説明

水中溶接装置

【課題】トーチの小型、簡素化及びアーク電極先端部を気中環境下にし溶接をする工法で、水排除及び乾燥時間の短縮、水排除の確実性の向上及び高品質な溶接を可能にする。
【解決手段】水中環境下で局部的に気中環境下にし、溶接を行う水中溶接装置であって、水中用溶接ヘッドに搭載され、絶縁材を使用したトーチボディ(73)の外周に、ガス噴射用の溝(74)を加工し、該トーチボディ(73)を金属製のカバー(79)で覆い、該トーチボディ(73)に、アーク電極(23)、ワイヤノズル(22)、カメラ(9)、照明(13)の一又は複数を配備し、これらを一体化し、且つ、小型化したトーチ構造としたことを特徴とする水中溶接装置であり、また、トーチボディ(73)の先端部に、独立気泡型で伸縮自在で、可撓性を有するシールド材が装備された支持材と、トーチボディ(73)の先端との間に、耐熱、弾力性を有する吸収材を設けたトーチ構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水中環境下での溶接が可能な装置に関するものであり、特に原子力設備、船舶、橋梁関連機器等の狭溢部の補修溶接に使用する水中溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中環境下で溶接作業を行う場合、水を排除せずに被覆アーク溶接を行う湿式法では、ブローホール等の欠陥が生じやすい等の問題があり、ここ最近では、シールドガスを用いて局部的に水を排除した後に溶接を行う乾式法が主流になっている。
この乾式法で最も重要視されるのは、水排除であり、これらに関する多くの水中溶接装置が提案されている。
【0003】
例えば、水排除を行うためにトーチの先端の外周に被溶接面へ向けてガスを噴射させるガス噴射ノズルと、その外周から更に水を噴射させる水噴射ノズルを構成し局部的に気中環境下に形成しながら、溶接を行うガスカーテン方式の水中溶接装置が開示されている。 例えば、特許文献1のように。
【0004】
また、水排除を行うためにトーチ全体を覆う構成で、トーチの外側に被溶接面に密着させるフィルター材とその上方に水密に覆うカバーを構成し、フィルター材を被溶接面に固定し、トーチのみを3次元方向に移動させるチャンバー方式の水中溶接装置が開示されている。例えば、特許文献2のように。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−01347号公報
【特許文献2】特開平08−90222号公報
【0006】
しかし、図12に示すように、前記ガスカーテン方式の水中溶接装置の技術では、被溶接面が平坦且つ、周囲に障害物がない部位に関しては、トーチユニットの先端の外周に被溶接面へ向けてガスを噴射させるガスと、その外周から更に水を噴射させる水の圧力変動差が少ない為、局部的に気中環境下にし、水排除をしながら移動溶接を行うが可能と思われるが、十分な乾燥が出来ず、また、表面が急冷されるため、溶接施工が難しく、しかも、凹凸のある形状不連続な溶接面に関しては、ガス及び水の圧力変動に配慮されておらず、安定した水排除性に問題があった。
【0007】
また、チャンバー方式の水中溶接装置の技術では、フィルター材とカバーでトーチ全体を覆った構成になっているため、気中環境下にする部位の空間が広く、水排除及び乾燥に時間を費やす。更にトーチ構造において、電極、ワイヤノズル、監視用カメラ及び証明を別個に構成している為、固定させる手段として支持材が必要となる。
【0008】
このように固定する支持材が増えると水捌けが悪く、水滴の滞留する部位が多くなり完全な気中環境下にするまでに大幅な時間を費やし、原子力設備の放射線量の高い部位での溶接施工では、トーチ内に配備したカメラ(電子機器類)は、頻繁に交換する作業が発生する。更にトーチ全体をカバーで覆うトーチ構成にした場合、狭溢部且つ、フィルター材の接触する面が狭い被溶接面に関しては、溶接施工部位に限界を生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明が解決しようとする問題点は、水中環境下で局部的に気中環境下にし溶接を行う水中溶接において、狭溢部且つ凹凸面のある形状不連続な被溶接面或いは平坦な面の狭い溶接部位に対して、トーチの小型、簡素化及びアーク電極先端部を気中環境下にし溶接をする工法にすることにより、水排除及び乾燥時間の短縮、水排除の確実性の向上及び高品質な溶接を可能にすることにある。
