説明

水処理用フィルター

【課題】水道水や下水、排水などに含まれる汚染物質を除去する水処理フィルターにおいて、濁りや塩素も十分に除去することができ、それらの水を処理する性能が長期にわたって維持できるだけでなく、抗菌性能も継続維持することができ、浄水性能が高く、しかも十分な流量が得られる水処理用フィルターを提供する。
【解決手段】水から汚染物質を除去するための水処理用フィルター1は、活性炭および金属イオンを担持したゼオライトをバインダーで固化した多孔質成形体であり、バインダーとしては低メルトインデックスの高分子量多孔質ポリマーを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質を除去する水処理器に用いる浄水フィルターであり、より詳しくは、浄水成分をポリマーからなるバインダーで固めることで効率よく汚染物質を除去することができ、水処理能力や抗菌性能に優れた水処理用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家庭などで使用される水処理器の交換カートリッジフィルターは、活性炭で塩素や有機物を除去し、中空糸膜でミクロサイズの汚れ、赤サビや細菌などを取る構造を有しているのが一般的である。
【0003】
また抗菌能を備えたフィルターとしては、活性炭粒子に銀を添着させた粒状活性炭が知られ、銀などの金属イオンの溶出により水中の微生物を死滅させるものであった。
【0004】
フィルターの具体的な構造としては、円筒形の容器からなるカートリッジ内に活性炭の部屋と中空糸膜の部屋とにそれぞれを収納配置し、水をカートリッジ内に導入して活性炭の部屋へ送ってカルキ臭やカビ臭などをとり、次いで中空糸の部屋へ送り、活性炭で取り除けなかったものを除去するというものが挙げられる(特許文献1)。
【0005】
また、中空糸膜からなるチューブを円筒形の容器からなるカートリッジの中心に配置してその外周側に活性炭を配置して、外周側から水を流し、活性炭の層を通過させた後、中空糸膜を通過させて処理済の水をカートリッジから出すという構造のものも使用されている(特許文献2)。
【0006】
いずれの構成においても活性炭は、活性炭が通過せず、水のみが通過するような小径の穴を有する膜に仕切られた部屋の中に粒状で蓄えられた状態で用いられるものであり、銀添着炭も同じ状態で用いられるものであった。
【0007】
特許文献3には、多孔質プラスチック・マトリックス内に活性炭粒子をトラップした水処理器が開示されている。多孔質プラスチック・マトリックス中に活性炭を分散させることによって小さな粒径の活性炭を使用できるようにしたものである。
【0008】
また、特許文献4にもポリマーで活性炭を固めたフィルターで、しかもそのポリマーとして1.0g/10min未満(ASTM D1238、190℃、15kg Load)である低メルトインデックスのポリマーを用いたものが開示されている。
【0009】
さらに、特許文献5では抗菌剤として銀添着活性炭の代わりに銀イオンを保持したゼオライトを使用すること、また特許文献6には、イオン交換体の交換基に銀イオンをイオン交換してなる抗菌剤及び活性炭を抗菌剤及び活性炭が表面に分散する状態にバインダーで成形固化して構成してなる濾材が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開平10−85729号公報
【特許文献2】特開平8―71541号公報
【特許文献3】特開平2−17989号公報
【特許文献4】米国特許第4753728号公報
【特許文献5】特開平1−278408号公報
【特許文献6】特開平4−22410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1や特許文献2に開示されたような構造のフィルターでは、中空糸膜が高価である上に、フィルター全体における中空糸膜の占める割合が大きく、例えばスペースや重量の面で小型にならざるを得ない蛇口直結型水処理器の交換カートリッジフィルターとして用いるには、活性炭の使用量が制限される構造となっていた。
【0012】
したがって、活性炭の使用量が制限されることによって、塩素などが取れる機能については比較的寿命が短くなってしまうのが現状であった。
