説明

水中物質検出装置

【課題】格別のメンテナンスを必要とせず、リアルタイムで水中に存在する物質を検出することができるようにする。
【解決手段】反応セルである電気化学セル5に試料溶液及び電解質溶液からなる測定溶液11を保持又は通過させ、該測定溶液に表面が接触する作用電極10に向けて光源8から光を間欠照射する。該光照射によって作用電極、対極及び参照電極から得られる光応答電流を、ポテンシオスタット20により検出する。演算処理部9は、検出された光応答電流の特性を検出し、かつ該特性に基づいて、試料溶液に特定の物質が含まれているか否かを判定する。作用電極は、先端に凹部が形成された炭素電極と、該凹部に収納された、メディエータが練り込まれたカーボンペーストと、該カーボンペーストの表面に塗布された光合成素子とにより構成されている。光合成細菌を用いる必要がないので、メンテナンスが簡単であり、ほぼリアルタイムで物質検出が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中物質検出装置に関し、より詳細には、水中の物質の存在・非存在を光合成素子が発生する光応答電流の変化として検出することにより、水中の物質を検出することができるようにした、水中物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の地球環境には、生体に有害となる物質が多く存在することがわかっており、有害物質が水道原水だけでなくあらゆる産業や生活に関わる排水や河川水及び地下水等に混入する可能性がある。混入の可能性がある有害物質として、シアンやフェノール類をはじめとして多種多様の物質があり、これらの混入を早期に感知して警告を発生する技術が開発されている。
【0003】
例えば、浄水場では、原水中への毒物流入を監視するために、原水の一部を水槽に常時導入し、この水槽でフナ、コイ、ウグイ、タナゴ、ニジマス等の水棲動物を飼育し、これら魚類の動きを画像解析して異常行動が観察されたときに、毒物混入が生じたと推定する検出システムを用いている。以下の特許文献1には、このようなシステムが記載されている。
【0004】
また、以下の特許文献2に記載されているように、亜硝酸生成細菌を固定した固定化微生物 膜と溶存酸素電極を組み合わせた微生物センサと、参照電極を用いることにより、これらの出力応答パターンから、試料水中に混入する有害物質を検出することができ、また、上記の微生物センサを2個と参照電極とを用いた有害物質の検出と分類が可能になる有害物質検出装置が実用化されている。
さらに、以下の特許文献3に記載されているように、同様に細菌を利用した水質異常検出システムであって、硝化細菌ではなく鉄バクテリアを利用したシステムが提案されている。このシステムにおいては、餌として第一鉄を一定量添加し、その活性を酸素濃度の減少程度から推定し、それにより、浄水場、下水処理場の流入水の水質異常を検出できるようにしている。
【特許文献1】特許第2052736号公報
【特許文献2】特許第3032831号公報
【特許文献3】特開平11−37969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来例の水質異常検出システムにおいては、ほぼリアルタイムで水質異常を検出することができるが、生物を利用しているため、生物の生命を維持するための餌や栄養を補給する等のメンテナンスが必要である。また、システム全体が大がかりにならざるを得ないと共に、特に、異常検出部が大がかりとなり、一般的な使用が困難である場合が多い。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、格別のメンテナンスを必要とせず、リアルタイムで水中に存在する物質を検出することができるようにした水中物質検出装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、従来例の問題点を解決するための研究を重ねた結果、光照射時に、光合成素子から外部電子伝達メディエータを介して得られる光電気化学的応答電流(以下、「光応答電流」)が、物質の存在・非存在に応じて3つの応答パターンで変化することに着目し、該光応答電流値の変化を測定することにより、従来例の問題を解消することができることを見いだした。
このような着目に基づいてなされた本発明に係る、水中の物質を検出する水中物質装置は、
試料溶液及び電解質溶液からなる測定溶液を保持又は通過させる反応セルと、
反応セル中の測定溶液に表面が接触する作用電極であって、その表面に光応答を行う光合成素子を備えた作用電極と、
反応セル中の作用電極に向けて間欠的に光照射を行う光源と、
間欠的光照射によって生じる光応答電流であって、作用電極から得られる光応答電流の特性を試料電流特性として検出する電流特性検出部と、
電流特性検出部によって検出された試料電流特性に基づき、試料溶液に特定の物質が含まれているか否かを少なくとも判定する物質判定部と
からなることを特徴としている。
【0007】
上記した本発明に係る水中物質検出装置において、作用電極は、先端に凹部が形成された電極と、該凹部に収納された、メディエータが練り込まれたカーボンペーストと、該カーボンペーストの表面に塗布された光合成素子とにより構成されていることが好ましい。また、上記した本発明に係る水中物質検出装置において、該装置はさらに、作用電極と反応セルとの間に、測定溶液が移動可能なスペーサを備え、作用電極がスペーサを介して測定溶液に接触されることが好ましい。
【0008】
さらに、上記した本発明に係る水中物質検出装置において、物質判定部は、
電流特性検出部によって検出された、最初に測定溶液を支持電解溶質液のみとして光照射を行った場合の光応答電流特性、該電解溶質溶液に少なくとも1つの物質を含むときの光照射を行った場合の光応答電流特性、並びに、その後作用電極を洗浄して支持電解溶液のみで再度光照射を行った場合の光応答電流の特性を基準電流復活特性として予め記憶した基準電流特性記憶部と、
