水フィルタの製造方法
【課題】流体からバクテリア及び/又はウイルスを除去することができる水フィルタ材料の製造方法を提供する。
【解決手段】水フィルタ材料を製造する方法であって、7より小さいゼロ電荷点を有する複数の炭素粒子を提供する工程であり、ここで前記複数のフィルタ粒子のメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計が、0.12mL/gよりも大きい当該工程と、前記複数の炭素粒子を変換剤にさらす工程と、前記さらし工程後に、前記複数の炭素粒子を炉内で加熱する工程と、水入口(24)及び水出口(26)を有するフィルタハウジング(22)に前記複数の粒子を挿入する工程とを含む方法とする。
【解決手段】水フィルタ材料を製造する方法であって、7より小さいゼロ電荷点を有する複数の炭素粒子を提供する工程であり、ここで前記複数のフィルタ粒子のメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計が、0.12mL/gよりも大きい当該工程と、前記複数の炭素粒子を変換剤にさらす工程と、前記さらし工程後に、前記複数の炭素粒子を炉内で加熱する工程と、水入口(24)及び水出口(26)を有するフィルタハウジング(22)に前記複数の粒子を挿入する工程とを含む方法とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水フィルタの製造方法の分野に関し、更に詳細には、活性炭粒子を含有する水フィルタの製造方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
水は、例えば、微粒子、有害化学物質、並びにバクテリア、寄生生物、原生動物、及びウイルスのような微生物有機体を含む、多くの異なる種類の汚染物質を含有していることがある。様々な環境において、水を使用することができるようになるまで、これらの汚染物質を取り除かなければならない。例えば、多くの医療用途及びある種の電子構成部品の製造においては、超純水が必要である。より一般的な例としては、水が飲料用、即ち消費に適したものとなるまでに、水からいかなる有害な汚染物質も取り除かなければならない。近代的な浄水手段にも関わらず、一般の人々は危険な状態にさらされており、特に乳幼児及び免疫不全患者はかなり危険な状態にさらされている。
【0003】
合衆国及び他の先進諸国では、地方自治体で処理された水には、通常、次の不純物、即ち浮遊固体、バクテリア、寄生生物、ウイルス、有機物、重金属、及び塩素の1つ以上が含まれている。水処理システムに関わる故障及び他の問題によって、時として、バクテリア及びウイルスの除去が不完全なものになる。他の諸国では、汚染された水への曝露に伴う命に関わる影響があり、それらの一部では、人工密度が増加し、水資源がますます不足しており、水処理施設がない。一般的に、飲用水源はヒト及び動物廃棄物の非常に近くにあるので、微生物による汚染は、重大な健康上の懸念事項である。水中に浮遊する微生物による汚染が原因で、毎年推定六百万人の人々が亡くなっており、その半分が5歳未満の子供である。
【0004】
1987年に、米国環境保護局(EPA)は、「微生物学的浄水器の試験に関する指針基準及びプロトコル(Guide Standard and Protocol for Testing Microbiological Water Purifiers)」を導入した。そのプロトコルは、公共又は私設給水における特定の健康関連汚染物質を減少させるように設計された飲用水処理システムの性能に関する最低限の条件を確立している。その条件とは、給水源からの廃液が、目標の99.99%(又は4logに相当)のウイルス除去及び99.9999%(又は6logに相当)のバクテリア除去を示すことである。EPAプロトコルの下では、ウイルスの場合の流入濃度(influent concentration)は1リットル当りのウイルス数が1×107であるべきであり、バクテリアの場合の流入濃度は1リットル当りのバクテリア数が1×108であるべきである。給水中には大腸菌(E. coli菌)が広く存在しており、その消費に伴う危険性のため、この微生物が大部分の研究において細菌として使用されている。同様に、MS−2バクテリオファージ(又は単にMS−2ファージ)は、通常、そのサイズ及び形状(即ち、約26nm、二十面体)が多くのウイルスと類似するので、ウイルス除去に関する代表的微生物として使用されている。従って、MS−2バクテリオファージを除去するフィルタの能力は、他のウイルスを除去する能力を表す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飲料水の質の改善におけるこれらの条件及び一般的関心のために、流体からバクテリア及び/又はウイルスを除去することができる水フィルタ材料の製造方法を提供することが継続して望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
水フィルタ材料の製造方法が提供される。この方法は、約7より小さいゼロ電荷点を有する複数の炭素粒子を提供する工程を含み、複数のフィルタ粒子のメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計は、約0.12mL/gよりも大きい。複数の炭素粒子は、変換剤にさらされ、さらし工程後に炉内で加熱される。
本明細書は、本発明を特に指摘し明確に請求する請求項をもって結論とするが、本発明は、添付の図面に即した以下の説明から一層理解されるものと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
I.(定義)
用語「フィルタ」及び「濾過」は、本明細書で使用する時、それぞれ、吸着及び/又は粒径排除のいずれかによる微生物除去(及び/又は他の汚染物質除去)に関連した構造及び機構を指す。
【0008】
用語「フィルタ材料」は、本明細書で使用する時、フィルタ粒子の集合体を指すことを意図している。フィルタ材料を形成するフィルタ粒子の集合体は、同質又は異質のいずれかであり得る。フィルタ粒子は、フィルタ材料内において均一に又は不均一に分散し得る(例えば、異なるフィルタ粒子の層)。また、フィルタ材料を形成するフィルタ粒子は、形状又はサイズが同じである必要はなく、緩い形態又は相互に連結した形態のいずれかで提供されてもよい。例えば、フィルタ材料は、メソ細孔と、活性炭繊維と結合した塩基性活性炭粒子とを含んでもよく、これらのフィルタ粒子は、一体構造を形成するために、ポリマーバインダー若しくは他の手段により、緩い結合で、又は部分的に若しくは全体的に接合されて提供されてもよい。
【0009】
表現「フィルタ粒子」は、本明細書で使用する時、フィルタ材料の少なくとも一部を形成するのに使用される個々の部材又は片を指すことを意図している。例えば、本明細書では、繊維、顆粒、ビーズ等をそれぞれフィルタ粒子とみなしている。更に、フィルタ粒子のサイズは、知覚できないフィルタ粒子(例えば、非常に微細な粉末)から知覚可能なフィルタ粒子まで様々であり得る。
【0010】
本明細書で使用する時、「微生物」、「微生物有機体」及び「病原体」という用語は、同義で使用されている。これらの用語は、バクテリア、ウイルス、寄生生物、原生動物、及び細菌として特徴付けることのできる様々な種類の微生物を指す。
【0011】
本明細書で使用する時、フィルタ粒子の「バクテリア除去指数(BRI:Bacteria Removal Index)」という表現は、次式で定義される。
BRI=100×[1−(平衡での大腸菌の検査液濃度)/(大腸菌の対照濃度)]
ここで、「平衡での大腸菌の検査液濃度」は、以下でより十分に論ずるように、総外表面積が1400cm2であり、ザウタ平均粒径が55μm未満である一定質量のフィルタ粒子を含有する検査液における平衡でのバクテリア濃度を指す。平衡は、2時間ずらした2つの時点で測定した大腸菌濃度が半桁以内まで変化せずに留まる時に達成される。「大腸菌の対照濃度」という表現は、対照検査液中の大腸菌の濃度を指し、これは、3.7×109CFU/Lに等しい。ザウタ平均粒径は、表面対容積比が粒子分布全体のそれに等しい粒子の直径である。用語「CFU/L」は、大腸菌の計数に通常使用されている用語である「1リットル当りのコロニー形成単位」を意味することに留意すべきである。BRI指数は、殺菌効果を付与する化学薬品を適用しないで測定される。フィルタ粒子の除去能力を報告するための同等の方法は、「バクテリア対数除去指数」(BLRI:Bacteria Log Removal Index)を用いることであり、これは、次式で定義される。
BLRI=−log[1−(BRI/100)]
BLRIは、単位「log」を有する(「log」は対数を表す)。例えば、99.99%に等しいBRIを有するフィルタ粒子は、4logに等しいBLRIを有する。BRI及びBLRI値を決定する試験手順については、後で記載する。
【0012】
本明細書で使用する時、フィルタ粒子の「ウイルス除去指数」(VRI:Virus Removal Index)という表現は、次式で定義される。
VRI=100×[1−(平衡でのMS−2ファージの検査液濃度)/(MS−2ファージの対照濃度)]
ここで、「平衡でのMS−2ファージの検査液濃度」は、以下でより十分に論ずるように、総外表面積が1400cm2であり、ザウタ平均直径が55μm未満である一定質量のフィルタ粒子を含有する検査液における平衡でのファージ濃度を指す。平衡は、2時間ずらした2つの時点で測定したMS−2濃度が半桁以内まで変化せずに留まる時に達成される。「MS−2ファージの対照濃度」という表現は、対照検査液中のMS−2ファージの濃度を指し、これは、2.07×109PFU/Lに等しい。用語「PFU/L」は、MS−2の計数に通常使用されている用語である「1リットル当りのプラーク形成単位」を意味することに留意すべきである。VRI指数は、殺ウイルス効果を付与する化学薬品を適用しないで測定される。フィルタ粒子の除去能力を報告するための同等の方法は、「ウイルス対数除去指数」(VLRI:Viruses Log Removal Index)を用いることであり、これは、次式で定義される。
VLRI=−log[100−(VRI/100)]
VLRIは、単位「log」を有する(「log」は対数である)。例えば、99.9%に等しいVRIを有するフィルタ粒子は、3logに等しいVLRIを有する。VRI及びVLRI値を決定する試験手順については、後で記載する。
【0013】
表現「総外表面積」は、本明細書で使用する時、以下でより十分に論ずるように、1つ以上のフィルタ粒子の幾何学的な総外表面積を指すことを意図している。
【0014】
用語「比外表面積」は、本明細書で使用する時、以下でより十分に論ずるように、フィルタ粒子の単位質量当りの総外表面積を指すことを意図している。
【0015】
用語「ミクロ細孔」は、本明細書で使用する時、2nm(又は20Åに相当)未満の幅又は直径を有する細孔を指すことを意図している。
【0016】
用語「メソ細孔」は、本明細書で使用する時、2nm〜50nm(又は20Å〜500Åに相当)の幅又は直径を有する細孔を指すことを意図している。
【0017】
用語「マクロ細孔」は、本明細書で使用する時、50nm(又は500Åに相当)より大きい幅又は直径を有する細孔を指すことを意図している。
【0018】
