説明

水位報知器

【課題】 設置が極めて容易であり、長期的な使用においても故障する虞が少ない水位報知器1を提供する。
【解決手段】 水位報知器1は、2重床構造のバルコニー3に設置される水位報知器1であって、下部が防水床4と仕上床2との間に固定されて防水床4上に貯留した水を内部に流入可能な受入孔12を備えるとともに、上部が仕上床2の上に突出する筒状の本体5と、本体5の内部に上下方向にスライド自在に収納され、水に浮揚する浮力体6と、を備え、本体5は仕上床2の上に突出する上部に、その内部収納された浮力体6の一部を視認可能に露出させる透明、半透明、又は開口した報知部11を有しており、浮力体6はその上下方向のスライドにより、報知部6を通して視認される態様を変化させることにより、防水床4に貯留する排水の水位を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2重床構造に形成されたバルコニーにおける防水床に溜まった排水の水位を報知する水位報知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばフルフラットバルコニーのように、水を外部に排出する排水口を下流に設けて傾斜させた防水床と、この防水床の上に設置された仕上床と、により構成される2重床構造のバルコニーがある。雨などによってバルコニー内に侵入した水は、仕上床の間隙から防水床上に流れ落ち、防水床上を流れて排水口に集められ外部に排出される。しかし、このようなバルコニーは、排水口が設置された防水床の上に仕上床が設置されているため、排水口のストレーナにゴミが溜まって排水口が目詰まりを起こしても、外部から視認することができない。そして、排水口が詰まって排水できない状態でそのまま放置すると、防水床上に水が溜まり、仕上床上に溢れ出て、居室内に水が流入する虞がある。
【0003】
そこで、排水口よりも上方であって、バルコニー床面の最高部よりも下に浸水検知センサを設置して、バルコニー内に水が貯留すると、警報音又は警報光が、発生するバルコニー浸水警報装置が提案されている(特許文献1参照)。これによると、排水口にゴミ等が溜まって防水床上に水が溜まった場合に警報音又は警報光で報知するので、直接防水床を目視することなく、排水口の目詰まりに起因するバルコニーの浸水発生を早期に発見することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−348608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のバルコニー浸水警報装置は、浸水検知センサと警報音や警報光を発生させる警報器とを電気的に接続するものであるので、これらの間及び電源と警報器との間に配線が必要であり、設置するために工事が必要である。また、排水流路上に設置される電気製品であるため、長期的には故障する虞が高い。
【0006】
そこで、本発明は設置が極めて容易であり、長期的な使用においても故障する虞が少ない水位報知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の水位報知器は、貯留した水を外部に排出する排水口が設けられた防水床と、該防水床上に配置された仕上床と、により構成される2重床構造のバルコニーに設置される水位報知器であって、下部が前記防水床と前記仕上床との間に固定されて前記防水床上に貯留した水を内部に流入可能な受入孔を備えるとともに、上部が前記仕上床の上に突出する筒状の本体と、該本体の内部に上下方向にスライド自在に収納され、水に浮揚する浮力体と、を備え、前記本体は前記仕上床の上に突出する上部に、その内部に収納された浮力体の一部を視認可能に露出させる透明、半透明、又は開口した報知部を有しており、前記浮力体はその上下方向のスライドにより、前記報知部を通して視認される態様を変化させることにより、前記防水床に貯留する排水の水位を報知することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の水位報知器は、前記バルコニーは、前記排水口よりも上方で前記防水床に貯留した水の流入を受け入れるオーバーフロー口を更に備えるものであって、前記浮力体は、少なくともその表面に、前記防水床に水が溜まっていない状態を示す第1態様と、前記オーバーフロー口の下端の水位を示す第2態様と、前記オーバーフロー口の下端よりも高い水位を示す第3態様と、を上から順に表わしていることを特徴としている。
【0009】
なお、ここで「第1態様」、「第2態様」、及び「第3態様」はそれぞれ、浮力体の表面を塗料などでそれぞれ異なる色に着色し、又は、文字若しくは模様を記すことで、それぞれ異なる態様としたものや浮力体の表面形状をそれぞれ変化させて異なる態様としたものを含み、外部から見たときに変化を認識できる程度に互いに異なる態様をいう。
【0010】
