説明

水処理システム

【課題】供給水の温度に関わらず、安定した水質の純水が得られる水処理システムを提供する。
【解決手段】第1膜分離装置4と、脱気処理装置5と、温度測定手段6と、第1水質項目測定手段9と、第2水質項目測定手段7と、(i)温度測定値、第1水質項目測定値、及び処理水W4の第1水質項目許容値を第1関数式に与えて、処理水W4の上限流量値を演算し、(ii)温度測定値、第2水質項目測定値、及び透過水W2の第2水質項目許容値を第2関数式に与えて、第1膜分離装置4の上限回収率を演算し、(iii)処理水W4の上限流量値、及び第1膜分離装置4の上限回収率に基づいて、第1膜分離装置4を運転する制御部10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜分離装置及び脱気処理装置を備えた水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程や電子部品の洗浄、医療器具の洗浄等においては、不純物を含まない高純度の純水が使用される。この種の純水は、一般に、地下水や水道水等の供給水を、逆浸透膜(以下、「RO膜」ともいう)を有する逆浸透膜分離装置で処理することにより製造される。
【0003】
純水の製造プロセスにおいて、供給水に含まれる溶存塩類を逆浸透膜分離装置のRO膜で除去した後、RO膜では除去できない遊離炭酸を脱気処理装置の気体分離膜で除去することにより、純水の純度を更に高める手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−6393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RO膜は、有効圧力が一定(供給水の流量が一定)の場合、供給水の温度が上昇するのに伴い、溶存塩類の除去率が低下するという特性を有する。一方、脱気処理装置の気体分離膜は、供給水の流量が一定の場合、供給水の温度が低下するのに伴い、遊離炭酸の除去率が低下するという特性を有する。すなわち、RO膜における溶存塩類の除去率と、気体分離膜における遊離炭酸の除去率とは、供給水の温度に対して相反する特性を有する。このため、逆浸透膜分離装置と脱気処理装置とを組み合わせた水処理システムでは、純水の水質を安定させることが困難であった。
【0006】
従って、本発明は、供給水の温度に関わらず、安定した水質の純水を得ることができる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、供給水を透過水と濃縮水とに分離する第1膜分離装置と、前記第1膜分離装置で得られた透過水を脱気処理して処理水を製造する脱気処理装置と、系内を流通する水の温度を測定する温度測定手段と、供給水又は透過水の第1水質項目を測定する第1水質項目測定手段と、供給水の第2水質項目を測定する第2水質項目測定手段と、(i)温度、供給水又は透過水の第1水質項目、及び処理水の流量を独立変数とし、処理水の第1水質項目を従属変数とする第1関数式に対し、前記温度測定手段で測定された温度測定値、前記第1水質項目測定手段で測定された第1水質項目測定値、及び処理水の第1水質項目許容値を与えて、処理水の上限流量値を演算し、(ii)温度、供給水の第2水質項目、及び前記第1膜分離装置の回収率を独立変数とし、透過水の第2水質項目を従属変数とする第2関数式に対し、前記温度測定手段で測定された温度測定値、前記第2水質項目測定手段で測定された第2水質項目測定値、及び透過水の第2水質項目許容値を与えて、前記第1膜分離装置の上限回収率を演算し、(iii)前記第1関数式により演算された処理水の上限流量値、及び前記第2関数式により演算された前記第1膜分離装置の上限回収率に基づいて、前記第1膜分離装置を運転する制御部と、を備える水処理システムに関する。
【0008】
また、前記第1水質項目は、溶存炭酸濃度であり、前記第2水質項目は、電気伝導率又はシリカ濃度であることが好ましい。
【0009】
また、前記脱気処理装置で製造された処理水を、更に透過水と濃縮水とに分離する第2膜分離装置を備えることが好ましい。
【0010】
また、前記第1膜分離装置からの透過水の流量を検出する流量検出手段と、入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動され、供給水を吸入して前記第1膜分離装置に向けて吐出する加圧ポンプと、入力された電流値信号に対応する駆動周波数を前記加圧ポンプに出力するインバータと、を備え、前記制御部は、(i)前記第1関数式により演算された処理水の上限流量値を目標流量値として設定し、(ii)前記流量検出手段の検出流量値が前記目標流量値となるように、前記加圧ポンプの駆動周波数を演算し、(iii)当該駆動周波数の演算値に対する電流値信号を前記インバータに出力する構成が好ましい。
【0011】
また、前記第1膜分離装置は、系外へ排出する濃縮水の排水流量を調節可能な排水弁を更に備え、前記制御部は、(i)前記第2関数式により演算された前記第1膜分離装置の上限回収率、及び前記第1関数式により演算された処理水の上限流量値に基づいて、濃縮水の排水流量を演算し、(ii)前記第1膜分離装置における濃縮水の実際排水流量が当該排水流量の演算値以上の範囲となるように、前記排水弁を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、供給水の温度に関わらず、安定した水質の純水を得ることができる水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。
