説明

水中水型ポリマー分散液中のカチオン性架橋コポリマー

本発明は、架橋カチオン性コポリマーを含有する水中水型ポリマー分散液、それを調製するための方法およびその使用に関する。水中水型ポリマー分散液は、とりわけ、製紙における凝集剤、脱水(排水)助剤および歩留助剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋カチオン性コポリマーを含有する水中水型ポリマー分散液、それを調製するための方法およびその使用に関する。水中水型ポリマー分散液は、とりわけ、製紙における凝集剤、脱水(排水)助剤および歩留助剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
紙の製造において、製紙完成紙料、すなわち、通常は95重量%を超える含水量を有するセルロース繊維の水性スラリーが、典型的には5重量%未満の含水量を有する紙匹に形成される。それ故に、製紙の脱水(排水)態様および歩留態様は、製造の効率およびコストに重要である。典型的には、セルロース希薄紙料は、移動スクリーン上で排水され、シートを形成し、次いで、乾燥される。セルロース固体の凝集をもたらし、移動スクリーン上の排水を増強するためにセルロース懸濁液に水溶性ポリマーを適用することは良く知られている。製紙のための良く知られている方法によれば、セルロース懸濁液が形成され、凝集剤によって凝集され、機械的に剪断され、場合により、再凝集剤によって再凝集され、スクリーン上で排水してシートを形成し、次いで、乾燥される。
【0003】
独国特許出願公開第44 06 624号は、ポリマー分散剤の存在下で水溶性モノマー、場合により、疎水性モノマーおよび架橋剤を重合させることにより調製される低粘度の、架橋水性ポリマー分散液を開示している。分散液は、増粘剤、凝集剤および歩留助剤として有用である。
【0004】
独国特許出願公開第195 32 229号は、ポリマー分散剤の存在下で水溶性モノマー、架橋性N-メチロール-化合物、場合により、架橋剤および、場合により、疎水性モノマーを重合させることにより調製される架橋性のおよび架橋した水性ポリマー分散液を開示している。ポリマー分散液は、製紙における増粘剤、凝集助剤、歩留助剤、および接着剤として、特に、壁紙コーティングとして有用である。
【0005】
米国特許第5,840,804号は、高濃度の主要物質を有する低粘度の水ベースの水溶性ポリマー分散液を製造する方法であって、少なくとも1つのポリマー分散剤の存在下、水溶液中で、下記のモノマー構成成分: (a1)少なくとも1つの水溶性モノマー50〜99.999重量%; (a2)少なくとも2つのエチレン性不飽和ラジカル重合性基を持つ少なくとも1つの架橋性モノマー0.001〜1重量%; (a3)少なくとも1つの疎水性モノマー0〜30重量%、特に、1〜25重量%;および(a4)少なくとも1つの両親媒性モノマー0〜25重量%、特に、0.1〜15重量%を重合させ、ポリマー(A)を形成することを含み、モノマー(a1)、(a2)、(a3)、および(a4)により表される構成成分の量の和は、モノマーの100重量%であり、得られるポリマー(A)の重量平均分子量は、少なくとも500,000ダルトンであり、ポリマー(A)は、分散剤と不適合である方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第44 06 624号
【特許文献2】独国特許出願公開第195 32 229号
【特許文献3】米国特許第5,840,804号
【特許文献4】米国特許出願公開第2004 0034145号
【特許文献5】米国特許出願公開第2004 0046158号
【特許文献6】米国特許出願公開第2005 0242045号
【特許文献7】米国特許出願公開第2007 0203290号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H. Xuら、Drug Dev Ind Pharm.、2001、27(2)、171〜4頁
【非特許文献2】K.A. Simonら、Langmuir.、2007、30;23(3)、1453〜8
【非特許文献3】P. Hongsprabhas、International Journal of Food Science & Technology、2007、42(6)、658〜668
【非特許文献4】D. Gudlauski、PaperAge、May/June 2005、36f頁
【非特許文献5】Paul C. Hiemenz、Polymer Chemistry、Marcel Dekker New York、1984、Chapter 7.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、先行技術のポリマー分散液の特性は、あらゆる点で満足いくものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、水中水型ポリマー分散液を製造するための方法であって、
(i)カチオン性ポリマー分散剤と、
(ii) a)モノマーの総重量を基準として、一般式(I)による非イオン性モノマー少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも20重量%
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、
R1は、水素またはC1〜C3-アルキルを意味し、
R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1〜C5-アルキル、またはC1〜C5-ヒドロキシアルキルを意味する)、
b)モノマーの総重量を基準として、一般式(II)によるカチオン性モノマー少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも20重量%、好ましくは20〜47重量%または50.5〜80重量%
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、
R4は、水素またはC1〜C3-アルキルを意味し、
Z1は、OまたはNR5を意味し、R5は、水素またはC1〜C3-アルキルであり、
Y0は、1つまたは複数のヒドロキシ基で場合により置換されているC2〜C6-アルキレンを意味し、
Y1、Y2、Y3は、互いに独立して、C1〜C6-アルキルを意味し、
X-は、ハロゲン、擬ハロゲン、アセテート、またはSO4CH3-を意味する)、
c)モノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の好ましくはエチレン性の不飽和架橋剤0.0001〜1.25重量%、
d)モノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の疎水性(メタ)アクリル酸C4〜18-アルキルエステル0〜1.25重量%、および
e)場合により、さらなるエチレン性不飽和モノマー
を含むモノマー組成物と
を含む水性反応混合物を、得られる水中水型ポリマー分散液が架橋カチオン性コポリマーを含有するようにフリーラジカル重合反応にかけることを含む方法に関する。前記架橋カチオン性コポリマーは、水溶性または水膨潤性であることが好ましい。
【0014】
驚いたことに、このようにして得られる水中水型ポリマー分散液は、マッドの脱水、紙歩留および灰分歩留に関して、特に、剪断条件下で、改善された特性を有することが判明した。
【0015】
カチオン性ポリマー分散剤の存在下での水性反応混合物における一般式(I)による非イオン性モノマー、一般式(II)によるカチオン性モノマー、および1つまたは複数の好ましくはエチレン性の不飽和架橋剤のインサイチュ共重合により、水中水型ポリマー分散液が得られ、得られる架橋カチオン性コポリマーは、カチオン性ポリマー分散剤中にインターカレートされ、それによって、相互貫入型複合体を形成する。
【0016】
このタイプの水中水型ポリマー分散液は、カチオン性ポリマー分散剤の非存在下でモノマーを重合させ、その後にカチオン性ポリマー分散剤を添加することにより得ることができないが、インサイチュでの重合反応中のカチオン性ポリマー分散剤の存在を必要とする。さもないと、異なる特性を示す異なる生成物が得られる。特に、一般式(I)による非イオン性モノマー、一般式(II)によるカチオン性モノマー、および1つまたは複数の好ましくはエチレン性の不飽和架橋剤を重合させることにより別個に得られた水中水型ポリマー分散液にカチオン性ポリマー分散剤の水性分散液を添加する場合、それ以上適切に取り扱えないかもしれないゲルブロックが得られるであろう。モノマーの総濃度にもよるが、相互貫入型複合体を形成するために水中水型ポリマー分散液の水相にカチオン性ポリマー分散剤を均一に分布させることは事実上不可能であろう。さらに、水溶液の形態でカチオン性ポリマー分散剤をその後に導入しようとする場合、その含水量は、全体の組成物を希釈するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ユーカリ完成紙料における灰分歩留に対する本発明によるポリマー分散液の効果を示す図である。
【図2】ミクロ粒子系におけるベントナイトと組み合わせたポリマーを持つユーカリ完成紙料における灰分歩留に対する本発明によるポリマー分散液の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
水中水型ポリマー分散液は、当技術分野において良く知られている。これに関して、例えば、H. Xuら、Drug Dev Ind Pharm.、2001、27(2)、171〜4頁; K.A. Simonら、Langmuir.、2007、30;23(3)、1453〜8; P. Hongsprabhas、International Journal of Food Science & Technology、2007、42(6)、658〜668; D. Gudlauski、PaperAge、May/June 2005、36f頁、米国特許出願公開第2004 0034145号、米国特許出願公開第2004 0046158号、米国特許出願公開第2005 0242045号、および米国特許出願公開第2007 0203290号に言及することができる。
【0019】
しかしながら、水処理産業において見いだされる標準的な乳濁液は、油中水型逆相乳濁液であり、すなわち、ポリマーは、油媒体中に乳化された微視的水滴内にある。実際、液滴中の水が、遊離であると見なされないのは、ポリマーが水を押さえ、生成物が、油中のゲルの分散液にむしろ近いからである。水中水型分散液は、水、好ましくは、水性塩溶液、例えば、塩水におけるポリマー沈殿が関わる異なる原理に基づいている。得られる最終生成物は、水中の微視的ポリマー粒子の安定な分散液である。これらの分散液は、溶媒を含まず、この範囲の生成物を環境に優しくする。
【0020】
本明細書のために、「水中水型ポリマー分散液」という用語は、水溶性または水膨潤性の架橋カチオン性コポリマーおよびカチオン性ポリマー分散剤を含有する水性系を指し、水溶性または水膨潤性の架橋カチオン性コポリマーは、前記カチオン性ポリマー分散剤の存在下での適当なモノマーのインサイチュ重合により得られた。
【0021】
カチオン性ポリマー分散剤ならびに水溶性または水膨潤性の架橋カチオン性コポリマーは、凝固剤および/または凝集剤として働くことができる。化学凝固、すなわち、懸濁された粒子およびコロイド状粒子の、それらが互いに付着するような変化は、化学的処理プロセスの1つのタイプである。凝固は、電荷の中和または粒子間の反発力の低下を引き起こすプロセスである。凝集は、より大きな集塊(「フロック」)への粒子の集合である。凝固は、ほとんど瞬間的であり、一方、凝集は、フロックが成長するためにある程度の時間を必要とする。本明細書のために、「カチオン性ポリマー分散剤」という用語は、水溶性または水分散性の、好ましくは高度にイオン性の、比較的低分子量のポリマーを指すことが好ましい。水中の粒子および有機物に関係する全体の電荷が負である場合、例えば、セルロース繊維懸濁液が製紙において処理される場合、正に荷電した分散液が添加され、電荷を中和することが好ましい。
【0022】
本明細書のために、「水溶性の」という用語は、特に、それが、モノマーの水溶性に関する場合、少なくとも10g l-1、より好ましくは、少なくとも25g l-1、さらにより好ましくは、少なくとも50g l-1、さらにより好ましくは、少なくとも100g l-1、最も好ましくは、少なくとも250g l-1、特に、少なくとも500g l-1の周囲温度における純水中での溶解度を指すことが好ましい。本明細書のために、「水溶性の」という用語は、特に、それが、ポリマーの水溶性に関する場合、少なくとも1.0g l-1、より好ましくは、少なくとも2.5g l-1、さらにより好ましくは、少なくとも5.0g l-1、さらにより好ましくは、少なくとも10.0g l-1、最も好ましくは、少なくとも25.0g l-1、特に、少なくとも50.0g l-1の周囲温度における純水中での溶解度を指すことが好ましい。
【0023】
本明細書のために、「水膨潤性の」という用語は、水溶性ではないポリマーが、かなりの量の水を吸収することを意味することが好ましい。典型的には、ポリマーの重量は、1時間にわたって室温、例えば、25℃にて水に浸された後に、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくはその乾燥重量の約60〜約100倍増加する。
【0024】
本明細書のために、「架橋カチオン性コポリマー」という用語は、a)一般式(I)による非イオン性モノマー少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも20重量%、b)一般式(II)によるカチオン性モノマー少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも20重量%、c) 1つまたは複数の好ましくはエチレン性の不飽和架橋剤0.0001〜1.25重量%、d) 1つまたは複数の疎水性(メタ)アクリル酸C4〜18-アルキルエステル0〜1.25重量%、およびe)場合により、さらなるエチレン性不飽和モノマーを含むモノマー組成物が、カチオン性ポリマー分散剤の存在下でラジカル重合されるインサイチュ重合反応により得ることができるコポリマーを指す。
【0025】
ラジカル重合中のカチオン性ポリマー分散剤の存在は、得られる水中水型ポリマー分散液の特性に不可欠であることが強調されるべきである。同一の水中水型ポリマー分散液は、カチオン性ポリマー分散剤の非存在下でモノマーを重合させ、その後にカチオン性ポリマー分散剤を添加することにより得ることはできない。カチオン性ポリマー分散剤は、架橋カチオン性コポリマーがモノマーから重合される水中水型分散液の一部である。言い換えると、重合反応により得られる架橋カチオン性コポリマーは、初めに存在するカチオン性ポリマー分散剤に何らかの形で包埋される。
【0026】
しかしながら、カチオン性ポリマー分散剤および架橋カチオン性コポリマーの得られる相互貫入型ポリマー系の内部構造は、カチオン性ポリマー分散剤および同じモノマーから架橋カチオン性コポリマーとして別個に得られるポリマーを単に混合することにより再現されなくてもよい。
【0027】
本明細書のために、「アルク(alk)アクリレート」という用語は、アルクアクリレートならびにアクリレートを指すものとする。同様に、「(メタ)アクリレート」という用語は、メタアクリレートならびにアクリレートを指すものとする。
【0028】
本明細書のために、「ホモポリマー」という用語は、実質的に単一のタイプのモノマーの重合により得られるポリマーを指すものとし、一方、「コポリマー」という用語は、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の異なるタイプのモノマー(コモノマー)の重合により得られるポリマーを指すものとする。
【0029】
本明細書のために、「アルキル」とは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、2-エチル-ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロペンチルエテニル、アダマンチルなどの、単一の結合パートナーを有するいかなる飽和された線状、分岐および/または環状の炭化水素も意味するものとする。
【0030】
本明細書のために、「アルキレン」という用語は、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-および-CH2CH(CH3)CH2-などの2つの結合パートナーを有するいかなる飽和された線状、分岐および/または環状の炭化水素も意味するものとする。
【0031】
本発明の方法によれば、(i)カチオン性ポリマー分散剤および(ii)モノマー組成物を含む水性反応混合物は、フリーラジカル重合反応にかけられる。
【0032】
本発明による水性反応混合物は、水、好ましくは、脱イオン水を含む。含水量は、0.01から99.99重量%まで様々であってよい。好ましい実施形態において、含水量は、水性反応混合物の総重量を基準として、10から90重量%まで、より好ましくは、15〜85重量%、さらにより好ましくは、20〜80重量%、さらにより好ましくは、25〜75重量%、最も好ましくは、30〜70重量%、特に、35〜65重量%の範囲内である。別の好ましい実施形態において、含水量は、水性反応混合物の総重量を基準として、35から90重量%まで、より好ましくは、40〜85重量%、さらにより好ましくは、45〜80重量%、さらにより好ましくは、50〜75重量%、最も好ましくは、55〜70重量%、特に、60〜66重量%の範囲内である。
【0033】
水性反応混合物の含水量は、得られる水中水型ポリマー分散液の含水量も低くなるように比較的低いことが好ましい。これらの環境下で、高度に濃縮された水中水型ポリマー分散液を得るために重合の終了の後に生成物から大量の水を蒸発させることは必要ではない。
【0034】
本発明による水性反応混合物は、カチオン性ポリマー分散剤をさらに含む。カチオン性ポリマー分散剤は、水溶性または水膨潤性であることが好ましい。カチオン性ポリマー分散剤の含有量は、水性反応混合物の総重量を基準として、0.1から40重量%まで、より好ましくは、0.5〜35重量%、さらにより好ましくは、1.0〜30重量%、さらにより好ましくは、5.0〜25重量%、最も好ましくは、10〜20重量%、特に、12〜16重量%の範囲内であることが好ましい。
【0035】
カチオン性ポリマー分散剤は、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、さらにより好ましくは、少なくとも99%、さらにより好ましくは、少なくとも99.9%、最も好ましくは、少なくとも99.95%、特に、少なくとも99.99%の重合度を示すことが好ましい。
【0036】
好ましい実施形態において、カチオン性ポリマー分散剤は、多くても2.0×106g/molの重量平均分子量Mwを有する水溶性ポリマーである。カチオン性ポリマー分散剤の重量平均分子量Mwは、50,000から1,500,000g mol-1まで、より好ましくは、75,000〜1,250,000 g mol-1、さらにより好ましくは、100,000〜1,000,000 g mol-1、さらにより好ましくは、120,000〜750,000 g mol-1、最も好ましくは、140,000〜400,000 g mol-1、特に、150,000〜200,000 g mol-1の範囲内であることが好ましい。好ましい実施形態において、カチオン性ポリマー分散剤の重量平均分子量Mwは、75,000から350,000g mol-1までの範囲内である。
【0037】
カチオン性ポリマー分散剤の分子量分散度Mw/Mnは、1.0から4.0まで、より好ましくは、1.5〜3.5、特に、1.8〜3.2の範囲内であることが好ましい。好ましい実施形態において、Mw/Mnは、2.7±0.7、より好ましくは2.7±0.5、さらにより好ましくは2.7±0.4、さらにより好ましくは2.7±0.3、最も好ましくは2.7±0.2、特に、2.7±0.1の範囲内である。
【0038】
好ましい実施形態において、カチオン性ポリマー分散剤は、ホモポリマーまたはコポリマーである。カチオン性ポリマー分散剤がホモポリマーである場合、それは、カチオン性モノマーから誘導される。カチオン性ポリマー分散剤がコポリマーである場合、それは、少なくとも1つのカチオン性モノマーおよび少なくとも1つの非イオン性コモノマーから誘導されることが好ましい。
【0039】
これに関して、「から誘導される」とは、カチオン性ポリマー分散剤のポリマー骨格が、反復単位を含み、すなわち、反復単位が、カチオン性ポリマー分散剤のポリマー骨格に組み入れられ、反復単位が、重合反応の過程で対応するモノマーから形成されることを意味する。例えば、カチオン性ポリマー分散剤が、トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミド(=DIMAPA quat.)から誘導される場合、下記の反復単位がポリマー骨格に組み入れられる:
【0040】
【化3】