【0013】
また、粒状の活性炭を用いると水が活性炭の層中を通過するときに、自然と水みちがついてしまい、活性炭を部分的にしか使うことができないので、塩素などを除去する性能の寿命が短くなってしまうことになる。
【0014】
特許文献3、特許文献4では多孔質プラスチック・マトリックス中に活性炭を分散させて固化したフィルターを用いている。このような構造にすることで、より粒径の小さな活性炭を用いることができるので効率がよくなり、しかもフィルター全体に水が流れるようにすることができることから、活性炭による塩素などの除去性能を長持ちさせることが可能である。
【0015】
しかし、水処理用フィルターは濁りや塩素などの除去性能もさることながら十分な流量が得られるものでなければ使い勝手の面で不満が残る。従来の水処理用フィルターでは、濁りや塩素などの除去性能に優れたものはどうしても流量が十分に得られず、流量を得ようとすれば濁りや塩素の除去性能が落ちるという二律背反の性質があって、いずれか片方を重視するかもしくはいずれの性能も程々のものとするしかなかったといった問題があった。
【0016】
特に蛇口直結型水処理器に用いるフィルターは前記のように軽量で小型であることが求められるが、活性炭や、イオン交換樹脂などをプラスチック内に分散させたようなフィルターの場合、通常2.0〜3.0L/min程度の流量を必要とするが、塩素や重金属類などを除去する性能を上げるために、粒径の細かい粉末状の活性炭や粒径の細かいイオン交換樹脂などを使用すると流量が十分に得られないといった問題があることがわかった。
【0017】
また特許文献5では従来の銀添着活性炭は、銀の溶出量を調整することが難しく、製造時の条件によっては銀イオンの溶出量が大きく異なり、殺菌効果や寿命がばらつく不具合を生じていたが、銀などの金属イオンを保持したゼオライトを使用することで抗菌能のバラツキを少なくしている。ただし、このようなゼオライトをそのまま充填したフィルターでは、水が流れる際に自然と水みちを形成して水が全体を均等に流れず一定の経路ばかりを流れるようになって性能を十分に発揮できないという問題がある。
【0018】
さらに特許文献6では銀イオンをイオン交換させてなる抗菌剤と共に活性炭をバインダーで成形固化して構成する濾材とすることで、抗菌能の継続維持、また濾材の交換維持管理を容易・安価に行うことができるとしている。抗菌剤や活性炭をバインダーで成形固化してフィルターとすることによってフィルター中に水みちが形成されるといった問題は解消される。
【0019】
しかし、フィルターの加熱成形時、溶融したバインダーが抗菌剤や活性炭の表面を被ってしまうことから、フィルターに含まれる抗菌剤や活性炭の量に見合うだけの性能が得られない。十分な抗菌性能や浄水性能を発現、継続維持させるには、一定以上の含有量が必要とされる。
【0020】
そこで本発明は、水道水や下水、排水などに含まれる汚染物質を除去する水処理フィルターにおいて、濁りや塩素も十分に除去することができ、それらの水を処理する性能が長期にわたって維持できるだけでなく、抗菌性能も継続維持することができる蛇口直結型水処理器のようなサイズが制限される用途においても、浄水性能が高く、しかも十分な流量が得られる水処理用フィルターの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記のような目的を達成するために本発明の請求項1では、水から汚染物質を除去するための水処理用フィルターにおいて、活性炭とともに抗菌性を有する金属イオンを担持したゼオライトを高分子量多孔質ポリマーからなるバインダーで固化したことを特徴とする。
【0022】
請求項2ではバインダーとしてメルトインデックスが、1.1〜2.3g/10min(ASTM D1238、190℃、15kg Load)の高分子量多孔質ポリマーを使用する請求項1記載の水処理用フィルターとしている。
【0023】
請求項3では水処理用フィルター中のバインダーの割合が5〜40質量%で、活性炭の割合が60〜90質量%で、金属イオンを担持したゼオライトの割合が2〜15質量%であり、かつフィルター本体の密度が0.4〜0.65g/cm3である水処理用フィルターとしている。
