説明

水処理方法

【課題】 膜ろ過処理と促進酸化水処理とを併用する水処理方法において、ろ過膜のオゾン洗浄のための特段の設備を設けることなく、促進酸化処理装置内における水をろ過膜オゾン洗浄水として有効利用可能な水処理方法を提供する。
【解決手段】 被処理水をろ過膜を有する膜処理装置2を用いて浄化する膜ろ過処理工程と、この処理水を促進酸化処理装置3に通流しオゾンガスと過酸化水素とを注入して促進酸化処理を行う促進酸化水処理工程とを有し、前記ろ過膜を一定の膜ろ過処理時間毎もしくは膜のろ過抵抗が予め定めた所定値に到達した際に、オゾン含有水により洗浄する工程を含む水処理方法において、ろ過膜の洗浄の際に、促進酸化処理装置内の処理水中への過酸化水素の注入は一時停止しオゾンガスの注入は継続して、促進酸化処理装置内の処理水中の溶存オゾン濃度を予め設定した値まで高め、このオゾン含有水を用いてろ過膜の洗浄を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ろ過膜を用いた膜ろ過処理と、オゾンおよび過酸化水素を用いた促進酸化水処理あるいはオゾンおよび紫外線照射を用いた促進酸化水処理とを併用して、環境水、あるいは下水処理水、工場廃水等の浄化処理を行う水処理方法、特に、前記併用水処理法におけるろ過膜の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンは強力な酸化力を有し、オゾンガスを水中に散気することにより殺菌、脱色、脱臭、有機物もしくは無機物の酸化除去等を行う水処理が広く行われている。また、近年では、特に難分解性物質(トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ダイオキシン類等の有機塩素化合物など)の分解を目的に、より酸化力を高めた促進酸化法が用いられている。促進酸化法とは、オゾンと紫外線照射、オゾンと過酸化水素添加などを組合せることによりオゾンの自己分解を促進し、その際に発生するヒドロキシラジカル(OHラジカル)の生成を促進することで、より酸化力を高め、オゾン単独では分解困難な物質の分解を効率的に行う手法である。
【0003】
一般に、被処理水となる環境水、あるいは工場廃水には濁質や有機物質が含まれており、これらはオゾンおよびOHラジカルと反応し、分解されると同時にこれら酸化種を消費する。従って、原水の汚濁が激しい程、酸化種の消費量が多いため、オゾン注入設備の容量を大とする必要が生じる。
【0004】
一方、被処理水中の汚濁物質を除去する方法として、膜ろ過を利用した水処理方法がよく知られている。そこで、特に被処理水としての原水に濁質などが多く含まれる場合には、まず膜ろ過処理を行い固形分を十分に取り除いた後に促進酸化水処理を行なう、即ち、膜ろ過処理と促進酸化水処理とを併用する方法が、前述のオゾン消費量低減の観点から有効である。
【0005】
ところで、前記膜ろ過を用いた水処理においては、運転の継続に伴い、膜の表面に汚濁物質の付着層が生じるため、一定の膜ろ過処理時間毎もしくは膜のろ過抵抗が予め定めた所定値に到達した際に、ろ過膜の洗浄、例えば逆洗工程が必要である。ろ過膜の洗浄方法としては、膜ろ過処理の前段でオゾン酸化処理を実施し、膜面上にオゾンを残留させてろ過する方法、あるいは逆洗工程の際にオゾンを供給して、膜面の洗浄効率を高める方法等が提案されている(特許文献1および2参照)。これらの方法によれば、膜面上にオゾンが残留することにより、膜及び膜への付着物質をオゾンにより酸化除去することが可能となり、膜性能の低下を防止することができる。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1および2に記載された方法の場合、膜処理装置の逆洗工程において、オゾン溶解水、あるいはオゾン注入処理を併用する場合、膜の被処理水流入側(一次側)および膜ろ過水流出側(2次側)にオゾンを注入する装置を備える必要がある(特許文献1)か、あらかじめ洗浄用のオゾン溶解水を生成・貯留するためのオゾン溶解槽を設ける必要がある(特許文献2)ので、前記膜ろ過処理と促進酸化水処理とを併用する方法に上記特許文献1および2に記載されたろ過膜の洗浄方法を適用する場合、膜処理装置および促進酸化処理装置以外に、洗浄用のオゾン溶解水またはオゾン注入用の設備が余分に必要となり、装置が複雑かつ高価となる問題がある。
