説明

水への浸漬前に溶解耐性を有する水溶性基材

水溶性基材(10)、より具体的には、少量の水への接触に対して耐性を有する水溶性基材、及びその製造方法が開示される。水溶性基材は、第1表面及び第2表面を含み、該第1及び第2表面の少なくとも1つに適用されるガラスビーズ(20)を有し、該ガラスビーズは1μm〜5,000μmの平均直径を有する。水溶性基材から製造されるパウチのような物品もまた本明細書に開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性基材、より具体的には、水への浸漬前に溶解耐性が改善された水溶性基材、及びその製造方法に関する。本発明はまた、水溶性基材から製造される、パウチのような物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性基材は、包装材料としての使用に幅広い支持を得ている。包装材料としては、フィルム、シート、吹き込み又は成形中空体(即ち、サッシェ、パウチ、及びタブレット)、瓶、容器等が挙げられる。しばしば、サッシェ及びパウチのような特定の種類のこれらの物品の調製に用いられる時、水溶性基材は、少量の水又は高湿度への曝露により、崩壊したり及び/又はべたっとする。これにより、それらをその中に収容された組成物の包装及び保存に使用するのは不適当となり得る。
【0003】
一般消費者の大部分は、保存中に、濡れた手、高湿度、水漏れしている流し台、又はパイプから、パウチが販売及び購入後に保存される外装内部に水が入る時のような、水溶性パウチが偶発的に少量の水に曝露される時の、望ましくないパウチの溶解と水溶性パウチが関連することに不満を持っている。これにより、水溶性パウチは、使用前に漏れたり及び/又は互いに貼り付いたりする場合がある。2番目のよくある不満は、使用の際に水溶性パウチが完全に溶解しないことである。従って、少量の水への曝露に対する溶解耐性が改善されているが、すすぎ水及び/又は洗浄水のような水性溶液に浸漬した時非常に急速に溶解することができる、水溶性基材並びにサッシェ及びパウチのようなそれから製造される物品に対する満たされていない要求が依然として存在する。
【0004】
上述の問題を打開するために、水溶性基材をより溶解耐性にする種々の方法が当該技術分野において既知である。典型的には、水溶性基材の片側又は両側がコーティングされる。例えば、米国特許第6,509,072号には、バリアコーティングを含む水溶性基材が記載されている。バリアコーティングは、水溶性基材上に連続フィルムを形成する高分子フィルムである。バリアコーティングの別の例は、花王に譲渡されたPCT国際公開特許WO 01/23460号に記載されており、そこでは水溶性基材の表面が粒子状又は繊維状非水溶性材料でコーティングされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術のバリアコーティングはいくらか溶解耐性を有する水溶性基材を提供するが、依然として、コーティングされた基材の溶解特性をさらに改善する必要性が存在する。しかしながら、バリアコーティングの別の問題は、水溶性基材の審美性が負の影響を受ける場合があることである。一般に、かかるコーティングは無色であり、光沢のない外観を有する。かかる水溶性基材で製造されたパウチのような物品は、従って、審美性が劣り、及び/又はユーザがかかる物品の内容物を調べるのを困難にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
それ故に、本発明の態様は、水への浸漬前の溶解耐性が改善されているが、審美的に魅力のある及び/又は該水溶性基材から製造される物品の内容物を調べることができる水溶性基材を提供することである。
【0007】
本発明は、第1表面及び該第1表面に対向する第2表面を含む水溶性基材であって、該基材が該第1及び該第2表面の少なくとも1つに適用されるガラスビーズを有し、該ガラスビーズが1μm〜5,000μmの平均直径を有する、水溶性基材に関する。
本発明はまた、水溶性基材を含む物品、及び水溶性基材を製造する方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、水溶性基材、より具体的には、水への浸漬前の溶解耐性が改善された水溶性基材、及びその製造方法に関する。本発明はまた、本明細書に記載する水溶性基材を含む物品にも関する。
【0009】
水溶性基材