【0041】
カチオン性ポリマー分散剤が、少なくとも1つのカチオン性モノマー(例えば、DIMAPA quat.)および少なくとも1つの非イオン性モノマー(例えば、アクリルアミド)のコポリマーである場合、カチオン性モノマーの含有量は、カチオン性ポリマー分散剤に組み入れられるすべのモノマーの総重量を基準として、好ましくは、少なくとも50重量%、より好ましくは、少なくとも60重量%、さらにより好ましくは、少なくとも70重量%、さらにより好ましくは、少なくとも80重量%、最も好ましくは、少なくとも90重量%、特に、少なくとも95重量%である。
【0042】
カチオン性ポリマー分散剤は、1つまたは複数のカチオン性モノマーから、より好ましくは、単一のカチオン性モノマーから誘導されることが好ましい。
【0043】
好ましい実施形態において、カチオン性ポリマー分散剤は、1つまたは複数のラジカル重合性の、エチレン性不飽和モノマーから誘導される。カチオン性ポリマー分散剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド(例えば、トリメチルアンモニウム-アルキル(メタ)アクリルアミドハライド)、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド(例えば、トリメチルアンモニウムアルキル(メタ)アクリレートハライド)、アルケニルトリアルキルアンモニウムハライドおよびジアルケニルジアルキルアンモニウムハライド(例えば、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド)からなる群から選択される1つまたは複数のカチオン性モノマーから誘導されることが好ましい。上述のカチオン性モノマーは、6〜25個の炭素原子、より好ましくは、7〜20個の炭素原子、最も好ましくは、7〜15個の炭素原子、特に、8〜12個の炭素原子を含むことが好ましい。
【0044】
カチオン性ポリマー分散剤は、
- (アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、アルケニルトリアルキルアンモニウムハライド、および/またはジアルケニルジアルキルアンモニウムハライド30〜100重量%、より好ましくは、50〜100重量%、さらにより好ましくは、70〜100重量%、および
- 非イオン性モノマー、さらにより好ましくは、一般式(I)
【0045】
【化4】

【0046】
(式中、
R1は、水素またはC1〜C3-アルキルを意味し、
R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1〜C5-アルキルまたはC1〜C5-ヒドロキシアルキルを意味する)による非イオン性モノマー、
最も好ましくは、(アルク)アクリルアミド0〜70重量%、より好ましくは、0〜50重量%、さらにより好ましくは、0〜30重量%から誘導されることが好ましい。
【0047】
好ましい実施形態において、カチオン性ポリマー分散剤は、ジアルケニルジアルキルアンモニウムハライド、好ましくは、ジアリルジメチルアンモニウムハライド(DADMAC)から誘導される。
【0048】
別の好ましい実施形態において、カチオン性ポリマー分散剤は、エピクロロヒドリンおよびジアルキルアミン、好ましくは、ジメチルアミンの共重合物、すなわち、ポリ-[N,N-ジメチル-2-ヒドロキシ-プロピレン-(1,3)-アンモニウムクロライド]である。
【0049】
さらに別の好ましい実施形態において、カチオン性ポリマー分散剤は、一般式(II)
【0050】
【化5】

【0051】
(式中、
R4は、水素またはC1〜C3-アルキル、好ましくは、Hまたはメチルを意味し、
Z1は、OまたはNR5を意味し、R5は、水素またはC1〜C3-アルキルであり、
Y0は、1つまたは複数のヒドロキシ基で場合により置換されているC2〜C6-アルキレン、好ましくは、C2〜C3-アルキレンを意味し、
Y1、Y2、Y3は、互いに独立して、C1〜C6-アルキル、好ましくは、メチルを意味し、
X-は、ハロゲン、擬ハロゲン(例えば、CN-、SCN-、NCS-、N3-)、アセテートまたはSO4CH3-、好ましくは、クロライドを意味する)によるカチオン性モノマーから誘導される。
【0052】
Y1、Y2およびY3は、同一であり、好ましくは、メチルであることが好ましい。好ましい実施形態において、Z1は、OまたはNHであり、Y0は、エチレンまたはプロピレンであり、R4は、水素またはメチルであり、Y1、Y2およびY3は、メチルである。一般式(II)によるカチオン性モノマーは、トリメチルアンモニウム-エチル(メタ)アクリレート(ADAME quat.)などのエステル(Z1=O)であってよい。しかしながら、一般式(II)によるカチオン性モノマーは、アミド(Z1=NH)、特に、トリメチル-アンモニウム-プロピルアクリルアミド(DIMAPA quat.)であることが好ましい。
【0053】
一般式(II)による好ましいカチオン性モノマーは、アルキルまたはアルキレン基中に1〜3個のC原子を持つ四級化されたジアルキル-アミノアルキル(メタ)アクリレートまたはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、より好ましくは、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの塩化メチルで四級化されたアンモニウム塩を包含する。
【0054】
四級化されたジメチルアミノエチルアクリレートおよびジメチルアミノプロピルアクリルアミドが特に好ましい。四級化は、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、塩化メチルまたは塩化エチルを使用して行うことができる。好ましい実施形態において、モノマーは、塩化メチルで四級化される。
【0055】
カチオン性ポリマー分散剤が、コポリマーである場合、それは、少なくとも1つの非イオン性モノマーとの組合せで少なくとも1つのカチオン性モノマーから誘導されることが好ましい。
【0056】
適当な非イオン性モノマーは、一般式(I)による非イオン性モノマーを包含する。一般式(I)による非イオン性モノマーの例は、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミドまたはN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチル(メタ)アクリルアミドもしくはN-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N-置換(メタ)アクリルアミドを包含する。
【0057】
さらなる適当な非イオン性モノマーは、一般式(III)
【0058】
【化6】

