説明

水処理システム

【課題】水処理システムにおいて、給水の温度低下によって水処理部が悪影響を受けることを低コストで防止する。
【解決手段】機器2への給水ライン3と、この給水ライン3に設けられた水処理部4とを備えた水処理システム1であって、前記水処理部4の上流側の前記給水ライン3に、系外において負荷機器へ蒸気を供給するボイラ6のブロー水と給水との熱交換部5を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機器への給水ラインと、この給水ラインに設けられた水処理部とを備えた水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気ボイラ,温水ボイラ,クーリングタワー,給湯器等の熱機器や、洗浄装置等の水使用機器などの機器への給水ラインに、水処理部を設けた水処理システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。前記水処理部としては、たとえばボイラにおける伝熱面に、硬度分に起因するスケールが付着することを防止するために、給水に含まれる硬度分を除去する軟水化部が挙げられる。また、前記水処理部としては、前記ボイラにおける伝熱面の腐食を抑制するために、給水に含まれる前記伝熱面の腐食促進成分を除去するとともに、前記伝熱面の腐食抑制成分を透過する濾過膜部や、給水に含まれる溶存酸素を除去する脱気部も挙げられる。
【特許文献1】特開2005−13851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、給水の水温は、季節的な要因によって変動する。給水の水温が低下した場合、前記水処理部において、その水処理性能が低下するなどの悪影響を受けることがある。そこで、前記水処理部への給水を加熱することが考えられる。
【0004】
しかし、給水を加熱するために新たに熱源を設けると大変なコストがかかる。ここで、たとえば前記水処理システムが設置されている工場などにおいて、工場内の負荷機器へ蒸気を供給するボイラが、前記機器とは別に設置されている場合がある。前記ボイラにあっては、ボイラ水が過度に濃縮することを防止するために、ブローが行われている。また、前記ボイラで発生し前記負荷機器で利用しきれない余剰蒸気は捨てられている。すなわち、前記水処理システムの設置箇所の近くに、通常は廃棄されている熱エネルギーが存在している場合がある。また、空気中の熱や前記ボイラ周辺の廃熱なども、既存の熱エネルギーとして存在している。さらに、水の有効利用を図るために、前記ボイラで発生し前記負荷機器で利用された蒸気が凝縮して得られた復水を、前記ボイラへの給水に混合する場合がある。ここで、復水は、蒸気が凝縮して得られたものであるので、高温になっている。
【0005】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、水処理システムにおいて、給水の温度低下によって水処理部が悪影響を受けることを低コストで防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、水処理システムにおいて、既存の熱源を利用して前記水処理部へ供給される給水を加熱するものである。すなわち、請求項1に記載の発明は、機器への給水ラインと、この給水ラインに設けられた水処理部とを備えた水処理システムであって、前記水処理部の上流側の前記給水ラインに、系外において負荷機器へ蒸気を供給するボイラのブロー水と給水との熱交換部を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明では、前記熱交換部において、前記水処理部への給水が、系外において前記負荷機器へ蒸気を供給する前記ボイラのブロー水との熱交換によって加熱される。このように既存の熱源を使用して給水を加熱することにより、給水の水温低下によって、前記水処理部が悪影響を受けることが防止される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、機器への給水ラインと、この給水ラインに設けられた水処理部とを備えた水処理システムであって、前記水処理部の上流側の前記給水ラインに、系外において負荷機器へ蒸気を供給するボイラで発生し前記負荷機器で利用しきれない余剰蒸気と給水との熱交換部を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明では、前記熱交換部において、前記水処理部への給水が、系外において前記負荷機器へ蒸気を供給する前記ボイラで発生し前記負荷機器で利用しきれない余剰蒸気との熱交換によって加熱される。