025】
特に好ましいポリアルキレングリコールには、ポリエチレングリコールが含まれる。同様にさらに好適なのは、2-エチルオキシラン又は2,3-ジメチルオキシランから得られるポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン又はポリブチレングリコールである。
【0026】
好適なポリエーテルは、同様に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドから得られるポリアルキレングリコールのランダム又はブロック共重合体、例えば、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールブロック共重合体である。ブロック共重合体は、ABタイプ又はABAタイプのものであってよい。
【0027】
好ましいポリアルキレングリコールには、一つ又は両方のOH末端基でアルキル化されたものも含まれる。有用なアルキル基には、分枝又は非分枝のC1-からC22-アルキル基、好ましくはC1-C18-アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、トリデシル又はオクタデシル基が含まれる。
【0028】
本発明のグラフト共重合体を調製する一般的な方法は、それ自体、知られている。それらは、好ましくは、溶液、非水性有機溶媒又は混合された非水性/水性溶媒中においてフリーラジカルにより開始される重合によって調製される。好適な調製方法は、例えば、その開示が、調製方法に関して明確に引用されている国際公開第2007/051743号及び国際公開第2009/013202号に記載されている。
【0029】
組み込みは、好ましくは、溶融押出しによって実施される。
【0030】
共重合体は、粉末形態又は溶液若しくは分散液の形態のいずれかで押出機に供給し得る。
【0031】
ポリマーの分散液又は溶液は、溶融状態において押出機中で分散剤又は溶媒を除去し、溶解物を冷却することによって固体形態に変換することができる。
【0032】
次いで、こうして得られる溶解物を冷却し粒状化することができる。ポリマーは、一般的に水溶性であるため、水を用いた冷却による熱可塑性溶解物の通例の粒状化方法は、あまり選択の対象ではない。代替案は、いわゆるホットカッティング又は、例えば、Teflon又はチェーンベルト上の空気若しくは保護ガス下の冷却、及び次いで冷却された溶融押出物の粒状化である。
【0033】
以下の方法A-Eを原則的に使用することができる。
【表1】

【0034】
本発明による方法について、好適な押出機タイプは、原則的に当業者に知られている通常の押出機タイプである。一般的に、これらは、ハウジング、変速機を備えた駆動装置、スクリューエレメントを備えた一つの押出軸又は複数の押出軸からなる加工装置を含み、モジュール構造がこの場合想定される。
【0035】
押出機は、特定の加工装置にそれぞれ割り当てられた複数の区分からなる。これらの区分のそれぞれは、最小の独立した装置としての一つ又は複数のバレル(バレルブロック)及び加工タスクに対応するスクリューエレメントを有する対応するスクリュー区分からなる。
【0036】
個別のバレルは、加熱可能でなければならない。さらに、バレルを、冷却用に、例えば、水による冷却用にも設計し得る。個別のバレルブロックは、好ましくは、異なる温度ゾーンを、押出方向に沿って設定することもできるように、独立して加熱可能であり、冷却可能である。
【0037】
押出機は、有利には、共回転2軸押出機として構成される。スクリュー構成は、製品に応じて様々な剪断応力レベルを有し得る。混練エレメントは、特に溶融ゾーンで使用されなければならない。逆混練エレメントを使用することも可能である。
【0038】
好適な2軸押出機は、16から70mmのスクリュー径及び25から40Dの長さを有し得る。
【0039】
全体の押出機は、それらの温度が個別に制御され得るバレルブロックから形成される。最初の二つのバレルは、より良い原料取り込みのために温度制御し得る。第3バレルから、特に原料に対して選択されるべきであり、特に使用される活性成分の融点及びポリマーのガラス転移温度によって決まるべきである一定温度が設定されることが好ましい。しかし、得られる製品温度は、一般的に、使用されるスクリューエレメントの剪断応力レベルによって決まり、場合によって、バレル温度より20〜30℃高いことがある。
【0040】