図1は、水溶性基材10の断面を示す。水溶性基材10は、第1表面12及び第1表面12に対向する第2表面14を有する。第1表面12と第2表面14との間の水溶性基材10の厚さ16は、約0.75μm〜約1,250μm、好ましくは約10μm〜約250μm、より好ましくは約25μm〜約125μmの範囲であることができる。水溶性基材10は、フィルム、シート、又は発泡体の形態であることができ、織布及び不織布構造を含む。
【0010】
水溶性基材は高分子材料で製造され、最大孔径20μのガラスフィルターを使用した後、本明細書に記載した方法により測定した時、少なくとも50重量%の水溶解度を有する。好ましくは、基材の水溶解度は、少なくとも75重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%である。
【0011】
50g±0.1gの基材材料を、予め重量を測定した400mLのビーカーに添加し、25℃の245mL±1mLの蒸留水を添加する。これを、600rpmに設定された電磁攪拌器上で、30分間激しく攪拌する。次に混合物を、上記で定義したような孔径(最大20μ)を有する折り畳み定性焼結ガラスフィルターを通して濾過する。任意の従来の方法によって収集した濾液から水を蒸発させ、残った物質の重量を測定する(これが溶解画分である)。次いで、溶解度(%)を算出することができる。
【0012】
典型的には、水溶性基材10は、0.33〜1,667g/平方メートル、好ましくは33〜167g/平方メートルの坪量を有する。第1表面12と第2表面14との間の水溶性基材10の厚さは、約0.75μm〜約1,250μm、好ましくは約10μm〜約250μm、より好ましくは約25μm〜約125μmの範囲であることができる。
【0013】
基材材料として使用するのに好適な、好ましいポリマー、コポリマー又はその誘導体は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド類、アクリルアミド、アクリル酸、セルロース、セルロースエーテル類、セルロースエステル類、セルロースアミド類、ポリビニルアセテート類、ポリカルボン酸類及び塩類、ポリアミノ酸類又はペプチド類、ポリアミド類、ポリアクリルアミド、マレイン酸/アクリル酸のコポリマー、デンプン及びゼラチンを含む多糖類、キサンタン(xanthum)及びカラガム(carragum)のような天然ガム類、ポリアクリレート類及び水溶性アクリレートコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート類、ポリビニルアルコールコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及びこれらの混合物から選択される。最も好ましいポリマーはポリビニルアルコールである。好ましくは、基材中のポリマー濃度は少なくとも60%である。
【0014】
市販の水溶性フィルムの例は、米国インディアナ州ゲーリー(Gary)のクリス−クラフト・インダストリアル・プロダクツ(Chris-Craft Industrial Products)から販売されている、商品照会名モノソール(Monosol)M8630として知られているPVAフィルム、及びそれに相当する溶解度及び変形特質を有するPVAフィルムである。本明細書で用いるのに好適な他のフィルムとしては、アイセロ(Aicello)により供給される商品照会名PTフィルム若しくはフィルムのK−シリーズとして既知のフィルム、又はクラレ(Kuraray)により供給されるVF−HPフィルムが挙げられる。
【0015】
ガラスビーズ
図2に示すように、ガラスビーズ20を、水溶性基材10の第1又は第2表面12、14の少なくとも1つに適用する。第1及び/又は第2表面12、14の、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも50%、かつ100%以下を、ガラスビーズ20により被覆する。これは、偶発的な水との接触時、水が水溶性基材10の第1又は第2表面12、14に到達することができない、又は該表面に到達する水の量が、水溶性基材10を完全に可溶性にするのには不十分であることを保証する。
【0016】
ガラスビーズ20は、1〜5,000μm、好ましくは1〜100μm、さらにより好ましくは5〜50μmの平均直径を有する。
【0017】
