説明

水処理装置

【課題】微生物固定化担体を用いた水処理装置において、担体の磨耗を抑制して充分な水処理能力を確保しつつ、槽内の円滑な撹拌が可能な水処理装置を提供する。
【解決手段】嫌気槽12には、槽内に被処理水の水流(噴流)を形成して、被処理水を撹拌させる撹拌装置18が備えられている。この撹拌装置18は水流ポンプから構成され、嫌気槽12内の被処理水を、吸引口18aから吸引して槽内底部の排出口18bから排出することによって、嫌気槽12内に被処理水の水流を作り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水等の窒素を除去する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窒素成分を含む汚水を浄化する際には、有機物分解、硝化、脱窒などの各工程を経ることによって、汚水中に含まれる有機物および窒素成分を低減させている。例えば、有機物分解工程では、好気性微生物の作用によって、有機物を酸化分解させる。また、硝化工程では、好気性微生物(硝化菌)の作用によってアンモニア性窒素を硝酸性窒素に酸化する。さらに、脱窒工程では、嫌気性微生物によって、硝酸性窒素から窒素成分を窒素ガスとして除去することで脱窒が行われる。
【0003】
こうした水処理装置の各工程において、各処理槽内には処理に応じた種類の微生物を適切に存在させておく必要があるが、従来は全工程において活性汚泥を懸濁状態で用いて処理を行い、処理のあと沈殿槽にて沈澱分離した活性汚泥を再び処理工程の最初に返送して用いた。そのため活性汚泥中の微生物は、全ての処理に応じた種類の微生物が混合状態になっているため、各処理における処理効率が悪くなる。そして、処理を行う汚水の流量が多くなると、汚水の流量に対応して多くの活性汚泥が必要となり、処理槽が大型化してしまう。また、活性汚泥の返送操作が必要であり運転管理が繁雑になるという課題があった。
【0004】
こうした課題を解決するために、担体を処理槽内に投入し、この担体に微生物を付着させた微生物固定化担体(以下、単に担体と称することもある)を用いることによって、処理槽内に高密度に微生物を存在させることを可能とし、小さな処理槽でも多くの汚水を処理することが可能な水処理装置が知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−154393号公報
【特許文献2】特許第419702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、窒素除去を行う水処理装置において、脱窒を行う嫌気槽は槽内を嫌気状態に保ちつつ槽内を撹拌する必要がある。例えば、特許文献1に記載された水処理装置では、嫌気槽にプロペラ式の撹拌装置を備え、槽内の被処理水をプロペラの回転によって撹拌している。
しかしながら、微生物固定化担体を用いた水処理装置では、プロペラ式の撹拌装置を用いて槽内を撹拌すると、担体が回転するプロペラと接触し、担体が磨耗する。これは、長期間の運転において顕著になる。微生物固定化担体が磨耗すると、固定される微生物量が減少するため水処理能力が低下し、また磨耗した担体が槽外に流出するという懸念もある。
【0007】
特許文献2に記載された低速担体浮遊機では、反応槽を撹拌するための羽根の回転を毎分3〜10回転に制限することによって、担体の磨耗量を低減している。
しかしながら、このような低速担体浮遊機でも、槽内の被処理水をプロペラの回転によって撹拌するために、回転速度を制限したとしても担体がプロペラに当接しつつ撹拌されることに変わりはなく、担体の損耗は免れない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、微生物固定化担体を用いた窒素を除去する水処理装置において、担体の磨耗を抑制して充分な水処理能力を確保しつつ、槽内の円滑な撹拌が可能な水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は次のような水処理装置を提供した。
すなわち、本発明の水処理装置は、有機物分解および硝化を行う好気槽と、脱窒を行う嫌気槽とからなる複数の水処理槽を有し、該水処理槽どうしを互いに直列に接続して、前記水処理槽に被処理水を流して該被処理水に含まれる有機物および窒素を除去する水処理装置であって、