【0059】
(式中
Z2は、O、NHまたはR6がC1〜C3-アルキルであるNR6を意味し、
R7は、水素またはC1〜C3-アルキルを意味し、
R8は、C2〜C6-アルキレンを意味し、
R9は、水素、C8〜C32-アルキル、C8〜C32-アリールおよび/またはC8〜C32-アラルキルを意味し、
nは、1〜50、好ましくは、1〜20の間の整数を意味する)による非イオン性両親媒性モノマーを包含する。
【0060】
一般式(III)の両親媒性モノマーの例は、脂肪アルコールでエーテル化されている、(メタ)アクリル酸およびポリエチレングリコール(10〜50個のエチレンオキシド単位)の反応生成物、または(メタ)アクリルアミドとの対応する反応生成物を包含する。
【0061】
好ましい実施形態において、カチオン性ポリマー分散剤は、実質的に線状であり、すなわち、架橋剤を含有するモノマー混合物から誘導されない。
【0062】
別の好ましい実施形態において、カチオン性ポリマー分散剤は、架橋されている。適当な架橋剤の例は、当業者に知られており、本明細書において下でさらに記載される。
【0063】
架橋は、ラジカル反応により、すなわち、すべてのポリマー鎖、すなわち、「主骨格」の伝播の過程で達成することができる。そのために、架橋剤は、フリーラジカル鎖成長反応において反応することができる適切な数のエチレン性不飽和基を含有することが好ましい。
【0064】
しかしながら、代替方法として、架橋は、非ラジカル反応、例えば、当業者に知られている付加反応または縮合反応により達成することができる。そのために、架橋剤は、場合により、反応パートナー試薬の添加の後に、お互いと反応することができる適切な数の官能基を含有することが好ましい。これらの環境下で、架橋は、他のモノマーのラジカル重合と同時に開始させることができる。しかしながら、架橋は、他のモノマーのラジカル重合に続いて開始されることが好ましく、すなわち、架橋剤は、第一の反応工程において非架橋ポリマーに組み入れられ、その後、お互いと架橋される。
【0065】
両方の場合に、架橋剤は、ポリマー骨格に先ず組み入れられることが好ましい。このようにして、架橋剤は、フリーラジカル重合反応において他のモノマーと反応することができるように、少なくとも単一のエチレン性不飽和官能基を含有することが好ましい。
【0066】
架橋カチオン性コポリマーは、モノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の好ましくはエチレン性の不飽和架橋剤0.0001〜1.25重量%、好ましくは、0.0001〜1.0重量%、より好ましくは、0.0001〜0.5重量%、さらにより好ましくは、0.0001〜0.1重量%、さらにより好ましくは、0.0001〜0.05重量%、最も好ましくはかつ特に、0.0001〜0.02重量%を含有するモノマー組成物から誘導されることが好ましい。
【0067】
水性反応混合物は、カチオン性ポリマー分散剤との組合せで追加の水溶性分散剤構成成分を含有することができる。これらの環境下で、前記追加の水溶性分散剤構成成分に対するカチオン性ポリマー分散剤の重量比は、1:0.01から1:0.5まで、好ましくは、1:0.01〜1:0.3の範囲内であることが好ましい。例えば、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、デンプン、デンプン誘導体、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルスクシンイミド、ポリビニル-2-メチルスクシンイミド、ポリビニル-1,3-オキサゾリジン-2-オン、ポリビニル-2-メチルイミダゾリンおよび/またはそれらのマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の塩および/または(メタ)アクリルアミド化合物とのそれぞれのコポリマーを、追加の水溶性分散剤構成成分として記述することができる。
【0068】
カチオン性ポリマー分散剤の他に、水性反応混合物は、モノマー組成物を含む。モノマー組成物は、
a)一般式(I)による非イオン性モノマー少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも20重量%、
b)一般式(II)によるカチオン性モノマー少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも20重量%、好ましくは、20〜47重量%または50.5〜80重量%、
c)1つまたは複数の好ましくはエチレン性の不飽和架橋剤0.0001〜1.25重量%、
d)場合により、1つまたは複数の疎水性(メタ)アクリル酸C4〜18-アルキルエステル1.25重量%まで、および
e)場合により、さらなるエチレン性不飽和モノマーを含み、すべてのパーセンテージは、モノマーの総モル量を基準とする。
【0069】
これに関して、重量%での値の和が、100重量%になる必要がないのは、さらなるエチレン性不飽和モノマーe)が、モノマー組成物中に、すなわち、水性反応混合物中に含有されることがあり、モノマーの総量を決定する場合に考慮されなければならないからである。しかしながら、モノマー組成物は、重量%での3つの値の和が、100重量%になる、すなわち、さらなるモノマーが存在しないように、モノマーa)、b)およびc)からなることが好ましい。
【0070】
モノマー組成物は、すべてのモノマーの総モル量を基準として、一般式(I)による非イオン性モノマー少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも20重量%、好ましくは、少なくとも25重量%、より好ましくは、少なくとも30重量%、さらにより好ましくは、少なくとも35重量%、さらにより好ましくは、少なくとも40重量%、最も好ましくは、少なくとも45重量%、特に、少なくとも50重量%を含有する。
【0071】
好ましい実施形態において、モノマー組成物は、すべてのモノマーの総モル量を基準として、一般式(I)による非イオン性モノマー53〜80重量%、好ましくは、67±12重量%、より好ましくは、67±11重量%、さらにより好ましくは、67±10重量%、さらにより好ましくは、67±9重量%、最も好ましくは、67±8重量%、特に、67±7重量%を含有する。
【0072】
別の好ましい実施形態において、モノマー組成物は、すべてのモノマーの総モル量を基準として、一般式(I)による非イオン性モノマー20〜49.5重量%、好ましくは、34±12重量%、より好ましくは、34±11重量%、さらにより好ましくは、34±10重量%、さらにより好ましくは、34±9重量%、最も好ましくは、34±8重量%、特に、34±7重量%を含有する。
【0073】
式(I)による非イオン性エチレン性不飽和モノマーは、水溶性であることが好ましい。式(I)による非イオン性モノマーは、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチル(メタ)アクリルアミドおよびN-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択されることが好ましい。アクリルアミドが特に好ましい。
【0074】
モノマー組成物は、すべてのモノマーの総モル量を基準として、上で定義されているような一般式(II)によるカチオン性モノマー少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも20重量%、好ましくは、少なくとも25重量%、より好ましくは、少なくとも30重量%、さらにより好ましくは、少なくとも35重量%、さらにより好ましくは、少なくとも40重量%、最も好ましくは、少なくとも45重量%、特に、少なくとも50重量%をさらに含有する。
【0075】
好ましい実施形態において、モノマー組成物は、すべてのモノマーの総モル量を基準として、一般式(II)によるカチオン性モノマー20〜47重量%、好ましくは、33±12重量%、より好ましくは、33±11重量%、さらにより好ましくは、33±10重量%、さらにより好ましくは、33±9重量%、最も好ましくは、33±8重量%、特に、33±7重量%を含有する。
【0076】
別の好ましい実施形態において、モノマー組成物は、すべてのモノマーの総モル量を基準として、一般式(II)によるカチオン性モノマー50.5〜80重量%、好ましくは、66±12重量%、より好ましくは、66±11重量%、さらにより好ましくは、66±10重量%、さらにより好ましくは、66±9重量%、最も好ましくは、66±8重量%、特に、66±7重量%を含有する。
【0077】
一般式(II)によるカチオン性モノマーは、水溶性であることが好ましい。
【0078】
一般式(II)によるカチオン性モノマーは、アミド(Z1=NH)、例えば、トリメチルアンモニウムアルキル(メタ)アクリルアミドハライド、特に、塩化メチルで四級化されたジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DIMAPA quat.)である。
【0079】
しかしながら、一般式(II)によるカチオン性モノマーは、エステル(Z1=O)、例えば、トリメチルアンモニウムアルキル(メタ)アクリレートハライド、特に、塩化メチルで四級化されたジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(ADAME quat.)であることがより好ましい。一般式(II)によるカチオン性モノマーは、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドおよびジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの塩化メチルで四級化されたアンモニウム塩からなる群から選択されることが好ましい。
【0080】
一般式(II)によるカチオン性モノマーのラジカル反応性比r1および一般式(I)による非イオン性モノマーのラジカル反応性比r2は、各々、0.01から100まで、より好ましくは、0.02〜50、さらにより好ましくは、0.05〜20、最も好ましくは、0.1〜10、特に、0.2〜5の範囲内であることが好ましい。この文脈において、r1は、カチオン性エチレン性不飽和モノマーのラジカルが関わる2つの伝播定数の比として定義される。比は、コモノマーの付加についての伝播定数(k12)に対してラジカルに付加する同じタイプのモノマーについての伝播定数(k11)を常に比較し、すなわち、r1=k11/k12である。同様に、r2= k22/k21である。さらなる詳細については、例えば、Paul C. Hiemenz、Polymer Chemistry、Marcel Dekker New York、1984、Chapter 7.2に言及することができる。
【0081】
カチオン性ポリマー分散剤が、カチオン性エチレン性不飽和モノマーからも誘導される場合、前記カチオン性エチレン性不飽和モノマーは、モノマー組成物中、すなわち、水性反応混合物中に含有される一般式(II)によるカチオン性モノマーと異なっているか同一であってよい。両モノマーは、架橋カチオン性コポリマーの反復単位が、カチオン性ポリマー分散剤の反復単位と異なるように、互いに異なることが好ましい。このようにして、カチオン性ポリマー分散剤および架橋カチオン性コポリマーは、互いに異なることが好ましく、前記相違には、異なる分子量および/または化学構造などの物理的変数、ならびに異なるモノマー組成物がおそらく関わる。
【0082】
モノマー組成物は、モノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の好ましくはエチレン性の不飽和架橋剤0.0001〜1.25重量%をさらに含有する。
【0083】
架橋剤は、当業者に知られている。一部の態様は、架橋カチオン性コポリマーに関連して上ですでに記載されてきた。これらの態様は、架橋カチオン性コポリマーの架橋剤にも当てはまるものとし、逆もまた同様である。
【0084】
本発明によれば、架橋剤は、ラジカル重合性である好ましくはエチレン性の不飽和基を含有する。エチレン性不飽和架橋剤は、2、3、4または5個のエチレン性不飽和基を含有することが好ましい。
【0085】
2つのラジカル重合性のエチレン性不飽和基を持つ架橋剤の例は、
(1) 1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,18-オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンジ(メタ)アクリレート、2,2'-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、および1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルケニルジ(メタ)アクリレート;
(2)アルキレンジ(メタ)アクリルアミド、例えば、N-メチレンジ(メタ)アクリルアミド、N,N'-3-メチル-ブチリデンビス(メタ)アクリルアミド、N,N'-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビス(メタ)アクリルアミド、好ましくは、N,N'-ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、特に好ましくは、N,N'-メチレンビス(メタ)アクリルアミド;
(3)一般式(IV)
【0086】
【化7】