【0024】
請求項4では活性炭は粒径の異なる少なくとも2種類の活性炭を併用した水処理用フィルターとしている。
【0025】
請求項5では活性炭として、60−100メッシュパス粒状活性炭及び100メッシュパス粉末活性炭を1:1〜4:1の割合で混合したものを用いた水処理用フィルターとしている。
【0026】
請求項6では、水道の蛇口に直結するタイプの水処理器に用いるフィルターである水処理用フィルターとしている。
【0027】
請求項7では、用いる金属イオンを担持したゼオライトの平均粒径が2〜20μmである水処理用フィルターとしている。
【0028】
請求項8では、金属イオンを担持したゼオライトは含水タイプを用いている水処理用フィルターとしている。
【発明の効果】
【0029】
活性炭とともに抗菌性を有する金属イオンを担持したゼオライトを高分子量多孔質ポリマーからなるバインダーで固化することによって、例えば粒径の小さな活性炭を用いて濁りや塩素の除去性能を向上させても十分な流量を得ることができる。また、金属イオンを担持したゼオライトによって抗菌性能も継続維持することができる。
【0030】
バインダーとしてこのようなメルトインデックスのものを用いることによって、活性炭を固化する際にバインダーが液状に溶融せず活性炭や金属イオンを担持したゼオライトを覆ってしまうことがないので、適度にバインダーとして働かせることができ、しかもより少ない量のバインダーで固めることができるので、フィルター中に含まれる活性炭の量を多くすることができ、水を処理する性能を向上させることができる。
【0031】
フィルターを通過する流量は、活性炭とバインダーとの混合比や、成形する際の圧力のかけ方にも左右される。固化したフィルター本体の密度を0.4〜0.65g/cm3の範囲内に設定することによって、水処理用フィルターとしてコンパクトなサイズであっても十分な流量を確保することができ、かつ十分に水の濁りや塩素を取り除くこともできる。
【0032】
活性炭として2種類の粒径のものを混合して用いることによって、活性炭による濁りや塩素などを除去する性能を十分なものに保持すると同時に、十分な流量を得やすくすることができる。
【0033】
活性炭の粒径を以上のような粒径の活性炭を所定の割合で混合して用いることによって、活性炭による濁りや塩素などを除去する性能を十分なものに保持すると同時に、十分な流量を得る上でより適切な範囲である。
【0034】
水道の蛇口に直結するタイプの水処理器に用いるフィルターである水処理用フィルターとすることによって、全体に水の流れを行き渡らせることができて蛇口直結型の水処理器であってサイズに制限があっても活性炭による塩素などを除去する性能の高いものを得ることができる。
【0035】
また、金属イオンを担持したゼオライトの平均粒径を2〜20μmとすることで、バインダーで十分に固化することができ、且つ単位重量あたりの表面積も大きくなるので抗菌性能の高いフィルターとすることができる。
【0036】
金属イオンを担持したゼオライトを含水タイプのものとすることで金属イオンを担持したゼオライトが配合時に吸水による発熱を生じず、バインダーで固化するうえで好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1は本発明の水処理用フィルターの斜視図であり、図2は水処理用フィルターに濾過層およびキャップを取り付けたところの斜視図、図3は図2におけるA−A断面図、図4は水処理器の断面図である。
【0038】
本発明の水処理用フィルター1は、例えば図4に示すような蛇口直結型の水処理器Sに装着使用するものである。形状は例えば図1に示すように中心軸位置孔を有する円筒形状である。
【0039】
水処理用フィルター1は例えば次のような構成にて水処理器内に配置して用いられる。図2に示すものでは45〜50mmφ×90〜100mm程度のサイズを有する円筒形の水処理用フィルター1の外周面に、濾過層2を被覆配置し、その頂面及び底面部分には不透水性のキャップ3、4が取り付けられており、前記水処理用フィルター1との間を水が通らないように水密性をもって接続されている。また、水処理用フィルター1と底面のキャップ3には中心軸位置に孔を有しており、水処理用フィルター1の円筒の中心軸位置に10〜15mmφ程度の孔5を有した構造となっている。