電流特性検出部によって検出された、被測定試料溶液の光応答電流特性を測定後、作用電極を洗浄して支持電解質溶液のみとして光照射を行った場合の光電流特性を、基準電流特性記憶部に記憶された基準電流復活特性と対比し、対比結果に基づき、試料溶液中の物質が基準電流特性記憶部に記憶された既知の物質であるか否かを判定する判定部と
を備えていることが好ましい。
【0009】
または、上記した本発明に係る水中物質検出装置において、物質判定部は、
電流特性検出部によって検出された、支持電解溶質液に少なくとも1つの既知の物質を含むときの光照射を行った後に、作用電極を洗浄して支持電解溶液のみで再度光照射を行った場合の光応答電流の特性を基準電流復活特性として予め記憶した基準電流特性記憶部と、
電流特性検出部によって検出された、被測定試料溶液に光照射を行った後に、作用電極を洗浄して支持電解質溶液のみとして光照射を行った場合の試料電流特性である試料電流復活特性を、基準電流特性記憶部に記憶された基準電流復活特性と対比し、対比結果に基づき、試料溶液中の物質が基準電流特性記憶部に記憶された既知の物質であるか否かを判定する判定部と
を備えていることが好ましい。
この場合、基準電流特性記憶部は、複数の既知の物質に関する複数の基準電流復活特性を予め記憶しており、判定部は、電流特性検出部によって検出された試料電流復活特性を複数の基準電流復活特性と対比し、試料溶液中に複数の既知の物質のいずれかが含まれているか否かを判定するよう構成されていることが好ましい。
【0010】
さらにまた、上記した本発明に係る水中物質検出装置において、物質判定部は、
間欠的光照射により得られた少なくとも1つの既知の物質に関する光応答電流の特性を基準電流特性として予め記憶する基準電流特性記憶部と、
電流特性検出部によって検出された試料電流特性を、基準電流特性記憶部に記憶された基準電流特性と対比し、対比結果に基づき、試料溶液中の物質が基準電流特性記憶部に記憶された既知の物質であるか否かを判定する判定部と
で構成されていてもよい。
【0011】
この場合、基準電流特性記憶部は、複数の既知の物質に関する複数の基準電流特性を予め記憶しており、判定部は、電流特性検出部によって検出された試料電流特性を複数の基準電流特性と対比し、試料溶液中に複数の既知の物質のいずれかが含まれているか否かを判定するよう構成されていることが好ましい。また、基準電流特性記憶部に記憶される基準電流特性は、既知の物質が測定溶液中に存在する場合の、種々の既知の濃度における光応答電流の第1の定常電流値、該既知の物質が測定溶液中に存在しない場合の光応答電流における第2の定常電流値、及び該既知の物質の濃度に対する、第1の定常電流値を第2の定常電流値で除算した値である基準活性度の関数を含み、電流特性検出部は、判定部により試料溶液中の物質が特定されたとき、検出された光応答電流の定常電流値を基準電流特性記憶部に記憶された該特定された物質の第2の定常電流値で除算して試料活性度を演算して、試料電流特性として特性対比部に供給するよう構成され、判定部は、基準活性度の関数に基づき、試料活性度に対応する物質濃度を判定するよう構成されていることが好ましい。さらにまた、物質判定部の基準電流特性記憶部は、基準電流特性として、既知の物質が測定溶液中に所定割合存在する場合の、初期の間欠的光照射によって得られる光応答電流の基準定常電流値及び基準ピーク電流値と、既知の物質が測定溶液中に所定割合存在する状態で、初期の間欠的光照射を所定時間継続した後、作用電極を洗浄した後でかつ反応セル中の溶液に該物質が存在しない状態で光照射により得られる基準電流復活特性と
を予め記憶しており、物質判定部の判定部は、電流特性検出部によって検出された、反応セル内の測定溶液中に試料溶液が存在する状態での初期の間欠的光照射によって得られる試料電流の定常電流及びピーク電流値と、基準電流特性記憶部に記憶された基準定常電流及び基準ピーク値とを対比し、かつ、電流特性検出部によって検出された、反応セル内の測定溶液中に試料溶液が存在する状態で間欠的に所定時間光照射した後に、作用電極を洗浄した後でかつ該試料溶液が存在しない状態で電流特性検出部によって検出された試料電流特性を、基準電流特性記憶部に記憶された基準電流復活特性と対比し、これら対比結果に基づき、試料溶液中の物質が基準電流特性記憶部に記憶された既知の物質であるか否かを判定するよう構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記したように構成されており、光合成素子を利用しているので、動物を用いた従来例のシステムに対比して応答速度が迅速であり、よって、水中の物質の検出(及びその濃度)を迅速かつ再現性よく実行することができる。
また、従来例のセンサ素子として硝化細菌、鉄バクテリア等を用いた電気化学センサあるいは水質異常検出装置においては、センサ素子の生命を維持するためのメンテナンス作業として、センサ素子の生命活動状況を監視しながらタイミング良く餌や栄養を供給する必要があったが、本発明によれば、従来例に対比してメンテナンス作業が簡便である。特に非生物であるクロマトフォアをセンサ素子として用いた場合には、生命活動を維持する必要がないので、メンテナンスは飛躍的に簡便になる。