一つの好ましい実施形態では、ガラスビーズ20は中空である。これは、コーティングが低重量であるという利点をもたらす。特に、低範囲の直径を有するガラスビーズは、コーティングされた水溶性基材全体の重量にも、該コーティングされた水溶性基材から製造される物品全体の重量にも大きな影響を与えない。物品が中空ガラスビーズ20でコーティングされた水溶性基材10を含む時にもたらされる、中空ガラスビーズ20を使用する別の利点は、洗濯機のような機械的攪拌に関与する用途で用いられることである。機械的攪拌、及びコーティングと他の物品(衣類のような)又は装置の一部(例えば、ドラムの内壁)との接触により、それらは容易に壊れる。結果として、コーティングされた水溶性基材は、必要な時に水溶性になり、ガラスビーズ20の破壊された断片は、小さいために、洗浄水とともに容易に排出されるように、安全性又は処分に関していかなる問題も引き起こさない。
【0018】
別の好ましい実施形態では、ガラスビーズ20を用いて有益剤を供給することができる。図3に示すように、1つ以上の有益剤を含む組成物35を、中空ガラスビーズ20の内部に組み込むことができる。或いは、図4に示すように、ガラスビーズ20の外面(ガラスビーズが中空であるか否かにかかわらず)を、1つ以上の有益剤を含む組成物35でコーティングする場合がある。これは、所与の組成物を有する曝露されたコーティングされた表面積を最大化させ、それによってフィルムの表面に対する組成物を有するコーティングされた面積を増加させる。図5に示すような別の代替物は、ガラスビーズ内部に組み込まれた第1組成物36、及びガラスビーズ20の外面に適用された第2組成物37を有する中空ガラスビーズ20を提供することであって、第1及び第2組成物36、37は異なることも同一であることもできる。水溶性基材10はまた、各種類が、内部、外部又はその両方に、異なる組成物を含む、幾つかの種類のガラスビーズ20の混合物でコーティングしてもよい。このように、パウチのような物品を介して、製品又は物品内部の組成物と適合性のない有益剤を供給することが可能である。中空ガラスビーズ内部に組み込むことができる、又はガラスビーズの外面に適用することができる有益剤の例としては、洗浄剤、汚れ懸濁化剤、再付着防止剤、蛍光増白剤、漂白剤、酵素、香料組成物、漂白活性化剤及び前駆体、光沢剤(shining agent)、石鹸泡抑制剤(suds suppressor agent)、布地ケア組成物、表面保護組成物(surface nurturing composition)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
ガラスビーズ20の別の利点は、元々のその透明な性質によって、水溶性基材に対する審美性を改善できることである。
【0020】
一つの好ましい実施形態では、ガラスビーズ20を着色することができる。水溶性基材10を、1つの同一色を有するガラスビーズ20で、又は異なる色を有するガラスビーズ20の混合物でコーティングすることができる。このように、図、漫画、ロゴ、ブランド設定、取扱説明書等のような、視覚的に魅力のある効果を生み出すことができる。或いは、中空ガラスビーズ20に着色組成物を充填することができ、該組成物は所望により上述のような1つ以上の有益剤を含む。
【0021】
別の好ましい実施形態では、ガラスビーズ20の外面を、部分的に、又は実質的に全体的にシリコーンでコーティングしてよい。シリコーンの疎水性特性は、コーティングの撥水性をさらに増大させ、それにより偶発的な水との接触に対する、コーティングされた水溶性基材10の耐性を増大させる。
【0022】
さらに別の好ましい実施形態では、ガラスビーズ20の外面を、部分的に、又はほぼ全体的に、銀及び/若しくは銀化合物、又はチタン、スズ、アルミニウム、並びに光を反射及び/若しくは回折するそれらの化合物のような任意の他の好適な材料でコーティングしてよい。また、蛍光性及び光輝性コーティング及び顔料でコーティングすることができる。
【0023】
水溶性基材10を、任意の上述の実施形態のガラスビーズ20の組み合わせでコーティングしてよい。
【0024】
好適なガラスビーズ20の例は、ソビテック(Sovitec)(欧州及び南米に多数所在する)から、商品名マイクロビーズ(Microbeads)、バイアラックス(Vialux)、エコラックス(Echolux)及びその他として入手可能である。ガラスビーズはまた、屈折率1.93及び2.2を有するガラスビーズ、光輝性及び着色ガラスビーズ、並びにE−ビーズ(E-bead)(商標)のような、済南華明マイクロビーズ社(Jinan Huaming Microbead Co.,Ltd)(済南、中国)からも入手可能である。また、中空ガラスビーズ材料は、ナエウォイコリア(Naewoikorea)(ソウル、韓国)から商品名ヒク(Hique)(商標)として、ポッターズ・インダストリーズ社(Potters Industries Inc.)(ペンシルバニア州バリーフォージ(Valley Forge))から商品名スフィアリガラス(Spheriglass)(商標)(固体ガラスマイクロビーズ)及びスフィアリセル(Sphericel)(商標)(中空ガラスマイクロビーズ)として入手可能である。