【図2】制御部10が透過水W2及び処理水W4の水質制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】制御部10が流量フィードバック水量制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】制御部10が透過水W2の回収率制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態に係る水処理システム1Aの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る水処理システム1について、図面を参照しながら説明する。第1実施形態に係る水処理システム1は、例えば、淡水から純水を製造する純水製造システムに適用される。図1は、第1実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。図2は、制御部10が透過水W2及び処理水W4の水質制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図3は、制御部10が流量フィードバック水量制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図4は、制御部10が透過水W2の回収率制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る水処理システム1は、加圧ポンプ2と、インバータ3と、第1膜分離装置としてのRO膜モジュール4と、脱気処理装置5と、排水弁としての第1排水弁11〜第3排水弁13と、を備える。また、水処理システム1は、温度測定手段としての温度センサ6と、第2水質項目測定手段としての電気伝導率センサ7と、流量検出手段としての流量センサ8と、第1水質項目測定手段としての溶存炭酸濃度センサ9と、制御部10と、を備える。図1では、電気的な接続の経路を破線で示す(後述する第2実施形態の図4も同じ)。
【0016】
また、水処理システム1は、供給水ラインL1と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、処理水ラインL4と、濃縮水W3の排水ライン(第1排水ラインL11、第2排水ラインL12及び第3排水ラインL13)と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0017】
供給水ラインL1は、供給水W1をRO膜モジュール4に供給するラインである。供給水ラインL1の上流側の端部は、供給水W1の供給源(不図示)に接続されている。供給水ラインL1の下流側の端部は、RO膜モジュール4の一次側入口ポートに接続されている。
【0018】
加圧ポンプ2は、供給水W1を吸入し、RO膜モジュール4に向けて吐出する装置である。加圧ポンプ2は、インバータ3(後述)と電気的に接続されている。加圧ポンプ2には、インバータ3から、周波数が変換された駆動電力が入力される。加圧ポンプ2は、供給された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0019】
インバータ3は、加圧ポンプ2に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路である。インバータ3は、制御部10と電気的に接続されている。インバータ3には、制御部10から電流値信号が入力される。インバータ3は、制御部10から入力された電流値信号に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ2に出力する。
【0020】
温度センサ6は、供給水ラインL1を流通する供給水W1の温度を測定する機器である。温度センサ6は、接続部J1において供給水ラインL1に接続されている。接続部J1は、供給水W1の供給源(不図示)と加圧ポンプ2との間に配置されている。温度センサ6は、制御部10と電気的に接続されている。温度センサ6で測定された供給水W1の温度(以下、「温度測定値」ともいう)は、制御部10へ測定値信号として送信される。
【0021】
電気伝導率センサ7は、供給水ラインL1を流通する供給水W1の電気伝導率(第2水質項目)を測定する機器である。電気伝導率センサ7は、接続部J2において供給水ラインL1に接続されている。接続部J2は、供給水W1の供給源(不図示)と加圧ポンプ2との間に配置されている。電気伝導率センサ7は、制御部10と電気的に接続されている。電気伝導率センサ7で測定された供給水W1の電気伝導率(以下、「電気伝導率測定値」ともいう)は、制御部10へ測定値信号として送信される。
【0022】
RO膜モジュール4は、加圧ポンプ2から吐出された供給水W1を、溶存塩類が除去された透過水W2と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W3とに膜分離処理する設備である。RO膜モジュール4は、単一又は複数のRO膜エレメント(不図示)を備える。RO膜モジュール4は、これらRO膜エレメントにより供給水W1を膜分離処理し、透過水W2及び濃縮水W3を製造する。
【0023】
本実施形態におけるRO膜モジュール4は、膜表面に架橋全芳香族ポリアミドからなる負荷電性のスキン層が形成された逆浸透膜(不図示)を有する。この逆浸透膜は、濃度500mg/L、pH7.0、温度25℃の塩化ナトリウム水溶液を、操作圧力0.7MPa、回収率15%で供給したときの水透過係数が、1.5×10−11・m−2・s−1・Pa−1以上、且つ塩除去率が99%以上となるものである。
【0024】
ここで、操作圧力とは、JIS K3802−1995「膜用語」で定義される平均操作圧力である。操作圧力は、RO膜モジュール4の一次側の入口圧力と一次側の出口圧力との平均値を指す。
【0025】
回収率とは、RO膜モジュール4へ供給される原液(ここでは塩化ナトリウム水溶液)の流量Qに対する透過液の流量Qの割合(すなわち、Q/Q×100)をいう。
【0026】
水透過係数は、透過水量[m/s]を膜面積[m]及び有効圧力[Pa]で除した値であり、逆浸透膜の水の透過性能を示す指標である。すなわち、水透過係数は、単位有効圧力を作用させたときに単位時間に膜の単位面積を透過する水の量を意味する。有効圧力は、JIS K3802−1995「膜用語」で定義され、操作圧力(平均操作圧力)から浸透圧差及び二次側圧力を差し引いた圧力である。