【0007】
なお、促進酸化処理水をろ過膜の洗浄水として利用する方法が考えられるが、この場合下記理由により、ろ過膜の洗浄効果は得られない。その理由は、促進酸化処理装置においては、オゾンの分解が促進されるため、促進酸化処理後の処理水には、オゾンがほとんど残留しない。即ち、促進酸化処理の主体であるOHラジカルは、酸化力が強い反面分解速度も極めて速いため、促進酸化処理水を膜洗浄水として供給しても、膜面の洗浄効果は得られない。
【0008】
なお、特許文献3には、ろ過膜の逆洗に関して、オゾンと過酸化水素の両者を適用することが開示されている。特許文献3の段落記号[0011]の項には、課題として「オゾンと過酸化水素を混合する場合、予め混合した水を用いると、混合液が膜内に到達する時にはオゾンと過酸化水素の反応が既に終了してしまっているため、効果が得られない」旨記載され、また、段落記号[0017〜0018、0034〜0035、0038〜0040等]の項には、前記課題の解決手段として、「過酸化水素を逆洗水に混合してろ過膜の2次側から1次側に流通させ、オゾンは膜の一次側から供給することで、膜表面で促進酸化処理を行なって、逆洗降下を高める」旨記載されている。しかしながら、特許文献3の発明は、前記膜ろ過処理と促進酸化水処理とを併用する水処理方法において、オゾンによりろ過膜を洗浄する技術を開示してはいない。
【特許文献1】特開2000−167363号公報
【特許文献2】特開2002−263647号公報
【特許文献3】特開2003−326258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、この発明の課題は、前記膜ろ過処理と促進酸化水処理とを併用する水処理方法において、ろ過膜のオゾン洗浄のための特段の設備を設けることなく、促進酸化処理装置内における水をろ過膜オゾン洗浄水として有効利用可能な水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、この発明は、被処理水を膜処理装置のろ過膜の一次側から二次側へ通過させることにより、被処理水の固形分を分離除去する膜ろ過処理工程と、前記膜ろ過処理工程後の処理水を促進酸化処理装置に通流し、当該促進酸化処理装置内の処理水中にオゾンガスと過酸化水素とを注入して促進酸化処理を行う促進酸化水処理工程とを有し、さらに、前記膜処理装置のろ過膜を、一定の膜ろ過処理時間毎もしくは膜のろ過抵抗が予め定めた所定値に到達した際に、オゾン含有水により洗浄する工程を含む水処理方法において、前記ろ過膜の洗浄の際に、前記促進酸化処理装置内の処理水中への過酸化水素の注入は一時停止しオゾンガスの注入は継続して、促進酸化処理装置内の処理水中の溶存オゾン濃度を予め設定した値まで高め、このオゾン含有水を用いて前記ろ過膜の洗浄を行なうことを特徴とする(請求項1)。
【0011】
また、下記請求項2の発明によっても前記課題は解決できる。即ち、被処理水を膜処理装置のろ過膜の一次側から二次側へ通過させることにより、被処理水の固形分を分離除去する膜ろ過処理工程と、前記膜ろ過処理工程後の処理水を促進酸化処理装置に通流し、当該促進酸化処理装置内の処理水中にオゾンガスを注入し、かつ紫外線を照射して促進酸化処理を行う促進酸化水処理工程とを有し、さらに、前記膜処理装置のろ過膜を、一定の膜ろ過処理時間毎もしくは膜のろ過抵抗が予め定めた所定値に到達した際に、オゾン含有水により洗浄する工程を含む水処理方法において、前記ろ過膜の洗浄の際に、前記促進酸化処理装置内の処理水中への紫外線照射は一時停止しオゾンガスの注入は継続して、促進酸化処理装置内の処理水中の溶存オゾン濃度を予め設定した値まで高め、このオゾン含有水を用いて前記ろ過膜の洗浄を行なうことを特徴とする(請求項2)。