このように既存の熱源を使用して給水を加熱することにより、給水の水温低下によって、前記水処理部が悪影響を受けることが防止される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、機器への給水ラインと、この給水ラインに設けられた水処理部とを備えた水処理システムであって、前記水処理部の上流側の前記給水ラインに、系外において負荷機器へ蒸気を供給するボイラで発生し前記負荷機器で利用された蒸気および/または前記ボイラで発生し前記負荷機器で利用された蒸気が凝縮して得られた復水と給水との熱交換部を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明では、前記熱交換部において、前記水処理部への給水が、系外において前記負荷機器へ蒸気を供給する前記ボイラで発生し前記負荷機器で利用された蒸気および/または前記ボイラで発生し前記負荷機器で利用された蒸気との熱交換によって加熱される。このように既存の熱源を使用して給水を加熱することにより、給水の水温低下によって、前記水処理部が悪影響を受けることが防止される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、機器への給水ラインと、この給水ラインに設けられた水処理部とを備えた水処理システムであって、前記水処理部の上流側の前記給水ラインに、大気と給水との熱交換部を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明では、前記熱交換部において、前記水処理部への給水が、大気との熱交換によって加熱される。このように既存の熱源を使用して給水を加熱することにより、給水の水温低下によって、前記水処理部が悪影響を受けることが防止される。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、給水の加熱を、既存の熱源を利用して行うことができるので、給水を加熱するための熱源を新たに設ける必要はなく、給水の水温低下によって、前記水処理部が悪影響を受けることを低コストで防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、この発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施形態)
まず、この発明に係る水処理システムの第一実施形態について説明する。図1は、この発明に係る水処理システムの第一実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【0016】
図1に示す水処理システム1は、水道水,工業用水,地下水などの水源から供給される原水を水処理して得られた給水を熱機器や水使用機器等の機器2へ供給するものである。この水処理システム1は、前記機器2への給水ライン3と、この給水ライン3に設けられた複数の水処理部4,4,…とを備えている。
【0017】
前記給水ライン3には、最も上流側に設けられた前記水処理部4(具体的には、後述する酸化剤除去部15)の上流側に、熱交換部5が設けられている。この熱交換部5では、前記水処理システム1の系外において、負荷機器(図示省略)へ蒸気を供給するボイラ6のブロー水と給水とが熱交換されるようになっている。具体的には、前記熱交換部5は、ブロー水供給ライン7および流出ライン8を介してブロータンク9と接続されている。このブロータンク9は、ブロー弁10が設けられたブローライン11を介して前記ボイラ6と接続されており、このボイラ6のブロー水が、前記ブロータンク9内に貯留されるようになっている。そして、前記ブロー水供給ライン7には、ブロー水供給ポンプ12が設けられており、このブロー水供給ポンプ12を運転することにより、前記ブロータンク9内のブロー水が、前記ブロー水供給ライン7を介して前記熱交換部5へ供給されるようになっている。前記熱交換部5では、ブロー水と給水とが熱交換され、熱交換後のブロー水は、前記流出ライン8を介して前記ブロータンク9へ流入するようになっている。
【0018】
ここで、前記ブロータンク9内には、前記ボイラ6からブロー時に流入したブロー水と前記熱交換部5において給水と熱交換されたブロー水とが貯留され、給水よりも高温のブロー水が貯留されている。
【0019】
前記ブロータンク9には、ブロー水排出ライン13が接続されている。このブロー水排出ライン13には、排水バルブ14が設けられており、この排水バルブ14を開状態にすることにより、前記ブロー水排出ライン13を介して、前記ブロータンク9内のブロー水が、系外へ排出されるようになっている。ただし、前記ブロータンク9内の水位が、常に所定水位以上に維持されるように、ブロー水が排出されるようになっている。
【0020】
ちなみに、前記ボイラ6および前記負荷機器は、前記水処理システム1における前記機器2とは別に、たとえば前記水処理システム1が設置されている工場内などに設置されたものである。
【0021】
前記各水処理部4は、上流側から酸化剤除去部15,軟水化部16,濾過膜部17および脱気部18である。前記脱気部18の下流側の前記給水ライン3には、給水タンク19が接続されている。ここで、前記軟水化部16および前記濾過膜部17の間の前記給水ライン3には、第一給水ポンプ(図示省略)が設けられている。そして、この第一給水ポンプを運転することにより、前記各水処理部4を通過した処理水が前記給水タンク19内に貯留されるようになっている。そして、この給水タンク19内に貯留された処理水は、この給水タンク19および前記機器2の間の前記給水ライン3に設けられた第二給水ポンプ(図示省略)を運転することにより、前記機器2へ供給されるようになっている。