【0087】
(式中
R10は、水素またはメチルであり、
R11は、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、または-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-から選択され、
mは、範囲2〜50の整数である)によるポリアルコキシジ(メタ)アクリレートを包含する。
【0088】
一般式(IV)による架橋剤の例は、範囲4〜25のmを持つポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;範囲5〜40のmを持つポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート;好ましくは、範囲2〜45のmを持つポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;より好ましくは、範囲5〜20のmを持つポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを包含し;
(4)使用することができる追加のジ(メタ)アクリレートの例は、ベンジリデンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-Aジ(メタ)アクリレート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2-プロパノール、ヒドロキノンジ(メタ)アクリレート、エタンジチオールジ(メタ)アクリレート、プロパンジチオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンジチオールジ(メタ)アクリレート、およびポリプロピレンジチオールジ(メタ)アクリレートを包含し;
(5)ジビニル化合物、例えば、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、ブタジエン、1,6-ヘキサジエン;例えば、ジ(メタ)アリルフタレートまたはジ(メタ)アリルスクシネートなどのジ(メタ)アリル化合物;ビニル(メタ)アクリル酸化合物、例えば、ビニルジ(メタ)アクリレート;または、好ましくは、(メタ)アリル(メタ)アクリル酸化合物、例えば、アリル(メタ)アクリレート。
【0089】
3個以上のエチレン性不飽和ラジカル重合性基を有する架橋剤の例は、グリセリントリ(メタ)アクリレート、2,2-ジヒドロキシメチル-1-ブタノールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメタクリルアミド、(メタ)アリリデンジ(メタ)アクリレート、3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルアミン、シアヌル酸トリアリルまたはイソシアヌル酸トリアリルと; (4個以上のエチレン性不飽和ラジカル重合性基を持つ代表的化合物として)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびN,N,N'N'-テトラ(メタ)アクリロイル-1,5-ペンタンジアミンも包含する。
【0090】
5個のエチレン性不飽和ラジカル重合性基を有する架橋剤の一例は、ジペンタエリスリトール-ペンタアクリレートである。
【0091】
特に好ましい架橋剤は、メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびトリアリルアミンからなる群から選択される。
【0092】
さらなる好ましい架橋剤は、非対称に架橋性のモノマー、すなわち、ポリマー骨格内への組み入れ反応および架橋反応に関して異なる官能基に依存する架橋性モノマーを包含する。そのような非対称に架橋性のモノマーの例は、N'-メチロールアクリルアミド、N'-メチロールメタクリルアミドおよびグリシジル(メタ)アクリレートを包含する。
【0093】
このタイプの架橋剤は、架橋を後で開始することができるという利点を有する。このようにして、架橋は、主骨格のラジカル重合と異なる条件下で行うことができる。架橋は、反応条件、例えば、pH値(酸または塩基の添加)、温度などを変えた後に開始されることが好ましい。
【0094】
好ましい実施形態において、架橋は、前のラジカル重合反応の温度より最高で約40℃高い温度にて後反応として行われる。架橋は、0.1〜10時間続くことがある。典型的には、架橋は、前のラジカル重合反応の温度より5〜15℃高い温度にて0.5〜3時間にわたって行われる。
【0095】
非対称に架橋性のモノマーは、N-メチロール基を含有することが好ましい。N-メチロール-化合物(N-ヒドロキシメチル化合物)は、当業者に知られており、例えば、ホルムアルデヒドのアミドまたはアミンとの縮合により調製することができる。N-メチロール基は、他のN-メチロール基と(自己架橋)ならびにアミド基またはヒドロキシ基などの他の官能基と(パートナー架橋)反応することができる。好ましいパートナーは、アクリルアミドのアミド部分である。
【0096】
本明細書のために、架橋剤としての非対称に架橋性のモノマーの好ましい量は、非対称に架橋性のモノマー自体を指すことが好ましいが、いかなる非対称でない架橋性モノマーも包含しない。例えば、架橋が、N-メチロール基を含有するモノマーおよびアクリルアミドの反応により達成される場合、架橋剤の好ましい量は、アクリルアミドの量を包含しない。
【0097】
代替方法として、架橋は、それら自体がラジカル重合性ではない化合物により達成することができる。そのような化合物は、例えば、異なるポリマー鎖のアクリルアミド残基のアミド部分と反応し、それによって架橋ポリマーネットワークに導くことができる少なくとも2個のN-メチロール基を含むことがある。例は、ジメチロール尿素、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンまたは低分子水溶性メラミン樹脂を包含する。そのような化合物は、ラジカル重合反応より前にかつ/またはラジカル重合反応の過程で添加することができるが、それらは、反応しないか、わずかに反応するに過ぎない。典型的には、それらは、上に記載されているような高温にて後反応で反応する。
【0098】
フリーラジカル重合において反応しないが、このようにして得られるポリマーを架橋することができるような化合物の別の例は、典型的には水溶液中で水和されているグリオキサールである。グリオキサールに基づく架橋反応は、下に図示される:
【0099】
【化8】

【0100】
モノマー組成物は、モノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の好ましくはエチレン性の不飽和架橋剤0.0001〜1.25重量%、好ましくは、0.0001〜1.0重量%、より好ましくは、0.0001〜0.5重量%、さらにより好ましくは、0.0001〜0.1重量%、さらにより好ましくは、0.0001〜0.05重量%、最も好ましくはかつ特に、0.0001〜0.02重量%を含有する。
【0101】
当業者は、架橋剤の総量が、必ずしも重合反応のまさに最初から存在しなくてもよいことに気が付いている。架橋剤は、重合反応の過程で添加することもできる。架橋剤自体が、いかなるラジカル重合性基も持っていない場合、すなわち、架橋が、上のグリオキサール連結などの別の化学反応に基づく場合、架橋剤の全量を、ラジカル重合反応の後で添加することさえできる。これに関して、フリーラジカル重合反応にかけられる水性反応混合物への1つまたは複数の架橋剤0.0001〜1.25重量%の含有量は、フリーラジカル重合反応の後に添加することもでき、ただし、適当な後反応は、このようにして得られる水中水型ポリマー分散液が、架橋カチオン性コポリマーを含有するように起こることとする。
【0102】
したがって、本発明は、水中水型ポリマー分散液を製造するための方法であって、
A) (i)カチオン性ポリマー分散剤と、
(ii) a)モノマーの総重量を基準として、一般式(I)による非イオン性モノマー少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも20重量%
【0103】
【化9】

【0104】
(式中、
R1は、水素またはC1〜C3-アルキルを意味し、
R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1〜C5-アルキルまたはC1〜C5-ヒドロキシアルキルを意味する)、
b)モノマーの総重量を基準として、一般式(II)によるカチオン性モノマー少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも20重量%、好ましくは20〜47重量%または50.5〜80重量%
【0105】
【化10】

【0106】
(式中、
R4は、水素またはC1〜C3-アルキルを意味し、
Z1は、OまたはNR5を意味し、R5は、水素またはC1〜C3-アルキルであり、
Y0は、1つまたは複数のヒドロキシ基で場合により置換されているC2〜C6-アルキレンを意味し、
Y1、Y2、Y3は、互いに独立して、C1〜C6-アルキルを意味し、
X-は、ハロゲン、擬ハロゲン、アセテート、またはSO4CH3-を意味する)、
c)モノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の疎水性(メタ)アクリル酸C4〜18-アルキルエステル0〜1.25重量%、および
d)場合により、さらなるエチレン性不飽和モノマー
を含むモノマー組成物と
を含む水性反応混合物を、カチオン性プレポリマーが得られるようにフリーラジカル重合反応にかける工程と、
B)このようにして得られるプレポリマーに、工程A)で用いられるモノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の架橋剤0.0001〜1.25重量%を添加する工程と、
C)得られる水中水型ポリマー分散液が架橋カチオン性コポリマーを含有するように、プレポリマーを架橋反応(後反応)にかける工程と
を含む方法にも関する。
【0107】
これに関して、「モノマー組成物」という用語は、架橋反応を行うことより前のプレポリマーおよび架橋剤を含む組成物も包含するものとする。
【0108】
モノマー組成物は、場合により、モノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の疎水性(メタ)アクリル酸C4〜18-アルキルエステル1.25重量%までを含有する。しかしながら、モノマー組成物は、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリルなどのいかなる疎水性(メタ)アクリル酸C4〜18-アルキルエステルも含有しないことが好ましい。
【0109】
モノマー組成物は、いかなる疎水性モノマーも含有しないことが好ましい。これに関して、疎水性モノマーは、水溶性ではないモノマーとして定義されることが好ましい。このようにして、モノマー組成物は、10g l-1未満、より好ましくは、25g l-1未満、さらにより好ましくは、50g l-1未満、さらにより好ましくは、100g l-1未満、最も好ましくは、250g l-1未満、特に、500g l-1未満の周囲温度における純水中での溶解度を有するいかなるモノマーも含有しないことが好ましい。
【0110】
モノマー組成物は、一般式(V)
【0111】
【化11】

