説明

水処理方法及び水処理装置

【課題】原水中の塩類濃度が高い場合でも、低い場合でも、カルシウムの除去能力を十分に発揮することが可能であり、カルシウム除去剤の使用量をできるだけ少なくし得る水処理方法及び水処理装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、カルシウムイオンを含む原水を透過膜装置によって処理水と濃縮水に分離する水処理方法であって、濃縮水を晶析反応槽及び沈殿槽を経て原水槽へと返送し、
晶析反応槽においては、濃縮液に硫酸カルシウム種結晶を添加して、濃縮液中のカルシウムイオン及び硫酸イオンを硫酸カルシウム結晶として晶析させ、
沈殿槽においては、晶析反応槽から送られてきた濃縮水中の硫酸カルシウム結晶を沈殿させると共に、上清を原水槽へと返送し、沈殿槽に沈殿した硫酸カルシウム結晶の一部は、硫酸カルシウム種結晶として晶析反応槽へと回収され、
沈殿槽に沈殿した硫酸カルシウム結晶の残部は、系外へと排出されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウムイオン及び硫酸イオンを含む原水、例えば、廃棄物の最終処分場から発生する浸出水等を脱塩処理するための水処理方法及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、廃棄物は、焼却処理後、最終処分場に埋め立て処理されることが一般的である。最終処分場に降った雨水は、安定化を待つ埋め立て廃棄物の中にしみ込み、廃棄物に含まれる物質を溶かし出した浸出水となる。この浸出水が外部環境にしみ出せば、水質汚濁の原因となる。浸出水には、特に、焼却された廃棄物に由来するカルシウム等が含まれることが多く、そのまま外部環境に排出したのでは、配管又は処理設備内にスケールとして付着するという問題があった。
【0003】
このため、従来は、浸出水に炭酸ナトリウムをカルシウム除去剤として添加し、浸出液中のカルシウム分を炭酸カルシウムとして除去するライムソーダ法が行われていた。カルシウム分を除去した後、脱窒処理、凝集沈殿処理等の処理を行い、処理水を処理設備外へ排水していた。しかし、この処理方法では、カルシウム分を確実に除去できる反面、大量の炭酸ナトリウムを必要とするために、処理コストが高かった。
【0004】
また、脱塩処理のために電気透析装置を水処理装置に組み込む技術もあるが、電気透析によって濃縮水が大量に発生した場合には、処理コストが上昇するという問題があった。濃縮水をなるべく高濃度とすれば処理コストを抑制しうるが、電気透析装置では10倍以上の濃縮を行うことは困難であった。
【0005】
ここで、塩類を含む浸出水等を逆浸透膜に透過させて処理水と塩類を含む濃縮液に分離し、濃縮液を透過膜によってろ過し、透過膜の透過水をさらに濃縮水処理用の逆浸透膜に透過させ、高度濃縮水を排出する一方、透過膜によってろ過された濃縮水を晶析処理し、上澄みを透過膜へ導入することを特徴とする水処理方法及び水処理装置が、特許文献1に開示されている。
【0006】
特許文献1に開示されている水処理方法及び水処理装置は、逆浸透膜によって塩類を含む原水を処理するため、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、塩素イオン、硫酸イオン等の塩類、リン、窒素分等を確実に分離し、脱塩処理水を得ることができる。また、逆浸透膜の濃縮水を透過膜で処理した後、さらに濃縮水処理用逆浸透膜に透過させるため、濃縮水処理用逆浸透膜で分離される高度濃縮水が少量で済み、その処理が容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3098965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている水処理方法及び水処理装置は、塩類を含む浸出水等の濃縮率が高く、塩類除去が容易である。しかし、原水の塩類濃度が高い場合には、逆浸透膜表面又は配管内で析出しやすいという問題がある。また、塩類濃度が低い場合には、透過膜によってろ過された濃縮水の塩類濃度が十分に高くならず、晶析処理効率が低いという問題がある。このため、原水の塩類濃度が大きく変化するような条件では、脱塩能力を十分に発揮できない可能性があり、その点で改良の余地があった。