【0040】
この水処理用フィルター1を水処理器Sに取り付けたときの水の流れは、濾過層2側から、水を取り込み、濾過層2で大きなごみなどの汚れを取った後、水処理用フィルター1を通過して残留塩素や有機物を除去し、孔5内に湧き出して水処理器Sの浄水口Jから出されるという行程で処理が行われる。
【0041】
一般的に水処理器Sには、浄水口Jと原水口Gを備えており、水の流れを矢印で示すように水道Wから供給された水を切替レバーCなどによって、処理を行う経路へ水を誘導して処理した水を出す場合と、何も処理せずそのまま通過させて原水で出す場合を切りかえることができるようになっている。そして、処理する場合には、前記のような行程で処理されることになる。
【0042】
本発明の水処理用フィルター1は、活性炭および金属イオンを担持したゼオライトをバインダーで固化した多孔質成形体であり、バインダーとしては低メルトインデックスの高分子量多孔質ポリマーを用いる。
【0043】
それぞれの割合としては水処理用フィルター中のバインダーの割合が5〜40質量%で、活性炭の割合が60〜90質量%で、金属イオンを担持したゼオライトの割合が2〜15質量%の範囲とする。また、フィルター本体の密度を0.4〜0.65g/cm3でとすることにより処理できる水の流量を十分確保することができる。
【0044】
ここで、低メルトインデックスのバインダーとしては、水処理用フィルターとしての用途として問題なく使用できるために無毒性であることが必要になるとともに、多孔質体を形成しやすいポリマーであることが好ましい。具体的には分子量が数十万〜数百万程度の超高分子量ポリエチレンで原料の粒子径が約100μm、カサ密度0.3g/cm3未満の樹脂であって、メルトインデックスが、1.1〜2.3g/10min(ASTM D1238、190℃、15kg Load)であるものが挙げられる。
【0045】
このバインダーを用いてフィルター成形体を製造することで、浄水成分である活性炭や抗菌成分である金属イオンを担持したゼオライトを成形固化してブロック化するので、水みちができて一定箇所に集中して水が流れるといった問題が解消され、フィルター全体を均等に用いることができる。また、ポリマーで活性炭やゼオライトを成形固化する場合に、溶融したポリマーが流れて活性炭やゼオライト表面のかなりの部分を覆ってしまって、活性炭やゼオライトの含有量の割には浄水性能や抗菌性能が低くなってしまうといったことがあるが、本発明で使用するバインダーでは、フィルター成形時に溶融したポリマーが適度な状態で流れるため活性炭やゼオライトの表面を覆い過ぎることなく十分に性能を発揮することができる。
【0046】
バインダーのメルトインデックスが、1.1g/10min(ASTM D1238、190℃、15kg Load)未満であると、フィルター成形時の流れが悪く、活性炭を固めるためには、バインダーの量を多くしなければならない。そうするとフィルター内に占める活性炭の量が少なくなるので、水を処理する性能は低くなってしまう。
【0047】
また、バインダーのメルトインデックスが、2.3g/10min(ASTM D1238、190℃、15kg Load)をこえると、フィルター成形時に溶融したポリマーが活性炭の細孔部やゼオライトを覆ってしまい、性能が十分に発揮できなくなるので好ましくない。
【0048】
バインダーが上記のようなメルトインデックスを有するポリマーであることによって高温において適度な粘度であるがゆえ、フィルター成形時に溶融したポリマーが活性炭の細孔部を覆ってしまうことがない。また多孔質体を形成することは活性炭ブロックのフィルター機能を損なわない有効なバインダーである。
【0049】
バインダーを混合する割合は10〜40重量%の範囲が好ましく、かつフィルター本体2の密度が0.4〜0.65g/cm3を有したものとすることによって、例えば、蛇口直結型水処理器では、通常必要とされる動水圧0.1MPaにて2.0L/minを上回る流量を確保することが可能である。