さらに、センサ素子の生物種や形態を適宜選択することにより、種々の物質の内の目的のものを高感度に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の水中物質検出装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明の水中物質検出装置の一実施形態を示す説明図であり、該装置は、参照電極2、対極3、測定前不活性ガス導入口4a、測定中不活性ガス導入口4b、電気化学セル(反応セル)5、光学フィルタ7、光源8、演算処理装置(コンピュータ)9、作用電極10、測定溶液11、ポテンシオスタット20を備えている。本発明の物質検出装置は、演算処理装置9及び測定溶液11を除き、測定に必要なモジュールが全て固定化されている。ガス導入口4a及び4bには、アルゴンやヘリウム等の不活性ガスが導入されるが、該導入される不活性ガスにより測定溶液内の酸素を不活性ガスに置換して、電極反応に影響を及ぼす恐れのある酸素を除去する。
【0014】
電気化学セル5は、測定溶液11が連続的に流れて排出される連続流通型であり、参照電極2、対極3、及び作用電極10の表面に効率的に測定溶液11が接触するように、スペーサ51を備えた薄型セルとして構成されている。なお、作用電極10にのみ測定溶液11が接触し、参照電極2及び対極3に測定溶液11が接触しないように構成してもよい。参照電極2は銀(Ag)又は塩化銀(AgCl)で構成され、対極3はプラチナ(Pt)で構成され、作用電極10は、先端に凹部が形成された電極と、該凹部に収納された、メディエータが練り込まれたカーボンペーストと、該カーボンペーストの表面に塗布された光合成素子とで構成されている。なお、先端の凹部が形成された電極は不活性電極であり、炭素、白金、金等の任意の材料で構成されている。
【0015】
測定溶液11は、試料溶液と、支持電解質溶液であるpH8.0の50mMリン酸緩衝液とを含んでいる。
光源8はオン・オフを繰り返して周期的に光を放出し、光学フィルタ7は、光源からの光の内、光合成素子の光合成反応に必要な波長660nm以上の光のみを電気化学セル5に通過させる。光源8のオン時すなわち照射時には、電気化学セル5内での測定溶液中の光合成素子による光応答電流が増大し、オフ時すなわち非照射時には、このような光応答電流の増大が消失する。光源8のオン時間及びオフ時間はそれぞれ、2〜10分程度であるが、オン時間が5分程度でオフ時間を長時間(例えば、2時間程度)に設定することが好適である。
【0016】
そして、光照射時の光応答電流の増大分は、測定溶液11に検出対象である物質がどの程度含まれているかに依存する。例えば、検出対象の試料物質がフェノール又はシアンである場合、該物質が測定溶液11に含まれていない場合に対比して、光照射時の電流の増大量が小さくなる。光照射時の電流増大量の大小は、測定溶液11に含まれる試料物質の種類及びその量に依存する。
測定溶液11により生成される光応答電流の値は、ポテンシオスタット20により検出されて演算処理装置9に供給される。演算処理装置9は、この電流値に基づいて検出対象の試料物質の種類及び濃度を検出する。この演算処理については以降で詳細に説明する。
【0017】
図2は、本発明の水中物質検出装置の他の実施形態を示す説明図である。図2において、図1の水中物質検出装置と同一又は類似の構成には同一の参照番号が付されている。
図2の水中物質検出装置は、応答速度の比較的良好ではない試料物質や素子内に濃縮されて検出されるような物質の検出に適しており、このような物質を測定溶液11中に一旦停留させることができるストップド・フロー型の電気化学セル5を用いている。電気化学セル5を、測定溶液11を停留させることなく所定の速度で通過させるように構成してもよい。この水中物質検出装置はさらに、電気化学セル5中の測定溶液11を撹拌するための攪拌装置21、及びスターラー・バー(撹拌子)22を備えている。測定溶液を撹拌することにより、溶液中の酸素を不活性ガスに置換する効率を向上させることができる。
【0018】
図3−1の(A)及び(B)は、図1及び図2にそれぞれ示した水中物質検出装置に具備される作用電極10の具体的構成を示す斜視図(先端方向から見た)及び断面図である。図3に示すように、作用電極10は、先端部に凹部が形成され、該凹部にメディエータが練り込まれたカーボンペーストからなる練り込み電極12が配置され、該練り込み電極12の表面に光合成素子が塗布されている。作用電極10はさらに、電極12の表面に塗布された光合成素子の剥離を防止するための透析膜13及び該透析膜を固定するためのナイロンネット14を備えている。
【0019】
本発明でいう光合成素子とは、光合成細菌の生細胞、これを破砕精製処理により得られるクロマトフォア、またはこれら細胞やクロマトフォアを破砕して断片化したものをいう。
光合成細菌は、光合成器官を内膜構造として持つ。光合成器官は脂質、光合成ユニット、酸化還元酵素等を含み、その断片として得られる光合成顆粒はクロマトフォア、スフェロプラスト小胞のような蛋白質、脂質等からなる膜から構成されている閉じた小胞である。この種の膜は光電変換反応を行う光合成反応中心蛋白質複合体を持ち、光刺激によって膜を挾んで電位差を生じる。
そして、特開平5−347423号に記載されているように、菌体膜を超音波処理等の方法で破砕することによってクロマトフォア等の膜断片が得られる。クロマトフォア等の光合成膜断片や光反応ユニット、反応中心といった光合成蛋白質(光合成顆粒と総称する)が、光刺激を受けて電荷分離および電子伝達を起こすことを利用して電池が構成できる。
なお、光合成細菌とは、従来公知の光合成細菌を用いればよく、限定されるものではないが、好ましくは、紅色光合成細菌に分類されるRhodovulum Sulfidophilum、Rhodopseudomonas Palustris、Rhodospirillum Photometricum、Rubrivivax Gelatinosus、Allochromatium Vinosum、Rhodobacter Sphaeroides(Rb.Sph)、Rhodobacter Capsulatus、Rhodospirillum Rubrumなどである。