【0027】
塩除去率は、膜を透過する前後の特定の塩類の濃度(ここでは塩化ナトリウム濃度)から計算される値であり、逆浸透膜の溶質の阻止性能を示す指標である。塩除去率は、RO膜モジュール4へ供給される原液の濃度(C)及び透過液の濃度(C)から、(1−C/C)×100により求められる。
【0028】
本実施形態の水透過係数及び塩除去率の条件を満たす逆浸透膜は、逆浸透膜エレメントとして市販されている。逆浸透膜エレメントとしては、例えば、東レ社製:型式名「TMG20−400」、ウンジン・ケミカル社製:型式名「RE8040−BLF」、日東電工社製:型式名「ESPA1」等を用いることができる。
【0029】
透過水ラインL2は、RO膜モジュール4で製造された透過水W2を脱気処理装置5へ送出するラインである。透過水ラインL2の上流側の端部は、RO膜モジュール4の二次側ポートに接続されている。透過水ラインL2の下流側の端部は、脱気処理装置5の一次側ポートに接続されている。
【0030】
濃縮水ラインL3は、RO膜モジュール4から濃縮水W3を送出するラインである。濃縮水ラインL3の上流側の端部は、RO膜モジュール4の一次側出口ポートに接続されている。また、濃縮水ラインL3の下流側は、分岐部J5及びJ6において、第1排水ラインL11、第2排水ラインL12及び第3排水ラインL13に分岐している。
【0031】
第1排水ラインL11には、第1排水弁11が設けられている。第2排水ラインL12には、第2排水弁12が設けられている。第3排水ラインL13には、第3排水弁13が設けられている。第1排水弁11〜第3排水弁13は、濃縮水ラインL3から装置外へ排出される濃縮水W3の排水流量を調節する弁である。
【0032】
第1排水弁11は、第1排水ラインL11を開閉することができる。第2排水弁12は、第2排水ラインL12を開閉することができる。第3排水弁13は、第3排水ラインL13を開閉することができる。
【0033】
第1排水弁11〜第3排水弁13は、それぞれ定流量弁機構(不図示)を備える。定流量弁機構は、第1排水弁11〜第3排水弁13において、それぞれ異なる流量値に設定されている。例えば、第1排水弁11は、開状態において、RO膜モジュール4の回収率が95%となるように排水流量が設定されている。第2排水弁12は、開状態において、RO膜モジュール4の回収率が90%となるように排水流量が設定されている。第3排水弁13は、開状態において、RO膜モジュール4の回収率が80%となるように排水流量が設定されている。
【0034】
濃縮水ラインL3から排出される濃縮水W3の排水流量は、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、段階的に調節できる。例えば、第2排水弁12のみを開状態とし、第1排水弁11及び第3排水弁13を閉状態とする。この場合には、RO膜モジュール4の回収率を90%とすることができる。また、第1排水弁11及び第2排水弁12を開状態とし、第3排水弁13のみを閉状態とする。この場合には、RO膜モジュール4の回収率を85%とすることができる。従って、本実施形態において、濃縮水W3の排水流量は、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、回収率を65%〜95%までの間で、5%毎に段階的に調節できる。
【0035】
第1排水弁11〜第3排水弁13は、それぞれ制御部10と電気的に接続されている。第1排水弁11〜第3排水弁13における弁体の開閉は、制御部10からの駆動信号により制御される。
【0036】
脱気処理装置(脱炭酸装置)5は、RO膜モジュール4で製造された透過水W2に含まれる遊離炭酸(溶存炭酸ガス)を、気体分離膜モジュール(不図示)により脱気処理して、処理水(純水)W4を得る設備である。本実施形態では、中空糸膜からなる外部灌流式の気体分離膜モジュールが用いられる。このような用途に適した気体分離膜モジュールとしては、例えば、DIC社製:製品名「SEPAREL EF−002A−P」,「SEPAREL EF−040P」等が挙げられる。
【0037】
脱気処理装置5は、透過水ラインL2を介してRO膜モジュール4の下流側に接続されている。また、脱気処理装置5の二次側ポートには、処理水ラインL4が接続されている。処理水ラインL4は、脱気処理装置5で得られた処理水W4を需要箇所等に送出するラインである。
【0038】
流量センサ8は、透過水ラインL2を流通する透過水W2の流量を検出する機器である。流量センサ8は、接続部J3において透過水ラインL2に接続されている。接続部J3は、RO膜モジュール4と脱気処理装置5との間に配置されている。流量センサ8は、制御部10と電気的に接続されている。流量センサ8で検出された透過水W2の流量(以下、「検出流量値」ともいう)は、制御部10へ検出値信号として送信される。
【0039】
溶存炭酸濃度センサ9は、透過水ラインL2を流通する透過水W2の溶存炭酸濃度(第1水質項目)を測定する機器である。溶存炭酸濃度センサ9は、接続部J4において透過水ラインL2に接続されている。接続部J4は、RO膜モジュール4と脱気処理装置5との間に配置されている。溶存炭酸濃度センサ9は、制御部10と電気的に接続されている。溶存炭酸濃度センサ9で測定された透過水W2の溶存炭酸濃度(以下、「溶存炭酸濃度測定値」ともいう)は、制御部10へ測定値信号として送信される。
【0040】
制御部10は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部10は、透過水W2及び処理水W4の水質制御として、以下の(i)〜(iii)を実行する。
【0041】
(i)制御部10は、供給水W1の温度t、透過水W2の溶存炭酸濃度c、及び処理水W4の流量qを独立変数とし、処理水W4の第1水質項目cを従属変数とする第1関数式である式(1)に対し、温度センサ6で測定された温度測定値T、溶存炭酸濃度センサ9で測定された溶存炭酸濃度測定値C、及び処理水W4の溶存炭酸濃度許容値Cを与えて、処理水W4の上限流量値Q´を演算する。