【0012】
前記請求項1または2の実施態様としては下記請求項3の発明が好ましい。即ち、前記請求項1または2に記載の水処理方法において、オゾン含有水によるろ過膜の洗浄は、前記促進酸化処理装置内のオゾン含有水をろ過膜の二次側から一次側へ通流することにより行う(請求項3)。
【0013】
上記本発明による水処理方法によれば、膜処理装置により濁質の分離を十分に行うことで、後段の促進酸化水処理におけるオゾンおよびラジカル消費成分を低減し、オゾン注入量を削減できると同時に、ろ過膜の洗浄の際には、促進酸化処理装置で一時的に生成したオゾン含有水を供給することで、十分な膜面洗浄効果が得られ、長期的に膜処理装置の処理性能を高く保つことができる。さらに、設備の簡略化が図れる。
【発明の効果】
【0014】
即ち、この発明によれば、膜ろ過処理と促進酸化水処理とを併用する水処理方法において、ろ過膜のオゾン洗浄のための特段の設備を設けることなく、促進酸化処理装置内における水をろ過膜オゾン洗浄水として有効利用可能な水処理方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1および図2に基づき、本発明の実施の形態について以下に述べる。図1は、促進酸化処理に過酸化水素を用いた場合の本発明の第1の実施形態に係るシステム系統図を示し、図2は、促進酸化処理に紫外線照射を用いた場合の本発明の第2の実施形態に係るシステム系統図である。
【0016】
図1および図2において、それぞれ、1は原水供給ポンプ、2は膜処理装置、3は促進酸化処理装置、4はオゾン発生装置、5は過酸化水素供給装置、6は制御装置、7は溶存オゾン測定装置、8は逆洗浄ポンプ、9は排水弁、10は紫外線照射装置、11は処理水を示す。
【0017】
図1に基づき、全体のシステムフローを以下に説明する。被処理水としての原水は原水供給ポンプ1により膜処理装置2に導入され、膜分離により被処理水中の濁質が取り除かれ、膜ろ過水は後段の促進酸化処理装置3に導入される。この実施形態はオゾン注入と過酸化水素を併用する促進酸化処理装置であり、促進酸化処理装置3にはオゾン発生装置4より発生させたオゾンガスが注入されると同時に、過酸化水素供給装置5により過酸化水素が供給される。
【0018】
次に、図1における制御の流れを説明する。通常のろ過時においては、原水供給ポンプ1が運転されているが、制御装置6は一定の時間経過後、あるいは、膜のろ過抵抗が規定の値以上に到達した時点で、ろ過膜の洗浄工程に移る制御指令を出力する。ろ過膜の洗浄工程では、最初に原水供給ポンプ1を停止し、ろ過工程を一時停止する。このとき、促進酸化処理装置3からの処理水11の流出も停止した状態とするが、オゾン発生装置4は作動させたまま、過酸化水素供給装置5のみを停止すると、促進酸化処理装置3内に滞留した処理水中の有機物、および過酸化水素はオゾンにより分解され、次第に促進酸化処理装置3内の溶存オゾン濃度が上昇する。
【0019】
この時の溶存オゾン濃度を促進酸化処理装置3に設けた溶存オゾン測定装置7により連続的に検出し、その値が規定値に達した時点で、オゾン発生装置4を停止し、逆洗浄ポンプ8を作動させ、排水弁9を開とすることで、ろ過膜の洗浄を行う。一定時間、あるいは一定水量洗浄を行った後、排水弁9を閉とし、逆洗浄ポンプ8を停止し、原水供給ポンプ1を作動させて通常のろ過工程に戻した後に、促進酸化処理装置3内へのオゾ注入、および過酸化水素の注入を再開する。
【0020】
上記膜処理装置2のろ過膜洗浄工程間隔や、洗浄開始のろ過抵抗の値は、対象とする被処理水の濁質量や水質に応じて、調整される。また、洗浄工程時の溶存オゾン濃度や、洗浄時間についても、膜面の汚れの付着状況や、運転負荷(単位時間のろ過水量)などを考慮して、適正な値を設定すればよい。