また、クロマトフォアを得るためには、好ましくは上記の紅色細菌に分類される細菌の中でも、Rhodovulum Sulfidophilum、Allochromatium Vinosum、Rhodobacter Sphaeroides、Rhodobacter Capsulatus、Rhodospirillum Rubrumを用いればよい。
【0020】
また、光合成素子から電極へ電子を受け渡すメディエータには、従来公知の酸化還元物質を用いればよく、限定されるものではないが、例えば、以下の酸化還元物質をあげることができる。
ABTS、Promazine、Chloramin、TMPDA、Porphyrexide、Syringaldazine、Tolidine、Bacteriochlorophyll、Dopamine、2,5-Dihydroxy-1,4-Benzoquinone、p-Amino-Dimethylaniline、o-Quinone/1,2-Hydroxybenzene、p-Aminophenol、Tetrahydroxy-p-Benzoquinone、2,5-Dichloro-p-Benzoquinone(DCBQ)、1,4-Benzoquinone、TMPDA、Diaminodurene、2,6,2'-Trichloroindophenpl、Indophenol、Toluidine Blue、2,6-Dichlorophenolindophenol、2,6-Dichlomo-Indophenol、Phenol Blue、3-Amino-Thiazine、1,2-Napthoquinone-4-Sulfonate、2,6-Dimethyl-p-Benzoquinone、2,6-Dibromo-2'-Methoxy-Indophenol、2,3-Dimethoxy-5-Methyl-1,4-Benzoquinone、2,5-Dimethyl-p-Benzoquinone、1,4-Dihydoxy-Naphthoic Acid、Dimethyl-Indophenol、Isopropyl-2-Methyl-p-Benzoquinone、1,2-Naphthoquinone、1-Naphtol-2-Sulfonate Indophenol、Toluylene Blue、TTQ、Ubiquinone、Phenazine Methosulfate、 Phenazine Ethosulfate、Topa Quinone、6-Hydroxydopa Quinone、Pyrroloquinoline Quinone、Thionine、Thionine-Tetrasulfonate、Ascorbic Acid、PES、Crestal Blue、1,4-Naphthoquinone、Toluidine Blue、Thiazine Blue、Gallocyanine、Thioindigo Disulfonate、Methylene Blue、Vitamin K3、Pycocyanine、Indigo-Tetrasulfonate、Vitamin K1、Luciferin、Pyocyanine、Methyl Capri Blue、Resorufin、2-Amino-3-Carboxy-1,4-Naphtoquinone、2-Farnesyl-3-Methyl-1,4-Naphtoquinone、Indigo-Trisulfonate、4-Amino-1,2-Naphthoquinone、Trimethyl-Isoalloxazine、Chloraphine、Nile Blue、Indigocarmine、9-Phenyl-Isoalloxazine、2-Hydroxy-1,4-Naphthoquinone、Thioglycolic Acid、2-Amino-N-Methyl Phenazine Methosulfate、Azure A、Indigo-Monosulfonate、Anthraquinone、Alloxazine、Brilliant Alizarin Blue、Crystal Violet、2-Methyl-3-Hydroxy-1,4-Naphthoquinone、Patent blue、9-Methyl-Isoalloxazine、Cibachron blue、 Phenol Red、Anthraquinone-2,6-Disulfonate、Neutral blue、Bromphenol Blue、Anthraqyinone-2,7-Disulfonate、Quinoline Yellow、Riboflavin、Flavin Adenine Mononucleotide、FAD、Anthraquinone-1-Sulfonate、Anthraquinone-2-Sulfonate、Phenosafranin、Lipoamide、Safranine T、Lipoic Acid、Indulin Scarlet、4-Aminoacridin、Acridin、NAD、NADP、Neutral Red、Cysteine、Benzyl Viologen、3-Aminoacridine、1-Aminoacridine、Methyl Viologen、2-Aminoacridine、Fe Porphyrin、Diaminoacridine、5-Aminoacridine
メディエータとして、好ましくは、ABTS、2,5-Dichloro-p-Benzoquinon、Indophenol、2,6-Dichlorophenolindophenol L、Phenol Blue、2,6-Dimethyl-p-Benzoquinone、2,3-Dimethoxy-5-Methyl-p-Benzoquinone、Phenazine Methosulfate、Phenazine Ethosulfate、1,4-Naphthoquinone、 Methyl Viologenを用いるとよい。
【0021】