表現「総細孔容積」及びその派生語は、本明細書で使用する時、全ての細孔、即ち、ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔の容積を指すことを意図している。総細孔容積は、当該技術分野において周知の方法であるBET法(ASTM D4820−99標準)を用いて、0.9814の相対圧力で吸着された窒素の容積として計算される。
【0019】
表現「ミクロ細孔容積」及びその派生語は、本明細書で使用する時、全ミクロ細孔の容積を指すことを意図している。ミクロ細孔容積は、当該技術分野において周知の方法であるBET法(ASTM D4820−99標準)を用いて、0.15の相対圧力で吸着された窒素の容積から計算される。
【0020】
表現「メソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計」及びその派生語は、本明細書で使用する時、全てのメソ細孔及びマクロ細孔の容積を指すことを意図している。メソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計は、総細孔容積とミクロ細孔容積との差に等しく、又は同等に、当該技術分野において周知の方法であるBET法(ASTM D4820−99標準)を用いて、0.9814と0.15の相対圧力で吸着された窒素の容積の差から計算される。
【0021】
表現「メソ細孔範囲における孔径分布」は、本明細書で使用する時、当該技術分野において周知の方法であるバレット・ジョイナー及びハレンダ(BJH:Barrett, Joyner, and Halenda)法により計算した時の孔径の分布を指すことを意図している。
【0022】
用語「炭化」及びその派生語は、本明細書で使用する時、炭素質物質中の非炭素種が減少するプロセスを指すことを意図している。
【0023】
用語「活性化」及びその派生語は、本明細書で使用する時、炭化した物質を更に多孔質にするプロセスを指すことを意図している。
【0024】
用語「活性」粒子及びその派生語は、本明細書で使用する時、活性化プロセスに供された粒子を指すことを意図している。
【0025】
表現「ゼロ電荷点」は、本明細書で使用する時、炭素粒子の全表面が負に帯電されるよりも上のpHを指すことを意図している。ゼロ電荷点を決定する周知の試験手順については、後で記載する。
【0026】
用語「塩基性」は、本明細書で使用する時、7よりも大きいゼロ電荷点を有するフィルタ粒子を指すことを意図している。
【0027】
用語「酸性」は、本明細書で使用する時、7よりも小さいゼロ電荷点を有するフィルタ粒子を指すことを意図している。
【0028】
表現「メソ細孔性且つ塩基性活性炭フィルタ粒子」は、本明細書で使用する時、複数のメソ細孔及を有すると共に、7よりも大きいゼロ電荷点を有する活性炭フィルタ粒子を指すことを意図している。
【0029】
表現「メソ細孔性且つ酸性活性炭フィルタ粒子」は、本明細書で使用する時、複数のメソ細孔及を有すると共に、7よりも小さいゼロ電荷点を有する活性炭フィルタ粒子を指すことを意図している。
【0030】
表現「変換剤」は、本明細書で使用する時、材料内の酸素含有官能基の数を低減させ、且つ/又は窒素含有官能基の数を増加させる薬剤を指す。
【0031】
II.(メソ細孔性且つ塩基性活性炭フィルタ粒子)
意外にも、メソ細孔性且つ塩基性である活性炭粒子は、メソ細孔性であるが酸性である活性炭粒子により吸着される微生物の数と比べて、より多くの微生物を吸着することが分かった。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、本出願人は、1)多数のメソ細孔及び/又はマクロ細孔が、病原体、それらの線毛、並びに病原体の外膜、キャプシド及びエンベロープを構成する表面ポリマー類(例えば、タンパク質、リポ多糖類、オリゴ糖類及び多糖類)に対してより好都合な吸着部位を提供すること、及び2)塩基性活性炭表面が、酸性炭素表面上の微生物数と比べてより多くの微生物を誘引するのに必要なタイプの官能基を含有することを仮定している。このメソ細孔性且つ塩基性炭素表面上への吸着の増大は、線毛及び表面ポリマーの典型的なサイズが、メソ細孔及びマクロ細孔のサイズと類似するという事実、並びに、塩基性炭素表面が、典型的には負に帯電した微生物及び官能基をそれらの表面上に誘引するという事実に起因する。
【0032】
フィルタ粒子は、様々な形状及びサイズで提供することができる。例えば、フィルタ粒子は、顆粒、繊維、及びビーズのような単純な形態で提供することができる。フィルタ粒子は、球形、多面形、円筒形、並びに他の対称、非対称、及び不規則な形状で提供することができる。更に、フィルタ粒子はまた、上述の単純な形態から形成されてもされなくてもよいウェブ、スクリーン、メッシュ、不織布、織布及び接合ブロック等の複雑な形態に形成され得る。
【0033】
形状と同様に、フィルタ粒子のサイズも様々なものにすることができ、単一フィルタ内で使用されるフィルタ粒子間でサイズを必ずしも一様にする必要はない。実際、単一フィルタに異なるサイズを有するフィルタ粒子を提供することが望ましいことがある。一般に、フィルタ粒子のサイズは、約0.1μm〜約10mm、好ましくは約0.2μm〜約5mm、より好ましくは約0.4μm〜約1mm、最も好ましくは約1μm〜約500μmである。球形及び円筒形粒子(例えば、繊維、ビーズ等)の場合、上述の寸法はフィルタ粒子の直径を指す。実質的に異なる形状を有するメソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子の場合、上述の寸法は、最も大きな寸法(例えば、長さ、幅又は高さ)を指す。
【0034】
フィルタ粒子は、炭化及び活性化中にメソ細孔及びマクロ細孔を生成するいかなる前駆物質からも作ることができる。例えば、制限するつもりではないが、フィルタ粒子は、木材系活性炭粒子、石炭系活性炭粒子、泥炭系活性炭粒子、ピッチ系活性炭粒子、タール系活性炭粒子及びこれらの混合物であり得る。
【0035】
活性炭は、酸性又は塩基性の特性を呈し得る。酸性の特性は、例えば、制限するつもりではないが、フェノール、カルボキシル、ラクトン、ヒドロキノン、無水物及びケトン等の酸素含有官能性物質(functionalities)又は官能基に関連している。塩基性の特性は、ピロン、クロメン、エーテル、カルボニル並びに基礎面π電子等の官能性物質に関連している。活性炭粒子の酸性又は塩基性は、「ゼロ電荷点」技法(ニューカム(Newcombe, G.)ら、「コロイド及び表面A:物理化学的及び工学的局面(Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects)」、78、65〜71(1993))により決定され、この文献の内容を参考として本明細書に組み入れる。その技法は、以下の第IV章に更に記載されている。本発明におけるフィルタ粒子は、7よりも小さい「ゼロ電荷点」を有する。
【0036】
炭化及び活性化の後、酸性且つメソ細孔性活性炭粒子を炉内処理に供することにより塩基性にすることができる。処理条件としては、温度、時間、雰囲気及び変換剤へのさらしが挙げられる。変換剤は、液体又は気体前処理の形態で提供することができ、且つ/又は炉内雰囲気の一部を形成することができる。例えば、変換剤は、制限するつもりではないが、尿素、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピロリジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、尿素、アセトニトリル及びジメチルホルムアミド等の窒素含有液体であり得る。フィルタ粒子を炉内に置く前に、窒素含有液体をフィルタ粒子上にコーティングするか、又はフィルタ粒子に染み込ませることができる。炉内雰囲気はまた、窒素、不活性ガス、還元ガス又は上述の変換剤を含有してもよい。
【0037】
炭素粒子がいかなる貴金属触媒(例えば、白金、金、パラジウム)をも含有しない時の処理温度は、約600℃〜約1,200℃であり、好ましくは約700℃〜約1,100℃であり、より好ましくは約800℃〜約1,050℃であり、最も好ましくは約900℃〜約1,000℃である。炭素粒子が貴金属触媒を含有する場合、処理温度は、約100℃〜約800℃であり、好ましくは約200℃〜約700℃であり、より好ましくは約300℃〜約600℃であり、最も好ましくは約350℃〜約550℃である。処理時間は、2分〜10時間、好ましくは約5分〜約8時間、より好ましくは約10分〜約7時間、及び最も好ましくは約20分〜約6時間である。処理雰囲気は、水素、一酸化炭素又はアンモニアガスを含む。気体流速は、約0.25標準L/h.g(即ち、1時間及び炭素1グラム当りの標準リットル;0.009標準ft3/h.g)〜約60標準L/h.g(2.1標準ft3/h.g)、好ましくは約0.5標準L/h.g(0.018標準ft3/h.g)〜約30標準L/h.g(1.06標準ft3/h.g)、より好ましくは約1.0標準L/h.g(0.035標準ft3/h.g)〜約20標準L/h.g(0.7標準ft3/h.g)、及び最も好ましくは約5標準L/h.g(0.18標準ft3/h.g)〜約10標準L/h.g(0.35標準ft3/h.g)である。理解されるように、塩基性且つメソ細孔性活性炭フィルタ材料を製造する他の方法を使用することができる。
【0038】
ブルナウア・エメット及びテラー(BET:Brunauer, Emmett and Teller)比表面積並びにバレット・ジョイナー及びハレンダ(BJH:Barrett, Joyner, and Halenda)孔径分布は、メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子の細孔構造を特徴付けるのに使用できる。好ましくは、フィルタ粒子のBET比表面積は、約500m2/g〜約3,000m2/g、好ましくは約600m2/g〜約2,800m2/g、より好ましくは約800m2/g〜約2,500m2/g、及び最も好ましくは約1,000m2/g〜約2,000m2/gである。図1を参照すると、BET法を使用した、メソ細孔性且つ塩基性木材系活性炭(TA4−CA−10)及びメソ細孔性且つ酸性木材系活性炭(CA−10)の典型的な窒素吸着等温線が例証されている。
【0039】
メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子の総細孔容積は、BET窒素吸着中に測定され、0.9814の相対圧力P/P0で吸着された窒素の容積として計算される。より詳細には、当該技術分野で周知のように、総細孔容積は、相対圧力0.9814での「mL(STP)/gで吸着される窒素の容積」と、STP(標準温度及び圧力)での窒素の容積を液体に換算する換算率0.00156とを乗算することにより計算される。メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子の総細孔容積は、約0.4mL/gよりも大きいか、若しくは約0.7mL/gよりも大きいか、若しくは1.3mL/gよりも大きいか、若しくは2mL/gよりも大きく、且つ/又は約3mL/g未満、若しくは約2.6mL/g未満、若しくは約2mL/g未満、若しくは約1.5mL/g未満である。
【0040】
メソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計は、BET窒素吸着時に測定され、総細孔容積と、P/P0が0.15の時に吸着された窒素の容積との差として計算される。メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子のメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計は、約0.12mL/gよりも大きいか、若しくは約0.2mL/gよりも大きいか、若しくは約0.4mL/gよりも大きいか、若しくは約0.6mL/gよりも大きいか、若しくは約0.75mL/gよりも大きく、且つ/又は約2.2mL/g未満、若しくは約2mL/g未満、若しくは約1.5mL/g未満、若しくは約1.2mL/g未満、若しくは約1mL/g未満である。
【0041】
BJH孔径分布は、米国化学会ジャーナル(J. Amer. Chem. Soc.)、73、373〜80(1951)、及び、グレッグ及びシング(Gregg and Sing)の「吸着、表面積及び多孔性(ADSORPTION, SURFACE AREA, AND POROSITY)」、第2版、アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク(1982)に記載されているバレット・ジョイナー及びハレンダ(BJH:Barrett, Joyner, and Halenda)法を用いて測定することができ、これら文献の内容を参考として本明細書に組み入れる。1つの実施形態において、細孔容積は、約4nm〜約6nmの孔径の場合、少なくとも約0.01mL/gである。代替実施形態において、細孔容積は、約4nm〜約6nmの孔径の場合、約0.01mL/g〜約0.04mL/gである。更に別の実施形態において、細孔容積は、約4nm〜約6nmの孔径の場合、少なくとも約0.03mL/gであるか、又は約0.03mL/g〜約0.06mL/gである。好ましい実施形態において、細孔容積は、約4nm〜約6nmの孔径の場合、約0.015mL/g〜約0.06mL/gである。図2は、BJH法によって計算された時のメソ細孔性且つ塩基性木材系活性炭(TA4−CA−10)及びメソ細孔性且つ酸性木材系活性炭(CA−10)の典型的なメソ細孔容積分布を例証している。
【0042】
総細孔容積に対するメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計の比は、約0.3よりも大きく、好ましくは約0.4〜約0.9、より好ましくは約0.5〜約0.8、及び最も好ましくは約0.6〜約0.7である。
【0043】
総外表面積は、比外表面積とフィルタ粒子の質量とを乗算することにより計算され、フィルタ粒子の寸法に基づく。例えば、単分散(即ち、一様な直径を有する)繊維の比外表面積は、繊維の面積(繊維の末端部における2つの断面積は無視する)と繊維の重量との比率として計算される。従って、繊維の比外表面積は、
【0044】
【数1】
【0045】
に等しく、ここで
【0046】
【数2】
【0047】
は繊維の直径で、
【0048】
【数3】
【0049】
は繊維の密度である。単分散球形粒子の場合、同様の計算によって
【0050】
【数4】
【0051】
に等しい比外表面積が得られ、ここで
【0052】
【数5】
【0053】
は粒子の直径で、
【0054】
【数6】
【0055】
は粒子の密度である。多分散繊維である球形又は不規則粒子の場合、比外表面積は、
【0056】
【数7】
【0057】
で
【0058】
【数8】
【0059】
を置き換えた上述の式とそれぞれ同じ式を用いて計算され、ここで、
【0060】
【数9】
【0061】
はザウタ平均粒径で、これは表面積と容積との比が粒子分布全体のものと等しい粒子の直径である。当該技術分野において周知のザウタ平均粒径の測定方法は、例えばマルヴァーン(Malvern)装置(マルヴァーンインスツルメンツ社(Malvern Instruments Ltd.)(英国マルヴァーン))を用いたレーザー回折によるものである。フィルタ粒子の比外表面積は、約10cm2/g〜約100,000cm2/g、好ましくは約50cm2/g〜約50,000cm2/g、より好ましくは約100cm2/g〜10,000cm2/g、及び最も好ましくは約500cm2/g〜約5,000cm2/gである。
【0062】
本明細書で述べるバッチ試験手順に従って測定された時のメソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子のBRIは、約99%よりも大きく、好ましくは約99.9%よりも大きく、より好ましくは約99.99%よりも大きく、最も好ましくは約99.999%よりも大きい。同等に、メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子のBLRIは、約2logよりも大きく、好ましくは約3logよりも大きく、より好ましくは約4logよりも大きく、最も好ましくは約5logよりも大きい。本明細書で述べるバッチ試験手順に従って測定された時のメソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子のVRIは、約90%よりも大きく、好ましくは約95%よりも大きく、より好ましくは約99%よりも大きく、最も好ましくは約99.9%よりも大きい。同等に、メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子のVLRIは、約1logよりも大きく、好ましくは約1.3logよりも大きく、より好ましくは約2logよりも大きく、最も好ましくは約3logよりも大きい。
【0063】
本発明の1つの好ましい実施形態において、フィルタ粒子は、木材系活性炭粒子であるメソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子を含む。これらの粒子は、約1,000m2/g〜約2,000m2/gのBET比表面積、約0.8mL/g〜約2mL/gの総細孔容積及び約0.4mL/g〜約1.5mL/gのメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計を有する。
【0064】
本発明の別の好ましい実施形態において、フィルタ粒子は、はじめは酸性であって、アンモニア雰囲気中での処理により塩基性にされたメソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子を含む。これらの粒子は、木材系活性炭粒子である。処理温度は、約925℃〜1,000℃であり、アンモニア流速は、約1標準L/h.g〜約20標準L/h.gであり、処理時間は、約10分〜7時間である。これらの粒子は、約800m2/g〜約2,500m2/gのBET比表面積、約0.7mL/g〜約2.5mL/gの総細孔容積及び約0.21mL/g〜約1.7mL/gのメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計を有する。塩基性活性炭に変換される酸性活性炭の非限定例については、以下に述べる。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
(メソ細孔性且つ酸性活性炭のメソ細孔性且つ塩基性活性炭への変換)
ペンシルバニア州アードモア(Ardmore, PA)のカーボケム社(Carbochem, Inc.)からの2kgのカーボケム(CARBOCHEM)(登録商標)CA−10メソ細孔性且つ酸性木材系活性炭粒子を、ロードアイランド州クランストン(Cranston, RI)のC.I.ヘイズ社(C.I. Hayes, Inc.)製BAC−M型の炉のベルト上に置く。炉内温度を950℃に設定し、処理温度は4時間、雰囲気は12,800標準L/h(即ち、450標準ft3/h、又は同等に、6.4標準L/h.g)の体積流量で流動する解離アンモニアである。処理済み炭素粒子を、TA4−CA−10と称し、それらのBET等温線、メソ細孔容積分布及びゼロ電荷点分析を、それぞれ、図1、図2及び図3において例証する。
【0066】
III.(本発明のフィルタ)
ここで、図4を参照すると、本発明に従って作られる代表的なフィルタについて記載される。フィルタ20は、入口24と出口26とを有する円筒形の形態のハウジング22を含む。ハウジング22は、当該技術分野において既知であるように、フィルタの意図される用途に応じて、多様な形態、形状、サイズ及び構成で設けることができる。例えば、フィルタを軸流フィルタにすることができ、この場合、液体がハウジングの軸に沿って流れるように、入口及び出口が配置される。あるいは、フィルタを径流フィルタにすることもでき、この場合、流体(例えば、液体、気体、又はこれらの混合物)がハウジングの半径に沿って流れるように、入口及び出口が配置される。更に、フィルタが軸流及び径流の両方を含むこともできる。また、ハウジングは、本発明の範囲から逸脱することなく、別の構造の一部分として形成されてもよい。本発明のフィルタは水と共に使用するのに特に適しているが、他の流体(例えば、空気、気体、及び空気と液体の混合物)を使用できることが理解される。従って、フィルタ20は、一般的な液体フィルタ又は気体フィルタを表すことを意図している。入口24及び出口26のサイズ、形状、間隔、配列、及び位置は、当該技術分野において公知のように、流速及びフィルタ20の目的用途に適応するように選択することができる。好ましくは、フィルタ20は、住宅用又は商業用飲料水用途における使用のために構成される。本発明との使用に適するフィルタ構成、飲料水装置、消費者器具、及び他の水濾過装置の例は、米国特許第5,527,451号、同第5,536,394号、同第5,709,794号、同第5,882,507号、同第6,103,114号、同第4,969,996号、同第5,431,813号、同第6,214,224号、同第5,957,034号、同第6,145,670号、同第6,120,685号、及び同第6,241,899号に開示されており、これら特許文献の内容を参考として本明細書に組み入れる。飲料水用途の場合、フィルタ20は、好ましくは、約8L/分未満、又は約6L/分未満、又は約2L/分〜4L/分の流速に適応するように構成され、フィルタは、約2kg未満のフィルタ材料、又は1kg未満のフィルタ材料、又は0.5kg未満のフィルタ材料を含有する。またフィルタ20はフィルタ材料28も含んでおり、フィルタ材料28には1種以上のフィルタ粒子(例えば、繊維、顆粒等)が含まれる。1つ以上のフィルタ粒子は、メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子であり得ると共に、先に論じた特質を有する。フィルタ材料はまた、活性炭粉末、活性炭顆粒、活性炭繊維、ゼオライト、及びこれらの混合物等の他の材料から形成された粒子を含むこともできる。先に論じたように、フィルタ材料は、緩い形態又は相互に連結した形態(例えば、一体構造を形成するために、ポリマーバインダー又は他の手段により部分的に又は全体的に接合された)のいずれかで提供することができる。
【0067】
IV.(試験手順)
以下の試験手順は、本明細書で論じたゼロ電荷点、BET、BRI/BLRI及びVRI/VLRI値を計算するのに使用される。BRI/BLRI値及びVRI/VLRI値の測定は水性媒質に関するものであるが、これは本発明のフィルタ材料の最終用途を制限しようとするものではなく、むしろ、BRI/BLRI値及びVRI/VLRI値が水性媒質に関して計算されていても、フィルタ材料を先に論じたように他の流体と共に最終的に使用することができる。更に、試験手順の使用について例証するために以下で選択されるフィルタ材料は、本発明のフィルタ材料の製造及び/又は組成の範囲を制限しようとするものでもないし、試験手順を用いて本発明のどのフィルタ材料が評価できるかということを制限しようとするものでもない。