=f(t,c,q) (1)
【0042】
ここで、溶存炭酸濃度許容値Cは、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介して制御部10のメモリに入力した設定値であり、需要箇所での処理水W4の要求水質に応じて設定される。第1関数式は、気体分離膜モジュールの運転性能を表すもので、予め実験等により求めておいたものである。式(1)の各変数t,c,cに対し、それぞれT,C,Cの各値を代入すると、変数qの値、すなわち上限流量値Q´を演算することができる。この上限流量値Q´は、処理水W4の水質が溶存炭酸濃度許容値C以下となる流量値である。
【0043】
(ii)制御部10は、供給水W1の温度、供給水W1の電気伝導率e、及びRO膜モジュール4の回収率rを独立変数とし、透過水W2の電気伝導率eを従属変数とする第2関数式に対し、温度センサ6で測定された温度測定値T、電気伝導率センサ7で測定された電気伝導率測定値E、及び透過水W2の電気伝導率許容値Eを与えて、RO膜モジュール4の上限回収率R´を演算する。
=f(t,e,r) (2)
【0044】
ここで、電気伝導率許容値Eは、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介して制御部10のメモリに入力した設定値であり、需要箇所での処理水W4の要求水質に応じて設定される。第2関数式は、RO膜モジュール4の運転性能を表すもので、予め実験等により求めておいたものである。式(2)の各変数t,e,eに対して、それぞれT,E,Eの各値を代入すると、変数rの値、すなわち上限回収率R´を演算することができる。この上限回収率R´は、透過水W2及び処理水W4の水質が電気伝導率許容値E以下となる回収率である。
【0045】
(iii)制御部10は、式(1)より演算された処理水W4の上限流量値Q´、及び式(2)により演算されたRO膜モジュール4の上限回収率R´に基づいて、RO膜モジュール4を運転する。制御部10による水質制御の詳細については後述する。
【0046】
また、制御部10は、演算された上限流量値Q´に基づいて、RO膜モジュール4を運転するために、以下の(i)〜(iii)からなる流量フィードバック水量制御を実行する。
【0047】
(i)制御部10は、式(1)により演算された処理水W4の上限流量値Q´を目標流量値として設定する。
【0048】
(ii)制御部10は、流量センサ8における検出流量値Qが目標流量値としての上限流量値Q´となるように、加圧ポンプ2を駆動するための駆動周波数Fを演算する。
【0049】
(iii)制御部10は、演算した駆動周波数Fに対応する電流値信号をインバータ3に出力する。
【0050】
これにより、インバータ3は、入力された電流値信号に対応する周波数に変換された駆動電力を加圧ポンプ2に供給する。そして、加圧ポンプ2は、インバータ3から入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。すなわち、透過水W2の流量は、上限流量値Q´に維持されながら、脱気処理装置5に供給される。この結果、脱気処理装置5の処理能力が十分に発揮されることになり、処理水W4の水質を溶存炭酸濃度許容値C以下に保つことができる。制御部10による流量フィードバック水量制御の詳細については後述する。
【0051】
また、制御部10は、演算された上限回収率R´に基づいて、RO膜モジュール4を運転するために、以下の(i)及び(ii)からなる回収率制御を実行する。
【0052】
(i)制御部10は、式(2)により演算されたRO膜モジュール4の上限回収率R´、及び式(1)により演算された上限流量値Q´に基づいて、濃縮水W3の排水流量Qを、下記の式(3)により演算する。
=Q´/R´−Q´ (3)
【0053】
(ii)制御部10は、RO膜モジュール4における濃縮水W3の実際排水流量Qが排水流量Qの演算値以上の範囲となるように、第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。
【0054】
これにより、RO膜モジュール4において一次側の濃度が下がるため、透過水W2の水質及び処理水W4の水質を電気伝導率許容値E以下に保つことができる。制御部10による回収率制御の詳細については後述する。
【0055】
次に、制御部10による水質制御について、図2を参照しながら説明する。図2に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、繰り返し実行される。
【0056】
図2に示すステップST101において、制御部10は、温度センサ6で測定された供給水W1の温度測定値Tを取得する。
ステップST102において、制御部10は、溶存炭酸濃度センサ9で測定された透過水W2の溶存炭酸濃度測定値Cを取得する。
ステップST103において、制御部10は、予めメモリに記憶されている処理水W4の溶存炭酸濃度許容値Cを取得する。
【0057】
ステップST104において、制御部10は、取得した温度測定値T、溶存炭酸濃度測定値C、及び溶存炭酸濃度許容値Cを第1関数式(上述の式(1))に代入して、処理水W4の上限流量値Q´を演算する。演算された上限流量値Q´は、メモリに記憶され、温度測定値T及び溶存炭酸濃度測定値Cが変化すると、最新の値に更新される。
【0058】
ステップST105において、制御部10は、電気伝導率センサ7で測定された供給水W1の電気伝導率測定値Eを取得する。
ステップST106において、制御部10は、予めメモリに記憶されている透過水W2の電気伝導率許容値Eを取得する。
【0059】
ステップST107において、制御部10は、取得した温度測定値T、電気伝導率測定値E、及び電気伝導率許容値Eを第2関数式(上述の式(2))に代入して、ROモジュール4の上限回収率R´を演算する。演算された上限回収率R´は、メモリに記憶され、温度測定値T及び電気伝導率測定値Eが変化すると、最新の値に更新される。
【0060】