メディエータの最適濃度範囲は、メディエータを電極に固定化して用いる際には、固定化方法に大きく依存するが、例えばカーボンペースト電極に固定化する場合には、カーボンペーストに対する重量比として、0.0001〜0.1を採用することができ、好ましくは0.001〜0.02であり、さらに好ましくは0.002〜0.01である。
【0022】
また、測定溶液11のpH範囲により、用いる光合成素子とメディエータとの関係から光応答信号の大きさは変化する。測定溶液のpH範囲として3〜11を採用することができ、好ましくは4〜10、さらに好ましくは5〜9である。
照射する光の波長の最適範囲は、用いる光合成素子の光励起が起きる波長に大きく依存するが、400〜1200nmを採用することができ、好ましくは紅色細菌の励起波長である650〜980nmである。
光合成細菌、クロマトフォア及びそれら破砕物の最適濃度は、例えばカーボンペースト電極に固定化する場合には、カーボンペースト電極の表面積に対するクロロフィル量(nmol/mm2)として、0.01〜2.0を採用することができ、好ましくは0.5〜1.0であり、さらに好ましくは0.6〜0.8である。
【0023】
図3−2は、演算処理装置9の構成を示すブロック図であり、該図に示すように、演算処理装置9は、試料電流特性検出部91、基準電流特性記憶部92、判定部93により構成されている。
試料電流特性検出部91は、ポテンシオスタット20から光応答電流のパターンを受け取ってその電流特性を抽出し、該特性を試料電流特性として判定部93に供給する。試料電流特性は、以降で説明する基準電流特性記憶部92に記憶される基準電流特性に対応するものである。
基準電流特性記憶部92は、1又は複数の既知の物質の光応答電流の特性が基準電流特性として予め記憶された検索テーブルを備えている。
判定部93は、試料電流特性検出部91により得られた試料電流特性と、基準電流特性記憶部92に記憶された基準電流特性とを対比して、測定溶液中の試料溶液に特定の物質が含まれているか否かを判定し、かつ、特定の物質が含まれていると判定した場合に、その濃度を特定する。なお、判定部93が濃度特定機能を有することなく、試料物質の種類の特定機能のみとしてもよい。
【0024】
基準電流特性記憶部92に記憶される検索テーブルは、通常、図1又は図2の水中物質検出装置を用いて実機テストを行うことにより作成される。このような検索テーブルの作成のための実機テストの例を、図4〜図10を参照して以下に説明する。
【0025】
実機テスト1
図4は、図1に示した水中物質検出装置を用いて実機テストを行って得られたRb.Sph.(Rhodobacter Sphaeroides)の光合成細胞及びそのクロマトフォアの光応答電流−時間曲線を示している。なお、図4の(A)は、100秒間の光照射を周期的に繰り返した場合の光応答電流の値(アンペア)を表しており、図4の(B)は、図4の(A)のグラフの時間4350〜4550秒の範囲を拡大して表したグラフである。図4のグラフから明らかなように、光照射直後の約30秒間に光応答電流が急激に増大してスパイク状のピークが生じた後、ほぼ一定の定常光電流Is(Steady-State Photocurrent)を示すという特性を有している。
したがって、実機テストで得られた光応答電流特性を基準電流特性として保持する検索テーブルを作成して、実機テストでの条件とともに基準電流特性記憶部92に記憶しておけばよい。
【0026】
実機テスト2
図5の(A)は、図1に示した水中物質検出装置を用い、a.測定溶液を支持電解質溶液のみとして光照射を行った場合、b.該電解質溶液に検出すべき物質として0.5μMのNaCNを添加して光照射を行った場合、及び、c.上記bを行った後に電極を洗浄しNaCNを含まない電解質溶液を用いて光照射を行った場合の、実機テストにより得られた光応答電流を示している。この実機テストにおいては、メディエータとしてDCBQを採用し、DCBQを重量比5×10−3でカーボンペーストに練り込み、その上にRb.Sph.のクロマトフォアを、カーボンペースト電極の表面積に対するクロロフィル量0.7nmol/mm2載せて固定化した電極を用いた。また、強度500μmolm−2/Sの光照射を8分間行った。
【0027】
図5の(A)のグラフa及びbに示すように、NaCNの非存在下すなわち支持電解質のみの状態での定常電流値Iに対比して、NaCNの存在下では定常電流値Iは大幅に減少したが、光照射直後のスパイク状電流のピーク値は両者の間で殆ど変化がなかった。また、グラフcに示すように、一旦NaCNが存在した状態で光照射を受けた場合、その後に電極を洗浄しても、定常電流値がグラフaの定常電流値Iまで復活せず、むしろグラフbでの定常電流値とほぼ同一であった。したがって、NaCNが現在存在していなくても、過去に存在したことがわかる。
【0028】
上記と同様な実機テストを、NaCNの濃度を種々に変化させて実行した。その結果得られた定常電流値I及びIを用いて、電子移動反応の活性度(activity)=I/I×100(%)を演算し、該活性度をNaCNの濃度に対応させてプロットさせたところ、図5の(B)に示すグラフが得られた。図5の(B)のグラフから明らかなように、濃度5×10−8M以上で活性度が低下し始め、5×10−6以上で活性度が約35%で一定となった。
図5の(A)及び(B)に示す光応答電流特性を基準電流特性として保持する検索テーブルを作成し、実機テストでの条件とともに基準電流特性記憶部92に記憶しておく。このような検索テーブルを用いることにより、NaCNが存在するか(したか)だけでなく、その濃度も検出することができる。
【0029】
実機テスト3