【0112】
(式中、
R12は、水素またはC1〜5-アルキルであり、
R13は、各々が1〜20個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはアラルキル;または-C(=O)-Z0-R14 (式中、Z0は、O、NHまたはR14が、各々が1〜20個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはアラルキルであるNR14である)によるいかなる疎水性モノマーも含有しないことが好ましい。
【0113】
モノマー組成物は、場合により、ラジカル重合性であるさらなるエチレン性不飽和ポリマーを含有することができる。しかしながら、モノマー組成物は、そのようなモノマーを含有しないことが好ましく、すなわち、構成成分a)、b)、c)および、場合により、d)からなることが好ましく、構成成分a)、b)およびc)からなることが特に好ましい。
【0114】
本発明による水性反応混合物の好ましい実施形態において、
- カチオン性ポリマー分散剤は、トリメチルアンモニウムアルキル(メタ)アクリレートハライドおよびトリメチルアンモニウムアルキル(メタ)アクリルアミドハライドから選択される少なくとも1つのモノマーから誘導されるカチオン性ポリマーであり、かつ/または
- 一般式(II)によるカチオン性モノマーは、トリメチルアンモニウムアルキル(メタ)アクリレートハライド、トリメチルアンモニウムアルキル(メタ)アクリルアミドハライドおよびジアリルジアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択され、かつ/または
- 一般式(I)による非イオン性モノマーは、(メタ)アクリルアミドである。
【0115】
本発明による水性反応混合物の特に好ましい実施形態において、
- カチオン性ポリマー分散剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライドを含む1つまたは複数のモノマーから誘導され、
- 一般式(II)によるカチオン性モノマーは、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライドであり、
- 一般式(I)による非イオン性モノマーは、(アルク)アクリルアミドである。
【0116】
本発明による方法は、水性反応混合物をフリーラジカル重合反応にかける工程を包含する。通常、フリーラジカル重合反応が開始される前に、水性反応混合物は、その構成成分(i)および(ii)から、すなわち、カチオン性ポリマー分散剤およびモノマー組成物から調製される。
【0117】
水性反応混合物の調製は、当業者に知られている。構成成分は、同時にまたは連続して添加することができる。構成成分は、従来の手段により、例えば、液体を注ぐか落とすことにより、粉末を投入することなどにより添加することができる。
【0118】
原理上は、水性反応混合物が調製される場合に、各構成成分の全量が初めから存在することは必要ではない。代替方法として、モノマーの部分的分散を、重合の開始時に行うことができ、モノマーの残部は、定量部分としてか、重合の全過程にかけて配給される連続フィードとして添加される。例えば、特定の構成成分のある部分のみ、例えば、一般式(II)によるカチオン性モノマー70重量%のみを初めに用い、その後、おそらく重合反応の過程で、前記特定の構成成分の残部、例えば、一般式(II)によるカチオン性モノマーの残りの30重量%が用いられる。
【0119】
本発明による方法の好ましい実施形態において、水性反応混合物がラジカル重合にかけられる前に、水溶性塩が、水性反応混合物の総重量を基準として、0.1〜5.0重量%の量で添加される。
【0120】
アンモニウム、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属塩、好ましくは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよび/またはマグネシウム塩を、水溶性塩として使用することができる。そのような塩は、無機酸または有機酸の、好ましくは、有機カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸の、または鉱酸の塩であってよい。水溶性塩は、脂肪族または芳香族のモノ-、ジ-、ポリカルボン酸の、ヒドロキシカルボン酸の、好ましくは、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸もしくは安息香酸、または硫酸、塩化水素酸もしくはリン酸の塩であることが好ましい。塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムおよび/または硫酸ナトリウムが水溶性塩として使用されることが極めて特に好ましい。
【0121】
塩は、重合前、重合中、または重合後に添加することができ、重合は、水溶性塩の存在下で行われることが好ましい。
【0122】
水性反応混合物を調製された後、それは、フリーラジカル重合反応にかけられ、すなわち、カチオン性ポリマー分散剤の存在下での一般式(II)によるカチオン性モノマー、一般式(I)による非イオン性モノマー、ならびに架橋剤および場合により存在するさらなるモノマーを含むモノマー組成物の重合が開始され、それによって、水中水型ポリマー分散液中に分散された架橋カチオン性コポリマーが得られる。
【0123】
当業者は、水性反応混合物中でモノマーをラジカル重合する方法を知っている。典型的には、重合反応は、1つまたは複数の従来の重合開始剤の存在下で行われる。
【0124】
ラジカルは、例えば、熱的に誘導されるか光化学的に誘導される単結合のホモリシスまたはレドックス反応で形成することができる。
【0125】
適当な水溶性開始剤の例は、例えば、2,2'-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4'-アゾビス-(4-シアノペンタン酸)、2,2'-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)二塩酸塩または過硫酸アンモニウム/硫酸第二鉄などのレドックス系を包含する。油溶性開始剤は、例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイルもしくは過酸化ジ-tert-ブチル、または2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチルおよび2,2'-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物を包含する。開始剤は、個々にかまたは組合せで、一般的には水性反応混合物の総重量の約0.015〜0.5重量%の量で使用することができる。当業者は、得られるポリマー生成物の特性、例えば、その平均分子量を改変するために開始剤の量およびタイプを改変する方法をたいてい知っている。
【0126】
2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩などのアゾ化合物が、または、好ましくは、場合により、還元剤、例えば、アミンまたは亜硫酸ナトリウムとの組合せで過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素が、ラジカル開始剤として使用されることが好ましい。重合されることになるモノマーに対する開始剤の量は、一般的に、10-3から1.0重量%まで、好ましくは、10-2から0.1重量%までの範囲である。開始剤は、重合の開始時に完全に添加するか一部のみを添加し、その後重合の全過程にかけて残量を配分することもできる。好ましい実施形態において、重合は、ペルオキソ二硫酸ナトリウムによって開始され、最高温度に達した後、2,2'-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)二塩酸塩などのアゾ開始剤で続けられる。重合の終了時、レドックス開始剤系が、残留モノマーの含有量を低減するために添加されることが好ましい。
【0127】
別の有利な実施形態において、発熱性重合反応が終了したらすぐに、すなわち、一般的には温度が最高になった後で、残留モノマーの含有量は、レドックス開始剤の続く添加によりさらに低減される。
【0128】
本発明による方法の別の有利な実施形態において、水性反応混合物およびカチオン性ポリマー分散剤は、重合中に重合反応器中に配分される。一般に、一部、例えば、モノマー10〜20%およびカチオン性ポリマー分散剤が初めに導入される。重合の開始に続いて、上述の配分が、場合により、重合開始剤のさらなる配分を伴って行われる。
【0129】
加えて、重合中に水を除去し、場合により、さらなるカチオン性ポリマー分散剤を添加することも可能である。
【0130】
重合温度は、一般的に、0〜120℃、好ましくは、30〜90℃である。重合温度は、使用される開始剤の分解動力学に基づいて選択することができる。
【0131】
重合時間は、当技術分野において従来使用されるものと同じであり、一般的に、1.5〜18時間、好ましくは、2〜6時間であるが、早ければ2分の1時間が使用されるかもしれない。しかしながら、より短時間でより急速な重合を試みることは、熱を除去することに関する問題を生み出す。これに関して、重合中に、重合媒体を良く撹拌するか、さもなければかき混ぜることが大いに好ましい。
【0132】
重合のために利用される器具は、単に、水中油型または油中水型または水中水型重合のために使用されるような標準的反応器であってよい。
【0133】
重合転化率または重合の終了は、残留モノマーの含有量を決定することにより容易に検出することができる。このための方法は、当業者に良く知られている(例えば、HPLC)。
【0134】
重合は、系が、不活性ガスでパージされ、不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素雰囲気下で重合されるように行われることが好ましい。
【0135】
重合に続いて、好ましくは、撹拌しながら、分散液に塩または酸などのさらなる添加物を場合により添加する前に水性反応混合物を冷却することが有利であることがある。
【0136】
残留モノマー含有量を低減するため、重合の過程中に温度を上げることも可能である。代替方法として、重合中および重合の終了時に追加の開始剤および/または残留モノマー破壊剤(destructor)を使用することも可能である。
【0137】
本発明の意味内の残留モノマー破壊剤は、それらがもはや重合性ではない、本発明の意味内で、それらがもはやモノマーではないように化学反応によって重合性モノマーを改変する物質である。モノマー中に存在する二重結合と反応する物質および/またはより広範囲の重合を開始することができる物質をこのために使用することができる。二重結合と反応する残留モノマー破壊剤として、還元剤、例えば、好ましくは、VI未満の酸化数を有する硫黄から誘導される酸および酸の中性塩の群からの物質、好ましくは、亜ジチオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたは二亜硫酸ナトリウム、および/または硫化水素基を有する物質、好ましくは、硫化水素ナトリウムまたはチオールの群からの化合物、好ましくは、メルカプトエタノール、ドデシルメルカプタン、チオプロピオン酸もしくはチオプロピオン酸の塩またはチオプロパンスルホン酸もしくはチオプロパンスルホン酸の塩、および/または、アミンの群から、好ましくは、低揮発性を持つアミンの群からの物質、好ましくは、ジイソプロパノールアミンまたはアミノエチルエタノールアミン、および/またはブンテ(Bunte)塩、ホルムアミジンスルフィン酸、二酸化硫黄、二酸化硫黄の水性および有機溶液またはチオ尿素を含む群からの物質を使用することができる。
【0138】
水中水型ポリマー分散液は、多くても5,000ppm、より好ましくは、多くても2,500ppm、さらにより好ましくは、多くても1,000ppm、さらにより好ましくは、多くても800ppm、最も好ましくは、多くても600ppm、特に、多くても400ppmのカチオン性エチレン性不飽和モノマーの残留含有量を有することが好ましい。
【0139】
水中水型ポリマー分散液は、多くても5,000ppm、より好ましくは、多くても2,500ppm、さらにより好ましくは、多くても1,000ppm、さらにより好ましくは、多くても800ppm、最も好ましくは、多くても600ppm、特に、多くても400ppmの式(I)による非イオン性モノマーの残留含有量を有することが好ましい。
【0140】
重合反応は、水性反応混合物を水中水型ポリマー分散液に変換する。
【0141】
重合反応後、得られる水中水型ポリマー分散液は、溶媒の含有量を低減するために蒸留することができる。
【0142】
本発明による方法の好ましい実施形態において、酸は、水性反応混合物の総重量を基準として、0.1〜5.0重量%の量で添加される。水溶性の有機酸および/または無機酸が存在することができる。より具体的に、適当な有機水溶性の酸は、有機カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、好ましくは、脂肪族または芳香族のモノ-、ジ-、ポリカルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸、好ましくは、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、特に好ましくは、クエン酸、アジピン酸および/または安息香酸である。適当な無機酸は、水溶性鉱酸、好ましくは、塩化水素酸、硫酸、硝酸および/またはリン酸である。極めて特に好ましいのは、クエン酸、アジピン酸、安息香酸、塩化水素酸、硫酸および/またはリン酸である。
【0143】
水性反応混合物は、少なくとも1つの酸0.5〜5.0重量%および/または少なくとも1つの塩0.5〜5.0重量%を含有することが好ましく、酸および塩の全体の含有量は、分散液の総重量を基準として、5.0重量%になることが好ましい。塩ならびに酸が存在する場合、塩のアニオンは、酸の化学的性質と異なり、すなわち、酸が、クエン酸である場合、塩は、クエン酸塩ではないことが好ましい。
【0144】
本発明のさらなる態様は、水、カチオン性ポリマー分散剤および架橋カチオン性コポリマーを含む水中水型ポリマー分散液に関する。
【0145】
水中水型ポリマー分散液は、
(i)カチオン性ポリマー分散剤と、
(ii) a)モノマーの総重量を基準として、一般式(I)による非イオン性モノマー少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも20重量%
【0146】
【化12】

【0147】
(式中、
R1は、水素またはC1〜C3-アルキルを意味し、
R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1〜C5-アルキルまたはC1〜C5-ヒドロキシアルキルを意味する)、
b)モノマーの総重量を基準として、一般式(II)によるカチオン性モノマー少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも20重量%
【0148】
【化13】