【0050】
活性炭に対するバインダーの配合量が10重量%未満であると活性炭を固化することが困難となり、40重量%を超えるとバインダーが活性炭の表面を覆う部分が多くなりすぎて、活性炭を有効に使用することができなくなるので好ましくない。
【0051】
また、固化後の水処理用フィルター1の密度が0.4g/cm3未満になると剛性が低くなってしまい、フィルターが脆く崩れやすいので好ましくない。0.65g/cm3を超えると硬め過ぎとなって水処理用フィルター1の空隙がすくなく十分な流量を得ることができなくなるので好ましくない。
【0052】
また、本発明では活性炭とともに金属イオンを担持したゼオライトを用いている。金属イオンによってフィルターに抗菌性能を付与することができるが、金属イオンをゼオライトに担持させたものをもちいることで金属イオンは一度に大量に流出せず、流出量を調整することができる。よって、活性炭とともに金属イオンが担持されたゼオライトを入れることによって水処理用フィルター1の抗菌性能も長期にわたって継続維持することができる。
【0053】
抗菌性能のない活性炭のみをバインダーで成形したフィルターの場合は、長期の使用に伴ってフィルター内に雑菌が発生してしまうことがあり、フィルターから流れ出した雑菌を中空糸膜などで取り除くといった二段階の濾過が必要であった。これに対し金属イオンを担持したゼオライトを活性炭に加えることによってフィルターの抗菌性が持続し、雑菌の発生が抑えられるので、二段階の濾過を必要とせず中空糸膜による濾過の過程を省くことができる。
【0054】
本発明では金属イオンを担持したゼオライトを抗菌剤として用いているが、ゼオライトとしては、モルデナイト、クリノプチロライト、チャバサイト、合成モルデナイト、ハイシリカゼオライトなどを挙げることができる。そしてこれらゼオライトに対して抗菌性を有する金属イオンを担持させることにより、抗菌性能が付与される。金属イオンの担持はゼオライトと抗菌性金属イオンとのイオン交換により行われ、金属イオンはゼオライト中に安定に担持される。抗菌性を有する金属イオンとしては、銀、銅、亜鉛、水銀、錫、鉛、ビスマス、カドミウム、クロムなどを挙げることができるが、好ましくは銀が使用される。
【0055】
また本発明で用いる金属イオンを担持したゼオライトは、平均粒径が2〜20μmの範囲内で含水タイプを用いることが好ましい。平均粒径が2μm未満であるとバインダーで固化しフィルター内に保持することが困難となり、20μmを超えると粒径が大きくて単位重量あたりの表面積が少なくなり抗菌性能の効率が悪くなってしまうので好ましくない。そして無水であると配合時に吸水して発熱し、バインダーを融かしてしまうといった問題にもつながるので好ましくない。
【0056】
金属イオンを担持したゼオライトは2〜10質量%の割合で配合され、金属イオンの担持される量は通常2〜3質量%程度である。金属イオンを担持したゼオライトが2質量%未満であると十分な抗菌性を得ることができず、フィルター中の雑菌が早期に増殖してしまい、15質量%を超えると金属イオンの溶出量が過剰となり好ましくない。
【0057】
本発明で用いられる活性炭は、特に限定するものではないが好ましい形態としては60メッシュパス以上のものを用いる。60メッシュパス未満であると、バインダーで活性炭を固めることが困難であり、フィルター本体2中の空隙が大きくなりすぎて活性炭に接触することなくフィルター本体2を通過してしまう水が多くなるのでにごりや塩素などを除去する性能が悪くなり好ましくない。
【0058】
以上フィルター本体2に用いられるバインダーと活性炭における更に好ましい形態として、粒子の大きいもの及び粒子の小さいものの2種類の活性炭を用い、粒径の大きい第1の活性炭としては60−100メッシュパスの粒状活性炭を用い、粒径の小さい第2の活性炭としては100メッシュパスの粉末活性炭を用いる。そして粒径の大きい活性炭と粒径の小さい活性炭を1:1から4:1の割合で混合し、このような活性炭を低メルトインデックスのバインダーで固化する。
【0059】