実機テスト2と同様な実機テストを、NaCNの代わりに1mMのフェノールを用い、かつフェノール添加後の光照射を行う時間タイミングを種々に変化させて行った。図6の(A)は、該実機テストにより得られた光照射タイミング(時間経過)と光応答電流との関係を示している。フェノールの存在下では、時間経過と共に定常電流値が徐々に低下し、また光照射直後のスパイク状電流のピーク値が現れなくなった。この実機テストにおけるフェノール添加後の時間経過に対する電子移動反応の活性度I/Iをプロットしたところ、図6の(B)のグラフが得られた。
また、フェノール存在下で光照射した後に電極を洗浄し、フェノールを含まない電解質溶液中で同様に光照射した。図6の(C)のグラフa〜cは、フェノール添加前に光照射した場合、フェノール添加後1時間後に光照射した場合、及び、その後に洗浄して更に30分後に光照射した場合の電流を示している。これらグラフから明らかなように、電極洗浄後約30分で、光照射初期時のスパイク状電流が復活し、また、定常電流も復活している。
図6の(A)及び(B)に示す光電流特性を基準電流特性として保持する検索テーブルを作成し、実機テストでの条件とともに基準電流特性記憶部92に記憶する。このような検索テーブルを用いることにより、フェノールが存在するかどうかを検出することができる。
また、フェノールの濃度を種々に変更してその濃度に対する電子移動反応の活性度の関数を作成しておくことにより、フェノールの濃度も検出することができる。
【0030】
実機テスト4
実機テスト2と同様な実機テストを、NaCNの代わりに0.5mMのNaNを用いて行った。図7の(A)は、a.測定溶液を支持電解質溶液のみとして光照射を行った場合、b.該電解質溶液に検出すべき物質として0.5mMのNaNを添加して光照射を行った場合、及び、c.上記bを行った後に電極を洗浄しNaNを含まない電解質溶液を用いて光照射を行った場合の、得られた光応答電流を示している。図7の(A)に示すように、NaNの存在下では光応答電流の定常電流値が減少したが、初期時のスパイク状電流のピーク値には殆ど変化が生じなかった。また、電極洗浄後のNaNの非存在下では、光応答電流が復活した。
また、上記と同様な実機テストを、NaNの濃度を種々に変化させて実行した。その結果得られた定常電流値I及びIを用いて、電子移動反応の活性度I/I×100(%)を演算し、該活性度をNaNの濃度に対応させてプロットさせたところ、図7の(B)に示すグラフが得られた。図7の(B)のグラフから明らかなように、濃度が増大するに連れて活性度が減少し、濃度0.4mM以上で光応答電流が負の値となった。
図7の(A)及び(B)に示す光電流特性を基準電流特性として保持する検索テーブルを作成し、基準電流特性記憶部92に記憶する。このような検索テーブルを用いることにより、NaNが存在するかだけでなく、その濃度も検出することができる。
【0031】
実機テスト5
実機テスト2と同様な実機テストを、NaCNの代わりに濃度0.1mMのピロガロール(3価フェノール)を用いて行った。図8の(A)は、a.測定溶液を支持電解質溶液のみとして光照射を行った場合、b.該電解質溶液に検出すべき物質として0.1mMのピロガロールを添加して光照射を行った場合に得られた光応答電流を示している。図8の(A)に示すように、ピロガロールの存在下では光応答電流の定常電流値が増大した。初期時のスパイク状電流のピーク値はわずかながら増大した。
また、上記と同様な実機テストを、ピロガロールの濃度を種々に変化させて実行した。その結果得られた定常電流値I及びIを用いて、電子移動反応の活性度I/I×100(%)を演算し、該活性度をピロガロールの濃度に対応させてプロットさせたところ、図8の(B)に示すグラフが得られた。図8の(B)のグラフから明らかなように、濃度が増大するに連れて活性度が増大し、濃度0.2mM以上で光応答電流が約500%となった。
図8の(A)及び(B)に示す光電流特性を基準電流特性として保持する検索テーブルを作成し、実機テストでの条件とともに基準電流特性記憶部92に記憶する。このような検索テーブルを用いることにより、ピロガロールが存在するかだけでなく、その濃度も検出することができる。
【0032】
実機テスト6
実機テスト2と同様な実機テストを、NaCNの代わりに、2つのフェノール部位を有する芳香族化合物ビスフェノールAを1mM用いて行った。図9の(A)は、a.測定溶液を支持電解質溶液のみとして光照射を行った場合、b.該電解質溶液に検出すべき物質として0.1mMのビスフェノールAを添加して光照射を行った場合に得られた光応答電流を示している。図9の(A)に示すように、ビスフェノールAの存在下では光応答電流の定常電流値が低下しかつ初期時のスパイク状電流のピーク値も減少した。
また、上記と同様な実機テストを、ビスフェノールAの濃度を種々に変化させて実行した。その結果得られた定常電流値I及びIを用いて、電子移動反応の活性度I/I×100(%)を演算し、該活性度をビスフェノールAの濃度に対応させてプロットさせたところ、図9の(B)に示すグラフが得られた。図9の(B)のグラフから明らかなように、濃度が増大するに連れて活性度が減少し、濃度1mM以上で光応答電流が約55%となった。
図9の(A)及び(B)に示す光電流特性を基準電流特性として保持する検索テーブルを作成し、実機テストでの条件とともに基準電流特性記憶部92に記憶する。このような検索テーブルを用いることにより、ビスフェノールAが存在するかだけでなく、その濃度も検出することができる。
【0033】
実機テスト7
実機テスト2と同様な実機テストを、NaCNの代わりに、白色針状晶で染料及び除草剤の合成中間体である2,4-ジクロロフェノールを0.25mM用いて行った。図10の(A)は、a.測定溶液を支持電解質溶液のみとして光照射を行った場合、b.該電解質溶液に検出すべき物質として0.25mMのジクロロフェノールを添加して光照射を行った場合、c.ジクロロフェノール添加60分後に光照射を行った場合、d.ジクロロフェノール添加120分後に光照射を行った場合、d.ジクロロフェノール添加180分後に光照射を行った場合に得られた光応答電流を示している。図10の(A)に示すように、ジクロロフェノールの存在下では添加後の時間経過に連れて定常電流値が低下し、また、初期時のスパイク状電流のピーク値は、添加後に減少したが、その後は一定のままであった。