【0068】
(BET試験手順)
BET比表面積及び細孔容積分布を、ASTM D 4820−99に記載されるマルチポイント窒素吸着による技法のような窒素吸着技法を用いて、77Kで、フロリダ州マイアミ(Miami, FL)のコールター社(Coulter Corp.)により製造されたコールター(Coulter)SA3100シリーズの表面積及び孔径分析器(Surface Area and Pore Size Analyzer)により測定する。この方法はまた、ミクロ細孔容積、メソ細孔容積、及びマクロ細孔容積も提供することができる。実施例1のTA4−CA−10フィルタ粒子の場合、BET面積は、1,038m2/gであり、ミクロ細孔容積は0.43mL/gであり、メソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計は0.48mL/gである。出発材料CA−10の各値は、1,309m2/g、0.54mL/g及び0.67mL/gである。実施例1のフィルタ材料に関する典型的なBET窒素等温線及びメソ細孔容積分布を、図1及び図2にそれぞれ例証する。理解されるように、BET測定の代わりに、当該技術分野において既知である他の計器類を使用することができる。
【0069】
(ゼロ電荷点試験手順)
試薬等級KCl及びアルゴンガス下で新たに蒸留された水から0.010M KCl水溶液を調製する。蒸留のために使用される水は、逐次逆浸透及びイオン交換処理により脱イオン化される。体積25.0mLのKCl水溶液を、それぞれ24/40のすりガラス栓が取り付けられた6つの125mLフラスコに移す。初期pHが2〜12の範囲となるように、マイクロリットル量の標準化されたHCl又はNaOH水溶液を各フラスコに加える。次いで、マサチューセッツ州ビバリー(Beverly, MA)のサーモオリオン社(Thermo Orion Inc.)製のオリオン(Orion)モデル9107BN 三極管結合pH/ATC電極を備えたオリオン(Orion)モデル420A pHメーターを用いて各フラスコのpHを記録し、このpHを「初期pH」と呼ぶ。0.0750±0.0010gの活性炭粒子を6つの各フラスコに加え、水性懸濁液を攪拌し(約150rpm)、「最終pH」を記録する前に室温で24時間栓をする。図3は、CA−10及びTA4−CA−10活性炭材料を用いて行った実験の初期pH値及び最終pH値を示す。CA−10及びTA4−CA−10のゼロ電荷点は、それぞれ約4.7及び10である。理解されるように、この試験手順の代わりに、当該技術分野において既知である他の計器類を使用することができる。
【0070】
(BRI/BLRI試験手順)
2つ以上のパイレックス(Pyrex)(登録商標)ガラスビーカー(被試験材料の数に応じて)と共に、バージニア州リッチモンド(Richmomd, VA)のフィップスアンドバード社(Phipps & Bird, Inc.)製のPB−900(登録商標)プログラム可能ジャーテスター(Programmable JarTester)を使用する。ビーカーの直径は11.4cm(4.5インチ)で、高さは15.3cm(6インチ)である。各ビーカーは、大腸菌微生物で汚染された500mLの脱塩素化した地方自治体供給の水道水及び60rpmで回転する攪拌器を含有する。攪拌器は、長さ7.6cm(3インチ)、高さ2.54cm(1インチ)、厚さ0.24cm(3/32インチ)のステンレス鋼パドルである。攪拌器は、ビーカーの底部から0.5cm(3/16インチ)のところに置かれる。第一ビーカーにはフィルタ材料を入れずに対照として使用し、他のビーカーには、ビーカー内の材料の総外形表面積が1400cm2であるように、ザウタ平均粒径が55μm未満である十分な量のフィルタ材料を入れる。このザウタ平均粒径は、a)広い粒径分布及びより高いザウタ平均粒径を有する試料をふるい分けするか、又はb)フィルタ材料のサイズを小さくする(例えば、フィルタ材料が55μmよりも大きいか、又は一体化若しくは接合した形態である場合)ことにより達成される。例えば、制限するつもりはないが、サイズ縮小技法は、破砕、粉砕及び微粉砕である。サイズ縮小に使用する典型的な装置としては、ジョークラッシャー、ジャイレートリークラッシャー、ロールクラッシャー、シュレッダー、強力型インパクトミル、メディアミル、及び遠心ジェット、対向ジェット又はアンビル付きジェット等の流体エネルギーミルが挙げられる。サイズ縮小は、緩い又は接合したフィルタ粒子に対して使用することができる。この試験を行う前に、フィルタ粒子又はフィルタ材料上の殺菌性コーティングを取り除くべきである。あるいは、この試験のために、コーティングしていないフィルタ粒子を代わりに使用することができる。
【0071】
フィルタ粒子を含有するビーカー内の平衡が達成されるまで、フィルタ粒子をビーカーに挿入後の様々な時間での評価分析のために、各ビーカーからそれぞれ体積5mLの2つの水の試料を収集する。典型的なサンプル時間は、0、2、4及び6時間である。当該技術分野において公知のように、その他の装置を代わりに使用することができる。
【0072】
使用される大腸菌は、ATCC番号25922(アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(メリーランド州ロックビル))である。対照ビーカー内の目標大腸菌濃度を、3.7×109に設定する。大腸菌の評価分析は、米国公衆保健協会(APHA:American Public Health Association)(ワシントンDC)発行の「水及び排水の検査のための標準的方法(Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater)」、第20版の9222番の方法に従って膜フィルタ技術を用いて実施することができる。検出限界(LOD)は、1×103CFU/Lである。
【0073】
実施例1のフィルタ材料に関する代表的なBRI/BLRIの結果を、図5に示す。CA−10メソ細孔性且つ酸性活性炭材料の量は、0.75gであり、TA40−CA−10メソ細孔性且つ塩基性活性炭材料の量は、0.89gである。両方の量は、1,400cm2の外表面積に対応する。対照ビーカー内の大腸菌濃度は、3.7×109CFU/Lである。CA−10及びTA4−CA−10試料が入っているビーカー内の大腸菌濃度は、6時間で平衡に達し、それらの値は、それぞれ、2.1×106CFU/L及び1.5×104CFU/Lである。次いで、それぞれのBRIは99.94%及び99.9996%と計算され、それぞれのBLRIは3.2log及び5.4logと計算される。
【0074】
(VRI/VLRI試験手順)
試験装置及び手順は、BRI/BLRI手順のものと同じである。第一ビーカーにはフィルタ材料を入れずに対照として使用し、他のビーカーには、ビーカー内の材料の総外形表面積が1400cm2であるように、ザウタ平均粒径が55μm未満である十分な量のフィルタ材料を入れる。この試験を行う前に、フィルタ粒子又はフィルタ材料上の殺菌性コーティングを取り除くべきである。あるいは、この試験のために、コーティングしていないフィルタ粒子又はフィルタ材料を代わりに使用することができる。
【0075】
使用されるMS−2バクテリオファージは、メリーランド州ロックビル(Rockville, MD)のアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)のATCC番号15597Bである。対照ビーカー内の目標MS−2濃度を、2.07×109PFU/Lに設定する。C.J.ハースト(C.J. Hurst)、Appl.Environ.Microbiol.、60(9)、3462(1994)による手順に従って、MS−2を評価分析することができる。当該技術分野において公知のその他の評価分析法を代わりに使用することができる。検出限界(LOD)は、1×103PFU/Lである。
【0076】
実施例1のフィルタ材料に関する代表的なVRI/VLRIの結果を、図6に示す。CA−10メソ細孔性且つ酸性活性炭材料の量は、0.75gであり、TA40−CA−10メソ細孔性且つ塩基性活性炭材料の量は、0.89gである。両方の量は、1,400cm2の外表面積に対応する。対照ビーカー内のMS−2濃度は、2.07×109CFU/Lである。CA−10及びTA4−CA−10試料が入っているビーカー内のMS−2濃度は、6時間で平衡に達し、それらの値は、それぞれ、1.3×106PFU/L及び5.7×104PFU/Lである。次いで、それぞれのVRIは99.94%及び99.997%と計算され、それぞれのVLRIは3.2log及び4.5logと計算される。
【0077】
本明細書に記載の実施形態は、本発明の原理及びその実際的応用の最良の説明を提供し、それによって当業者が本発明を様々な実施形態で、また企図される特定の用途に適するように様々な修正を行って利用できるようにするために、選択され説明された。このような全ての修正及び変形は、適正に、法的に、公正に権利を与えられる範囲に従って解釈される時、添付の請求項によって決定されるように本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】メソ細孔性且つ酸性活性炭粒子CA−10及びメソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子TA4−CA−10のBET窒素吸着等温線である。
【図2】図1の粒子のメソ細孔容積分布である。
【図3】図1の粒子のゼロ電荷点グラフである。
【図4】本発明によって作られた軸流フィルタの側断面図である。
【図5】図1のフィルタ粒子に関して大腸菌検査液濃度を時間の関数として示す。
【図6】図1のフィルタ粒子に関してMS−2検査液濃度を時間の関数として示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水フィルタの製造方法の分野に関し、更に詳細には、活性炭粒子を含有する水フィルタの製造方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
水は、例えば、微粒子、有害化学物質、並びにバクテリア、寄生生物、原生動物、及びウイルスのような微生物有機体を含む、多くの異なる種類の汚染物質を含有していることがある。様々な環境において、水を使用することができるようになるまで、これらの汚染物質を取り除かなければならない。例えば、多くの医療用途及びある種の電子構成部品の製造においては、超純水が必要である。より一般的な例としては、水が飲料用、即ち消費に適したものとなるまでに、水からいかなる有害な汚染物質も取り除かなければならない。近代的な浄水手段にも関わらず、一般の人々は危険な状態にさらされており、特に乳幼児及び免疫不全患者はかなり危険な状態にさらされている。
【0003】
合衆国及び他の先進諸国では、地方自治体で処理された水には、通常、次の不純物、即ち浮遊固体、バクテリア、寄生生物、ウイルス、有機物、重金属、及び塩素の1つ以上が含まれている。水処理システムに関わる故障及び他の問題によって、時として、バクテリア及びウイルスの除去が不完全なものになる。他の諸国では、汚染された水への曝露に伴う命に関わる影響があり、それらの一部では、人工密度が増加し、水資源がますます不足しており、水処理施設がない。一般的に、飲用水源はヒト及び動物廃棄物の非常に近くにあるので、微生物による汚染は、重大な健康上の懸念事項である。水中に浮遊する微生物による汚染が原因で、毎年推定六百万人の人々が亡くなっており、その半分が5歳未満の子供である。