溶融ゾーンの下流に、有利には周囲圧力で操作されるベントゾーンが続く場合がある。
【0041】
使用される丸ダイは、0.5から5mmの径を有し得る。スロットダイなどの他のダイ形態も同様に、特により大きな材料押出量が望ましい場合に使用され得る。
【0042】
二つの共回転スクリューは、搬送エレメントからなる取り込みゾーンの下流で、下流フローリストリクターを備える混練ブロックが、第3加熱ゾーンで既に使用されているよう設計されている。搬送エレメントからなる短い減圧ゾーンの後、現在溶融している材料が、混練ゾーンで再び混合される。これに続いて、下流混練エレメントを備える搬送エレメントゾーンがある。続いて、下流混練ゾーンを備える搬送エレメントゾーンがある。最後に、材料の吐出が、搬送エレメントゾーンによって確実にされる。
【0043】
得られる押出物は、造粒機を用いてペレットに加工することができ、これらのペレットは同様に、さらに粉末に微粉砕(粉砕)することができる。ペレット又は粉末は、カプセルに充填又は通常の錠剤化助剤を使用して錠剤に圧縮することができる。
【0044】
さらに、押出の間、水、有機溶媒、緩衝物質又は可塑剤を使用することが可能である。特に水又は揮発性アルコールは、この目的のための選択肢である。この方法は、比較的低温で反応を可能にする。溶媒又は可塑剤の量は、一般的に、押出可能材料の0及び30%の間である。水又は溶媒は、標準圧力の押出機のベントポイントによって、又は減圧を加えることによって既に除去することができる。別法として、押出物が、押出機を離れ、圧力が標準圧力に減少する時に、これらの成分は蒸発する。不揮発性成分の場合、押出物を、その後、乾燥することができる。
【0045】
製造方法の一つの特定の変形において、押出後に直接、熱可塑性材料を、最終的な投与形態を構成する錠剤様成形体に圧延する。この変形において、実際に押出の前又は押出の間、さらなる構成要素、例えば、ガラス転移温度及び溶融粘度を調節するためのポリマー、崩壊剤、可溶化剤、可塑剤、染料、香料、甘味剤などを添加することが、望ましい場合がある。原則として、押出物が、最初に微粉砕され、次いで錠剤に圧縮される場合、これらの物質も使用することができる。
【0046】
結晶化阻害物質、例えば、Kollidon 30の添加によって、固溶体の安定性が増加される。
【0047】
さらに、溶融粘度、したがって押出温度を低下させる界面活性剤を製剤に組み込むこともさらに可能である。これらの物質も、起こりうる結晶化に肯定的に影響を与え得る。好適な物質は、例えば、Solutol (登録商標)HS 15、Tween(登録商標)80、Cremophor RH40、ドクセートナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0048】
まだ柔軟な混合物は、好ましくは、ダイを通して押し出され、冷却され、微粉砕される。好適な微粉砕法は、原則として、ホット又はコールドカッティングなどの、そのための通常の全ての既知の技術である。
【0049】
押出物は、例えば、回転羽根又はエアジェットで裁断され、次いで空気又は保護ガス下で冷却される。
【0050】
押出物を冷却されたベルト(ステンレス鋼、Teflon、チェーンベルト)上に溶融ストランドとして置き、固化後にそれを粒状化することも可能である。
【0051】
次いで、押出物は、場合によって粉砕することができる。製剤は、自由な流動性のある水溶性粉末として得られる。好ましいのは、20から250μmの粒径を達成することである。
【0052】
さらに、ポリマー及び活性物質のプラスチック混合物を射出成形によって加工することも可能である。
【0053】
本発明による方法によって得られる製剤は、原則として、難水溶性又は水不溶性物質のみが、水性製剤中で使用されるか又は水性媒体中でそれらの作用を示すかのいずれかである全ての分野において使用され得る。
【0054】
本発明によれば、「難水溶性」という用語は、実質的に不溶性な物質も含み、20℃における物質の水溶液について、物質の1g当たり少なくとも30から100gの水が必要であることを意味する。実質的に不溶性な物質の場合、物質の1g当たり少なくとも10000gの水が必要である。
【0055】
本発明の文脈で、難水溶性物質は、好ましくは、ヒト及び動物用の活性医薬成分、活性化粧品又は農薬成分、又は栄養補助食品(food supplements)又は活性な食事療法(dietetic)の成分などの生物活性な物質を意味するものと理解される。