【0025】
任意成分
特定の用途では、基材の溶解速度(浸漬時)が上昇することが必要な場合がある。崩壊剤を、その上にガラスビーズ20が適用された表面に対向する水溶性基材10の表面に適用してよく、それらを水溶性基材10の両面に適用してよく、水溶性フィルム10に組み込んでよく、これらのいずれかの組み合わせでよい。好ましくは、崩壊剤の濃度は、該基材の重量の0.1〜30重量%、好ましくは1〜15重量%である。本明細書で用いるのに好適な崩壊剤は、トウモロコシ/バレイショデンプン、メチルセルロース/セルロース、鉱物粘土粉末、クロスカルメロース(croscarmelose)(架橋セルロース)、クロスポビドン(crospovidine)(架橋ポリマー)、グリコール酸ナトリウムデンプン(架橋デンプン)である。
【0026】
水溶性基材形成組成物及びそれから形成される水溶性基材10はまた、1つ以上の添加剤又は補助剤成分を含むことができる。例えば、水溶性基材形成組成物及び水溶性基材10は、可塑剤、潤滑剤、離型剤、充填剤、増量剤、ブロッキング防止剤、粘着性除去剤、消泡剤、又は他の機能成分を含有してよい。洗浄用組成物を含有する物品の場合、後者としては、洗浄水に送達される機能的洗剤添加物、例えば有機ポリマー分散剤、又は他の洗剤添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
好適な可塑剤としては、グリセロール、グリセリン、ジグリセリン、ヒドロキシプロピルグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、エタノールアミン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。可塑剤を、約5重量%〜約30重量%の範囲、又は約12重量%〜約20重量%の範囲の量を含む、任意の好適な量で水溶性基材10に組み込むことができる。
【0028】
好適な界面活性剤としては、非イオン性、カチオン性、アニオン性、及び双極性の部類を挙げてよい。好適な界面活性剤としては、ポリオキシエチレン化ポリオキシプロピレングリコール、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、第三級アセチレングリコール及びアルカノールアミド(非イオン性物質)、ポリオキシエチレン化アミン、第四級アンモニウム塩、及び四級化されたポリオキシエチレン化アミン(カチオン性物質)、及びアミンオキシド、N−アルキルベタイン及びスルホベタイン(双極性物質)が挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤を、約0.01重量%〜約1重量%の範囲、又は約0.1重量%〜約0.6重量%の範囲の量を含む、任意の好適な量で水溶性基材10に組み込むことができる。
【0029】
好適な潤滑剤/離型剤としては、脂肪酸及びそれらの塩、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、脂肪族アミン、脂肪族アミンアセテート、及び脂肪酸アミドが挙げられるが、これらに限定されない。潤滑剤/離型剤を、約0.02重量%〜約1.5重量%の範囲、又は約0.04重量%〜約0.15重量%の範囲の量を含む、任意の好適な量で水溶性基材10に組み込むことができる。
【0030】
好適な充填剤、増量剤、ブロッキング防止剤、粘着性除去剤としては、デンプン、変性デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、架橋セルロース、微結晶セルロース、シリカ、金属酸化物、炭酸カルシウム、タルク及び雲母が挙げられるが、これらに限定されない。充填剤、増量剤、ブロッキング防止剤、粘着性除去剤を、約0.1重量%〜約25重量%の範囲、又は約1重量%〜約15重量%の範囲の量を含む、任意の好適な量で水溶性基材10に組み込むことができる。デンプンの非存在下では、充填剤、増量剤、ブロッキング防止剤、粘着性除去剤が、約1重量%〜約5重量%の範囲で存在することが望ましい場合がある。
【0031】