【0010】
また、更にこの発明が解決しようとする問題点は、原子力設備の補修工事においては、放射線環境下でカメラ等の電子機器部品を使用した場合、放射線の影響を受けて電子機器関連部品等の寿命が短くなり、溶接前の水排除及び乾燥時間が短くなれば、交換回数も減り、工程短縮へとつながることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による課題を解決するための手段としては、水中環境下で局部的に気中環境下にし、溶接を行う水中溶接装置において、該装置のトーチのトーチボディに絶縁材を使用し、該トーチボディの外周にガス噴射用の溝を加工し、該トーチボディを金属製のカバーで覆い、該トーチボディにアーク電極、ワイヤノズル、カメラ及び照明を配備し、一体化し、且つ、小型化したトーチ構造と、トーチ先端部にシールド材が装備された支持材とトーチボディの先端の間に吸収材を設けたトーチ構造と、トーチ材の周囲に金属製の弾性材を設け、非溶接面とシールド材の密着度を向上させたトーチ構造と、トーチ先端のシールド材が装備された支持材を3次元方向に移動可能な移動機構部の非稼働部に、別の支持材により固定したことを特徴とする水中用溶接ヘッド構造と、水中用溶接ヘッドに更なる3次元方向の移動機構を持たせた水中溶接装置にすることにより達成しようとするものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、狭溢部、且つ、凹凸のある形状不連続な被溶接面をアーク電極空間の水の浸入を効果的に防止し、水中から気中環境下にする水排除時間を大幅に短縮でき、水排除の確実性の向上、高品質な溶接がなされ、工程の大幅短縮が可能となる等の極めて有益なる効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施例を示す全体系統図を表す。
【図2】この発明の一実施例を示す全体図である。
【図3】この発明の一実施例を示し、図2中の○枠X部の拡大図を示す。
【図4】この発明の一実施例を示すアクセス装置を示し、(a)は側面図、(b)は、平面図、(c)は、正面図である。
【図5】この発明の一実施例を示す水中溶接ヘッドであり、(a)は正面図、(b)は、側面図である。
【図6】この発明の一実施例を示すトーチの側面図である。
【図7】この発明の一実施例を示すトーチの正面図である。
【図8】この発明の一実施例を示すトーチボディであり、図6中のI−I拡大断面図である。
【図9】この発明の一実施例を示すトーチボディであり、図7中のII−II断面図である。
【図10】この発明の使用の一実施例を示すフローチャート図を表す。
【図11】この発明の一実施例を示す一部欠截断面図である。
【図12】従来例を示す一部欠截断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明は、水中溶接装置に関するものであり、請求項1は、水中環境下で局部的に気中環境下にし、溶接を行う水中溶接装置であって、水中用溶接ヘッド(1)に搭載されたトーチ(2)において、絶縁材を使用したトーチボディ(78)の外周に、ガス噴射用の溝(74)を加工し、該トーチボディを金属製のカバー(79)で覆い、該トーチボディ内に、アーク電極(23)、ワイヤノズル(22)を設け、トーチ構造を小型化したことを特徴とする水中溶接装置である。
これにより、トーチを小型化することで狭溢部での溶接部位が可能となり、さらにトーチ内を簡素化することで水排水時に滞留する水滴の部分が低減され、水排除及び乾燥時間が短縮される。また、水中から気中環境下に置換する空間が被溶接面に接触させるシールド材の先端とトーチボディ先端間の必要最小限の空間(以下、アーク電極空間という)だけなので、さらに水排除と乾燥時間が短縮される。
【0015】
また、請求項2は、これら小型化したトーチ構造に、カメラ(9)及び/又は、照明(13)を配備し、これらを一体化し、且つ、小型化したトーチ構造としたものである。