【0004】
1987年に、米国環境保護局(EPA)は、「微生物学的浄水器の試験に関する指針基準及びプロトコル(Guide Standard and Protocol for Testing Microbiological Water Purifiers)」を導入した。そのプロトコルは、公共又は私設給水における特定の健康関連汚染物質を減少させるように設計された飲用水処理システムの性能に関する最低限の条件を確立している。その条件とは、給水源からの廃液が、目標の99.99%(又は4logに相当)のウイルス除去及び99.9999%(又は6logに相当)のバクテリア除去を示すことである。EPAプロトコルの下では、ウイルスの場合の流入濃度(influent concentration)は1リットル当りのウイルス数が1×107であるべきであり、バクテリアの場合の流入濃度は1リットル当りのバクテリア数が1×108であるべきである。給水中には大腸菌(E. coli菌)が広く存在しており、その消費に伴う危険性のため、この微生物が大部分の研究において細菌として使用されている。同様に、MS−2バクテリオファージ(又は単にMS−2ファージ)は、通常、そのサイズ及び形状(即ち、約26nm、二十面体)が多くのウイルスと類似するので、ウイルス除去に関する代表的微生物として使用されている。従って、MS−2バクテリオファージを除去するフィルタの能力は、他のウイルスを除去する能力を表す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飲料水の質の改善におけるこれらの条件及び一般的関心のために、流体からバクテリア及び/又はウイルスを除去することができる水フィルタ材料の製造方法を提供することが継続して望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
水フィルタ材料の製造方法が提供される。この方法は、約7より小さいゼロ電荷点を有する複数の炭素粒子を提供する工程を含み、複数のフィルタ粒子のメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計は、約0.12mL/gよりも大きい。複数の炭素粒子は、変換剤にさらされ、さらし工程後に炉内で加熱される。
本明細書は、本発明を特に指摘し明確に請求する請求項をもって結論とするが、本発明は、添付の図面に即した以下の説明から一層理解されるものと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
I.(定義)
用語「フィルタ」及び「濾過」は、本明細書で使用する時、それぞれ、吸着及び/又は粒径排除のいずれかによる微生物除去(及び/又は他の汚染物質除去)に関連した構造及び機構を指す。
【0008】
用語「フィルタ材料」は、本明細書で使用する時、フィルタ粒子の集合体を指すことを意図している。フィルタ材料を形成するフィルタ粒子の集合体は、同質又は異質のいずれかであり得る。フィルタ粒子は、フィルタ材料内において均一に又は不均一に分散し得る(例えば、異なるフィルタ粒子の層)。また、フィルタ材料を形成するフィルタ粒子は、形状又はサイズが同じである必要はなく、緩い形態又は相互に連結した形態のいずれかで提供されてもよい。例えば、フィルタ材料は、メソ細孔と、活性炭繊維と結合した塩基性活性炭粒子とを含んでもよく、これらのフィルタ粒子は、一体構造を形成するために、ポリマーバインダー若しくは他の手段により、緩い結合で、又は部分的に若しくは全体的に接合されて提供されてもよい。
【0009】
表現「フィルタ粒子」は、本明細書で使用する時、フィルタ材料の少なくとも一部を形成するのに使用される個々の部材又は片を指すことを意図している。例えば、本明細書では、繊維、顆粒、ビーズ等をそれぞれフィルタ粒子とみなしている。更に、フィルタ粒子のサイズは、知覚できないフィルタ粒子(例えば、非常に微細な粉末)から知覚可能なフィルタ粒子まで様々であり得る。
【0010】
本明細書で使用する時、「微生物」、「微生物有機体」及び「病原体」という用語は、同義で使用されている。これらの用語は、バクテリア、ウイルス、寄生生物、原生動物、及び細菌として特徴付けることのできる様々な種類の微生物を指す。
【0011】
本明細書で使用する時、フィルタ粒子の「バクテリア除去指数(BRI:Bacteria Removal Index)」という表現は、次式で定義される。
BRI=100×[1−(平衡での大腸菌の検査液濃度)/(大腸菌の対照濃度)]
ここで、「平衡での大腸菌の検査液濃度」は、以下でより十分に論ずるように、総外表面積が1400cm2であり、ザウタ平均粒径が55μm未満である一定質量のフィルタ粒子を含有する検査液における平衡でのバクテリア濃度を指す。平衡は、2時間ずらした2つの時点で測定した大腸菌濃度が半桁以内まで変化せずに留まる時に達成される。「大腸菌の対照濃度」という表現は、対照検査液中の大腸菌の濃度を指し、これは、3.7×109CFU/Lに等しい。ザウタ平均粒径は、表面対容積比が粒子分布全体のそれに等しい粒子の直径である。用語「CFU/L」は、大腸菌の計数に通常使用されている用語である「1リットル当りのコロニー形成単位」を意味することに留意すべきである。BRI指数は、殺菌効果を付与する化学薬品を適用しないで測定される。フィルタ粒子の除去能力を報告するための同等の方法は、「バクテリア対数除去指数」(BLRI:Bacteria Log Removal Index)を用いることであり、これは、次式で定義される。
BLRI=−log[1−(BRI/100)]
BLRIは、単位「log」を有する(「log」は対数を表す)。例えば、99.99%に等しいBRIを有するフィルタ粒子は、4logに等しいBLRIを有する。BRI及びBLRI値を決定する試験手順については、後で記載する。
【0012】
本明細書で使用する時、フィルタ粒子の「ウイルス除去指数」(VRI:Virus Removal Index)という表現は、次式で定義される。
VRI=100×[1−(平衡でのMS−2ファージの検査液濃度)/(MS−2ファージの対照濃度)]
ここで、「平衡でのMS−2ファージの検査液濃度」は、以下でより十分に論ずるように、総外表面積が1400cm2であり、ザウタ平均直径が55μm未満である一定質量のフィルタ粒子を含有する検査液における平衡でのファージ濃度を指す。平衡は、2時間ずらした2つの時点で測定したMS−2濃度が半桁以内まで変化せずに留まる時に達成される。「MS−2ファージの対照濃度」という表現は、対照検査液中のMS−2ファージの濃度を指し、これは、2.07×109PFU/Lに等しい。用語「PFU/L」は、MS−2の計数に通常使用されている用語である「1リットル当りのプラーク形成単位」を意味することに留意すべきである。VRI指数は、殺ウイルス効果を付与する化学薬品を適用しないで測定される。フィルタ粒子の除去能力を報告するための同等の方法は、「ウイルス対数除去指数」(VLRI:Viruses Log Removal Index)を用いることであり、これは、次式で定義される。
VLRI=−log[100−(VRI/100)]
VLRIは、単位「log」を有する(「log」は対数である)。例えば、99.9%に等しいVRIを有するフィルタ粒子は、3logに等しいVLRIを有する。VRI及びVLRI値を決定する試験手順については、後で記載する。
【0013】
表現「総外表面積」は、本明細書で使用する時、以下でより十分に論ずるように、1つ以上のフィルタ粒子の幾何学的な総外表面積を指すことを意図している。
【0014】
用語「比外表面積」は、本明細書で使用する時、以下でより十分に論ずるように、フィルタ粒子の単位質量当りの総外表面積を指すことを意図している。
【0015】
用語「ミクロ細孔」は、本明細書で使用する時、2nm(又は20Åに相当)未満の幅又は直径を有する細孔を指すことを意図している。
【0016】
用語「メソ細孔」は、本明細書で使用する時、2nm〜50nm(又は20Å〜500Åに相当)の幅又は直径を有する細孔を指すことを意図している。
【0017】
用語「マクロ細孔」は、本明細書で使用する時、50nm(又は500Åに相当)より大きい幅又は直径を有する細孔を指すことを意図している。
【0018】
表現「総細孔容積」及びその派生語は、本明細書で使用する時、全ての細孔、即ち、ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔の容積を指すことを意図している。総細孔容積は、当該技術分野において周知の方法であるBET法(ASTM D4820−99標準)を用いて、0.9814の相対圧力で吸着された窒素の容積として計算される。
【0019】
表現「ミクロ細孔容積」及びその派生語は、本明細書で使用する時、全ミクロ細孔の容積を指すことを意図している。ミクロ細孔容積は、当該技術分野において周知の方法であるBET法(ASTM D4820−99標準)を用いて、0.15の相対圧力で吸着された窒素の容積から計算される。
【0020】
表現「メソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計」及びその派生語は、本明細書で使用する時、全てのメソ細孔及びマクロ細孔の容積を指すことを意図している。メソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計は、総細孔容積とミクロ細孔容積との差に等しく、又は同等に、当該技術分野において周知の方法であるBET法(ASTM D4820−99標準)を用いて、0.9814と0.15の相対圧力で吸着された窒素の容積の差から計算される。
【0021】
表現「メソ細孔範囲における孔径分布」は、本明細書で使用する時、当該技術分野において周知の方法であるバレット・ジョイナー及びハレンダ(BJH:Barrett, Joyner, and Halenda)法により計算した時の孔径の分布を指すことを意図している。
【0022】
用語「炭化」及びその派生語は、本明細書で使用する時、炭素質物質中の非炭素種が減少するプロセスを指すことを意図している。
【0023】
用語「活性化」及びその派生語は、本明細書で使用する時、炭化した物質を更に多孔質にするプロセスを指すことを意図している。
【0024】
用語「活性」粒子及びその派生語は、本明細書で使用する時、活性化プロセスに供された粒子を指すことを意図している。
【0025】
表現「ゼロ電荷点」は、本明細書で使用する時、炭素粒子の全表面が負に帯電されるよりも上のpHを指すことを意図している。ゼロ電荷点を決定する周知の試験手順については、後で記載する。
【0026】
用語「塩基性」は、本明細書で使用する時、7よりも大きいゼロ電荷点を有するフィルタ粒子を指すことを意図している。
【0027】
用語「酸性」は、本明細書で使用する時、7よりも小さいゼロ電荷点を有するフィルタ粒子を指すことを意図している。
【0028】
表現「メソ細孔性且つ塩基性活性炭フィルタ粒子」は、本明細書で使用する時、複数のメソ細孔及を有すると共に、7よりも大きいゼロ電荷点を有する活性炭フィルタ粒子を指すことを意図している。
【0029】
表現「メソ細孔性且つ酸性活性炭フィルタ粒子」は、本明細書で使用する時、複数のメソ細孔及を有すると共に、7よりも小さいゼロ電荷点を有する活性炭フィルタ粒子を指すことを意図している。
【0030】