ステップST108において、制御部10は、演算された上限流量値Q´及び上限回収率R´に基づいて、RO膜モジュール4を運転する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。なお、RO膜モジュール4の運転では、以下で説明する流量フィードバック水量制御及び回収率制御を含んで運転される。
【0061】
次に、制御部10による流量フィードバック水量制御を、図3を参照しながら説明する。図3に示すフローチャートの処理は、上述の水質制御の一部として、RO膜モジュール4の運転中に繰り返し実行される。
【0062】
図3に示すステップST201において、制御部10は、メモリに記憶された上限流量値Q´を読み出し、この値を目標流量値Q´に設定する。上限流量値Q´は、図2のステップST104で演算された値である。
【0063】
ステップST202において、制御部10は、内部のタイマ(不図示)による計時tが制御周期である100msに達したか否かを判定する。このステップST202において、制御部10により、タイマによる計時が100msに達したと(YES)判定された場合に、処理はステップST203へ移行する。また、ステップST202において、制御部10により、タイマによる計時が100msに達していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST202へ戻る。
【0064】
ステップST203(ステップST202:YES判定)において、制御部10は、流量センサ8で検出された透過水W2の検出流量値Qを、フィードバック値として取得する。
【0065】
ステップST204において、制御部10は、ステップST203で取得した検出流量値(フィードバック値)QとステップST201で設定した目標流量値Q´との偏差がゼロとなるように、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより操作量Uを演算する。なお、速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、制御周期(100ms)毎に操作量の変化分を演算し、これを前回の操作量に加算することで今回の操作量を決定する。
【0066】
ステップST205において、制御部10は、操作量U、目標流量値Q´及び加圧ポンプ2の最大駆動周波数(50Hz又は60Hzの設定値)に基づいて、加圧ポンプ2の駆動周波数Fを演算する。
【0067】
ステップST206において、制御部10は、駆動周波数Fの演算値を、対応する電流値信号(4〜20mA)に変換する。
【0068】
ステップST207において、制御部10は、変換した電流値信号をインバータ7に出力する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST201へリターンする)。
【0069】
なお、ステップST207において、制御部10が電流値信号をインバータ3へ出力すると、インバータ3は、入力された電流値信号に対応する周波数に変換された駆動電力を加圧ポンプ2に供給する。その結果、加圧ポンプ2は、インバータ3から入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。
【0070】
次に、制御部10による透過水W2の回収率制御を、図4を参照しながら説明する。図4に示すフローチャートの処理は、上述の水質制御の一部として、RO膜モジュール4の運転中に繰り返し実行される。
【0071】
図4に示すステップST301において、制御部10は、メモリに記憶された上限流量値Q´を読み出し、この値を目標流量値Q´に設定する。上限流量値Q´は、図2のステップST104で演算された値である。
【0072】
ステップST302において、制御部10は、メモリに記憶された上限回収率R´を読み出し、この値を目標回収率R´に設定する。上限回収率R´は、図2のステップST107で演算された値である。
【0073】
ステップST303において、制御部10は、ステップST301で設定した目標流量値Q´、及びステップST302で設定した目標回収率R´に基づいて、濃縮水W3の排水流量Qを演算する。この排水流量Qは、上述の式(3)により演算される。
【0074】
ステップST304において、制御部10は、濃縮水W3の実際排水流量Qがステップ303で演算した排水流量Qの演算値以上の範囲となるように、第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST301へリターンする)。
【0075】
上述した第1実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が得られる。
【0076】
第1実施形態に係る水処理システム1において、制御部10は、供給水W1の温度に応じて、要求水質として設定された処理水W4の溶存炭酸濃度許容値C、及び透過水W2の電気伝導率許容値Cを共に満足する上限流量値Q´及び上限回収率R´を演算する。そして、当該上限流量値Q´及び上限回収率R´に基づいて、RO膜モジュール4を運転する。このため、供給水W1の温度に関わらず、要求水質以下の純水を安定して得ることができる。
【0077】
また、制御部10は、流量フィードバック水量制御として、演算により得た上限流量値Q´を目標流量値Q´とし、透過水W2の検出流量値Qが目標流量値Q´となるように加圧ポンプ2の駆動周波数を制御する。このため、脱気処理装置5の処理能力を十分に発揮させながら、溶存炭酸濃度許容値C以下の純水を安定した流量で製造することができる。
【0078】
また、制御部10は、回収率制御として、演算により得た上限流量値Q´及び上限回収率R´に基づいて、濃縮水W3の排水流量Qを演算し、濃縮水W3の実際排水流量Qが排水流量Qの演算値以上の範囲となるように第1排水弁11〜第3排水弁13を制御する。このため、供給水W1の水質変動に関らず、電気伝導率許容値C以下の純水を安定して製造することができる。