これにより、トーチ内に、カメラ(9)、照明(13)をそれぞれ単独か、これら両方を用いることにより、水中用溶接ヘッドカメラ(8)と水中用溶接ヘッド照明(18)と相まって溶接箇所や溶接状態を正しく確認できるトーチ構造としたものである
【0016】
さらに、請求項3は、トーチボディ(73)のトーチ先端部に、独立気泡型で、伸縮自在で、且つ可撓性を有するシールド材(70)を装備した支持材(71)と、トーチボディ(73)の先端との間に、耐熱性、弾力性を有する吸収材(78)を有するトーチ構造としたものであり、これにより、被溶接面にシールド材(70)を固定し、吸収材(78)の弾性変形の範囲内でアーク電極(23)の可動範囲に自由度をもたらすことが可能になる。
【0017】
また、請求項4は、シールド材(70)の周囲に、板バネ等の金属性の弾性材(90)を設けることにより、被溶接面とシールド材(70)との密着度を向上させるトーチ構造としたものであり、これによりトーチ(2)内のシールドガス圧と外圧の差によるシールド材(70)の振動の抑制及び、形状不連続な被溶接面とシールド材の接触面の隙間を強制的に塞ぐことで安定した水排除が可能になる。
【0018】
次に、請求項5は、シールド材(7)が装備された支持材(71)を、3次元方向に移動可能な移動機構部の非稼働部に別の支持材(72)により固定する水中用溶接ヘッド(1)を設けた構造であり、この三次元方向の移動機構は、被溶接面に対して水中溶接ヘッドを上下、前後、旋回の動作をさせるもので、上下、前後の二軸の動作軸で水中溶接ヘッドを被溶接面にアクセスさせ、この二軸の動作軸で被溶接面に対して水中溶接用ヘッド先端のシールド材の押し付け量及び、シールド材の密着状態の調整をすることで、アーク電極空間を水中環境下から気中環境下に置換することが可能となる。また、旋回の動作軸で被溶接面に対してアーク電極の進入角度を調整可能にすることにより、凹凸のある形状不連続な被溶接面に対しても溶接の追従性が確保される。
【0019】
最後に、請求項6は、水中用溶接ヘッド(1)に、更なる3次元方向に移動機構を持たせたことを特徴とする水中溶接装置であり、トーチ(2)の先端のシールド材(70)が装備された支持材(71)を、3次元方向に移動可能な移動機構部の非稼働部に、別の支持材(72)により固定した水中用溶接ヘッド構造を設けたものであり、これにより、吸収材の弾性変形の範囲内でアーク電極が単独で三次元方向に移動可能になる。三次元方向の移動機構は、被溶接面に対して、アーク電極を上下、前後、左右の三軸の作動をさせる。これにより、被溶接面とアーク電極の距離を制御し、自動溶接時のアーク電圧がコントロール可能となる。
【実施例】
【0020】
この発明の一実施例を詳述する前に、この発明の作業工程の手順を、図10のフローチャート図に従って説明すると、
A.先ず、全体移動装置(37)を溶接の必要部位に設置する。
B.次に、アクセス装置(38)を全体移動装置(37)に据え付けする。
C.そして、操作盤(5)にて水中用溶接ヘッド(1)にエアーを注入する。これは該ヘッド(1)を水中に入れる前から注入する。
D.トーチボディ(73)のガス噴射用の溝(74)及び、ワイヤノズル(22)からエアを吐出する。
E.エアを吐出しながら、水中用溶接ヘッド(1)をアクセス装置(38)に据え付ける。
F.全体移動装置(37)及びアクセス装置(38)を用いて水中用溶接ヘッド(1)を溶接部位へ移動する。
G.水中用溶接ヘッド(1)に不随するカメラ(8)にて周囲の状況を確認しながら溶接部位へシールド材(70)を押しつける。
H.アーク電極(23)タッチ検出を行う。
I.溶接部位にシールド材(70)が密着する。
J.エアにより局部気中空間を構築する。
K.局部気中空間をエアからアルゴンガスに置換する。
L.溶接施工部位を乾燥させる。
M.ワイヤノズル(22)から吐出していたアルゴンガスを停止する。
N.ガス噴射用の溝(74)吐出していたアルゴンガスの流量を調節する。
O.アーク電極(23)の軌道を教示する。
P.アークを出さずに教示された軌道を動作する。
Q.前記作動により、局部中空内(Y)に水が浸入していないことを確認する。
R.アーク電極(23)を軌道教示させた開始ポイントに移動する。
S.遠隔自動溶接を施工する。
【0021】