表現「変換剤」は、本明細書で使用する時、材料内の酸素含有官能基の数を低減させ、且つ/又は窒素含有官能基の数を増加させる薬剤を指す。
【0031】
II.(メソ細孔性且つ塩基性活性炭フィルタ粒子)
意外にも、メソ細孔性且つ塩基性である活性炭粒子は、メソ細孔性であるが酸性である活性炭粒子により吸着される微生物の数と比べて、より多くの微生物を吸着することが分かった。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、本出願人は、1)多数のメソ細孔及び/又はマクロ細孔が、病原体、それらの線毛、並びに病原体の外膜、キャプシド及びエンベロープを構成する表面ポリマー類(例えば、タンパク質、リポ多糖類、オリゴ糖類及び多糖類)に対してより好都合な吸着部位を提供すること、及び2)塩基性活性炭表面が、酸性炭素表面上の微生物数と比べてより多くの微生物を誘引するのに必要なタイプの官能基を含有することを仮定している。このメソ細孔性且つ塩基性炭素表面上への吸着の増大は、線毛及び表面ポリマーの典型的なサイズが、メソ細孔及びマクロ細孔のサイズと類似するという事実、並びに、塩基性炭素表面が、典型的には負に帯電した微生物及び官能基をそれらの表面上に誘引するという事実に起因する。
【0032】
フィルタ粒子は、様々な形状及びサイズで提供することができる。例えば、フィルタ粒子は、顆粒、繊維、及びビーズのような単純な形態で提供することができる。フィルタ粒子は、球形、多面形、円筒形、並びに他の対称、非対称、及び不規則な形状で提供することができる。更に、フィルタ粒子はまた、上述の単純な形態から形成されてもされなくてもよいウェブ、スクリーン、メッシュ、不織布、織布及び接合ブロック等の複雑な形態に形成され得る。
【0033】
形状と同様に、フィルタ粒子のサイズも様々なものにすることができ、単一フィルタ内で使用されるフィルタ粒子間でサイズを必ずしも一様にする必要はない。実際、単一フィルタに異なるサイズを有するフィルタ粒子を提供することが望ましいことがある。一般に、フィルタ粒子のサイズは、約0.1μm〜約10mm、好ましくは約0.2μm〜約5mm、より好ましくは約0.4μm〜約1mm、最も好ましくは約1μm〜約500μmである。球形及び円筒形粒子(例えば、繊維、ビーズ等)の場合、上述の寸法はフィルタ粒子の直径を指す。実質的に異なる形状を有するメソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子の場合、上述の寸法は、最も大きな寸法(例えば、長さ、幅又は高さ)を指す。
【0034】
フィルタ粒子は、炭化及び活性化中にメソ細孔及びマクロ細孔を生成するいかなる前駆物質からも作ることができる。例えば、制限するつもりではないが、フィルタ粒子は、木材系活性炭粒子、石炭系活性炭粒子、泥炭系活性炭粒子、ピッチ系活性炭粒子、タール系活性炭粒子及びこれらの混合物であり得る。
【0035】
活性炭は、酸性又は塩基性の特性を呈し得る。酸性の特性は、例えば、制限するつもりではないが、フェノール、カルボキシル、ラクトン、ヒドロキノン、無水物及びケトン等の酸素含有官能性物質(functionalities)又は官能基に関連している。塩基性の特性は、ピロン、クロメン、エーテル、カルボニル並びに基礎面π電子等の官能性物質に関連している。活性炭粒子の酸性又は塩基性は、「ゼロ電荷点」技法(ニューカム(Newcombe, G.)ら、「コロイド及び表面A:物理化学的及び工学的局面(Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects)」、78、65〜71(1993))により決定され、この文献の内容を参考として本明細書に組み入れる。その技法は、以下の第IV章に更に記載されている。本発明におけるフィルタ粒子は、7よりも小さい「ゼロ電荷点」を有する。
【0036】
炭化及び活性化の後、酸性且つメソ細孔性活性炭粒子を炉内処理に供することにより塩基性にすることができる。処理条件としては、温度、時間、雰囲気及び変換剤へのさらしが挙げられる。変換剤は、液体又は気体前処理の形態で提供することができ、且つ/又は炉内雰囲気の一部を形成することができる。例えば、変換剤は、制限するつもりではないが、尿素、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピロリジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、尿素、アセトニトリル及びジメチルホルムアミド等の窒素含有液体であり得る。フィルタ粒子を炉内に置く前に、窒素含有液体をフィルタ粒子上にコーティングするか、又はフィルタ粒子に染み込ませることができる。炉内雰囲気はまた、窒素、不活性ガス、還元ガス又は上述の変換剤を含有してもよい。
【0037】
炭素粒子がいかなる貴金属触媒(例えば、白金、金、パラジウム)をも含有しない時の処理温度は、約600℃〜約1,200℃であり、好ましくは約700℃〜約1,100℃であり、より好ましくは約800℃〜約1,050℃であり、最も好ましくは約900℃〜約1,000℃である。炭素粒子が貴金属触媒を含有する場合、処理温度は、約100℃〜約800℃であり、好ましくは約200℃〜約700℃であり、より好ましくは約300℃〜約600℃であり、最も好ましくは約350℃〜約550℃である。処理時間は、2分〜10時間、好ましくは約5分〜約8時間、より好ましくは約10分〜約7時間、及び最も好ましくは約20分〜約6時間である。処理雰囲気は、水素、一酸化炭素又はアンモニアガスを含む。気体流速は、約0.25標準L/h.g(即ち、1時間及び炭素1グラム当りの標準リットル;0.009標準ft3/h.g)〜約60標準L/h.g(2.1標準ft3/h.g)、好ましくは約0.5標準L/h.g(0.018標準ft3/h.g)〜約30標準L/h.g(1.06標準ft3/h.g)、より好ましくは約1.0標準L/h.g(0.035標準ft3/h.g)〜約20標準L/h.g(0.7標準ft3/h.g)、及び最も好ましくは約5標準L/h.g(0.18標準ft3/h.g)〜約10標準L/h.g(0.35標準ft3/h.g)である。理解されるように、塩基性且つメソ細孔性活性炭フィルタ材料を製造する他の方法を使用することができる。
【0038】
ブルナウア・エメット及びテラー(BET:Brunauer, Emmett and Teller)比表面積並びにバレット・ジョイナー及びハレンダ(BJH:Barrett, Joyner, and Halenda)孔径分布は、メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子の細孔構造を特徴付けるのに使用できる。好ましくは、フィルタ粒子のBET比表面積は、約500m2/g〜約3,000m2/g、好ましくは約600m2/g〜約2,800m2/g、より好ましくは約800m2/g〜約2,500m2/g、及び最も好ましくは約1,000m2/g〜約2,000m2/gである。図1を参照すると、BET法を使用した、メソ細孔性且つ塩基性木材系活性炭(TA4−CA−10)及びメソ細孔性且つ酸性木材系活性炭(CA−10)の典型的な窒素吸着等温線が例証されている。
【0039】
メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子の総細孔容積は、BET窒素吸着中に測定され、0.9814の相対圧力P/P0で吸着された窒素の容積として計算される。より詳細には、当該技術分野で周知のように、総細孔容積は、相対圧力0.9814での「mL(STP)/gで吸着される窒素の容積」と、STP(標準温度及び圧力)での窒素の容積を液体に換算する換算率0.00156とを乗算することにより計算される。メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子の総細孔容積は、約0.4mL/gよりも大きいか、若しくは約0.7mL/gよりも大きいか、若しくは1.3mL/gよりも大きいか、若しくは2mL/gよりも大きく、且つ/又は約3mL/g未満、若しくは約2.6mL/g未満、若しくは約2mL/g未満、若しくは約1.5mL/g未満である。
【0040】
メソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計は、BET窒素吸着時に測定され、総細孔容積と、P/P0が0.15の時に吸着された窒素の容積との差として計算される。メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子のメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計は、約0.12mL/gよりも大きいか、若しくは約0.2mL/gよりも大きいか、若しくは約0.4mL/gよりも大きいか、若しくは約0.6mL/gよりも大きいか、若しくは約0.75mL/gよりも大きく、且つ/又は約2.2mL/g未満、若しくは約2mL/g未満、若しくは約1.5mL/g未満、若しくは約1.2mL/g未満、若しくは約1mL/g未満である。
【0041】
BJH孔径分布は、米国化学会ジャーナル(J. Amer. Chem. Soc.)、73、373〜80(1951)、及び、グレッグ及びシング(Gregg and Sing)の「吸着、表面積及び多孔性(ADSORPTION, SURFACE AREA, AND POROSITY)」、第2版、アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク(1982)に記載されているバレット・ジョイナー及びハレンダ(BJH:Barrett, Joyner, and Halenda)法を用いて測定することができ、これら文献の内容を参考として本明細書に組み入れる。1つの実施形態において、細孔容積は、約4nm〜約6nmの孔径の場合、少なくとも約0.01mL/gである。代替実施形態において、細孔容積は、約4nm〜約6nmの孔径の場合、約0.01mL/g〜約0.04mL/gである。更に別の実施形態において、細孔容積は、約4nm〜約6nmの孔径の場合、少なくとも約0.03mL/gであるか、又は約0.03mL/g〜約0.06mL/gである。好ましい実施形態において、細孔容積は、約4nm〜約6nmの孔径の場合、約0.015mL/g〜約0.06mL/gである。図2は、BJH法によって計算された時のメソ細孔性且つ塩基性木材系活性炭(TA4−CA−10)及びメソ細孔性且つ酸性木材系活性炭(CA−10)の典型的なメソ細孔容積分布を例証している。
【0042】
総細孔容積に対するメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計の比は、約0.3よりも大きく、好ましくは約0.4〜約0.9、より好ましくは約0.5〜約0.8、及び最も好ましくは約0.6〜約0.7である。
【0043】
総外表面積は、比外表面積とフィルタ粒子の質量とを乗算することにより計算され、フィルタ粒子の寸法に基づく。例えば、単分散(即ち、一様な直径を有する)繊維の比外表面積は、繊維の面積(繊維の末端部における2つの断面積は無視する)と繊維の重量との比率として計算される。従って、繊維の比外表面積は、
【0044】
【数1】
【0045】
に等しく、ここで
【0046】
【数2】
【0047】
は繊維の直径で、
【0048】
【数3】
【0049】
は繊維の密度である。単分散球形粒子の場合、同様の計算によって
【0050】
【数4】
【0051】
に等しい比外表面積が得られ、ここで
【0052】
【数5】