また、図10の(B)は、上記の実機テストにより得られた定常電流値I及びIを用いて、電子移動反応の活性度I/I×100(%)を演算し、該活性度をジクロロフェノールの濃度に対応させてプロットさせたグラフである。図10の(B)のグラフから明らかなように、濃度が増大するに連れて活性度が減少している。
図10の(A)及び(B)に示す光電流特性を基準電流特性として保持する検索テーブルを作成し、実機テストでの条件とともに基準電流特性記憶部92に記憶する。このような検索テーブルを用いることにより、ジクロロフェノールが存在するかどうかを検出することができる。
また、濃度に対する活性度を表す関数を作成して検索テーブルに保持しておけば、ジクロロフェノールの濃度も検出することができる。
【0034】
これら実機テストから、検出すべき物質の非存在時/存在時の初期時のピーク電流の変化、定常電流の変化、電子移動反応の活性度、電極洗浄後の復活性の有無、図6の(B)及び図10の(B)に示したような応答時間の変化等を電流特性として監視すればよいことがわかる。なお、応答時間の変化は物質の濃度に依存するものであるから、物質の濃度を適宜変化させて予め応答時間の変化特性を記憶しておくことにより、どの変化特性に近似するかに応じて測定溶液中に存在する物質の濃度も推定することができる。
また、基準電流特性は、図1及び図2の水中物質検出装置を用い、試料溶液を測定溶液中に添加する前に、演算処理部9の試料電流特性検出部91によって検出されて電流特性を、基準電流特性として採用しても良い。
【0035】
演算処理装置9の判定部93は、試料電流特性検出部91により得られた試料電流特性と、上記のようにして作成されて基準電流特性記憶部92に記憶された検索テーブルの基準電流特性とを対比し、測定溶液11中に該当する物質が存在するかどうかを判定する。そして、該当する物質が存在すると判定した場合、判定部91は、当該物質の添加前の定常電流値Iを基準電流特性記憶部92から読み出して試料電流特性検出部91に供給し(図3−2の点線の矢印)、かつ、該検出部91に、電子移動反応の活性度(=I/I×100)を計算させる。そして、判定部91は、計算により得られた活性度から、検索テーブルを参照してその濃度を判定する。
【0036】
本発明は以上のように構成されているので、各種の物質を迅速かつ高感度で検出することができ、また、その濃度も検出することができる。したがって、例えば、環境衛生分野において、環境水中への異物質の混入及びその濃度等の分析用途にもちいることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の物質検出装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の水中物質検出装置の他の実施形態を示すブロック図である。
【図3−1】(A)及び(B)は、図1及び図2に示した水中物質検出装置に具備される作用電極の構成を示す斜視図及び断面図である。
【図3−2】図1及び図2に示した水中物質検出装置に具備される演算処理装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す水中物質検出装置により得られるRb.Sph.の細胞およびそのクロマトフォアの電流−時間曲線を示すグラフである。
【図5】(A)及び(B)は、図1に示す水中物質検出装置により得られる、0.5μM NaCNを添加したときの光応答電流及び電子移動反応の活性度を示すグラフである。
【図6】(A)〜(C)は、図1に示す水中物質検出装置により得られる、1mMフェノールを添加したときの光応答電流、電子移動反応の活性度、及び電極洗浄後の光応答電流を示すグラフである。
【図7】(A)及び(B)は、図1に示す水中物質検出装置により得られる、0.5 mM NaN3を添加したときの光応答電流及び電子移動反応の活性度を示すグラフである。
【図8】(A)及び(B)は、図1に示す水中物質検出装置により得られる、0.1 mMピロガロールを添加したときの光応答電流及び電子移動反応の活性度を示すグラフである。
【図9】(A)及び(B)は、図1に示す水中物質検出装置により得られる、1 mMビスフェノールAを添加したときの光応答電流及び電子移動反応の活性度を示すグラフである。
【図10】(A)及び(B)は、図1に示す水中物質検出装置により得られる、0.25 mM 2,4-ジクロロフェノールを添加したときの光応答電流及び電子移動反応の活性度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
2 参照電極
3 対極
4a 測定前の不活性ガス導入口
4b 測定中の不活性ガス導入口
5 電気化学セル(反応セル)
7 光学フィルタ
8 光源
9 演算処理装置
10 作用電極(光合成素子、メディエータを含む)
11 測定溶液(試料溶液及び支持電解質溶液を含む)
12 カーボンペースト練り込み電極(光合成素子、メディエータを含む)
13 透析膜
14 ナイロンネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の物質を検出する装置において、
試料溶液及び電解質溶液からなる測定溶液を保持又は通過させる反応セルと、
反応セル中の測定溶液に表面が接触する作用電極であって、その表面に光応答を行う光合成素子を備えた作用電極と、
反応セル中の作用電極に向けて間欠的に光照射を行う光源と、
間欠的光照射によって生じる光応答電流であって、作用電極から得られる光応答電流の特性を試料電流特性として検出する電流特性検出部と、