【0056】
さらに、可溶化されるべき有用な難溶性物質には、無機又は有機顔料などの染料も含まれる。
【0057】
本発明によれば、有用な生物活性物質には、原則として、共重合体の押出条件下で分解点未満の融点を有する全ての固体活性成分が含まれる。共重合体は、一般的に、260℃以下の温度で押し出すことができる。下限温度は、いずれの場合にも押し出される混合物の組成及び加工される難溶性物質によって導かれる。
【0058】
使用される活性医薬成分は、水不溶性物質又は低水溶性の物質である。DAB 9 (Deutsches Arzneimittelbuch、ドイツ薬局方)によれば、活性医薬成分の溶解性は、次のように、即ち、低溶解性(30から100部の溶媒に可溶)、難溶性(100から1000部の溶媒に可溶)、実質的に不溶性(10000部を上回る溶媒に可溶)に分類される。活性成分は、いずれかの適応症の区分に由来し得る。
【0059】
本明細書で、例としては、ベンゾジアゼピン、抗高血圧薬、ビタミン、細胞増殖抑制剤、特にタキソール、麻酔剤、神経安定薬、抗うつ薬、抗ウイルス剤、例えば抗HIV薬、抗生物質、抗真菌剤、抗認知症薬、殺菌類剤、化学療法薬、泌尿器薬、血小板凝集阻害剤、スルホンアミド、鎮痙薬、ホルモン、免疫グロブリン、血清、甲状腺療法薬、向精神薬、パーキンソン病治療薬及び他の抗運動過剰症薬、目薬、神経障害製剤、カルシウム代謝調整剤、筋肉弛緩剤、麻酔剤、脂質低下薬、肝臓治療薬、冠状動脈薬、心臓病薬、免疫治療薬、調節ペプチド及びその阻害剤、催眠剤、鎮痛剤、婦人病薬、痛風治療剤、線維素溶解薬、酵素製剤及び輸送タンパク質、酵素阻害剤、吐剤、血流刺激剤、利尿薬、診断薬、コルチコイド、コリン作動薬、胆道治療薬、抗喘息薬、気管支拡張薬、ベータ受容体遮断薬、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、動脈硬化治療薬、抗炎症薬、抗凝血剤、抗低血圧薬、抗低血糖薬、抗高血圧薬、抗線維素溶解薬、抗てんかん薬、制吐薬、解毒剤、抗糖尿病薬、不整脈治療剤、抗貧血薬、抗アレルギー薬、駆虫薬、鎮痛剤、中枢神経興奮剤、アルドステロン拮抗薬、やせ薬が挙げられる。
【0060】
上述の医薬製剤の中で、特に好ましいのは、経口投与可能な製剤である。
【0061】
医薬製剤中の本発明の可溶化剤の含有量は、活性成分に応じて、1から75重量%、好ましくは5から60重量%、より好ましくは5から50重量%の範囲にある。
【0062】
一つのさらなる特に好ましい実施形態は、活性成分及び共重合体が、固溶体として存在する医薬製剤に関する。この場合、溶媒の除去及び活性物質の組み込みを、一つの加工ステップで実施することができる。本明細書における共重合体の活性成分に対する重量比は、好ましくは、1:1から4:1であるが、最大100:1、特に最大15:1であってよい。唯一の要素は、完成した薬物形態で使用される場合、十分な量の活性成分が、第一に、薬物形態中に存在し、それらの形態が、第二に、経口薬物形態の場合、大きくなり過ぎないことである。
【0063】
医薬品投与形態、例えば、錠剤を製造するために、押出物を、通常の医薬賦形剤と混合することができる。
【0064】
これらは、充てん剤、可塑剤、可溶化剤、結合剤、ケイ酸塩及び崩壊剤及び吸着剤、滑沢剤、流動促進剤、染料、抗酸化剤などの安定剤、湿潤剤、保存剤、離型剤、香料又は甘味剤のクラスからの物質であり、好ましくは充てん剤、可塑剤及び可溶化剤である。
【0065】
添加される充てん剤は、例えば、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素の酸化物、炭酸チタン又は炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はリン酸マグネシウムなどの無機固体又はラクトース、スクロース、ソルビトール、マンニトールなどの有機充てん剤であってよい。
【0066】
好適な可塑剤は、例えば、トリアセチン、トリエチルシトレート、グリセリルモノステアレート、低分子量ポリエチレングリコール又はポロキサマーである。
【0067】
好適なさらなる可溶化剤は、11を上回るHLB(親水性親油性バランス)値を有する界面活性物質、例えば、40個のエチレンオキシド単位でエトキシル化された水素化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)RH 40)、35個のエチレンオキシド単位でエトキシル化されたヒマシ油(Cremophor EL)、Polysorbate 80、ポロキサマー又はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0068】