【0053】
は粒子の直径で、
【0054】
【数6】
【0055】
は粒子の密度である。多分散繊維である球形又は不規則粒子の場合、比外表面積は、
【0056】
【数7】
【0057】
で
【0058】
【数8】
【0059】
を置き換えた上述の式とそれぞれ同じ式を用いて計算され、ここで、
【0060】
【数9】
【0061】
はザウタ平均粒径で、これは表面積と容積との比が粒子分布全体のものと等しい粒子の直径である。当該技術分野において周知のザウタ平均粒径の測定方法は、例えばマルヴァーン(Malvern)装置(マルヴァーンインスツルメンツ社(Malvern Instruments Ltd.)(英国マルヴァーン))を用いたレーザー回折によるものである。フィルタ粒子の比外表面積は、約10cm2/g〜約100,000cm2/g、好ましくは約50cm2/g〜約50,000cm2/g、より好ましくは約100cm2/g〜10,000cm2/g、及び最も好ましくは約500cm2/g〜約5,000cm2/gである。
【0062】
本明細書で述べるバッチ試験手順に従って測定された時のメソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子のBRIは、約99%よりも大きく、好ましくは約99.9%よりも大きく、より好ましくは約99.99%よりも大きく、最も好ましくは約99.999%よりも大きい。同等に、メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子のBLRIは、約2logよりも大きく、好ましくは約3logよりも大きく、より好ましくは約4logよりも大きく、最も好ましくは約5logよりも大きい。本明細書で述べるバッチ試験手順に従って測定された時のメソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子のVRIは、約90%よりも大きく、好ましくは約95%よりも大きく、より好ましくは約99%よりも大きく、最も好ましくは約99.9%よりも大きい。同等に、メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子のVLRIは、約1logよりも大きく、好ましくは約1.3logよりも大きく、より好ましくは約2logよりも大きく、最も好ましくは約3logよりも大きい。
【0063】
本発明の1つの好ましい実施形態において、フィルタ粒子は、木材系活性炭粒子であるメソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子を含む。これらの粒子は、約1,000m2/g〜約2,000m2/gのBET比表面積、約0.8mL/g〜約2mL/gの総細孔容積及び約0.4mL/g〜約1.5mL/gのメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計を有する。
【0064】
本発明の別の好ましい実施形態において、フィルタ粒子は、はじめは酸性であって、アンモニア雰囲気中での処理により塩基性にされたメソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子を含む。これらの粒子は、木材系活性炭粒子である。処理温度は、約925℃〜1,000℃であり、アンモニア流速は、約1標準L/h.g〜約20標準L/h.gであり、処理時間は、約10分〜7時間である。これらの粒子は、約800m2/g〜約2,500m2/gのBET比表面積、約0.7mL/g〜約2.5mL/gの総細孔容積及び約0.21mL/g〜約1.7mL/gのメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計を有する。塩基性活性炭に変換される酸性活性炭の非限定例については、以下に述べる。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
(メソ細孔性且つ酸性活性炭のメソ細孔性且つ塩基性活性炭への変換)
ペンシルバニア州アードモア(Ardmore, PA)のカーボケム社(Carbochem, Inc.)からの2kgのカーボケム(CARBOCHEM)(登録商標)CA−10メソ細孔性且つ酸性木材系活性炭粒子を、ロードアイランド州クランストン(Cranston, RI)のC.I.ヘイズ社(C.I. Hayes, Inc.)製BAC−M型の炉のベルト上に置く。炉内温度を950℃に設定し、処理温度は4時間、雰囲気は12,800標準L/h(即ち、450標準ft3/h、又は同等に、6.4標準L/h.g)の体積流量で流動する解離アンモニアである。処理済み炭素粒子を、TA4−CA−10と称し、それらのBET等温線、メソ細孔容積分布及びゼロ電荷点分析を、それぞれ、図1、図2及び図3において例証する。
【0066】
III.(本発明のフィルタ)
ここで、図4を参照すると、本発明に従って作られる代表的なフィルタについて記載される。フィルタ20は、入口24と出口26とを有する円筒形の形態のハウジング22を含む。ハウジング22は、当該技術分野において既知であるように、フィルタの意図される用途に応じて、多様な形態、形状、サイズ及び構成で設けることができる。例えば、フィルタを軸流フィルタにすることができ、この場合、液体がハウジングの軸に沿って流れるように、入口及び出口が配置される。あるいは、フィルタを径流フィルタにすることもでき、この場合、流体(例えば、液体、気体、又はこれらの混合物)がハウジングの半径に沿って流れるように、入口及び出口が配置される。更に、フィルタが軸流及び径流の両方を含むこともできる。また、ハウジングは、本発明の範囲から逸脱することなく、別の構造の一部分として形成されてもよい。本発明のフィルタは水と共に使用するのに特に適しているが、他の流体(例えば、空気、気体、及び空気と液体の混合物)を使用できることが理解される。従って、フィルタ20は、一般的な液体フィルタ又は気体フィルタを表すことを意図している。入口24及び出口26のサイズ、形状、間隔、配列、及び位置は、当該技術分野において公知のように、流速及びフィルタ20の目的用途に適応するように選択することができる。好ましくは、フィルタ20は、住宅用又は商業用飲料水用途における使用のために構成される。本発明との使用に適するフィルタ構成、飲料水装置、消費者器具、及び他の水濾過装置の例は、米国特許第5,527,451号、同第5,536,394号、同第5,709,794号、同第5,882,507号、同第6,103,114号、同第4,969,996号、同第5,431,813号、同第6,214,224号、同第5,957,034号、同第6,145,670号、同第6,120,685号、及び同第6,241,899号に開示されており、これら特許文献の内容を参考として本明細書に組み入れる。飲料水用途の場合、フィルタ20は、好ましくは、約8L/分未満、又は約6L/分未満、又は約2L/分〜4L/分の流速に適応するように構成され、フィルタは、約2kg未満のフィルタ材料、又は1kg未満のフィルタ材料、又は0.5kg未満のフィルタ材料を含有する。またフィルタ20はフィルタ材料28も含んでおり、フィルタ材料28には1種以上のフィルタ粒子(例えば、繊維、顆粒等)が含まれる。1つ以上のフィルタ粒子は、メソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子であり得ると共に、先に論じた特質を有する。フィルタ材料はまた、活性炭粉末、活性炭顆粒、活性炭繊維、ゼオライト、及びこれらの混合物等の他の材料から形成された粒子を含むこともできる。先に論じたように、フィルタ材料は、緩い形態又は相互に連結した形態(例えば、一体構造を形成するために、ポリマーバインダー又は他の手段により部分的に又は全体的に接合された)のいずれかで提供することができる。
【0067】
IV.(試験手順)
以下の試験手順は、本明細書で論じたゼロ電荷点、BET、BRI/BLRI及びVRI/VLRI値を計算するのに使用される。BRI/BLRI値及びVRI/VLRI値の測定は水性媒質に関するものであるが、これは本発明のフィルタ材料の最終用途を制限しようとするものではなく、むしろ、BRI/BLRI値及びVRI/VLRI値が水性媒質に関して計算されていても、フィルタ材料を先に論じたように他の流体と共に最終的に使用することができる。更に、試験手順の使用について例証するために以下で選択されるフィルタ材料は、本発明のフィルタ材料の製造及び/又は組成の範囲を制限しようとするものでもないし、試験手順を用いて本発明のどのフィルタ材料が評価できるかということを制限しようとするものでもない。
【0068】
(BET試験手順)
BET比表面積及び細孔容積分布を、ASTM D 4820−99に記載されるマルチポイント窒素吸着による技法のような窒素吸着技法を用いて、77Kで、フロリダ州マイアミ(Miami, FL)のコールター社(Coulter Corp.)により製造されたコールター(Coulter)SA3100シリーズの表面積及び孔径分析器(Surface Area and Pore Size Analyzer)により測定する。この方法はまた、ミクロ細孔容積、メソ細孔容積、及びマクロ細孔容積も提供することができる。実施例1のTA4−CA−10フィルタ粒子の場合、BET面積は、1,038m2/gであり、ミクロ細孔容積は0.43mL/gであり、メソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計は0.48mL/gである。出発材料CA−10の各値は、1,309m2/g、0.54mL/g及び0.67mL/gである。実施例1のフィルタ材料に関する典型的なBET窒素等温線及びメソ細孔容積分布を、図1及び図2にそれぞれ例証する。理解されるように、BET測定の代わりに、当該技術分野において既知である他の計器類を使用することができる。
【0069】
(ゼロ電荷点試験手順)
試薬等級KCl及びアルゴンガス下で新たに蒸留された水から0.010M KCl水溶液を調製する。蒸留のために使用される水は、逐次逆浸透及びイオン交換処理により脱イオン化される。体積25.0mLのKCl水溶液を、それぞれ24/40のすりガラス栓が取り付けられた6つの125mLフラスコに移す。初期pHが2〜12の範囲となるように、マイクロリットル量の標準化されたHCl又はNaOH水溶液を各フラスコに加える。次いで、マサチューセッツ州ビバリー(Beverly, MA)のサーモオリオン社(Thermo Orion Inc.)製のオリオン(Orion)モデル9107BN 三極管結合pH/ATC電極を備えたオリオン(Orion)モデル420A pHメーターを用いて各フラスコのpHを記録し、このpHを「初期pH」と呼ぶ。0.0750±0.0010gの活性炭粒子を6つの各フラスコに加え、水性懸濁液を攪拌し(約150rpm)、「最終pH」を記録する前に室温で24時間栓をする。図3は、CA−10及びTA4−CA−10活性炭材料を用いて行った実験の初期pH値及び最終pH値を示す。CA−10及びTA4−CA−10のゼロ電荷点は、それぞれ約4.7及び10である。理解されるように、この試験手順の代わりに、当該技術分野において既知である他の計器類を使用することができる。
【0070】
(BRI/BLRI試験手順)