【0022】
ここで、前記各水処理部4について詳しく説明する。前記酸化剤除去部15は、給水中に溶存する次亜塩素酸ナトリウムなどに由来する酸化剤を粒状の活性炭により吸着除去するものである。酸化剤は、前記酸化剤除去部15の下流側に配置される前記軟水化部16のイオン交換樹脂(図示省略)を酸化させ、そのイオン交換能力を早期に低下させるおそれがある。また、さらに下流に配置された前記濾過膜部17を構成する濾過膜モジュール(図示省略)を酸化させ、その濾過能力を早期に低下させるおそれがある。そこで、このような酸化による早期の能力低下を防止するために、酸化剤を吸着除去することにより、給水の処理効率の向上や処理された給水の水質の安定化などを図るようにしている。
【0023】
前記酸化剤除去部15は、給水の水温低下により、酸化剤の除去能力が低下するという悪影響を受ける。したがって、給水の水温低下により、酸化剤が十分に除去されない給水が、下流側の前記各水処理部4へ供給され、前記イオン交換樹脂のイオン交換能力や前記濾過膜モジュールの濾過能力が早期に低下するおそれがある。
【0024】
前記軟水化部16は、前記酸化剤が除去された給水中の硬度分,すなわちカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを前記イオン交換樹脂により除去するものである。具体的には、前記軟水化部16は、給水に含まれる硬度分をイオン交換反応によってナトリウムイオンおよびカリウムイオンなどの一価の陽イオンへ置換し、給水を軟水へ変換するように構成されている。このように給水を軟水化することにより、たとえば前記機器2が熱機器である場合、この熱機器において硬度分に起因するスケール付着の問題が生じることを防止できるようになっている。また、給水を軟水化することにより、前記濾過膜モジュールの膜表面に、硬度分に起因するスケールが付着することを防止することもできるようになっている。
【0025】
前記軟水化部16は、給水の水温低下により、前記イオン交換樹脂におけるイオン交換反応の速度が遅くなるという悪影響や、前記イオン交換樹脂のイオン交換能力を回復させる再生作動における再生効率が低下するという悪影響を受ける。したがって、給水の水温低下により、処理水において硬度漏れが起きたり再生作動で用いられる再生剤の消費量が増えるおそれがある。
【0026】
前記濾過膜部17は、前記濾過膜モジュールにより給水を濾過処理するように構成されている。この濾過膜モジュールは、濾過膜として、具体的には逆浸透膜(RO膜)やナノ濾過膜(NF膜)などを使用して形成されている。前記逆浸透膜および前記ナノ濾過膜は、ポリアミド系,ポリエーテル系などの合成高分子膜である。そして、前記逆浸透膜は、分子量が数十程度の物質の透過を阻止できる液体分離膜である。また、前記ナノ濾過膜は、2nm程度より小さい粒子や高分子(分子量が最大数百程度の物質)の透過を阻止できる液体分離膜である。前記ナノ濾過膜は、濾過機能の点において、前記逆浸透膜と、分子量が1,000〜300,000程度の物質を濾別可能な限外濾過膜(UF膜)との中間に位置する機能を有する。前記濾過膜は、前記機器2への給水が、所望の水質になるように選択される。
【0027】
前記濾過膜は、給水の水温低下により、水の粘性によって給水の透過性能が低下するという悪影響を受ける。ここで、前記第一給水ポンプは、前記濾過膜部17からの透過水流量が一定流量になるように制御されるようになっている(特開2005−296944号参照)。したがって、給水の水温が低下すると、前記第一給水ポンプの運転圧力が高くなるようになっており、その消費電力が増加してランニングコストが高くなる。
【0028】
前記濾過膜部17では、一側から流入した給水が、前記濾過膜で濾過され、他側から透過水と濃縮水とが分離されて流出するようになっている。透過水は、前記給水ライン3を流れ、前記脱気部18を経て前記給水タンク19内に貯留されるようになっている。これにより、前記機器2へ所望の水質になった給水が供給されるようになっている。一方、濃縮水は、前記濾過膜部17と接続された濃縮水ライン(図示省略)へ流出し、一部が系外へ排水されるとともに、残部が前記濾過膜部17の上流側の前記給水ライン3へ還流するようになっている。
【0029】
前記脱気部18は、具体的には気体透過膜を多数備えた気体透過膜モジュールと、水封式真空ポンプ(それぞれ図示省略)とを備えた膜式脱気装置である。この膜式脱気装置は、給水中の溶存気体,具体的には溶存酸素を前記気体透過膜モジュールを介して前記水封式真空ポンプで真空吸引するように構成されている。このように、給水中の溶存酸素を除去することにより、この溶存酸素に起因する前記機器2の腐食を抑制することができるようになっている。
【0030】