使用される滑沢剤は、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム及びスズのステアレート、及び同様にマグネシウムシリケート、シリコーンなどであってよい。
【0069】
使用される流動促進剤は、例えば、タルク又はコロイド状二酸化ケイ素であってよい。
【0070】
一つの好適な結合剤は、例えば、微結晶性セルロースである。
【0071】
崩壊剤は、架橋ポリビニルピロリドン又は架橋ナトリウムカルボキシメチルデンプンであってよい。安定剤は、アスコルビン酸又はトコフェロールであってよい。
【0072】
染料は、例えば、投与形態を染めるための酸化鉄、二酸化チタン、トリフェニルメタン染料、アゾ染料、キノリン染料、インジゴスズ染料、カロテノイド、透明性を増加するため及び染料を節約するための二酸化チタン又はタルクなどの乳白剤である。
【0073】
化粧品及び製薬における使用に加えて、本発明に従って製造される製剤は、食品部門における使用、例えば、難水溶性又は水不溶性の栄養素、助剤又は添加剤、例えば、脂溶性ビタミン又はカロテノイドの組み込み用にも適している。例としては、カロテノイドで着色された飲料が挙げられる。
【0074】
農芸化学における本発明に従って得られる製剤の使用は、殺有害生物剤、除草剤、殺菌類剤又は殺虫剤を含む製剤、及び特に同様に噴霧又は潅水用の製剤として使用される作物保護組成物の製剤を含み得る。
【0075】
本発明による方法を用いて、難溶性物質を含む、いわゆる固溶体を得ることが可能である。固溶体は、本発明に従って、難溶性物質の結晶性成分が観察されない系を意味する。
【0076】
安定な固溶体の目視評価で、非晶質の構成要素は認められない。目視評価は、40倍で、偏光フィルタを用いるか又は用いないかいずれかの光学顕微鏡を用いて実施することができる。
【0077】
さらに、製剤を、XRD(X線回折)及びDSC(示差走査熱量測定法)を用いて結晶化度又は非晶質性(amorphicity)についても検査することができる。
【0078】
本発明による方法によって得られる製剤は、記載のように、生物活性物質の結晶性成分が5重量%未満であることを意味する非晶質形態で存在する。非晶質状態は、好ましくは、DSC又はXRDを用いて確認される。このような非晶質状態は、X線非晶質状態とも呼ぶことができる。
【0079】
本発明による方法によって、活性成分充填量が多く、難溶性物質の非晶質状態に関して良好な安定性を有する安定な製剤の製造が可能になる。
【実施例】
【0080】
ポリマーの調製
撹拌された装置において、供給原料2からの部分を含まない初期の装入物を、N2雰囲気下で77℃に加熱した。77℃の内部温度が達成された時、供給原料2からの一部分を添加し15分間、部分的に重合させた。続いて、供給原料1を5時間以内で計り入れ、供給原料2を2時間以内で計り入れた。全ての供給原料を計り入れ次第、反応混合物を、さらに3時間、重合させた。さらなる重合の後、溶液を50重量%の固形分に調節した。
【0081】
初期の装入物: 25gの酢酸エチル
104.0gのPEG 6000、
1.0gの供給原料2
供給原料1: 240gの酢酸ビニル
供給原料2: 456gのビニルカプロラクタム
240gの酢酸エチル
供給原料3: 10.44gのtert-ブチルペルピバレート(脂肪族化合物混合物中75重量%)
67.90gの酢酸エチル
続いて、溶媒を噴霧プロセスで除去して粉末生成物を得た。K値は、エタノール中の1重量%溶液中で測定して36であった。
【0082】
以下の実施例に記載される製剤の製造に使用された2軸押出機は、16mmのスクリュー径及び40Dの長さを有した。全体の押出機は、8個の個別に温度制御可能なバレルブロックから形成された。より良い原料の取り込みの目的で、最初の二つのバレルの温度は、それぞれ20℃及び70℃に制御された。第3バレルから、一定の温度が設定された。
【0083】
製造される固溶体を、次の装置及び条件を使用して、結晶化度及び非晶質性についてXRD及びDSCを用いて検査した。
【0084】
XRD
装置: 9チューブサンプルチェンジャーを備えたD 8 advance回折計(Bruker/AXS製)