それぞれの前記水処理槽には、微生物を固定化するための担体が投入されるとともに、前記担体が前記水処理槽から流出することを防止する担体流出防止手段が備えられ、前記好気槽には曝気装置が備えられ、前記嫌気槽には前記被処理水を噴出させることで前記嫌気槽の槽内に水流を形成して撹拌する撹拌装置が備えられたことを特徴とする。
【0010】
前記撹拌装置による前記被処理水の吸引は、前記担体が投入された側とは前記担体流出防止手段を挟んで反対の流出側で行われることを特徴とする。
また、前記好気槽は、有機物の分解を行う有機物分解槽と、硝化を行う硝化槽とから構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水処理装置によれば、担体に微生物が固定化することによって、水処理槽に高密度に微生物を存在させることができ、小さな槽容量でも大きな水処理処理能力を得ることが可能になる。
【0012】
そして、水処理槽、特に嫌気槽内の撹拌のために、例えば水流ポンプなどを用いて嫌気槽内に被処理水の水流を形成して撹拌する撹拌装置を備えることによって、従来のプロペラ式の撹拌装置で問題のあった担体と回転するプロペラとの接触による担体の磨耗や、損傷、粉砕による槽外への流出といった不具合が発生する懸念がない。
よって、長期間に渡って担体が磨耗することなく、高い処理効率で被処理水の水処理を安定して行うことが可能になる。また、担体の磨耗を抑制することで、担体の寿命を延ばし、水処理のランニングコストの低減にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の水処理装置の一例を示す説明図である。
【図2】本発明の水処理装置の別な一例を示す説明図である。
【図3】本発明の水処理装置の別な一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の水処理装置の実施形態について説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の水処理装置の一例を示す説明図である。本発明の水処理装置10は、被処理水の流入側から順に、好気槽(水処理槽)11、嫌気槽(水処理槽)12が直列に配されている。有機物やアンモニア性窒素を含んだ被処理水(汚水)は、好気槽11から嫌気槽12に向けて順に流され、各槽の間は例えばパイプなどで連結されていればよい。
【0016】
好気槽11では、有機物分解や硝化が行われる。好気状態において好気性微生物によって、被処理水中の有機物を酸化して水と二酸化炭素に分解する。また、好気状態において被処理水に含まれたアンモニア性窒素を、硝化菌によって硝化して、硝酸性窒素にする。
原水の有機物濃度が高い場合には、有機物酸化槽を前段に、硝化槽を後段に、と分割して繋ぎ前段で有機物を充分に処理した後で硝化を行うこともある。
【0017】
こうした好気槽11には、槽内を好気状態にするために、曝気装置21が備えられている。この曝気装置21によって好気槽11の槽内に貯留されている被処理水に空気を送り込み、好気性微生物の活動を活性化するとともに、有機物の酸化や硝化に必要な酸素を供給する。また、曝気による気泡流には内部の攪拌を行う役割もある。
【0018】
好気槽11には、第1の担体(微生物固定化担体)22が投入されている。この第1の担体22は、基材に有機物を分解する好気性微生物や、アンモニア性窒素を硝化させる硝化菌が担持したものである。担体は、あらかじめ微生物を担持させた担体を用いてもよし、微生物が担持していない担体を活性汚泥とともに投入し連続運転することで担体に微生物を担持させてもよい。担体に担持した、好気性の有機物分解菌や硝化菌は、曝気装置21によって槽内に供給された空気中の酸素を利用して、有機物の分解やアンモニア性窒素の硝化を行う。
【0019】
このような第1の担体22を用いることによって、好気槽11に高密度に好気性微生物や硝化菌を存在させることができ、小さな槽容量でも大きな処理能力を得ることが可能になる。また、第1の担体22は、曝気による気泡流によって攪拌されるので、攪拌翼によるような磨耗は無い。
【0020】
