説明

水処理装置

【課題】脱窒反応におけるN2O蓄積量を推定し、推定されたN2O蓄積量に応じて、銅の添加量を適正化できる水処理装置を提供する。
【解決手段】生物学的硝化脱窒法を利用した水処理プロセスであって、生物反応槽におけるN2Oの蓄積量を推定するN2O濃度推定手段12と、銅イオンを蓄える銅蓄積手段10と、銅蓄積手段10に蓄えられた銅を生物反応槽に添加する銅注入ポンプ11と、N2O濃度推定手段12により推定されたN2O濃度値に基づいて、生物反応槽へ添加する銅の必要量を演算し、銅注入ポンプ11を制御する制御手段21を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市の上下水,産業排水,居住から排出される生活廃水を浄化する水処理装置に係り、特に、これらの水中に含有される含窒素酸化物を微生物によって分解する際に発生する温室効果ガスである亜酸化窒素量を抑制するのに好適な水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、閉鎖性水域における富栄養化対策として、窒素を除去する高度な下水処理プロセスの導入が進められている。このような下水処理プロセスでの窒素除去は、硝化工程と脱窒工程の組み合わせによって行われる。
【0003】
硝化工程は、ブロワにより酸素が供給されている好気槽で進行する。好気槽に流入した下水中のアンモニア性窒素(NH4−N)が、好気槽内の硝化菌により、亜硝酸性窒素(NO2−N)となり、さらに硝酸性窒素(NO3−N)に酸化される。
【0004】
脱窒工程は、無酸素槽で進行する。硝化工程で生成した亜硝酸性窒素(NO2−N)あるいは硝酸性窒素(NO3−N)は、嫌気槽に流入すると、脱窒菌により原水中の有機物をエネルギー源として窒素(N2)に還元される。窒素(N2)が、ガス態として大気に放出されることにより下水中の窒素成分が除去される。
【0005】
窒素を除去する実際の下水処理プロセスの一例として、循環式硝化脱窒法がある。循環式硝化脱窒法は、前段に無酸素槽を、後段に好気槽を配置し、NO3−N,NO2−Nを含む好気槽の硝化液を、前段の無酸素槽に送水して循環させることにより脱窒し、窒素を除去する。脱窒反応を十分に進行させるためには、好気槽で十分に硝化されていること、脱窒菌のエネルギー源である有機物が無酸素槽に十分存在していることが必要である。
【0006】
近年、地球の温暖化の問題がクローズアップされる中で、下水処理プロセスにおいて生成し、大気中へ放出される亜酸化窒素(N2O)ガスが問題となっている。亜酸化窒素(N2O)ガスは、二酸化炭素の310倍の温室効果があり、下水処理場全体の温室効果ガス排出量の10%に相当しているため、排出量削減の要求が高まっている。
【0007】
上述したように、硝化工程で生成されたNO2−NあるいはNO3−Nが無酸素槽に流入すると、脱窒菌によりN2に還元され、N2として大気中へ放出される。問題となるN2Oは、脱窒反応の中間生成物であり、通常は、N2OからN2ガスへと速やかに還元されるため、N2Oが反応の過程で蓄積し、大気中へ放出されることは少ない。しかし、N2OからN2ガスへの還元反応が何らかの要因により阻害されると、N2Oが反応の過程で蓄積し、N2Oガスとして大量に放出されることがある。
【0008】
これらの問題を解決するために、例えば[特許文献1]に記載の従来の技術では、微生物固定化担体に銅および銅化合物を担持させることにより、N2OをN2ガスへ還元する脱窒反応に関与するN2O還元酵素の活性を高め、N2Oを速やかにN2ガスへ還元してN2Oの蓄積を解消する方法が提案されている。この他に、同様な技術として、[特許文献2],[特許文献3]に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−8923号公報
【特許文献2】特開2004−73926号公報
【特許文献3】特開2003−311274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
2Oガスの放出量を抑制するためには、脱窒反応を促進し、N2Oの蓄積を解消することが必要である。[特許文献1]、に記載されている銅を担持させた微生物担体を使用する方法では、N2OからN2ガスへの還元する脱窒反応の活性が、銅の量に依存することから、銅の担持量が重要である。又、[特許文献2]や[特許文献3]に記載の従来の技術にも同様の問題がある。