前記気体透過膜は、給水の水温低下により、脱気性能が低下するという悪影響を受ける。したがって、給水の水温が低下すると、処理水の脱気度が低下し、前記機器2の腐食が促進されるおそれがある。
【0031】
さて、前記水処理システム1の作用について説明する。前記水処理システム1では、前記第一給水ポンプ(図示省略)を運転することにより、原水側から前記各水処理部4へ給水を供給し、前記各水処理部4において水処理を行う。前記各水処理部4からの処理水は、前記給水タンク19内に貯留される。この給水タンク19内に貯留された処理水は、前記第二給水ポンプ(図示省略)を運転することにより、前記給水タンク19から前記機器2へ供給される。
【0032】
前記ボイラ6では、所定の間隔で前記ブロー弁10を開状態にすることにより、ブローが行われる。前記ボイラ6からのブロー水は、前記ブロータンク9内に貯留される。
【0033】
前記第一給水ポンプを運転して前記各水処理部4へ給水を供給しているときには、前記ブロー水供給ポンプ12を運転し、前記ブロータンク9内の高温のブロー水を前記ブロー水供給ライン7を介して前記熱交換部5へ供給する。そして、この熱交換部5において、給水が高温のブロー水と熱交換され加熱される。これにより、前記各水処理部4へは、加熱された給水が供給される。一方、前記熱交換部5において給水と熱交換されたブロー水は、前記流出ライン8へ流出し、前記ブロータンク9へ流入する。そして、このブロータンク9内のブロー水は、前記排水バルブ14を開状態にすることにより、前記ブロー水排出ライン13を介して系外へ排出される。
【0034】
前記のように、加熱された給水が前記酸化剤除去部15へ供給されることにより、加熱しない場合と比べて前記酸化剤除去部15における酸化剤除去能力が向上する。したがって、前記軟水化部16における前記イオン交換樹脂(図示省略)のイオン交換能力や前記濾過膜部17における前記濾過膜モジュール(図示省略)の濾過能力が早期に低下することが防止され、給水を加熱しない場合と比べて前記イオン交換樹脂や前記濾過膜モジュールの寿命を延ばすことができる。
【0035】
また、加熱された給水が前記軟水化部16へ供給されることにより、加熱しない場合と比べて前記イオン交換樹脂におけるイオン交換反応の速度が速くなり、また再生効率が向上する。したがって、処理水の硬度漏れを防止することができ、また給水を加熱しない場合と比べて再生剤の消費量が抑制されてランニングコストを抑えることができる。
【0036】
また、加熱された給水が前記濾過膜部17へ供給されることにより、加熱しない場合と比べて前記ナノ濾過膜における給水の透過性能が向上する。したがって、給水を加熱しない場合と比べて前記第一給水ポンプの消費電力が抑制されてランニングコストを抑えることができる。
【0037】
さらに、加熱された給水が前記脱気部18へ供給されることにより、加熱しない場合と比べて前記気体透過膜(図示省略)の脱気性能が向上する。したがって、給水を加熱しない場合と比べて前記機器2の腐食を抑制することができる。
【0038】
以上のように、前記水処理システム1では、給水の水温低下が原因で、前記各水処理部4が水処理性能の低下や給水の透過性能の低下などの悪影響を受けることを防止することができ、これにより処理水水質が悪化したり、ランニングコストが高くなったりすることを防止することができる。
【0039】
以上説明した前記水処理システム1によれば、給水の加熱が、前記ボイラ6からのブロー水を利用して行われる。すなわち、給水の加熱を、通常は廃棄される既存の熱エネルギーを利用して行うことができる。したがって、給水を加熱するための熱源を新たに設ける必要はなく、給水の水温低下によって前記各水処理部4が悪影響を受けることを低コストで防止することができる。
【0040】
(第二実施形態)
つぎに、この発明に係る水処理システムの第二実施形態について説明する。図2は、この発明に係る水処理システムの第二実施形態の構成を示す概略的な説明図である。図2において、前記第一実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0041】
図2においては、この第二実施形態の水処理システム20の系外において、前記ボイラ6から出た蒸気が、蒸気ライン21を介してスチームヘッダ22へ流入し、このスチームヘッダ22から蒸気供給ライン23を介して負荷機器24へ供給されるようになっている。
【0042】
前記スチームヘッダ22および前記熱交換部5は、前記負荷機器24で利用しきれない余剰蒸気が流れる余剰蒸気ライン25を介して接続されている。そして、前記熱交換部5においては、前記余剰蒸気ライン25を介して供給された余剰蒸気と給水とが熱交換されるようになっている。前記熱交換部5において給水と熱交換された余剰蒸気は、前記流出ライン8へ流出するようになっている。
【0043】