電流特性検出部によって検出された試料電流特性に基づき、試料溶液に特定の物質が含まれているか否かを少なくとも判定する物質判定部と
からなることを特徴とする水中物質検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の水中物質検出装置において、作用電極は、
先端に凹部が形成された電極と、
該凹部に収納された、メディエータが練り込まれたカーボンペーストと、
該カーボンペーストの表面に塗布された光合成素子と
により構成されていることを特徴とする水中物質検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水中物質検出装置において、該装置はさらに、作用電極と反応セルとの間に、測定溶液が移動可能なスペーサを備え、作用電極がスペーサを介して測定溶液に接触されることを特徴とする水中物質検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の水中物質検出装置において、物質判定部は、
電流特性検出部によって検出された、支持電解溶質液に少なくとも1つの既知の物質を含むときの光照射を行った後に、作用電極を洗浄して支持電解溶液のみで再度光照射を行った場合の光応答電流の特性を基準電流復活特性として予め記憶した基準電流特性記憶部と、
電流特性検出部によって検出された、被測定試料溶液に光照射を行った後に、作用電極を洗浄して支持電解質溶液のみとして光照射を行った場合の試料電流特性である試料電流復活特性を、基準電流特性記憶部に記憶された基準電流復活特性と対比し、対比結果に基づき、試料溶液中の物質が基準電流特性記憶部に記憶された既知の物質であるか否かを判定する判定部と
を備えていることを特徴とする水中物質検出装置。
【請求項5】
請求項4記載の水中物質検出装置において、
基準電流特性記憶部は、複数の既知の物質に関する複数の基準電流復活特性を予め記憶しており、
判定部は、電流特性検出部によって検出された試料電流復活特性を複数の基準電流復活特性と対比し、試料溶液中に複数の既知の物質のいずれかが含まれているか否かを判定するよう構成されている
ことを特徴とする水中物質検出装置。
【請求項6】
請求項1〜3いずれかに記載の水中物質検出装置において、物質判定部は、
間欠的光照射により得られた少なくとも1つの既知の物質に関する光応答電流の特性を基準電流特性として予め記憶する基準電流特性記憶部と、
電流特性検出部によって検出された試料電流特性を、基準電流特性記憶部に記憶された基準電流特性と対比し、対比結果に基づき、試料溶液中の物質が基準電流特性記憶部に記憶された既知の物質であるか否かを判定する判定部と
で構成されていることを特徴とする水中物質検出装置。
【請求項7】
請求項6記載の水中物質検出装置において、
基準電流特性記憶部は、複数の既知の物質に関する複数の基準電流特性を予め記憶しており、
判定部は、電流特性検出部によって検出された試料電流特性を複数の基準電流特性と対比し、試料溶液中に複数の既知の物質のいずれかが含まれているか否かを判定するよう構成されている
ことを特徴とする水中物質検出装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載の水中物質検出装置において、
基準電流特性記憶部に記憶される基準電流特性は、
既知の物質が測定溶液中に存在する場合の、種々の既知の濃度における光応答電流の第1の定常電流値、
該既知の物質が測定溶液中に存在しない場合の光応答電流における第2の定常電流値、及び
該既知の物質の濃度に対する、第1の定常電流値を第2の定常電流値で除算した値である基準活性度の関数
を含み、
電流特性検出部は、判定部により試料溶液中の物質が特定されたとき、検出された光応答電流の定常電流値を基準電流特性記憶部に記憶された該特定された物質の第2の定常電流値で除算して試料活性度を演算して、試料電流特性として特性対比部に供給するよう構成され、
判定部は、基準活性度の関数に基づき、試料活性度に対応する物質濃度を判定するよう構成されている
ことを特徴とする水中物質検出装置。
【請求項9】
請求項6〜8いずれかに記載の水中物質検出装置において、
物質判定部の基準電流特性記憶部は、基準電流特性として、
既知の物質が測定溶液中に所定割合存在する場合の、初期の間欠的光照射によって得られる光応答電流の基準定常電流値及び基準ピーク電流値と、
既知の物質が測定溶液中に所定割合存在する状態で、初期の間欠的光照射を所定時間継続した後、作用電極を洗浄した後でかつ反応セル中の溶液に該物質が存在しない状態で光照射により得られる基準電流復活特性と
を予め記憶しており、
物質判定部の判定部は、
電流特性検出部によって検出された、反応セル内の測定溶液中に試料溶液が存在する状態での初期の間欠的光照射によって得られる試料電流の定常電流及びピーク電流値と、基準電流特性記憶部に記憶された基準定常電流及び基準ピーク値とを対比し、かつ、
電流特性検出部によって検出された、反応セル内の測定溶液中に試料溶液が存在する状態で間欠的に所定時間光照射した後に、作用電極を洗浄した後でかつ該試料溶液が存在しない状態で電流特性検出部によって検出された試料電流特性を、基準電流特性記憶部に記憶された基準電流復活特性と対比し、
これら対比結果に基づき、試料溶液中の物質が基準電流特性記憶部に記憶された既知の物質であるか否かを判定するよう構成されている
ことを特徴とする水中物質検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−244056(P2009−244056A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90349(P2008−90349)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】