【0011】
2Oの蓄積量に応じて、必要な銅の量は変化すると考えられ、担体を用いた方法では、担持させる銅の量をN2O蓄積量に応じて制御できない。そのため、例えば、N2O蓄積量が著しく増大した場合等では、N2Oの蓄積を解消するために必要な銅の量が不足する恐れがある。
【0012】
又、慢性的な銅の摂取環境は、他の微生物群への毒性が高い場合があり、例えば脱窒菌以外の硝化菌等の働きに悪影響を及ぼす恐れがある。又、脱窒反応を促進するために担体内に銅を過剰に担持させた場合には、排水基準で定められる銅の規制濃度3ppmを超える恐れがある。又、担体内の銅の担持量は、時間経過とともに減少するため、適切な時期に担体を交換し、銅を再充填することが必要であるが、交換時期を検知するための指標はないのが現状であり、長期的な性能の維持が困難になる恐れがある。又、[特許文献2]や[特許文献3]に記載の従来の技術にも同様の問題がある。
【0013】
本発明の目的は、脱窒反応におけるN2O蓄積量を推定し、推定されたN2O蓄積量に応じて、銅の添加量を適正化できる水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、生物学的硝化脱窒法を利用した水処理プロセスであって、生物反応槽におけるN2Oの蓄積量を推定するN2O濃度推定手段と、銅イオンを蓄える銅蓄積手段と、銅蓄積手段に蓄えられた銅を生物反応槽に添加する銅イオン注入ポンプと、N2O濃度推定手段により推定されたN2O濃度値に基づいて、生物反応槽へ添加する銅の必要量を演算し、銅イオン注入ポンプを制御する制御手段を備えたものである。
【0015】
又、N2O濃度推定手段として、N2Oガスセンサー,NO2計測センサー,NO3計測センサー,UVセンサー,ORPセンサーのうちの少なくとも1つを用いるものである。
【0016】
又、生物反応槽内の銅濃度を計測する銅濃度計測手段と、銅濃度計測手段の計測値が予め設定された値を超えた場合に、制御手段により銅注入ポンプを停止させるものである。
【0017】
又、銅イオンを蓄える銅蓄積手段と、銅蓄積手段に蓄えられた銅を生物反応槽に添加する銅イオン注入ポンプと、生物反応槽内に設置された酸化還元電位計測手段と、酸化還元電位計測手段の計測値に基づいて、銅イオン注入ポンプを制御する制御手段を備えたものである。
【0018】
又、生物反応槽へ流入する被処理水中の有機物濃度を計測する有機物計測手段と、計測された有機物濃度値と酸化還元電位値に基づいて、有機物濃度が設定値を下回りかつ酸化還元電位値が設定値を上回った場合に、制御手段により銅イオン注入ポンプを稼動させるものである。
【0019】
又、生物反応槽におけるN2Oの蓄積量を推定するN2O濃度推定手段と、生物反応槽内に銅電極板を備え、電極板に通電するための定電流電解装置と、N2O濃度推定手段からの計測信号に基づいて定電流電解装置を制御する制御手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、生物反応槽のN2O蓄積量に応じて、銅の添加量を適正化でき、N2Oの還元反応を適正に活性化することで、下水処理工程で放出されるN2Oガスを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1の下水処理装置の構成図である。
【図2】本発明の実施例2の下水処理装置の構成図である。
【図3】本発明の実施例3の下水処理装置の構成図である。
【図4】実施例3の酸化還元値とN2O還元速度の相関図である。
【図5】本発明の実施例4の下水処理装置の構成図である。
【図6】本発明の実施例5の下水処理装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の各実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1を図1により説明する。図1は、実施例1の下水処理装置の構成図である。
【0024】
図1に示すように、複数の微生物群が生息している活性汚泥が投入されている生物反応槽が直列に接続されている。上流側から順に、無酸素槽1,好気槽2,好気槽3が直列に接続され、仕切り板で区分けされている。後段に好気槽2と好気槽3の2つの好気槽が配置され、隣接する生物反応槽はそれぞれ連通している。
【0025】