【0079】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る水処理システム1Aについて、図5を参照しながら説明する。図5は、第2実施形態に係る水処理システム1Aの全体構成図である。この第2実施形態では、主に第1実施形態との相違点について説明する。このため、第1実施形態と同一(又は同等)の構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を適宜に省略する。また、第2実施形態において特に説明しない点については、第1実施形態の説明が適宜に援用される。
【0080】
図5に示すように、第2実施形態に係る水処理システム1Aは、第1加圧ポンプ2と、第1インバータ3と、第1膜分離装置としての第1RO膜モジュール4と、脱気処理装置5と、前段排水弁としての第1排水弁11〜第3排水弁13と、第2加圧ポンプ14と、第2インバータ15と、第2膜分離装置としての第2RO膜モジュール16と、後段排水弁としての第1排水弁21〜第3排水弁23と、を備える。
【0081】
また、水処理システム1Aは、温度センサ6と、電気伝導率センサ7と、第1流量センサ8と、溶存炭酸濃度センサ9と、制御部10Aと、第2流量センサ17と、を備える。
【0082】
第2実施形態では、第1実施形態における「RO膜モジュール4」を「第1RO膜モジュール4」とする。また、第2実施形態では、第1実施形態における「加圧ポンプ2」を「第1加圧ポンプ2」とし、「インバータ3」を「第1インバータ3」とする。また、第2実施形態では、第1実施形態における「流量センサ8」を「第1流量センサ8」とする。
【0083】
更に、水処理システム1Aは、供給水ラインL1と、第1透過水ラインL2と、第1濃縮水ラインL3と、処理水ラインL4と、第2濃縮水ラインL5と、第2透過水ラインL6と、第1濃縮水W3の排水ライン(第1排水ラインL11、第2排水ラインL12及び第3排水ラインL13)と、第2濃縮水W5の排水ライン(第1排水ラインL21、第2排水ラインL22及び第3排水ラインL23)と、を備える。
【0084】
第2実施形態では、第1実施形態における「透過水ラインL2」を「第1透過水ラインL2」とし、「濃縮水ラインL3」を「第1濃縮水ラインL3」とする。また、第1ROモジュール4で製造された「透過水W2」を「第1透過水W2」とし、「濃縮水W3」を「第1濃縮水W3」とする。
【0085】
図5に示すように、第2実施形態に係る水処理システム1Aは、脱気処理装置5の下流側に、第2RO膜モジュール16を備える。第2実施形態における、その他の基本的な構成は第1実施形態と同じである。
【0086】
第2加圧ポンプ14は、処理水W4を吸入し、第2RO膜モジュール16に向けて吐出する装置である。第2加圧ポンプ14は、脱気処理装置5の下流側において、処理水ラインL4を介して接続されている。第2加圧ポンプ14は、第2インバータ15(後述)と電気的に接続されている。第2加圧ポンプ14には、第2インバータ15から、周波数が変換された駆動電力が入力される。第2加圧ポンプ14は、供給された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0087】
第2インバータ15は、第2加圧ポンプ14に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路である。第2インバータ15は、制御部10Aと電気的に接続されている。第2インバータ15には、制御部10Aから電流値信号が入力される。第2インバータ15は、制御部10Aから入力された電流値信号に対応する駆動周波数の駆動電力を第2加圧ポンプ14に出力する。
第2RO膜モジュール16は、脱気処理装置5及び加圧ポンプ14の下流側において、処理水ラインL4を介して接続されている。脱気処理装置5で得られた処理水W4は、処理水ラインL4を介して、第2RO膜モジュール16へ送出される。
【0088】
第2実施形態における第2RO膜モジュール16の構成は、第1RO膜モジュール4と同じである。なお、第2RO膜モジュール16のRO膜エレメント(不図示)は、第1RO膜モジュール4のRO膜エレメントと同じ特性でもよいし、異なる特性であってもよい。第2RO膜モジュール16は、脱気処理装置5で得られた処理水W4を膜分離処理する設備である。第2RO膜モジュール16は、上記RO膜エレメントにより処理水W4を膜分離処理し、第2透過水W6及び第2濃縮水W5を製造する。
【0089】
第2RO膜モジュール16の二次側ポートには、第2透過水ラインL6が接続されている。第2透過水ラインL6は、第2RO膜モジュール16で製造された第2透過水W6を、需要箇所等に送出するラインである。
【0090】
一方、第2RO膜モジュール16の一次側出口ポートには、第2濃縮水ラインL5の上流側の端部が接続されている。第2濃縮水ラインL5の下流側は、分岐部J7及びJ8において、第1排水ラインL21、第2排水ラインL22及び第3排水ラインL23に分岐している。
【0091】
第1排水ラインL21には、第1排水弁21が設けられている。第2排水ラインL22には、第2排水弁22が設けられている。第3排水ラインL23には、第3排水弁23が設けられている。第1排水弁21〜第3排水弁23は、第2濃縮水ラインL5から装置外へ排出される第2濃縮水W5の排水流量を調節する弁である。
【0092】
なお、第1排水弁21〜第3排水弁23の構成及び機能は、第1RO膜モジュール4の一次側出口ポートに接続された第1排水弁11〜第3排水弁13と同じであるため説明を省略する。第1排水弁21〜第3排水弁23は、それぞれ制御部10Aと電気的に接続されている。
【0093】
第2流量センサ17は、第2透過水ラインL6を流通する第2透過水W6の流量を検出する機器である。第2流量センサ17は、接続部J9において透過水ラインL2に接続されている。接続部J9は、第2RO膜モジュール16の二次側ポートよりも下流側近傍に配置されている。第2流量センサ17は、制御部10Aと電気的に接続されている。第2流量センサ17で検出された第2透過水W6の流量(検出流量値)は、制御部10Aへ検出値信号として送信される。