請求項3に記載の水位報知器は、前記浮力体は円柱状又は多角柱状であることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の水位報知器は、前記受入孔は、前記本体下部に上下方向に複数設けられたことを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の水位報知器は、前記本体の上部は、前記報知部の上に可視光を透過しない目隠し部を有することを特徴としている。
【0013】
なお、ここで「可視光を透過しない目隠し部」とは、報知部に比べて可視光の透過率が低く、少なくとも本体の外部から内部に収納されている浮力体の色彩又は模様が判別できないものをいう。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の水位報知器によると、排水口が目詰まりを起こして防水床上に水が貯留された場合に、本体の下部に形成された受入孔から本体内部に水が流入し、本体内部に上下方向にスライド自在に収納されている浮力体を上方に浮かせて、浮力体の側面に表示されている態様の内、報知部を介して外部に視認可能な部分の態様を変化させることにより、外部に水位を報知することができる。このように、筒状の本体内部の浮力体を貯留した水の浮力によって、上方にスライドさせる極めて単純な構成で、防水床上に貯留した水の水位を外部に報知することができるものであるので、設置が極めて容易であり、故障する虞も少ない。
【0015】
請求項2に記載の水位報知器によると、浮力体の表面には、防水床に水が溜まっていない状態を示す第1態様と、オーバーフロー口の下端の水位を示す第2態様と、オーバーフロー口の下端よりも高い水位を示す第3態様と、を上から順に示しているので、報知部に第1態様が表示されるときは、防水床に水が溜まっておらず排水口が正常に機能していることを認識することができ、報知部に第2態様が表示されているときには、排水口が目詰まりを起こして正常に機能しておらず、オーバーフロー口に排水が流入していることを認識することができ、更に報知部に第3態様が表示されているときには、オーバーフロー口も正常に機能しておらず、水が仕上床に溢れ出る虞があることを認識することができる。
【0016】
請求項3に記載の水位報知器によると、浮力体は円柱状又は多角柱状であるので、上下方向にスライドさせたときに引っ掛かる部分がなく、確実にバルコニーの防水床に貯留した水の水位を報知することができる。
【0017】
請求項4に記載の水位報知器によると、本体の下部に形成されバルコニーの防水床上に貯留した水を受け入れる受入孔は、上下方向に複数列設されているので、例えば、下端に配置された受入孔がゴミなどで目詰まりしても、その受入孔よりも上に設けられた受入孔から水を受け入れることができるので、確実にバルコニーの防水床に貯留した水の水位を報知することができる。
【0018】
請求項5に記載の水位報知器によると、本体上部は、報知部の上に可視光を透過しない目隠し部を有しているので、浮力体の上部が報知部の上に見えることがなく、報知したい部分のみを表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】水位報知器を設置したバルコニーを説明する一部省略断面図。
【図2】水位報知器の本体を説明する省略斜視図。
【図3】水位報知器の浮力体を説明する省略斜視図。
【図4】排水口が正常に機能しているときのバルコニー及び水位報知器の状態を説明する省略断面図。
【図5】排水口が目詰まりを起こして、排水が防水床に貯留し始めた状態を説明する省略断面図。
【図6】排水がオーバーフロー口の水位まで貯留した状態を説明する省略断面図。
【図7】オーバーフロー口までも目詰まりを起こして、排水がホーバーフロー口を超えて貯留された状態を説明する省略断面図。
【図8】円筒状の本体を有する他の実施形態の水位報知器を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明における水位報知器1の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。水位報知器1は、図1に示すように、住宅等の居室内Rの床面Fとバルコニー3の仕上床2の面がほぼ同一平面上に形成されてバリアフリーを形成するフルフラットバルコニーにおける仕上床2の下に形成される防水床4上に貯留する水の水位を報知するものであって、立設する筒状の本体5と、この本体5の内部に上下方向にスライド自在に収納された浮力体6とから成る。
【0021】
本体5は、図2に示すように、防水床4の下流側に形成された排水溝7から上方に向けて立設された例えば全長310mm程度の直方体の筒状であり、上部が仕上床2よりも上に突出するように縦長なものである。この本体5の上端には、内部にゴミの侵入を防止する蓋体8が取り付けられており、上端近傍の側面には、本体5内部の空気を逃がす通気孔9が設けられている。仕上床2から上に突出している本体5の上部は上端から例えば100mm程度までが内部を透過できない樹脂製の目隠し部10を形成するとともに、本体5の目隠し部10よりも下方は透明なアクリル樹脂で構成されている。そして、このアクリル樹脂で形成された部分のうち、仕上床2よりも上に突出しており、且つ、目隠し部10よりも下の部分が、外部から内部を視認することができる報知部11を形成している。