【0009】
本発明は、原水中の塩類濃度が高い場合でも、低い場合でも、硫酸カルシウムの除去能力を十分に発揮することが可能であり、カルシウム除去剤の使用量をできるだけ少なくし得る水処理方法及び水処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、スケール発生原因となる原水中のカルシウム濃度及び硫酸イオン濃度が大きく変化しても、膜の目詰まりを防止しつつ、硫酸カルシウム除去効率を高く維持するための方法について鋭意検討した。その結果、カルシウムイオン及び硫酸イオンを含む原水を透過膜装置で処理することにより、濃縮液中の硫酸カルシウム濃度を過飽和状態にできることに着目した。さらに、硫酸カルシウム濃度が過飽和状態となった濃縮液に、硫酸カルシウム種結晶を添加し、晶析した硫酸カルシウムの一部を硫酸カルシウム種結晶として回収すれば、カルシウム除去剤が不要となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
具体的に、本発明は、
カルシウムイオン及び硫酸イオンを含む原水を透過膜装置によって処理水と濃縮水に分離する水処理方法において、
濃縮水を、晶析反応槽及び沈殿槽を経て原水槽へと返送し、
晶析反応槽においては、濃縮液に硫酸カルシウム種結晶を添加して、濃縮液中のカルシウムイオン及び硫酸イオンを硫酸カルシウム結晶として晶析させ、
沈殿槽においては、晶析反応槽から送られてきた濃縮水中の硫酸カルシウム結晶を沈殿させると共に、上清を原水槽へと返送し、
沈殿槽に沈殿した硫酸カルシウム結晶の一部は、硫酸カルシウム種結晶として晶析反応槽へと回収され、
沈殿槽に沈殿した硫酸カルシウム結晶の残部は、系外へと排出される、
ことを特徴とする水処理方法に関する。
【0012】
また、本発明は、
カルシウムイオン及び硫酸イオンを含む原水を貯水する原水槽と、
原水槽から送水される原水を処理水と濃縮水に分離する透過膜装置と、
濃縮水を原水槽へと返送する返水経路と、
を備える水処理装置であって、
返水経路には、槽内の濃縮液に硫酸カルシウム種結晶を添加して、濃縮液中のカルシウムイオン及び硫酸イオンを硫酸カルシウム結晶として晶析させる晶析反応槽と、
晶析反応槽から送られてきた濃縮水中の硫酸カルシウム結晶を沈殿させると共に、上清を原水槽へと返送する沈殿槽とが設けられ、
沈殿槽に沈殿した硫酸カルシウム結晶の一部は、硫酸カルシウム種結晶として沈殿槽から回収経路を経て晶析反応槽へと回収され、
沈殿槽に沈殿した硫酸カルシウム結晶の残部は、系外へと排出される、
ことを特徴とする水処理装置に関する。
【0013】
晶析反応槽中の硫酸カルシウム結晶量が、晶析反応槽内で過飽和となっている硫酸カルシウム量の0.01倍以上となるように、沈殿槽に沈殿した硫酸カルシウム結晶を晶析反応槽へと返送することが好ましい。本発明の水処理方法及び水処理装置は、原水中のカルシウム分を硫酸カルシウムとして晶析させ、その一部を透過膜装置の濃縮水の晶析剤として利用するため、カルシウム除去剤をほとんど使用することなく、高いカルシウム除去率を維持しうる。
【0014】
ここで、「晶析反応槽内で過飽和となっている硫酸カルシウム量」とは、晶析反応槽内における「(イオン化している硫酸カルシウム量−飽和溶解度分の硫酸カルシウム量)」を意味する。この値が正の値の場合には、晶析反応槽内の硫酸カルシウムが過飽和になっていると考えられる。
【0015】
透過膜装置の濃縮水中の硫酸カルシウム濃度は、飽和濃度の1.01倍以上であることが好ましい。
【0016】
透過膜装置における被処理水(原水+濃縮水の一部)の膜面流速は、5000m/時以上15000m/時以下であることが好ましい。透過膜へのスケール付着を防止するためである。
【0017】
本発明の水処理方法において、濃縮水の一部は、透過膜装置の入口側へと循環させることが好ましい。また、本発明の水処理装置は、濃縮水の一部を透過膜装置の入口側へと循環させる循環経路をさらに備えることが好ましい。このような構成とすることにより、透過膜装置の濃縮水を晶析反応槽以降の経路へと循環させなくても、濃縮水を硫酸カルシウムの飽和濃度以上まで濃縮することが可能となる。