上記工程をより詳述すると、図1は、この発明の一実施例を示す全体系統図を示し、電気系統を示す配線図、並びに配管系統を示す配線図であり、図2は、この発明の全体図である。
カメラ、照明の系統は、水中用溶接ヘッド(1)に、被溶接面に、この装置をアクセスする際に、周囲と装置の干渉を監視する水中溶接ヘッドカメラ(8)及び水中溶接ヘッド照明(12)を配置し、トーチ(2)には、トーチ内の水排除や溶接状況を監視するトーチ内カメラ(9)、トーチ内照明(13)を配置し、それらのカメラコントローラ(10)、照明用アンプ(14)及びモニタ(11)を監視盤(3)に配置した。
【0022】
モータ駆動系統は、水中用溶接ヘッド(1)に三軸の移動機構を有する水中用溶接ヘッド用駆動モータ(18)とワイヤを送給する箱型で気密性のあるワイヤ供給装置(7)、アクセス装置(38)に三軸の移動機構を有するアクセス装置用駆動モータ(19)、全体移動装置に一軸の移動機構を有する全体移動装置用駆動モータ(20)を配備し、それらを制御するモータアンプ(17)及びPLC(16)は制御盤(4)に内蔵し制御をするよう構成する。
【0023】
溶接の記録は、溶接電流、アーク電圧、溶接速度、ワイヤ送給速度を記録計(15)にてサンプリングする。
【0024】
アルゴンガス系統は、操作盤(5)からワイヤ供給装置(7)を介してワイヤノズル(22)から吐出する系統と、アーク電極(23)の周囲から吐出する系統の二系統にした。
また、エア系統も前記の系統とモータ水没の防止をはかるためのパージラインを各々のモータ(18)(19)(20)に設けた。
【0025】
ワイヤノズル(22)から吐出するラインとアーク電極(23)の周囲から吐出するラインは、操作盤(5)に内蔵したフィルタ(24)、減圧弁(25)、流量計(27)を介してエアとアルゴンガスがバルブ(26)で切り替えられるようにし、トーチ内の水(28)を排除する時はエアを流し、トーチ(2)内の乾燥及び、溶接施工時にはアルゴンガスを流せる系統にした。
【0026】
図3は、この発明の使用状態の一実施例を示す全体図であり、図2中の○枠を拡大した一部欠截側面図であり、これらに従って、この発明を詳述すると、
水(28)を貯留した大型の金属容器(29)の内部に円周方向に広がる主配管の上段(30)、下段(31)の2段から、各々或るピッチ間隔で分岐管(32)が点在し、その下方に金属性の格子板が存在する構造物において、浸水18mの環境下で、主配管の上段(30)から枝分かれした一部の配管の廻り止め溶接の補修を実施する状態の全体的な構成を示したものである。
【0027】
水中自動溶接工法としての全体的な配置は、建屋内のフロアに装置をする制御盤(4)、エアとアルゴンガスの流量、圧力設定及びエアとアルゴンガスの切り替えを可能にした操作盤(5)、溶接を行う為の溶接電源(6)、溶接条件(溶接電流、アーク電圧、溶接速度、ワイヤ送給速度)を記録する記録計(16)、装置をモニタリングする監視盤(3)及び溶接シールドガス用のアルゴンガスボンベ(33)を配備し、大型の金属容器(29)の中に不随する金属性の格子板(32)の上に配置した水中用溶接装置を遠隔操作によって自動溶接制御を行う工法とした。
【0028】
この建屋の設備には、大型の金属容器(29)の上部に電動駆動の走行作業台車(34)とそれに不随する電動式チェーンブロック(35)、さらにはその上方には、天井クレーン(36)が存在する。装置は、該天井クレーン(36)にて走行作業台車(34)に不随する電動式チェーンブロック(35)の近傍まで運び、装置を天井クレーン(36)から電動式チェーンブロック(35)に吊り替え、走行作業台車(34)上の作業者が電動式チェーンブロック(35)及び投げ込み式の監視カメラを用いて装置の位置関係及び周囲の状況を確認しながら装置を設置する工法とした。
【0029】
装置の設置手段は、大型の金属容器(29)の中に不随した金属性の格子板(32)に円周方向に走行させる全体移動装置(37)をはめ込み、金属性の格子板(32)と固定させ、全体移動装置(37)に不随する案内棒(39)とアクセス装置(38)に不随する穴加工を施したブロック(40)に合わせながら、アクセス装置(38)を全体移動装置(37)に設置し、アクセス装置(38)に不随した取付けボルト(41)を走行作業台車(34)上の作業者が、作業ポールを用いて全体移動装置(37)と連結する。