【0149】
(式中、
R4は、水素またはC1〜C3-アルキルを意味し、
Z1は、OまたはNR5を意味し、R5は、水素またはC1〜C3-アルキルであり、
Y0は、1つまたは複数のヒドロキシ基で場合により置換されているC2〜C6-アルキレンを意味し、
Y1、Y2、Y3は、互いに独立して、C1〜C6-アルキルを意味し、
X-は、ハロゲン、擬ハロゲン、アセテート、またはSO4CH3-を意味する)、
c)モノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の好ましくはエチレン性の不飽和架橋剤0.0001〜1.25重量%、
d)モノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の疎水性(メタ)アクリル酸C4〜18-アルキルエステル0〜1.25重量%、および
e)場合により、さらなるエチレン性不飽和モノマー
を含有するモノマー組成物から誘導される架橋カチオン性コポリマーと
を含む。
【0150】
水中水型ポリマー分散液は、上に記載されている本発明による方法により得ることができることが好ましい。
【0151】
本発明による水中水型ポリマー分散液は、水中水型ポリマー懸濁液、水中水型ポリマー乳濁液、水中水型ポリマー溶液またはそれらの混合物であってよい。
【0152】
本発明による水中水型ポリマー分散液の好ましい実施形態において、架橋カチオン性コポリマーの重量平均分子量Mwは、カチオン性ポリマー分散剤の重量平均分子量Mwより大きい。当業者は、架橋カチオン性コポリマーの重量平均分子量を測定する方法、および、例えば、開始剤濃度を改変すること、連鎖移動剤の添加などにより架橋カチオン性コポリマーの重量平均分子量に影響を及ぼす方法を知っている。重量平均分子量は、プルラン標準品に対して好ましくは溶離液として1.5%ギ酸を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、またはレオロジー的測定により測定されることが好ましい。
【0153】
架橋カチオン性コポリマーは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、さらにより好ましくは、少なくとも99%、さらにより好ましくは、少なくとも99.9%、最も好ましくは、少なくとも99.95%、特に、少なくとも99.99%の重合度を示すことが好ましい。
【0154】
架橋カチオン性コポリマーの重量平均分子量は、少なくとも1,000,000g mol-1、より好ましくは、少なくとも1,250,000g mol-1、さらにより好ましくは、少なくとも1,500,000g mol-1、さらにより好ましくは、少なくとも1,750,000g mol-1、最も好ましくは、少なくとも2,000,000g mol-1、特に、少なくとも2,500,000g mol-1であることが好ましい。
【0155】
架橋カチオン性コポリマーの分子量分散度Mw/Mnは、1.0から4.0まで、より好ましくは1.5〜3.5、特に、1.8〜3.2の範囲内であることが好ましい。好ましい実施形態において、Mw/Mnは、2.7±0.7、より好ましくは、2.7±0.5、さらにより好ましくは、2.7±0.4、さらにより好ましくは、2.7±0.3、最も好ましくは、2.7±0.2、特に、2.7±0.1の範囲内である。
【0156】
架橋カチオン性コポリマーの含有量は、水中水型ポリマー分散液の総重量を基準として、0.1から90重量%まで、より好ましくは1.0〜80重量%、さらにより好ましくは2.5〜70重量%、さらにより好ましくは5.0〜60重量%、最も好ましくは10〜40重量%、特に、15〜25重量%の範囲内であることが好ましい。
【0157】
全体のポリマー含有量、すなわち、架橋カチオン性コポリマーおよびポリマー分散剤の含有量は、分散液の総重量を基準として、40±20重量%、より好ましくは、40±15重量%、さらにより好ましくは、40±15重量%、最も好ましくは、40±5重量%の範囲内であることが好ましい。好ましい実施形態において、全体のポリマー含有量は、少なくとも36重量%、より好ましくは、少なくとも37重量%、さらにより好ましくは、少なくとも38重量%、最も好ましくは、少なくとも39重量%、最も好ましくは、少なくとも40重量%であり、特に、40から45重量%までの範囲内である。
【0158】
好ましい実施形態において、カチオン性ポリマー分散剤に対する架橋カチオン性コポリマーの相対重量比は、10:1から0.1:1まで、より好ましくは、9:1〜0.25:1、さらにより好ましくは、8:1〜0.5:1、さらにより好ましくは、7:1〜1:1、最も好ましくは、6:1〜2:1、特に、5:1〜3:1の範囲内である。別の好ましい実施形態において、カチオン性ポリマー分散剤に対する架橋カチオン性コポリマーの相対重量比は、9:1から0.05:1まで、より好ましくは、7:1〜0.1:1、さらにより好ましくは、5:1〜0.3:1、さらにより好ましくは、3:1〜0.5:1、最も好ましくは、2:1〜1:1、特に、1.5:1〜1.2:1の範囲内である。架橋カチオン性コポリマー:カチオン性ポリマー分散剤の相対重量比は、>1:1であることが好ましい。
【0159】
架橋カチオン性コポリマーおよびカチオン性ポリマー分散剤を含む水中水型ポリマー分散液中に存在するポリマー混合物の重量平均分子量Mwは、GPC法に従って測定されるように、1.5×106g/mol超の範囲にあることが好ましい。
【0160】
本発明による水中水型ポリマー分散液は、
- 500から5,000mPasまで、より好ましくは、800〜3,000mPas、さらにより好ましくは、1,000〜2,500mPas、最も好ましくは、1,200〜2,000mPas、特に、1,400〜1,800mPasの範囲内の溶液粘度(ブルックフィールドによる)、および/または
- 1,000から50,000mPasまで、より好ましくは、5,000〜30,000mPas、さらにより好ましくは、8,000〜25,000mPas、最も好ましくは、10,000〜20,000mPas、特に、12,000〜19,000mPasの範囲内の生成物粘度、および/または
- 300から1,000mPasまで、より好ましくは、350〜900mPas、さらにより好ましくは、400〜850mPas、最も好ましくは、450〜800mPas、特に、500〜750mPasの範囲内の塩粘度
を有することが好ましい。
【0161】
本発明による水中水型ポリマー分散液は、4.0から12.0まで、より好ましくは、4.5〜10.0、最も好ましくは、5.0〜9.0の範囲内の25℃における0.5重量%溶液中での0.005Hz (0.00464Hz)におけるタンデルタ値を示すことが好ましい。
【0162】
タンデルタは、粘弾性の尺度である。タンデルタの値は、系内の貯蔵(弾性)率G'に対する損失(弾性)率G''の比である。G'およびG''測定値は、タンデルタ(G''/G')値を算出するために記録および使用される。一方では、等価応力において、低いタンデルタ(<1)およびより高いG'値を持つ材料は、より少なく歪むか変形し、このようにして、より強い関連構造を示す。これらの材料は、機械的に安定であり、時間枠内または測定の周波数において弛緩しない。このようにして、そのような材料は、より弾性である。他方では、等価応力において、より高いタンデルタ値(>1)およびより高いG''値を持つ材料は、粘性タイプの応答を示し、試料の応力は、線状ポリマーが低周波数において弛緩することを可能にするであろう。驚いたことに、一般式(I)による疎水性モノマーの疎水性部分(=R2)の鎖長を変える場合に、水中水型ポリマー分散液のタンデルタ値が増加することがあることが判明した。言い換えると、系の粘弾性は、疎水性モノマーの化学的性質により引き起こされることがある。
【0163】
当業者は、タンデルタ値を決定する方法を知っている。0.005Hzにおけるタンデルタ値は、2時間にわたって回転させた後に脱イオン水中のポリマーの0.5重量%水溶液で振動モードのレオメーターを使用して得られることが好ましい。
【0164】
本発明による水中水型ポリマー分散液は、液体であることが好ましい。粉末およびペーストと比較して、液体分散液は、投入するのがより容易である。粉末は、通常、高価な投入器具を必要とする。
【0165】
水中水型ポリマー分散液の含水量は、インサイチュ重合後のままであってよい。しかしながら、好ましい実施形態において、含水量は、例えば、水の一部を蒸発させることにより低減される。
【0166】
好ましい実施形態において、水中水型ポリマー分散液の含水量は、40±25重量%、より好ましくは、40±20重量%、さらにより好ましくは、40±15重量%、さらにより好ましくは、40±10重量%、最も好ましくは、40±7.5重量%、特に、40±5重量%の範囲内である。別の好ましい実施形態において、水中水型ポリマー分散液の含水量は、50±25重量%、より好ましくは、50±20重量%、さらにより好ましくは、50±15重量%、さらにより好ましくは、50±10重量%、最も好ましくは、50±7.5重量%、特に、50±5重量%の範囲内である。さらに別の好ましい実施形態において、水中水型ポリマー分散液の含水量は、60±25重量%、より好ましくは、60±20重量%、さらにより好ましくは、60±15重量%、さらにより好ましくは、60±10重量%、最も好ましくは、60±7.5重量%、特に、60±5重量%の範囲内である。さらに別の好ましい実施形態において、水中水型ポリマー分散液の含水量は、63±20重量%、より好ましくは、63±15重量%、さらにより好ましくは、63±10重量%、さらにより好ましくは、63±7重量%、最も好ましくは、63±5重量%、特に、63±3重量%の範囲内である。特に好ましい実施形態において、水中水型ポリマー分散液の含水量は、多くても80重量%、より好ましくは、多くても75重量%、さらにより好ましくは、多くても72重量%、さらにより好ましくは、多くても70重量%、最も好ましくは、多くても68重量%、特に、多くても67重量%である。
【0167】
好ましい実施形態において、本発明による水中水型ポリマー分散液の全体のポリマー含有量は、水中水型ポリマー分散液の総重量を基準として、少なくとも20重量%、より好ましくは、少なくとも30重量%、さらにより好ましくは、少なくとも35重量%、さらにより好ましくは、少なくとも40重量%、最も好ましくは、45重量%から65重量%までの範囲内、特に、50重量%から60重量%までである。別の好ましい実施形態において、本発明による水中水型ポリマー分散液の全体のポリマー含有量は、水中水型ポリマー分散液の総重量を基準として、少なくとも10重量%、より好ましくは、少なくとも15重量%、さらにより好ましくは、少なくとも20重量%、さらにより好ましくは、少なくとも25重量%、最も好ましくは、25重量%から45重量%までの範囲内、特に、30重量%から40重量%までである。
【0168】
特に好ましい実施形態において、本発明による水中水型ポリマー分散液の全体のポリマー含有量は、飽和限界に近く、すなわち、さらなるポリマーを分散させる(周囲条件においておよびさらなる乳化剤を添加することなく)ことができないところを超える限界濃度に近い。水中水型ポリマー分散液の全体のポリマー含有量は、前記限界濃度の少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも60%、さらにより好ましくは、少なくとも70%、さらにより好ましくは、少なくとも80%、最も好ましくは、少なくとも85%、特に、前記限界濃度の少なくとも90%であることが好ましい。当業者は、周囲条件における水中水型ポリマー分散液の限界濃度を決定する方法を知っている。
【0169】
このようにして、言い換えると、水中水型ポリマー分散液の含水量は、飽和限界に近いことが好ましい。本発明による水中水型ポリマー分散液は、個々の応用より前に希釈される安定な濃縮物として商品化することができる。濃縮物としての提供は、輸送費用を軽減し、取扱性能を改善する。驚いたことに、カチオン性ポリマー分散剤の存在下で架橋カチオン性コポリマーを形成するモノマーのインサイチュ重合は、比較的高いモノマー濃度において(すなわち、比較的低い含水量において)行うことができ、このようにして、高度に濃縮された水中水型ポリマー分散液が、高温における真空下での相当量の過剰な水を蒸発させることなどの濃縮工程を必要とすることなく得られることが判明した。
【0170】
場合により、本発明による水中水型ポリマー分散液は、さらなる従来の構成成分を、例えば、水溶性または油溶性の酸および/または塩の形態で含有することができる。各々、全体の分散液に対して、酸は、0.1〜3重量%の量で、塩は、0.1〜3重量%の量で存在することが好ましく、酸および塩は、一緒になって、分散液の総重量に対して、多くても5重量%、好ましくは、多くても4重量%の量で存在することが好ましい。
【0171】
本発明による水中水型ポリマー分散液は、少なくとも1つの酸0.5〜5.0重量%および/または少なくとも1つの塩0.5〜5.0重量%を含有し、酸および塩の全体の含有量は、分散液の総重量を基準として、5.0重量%になることが好ましい。
【0172】
前記さらなる従来の構成成分は、重合前、重合中または重合後に添加することができる。
【0173】
20℃における本発明による水中水型ポリマー分散液の電気伝導度は、少なくとも1.0Ω-1m-1、より好ましくは、少なくとも2.5Ω-1m-1、さらにより好ましくは、少なくとも5.0Ω-1m-1、さらにより好ましくは、5.0から80Ω-1m-1までの範囲内、最も好ましくは、7.5から70Ω-1m-1までの範囲内、特に、10から60Ω-1m-1までの範囲内であることが好ましい。
【0174】
さらに、本発明による水中水型ポリマー分散液は、カチオン性ポリマー分散剤に対して、30重量%まで、好ましくは、15重量%まで、より好ましくは、10重量%までの量で、水溶性多官能性アルコールおよび/またはそれらの脂肪アミンとの反応生成物を含有することができる。この文脈においてより具体的に適しているのは、50〜50,000、好ましくは1,500〜30,000の分子量を持つ、ポリアルキレングリコール、好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレン/エチレンオキシドのブロックコポリマー、多官能性水溶性アルコールとしてのグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトールおよび/またはソルビトールなどの低分子量多官能性アルコールおよび/またはそれらの、アルキルまたはアルキレン残基中にC6〜C22を有する脂肪アミンとの反応生成物である。
【0175】
前記水溶性多官能性アルコールおよび/またはそれらの脂肪アミンとの反応生成物は、重合前、重合中または重合後に添加することができる。
【0176】
本発明による水中水型ポリマー分散液は、貯蔵安定であり、すなわち、成分の実質的な沈降は、数日にわたる周囲条件下での貯蔵時に観察されない。沈降は、水中水型ポリマー分散液のヘイズ値の変化を引き起こすため、貯蔵安定性は、貯蔵時のヘイズ値の減少に関して表すことができる。ヘイズ値を測定するための適当な光学的方法は、当業者に知られている。水中水型ポリマー分散液のヘイズ値は、周囲条件下での28日にわたる貯蔵の後に、25%を超えて、より好ましくは、20%を超えて、さらにより好ましくは、15%を超えて、さらにより好ましくは、10%を超えて、最も好ましくは、7.5%を超えて、特に、5%を超えて変化しないことが好ましい。
【0177】
本発明による水中水型ポリマー分散液は、酸性であり、すなわち、7.0未満、より好ましくは、6.5未満、さらにより好ましくは、6.0未満、さらにより好ましくは、5.5未満、最も好ましくは、5.0未満、特に、4.5未満のpH値を有することが好ましい。