2つ以上のパイレックス(Pyrex)(登録商標)ガラスビーカー(被試験材料の数に応じて)と共に、バージニア州リッチモンド(Richmomd, VA)のフィップスアンドバード社(Phipps & Bird, Inc.)製のPB−900(登録商標)プログラム可能ジャーテスター(Programmable JarTester)を使用する。ビーカーの直径は11.4cm(4.5インチ)で、高さは15.3cm(6インチ)である。各ビーカーは、大腸菌微生物で汚染された500mLの脱塩素化した地方自治体供給の水道水及び60rpmで回転する攪拌器を含有する。攪拌器は、長さ7.6cm(3インチ)、高さ2.54cm(1インチ)、厚さ0.24cm(3/32インチ)のステンレス鋼パドルである。攪拌器は、ビーカーの底部から0.5cm(3/16インチ)のところに置かれる。第一ビーカーにはフィルタ材料を入れずに対照として使用し、他のビーカーには、ビーカー内の材料の総外形表面積が1400cm2であるように、ザウタ平均粒径が55μm未満である十分な量のフィルタ材料を入れる。このザウタ平均粒径は、a)広い粒径分布及びより高いザウタ平均粒径を有する試料をふるい分けするか、又はb)フィルタ材料のサイズを小さくする(例えば、フィルタ材料が55μmよりも大きいか、又は一体化若しくは接合した形態である場合)ことにより達成される。例えば、制限するつもりはないが、サイズ縮小技法は、破砕、粉砕及び微粉砕である。サイズ縮小に使用する典型的な装置としては、ジョークラッシャー、ジャイレートリークラッシャー、ロールクラッシャー、シュレッダー、強力型インパクトミル、メディアミル、及び遠心ジェット、対向ジェット又はアンビル付きジェット等の流体エネルギーミルが挙げられる。サイズ縮小は、緩い又は接合したフィルタ粒子に対して使用することができる。この試験を行う前に、フィルタ粒子又はフィルタ材料上の殺菌性コーティングを取り除くべきである。あるいは、この試験のために、コーティングしていないフィルタ粒子を代わりに使用することができる。
【0071】
フィルタ粒子を含有するビーカー内の平衡が達成されるまで、フィルタ粒子をビーカーに挿入後の様々な時間での評価分析のために、各ビーカーからそれぞれ体積5mLの2つの水の試料を収集する。典型的なサンプル時間は、0、2、4及び6時間である。当該技術分野において公知のように、その他の装置を代わりに使用することができる。
【0072】
使用される大腸菌は、ATCC番号25922(アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(メリーランド州ロックビル))である。対照ビーカー内の目標大腸菌濃度を、3.7×109に設定する。大腸菌の評価分析は、米国公衆保健協会(APHA:American Public Health Association)(ワシントンDC)発行の「水及び排水の検査のための標準的方法(Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater)」、第20版の9222番の方法に従って膜フィルタ技術を用いて実施することができる。検出限界(LOD)は、1×103CFU/Lである。
【0073】
実施例1のフィルタ材料に関する代表的なBRI/BLRIの結果を、図5に示す。CA−10メソ細孔性且つ酸性活性炭材料の量は、0.75gであり、TA40−CA−10メソ細孔性且つ塩基性活性炭材料の量は、0.89gである。両方の量は、1,400cm2の外表面積に対応する。対照ビーカー内の大腸菌濃度は、3.7×109CFU/Lである。CA−10及びTA4−CA−10試料が入っているビーカー内の大腸菌濃度は、6時間で平衡に達し、それらの値は、それぞれ、2.1×106CFU/L及び1.5×104CFU/Lである。次いで、それぞれのBRIは99.94%及び99.9996%と計算され、それぞれのBLRIは3.2log及び5.4logと計算される。
【0074】
(VRI/VLRI試験手順)
試験装置及び手順は、BRI/BLRI手順のものと同じである。第一ビーカーにはフィルタ材料を入れずに対照として使用し、他のビーカーには、ビーカー内の材料の総外形表面積が1400cm2であるように、ザウタ平均粒径が55μm未満である十分な量のフィルタ材料を入れる。この試験を行う前に、フィルタ粒子又はフィルタ材料上の殺菌性コーティングを取り除くべきである。あるいは、この試験のために、コーティングしていないフィルタ粒子又はフィルタ材料を代わりに使用することができる。
【0075】
使用されるMS−2バクテリオファージは、メリーランド州ロックビル(Rockville, MD)のアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)のATCC番号15597Bである。対照ビーカー内の目標MS−2濃度を、2.07×109PFU/Lに設定する。C.J.ハースト(C.J. Hurst)、Appl.Environ.Microbiol.、60(9)、3462(1994)による手順に従って、MS−2を評価分析することができる。当該技術分野において公知のその他の評価分析法を代わりに使用することができる。検出限界(LOD)は、1×103PFU/Lである。
【0076】
実施例1のフィルタ材料に関する代表的なVRI/VLRIの結果を、図6に示す。CA−10メソ細孔性且つ酸性活性炭材料の量は、0.75gであり、TA40−CA−10メソ細孔性且つ塩基性活性炭材料の量は、0.89gである。両方の量は、1,400cm2の外表面積に対応する。対照ビーカー内のMS−2濃度は、2.07×109CFU/Lである。CA−10及びTA4−CA−10試料が入っているビーカー内のMS−2濃度は、6時間で平衡に達し、それらの値は、それぞれ、1.3×106PFU/L及び5.7×104PFU/Lである。次いで、それぞれのVRIは99.94%及び99.997%と計算され、それぞれのVLRIは3.2log及び4.5logと計算される。
【0077】
本明細書に記載の実施形態は、本発明の原理及びその実際的応用の最良の説明を提供し、それによって当業者が本発明を様々な実施形態で、また企図される特定の用途に適するように様々な修正を行って利用できるようにするために、選択され説明された。このような全ての修正及び変形は、適正に、法的に、公正に権利を与えられる範囲に従って解釈される時、添付の請求項によって決定されるように本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】メソ細孔性且つ酸性活性炭粒子CA−10及びメソ細孔性且つ塩基性活性炭粒子TA4−CA−10のBET窒素吸着等温線である。
【図2】図1の粒子のメソ細孔容積分布である。
【図3】図1の粒子のゼロ電荷点グラフである。
【図4】本発明によって作られた軸流フィルタの側断面図である。
【図5】図1のフィルタ粒子に関して大腸菌検査液濃度を時間の関数として示す。
【図6】図1のフィルタ粒子に関してMS−2検査液濃度を時間の関数として示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水フィルタ材料を製造する方法であって、
7より小さいゼロ電荷点を有する複数の炭素粒子を提供する工程であり、ここで前記複数のフィルタ粒子のメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計が、0.12mL/gよりも大きい当該工程と、
前記複数の炭素粒子を変換剤にさらす工程と、
前記さらし工程後に、前記複数の炭素粒子を炉内で加熱する工程と、
水入口(24)及び水出口(26)を有するフィルタハウジング(22)に前記複数の粒子を挿入する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記複数の炭素粒子を活性化する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性化工程が、前記加熱工程の前に起こる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の粒子が、木材系炭素粒子、石炭系炭素粒子、泥炭系炭素粒子、ピッチ系炭素粒子、タール系炭素粒子及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記変換剤が、尿素、トリエチルアミン及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記炉の処理温度が、600℃〜1200℃である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記炉の処理温度が、100℃〜800℃である請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のフィルタ粒子が、前記加熱工程後に、約9〜約12のゼロ電荷点を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
水フィルタ材料を製造する方法であって、
7より小さいゼロ電荷点を有する複数の炭素粒子を提供する工程であり、ここで前記複数のフィルタ粒子のメソ細孔容積及びマクロ細孔容積の合計が、0.12mL/gよりも大きい当該工程と、
前記複数の炭素粒子を変換剤にさらす工程と、
前記さらし工程後に、前記複数の炭素粒子を炉内で加熱する工程と、
水入口(24)及び水出口(26)を有するフィルタハウジング(22)に前記複数の粒子を挿入する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記複数の炭素粒子を活性化する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性化工程が、前記加熱工程の前に起こる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の粒子が、木材系炭素粒子、石炭系炭素粒子、泥炭系炭素粒子、ピッチ系炭素粒子、タール系炭素粒子及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記変換剤が、尿素、トリエチルアミン及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記炉の処理温度が、600℃〜1200℃である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記炉の処理温度が、100℃〜800℃である請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のフィルタ粒子が、前記加熱工程後に、約9〜約12のゼロ電荷点を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2007−307563(P2007−307563A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227851(P2007−227851)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【分割の表示】特願2003−523155(P2003−523155)の分割
【原出願日】平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【分割の表示】特願2003−523155(P2003−523155)の分割
【原出願日】平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】
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