【0030】
また、水中用溶接ヘッド(1)も同様な方法で水中用溶接ヘッド(1)に不随する穴加工を施したプレート(44)とアクセス装置(38)に不随する位置決めピン(42)に合わせながら、水中用溶接ヘッド(1)をアクセス装置(38)に設置し、水中用溶接ヘッド(1)に不随する取付けボルト(41)を作業ポールにてアクセス装置(38)と連結させる設置手順とした。
【0031】
尚、水中用溶接ヘッド(1)を水中に入れる前に操作盤(5)にて、エアの圧力設定を0.3MPaにし、アーク電極(23)の周囲からエアの流量を100リットル/mim、ワイヤノズル(22)から、エアの流量を15リットル/mim流しながら、アクセス装置(38)に設置した。
【0032】
図4は、この発明の一実施例を示すアクセス装置(38)を示し、(a)は側面図、(b)は、平面図、(c)は、正面図である。
水中用溶接ヘッド(1)を被溶接面にアクセスする為のアクセス装置(38)の構成は、Vレール(45)、Vローラ(46)及びラックとピニオン(47)を使用した旋回移動機構(48)とLMガイド(49)及びラックとピニオン(50)を使用した前後移動機構(51)とLMガイド(52)、台形ネジ(53)及びプーリ(54)を使用した上下移動機構(55)の3軸の移動機構とモータ駆動ケーブルの断線等により、装置が正常に作動しなくなった時を想定し、装置の機械原点まで手動にて移動させる為の非常回収機構(56)〔旋回、前後移動機構のみ〕、水中用溶接ヘッド(1)を誘い込む案内板(57)、水中用溶接ヘッド(1)を受けるプレート(58)、該プレートには、水中用溶接ヘッド(1)の位置を決める位置決めピン(59)、装置を吊る為の吊り金具(60)及び、全体移動装置(37)と取り合う為に穴加工を施したブロック(40)と取付けボルト(41)から構成されている。
【0033】
図5は、この発明の一実施例を示す水中用溶接ヘッド(1)を示し、(a)は、正面図、(b)は、側面図である。
水中用溶接ヘッド(1)の構成は、機密性のある箱型の容器にワイヤリール及びワイヤを送給する駆動機構を設けたワイヤ送給装置(7)とスライドシャフト(61)、台形ネジ(62)及び傘歯車(63)を使用した上下移動機構(64)、左右移動機構(65)、前後移動機構(66)の三軸の移動機構と、その移動機構の末端にある前後移動機構(66)にトーチ先端のシールド材(70)が装備された支持材(71)と上下移動機構(64)の非稼働部のベースプレートから連結させる為の支持材(72)、トーチ(2)が既設構造物と干渉しないかを監視する為の監視用のカメラ(8)と照明(12)、水中用溶接ヘッド(1)を吊るための吊り金具(67)、アクセス装置(38)と取り合う為に穴加工を施したプレート(68)と取付けボルト(69)から構成されている。
【0034】
図6は、この発明の一実施例を示すトーチの側面図、図7は、トーチの正面図、図8は、トーチボディの図6中のI−I拡大断面図、図9は、トーチボディの一部断面図であり、図7中のII−II断面を表している。
トーチの構成は、絶縁材を使用したトーチボディ(73)の外周にガス噴射用の溝(74)を1又は複数加工し、該トーチボディ(73)の内部にアーク電極(23)、該アーク電極に固定する電極ホルダ(75)、トーチブロック(76)、ワイヤノズル(22)と被溶接面、水排除、アーク電極、ワイヤ状況を確認する為の防水性を有するトーチ内カメラ(9)及びトーチ内照明(13)を配置し、前記トーチボディの外側に金属性のカバー(79)で覆い、トーチボディ(73)の外周にガス噴射用の溝(74)を加工した位置と金属性のカバー(79)に取り付けたガスホース継ぎ手(80)を経てトーチボディ(73)の外周からガスを流せる構造にした。また、各パーツ毎に中継ボックス(81)へ水(28)が浸入しないようにOリング(82)を用いて防水対策を実施した。
【0035】