【0178】
本発明による水中水型ポリマー分散液は、従来の水中水型ポリマー分散液を上回るいくつかの利点を有し、例えば:
- とりわけ、水中水型ポリマー分散液のレオロジー特性の改善をもたらす、より高い分子量を有する架橋カチオン性コポリマーを得ることができ、
- 生成物粘度および塩抵抗性は、極めて高く-これらの特性は、強化された油回収のためまたは閉じた水回路を持つ抄紙機において特に望ましく、高い生成物粘度を有する生成物は、層化傾向の減少を示し、
- カチオン性ポリマー分散剤中および/または架橋カチオン性コポリマー中の非イオン性モノマーに対するイオン性モノマーのモル比は、水中水型ポリマー分散液の不可欠な特性を有意に低下させることなく幅広い限界内で変えることができ、
- カチオン性ポリマー分散剤の化学反応は、架橋カチオン性コポリマーの化学反応から実質的に独立しており、
- 水中水型ポリマー分散液の有利な特性は、剪断条件下で維持される。
【0179】
本発明による水中水型ポリマー分散液は、固体/液体分離プロセスにおける添加物として、例えば、固体の沈降、浮遊または濾過における凝集剤として;増粘剤として;または、例えば、紙における製紙/歩留における;または汚水プラントもしくは油回収におけるスラッジ脱水における歩留剤もしくは排水助剤として有用である。それらは、特に、剪断条件下で、特に、紙歩留および脱水における灰分歩留に関して、応用性能の改善を示す。本発明により得ることができる水中水型ポリマー分散液は、特に、製紙における歩留剤および脱水剤として有用な、製紙における優れた補助剤であるという予想外の利点を有する。
【0180】
本発明のさらなる態様は、好ましくは、紙の製造における凝集剤(凝集化剤)としての、好ましくは、歩留助剤および/または排水助剤としての、または増粘剤としてのもしくは油回収における、またはコンタミナントコントロールとしてのもしくは乾燥強度助剤としての、本発明による水中水型ポリマー分散液の使用に関する。
【0181】
これに関して、「コンタミナントコントロール」とは、マシンストックコントロール、例えば、有機コンタミナントコントロールおよび無機スケールコントロール;プレスセクション最適化、例えば、プレスロールコンタミナントコントロール、プレスロール接着コントロール、プレスファブリックコンディショニング/クリーニングまたはプレスファブリックパッシベーション;ドライヤーセクションパッシベーション、例えば、ドライヤーシリンダーコンタミナントコントロールまたはドライヤーファブリックコンタミナントコントロールなどのパルプおよび製紙オペレーションを包含する製紙において典型的に生じるコンタミナントを指すことが好ましい。
【0182】
これに関して、「乾燥強度助剤」とは、紙技術を指すことも好ましい。
【0183】
本発明のさらなる態様は、紙、板紙または厚紙を製造するためのプロセスであって、(ii)水性セルロース懸濁液に本発明による水中水型ポリマー分散液を添加する工程を含むプロセスに関する。プロセスは、(i)セルロース懸濁液にさらなるカチオン性ポリマー分散剤を添加する工程をさらに含むことが好ましく、工程(i)は、工程(ii)より前に行われることが好ましい。
【0184】
本発明によるプロセスは、閉じた水回路を有する抄紙機で行われることが好ましい。驚いたことに、本発明による水中水型ポリマー分散液の高い塩抵抗性は、機械のプロセス水が、例えば、経済的理由および/または生態学的理由で再利用される場合に特に有利であることが判明した。このようにして、再利用される水が、ある程度の量の塩をすでに含有している場合、このことは、水中水型ポリマー分散液からのポリマーの沈殿を直ちに引き起こすことはない。
【0185】
水中水型ポリマー分散液の塩容量は、プロセス水が、本発明による水中水型ポリマー分散液の性能を有意に低下させることなく繰り返し再利用することができるほどに十分高い。
【0186】
紙を製造するためのプロセスは、セルロース懸濁液を形成すること、懸濁液を凝集させること、場合により、懸濁液を機械的に剪断すること、および、場合により、懸濁液を再凝集させること、スクリーン上で懸濁液を排水してシートを形成し、次いで、シートを乾燥することを含むことが好ましく、懸濁液は、本発明による水中水型ポリマー分散液を導入することにより凝集されかつ/または再凝集される。
【0187】
驚いたことに、本発明による水中水型ポリマー分散液は、特に、剪断条件下で、歩留の改善に関して改善された性能を提供し、さらに依然として良好な排水および形成性能を維持することが判明した。水中水型ポリマー分散液は、より効率的にセルロース製紙紙料のセルロース繊維および他の構成成分を凝集させ、このようにして、歩留の改善を引き起こす。
【0188】
本発明による紙を製造するためのプロセスにおいて、水中水型ポリマー分散液は、製紙プロセスにおける単独の処理剤として製紙紙料に添加することができるが、水中水型ポリマー分散液は、セルロース懸濁液が凝集され、次いで、再凝集される多成分凝集剤系の一部として添加することができることが好ましい。
【0189】
本発明の一態様において、セルロース懸濁液は、水中水型ポリマー分散液(凝集化剤)により凝集され、次いで、セルロース懸濁液は、水中水型ポリマー分散液(再凝集化剤)のさらなる添加により、または、代替方法として、別の凝集化材料(再凝集化剤)により再凝集される。場合により、形成されるフロックは、再凝集される前に、例えば、機械的剪断を適用することにより分解される。これは、例えば、凝集されたセルロース懸濁液を、セントリスクリーンまたはファンポンプなどの1つまたは複数の剪断段階に通すことにより達成することができる。
【0190】
本発明の代替形態において、セルロース懸濁液は、凝集化材料(凝集化剤)を導入することにより凝集され、セルロース懸濁液は、水中水型ポリマー分散液(再凝集化剤)を導入することにより再凝集される。場合により、フロックは、再凝集前に分解される。
【0191】
セルロース懸濁液は、いかなる適当な添加時点においても懸濁液に凝集化剤を導入することにより凝集させることができる。これは、例えば、ポンピング段階のうちの1つの前またはセントリスクリーンより前またはセントリスクリーンの後であってもよい。次いで、セルロース懸濁液は、それが凝集された後のいかなる適当な時点においても再凝集させることができる。凝集化剤および再凝集化剤は、例えば、添加の間にいかなる剪断段階もなしに、近接して添加することができる。凝集化剤および再凝集化剤の添加を隔てる少なくとも1つの剪断段階(好ましくは、クリーニング段階、ポンピング段階および混合段階から選択される)があることが好ましい。凝集化剤が、剪断段階、例えば、ファンポンプまたはセントリスクリーンより前に適用される場合、再凝集化剤は、剪断段階の後に添加することができる。これは、剪断段階の直後またはより一般的にはずっと後であってよい。このようにして、凝集化剤は、ファンポンプにより前に添加することができ、再凝集化剤は、セントリスクリーンの後に添加することができる。
【0192】
したがって、水中水型ポリマー分散液は、凝集化剤としておよび/または再凝集化剤として添加される。
【0193】
水中水型ポリマー分散液は、固体含有量を基準として、5〜5,000ppm、より好ましくは、50〜2,500ppm、最も好ましくは、200〜1,500ppmの投入量で紙料に添加することができることが望ましい。
【0194】
水中水型ポリマー分散液が、多成分凝集系の一部として製紙プロセスにおいて使用される場合、それは、凝集化剤および/または再凝集化剤として添加することができる。本発明の1つの好ましい態様によれば、多成分凝集系は、水中水型ポリマー分散液および異なる凝集化材料を含む。この凝集化材料は、水溶性ポリマー、不水溶性ポリマーマイクロビーズ、粒状の生の多糖および無機材料からなる群のうちのいずれかであってよい。適当な凝集化材料は、珪質材料、ミョウバン、アルミニウムクロロハイドレートおよびポリ塩化アルミニウムなどの無機材料を包含する。
【0195】
凝集化材料が、水溶性ポリマーである場合、それは、いかなる適当な水溶性ポリマー、例えば、非イオン性、カチオン性、アニオン性および両性のデンプンまたは他の多糖などのバイオポリマーであってもよい。凝集化材料は、いかなる適当なカチオン性、アニオン性、両性または非イオン性の合成水溶性ポリマーであってもよい。
【0196】
凝集化材料は、アニオン性ミクロ粒子状組成物の形態である珪質材料であってよい。珪質材料は、シリカベースの粒子、コロイド状シリカ、シリカミクロゲル、シリカゾル、シリカゲル、ポリケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ポリアルミノケイ酸塩、ポリホウケイ酸塩、ゼオライトおよび粘土を包含する。粘土は、膨潤粘土であることが好ましく、例えば、これは、典型的には、ベントナイトタイプの粘土であってよい。好ましい粘土は、水中で膨潤性であり、自然に水膨潤性である粘土、または、それらを水膨潤性にするために、例えば、イオン交換により改変することができる粘土を包含する。適当な水膨潤性粘土は、ヘクトライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ホルマイト、アタパルガイトおよびセピオライトと呼ばれることが多い粘土を包含するが、それらに限定されるものではない。
【0197】
代替方法として、凝集化材料は、ポリケイ酸塩およびポリアルミノケイ酸塩から選択されるコロイド状シリカである。これは、1,000m2/gを超える表面積のポリ粒子状ポリケイ酸ミクロゲル、例えば、水溶性ポリ粒子状ポリアルミノケイ酸塩ミクロゲルまたはアルミネートポリケイ酸を包含する。加えて、凝集化材料は、コロイド状ケイ酸であってよい。
【0198】
凝集化材料は、コロイド状ホウケイ酸塩であってもよい。コロイド状ホウケイ酸塩は、アルカリ金属ケイ酸塩の希釈水溶液を、カチオン交換樹脂と接触させてケイ酸を生成し、次いで、アルカリ金属ホウ酸塩の希釈水溶液をアルカリ金属水酸化物と一緒に混合して7〜10.5のpHを有する0.01〜30% B2O3を含有する水溶液を形成することによりヒールを形成することにより調製することができる。
【0199】
セルロース紙料懸濁液は、填料を含むことができる。填料は、伝統的に使用されている填料材料のうちのいずれかであってよい。例えば、填料は、カオリンなどの粘土であってよく、または、填料は、重質炭酸カルシウムまたは、特に、沈降炭酸カルシウムであってよい炭酸カルシウムであってよく、または、填料材料として二酸化チタンを使用することが好ましいことがある。他の填料材料の例は、合成ポリマー填料も包含する。製紙紙料は、いかなる適当な量の填料も含むことができる。一般的に、セルロース懸濁液は、少なくとも5重量%の填料材料を含む。典型的には、填料の量は、40%以上まで、好ましくは、10%と40%の間の填料であろう。
【0200】
水中水型ポリマー分散液と併せて使用される凝集化材料は、水溶性エチレン性不飽和モノマーまたはモノマーブレンドから形成されたアニオン性、非イオン性、カチオン性または両性の分岐水溶性ポリマーであってよい。例えば、分岐水溶性ポリマーは、a) 1.5dl/gを超える固有粘度および/または約2.0mPa.s.を超える塩水ブルックフィールド粘度を示すことができる。
【0201】
代替方法として、水中水型ポリマー分散液と併せて使用される凝集化材料は、架橋アニオン性ミクロ粒子または両性ポリマーミクロ粒子を包含する。
【0202】
特に好ましいプロセスは、凝集化剤として水中水型ポリマー分散液および再凝集化剤としてアニオン性凝集化材料を含む多成分凝集系を用いる。アニオン性凝集化材料は、ミクロ粒子状シリカ、ポリケイ酸塩などの珪質材料、線状水溶性ポリマーと分岐水溶性ポリマーの両方を包含するアニオン性ポリマーマイクロビーズおよび水溶性アニオン性ポリマーを包含する。
【0203】
紙を製造するためのプロセスの特に好ましい実施形態において、さらなるカチオン性ポリマー分散剤が、好ましくは、水中水型ポリマー分散液が導入される前に、セルロース懸濁液に添加され、すなわち、前記さらなるカチオン性ポリマー分散剤の供給点は、水中水型ポリマー分散液の供給点に対して抄紙機上の「上流」に位置していることが好ましい。さらなるカチオン性ポリマー分散剤の供給点は、例えば、ポンピング段階のうちの1つの前またはセントリスクリーンより前であってよい。さらなるカチオン性ポリマー分散剤および水中水型ポリマー分散液は、近接して、例えば、添加の間にいかなる剪断段階もなしに添加することができる。
【0204】
前記さらなる分散剤は、水中水型ポリマー分散液中に存在し、その存在下でインサイチュ重合反応が行われるカチオン性ポリマー分散剤と構造および/または分子量分布が同一であってよい。しかしながら、前記さらなるカチオン性ポリマー分散剤は、水中水型ポリマー分散液に存在するカチオン性ポリマー分散剤と異なることが好ましい。水中水型ポリマー分散液と関連して上に記載されているカチオン性ポリマー分散剤の好ましい実施形態は、紙を製造するためのプロセスにおいて加えて使用されることが好ましい前記さらなるカチオン性ポリマー分散剤にも当てはまる。
【0205】
さらなるカチオン性ポリマー分散剤は、
- (アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、アルケニルトリアルキルアンモニウムハライドおよび/またはジアルケニルジアルキルアンモニウムハライド30〜100重量%、および非イオン性コモノマー0〜70重量%、または
- エピクロロヒドリンおよびジアルキルアミンの共重合物
から誘導(合成)されることが好ましい。
【0206】
驚いたことに、二重の凝集系において凝集化剤として本発明による水中水型ポリマー分散液を用いる場合、優れた歩留および排水性能は、それぞれ、良好な形成と組み合わせることができることが判明した。通常、歩留/排水性能および形成性能は、互いに拮抗するが、驚いたことに、本発明による水中水型ポリマー分散液の特性は、両方に関して有利である。水中水型ポリマー分散液は、歩留および排水性能についての十分に確立された尺度である灰分歩留の有意な改善を示す。
【実施例】
【0207】
下記の実施例は、本発明をさらに例示するものであるが、その範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0208】
カチオン性分散剤ポリマーの調製(ホモDIMAPA quat.)
初めに、水628g、DIMAPA quat. (60重量%) 1375gおよび硫酸(50重量%) 10gを、3Lの容器中で秤量した。次いで、モノマー溶液を、撹拌することにより30分にわたって窒素でスパークした。続いて、水溶液を、65℃まで加熱し、メルカプトエタノールおよびVA-044を溶液に添加した。tmaxに達した後、追加部分の開始剤を、残留モノマー消費のために生成物に与えた。今度は、生成物を、85℃にて2時間にわたって撹拌した。その後、最終水性生成物を、30℃まで冷却した。
【0209】
水性分散液の調製
最初に、アクリルアミド(50重量%) 267g、Versenex 80 (5重量%) 2g、ADAME quat (80重量%) 56g、水341g、硫酸アンモニウム8g、カチオン性分散剤ポリマー316gおよび様々な量の架橋剤(1重量%溶液として)を、アンカースターラー、温度計およびトルクディスプレイを備えた2Lのガラス反応容器中に充填し、撹拌することにより均質化した。次いで、モノマー溶液を、200rpmにて撹拌することにより30分にわたって窒素でスパークした。続いて、水溶液を、35℃まで加熱し、開始剤系(レドックス開始剤パッケージ)を、容器中に添加した。tmaxに達した後、V-50 (10重量%) 3gを、モノマー含有量を低減するために撹拌下で添加した。数分後、クエン酸を撹拌下で添加し、最終生成物を、30℃まで冷却した。
【0210】
【表1】