このような2種類の粒径分布を有する活性炭を前記のような比率で混ぜて使用することによって、60−100メッシュパスの粒状活性炭同士の隙間に適当に100メッシュパスの粉末状活性炭が存在し、塩素や濁りなどの除去性能が長期に渡って得られるという能力を兼ね備えたフィルター本体2を得ることができる。
【0060】
ここで上記の第1の活性炭として60メッシュパス未満のものを用いると、やはりバインダーで活性炭を固めることが困難になることと、フィルター本体2中の空隙が大きくなりすぎて活性炭に接触することなくフィルター本体2を通過してしまう水が多くなるので水の塩素などの除去性能が悪くなるので好ましくない。
【0061】
そして第2の活性炭として100メッシュパスよりも細かい、例えば325メッシュパス以上の活性炭を用いるとフィルター本体2の空隙部分が少なくなってしまい十分な流量が得られなくなるので好ましくない。
【0062】
濾過層2は、これを配置することで1次フィルターの役割を果たし、固化した活性炭ブロックの早期目詰まりを防止することができる。仮に球形のもので表現するとサイズが5μmφ相当以上のものを除去することができればよく、不織布、織布などの繊維材などを用いることができる。
【0063】
なお、フィルター1には上記のような活性炭やゼオライト以外にも、水の濁りや塩素などを除去できるような添加物の他フィルター中の空隙を確保して流量を増やすために短繊維等を別途混入してもよい。
【0064】
水処理用フィルター1の作製方法としては、次のような方法が挙げられる。所定量の活性炭と金属イオンを担持したゼオライトとバインダーを混合し、金型に充填後200℃前後の温度にて所定時間加熱、圧縮し、冷却することによってフィルター本体2を作製することができる。前記の加熱後に圧縮量を調整することによって、フィルター本体2の密度を0.4〜0.65g/cm3の範囲内に調整することができる。
【0065】
以上のような、2種類の所定の粒径を有する活性炭を所定の比率で混合し、しかもバインダーのメルトインデックスも前記のような所定の範囲のものを用いて更に金属イオンを担持したゼオライトを混合することによって、活性炭により水の塩素や汚れなどを除去することができるとともに抗菌性能を有しており、バインダーが活性炭やゼオライトを覆いすぎることがないので従来のものと比べるとフィルター内に含有する活性炭やゼオライトの量が同じであっても、より高い性能を発揮する水処理用フィルターとすることができる。
【0066】
次に本発明の範囲に含まれる実施例となるフィルターと本発明の範囲から外れる比較例となるフィルターを作成して、それぞれのフィルター内における微生物の発生状況を測定比較した。
【実施例1】
【0067】
作製したフィルターは、円筒形で頂面と底面の中央を貫く孔を有しており、サイズがφ45mm(外径)×φ11mm(孔径)×35mm(高さ)である。バインダーとしてはTicona Gmbh製、GUR2105を18質量%用い、それに60−100メッシュパス粒状活性炭及び100メッシュパス粉末活性炭を3対1の割合で混合したものを77質量%、抗菌成分を5質量%配合、混合したものを、所定の金型にて200℃で1時間加熱後冷却し、圧縮量を調整し、固化した状態で密度が0.55g/cmとなるようにしフィルターを成形した。そのフィルターの円筒側面を不織布で巻くと共に頂面と底面に不透水性のABS樹脂からなるキャップを被せた。底面のキャップには排水孔を設けたものを用いて、通水条件として流速:3.0L/min、水圧:0.1MPa、使用水:水道水にて抗菌性の評価を行った。評価方法としてはフィルターをポリエチレンからなるφ60mm×50mm高さの円筒容器内に25℃で24時間静置放置したのちに容器内に存在する菌数を計測することで評価を行った。菌数の測定は円筒容器内の水を1ml採取し、溶液中の菌数を測定した。容器内の水を全量排出し、新たにフレッシュな水道水を満たした後、同様の操作を行った。この水入れ替え作業を13回実施した。
【0068】