溶接ケーブル(83)とアーク電極タッチ検出ケーブル(84)は、中継ボックス(81)を経てトーチブロック(76)へ接続し、ワイヤ送給装置(7)からワイヤ/ガス兼用ホース(85)は、中継ボックス(81)に取り付けたガスホース継ぎ手(86)を介してワイヤノズル(22)と接合した。また、カメラケーブル(87)と照明ケーブル(88)は、中継ボックス(81)でフランジ(89)取り合いにし、中継ボックス(81)の中でコネクタを接続した。尚、中継ボックス(81)は、シール材を用いて防水対策を施した。
【0036】
図11に示すように、トーチボディ(73) の先端は、独立気泡型で、伸縮自在な可撓性シールド材(70)を、金属性の支持材(71)に取付け、ガス圧により、シールド材(70)が振動し被溶接面との密着度を損なわないようにする為、支持材(71)からシールド材(70)の外周に、一実施例として板バネ材(90)を装備した。支持材(71)とトーチボディ(73)の金属性のカバー(79)の間は、耐熱、弾力性のある吸収材(78)を押さえプレート(91)にてボルトで締結する構造にした。
【0037】
その吸収材(91)を設けることにより移動機構によって生ずる引張、圧縮、曲げ、捩じりが吸収される為、被溶接面とシールド材(70)の密着度を損なわずに安定した気中環境下で溶接が行える。
【0038】
装置完了後は、大型の金属容器(29)の中心に対して円周方向に水中用溶接装置を移動させる全体移動装置(37)にて溶接補修対象部位へ水中用溶接装置を移動させる。その溶接対象部位に対してのズレは、水中用溶接ヘッド(1)に不随する水中溶接ヘッドカメラ(8)で確認しながら全体移動装置(37)の位置調整を実施し、該水中溶接ヘッドカメラ(8)で確認しながらアクセス装置(38)の移動機構を操作して、水中用溶接ヘッド(1)先端のアーク電極(23)を被溶接面に接触させる。制御は、予めアーク電極(23)に微弱の電圧を流しておき、アーク電極(23)が被溶接面に接触したら、その電圧が降下するので、その電圧が降下した時にアクセス装置(38)の移動機構が、過度な押付けを防止する為に、停止状態になるように制御した。
【0039】
アーク電極(23)を被溶接面に接触した時は、トーチ先端のシールド材(70)が被溶接面側に密着されるので、トーチボディ(73)に配備されたトーチ内カメラ(9)にて水排除の状況を確認する。この状態で30秒程経過するとアーク電極空間内の水は外へ噴出されるが、若干、水滴がアーク電極空間内に滞留するので、実施例においては、確実に乾燥した気中環境を確保する為に、エアでの乾燥時間を10分間実施し、その後、ガス操作盤(5)にてアルゴンガスに切り替え、アーク電極空間内をエアからアルゴンガス雰囲気への置換を10分間実施した。
アルゴンガスもエアと同様に0.3MPaの圧力で、トーチボディ(73)の外周のガス噴射用の溝(74)から100リットル/mim、ワイヤノズル(22)からは、15リットル/mimのアルゴンガスを流した。
【0040】
溶接方法は、ティーチング/プレイバック制御方式を採用し、開始点、中間点、終了点にアーク電極(23)を被溶接面に接触させ、その接触させたポイントを制御盤(4)に覚え込ませておき、その各ポイントを直線にて結び溶接施工軌道を覚え込ませる工法とした。また、溶接前にこの覚え込ませた溶接施工軌道を溶接をせずに実際に施工する溶接速度で動作確認し、動作させてもアーク電極空間内に水が浸入してこない事を確認してから、溶接する工法とした。
【0041】
実際に溶接する時は、ワイヤノズル(22)からアルゴンガスを流すとアークがふらつく為、ワイヤノズル(22)から噴射していたアルゴンガスは流さずに、トーチボディ(73)のガス噴射用の溝(74)から0.3MPaの圧力で、50リットル/mimのアルゴンガスのみを流し溶接した。また、被溶接面とアーク電極(23)の進入角度は、アクセス装置(38)に不随する旋回移動機構(48)にて調整した。
【0042】
溶接スタート方法は、アーク電極(23)と被溶接面を接触させアークを出すタッチスタートの方法で、水中用溶接ヘッド(1)の移動機構の3軸合成AVC制御を採用し、溶接電流150A、アーク電圧11V、ワイヤ送給速度、溶接速度と低入熱溶接で実施した。
【0043】