さて、前記水処理システム20の作用について説明する。ここでは、前記第一実施形態の水処理システム1の作用と異なるもののみについて説明する。前記水処理システム20では、前記ボイラ6で発生し、前記負荷機器24で利用しきれない余剰蒸気が、前記余剰蒸気ライン25を介して前記熱交換部5へ供給される。そして、この熱交換部5において、給水が、高温の余剰蒸気と熱交換され加熱される。これにより、前記第一実施形態の水処理システム1と同様に、前記各水処理部4へは、加熱された給水が供給され、給水の水温低下によって前記各水処理部4が悪影響を受けることを防止することができる。一方、前記熱交換部5において給水と熱交換された余剰蒸気は、前記流出ライン8へ流出する。
【0044】
以上説明した前記水処理システム20によれば、給水の加熱が、前記ボイラ6で発生し前記負荷機器24で利用しきれない余剰蒸気を利用して行われる。すなわち、給水の加熱を、通常は廃棄される既存の熱エネルギーを利用して行うことができる。したがって、前記第一実施形態の水処理システム1と同様に、給水を加熱するための熱源を新たに設ける必要はなく、給水の水温低下によって前記各水処理部4が悪影響を受けることを低コストで防止することができる。
【0045】
(第三実施形態)
つぎに、この発明に係る水処理システムの第三実施形態について説明する。図3は、この発明に係る水処理システムの第三実施形態の構成を示す概略的な説明図である。図3において、前記第一,第二実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0046】
この第三実施形態の水処理システム30においては、前記熱交換部5に、前記負荷機器24と接続された復水ライン31が接続されている。そして、前記ボイラ6で発生し前記負荷機器24で利用された蒸気が凝縮して得られた復水が、この復水ライン31を介して前記熱交換部5へ供給されるようになっている。前記熱交換部5においては、前記復水ライン31を介して供給された高温の復水と給水とが熱交換され、給水が加熱されるようになっている。
【0047】
前記熱交換部5において給水と熱交換された復水は、前記流出ライン8へ流出するようになっている。前記流出ライン8は、この第三実施形態においては、前記給水タンク19と接続されている。これにより、前記熱交換部5から流出した復水は、前記給水タンク19内に貯留されるようになっている。
【0048】
さて、前記水処理システム30の作用について説明する。ここでは、前記第一,第二実施形態の水処理システム1,20の作用と異なるもののみについて説明する。前記水処理システム30では、前記負荷機器24で利用された蒸気が凝縮して得られた復水が、前記復水ライン31を介して前記熱交換部5へ供給される。そして、この熱交換部5において、給水が高温の復水と熱交換され加熱される。これにより、前記第一,第二実施形態の水処理システム1,20と同様に、前記各水処理部4へ加熱された給水が供給され、給水の水温によって前記各水処理部4が悪影響を受けることを防止することができる。一方、前記熱交換部5において給水と熱交換された復水は、前記流出ライン8へ流出した後、前記給水タンク19内に貯留される。これにより、水の有効利用が図られる。
【0049】
以上説明した前記水処理システム30によれば、給水の加熱が、前記ボイラ6で発生し前記負荷機器24で利用された蒸気が凝縮して得られた高温の復水を利用して行われる。すなわち、給水の加熱を、既存の熱エネルギーを利用して行うことができる。したがって、前記第一,第二実施形態の水処理システム1,20と同様に、給水を加熱するための熱源を新たに設ける必要はなく、給水の水温低下によって前記各水処理部4が悪影響を受けることを低コストで防止することができる。
【0050】
ここで、前記水処理システム30において、前記負荷機器24からの蒸気が、前記復水ライン31において全て凝縮しない場合もある。この場合は、前記熱交換部5へ復水とともに蒸気が供給され、この熱交換部5において復水および蒸気と給水とが熱交換される。
【0051】
また、前記水処理システム30において、前記復水ライン31を復水が流れるラインではなく、前記負荷機器24で利用された蒸気を前記熱交換部5へ供給するためのラインとし、前記熱交換部5において前記負荷機器24で利用された蒸気と給水とが熱交換されるようになっていてもよい。
【0052】
前記のように前記水処理システム30において、前記熱交換部5へ前記負荷機器24で利用された蒸気が供給された場合、この蒸気は前記熱交換部5および前記流出ライン8において凝縮し、復水として前記給水タンク19へ流入する。
【0053】
(第四実施形態)
つぎに、この発明に係る水処理システムの第四実施形態について説明する。図4は、この発明に係る水処理システムの第四実施形態の構成を示す概略的な説明図である。図4において、前記第一,第二,第三実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0054】
この第四実施形態の水処理システム40においては、前記熱交換部5にヒートポンプユニット41が接続され、前記熱交換部5において大気と給水との熱交換が行われるようになっている。このヒートポンプユニット41は、前記熱交換部5と接続された冷媒循環ライン42と、この冷媒循環ライン42に設けられた膨張弁43,蒸発器44および圧縮機45を備えている。