【0211】
高分子量(HMW)水性分散液の調製
最初に、アクリルアミド(50重量%) 190g、Versenex 80 (5重量%) 2g、ADAME quat (80重量%) 120g、水310g、硫酸アンモニウム10g、カチオン性分散剤ポリマー360gおよび様々な量の架橋剤(1重量%溶液として)を、アンカースターラー、温度計およびトルクディスプレイを備えた2Lのガラス反応容器中に充填し、撹拌することにより均質化した。次いで、モノマー溶液を、200rpmにて撹拌することにより30分にわたって窒素でスパークした。続いて、水溶液を、35℃まで加熱し、レドックス開始剤パッケージおよびアゾ開始剤からなる開始剤系を、容器中に添加した。tmaxに達した後、V-50 (10重量%) 4gを、モノマー含有量を低減するために撹拌下で添加した。数分後、クエン酸を撹拌下で添加し、最終生成物を、30℃まで冷却した。
【0212】
【表2】

【0213】
モノマー:
DIMAPA quat-アクリロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド
ADAME quat-アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド
他の成分:
Versenex 80-キレート剤
VA-044-開始剤
V-50-開始剤
【0214】
応用例-実験室完成紙料に対する結果
実験1:
方法:
完成紙料タイプ:30% GCCおよび0,5%デンプン(0,035〜0,040置換グレード)が添加されたユーカリパルプ。完成紙料は、30 SRoまで精製された。
【0215】
実験室試験は、BTG Mutek GmbHからのDFR 04を使用して行った。
【0216】
0.3%完成紙料1000mLを、5秒にわたって800rpmにより混合し、それから、ポリマーを添加し、完成紙料を、1000rpmにてさらに10秒にわたって剪断した。沈下させるための500rpmによる10秒のさらなる混合の後、歩留を、装置の供給業者に従って行った。結果は、550℃における灰分歩留、すなわち標準生成物と比較した1Bおよび2D(上を参照)についての灰分歩留に対する500g/tポリマーのプラスの影響を示す図1に表示されている。
【0217】
実験2:
方法:
完成紙料タイプ:30% GCCおよび0,5%デンプン(0,035〜0,040置換グレード)が添加されたユーカリパルプ。完成紙料は、30 SRoまで精製された。
【0218】
実験室試験は、BTG Mutek GmbHからのDFR 04を使用して行った。
【0219】
0.3%完成紙料1000mLを、5秒にわたって800rpmにより混合し、それから、ポリマーを添加し、完成紙料を、1000rpmにてさらに10秒にわたって剪断した。ベントナイトを添加し、混合を、500rpmにて10秒にわたって続け、歩留を、装置の供給業者に従って行った。図2は、550℃における灰分歩留、すなわち標準生成物と比較したベントナイト4kg/tと組み合わせた1B、1Dおよび2D(上を参照)についての灰分歩留に対する1000ppmポリマーのプラスの影響を示している。
【0220】
実験3:
方法:
剪断下のスラッジ脱水試験:3.3重量%乾燥固体の消化スラッジ
消化スラッジ(かき混ぜを介してコンディショニングした) 500±10mlを、容器中に加え、生成物(60±0.5秒にわたってUltra Turrax T 25 N、24000rpmで剪断した)の0.1重量%活性固体ベース溶液の対応する量を添加する。生成物とスラッジ(10±0.5秒にわたって1000±20rpmにて混合した)を、脱水シーブ(200μm)上に加え、200mlの濾液についての濾過時間を決定する。その後、濾液の透明度を、クラリティーウェッジ(clarity wedge)を介して決定する。図3は、高分子量ポリマー分散液、線状(すなわち、非架橋)および標準品と比較した3F(同じ脱水性能を必要とする生成物)のより良い脱水性能を示している。
【0221】
実験4:
方法:
完成紙料タイプ: 30% GCCおよび0,5%デンプン(0.035〜0.040置換グレード)が添加されたクラフトパルプ50:50短繊維:長繊維。完成紙料は、30 SRoまで精製された。実験室試験は、BTG Mutek GmbHからのDFR 04を使用して行った。0.3%完成紙料1000mLを、5秒にわたって800rpmにより混合し、それから、ポリマーを添加し、完成紙料を、1000rpmにてさらに10秒にわたって剪断した。沈下させるための500rpmによる10秒のさらなる混合の後、歩留を、装置の供給業者に従って行った。結果は、標準生成物および線状、非架橋高分子量ポリマーを含有する分散液を上回る1Fについての1000g/tポリマーの歩留に対して相対的によりプラスな影響を示す図4に表示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中水型ポリマー分散液を製造するための方法であって、
(i)カチオン性ポリマー分散剤と、
(ii) a)モノマーの総重量を基準として、一般式(I)による非イオン性モノマー少なくとも5重量%
【化1】

(式中、
R1は、水素またはC1〜C3-アルキルを意味し、
R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1〜C5-アルキルまたはC1〜C5-ヒドロキシアルキルを意味する)、
b)モノマーの総重量を基準として、一般式(II)によるカチオン性モノマー少なくとも5重量%
【化2】

(式中、
R4は、水素またはC1〜C3-アルキルを意味し、
Z1は、OまたはNR5を意味し、R5は、水素またはC1〜C3-アルキルであり、
Y0は、1つまたは複数のヒドロキシ基で場合により置換されているC2〜C6-アルキレンを意味し、
Y1、Y2、Y3は、互いに独立して、C1〜C6-アルキルを意味し、
X-は、ハロゲン、擬ハロゲン、アセテート、またはSO4CH3-を意味する)、
c)モノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の架橋剤0.0001〜1.25重量%、
d)モノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の疎水性(メタ)アクリル酸C4〜18-アルキルエステル0〜1.25重量%、および
e)場合により、さらなるエチレン性不飽和モノマー
を含むモノマー組成物と
を含む水性反応混合物を、得られる水中水型ポリマー分散液が架橋カチオン性コポリマーを含有するようにフリーラジカル重合反応にかけることを含む方法。
【請求項2】
水性反応混合物が、いかなる疎水性モノマーも含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
架橋剤が、2、3、4または5個のエチレン性不飽和基を含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
一般式(I)による非イオン性モノマーが、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチル(メタ)アクリルアミドおよびN-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
一般式(II)によるカチオン性モノマーが、トリメチルアンモニウムアルキル(メタ)アクリレートハライド、トリメチルアンモニウムアルキル(メタ)アクリルアミドハライドおよびジアリルジアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
カチオン性ポリマー分散剤が、多くても2.0×106g/molの重量平均分子量Mwを有する水溶性ポリマーである、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
カチオン性ポリマー分散剤が、トリメチルアンモニウムアルキル(メタ)アクリレートハライド、トリメチルアンモニウムアルキル(メタ)アクリルアミドハライドおよびジアリルジアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される少なくとも1つのカチオン性モノマーから誘導されるカチオン性ポリマーである、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのカチオン性モノマーが、一般式(II)によるカチオン性モノマーと異なる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ラジカル重合の前および/または後に、水溶性塩が、水性反応混合物の総重量を基準として、0.1〜5.0重量%の量で添加される、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
(i)カチオン性ポリマー分散剤と、
(ii) a)モノマーの総重量を基準として、一般式(I)による非イオン性モノマー少なくとも5重量%
【化3】

(式中、
R1は、水素またはC1〜C3-アルキルを意味し、
R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1〜C5-アルキルまたはC1〜C5-ヒドロキシアルキルを意味する)、
b)モノマーの総重量を基準として、一般式(II)によるカチオン性モノマー少なくとも5重量%
【化4】

(式中、
R4は、水素またはC1〜C3-アルキルを意味し、
Z1は、OまたはNR5を意味し、R5は、水素またはC1〜C3-アルキルであり、
Y0は、1つまたは複数のヒドロキシ基で場合により置換されているC2〜C6-アルキレンを意味し、
Y1、Y2、Y3は、互いに独立して、C1〜C6-アルキルを意味し、
X-は、ハロゲン、擬ハロゲン、アセテート、またはSO4CH3-を意味する)、
c)モノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の架橋剤0.0001〜1.25重量%、
d)モノマーの総重量を基準として、1つまたは複数の疎水性(メタ)アクリル酸C4〜18-アルキルエステル0〜1.25重量%、および
e)場合により、さらなるエチレン性不飽和モノマー
を含有するモノマー組成物から誘導される架橋カチオン性コポリマーと
を含む水中水型ポリマー分散液。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の方法により得ることができる、請求項10に記載の分散液。
【請求項12】
分散液の総重量を基準として、40±20重量%のポリマー含有量を有する、請求項10または11に記載の分散液。
【請求項13】
少なくとも1つの酸0.5〜5.0重量%および/または少なくとも1つの塩0.5〜5.0重量%を含有し、酸および塩の全体の含有量が、分散液の総重量を基準として最高で5.0重量%になる、請求項10から12のいずれかに記載の分散液。
【請求項14】
架橋カチオン性コポリマーとカチオン性ポリマー分散剤の相対重量比が、>1:1である、請求項10から13のいずれかに記載の分散液。
【請求項15】
- 固体の沈降、浮遊または濾過における凝集剤として、
- 増粘剤として、
- コンタミナントコントロールとして、
- 乾燥強度助剤として、または
- 製紙における歩留剤または排水助剤としての、
請求項10から14のいずれかに記載の水性ポリマー分散液の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−502501(P2013−502501A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525919(P2012−525919)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005163
【国際公開番号】WO2011/023357
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(505301103)アシュランド・ライセンシング・アンド・インテレクチュアル・プロパティー・エルエルシー (40)
【Fターム(参考)】