好適な消泡剤としては、ポリジメチルシロキサン及び炭化水素のブレンドに基づくものが挙げられるが、これに限定されない。消泡剤を、約0.001重量%〜約0.5重量%の範囲、又は約0.01重量%〜約0.1重量%の範囲の量を含む、任意の好適な量で水溶性基材10に組み込むことができる。
【0032】
組成物は、材料を混合し、溶液が完成するまで温度を約21℃(70°F)から約90℃(195°F)まで上げながら混合物を攪拌することにより調製される。基材形成組成物は、任意の好適な形態(例えば、フィルム又はシート)にしてよく、その後任意の好適な製品(例えば、単一及び多区画のパウチ、サッシェ、バッグ等)を形成してよい。
【0033】
水溶性基材の製造方法
本明細書に記載される水溶性基材10を製造する方法の多数の非限定的実施形態が存在する。
【0034】
一つの実施形態では、該方法は、予め形成された水溶性基材10を準備する工程と、予め形成された水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つにガラスビーズ20を適用する工程とを含む。
【0035】
ガラスビーズ20を、多数の異なる方法で、予め形成された水溶性基材10に適用することができる。一つの非限定的実施例では、低水溶性材料20が、ジェットを介して又は静電気的に、予め形成された水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つに適用される。高速のジェットにより、一部のガラスビーズ20は、基材に埋め込まれ、それにより結合剤の使用の必要性を低減する又はさらに結合剤の使用の必要性をなくす。また、ガラスビーズ20が静電気的に適用される時、結合剤は一般に不要である。それでもなお、結合剤を使用してよい。結合剤を、ガラスビーズ20が適用される前に、まず水溶性基材10に適用してよい。又は、或いは、結合剤をガラスビーズ20と混合し、次いで混合物を水溶性基材10に添加してよい。
【0036】
方法の別の非限定的実施形態では、ガラスビーズ20は水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つ上に適用される液体分散物の形態で提供され、乾燥されるか、又は乾燥プロセスを受ける。分散物を、スプレー、ナイフ、ロッド、キス、スロット、塗装、印刷、及びこれらの混合を含む任意のコーティングプロセスにより、フィルム上に塗布することができる。本明細書に用いるには、印刷が好ましい。印刷は、よく確立された経済的なプロセスである。印刷は、通常インク及びコーティングで行なわれ、模様と色を基材に付与するために使用されるが、本発明の場合には、印刷は、水溶性基材10上にガラスビーズ20を堆積させるために使用される。輪転グラビア印刷、石版印刷、フレキソ印刷、ポーラス(porous)及びスクリーン印刷、インクジェット印刷、凸版印刷、タンポグラフィー(tampography)、並びにこれらの組み合わせを含む、任意の種類の印刷を使用することができる。
【0037】
これらの実施形態はまた、ガラスビーズ20を予め形成された水溶性基材10に適用する前に、水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つの少なくとも一部を湿潤させる工程を含んでもよい。水溶性基材10の表面12、14の少なくとも1つの湿潤を使用して、基材10の表面12、14の外部を少なくとも部分的に(つまり、基材の厚さの途中まで)溶解又は可溶化してよい。水溶性基材10を、コーティングを基材に部分的に埋め込むために、任意の好適な深さに少なくとも部分的に可溶化してよい。好適な深さとしては、基材全体の厚さ16の約1%〜約40%又は約45%、約1%〜約30%、約1%〜約20%、約1%〜約15%、或いは約1%〜約10%が挙げられるが、これらに限定されない。ガラスビーズ20を、次いで、基材10の表面12、14の少なくとも1つの部分的に溶解した部分に適用する。これにより、ガラスビーズ20は基材10の表面12、14の外部に埋め込まれ、基材10のより永続的な部分となることができる。同じものに埋め込まれたガラスビーズ20を有する基材10の湿潤した表面12、14を、次いで、乾燥し得る。かかる方法の実施形態はまた、基材10の表面を拭き取る又は除粉するような、乾燥後水溶性基材10の表面上に残る、任意の緩んだ(loose)又は過剰なガラスビーズ20の少なくとも一部を除去する工程を含んでもよい。
【0038】