好気槽2の底部には散気装置6−1が、好気槽3の底部には散気装置6−2が設置されており、散気装置6−1および散気装置6−2はブロワ5と接続されている。好気槽3の上部には循環ポンプ4が取付けられた配管が設置され、好気槽3の硝化液の一部は、循環ポンプ4により無酸素槽1へ送水されるようになっている。
【0026】
無酸素槽1の上部には、N2O濃度推定手段12が設置され、N2O濃度推定手段12の検出値が制御手段21へフィードバックされる。銅蓄積手段10には、銅注入ポンプ11が接続され、銅注入ポンプ11は、制御手段21が接続されている。銅注入ポンプ11には、無酸素槽1内に銅イオンを注入するための配管が設けられている。
【0027】
無酸素槽1の上流側には、被処理水100を供給するための配管が設置され、好気槽3の下流側には図示しない沈殿池が設けられ、好気槽3から処理水101が沈殿池に送水されるようになっている。
【0028】
無酸素槽1へ供給された被処理水100は、仕切り板をオーバーフローして好気槽2に至り、好気槽2を経て好気槽3から処理水101として流出する。好気槽3の後段の沈殿池では、処理水101中の活性汚泥を固液分離する。分離された汚泥の一部は、図示していないポンプにより無酸素槽1へ返送汚泥として戻される。好気槽3の硝化液の一部も、循環ポンプ4により無酸素槽1へ送水される。
【0029】
ブロワ5より酸素を含有する気体、例えば空気が散気装置6−1,6−2を介して好気槽2,3へ送り込まれ、好気槽中に酸素を供給するのでDO濃度が増加する。DO濃度の増加に伴い、硝化菌の働きが活発化し、アンモニア性窒素が硝酸性窒素へ酸化される。循環ポンプ4により無酸素槽1へ送水された硝化液中に含まれる硝酸性窒素は、無酸素槽1内の脱窒菌の働きによって、窒素に還元され、窒素ガスとして大気中に放出される。
【0030】
脱窒反応によって無酸素槽1内に蓄積するN2O量は、N2O濃度推定手段12によって推定される。本実施例では、N2O濃度推定手段12として無酸素槽1内の液中に溶解しているN2O濃度を測定する方法を用いているが、この代わりに、無酸素槽1内の液中に溶解しているNO3,NO2を測定する方法,無酸素槽1及び好気槽2から放出されるN2Oガス濃度を測定する方法を用いてもよい。
【0031】
脱窒反応によりNO3は、NO2⇒N2O⇒N2へと還元されるため、NO3及びNO2は無酸素槽1の液中のN2Oと相関関係があり、N2O濃度を推定する指標とすることができる。同様に、無酸素槽1及び好気槽2,3の液中で生成したN2OがN2Oガスとして放出されるため、N2Oガスは、N2O濃度を推定する指標とすることができる。
【0032】
このように、N2O濃度推定手段12として、N2Oガスセンサー,NO2計測センサー,NO3計測センサー,UVセンサー,ORPセンサーのうちの少なくとも1つを用いることができる。
【0033】
2O濃度推定手段12の計測信号は、制御手段21に伝達され、制御手段21は、推定されたN2O量(濃度)に基づいて銅注入ポンプ11を制御する。これにより、銅蓄積手段10から無酸素槽1へ供給される銅の量を適正化する。ここで、銅蓄積手段10には、硫酸銅(II),塩化銅(II),ヨウ化銅(II)などの溶液を貯蔵可能なタンク等が適用できる。
【0034】
特に、脱窒工程終了時(無酸素槽1の下流側)に、被処理水のN2O濃度が高い場合は、無酸素槽1へ被処理水が流入すると、曝気によりN2Oのガス化が促進され、N2Oガスとなって放出される。そのため、無酸素槽1の下流側で被処理水のN2O濃度が低いことがN2Oガス放出抑制の観点からより重要であり、図1に示すように、無酸素槽1の下流側にN2O濃度推定手段12を設けることが望ましい。
【0035】
ここで、本実施例の銅の添加方法について説明する。制御手段21は、N2O濃度推定手段12の推定値Xが予め設定された目標値X1を超過した場合に、銅注入ポンプ11を起動させる。投入に必要な銅の量は、以下の手順(1)−(4)により求める。
【0036】
(1)目標値超過分ΔXを数1により算出する。
〔数1〕
ΔX=X−X1 …(1)
【0037】
(2)目標値超過分ΔXから、時間あたりの必要N2O還元増加速度Δμを数2により算出する。
〔数2〕
ΔX[mg/L]/滞留時間[h]=Δμ[mg/L/h] …(2)
【0038】