なお、抗菌成分としては抗菌成分を配合しなかったフィルターの中で未通水のものを1−a、900L通水後のものを1−bとし、抗菌成分として銀活性炭(三菱化学カルゴン社製、CE)を5質量%配合したフィルターの中で未通水のものを2−a、900L通水後のものを2−bとし、銀イオンを担持したゼオライト(シナネンゼオミック社製、ゼオミックLG10T−N)を5質量%配合したフィルターの中で未通水のものを3−a、900L通水後のものを3−bとした。配合した抗菌成分の種類を表1にまとめ、菌数の測定結果を表2に示す。また、菌数の測定と共に銀イオンの溶出量の測定も行った。それを表3に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
表2からわかるように抗菌成分を含有しない1−aが水入替え回数5回以降は菌が検出されているのと比べて銀イオンを担持したゼオライトを含有するフィルターで通水していない3−bでは水入替え回数が13回に到達しても菌は検出されていない。また、抗菌成分として銀活性炭を配合したフィルターで通水していない2−aは1−aと比較すると菌の検出量が少なく抗菌性能は認められるが、本発明の3−aと比べると水入替えが10回以降に菌の発生が認められ、抗菌性能が低いということができる。900L通水後のフィルターで比較しても全般的に未通水のフィルターと比べると菌の発生が多くなっているが、その中でも本発明の3−bの菌発生量は少なく抗菌性能の高さが確認できた。
【0073】
表3ではそれぞれの銀の溶出量を比較しているが、通水していない場合と900L通水後のいずれを比較しても3−a、3−bは水入替え回数が増えても銀イオンの溶出が持続していることがわかった。これは表2の結果を裏付けるものといえる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
汚染物質を除去する水処理器に用いる浄水フィルターであり、より詳しくは、浄水成分をポリマーからなるバインダーで固めることで効率よく汚染物質を除去することができ、水処理能力や抗菌性能に優れた水処理用フィルターに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の水処理用フィルターの斜視図である。
【図2】水処理用フィルターに濾過層およびキャップを取り付けたところの斜視図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】水処理器の断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 水処理用フィルター
2 濾過層
3 キャップ
4 キャップ
5 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水から汚染物質を除去するための水処理用フィルターにおいて、活性炭とともに抗菌性を有する金属イオンを担持したゼオライトを高分子量多孔質ポリマーからなるバインダーで固化したことを特徴とする水処理用フィルター。
【請求項2】
バインダーとしてメルトインデックスが、1.1〜2.3g/10min(ASTM D1238、190℃、15kg Load)の高分子量多孔質ポリマーを使用する請求項1記載の水処理用フィルター。
【請求項3】
水処理用フィルター中のバインダーの割合が5〜40質量%で、活性炭の割合が60〜90質量%で、金属イオンを担持したゼオライトの割合が2〜15質量%であり、かつフィルター本体の密度が0.4〜0.65g/cm3である請求項1〜2記載の水処理用フィルター。
【請求項4】
活性炭は粒径の異なる少なくとも2種類の活性炭を併用した請求項1〜3記載の水処理用フィルター。
【請求項5】
活性炭として、60−100メッシュパス粒状活性炭及び100メッシュパス粉末活性炭を1:1〜4:1の割合で混合したものを用いた請求項1〜4記載の水処理用フィルター。
【請求項6】
水道の蛇口に直結するタイプの水処理器に用いるフィルターである請求項1〜5記載の水処理用フィルター。
【請求項7】
金属イオンを担持したゼオライトの平均粒径が2〜20μmである請求項1〜6記載の水処理用フィルター。
【請求項8】
金属イオンを担持したゼオライトは含水タイプを用いている請求項1〜7記載の水処理用フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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