【0021】
次に、図2について述べる。図2は、促進酸化処理法として、オゾンと紫外線照射を併用した場合の一例である。図2では、洗浄工程において、紫外線照射装置10を停止、すなわち消灯することで、溶存オゾン水を確保する点が、図1の場合と異なり、制御の流れは図1の場合と同様である。
【0022】
上記実施態様によれば、膜処理装置2と促進酸化処理装置3とを併用することで、効率的な濁質除去、難分解性物質の分解が可能になると同時に、ろ過膜面洗浄のためのオゾン溶解槽などを別途設ける必要がないので、設備費が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】促進酸化処理に過酸化水素を用いた場合の本発明の第1の実施形態に係るシステム系統図。
【図2】促進酸化処理に紫外線照射を用いた場合の本発明の第2の実施形態に係るシステム系統図。
【符号の説明】
【0024】
1 原水供給ポンプ、2 膜処理装置、3 促進酸化処理装置、4 オゾン発生装置、5 過酸化水素供給装置、6 制御装置、7 溶存オゾン測定装置、8 逆洗浄ポンプ、9 排水弁、10 紫外線照射装置、11 処理水。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を膜処理装置のろ過膜の一次側から二次側へ通過させることにより、被処理水の固形分を分離除去する膜ろ過処理工程と、前記膜ろ過処理工程後の処理水を促進酸化処理装置に通流し、当該促進酸化処理装置内の処理水中にオゾンガスと過酸化水素とを注入して促進酸化処理を行う促進酸化水処理工程とを有し、さらに、前記膜処理装置のろ過膜を、一定の膜ろ過処理時間毎もしくは膜のろ過抵抗が予め定めた所定値に到達した際に、オゾン含有水により洗浄する工程を含む水処理方法において、
前記ろ過膜の洗浄の際に、前記促進酸化処理装置内の処理水中への過酸化水素の注入は一時停止しオゾンガスの注入は継続して、促進酸化処理装置内の処理水中の溶存オゾン濃度を予め設定した値まで高め、このオゾン含有水を用いて前記ろ過膜の洗浄を行なうことを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
被処理水を膜処理装置のろ過膜の一次側から二次側へ通過させることにより、被処理水の固形分を分離除去する膜ろ過処理工程と、前記膜ろ過処理工程後の処理水を促進酸化処理装置に通流し、当該促進酸化処理装置内の処理水中にオゾンガスを注入し、かつ紫外線を照射して促進酸化処理を行う促進酸化水処理工程とを有し、さらに、前記膜処理装置のろ過膜を、一定の膜ろ過処理時間毎もしくは膜のろ過抵抗が予め定めた所定値に到達した際に、オゾン含有水により洗浄する工程を含む水処理方法において、
前記ろ過膜の洗浄の際に、前記促進酸化処理装置内の処理水中への紫外線照射は一時停止しオゾンガスの注入は継続して、促進酸化処理装置内の処理水中の溶存オゾン濃度を予め設定した値まで高め、このオゾン含有水を用いて前記ろ過膜の洗浄を行なうことを特徴とする水処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理方法において、前記オゾン含有水によるろ過膜の洗浄は、前記促進酸化処理装置内のオゾン含有水をろ過膜の二次側から一次側へ通流することにより行うことを特徴とする水処理方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−83155(P2007−83155A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274348(P2005−274348)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】