第1の担体22は、例えば、全体が親水性のポリウレタンから形成された基材からなり表面及び内部に細かい空間を多数有する吸水性多孔質樹脂のようなものであればよい。その大きさは、1辺20mmの立方体より小さい物とし、望ましくは1辺10mmの立方体程度とする。その投入量は容積比で10〜40%とし、生物固定量と担体流動性の観点から望ましくは20〜30%とする。
【0021】
また、好気槽(水処理槽)11には、被処理水を槽外に流出させる流出口の近傍に、担体流出防止手段23が形成されている。この担体流出防止手段23は、例えば、第1の担体22の外形寸法よりも小さい開口の網部材(セパレータ)から構成されていれば良い。
こうした担体流出防止手段23によって、第1の担体22が好気槽11の外部に流出することを防止する。
【0022】
好気槽11を経て、アンモニア性窒素が硝化によって低減あるいは除去された被処理水は、好気槽11の下流側で直列に配された嫌気槽(水処理槽)12に流入する。この嫌気槽12では、嫌気状態において嫌気性微生物によって、被処理水に含まれる硝酸性窒素を脱窒し、窒素成分を窒素ガスとして放出する。この脱窒反応の際に、水素供与体として被処理水にメタノールが添加される。このため、嫌気槽12には、メタノール添加装置16が設置されている。
【0023】
嫌気槽12には、第2の担体(微生物固定化担体)24が投入されている。第2の担体24は、基材に脱窒反応を促進させる嫌気性微生物が担持したものである。担体は、あらかじめ微生物を担持させた担体を用いてもよく、微生物が担持していない担体を活性汚泥とともに投入し連続運転することで担体に微生物を担持させてもよい。
第2の担体24は、例えば、全体が親水性のポリウレタンから形成された基材からなり表面及び内部に細かい空間を多数有する吸水性多孔質樹脂のようなものであればよい。その大きさは、1辺20mmの立方体より小さい物とし、望ましくは1辺10mmの立方体程度とする。その投入量は容積比で10〜40%とし、生物固定量と担体流動性の観点から望ましくは20〜30%とする。
【0024】
また、嫌気槽(水処理槽)12には、被処理水を槽外に流出させる流出口の近傍に、担体流出防止手段17が形成されている。この担体流出防止手段17は、例えば、第2の担体24の外形寸法よりも小さい開口の網部材(セパレータ)から構成されていれば良い。こうした担体流出防止手段17によって、第2の担体24が嫌気槽12の外部に流出することを防止する。
【0025】
こうした嫌気槽12は、槽内を嫌気状態に保つために密閉されている。そして、槽内に被処理水の水流(噴流)を形成して、被処理水を撹拌させる撹拌装置18が備えられている。この撹拌装置18は水流ポンプから構成され、嫌気槽12内の被処理水を、吸引口18aから吸引して槽内底部の排出口18bから排出することによって、嫌気槽12内に被処理水の水流を作り出す。これによって、嫌気槽12内の被処理水の循環を促し、第2の担体24と被処理水との接触を促進し、嫌気槽12の水処理効率を高めることができる。
【0026】
このように嫌気槽12内の撹拌のために、水流ポンプなどからなる撹拌装置18を用いて、嫌気槽12内に被処理水の水流を形成して撹拌することによって、例えば、従来のプロペラ式の撹拌装置では問題のあった、担体と回転するプロペラとの接触による担体の短期間の磨耗や、損傷、粉砕による槽外への流出といった不具合が発生する懸念がない。
【0027】
よって、長期間に渡って、第2の担体24が磨耗することなく、高い処理効率で被処理水の水処理を安定して行うことが可能になる。また、第2の担体24の磨耗を抑制することで、担体の寿命を延ばし、水処理のランニングコストの低減にも寄与する。
【0028】
また、撹拌装置18の吸引口18aは、嫌気槽(水処理槽)12において第2の担体24が投入された側とは担体流出防止手段17を挟んで反対の流出側に形成されている。これによって、吸引口18aに第2の担体24が吸着され、水流の形成が阻害される懸念が無い。
【0029】
図2は、本発明の水処理装置の別な構成例を示す説明図である。この実施形態における水処理装置30では、被処理水の流入側から順に、嫌気槽(水処理槽)31、好気槽(水処理槽)32が直列に配され、好気槽32の流出側から嫌気槽31の流入側に向けて、被処理水を還流させる送液手段33が形成されている。各槽に投入する担体の条件は図1の場合と同様である。