【0094】
制御部10Aは、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部10Aは、第1実施形態の制御部10と同じく、第1RO膜モジュール4に対して、第1実施形態のRO膜モジュール4と同じ流量フィードバック水量制御及び回収率制御を実行する。また、制御部10Aは、第2RO膜モジュール16に対する流量フィードバック水量制御として、以下の(i)〜(iii)を実行する。
【0095】
(i)制御部10Aは、上述の第2関数式に対し、温度センサ6で測定された温度測定値T、第1透過水W2の電気伝導率許容値E(すなわち、第2RO膜モジュール16への供給水電気伝導率)、及び第2透過水W6の電気伝導率許容値Ep2を与えて、第2RO膜モジュール16の上限回収率R´を演算する。すなわち、式(2)の各変数t,e,eに対して、それぞれT,Ep1,Ep2の各値が代入され、変数rの値、すなわち上限回収率R´を演算する。
【0096】
(ii)制御部10Aは、演算した上限回収率R´、及び処理水W4の上限流量値Q´(すなわち、第2RO膜モジュール16への供給水流量)から、下記の式(4)により、第2透過水W6の目標流量値Qp2´を演算する。
p2´=R´×Q´ (4)
【0097】
(iii)制御部10Aは、第2流量センサ17における第2透過水W6の検出流量値が目標流量値Qp2´となるように、第2加圧ポンプ14を駆動するための駆動周波数を演算すると共に、演算した駆動周波数に対応する電流値信号を第2インバータ15に出力する。
【0098】
これにより、第2インバータ15は、入力された電流値信号に対応する周波数に変換された駆動電力を第2加圧ポンプ14に供給する。そして、第2加圧ポンプ14は、第2インバータ15から入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。この結果、第2RO膜モジュール16から送出される第2透過水W6の流量が一定に保たれる。
【0099】
第2実施形態における流量フィードバック水量制御は、図3に示すフローチャートの処理と同じである。ただし、ステップST201の目標流量値Q´は、目標流量値Qp2´と読み替えるものとする。
【0100】
また、第2実施形態における回収率制御の処理手順は、第1実施形態の図4で説明したフローチャートの処理と同じである。すなわち、制御部10Aは、第2濃縮水W5の実際排水流量Qが、演算により得た排水流量Qの演算値以上の範囲となるように、第1排水弁21〜第3排水弁23を制御する。
【0101】
上述した第2実施形態に係る水処理システム1Aによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。とくに、第2実施形態に係る水処理システム1Aでは、第1RO膜モジュール4及び脱気処理装置5の下流側において、脱気処理装置5を介して、更に第2RO膜モジュール16を備える。そのため、第1RO膜モジュール4で除去しきれなかった溶存塩類を、第2RO膜モジュール16により更に除去することができる。従って、より純度の高い純水を製造することができる。
【0102】
また、制御部10Aは、流量フィードバック水量制御として、第2透過水W6の検出流量値Qが、演算により得た目標流量値Qp2´となるように第2加圧ポンプ14の駆動周波数を制御する。このため、溶存炭酸濃度許容値C以下の純水(第2透過水W6)を安定した流量で製造することができる。
【0103】
また、制御部10Aは、回収率制御として、演算により得た処理水流量値Q及び回収率Rに基づいて第2濃縮水W5の排水流量Qを演算し、第2濃縮水W5の実際排水流量Qが排水流量Qの演算値以上の範囲となるように第1排水弁21〜第3排水弁23を制御する。このため、供給水W1及び第1透過水W2の水質変動に関らず、電気伝導率許容値Cp2以下の純水(第2透過水W6)を安定して造水することができる。
【0104】
(変形形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0105】
例えば、第1及び第2実施形態では、供給水ラインL1を流通する供給水W1の温度を温度測定値Tとする例について説明した。これに限らず、透過水ラインL2を流通する透過水W2の温度を温度測定値Tとしてもよいし、濃縮水W3(第1濃縮水W3)、第2濃縮水W5又は第2透過水W6の温度を温度測定値Tとしてもよい。また、複数ポイントにおける水の温度の平均値を温度測定値Tとしてもよい。
【0106】
第1及び第2実施形態では、第1水質項目として、透過水ラインL2を流通する透過水W2の溶存炭酸濃度を測定する例について説明した。これに限らず、第1水質項目として、供給水ラインL1を流通する供給水W1の溶存炭酸濃度を測定してもよい。なお、溶存炭酸濃度センサ9は、必ずしも溶存炭酸濃度を直接測定するタイプでなくてもよく、pH値及びMアルカリ度を測定し、Tillmanの式等から溶存炭酸濃度を計算するタイプであってもよい。
【0107】
また、第1及び第2実施形態では、第2水質項目として、供給水ラインL1を流通する供給水W1の電気伝導率を測定する例について説明した。これに限らず、第2水質項目として、供給水ラインL1を流通する供給水W1のシリカ濃度を測定してもよい。なお、電気伝導率については、その逆数である比抵抗を測定値や許容値に用いることもできる。
【0108】
第2実施形態では、脱気処理装置5の下流側に、第2RO膜モジュール16を備えた構成について説明した。これに限らず、脱気処理装置5の下流側に、電気再生式イオン交換装置(EDI)、或いは陽イオン交換樹脂単床塔(カチオンポリッシャ)を備えた構成としてもよい。
【0109】