また、この発明の実施例では、横向き溶接の廻り止めの補修溶接であったので、1層盛りの溶接長さが15mm程度の補修であった。1箇所当たりの溶接補修時間は、2秒弱と短かった為、トーチボディ(73)に配備されたトーチ内カメラ(9)には、アーク監視用のフィルタは装着せずに実施した。もし、溶接時間が長くなる溶接部位であるのならアーク監視用のフィルタを装着させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明は、水中溶接装置の技術を確立し、実施することにより、産業上利用できるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 水中用溶接ヘッド
2 トーチ
3 監視盤
4 制御盤
5 操作盤
6 溶接電源
7 ワイヤ供給装置
8 水中用溶接ヘッドカメラ
9 トーチ内カメラ
10 カメラコントローラ
11 モニタ
12 水中用溶接ヘッド照明
13 トーチ内照明
14 照明用アンプ
15 記録計
16 PLC
17 モータアンプ
18 水中用溶接ヘッド用駆動モータ
19 アクセス装置用駆動モータ
20 全体移動装置用駆動モータ
21 ホールセンサ
22 ワイヤノズル
23 アーク電極
24 フィルタ
25 減圧弁
26 バルブ
27 流量計
28 水
29 大型の金属容器
30 主配管の上段
31 主配管の下段
32 分岐管
33 アルゴンガスボンベ
34 走行作業台車
35 電動式チェーンブロック
36 天井クレーン
37 全体移動装置
38 アクセス装置
39 案内棒
40 ブロック
41 取付けボルト
42 位置決めピン
43 取付けボルト
44 プレート
45 Vレール
46 Vローラ
47 ラックとピニオン
48 旋回移動機構
49 LMガイド
50 ラックとピニオン
51 前後移動機構
52 LMガイド
53 台形ネジ
54 プーリ
55 上下移動機構
56 非常回収機構
57 案内板
58 プレート
59 位置決めピン
60 吊り金具
61 スライドシャフト
62 台形ネジ
63 傘歯車
64 上下移動機構
65 左右移動機構
66 前後移動機構
67 吊り金具
68 プレート
69 取付けボルト
70 シールド材
71 支持材
72 支持材
73 トーチボディ
74 ガス噴射用の溝
75 電極ホルダ
76 トーチブロック
77 ガスホース
78 吸収材
79 金属製のカバー
80 ガスホース継ぎ手
81 中継ボックス
82 オーリング
83 溶接ケーブル
84 アーク電極タッチ検出ケーブル
85 ワイヤ・ガス兼用ホース
86 ガスホース継ぎ手
87 カメラケーブル
88 照明ケーブル
89 フランジ
90 板バネ材
91 押さえプレート
Y 局部中空内

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中環境下で局部的に気中環境下にし、溶接を行う水中溶接装置であって、水中用溶接ヘッドに搭載されたトーチにおいて、絶縁材を使用したトーチボディの外周に、ガス噴射用の溝を加工し、該トーチボディを金属製のカバーで覆い、該トーチボディ内に、アーク電極、ワイヤノズルを設け、トーチ構造を小型化したことを特徴とする水中溶接装置。
【請求項2】
トーチ構造を小型化したトーチに、トーチ内カメラ及び/またはトーチ内照明を配備し、これらを一体化して、トーチ構造を小型化したことを特徴とする請求項1記載の水中溶接装置。
【請求項3】
トーチボディのトーチ先端部に、独立気泡型で、伸縮自在で、且つ可撓性を有するシールド材を装備した支持材と、トーチボディの先端との間に、耐熱性、弾力性を有する吸収材を有するトーチ構造としたことを特徴とする請求項1又は2記載の水中溶接装置。
【請求項4】
シールド材の周囲に、板バネ等の金属性の弾性材を設けることにより、被溶接面とシールド材との密着度を向上させることを特徴とする請求項3記載の水中溶接装置。
【請求項5】
シールド材が装備された支持材を、3次元方向に移動可能な移動機構部の非稼働部に別の支持材により固定する水中用溶接ヘッドを設けたことを特徴とする請求項3又は4記載の水中溶接装置。
【請求項6】
水中用溶接ヘッドに、更なる3次元方向に移動機構を持たせたことを特徴とする請求項5記載の水中溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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