測定方法: 反射におけるθ-θ配置
アングル範囲2シータ: 2-80°
ステップ幅: 0.02°
アングルステップ当たりの測定時間: 4.8s
発散スリット: 0.4mm挿入開口を備えるGobelミラー
散乱防止スリット: Sollerスリット
検知器: Sol-X検知器
温度: 室温
発電機設定: 40kV/50mA
DSC
TA Instruments製DSC Q 2000
パラメーター:
出発重量約8.5 mg
加熱速度: 20K/分
固溶体の調製
実施例1
1600gのポリマー及び400gのフェノフィブレート(融点81℃)を、Turbula混合容器に計り入れ、T10B Turbula混合機中で10分間混合した。
【0085】
この混合物を、以下の条件下で押し出した。
【0086】
・第3シリンダーからのゾーン温度: 130℃
・スクリュー速度200rpm
・押出量1000g/h
・ダイ径1mm
・ダイ圧力: 11バール
・電流消費: 2.8A
・電力消費: 0.3kW
固溶体をXRD及びDSCで調べ、非晶質であることが見出された。
【0087】
実施例2
800gのポリマー及び200gのシンナリジン(融点122℃)を、Turbula混合容器に計り入れ、T10B Turbula混合機中で10分間混合した。
【0088】
この混合物を、以下の条件下で押し出した。
【0089】
・第3シリンダーからのゾーン温度: 140℃
・スクリュー速度200rpm
・押出量900 g/h
・ダイ径1mm
・材料温度: 148℃
・ダイ圧力: 12バール
・電流消費: 2.6A
・電力消費: 0.26kW
調製された固溶体を、XRD及びDSCで調べ、非晶質であることが見出された。
【0090】
実施例3
800gのポリマー及び200gのケトコナゾール(融点146℃)を、Turbula混合容器に計り入れ、T10B Turbula混合機中で10分間混合した。
【0091】
この混合物を、以下の条件下で押し出した。
【0092】
・第3シリンダーからのゾーン温度: 150℃
・スクリュー速度200rpm
・押出量900g/h
・ダイ径1mm
・材料温度: 155℃
・ダイ圧力: 10バール
・電流消費: 2.5A
・電力消費: 0.24kW
調製された固溶体は、XRD及びDSCによると非晶質であった。
【0093】
実施例4
800gのポリマー及び200gのクロトリマゾール(融点147℃)を、Turbula混合容器に計り入れ、T10B Turbula混合機中で10分間混合した。
【0094】
この混合物を、以下の条件下で押し出した。
【0095】
・第3シリンダーからのゾーン温度: 150℃
・スクリュー速度200rpm
・押出量900g/h
・ダイ径1mm
・材料温度: 158℃
・ダイ圧力: 13バール
・電流消費: 2.9A
・電力消費: 0.3kW
調製された固溶体は、XRD及びDSCによると非晶質であった。
【0096】
実施例5
800gのポリマー及び200gのフェロジピン(融点145℃)を、Turbula混合容器に計り入れ、T10B Turbula混合機中で10分間混合した。
【0097】
この混合物を、以下の条件下で押し出した。
【0098】
・第3シリンダーからのゾーン温度: 150℃
・スクリュー速度200rpm
・押出量900g/h
・ダイ径1mm
・材料温度: 155℃
・ダイ圧力: 12バール
・電流消費: 2.6A
・電力消費: 0.26kW
調製された固溶体は、XRD及びDSCによると非晶質であった。
【0099】
実施例6
1400gのポリマー、400gのフェノフィブレート(融点81℃)及び200gのPovidon K30を、Turbula混合容器に計り入れ、T10B Turbula混合機中で10分間混合した。
【0100】
この混合物を、以下の条件下で押し出した。
【0101】
・第3シリンダーからのゾーン温度: 150℃
・スクリュー速度200rpm
・押出量1000g/h
・ダイ径1mm
・ダイ圧力: 14バール
・電流消費: 3.2A
・電力消費: 0.35kW
調製された固溶体は、XRD及びDSCによると非晶質であった。
【0102】
実施例7
760gのポリマー、40gのラウリル硫酸ナトリウム及び200gのフェロジピン(融点145℃)を、Turbula混合容器に計り入れ、T10B Turbula混合機中で10分間混合した。
【0103】
この混合物を、以下の条件下で押し出した。
【0104】