【0018】
透過膜装置の透過膜は、スケールが付着しにくい平膜状であることが好ましい。
【0019】
透過膜装置の処理水は、さらに逆浸透膜(RO膜)装置によって処理することもできる。透過膜装置によって、原水中に含まれる2価以上の金属イオンを選択的に除去することにより、RO膜装置で透過膜装置の処理水を処理する際に、安定的な運転が可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水処理方法及び水処理装置によれば、原水中のカルシウムイオン濃度及び硫酸イオン濃度が高い場合には、晶析反応槽及び沈殿槽で硫酸カルシウム結晶をすぐに除去できる。一方、原水中のカルシウムイオン濃度及び硫酸イオン濃度が低い場合には、透過膜の濃縮水が循環することによって、徐々にこれらイオンの濃度が硫酸カルシウムの飽和濃度以上にまで濃縮されるため、晶析反応槽及び沈殿槽で硫酸カルシウム結晶を効率よく除去できる。このため、原水中のカルシウムイオン濃度及び硫酸イオン濃度が大きく変動しても、透過膜の目詰まりを防止しつつ、高い硫酸カルシウム除去率を維持することが可能である。
【0021】
また、原水の処理に伴って発生する硫酸カルシウム結晶の一部を、晶析剤として回収するため、外部からの晶析剤添加がほとんど不要であり、コストパフォーマンスに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の水処理装置の一例を示すフロー図である。
【図2】本発明の水処理装置の別の一例を示すフロー図である。
【図3】特許文献1に開示されている水処理装置のフロー図である。
【図4】実施例1の実験結果を示すグラフである。
【図5】実施例2の実験結果を示すグラフ(種結晶量1倍〜10倍)である。
【図6】実施例2の実験結果を示すグラフ(種結晶量30倍〜100倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、本発明は以下の記載に限定されない。
【0024】
<実施形態1>
図1は、本発明の水処理装置の一例を示すフロー図を示す。浸出水等のカルシウムイオン及び硫酸イオンを含む原水は、まず原水槽1内に貯水される。原水に含まれる土砂等の固形分は、原水を原水槽1に給水する前に、フィルター等を用いて除去されることが好ましい。
【0025】
原水は、経路2を経て透過膜装置3の入口(図1では、下側)へと供給される。ここでは、透過膜装置としてナノろ過(NF)膜装置を用いている。経路2の透過膜装置3の入口手前にはポンプ(図示せず)を設け、透過膜装置3に供給する原水を昇圧する。透過膜装置3のNF膜は、原水中の1価のイオン(ナトリウムイオン、塩素イオン等)を透過させ、2価以上のイオン(カルシウムイオン、硫酸イオン等)は透過させない。このため、原水中の2価以上のイオンが選択的に濃縮され、透過膜装置3の出口(図1では、上側)から経路5へと濃縮水が取り出される。一方、2価以上のイオンが除去された処理水は、経路12から取り出される。濃縮水の硫酸カルシウム濃度を、硫酸カルシウム飽和濃度の1.01倍以上にまで濃縮することが好ましい。
【0026】
経路5を分岐して循環経路4を設け、循環経路4によって濃縮水の一部を透過膜装置3の入口に返送する構成としてもよい。この構成によれば、経路5以降の設備を循環させることなく被処理水中の硫酸カルシウムを濃縮することが可能である。また、透過膜装置3の濃縮水の圧力を利用できるため、経路2の透過膜装置3の入口手前に設置するポンプの動力を低減することが可能となる。すなわち、ポンプの小型化及び省電力化を図ることが可能となる。
【0027】
透過膜装置3は、硫酸カルシウムのスケールが付着しにくい平膜状のNF膜を備えることが好ましい。また、NF膜へのスケール付着を防止するために、NF膜装置における被処理水(原水+濃縮水)の膜面流速を、5000m/時以上15000m/時以下に調整することが好ましい。
【0028】
晶析反応槽6では、濃縮水に硫酸カルシウムの種結晶を添加する。晶析反応槽6内の濃縮水は、硫酸カルシウム濃度が飽和濃度以上であるが、そのままの状態では、硫酸カルシウムは晶析しない。しかし、粒状の硫酸カルシウムを種結晶として濃縮水に添加することにより、濃縮水中の硫酸カルシウムが種結晶を核として晶析し、硫酸カルシウム結晶が沈殿する。晶析反応槽6では、種結晶を添加した後、一定時間、濃縮水を撹拌することが好ましい。