【0055】
前記ヒートポンプユニット41では、前記蒸発器44において大気の熱が前記冷媒循環ライン42を流れる冷媒に伝えられるようになっている。そして、熱をもった冷媒は、前記圧縮機45において圧縮されるようになっている。前記圧縮機において圧縮されることによりさらに高温になった冷媒は、前記熱交換部5へ供給されて給水と熱交換されるようになっている。
【0056】
前記熱交換部5において、給水と熱交換された冷媒は、前記熱交換部5から前記冷媒循環ライン42へ流出するようになっている。
【0057】
ここで、前記蒸発器44を、たとえば前記水処理システム40が設置された工場におけるボイラ室(図示省略)内の大気から吸熱するように構成すれば、ボイラ(図示省略)の廃熱を利用してより高温の冷媒を得ることができる。
【0058】
さて、前記水処理システム40の作用について説明する。ここでは、前記第一,第二,第三実施形態の水処理システム1,20,30の作用と異なるもののみについて説明する。前記水処理システム40では、大気から吸熱して高温になった冷媒が、前記冷媒循環ライン42から前記熱交換部5へ供給される。そして、この熱交換部5において、給水が高温の冷媒と熱交換され加熱される。これにより、前記第一,第二,第三実施形態の水処理システム1,20,30と同様に、前記各水処理部4へは、加熱された給水が供給され、給水の水温低下によって前記各水処理部4が悪影響を受けることが防止される。一方、前記熱交換部5において給水と熱交換された冷媒は、前記冷媒循環ライン42へ流出し、前記膨張弁43で膨張された後、再び前記蒸発器44へ流入する。
【0059】
以上説明した前記水処理システム40によれば、給水の加熱が、前記ヒートポンプユニット41によって大気から吸熱して高温になった冷媒を利用して行われる。すなわち、給水の加熱を、既存の熱エネルギーを利用して行うことができる。したがって、前記第一,第二,第三実施形態の水処理システム1,20,30と同様に、給水を加熱するための熱源を新たに設ける必要はなく、給水の水温低下によって前記各水処理部4が悪影響を受けることを低コストで防止することができる。
【0060】
以上、この発明を前記各実施形態により説明したが、この発明はその要旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明に係る水処理システムの第一実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【図2】この発明に係る水処理システムの第二実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【図3】この発明に係る水処理システムの第三実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【図4】この発明に係る水処理システムの第四実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1,20,30,40 水処理システム
2 機器
3 給水ライン
4 水処理部
5 熱交換部
6 ボイラ
24 負荷機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器への給水ラインと、この給水ラインに設けられた水処理部とを備えた水処理システムであって、
前記水処理部の上流側の前記給水ラインに、系外において負荷機器へ蒸気を供給するボイラのブロー水と給水との熱交換部を設けたことを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
機器への給水ラインと、この給水ラインに設けられた水処理部とを備えた水処理システムであって、
前記水処理部の上流側の前記給水ラインに、系外において負荷機器へ蒸気を供給するボイラで発生し前記負荷機器で利用しきれない余剰蒸気と給水との熱交換部を設けたことを特徴とする水処理システム。
【請求項3】
機器への給水ラインと、この給水ラインに設けられた水処理部とを備えた水処理システムであって、
前記水処理部の上流側の前記給水ラインに、系外において負荷機器へ蒸気を供給するボイラで発生し前記負荷機器で利用された蒸気および/または前記ボイラで発生し前記負荷機器で利用された蒸気が凝縮して得られた復水と給水との熱交換部を設けたことを特徴とする水処理システム。
【請求項4】
機器への給水ラインと、この給水ラインに設けられた水処理部とを備えた水処理システムであって、
前記水処理部の上流側の前記給水ラインに、大気と給水との熱交換部を設けたことを特徴とする水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−149279(P2008−149279A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341080(P2006−341080)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】