【0022】
なお、目隠し部10と報知部11とを例えばアクリル樹脂のような同一の材料で構成し、目隠し部10の部分に可視光の透過率が低いフィルム等を貼り付ける構成であってもよい。また、本実施形態において報知部11は、透明なアクリル樹脂で形成されることにより、外部から内部を視認可能であるが、少なくとも本体5内部に収納された浮力体6の表面に付された色彩や模様などの態様を視認可能な程に、可視光を透過する構成であればよく、透明のものの他、半透明、又は開口しているものであっても良い。
【0023】
本体5は、その側面がバルコニー3の壁面13に例えば両面テープにより固定されて設置されている。このように鉛直に立設するバルコニー3の壁面13に固定されることで、傾斜している防水床4に固定する場合に比べて、本体5を鉛直に設置しやすい利点があるが、本体5の設置位置はこれに限定されるものではなく、防水床4や排水溝7に直接載置するものや排水口14のストレーナ15に嵌着するものであっても良い。
【0024】
また、この仕上床2よりも下に位置する本体5の下部の下端は4隅がそれぞれやや突出して脚部16が設けられており、この脚部16が防水床4面に接地して、防水床4との間に貯留した水を受け入れる下端受入孔12aが設けられている。また、この本体5の下部には、更に水が排水溝7及び防水床4上に貯留した場合に、この排水の本体5内部への流入を受け入れる受入孔12が上下方向に3つ並んで形成されている。このように下端受入孔12aの上に更に受入孔12が上下方向に並んで形成されていることで、仮に下端受入孔12aにゴミなどが詰まった場合でも、その上に形成された受入孔12から貯留された水を受け入れることができ、確実に排水溝7及び防水床4の水位を報知することができる。
【0025】
本体5の内部に収納された浮力体6は、例えば発泡スチロール等の水よりも比重の小さな材料でを形成して成り、本体5の内部空間よりもやや小さな直方体に形成されている。この浮力体6は例えば高さ210mm程度であって、図3に示すように、その表面に上から順に、60mm程度が青色に着色された第1態様表示部17、50mm程度が黄色に着色された第2態様表示部18、60mm程度が赤色に着色された第3態様表示部19が形成されている。
【0026】
排水口14が目詰まりすることなく正常に排水しているときには、バルコニー3内に侵入した雨水などの排水は、仕上床2の間隙から防水床4及び排水溝7を流下し、そのまま排水口14から外部に排出されるので、排水が防水床4の上に貯留されることがない。したがって、図4に示すように、浮力体6が浮力を受けることがなく、浮力体6は、本体5の最下部で防水床4に設置された排水溝7に接地している。このとき、本体5の報知部11の内側には浮力体6の青色の第1態様表示部17が位置しており、例えばバルコニー3の上や居室内Rから見ると、本体5の内部が可視可能な範囲αである報知部11には青色が表示されていると視認できる。
【0027】
そして、ゴミなどが排水口14に溜まって目詰まりを起こすと、排水が排水口14を通って外部に排出されることができず、図5に示すように排水溝7に貯留し始めるので、浮力体6が貯留した水により浮力を受けて浮き上がり始める。このとき、報知部11の内側には青色の第1態様表示部17と黄色の第2態様表示部18との境界が位置することになり、バルコニー3の上や居室内Rから見ると、報知部11の上部が青色に下部が黄色に表示されていると視認できる。
【0028】
更に、排水が防水床4上に貯留すると、図6に示すように、貯留した水の水位がオーバーフロー口20に達し、オーバーフロー口20からの排水の排出が開始される。このとき、報知部11の内側には浮力体6の黄色の第2態様表示部18が位置することになり、バルコニー3の上や居室内Rから見ると、報知部11の全面に黄色が表示されていると視認できる。
【0029】
そして、このオーバーフロー口20までもゴミなどにより詰まると、図7に示すように、更に水位が上昇し、排水が仕上床2の直ぐ下にまで達する。このとき、浮力体6は、貯留した排水により、その上端が本体5の上端に当接するまで上昇し、報知部11の内側には浮力体6の赤色の第3態様表示部19が位置することになり、バルコニー3の上や居室内Rから見ると、報知部11の全面に赤色が表示されていると視認できる。
【0030】
以上のように、バルコニー3の排水口14が正常に機能している場合には、報知部11に青色を表示し、バルコニー3の排水口14が目詰まりなどにより貯留された水を外部に配。すできなくなると、報知部11に黄色を表示し、更にオーバーフロー口20までもが、目詰まりなどにより排水を排出できない場合には、報知部11に赤色を表示するので、バルコニー3の上や居室内Rにいる住宅の居住者に対して、バルコニー3の排水口14やオーバーフロー口20の異常を報知することができる。