【0029】
ここで、原水槽から供給される原水中のカルシウムイオン濃度及び硫酸イオン濃度が高い場合、透過膜装置3の濃縮水中のカルシウムイオン濃度及び硫酸イオン濃度は、短期間で硫酸カルシウムの飽和濃度以上に達することができる。その場合、濃縮水は、短期間で晶析反応槽6へと送水され、硫酸カルシウムは結晶として、その後、沈殿槽8で除去される。
【0030】
一方、原水中のカルシウムイオン濃度及び硫酸イオン濃度が低い場合でも、透過膜装置3の濃縮水が経路5→7→11→2を循環することにより、濃縮水中のカルシウムイオン濃度及び硫酸イオン濃度を硫酸カルシウムの飽和濃度以上とすることができる。
【0031】
図3は、特許文献1に開示されている水処理装置を示す。図3の水処理装置21では、原水を逆浸透ろ過膜装置(RO膜装置)22で処理し、RO膜装置22の濃縮水をさらにNF膜装置23で処理する。そして、NF膜装置23の濃縮水から硫酸カルシウムを晶析槽24において沈殿除去する構成となっている。この構成では、原水中のカルシウムイオン濃度及び硫酸イオン濃度が低い場合には、NF膜装置23の濃縮水中のカルシウムイオン濃度及び硫酸イオン濃度も低く、晶析槽24の処理水量が多い。その結果、大規模な晶析槽24が必要となり、晶析槽24内の硫酸カルシウム晶析率も低くならざるを得ず、大量のカルシウム除去剤も必要となる。
【0032】
しかし、本発明の水処理装置では、循環経路4と透過膜装置3との間で濃縮水を連続的に循環させる構成とすることにより、原水中のカルシウムイオン濃度及び硫酸イオン濃度を、硫酸カルシウムの飽和濃度以上にまで濃縮することができる。すなわち、そのような構成とすれば、原水中のカルシウムイオン濃度及び硫酸イオン濃度が低い場合でも、低濃縮率の濃縮液を大量に晶析反応槽6及び沈殿槽8で処理することがない。このため、晶析反応槽6及び沈殿槽8の容積は小さくて済み、沈殿槽8内の硫酸カルシウム晶析率も高い。
【0033】
本発明の水処理方法及び水処理装置では、硫酸カルシウム種結晶を添加することにより、過飽和状態の硫酸カルシウムが種結晶を核として晶析し、種結晶がない場合と比較して大きな硫酸カルシウム結晶として晶析する。その結果、沈殿槽8では硫酸カルシウム結晶の沈殿速度が高い。
【0034】
次に、晶析反応槽6内の濃縮液は、経路7を経て沈殿槽8へと供給される。沈殿槽8では、沈殿性の高い大きな硫酸カルシウム結晶が底部に沈殿する。このため、沈殿槽8における硫酸カルシウムの除去率は高く、沈殿に要する時間も短い。
【0035】
沈殿槽8の底部に沈殿した硫酸カルシウム結晶は、適宜、排出経路9から晶析スラリー液として系外へ抜き出される。排出経路9には回収経路10が接続されており、硫酸カルシウム結晶の一部は、晶析反応槽6へと返送される。返送された硫酸カルシウム結晶は、晶析反応槽6内の濃縮液中の硫酸カルシウムを晶析させるための種結晶として機能する。
【0036】
沈殿槽8から晶析反応槽6への硫酸カルシウム結晶の返送量は、晶析反応槽6内の濃縮水中の硫酸カルシウム結晶量が、晶析反応槽6内で過飽和となっている硫酸カルシウム量の0.01倍以上となるように、調整することが好ましい。なお、濃縮水の懸濁物質濃度を測定するため、晶析反応槽6に懸濁物質濃度測定装置を設けることが好ましい。
【0037】
硫酸カルシウム結晶が取り除かれた沈殿槽8の上清は、経路10を経て原水槽1へと供給され、再利用される。すなわち、原水槽1→透過膜装置3→晶析反応槽6→沈殿槽8→原水槽1という順に、原水及び透過膜装置3の濃縮水が原水槽1へと返送される(経路5→経路10は、返水経路として機能している)。このように、本発明の水処理装置では、原水を透過膜装置3によって処理する際に、ドレン水を抜き出す必要性が低く、100%に近い水回収率を達成することが可能である。
【0038】
また、図3の水処理装置と異なり、原水中に含まれる1価のイオンは、原水槽1→透過膜装置3→晶析反応槽6→沈殿槽8→原水槽1の経路において濃縮されないため、浸透圧の上昇が小さく、低圧で運転することが可能である。NF膜装置は、RO膜装置より低圧で運転できるため、本発明の水処理装置では、原水及び濃縮水を送水するためのポンプは、1価のイオンが濃縮される場合と比較して、より低圧で小型なタイプで足り、消費電力を節約し得る。