別の実施形態では、ガラスビーズ20を、基材10で製品を製造した後、水溶性基材10に添加することができる。例えば、水溶性基材10を用いて組成物を収容する水溶性パウチを形成する場合、ガラスビーズ20を、水溶性パウチの表面の少なくとも一部上の基材10に添加することができる。
【0039】
水溶性パウチを製造する方法
本明細書に記載される水溶性基材10から、水溶性基材10がその中で包装材料として用いられるものが挙げられるがこれらに限定されない物品を形成することができる。かかる物品としては、水溶性パウチ、サッシェ、及び他の容器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書に記載される水溶性基材10を組み込む水溶性パウチ及び他のかかる容器を、当該技術分野において既知の任意の好適な方式で製造することができる。水溶性基材10は、それを最終製品に成形する前又は後のいずれかにおいて、改善された溶解耐性を備えることができる。いずれにせよ、特定の実施形態では、かかる物品を製造する時、その上にガラスビーズ20が分布している基材10の表面12が物品の外面を形成することが望ましい。
【0041】
水溶性パウチを製造するための多数のプロセスが存在する。これらとしては、垂直型充填シールプロセス、水平型充填シールプロセス、及び円形ドラム表面上の型内でのパウチ形成として当該技術分野において既知のプロセスが挙げられるが、これらに限定されない。垂直型充填シールプロセスでは、基材を折り畳むことにより垂直管を形成する。管の底末端部を封止し、開放型パウチを形成する。このパウチは、ヘッドスペースを考慮し、部分的に充填される。次いで、開放型パウチの最上部を共に封止してパウチを閉じ、次の開放型パウチを形成する。次いで、第1パウチが切断され、該プロセスを繰り返す。かかる方法で形成されたパウチは、通常は枕形状(pillow shape)を有する。水平型充填シールプロセスは、一連の型をその中に有するダイを用いる。水平型充填シールプロセスでは、基材をダイの中に定置し、これらの型内で、これらの型内で開放型パウチを形成し、これらを次いで充填し、基材の別の層により被覆し、封止することができる。第3プロセス(円形ドラム表面上の型内でのパウチの形成)では、基材はドラムの上を循環し、ポケットを形成し、これは充填機の下を通過して開放型ポケットを充填する。充填及び封止を、ドラムにより描かれる円の最高点(最上部)において行ない、例えば典型的には、充填を回転ドラムが下向きの円運動を始める直前に、及び封止をドラムがその下向きの運動を始めた直後に行う。
【0042】
開放型パウチを形成する工程を伴うプロセスのいずれにおいても、基材を初めに、熱形成、真空形成、又は両方を用いて、開放型パウチの形状に、成形又は形成することができる。熱形成は、型に加熱要素を接触させる、又は熱い空気を吹き込む、又は加熱ランプを用いて型及び/若しくは基材を加熱するような、任意の既知の方法で熱を適用することによって、型及び/又は基材を加熱することを伴う。真空形成の場合には、基材を型の中に入れるのを助けるために、真空による補助を使用する。他の実施形態では、2つの技術を組み合わせてパウチを形成することができ、例えば基材を、真空形成によって開放型パウチに形成することができ、プロセスを促進するために熱を提供することができる。開放型パウチを、次にその中に収容される組成物で充填する。
【0043】
充填された開放型パウチを次に閉鎖するが、これは任意の方法で行うことができる。水平型パウチ形成プロセスのような、幾つかの場合には、閉鎖を、水溶性基材のような第2材料又は基材を開放型パウチのウェブの上方及び上に連続的に供給し、次いで第1基材と第2基材を共に封止することにより行う。第2材料又は基材は、本明細書に記載される水溶性基材10を含むことができる。その上にガラスビーズが適用された第2基材の表面を、パウチの外面を形成するように配向することが望ましい場合がある。
【0044】
かかるプロセスでは、第1及び第2基材を、典型的には、型の間、従って隣接する型の中で形成されるパウチの間の領域において、封止する。封止を、任意の方法で行うことができる。封止の方法としては、熱封止、溶媒接着、及び溶媒又は湿潤封止が挙げられる。封止されたパウチのウェブを、次に、切断装置により切断することができ、この切断装置は、ウェブ中のパウチを、別個のパウチに互いに切り離す。水溶性パウチを形成するプロセスは、米国特許出願第09/994,533号、米国特許出願公開第2002/0169092 A1号(カトリン(Catlin)らの名前により公開)にさらに記載されている。
【0045】
製造物品