【0031】
なお、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば図8に示すように、本体5が円筒状に形成された他の実施形態の水位報知器1を用いることもできる。この水位報知器1は、円筒状に形成され、下端に貯留した水の流入を受け入れる受入孔12を設けるとともに、この下端がフランジ状に広がって形成された本体5と、この本体5の内部を上下方向にスライド自在な球状の浮き部材21及び下端がこの浮き部21に接着された円筒状の表示部材22から構成される浮力体6と、からなる。
【0032】
円筒状の本体5は、全長が例えば310mm程度であって、上端から例えば100mm程度までは、外部から内部を視認できない目隠し部10を形成している。そして、浮き部材21は、例えばピンポン球のように、球状に形成された樹脂の内部に空気などの気体を封入したものである。そして、この浮き部材21の上部に円筒状の表示部材22を耐水性の接着剤で接着している。
【0033】
このように構成された水位報知器1は、本体5のフランジ部分を防水床4に設けられた排水溝7上に載置して簡単に設置することができる。
【0034】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【0035】
本実施形態においては、第1態様表示部17、第2態様表示部18、及び第3態様表示部19として、浮力体6の側表面を青色、黄色、赤色に着色したが、各態様表示部17、18、19は、他の色に着色されるものであってもよく、また、例えば、「正常」「排水口目詰まり」「オーバフロー口目詰まり」等の文字をそれぞれの態様表示部17、18、19に記したものや、「○」「△」「×」等の記号や模様を記したものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る水位報知器1は、例えばフルフラットバルコニー3のような防水床4上に所定の高さを開けて仕上床2を設置する2重床構造のバルコニー3において、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 水位報知器
2 仕上床
4 防水床
5 本体
6 浮力体
10 目隠し部
11 報知部
17 第1態様表示部(第1態様)
18 第2態様表示部(第2態様)
19 第3態様表示部(第3態様)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留した水を外部に排出する排水口が設けられた防水床と、該防水床上に配置された仕上床と、により構成される2重床構造のバルコニーに設置される水位報知器であって、
下部が前記防水床と前記仕上床との間に固定されて前記防水床上に貯留した水を内部に流入可能な受入孔を備えるとともに、上部が前記仕上床の上に突出する筒状の本体と、
該本体の内部に上下方向にスライド自在に収納され、水に浮揚する浮力体と、を備え、
前記本体は前記仕上床の上に突出する上部に、その内部に収納された浮力体の一部を視認可能に露出させる透明、半透明、又は開口した報知部を有しており、
前記浮力体はその上下方向のスライドにより、前記報知部を通して視認される態様を変化させることにより、前記防水床に貯留する排水の水位を報知することを特徴とする水位報知器。
【請求項2】
前記バルコニーは、前記排水口よりも上方で前記防水床に貯留した水の流入を受け入れるオーバーフロー口を更に備えるものであって、
前記浮力体は、少なくともその表面に、前記防水床に水が溜まっていない状態を示す第1態様と、前記オーバーフロー口の下端の水位を示す第2態様と、前記オーバーフロー口の下端よりも高い水位を示す第3態様と、を上から順に表わしていることを特徴とする請求項1に記載の水位報知器。
【請求項3】
前記浮力体は円柱状又は多角柱状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水位報知器。
【請求項4】
前記受入孔は、前記本体下部に上下方向に複数設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の水位報知器。
【請求項5】
前記本体の上部は、前記報知部の上に可視光を透過しない目隠し部を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の水位報知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−43020(P2011−43020A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193129(P2009−193129)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】