【0039】
なお、透過膜装置3の処理水は、カルシウムイオン及び硫酸イオンが除去されているため、配管等にスケールを生じにくい。1価のイオン濃度が高い場合には、必要に応じてRO膜装置により処理した後、系外へ排水することが好ましい(実施形態2を参照)。
【0040】
<実施形態2>
図2は、本発明の水処理装置の別の一例を示すフロー図を示す。図1に示した水処理装置とは、透過膜装置3の処理水を、さらにRO膜装置13で処理すること以外は共通する。ここでは、その共通部分についての説明は省略する。
【0041】
透過膜装置3の処理水は、経路12を経てRO膜装置13へと供給される。RO膜装置13の濃縮水の一部は、循環経路14によって経路12へと循環されるが、カルシウムイオン及び硫酸イオンが透過膜装置3によって除去されているため、RO膜にはスケールが付着しにくい。RO膜装置13の濃縮水の残部を、経路15を経て経路2に接続させ、透過膜装置3に供給しても良い。
【0042】
RO膜装置13の処理水の一部は、経路16を経て洗浄槽18に貯水され、RO膜装置13のRO膜を洗浄するための洗浄水として利用される。RO膜装置13の処理水の残部は、経路17を経てRO処理水槽19に貯水され、適宜系外に取り出される。このRO膜装置13の処理水は、1価のイオンも除去されているため、環境中に安全に排水することができる。
【0043】
洗浄槽18に貯水されたRO膜装置13の透過水は、経路20を経て経路2及び/又は経路12へと返送し、再利用することもできる。
【0044】
[実施例1]
図1に示す構成の水処理装置を用いて、硫酸カルシウムが飽和状態である浸出水に対して、濃縮倍率が1.05、1.10、1.20、1.30、1.40倍となるようNF膜で濃縮を行った。NF膜によるCa2+及びSO2−の阻止率は100%と仮定した。濃縮水のCa2+及びSO2−を測定し、そのモル濃度をかけてイオン積を算出した。その結果を、図4に示す。各濃縮倍率とイオン積値の関係から、1.3倍濃縮までであれば、濃縮水中で硫酸カルシウムは過飽和となるが、1.4倍濃縮では過飽和分が析出することが確認された(1.3倍〜1.4倍でイオン積にほとんど差がない)。
【0045】
[実施例2]
図1に示す構成の水処理装置を用いて、1.2倍濃縮した浸出水に、過飽和している硫酸カルシウム量に対し、1〜100倍の種結晶(硫酸カルシウム)を投入し、攪拌した。SS分(懸濁物質)をろ過し、ろ液中のCa2+及びSO2−を測定した。その結果を、図5及び図6に示す。なお、攪拌時間0hrは種結晶投入前を意味する。
【0046】
種結晶量が少ないほど晶析の進行は遅く、30倍以上では攪拌時間約30分で、過飽和分のほとんどの硫酸カルシウムが析出した。また、種晶量が多いほど、低濃度まで晶析が進行した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の水処理方法及び水処理装置は、スケールの要因となるイオンの濃度が高い浸出水又は排水処理等の技術分野において有用である。
【符号の説明】
【0048】
1:原水槽
2,5,7,11,12,15,16,17,20:経路
3:透過膜装置
4,14:循環経路
6:晶析反応槽
8:沈殿槽
9:排出経路
10:回収経路
13:RO膜装置
18:洗浄槽
19:RO処理水槽
21:特許文献1の水処理装置
22:RO膜装置
23:NF膜装置
24:晶析槽
25:塩類を含む固形物
26:高圧RO膜装置
27:第2RO膜装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムイオン及び硫酸イオンを含む原水を透過膜装置によって処理水と濃縮水に分離する水処理方法において、
濃縮水を、晶析反応槽及び沈殿槽を経て原水槽へと返送し、
晶析反応槽においては、濃縮液に硫酸カルシウム種結晶を添加して、濃縮液中のカルシウムイオン及び硫酸イオンを硫酸カルシウム結晶として晶析させ、
沈殿槽においては、晶析反応槽から送られてきた濃縮水中の硫酸カルシウム結晶を沈殿させると共に、上清を原水槽へと返送し、