図6に示すように、本発明はまた、製品組成物40及び水溶性基材10を含む物品を含んでよく、それは、製品組成物を保持するために、パウチ、サッシェ、カプセル、バッグ等のような、容器30に形成し得る。それに適用されたガラスビーズ20を有する水溶性基材10の表面を使用して、容器30の外面を形成することができる。水溶性基材10は、製品組成物40の単位用量を提供する、容器30の少なくとも一部を形成し得る。
【0046】
簡略化のため、本明細書において関心のある物品は、水溶性パウチの観点で記載されるが、本明細書における論議はまた他の種類の容器にも当てはまることが理解されるべきである。
【0047】
前述の方法により形成されたパウチ30は、水溶性パウチ30の水への浸漬によるような、水溶性パウチ30から組成物40を放出することが望まれるまで、その中に収容される組成物40を保持するために好適な任意の形態及び形状であることができる。パウチ30は、1つの区画又は2つ若しくはそれ以上の区画を含むことができる(つまり、パウチは多区画パウチであることができる)。ある実施形態では、水溶性パウチ30は、ほぼ重なり合う関係にある2つ又はそれ以上の区画を有してよく、パウチ30は、上方及び下方のほぼ対向する外壁、パウチ30の側面を形成するスカート様の側壁、並びに異なる区画を互いに分離する1つ以上の内部隔壁を含む。パウチ30内に収容される組成物40が異なる形態又は構成成分を含む場合、組成物40の異なる構成成分は、水溶性パウチ30の異なる区画内に収容し得て、水溶性材料の障壁により互いに分離し得る。
【0048】
パウチ又は他の容器30は、洗濯洗剤組成物、自動食器洗い用洗剤組成物、硬質表面洗浄剤、染み除去剤、布地強化剤及び/又は柔軟仕上げ剤、並びに少量の水との接触により早過ぎるパウチの溶解、望ましくないパウチの漏れ及び/又は望ましくないパウチとパウチの固着を生み出す可能性がある新規製品形態として用いるための、1つ以上の組成物40の単位用量を含有してよい。パウチ30内の組成物40は、液体、リキゲル(liquigel)、ゲル、ペースト、クリーム、固体、顆粒、粉末等が挙げられるが、これらに限定されない任意の好適な形態であることができる。多区画パウチ30の異なる区画を用いて、適合性のない成分を分離してよい。例えば、漂白剤と酵素を別の区画内に分離することが望ましい場合がある。多区画の実施形態の他の形態としては、液体含有区画と組み合わせた粉末含有区画を挙げてよい。多区画水溶性パウチの追加の実施例は、米国特許第6,670,314 B2号(スミス(Smith)ら)に開示されている。
【実施例】
【0049】
済南華明マイクロビーズ社(Jinan Huaming Microbead Co. Ltd)(中国)により供給される、ガラス20〜40μサイズクリアマイクロビーズ(屈折率1.93ND)を水中に分散させ(15%ビーズ、85%水)、モノソールにより供給される標準的な76.2μ(3mil)ポリビニルアルコール系水溶性フィルム上に印刷する。
【0050】
フィルムが偶発的な水との接触に耐性があるかどうかを決定するために、非延伸フィルム上での液滴試験方法が開発されている。この試験では、フィルムを低張力下で10mmの編みフープ(knitting hoop)内に定置する。23℃の水0.2mLを、1mLのシリンジを使用してフィルムの中心部に定置する。水がフィルムに接触すると同時にストップウォッチを起動させ、有意なフィルムの変形が観察された時間を記録する。「変形する時間」と呼ばれるこの時間は、フィルム破損の前兆である。
【0051】
【表1】

【0052】
本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく限定されるものとして理解すべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することを意図している。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】コーティングされていない水溶性基材の断面を示す。
【図2】本発明による水溶性基材のある実施形態の断面を示す。
【図3】本発明による水溶性基材の別の実施形態の断面を示す。
【図4】本発明による水溶性基材の別の実施形態の断面を示す。
【図5】本発明による水溶性基材の別の実施形態の断面を示す。
【図6】本発明による水溶性基材を含む物品の断面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面(12)及び前記第1表面(12)に対向する第2表面(14)を含む水溶性基材(10)であって、前記基材(10)が前記第1及び前記第2表面(12、14)の少なくとも1つに適用されるガラスビーズ(20)を有し、前記ガラスビーズ(20)が1μm〜5,000μmの平均直径を有する、水溶性基材。