【0030】
送液手段33は、例えば水流ポンプと配管から形成されていればよく、好気槽32から流出した被処理水の一部を、好ましくは原水流入量の2倍以上を上流側にある嫌気槽31に再び流入させるものである。こうした送液手段33で硝化された被処理水を還流させて嫌気槽31において原水有機物中の水素成分を用いて脱窒する。
【0031】
そして、こうした水処理装置30においても、嫌気槽31の槽内に被処理水の水流を形成して撹拌させる撹拌装置18を備えることによって、第2の担体24と被処理水との接触を高めて水処理能力を良好に保つとともに、第2の担体24の磨耗を抑制することで、担体の寿命を延ばし、水処理のランニングコストの低減に寄与する。
【0032】
図3は、本発明の水処理装置の別な構成例を示す説明図である。この実施形態における水処理装置40では、被処理水が最初に流入する好気槽42から順に、嫌気槽(水処理槽)41、好気槽(水処理槽)42が直列に配され、これら2つの槽で1つの浄化ユニット43を構成する。各槽に投入する担体の条件は図1の場合と同様である。
【0033】
こうした浄化ユニット43,43…を複数設置し、各段の浄化ユニット43に被処理水を順次流入させる。なお、処理前の被処理水(原水)は、最初の好気槽42と各段の浄化ユニット43の嫌気槽41とに供給される。各浄化ユニット43の嫌気槽41では、前段から流入する硝化性窒素を、流入する原水有機物中の水素成分を用いて脱窒する。
【0034】
そして、このような実施形態においても、それぞれの嫌気槽41の槽内に被処理水の水流を形成して撹拌させる撹拌装置18を形成することによって、第2の担体24と被処理水との接触を高めて水処理能力を良好に保つとともに、第2の担体24の磨耗を抑制することで、第2の担体24の寿命を延ばし、水処理のランニングコストの低減に寄与する。
【0035】
なお、上述した実施形態の好気槽において、有機物を分解させる有機物分解槽と、アンモニア性窒素を硝化させる硝化槽とを個別に形成して直列に接続するような構成であってもよい。好気槽として、有機物分解槽と硝化槽とを独立して構成することによって、被処理水の有機物分解やアンモニア性窒素硝化といった処理能力を一層高めることが可能になる。
また、上述した各実施形態では、返送汚泥ラインは設置しなくても良い。
【符号の説明】
【0036】
10…水処理装置、11、32、42…好気槽(水処理槽)、12、31、41…嫌気槽(水処理槽)、17…担体流出防止手段、18…撹拌装置、21…曝気装置、22…第1の担体(担体)、24…第2の担体(担体)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物分解および硝化を行う好気槽と、脱窒を行う嫌気槽とからなる複数の水処理槽を有し、該水処理槽どうしを互いに直列に接続して、前記水処理槽に被処理水を流して該被処理水に含まれる有機物および窒素を除去する水処理装置であって、
それぞれの前記水処理槽には、微生物を固定化するための担体が投入されるとともに、前記担体が前記水処理槽から流出することを防止する担体流出防止手段が備えられ、
前記好気槽には、曝気装置が備えられ、
前記嫌気槽には、前記被処理水を噴出させることで前記嫌気槽の槽内に水流を形成して撹拌する撹拌装置が備えられたことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記撹拌装置による前記被処理水の吸引は、前記担体が投入された側とは前記担体流出防止手段を挟んで反対の流出側で行われることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
前記好気槽は、有機物の分解を行う有機物分解槽と、硝化を行う硝化槽とから構成されることを特徴とする請求項1または2記載の水処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−125702(P2012−125702A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279653(P2010−279653)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】