沈殿槽に沈殿した硫酸カルシウム結晶の一部は、硫酸カルシウム種結晶として晶析反応槽へと回収され、
沈殿槽に沈殿した硫酸カルシウム結晶の残部は、系外へと排出される、
ことを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
前記晶析反応槽中の硫酸カルシウム結晶量が、前記晶析反応槽内で過飽和となっている硫酸カルシウム量の0.01倍以上となるように、前記沈殿槽に沈殿した硫酸カルシウム結晶を前記晶析反応槽へと返送する、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記透過膜装置の濃縮水中の硫酸カルシウム濃度が、飽和濃度の1.01倍以上である、請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
透過膜装置における被処理水の膜面流速が、5000m/時以上15000m/時以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項5】
濃縮水の一部を透過膜装置の入口側へと循環させる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項6】
前記透過膜装置の透過膜が平膜状である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項7】
前記透過膜装置の処理水をさらに逆浸透膜装置によって処理する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項8】
カルシウムイオン及び硫酸イオンを含む原水を貯水する原水槽と、
原水槽から送水される原水を処理水と濃縮水に分離する透過膜装置と、
濃縮水を原水槽へと返送する返水経路と、
を備える水処理装置であって、
返水経路には、槽内の濃縮液に硫酸カルシウム種結晶を添加して、濃縮液中のカルシウムイオン及び硫酸イオンを硫酸カルシウム結晶として晶析させる晶析反応槽と、
晶析反応槽から送られてきた濃縮水中の硫酸カルシウム結晶を沈殿させると共に、上清を原水槽へと返送する沈殿槽とが設けられ、
沈殿槽に沈殿した硫酸カルシウム結晶の一部は、硫酸カルシウム種結晶として沈殿槽から回収経路を経て晶析反応槽へと回収され、
沈殿槽に沈殿した硫酸カルシウム結晶の残部は、系外へと排出される、
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項9】
前記晶析反応槽中の硫酸カルシウム結晶量が、前記晶析反応槽中で過飽和となっている硫酸カルシウム量の0.01倍以上となるように、前記沈殿槽に沈殿した硫酸カルシウム結晶を前記晶析反応槽へと返送する、請求項8に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記透過膜装置の濃縮水中の硫酸カルシウム濃度が、飽和濃度の1.01倍以上である、請求項8又は9に記載の水処理装置。
【請求項11】
透過膜装置における被処理水の膜面流速が、5000m/時以上15000m/時以下である、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項12】
濃縮水の一部を透過膜装置の入口側へと循環させる循環経路をさらに備える、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項13】
前記透過膜装置の透過膜が平膜状である、請求項8乃至12のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項14】
前記透過膜装置の処理水をさらに処理する逆浸透膜装置を備える、請求項8乃至13のいずれか1項に記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−200788(P2011−200788A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69944(P2010−69944)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】