第1実施形態において、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W3の一部を、供給水ラインL1において、加圧ポンプ2よりも上流側に還流させる濃縮水還流ラインを設けた構成としてもよい。濃縮水還流ラインを設けることにより、膜表面での流速を高めることができるため、ファウリングの発生を抑制することができる。第2実施形態においても、同様の構成とすることができる。
【0110】
第1及び第2実施形態において、供給水W1は、地下水や水道水等の原水であってもよい。また、供給水W1は、原水を除鉄除マンガン装置、活性炭濾過装置、硬水軟化装置等により前処理した水であってもよい。
【0111】
第1及び第2実施形態では、各回収率制御において、第1排水弁11〜第3排水弁13(第1排水弁21〜第3排水弁23)を選択的に開閉することにより、濃縮水W3(第1濃縮水W3及び第2濃縮水W5)の排水流量を段階的に調節する例について説明した。これに限らず、排水ラインを分岐せずに1本とし、このラインに比例制御バルブを設けた構成としてもよい。この場合は、制御部10(10A)から電流値信号(例えば、4〜20mA)を比例制御バルブに送信して弁開度を制御することにより、濃縮水W3(第1濃縮水W3及び第2濃縮水W5)の排水流量を調節することができる。
【0112】
また、比例制御バルブを設けた構成において、排水ラインに流量センサを設けた構成としてもよい。流量センサで検出された流量値を、制御部10(10A)にフィードバック値として入力する。これにより、濃縮水W3(第1濃縮水W3及び第2濃縮水W5)の実際排水流量をより正確に制御することができる。
【符号の説明】
【0113】
1,1A 水処理システム
2 加圧ポンプ,第1加圧ポンプ
3 インバータ,第1インバータ
4 RO膜モジュール、第1RO膜モジュール(第1膜分離装置)
5 脱気処理装置
6 温度センサ(温度測定手段)
7 電気伝導率センサ(第2水質項目測定手段)
8 流量センサ,第1流量センサ(流量検出手段)
9 溶存炭酸濃度センサ(第1水質項目測定手段)
10,10A 制御部
11,21 第1排水弁
12,22 第2排水弁
13,23 第3排水弁
14 第2加圧ポンプ
15 第2インバータ
16 第2RO膜モジュール(第2膜分離装置)
17 第2流量センサ
L1 供給水ライン
L2 透過水ライン,第1透過水ライン
L3 濃縮水ライン,第1濃縮水ライン
L4 処理水ライン
L5 第2濃縮水ライン
L6 第2透過水ライン
W1 供給水
W2 透過水,第1透過水
W3 濃縮水,第1濃縮水
W4 処理水
W5 第2濃縮水
W6 第2透過水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給水を透過水と濃縮水とに分離する第1膜分離装置と、
前記第1膜分離装置で得られた透過水を脱気処理して処理水を製造する脱気処理装置と、
系内を流通する水の温度を測定する温度測定手段と、
供給水又は透過水の第1水質項目を測定する第1水質項目測定手段と、
供給水の第2水質項目を測定する第2水質項目測定手段と、
(i)温度、供給水又は透過水の第1水質項目、及び処理水の流量を独立変数とし、処理水の第1水質項目を従属変数とする第1関数式に対し、前記温度測定手段で測定された温度測定値、前記第1水質項目測定手段で測定された第1水質項目測定値、及び処理水の第1水質項目許容値を与えて、処理水の上限流量値を演算し、(ii)温度、供給水の第2水質項目、及び前記第1膜分離装置の回収率を独立変数とし、透過水の第2水質項目を従属変数とする第2関数式に対し、前記温度測定手段で測定された温度測定値、前記第2水質項目測定手段で測定された第2水質項目測定値、及び透過水の第2水質項目許容値を与えて、前記第1膜分離装置の上限回収率を演算し、(iii)前記第1関数式により演算された処理水の上限流量値、及び前記第2関数式により演算された前記第1膜分離装置の上限回収率に基づいて、前記第1膜分離装置を運転する制御部と、
を備える水処理システム。
【請求項2】
前記第1水質項目は、溶存炭酸濃度であり、
前記第2水質項目は、電気伝導率又はシリカ濃度である、
請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記脱気処理装置で製造された処理水を、更に透過水と濃縮水とに分離する第2膜分離装置を備える、
請求項1又は2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記第1膜分離装置からの透過水の流量を検出する流量検出手段と、
入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動され、供給水を吸入して前記第1膜分離装置に向けて吐出する加圧ポンプと、
入力された電流値信号に対応する駆動周波数を前記加圧ポンプに出力するインバータと、を備え、
前記制御部は、(i)前記第1関数式により演算された処理水の上限流量値を目標流量値として設定し、(ii)前記流量検出手段の検出流量値が前記目標流量値となるように、前記加圧ポンプの駆動周波数を演算し、(iii)当該駆動周波数の演算値に対する電流値信号を前記インバータに出力する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記第1膜分離装置は、系外へ排出する濃縮水の排水流量を調節可能な排水弁を更に備え、
前記制御部は、(i)前記第2関数式により演算された前記第1膜分離装置の上限回収率、及び前記第1関数式により演算された処理水の上限流量値に基づいて、濃縮水の排水流量を演算し、(ii)前記第1膜分離装置における濃縮水の実際排水流量が当該排水流量の演算値以上の範囲となるように、前記排水弁を制御する、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−66840(P2013−66840A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207101(P2011−207101)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】