・第3シリンダーからのゾーン温度: 160℃
・スクリュー速度200rpm
・押出量900g/時
・ダイ径1mm
・材料温度: 165℃
・ダイ圧力: 10バール
・電流消費: 2.4A
・電力消費: 0.24kW
調製された固溶体は、XRD及びDSCによると非晶質であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難水溶性物質の製剤を製造する方法であって、
前記難水溶性物質は、共重合体中に非晶質の組み込まれた形態で存在し、
前記共重合体は、
i)30から80重量%のN-ビニルラクタム、
ii)10から50重量%の酢酸ビニル、及び
iii)10から50重量%のポリエーテル
の混合物のフリーラジカルで開始される重合によって得られ、
但し、成分i)、ii)及びiii)の合計が100重量%に等しいことを条件とし、前記難水溶性物質の融点を上回る温度において前記難水溶性物質を前記共重合体へ組み込むステップを含む方法。
【請求項2】
i)30から70重量%のN-ビニルラクタム、
ii)15から35重量%の酢酸ビニル、及び
iii)10から35重量%のポリエーテル
から得られる共重合体が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分i)としてN-ビニルピロリドン若しくはN-ビニルカプロラクタム又は混合物を使用して得られる共重合体が使用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
成分i)としてN-ビニルカプロラクタムを使用して得られる共重合体が使用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
成分ii)としてポリエチレングリコールを使用して得られる共重合体が使用される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
成分ii)として1000ダルトンから10000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールを使用して得られる共重合体が使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
10から60のK値を有する共重合体が使用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
15から40のK値を有する共重合体が使用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記難水溶性物質が、生物活性物質である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
疾患の治療用の医薬製剤を製造するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
化粧品製剤を製造するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
栄養補助食品又は食事療法剤を製造するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
染料の製剤を製造するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記難水溶性物質が、溶融押出によって前記共重合体に組み込まれる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組み込みが、260℃以下の温度で実施される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
再結晶化を防止する薬剤が添加される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−522029(P2012−522029A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502630(P2012−502630)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054167
【国際公開番号】WO2010/112489
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】