【請求項2】
前記ガラスビーズ(20)が1μm〜100μmの平均直径を有する、請求項1に記載の水溶性基材(10)。
【請求項3】
前記ガラスビーズ(20)が、前記水溶性基材(10)の表面の5%〜100%を被覆する、請求項1又は2に記載の水溶性基材(10)。
【請求項4】
前記ガラスビーズ(20)が中空である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)。
【請求項5】
前記ガラスビーズ(20)が、少なくとも1つの有益剤を含む少なくとも1つの組成物(35)を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)。
【請求項6】
前記組成物(35)が、前記ガラスビーズ(20)内部に収容されるか、前記ガラスビーズ(20)の外面に適用されるか、又はこれらの組み合わせである、請求項5に記載の水溶性基材(10)。
【請求項7】
少なくとも1つの有益剤を含む第1組成物(36)が前記ガラスビーズ(20)内部に収容され、別の有益剤を含む第2組成物(37)が前記ガラスビーズ(20)の外面に適用され、前記第1及び前記第2組成物(36、37)が異なる、請求項6に記載の水溶性基材(10)。
【請求項8】
前記ガラスビーズ(20)が着色される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)。
【請求項9】
前記組成物が着色される、請求項5〜8のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)。
【請求項10】
前記ガラスビーズ(20)が少なくとも部分的にシリコーンでコーティングされる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)。
【請求項11】
前記ガラスビーズ(20)が、少なくとも部分的に、光を反射又は回折する材料でコーティングされる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)。
【請求項12】
前記ガラスビーズ(20)が、前記少なくとも1つの前記第1及び前記第2表面(12、14)上に視覚効果を与える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)を含む物品(30)であって、それに適用される前記ガラスビーズ(20)を有する前記水溶性基材(10)の前記少なくとも1つの前記第1及び前記第2表面(12、14)が前記物品(30)の外面を形成する、物品(30)。
【請求項14】
前記水溶性基材(10)が、製品組成物を含む容器の少なくとも一部を形成する、請求項12に記載の物品(30)。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の水溶性基材(10)の製造方法であって、前記水溶性基材(10)が第1表面(12)及び前記第1表面(12)に対向する第2表面(14)を含み、前記方法が、ガラスビーズ(20)を前記第1及び前記第2表面(12、14)の少なくとも1つに適用する工程を含み、前記ガラスビーズ(20)が1μm〜5,000μmの平均直径を有する、方法。
【請求項16】
前記ガラスビーズ(20)が、ジェットを介して又は静電気的に前記水溶性基材(10)に適用される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ガラスビーズ(20)が分散物内に収容され、前記分散物が、スプレー、ナイフ、ロッド、キス、スロット、塗装、印刷、及びこれらの混合から選択されるコーティングプロセスを介して前記水溶性基材(10)に適用される、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−541086(P2009−541086A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516058(P2009−516058)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052655
【国際公開番号】WO2008/004201
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】