(3)N2O還元増加速度Δμと銅濃度αの関係式より、必要な銅濃度α1を数3により決定する。数3の中の銅濃度の関数f(α)は、比例式,指数式あるいは酵素反応の代表的な式であるMonod式あるいはMonod式の組み合わせとしてもよい。なお、α1は排水基準3ppm以下とすることが望ましい。
〔数3〕
α1=Δμ×f(α) …(3)
【0039】
(4)数3より求められた銅濃度α1に無酸素槽1の容積Lを掛けることにより、必要な銅注入量α2を数4により求める。
〔数4〕
α2=α1×L …(4)
【0040】
無酸素槽1に注入する銅注入量がα2になるまで、銅注入ポンプ11を運転し続け、銅注入量がα2以上になったところで、銅注入ポンプ11を停止して制御フローが終了する。
【0041】
このように、N2O濃度が増加した場合に、目標値以下となるような銅投入量α2を設定して制御することにより、銅投入量を適正化でき、脱窒反応を促進して、N2Oガス放出量を削減できる。
【実施例2】
【0042】
本発明の実施例2を図2により説明する。図2は実施例2の下水処理装置の構成図である。
【0043】
本実施例は、実施例1と同様に構成されているが、無酸素槽1内に銅濃度を計測する銅濃度計測手段16が設けられ、銅濃度計測手段16の計測信号は制御手段21にフィードバックされる。
【0044】
銅には排水基準が規定されており、排出基準は一律3ppmとなっている。本実施例では、排水基準を考慮した銅の添加制御方法について説明する。制御手段21は、N2O濃度計測手段12と銅濃度計測手段16の計測値を受信する。制御手段21は、N2O濃度計測手段12の計測値Xが予め設定した目標値X1以上で、銅注入ポンプ11を稼動している場合に、銅濃度計測手段18の計測値βが(3−β1)ppmを超えた場合は、銅注入ポンプ11を停止して無酸素槽1への銅供給を停止する。ここで、β1は設定値であり、β1は0.5ppm以上とすることが望ましい。
【0045】
本実施例によれば、無酸素槽1へ銅を添加する方法において、銅の排水基準値3ppm以下を満足するように制御して、銅添加量を適正化でき、脱窒反応を促進してN2O蓄積を解消できる。
【実施例3】
【0046】
本発明の実施例3を図3により説明する。図3は本実施例の下水処理装置の構成図である。
【0047】
本実施例は、実施例1と同様に構成されているが、本実施例ではN2O濃度計測手段12の代わりに、無酸素槽1内に酸化還元電位を計測するための銅濃度計測手段18を設け、銅濃度計測手段18の計測信号を制御手段21に送信している。
【0048】
微生物による脱窒反応は還元反応であるため、酸化還元電位は反応の進行に影響を与える。
【0049】
酸化還元電位が−150mV以下では脱窒反応が良好に進行するが、−100mV以上になると脱窒反応の進行が鈍化する。そのため、酸化還元電位が−100mV以上になり、脱窒反応の進行が鈍化した場合は、反応の中間体のN2Oが蓄積する可能性が高い。そのため、本実施例では、無酸素槽1内に設置した銅濃度計測手段18で計測した酸化還元電位を指標として、銅を添加する制御を行う。
【0050】
ここで、酸化還元電位の上昇が検知された場合に、銅を添加する制御方法について説明する。制御手段21は、銅濃度計測手段18の計測値を受信する。制御手段21は、銅濃度計測手段18の計測値Zが予め設定した上限値Z1以上で、銅注入ポンプ11を稼動して、無酸素槽1へ銅を供給する。上限値Z1は−200mV以上とすることが望ましい。なお、投入に必要な銅の量は、以下の手順により決定する。
(1)酸化還元電位値とN2O還元速度の関係から、図4に示すような定常時からの不足分Δμを算出する。
(2)実施例1と同様に、数3,数4により、必要な銅の量を算出する。
【0051】
本実施例によれば、無酸素槽内の酸化還元電位が上昇した場合に、無酸素槽1へ銅を添加する制御を行うことにより、脱窒反応を促進し、N2O蓄積を解消できる。
【実施例4】
【0052】
本発明の実施例4を図5により説明する。図5は本実施例の下水処理装置の構成図である。
【0053】
本実施例は、実施例3と同様に構成されているが、本実施例では、無酸素槽1へ供給する被処理水の有機物濃度を計測するための有機物濃度計測手段17が設けられている。有機物濃度計測手段17の計測信号は制御手段21に送られる。
【0054】
本実施例の制御方法について説明する。制御手段21は、有機物濃度計測手段17と銅濃度計測手段18の計測値を受信する。制御手段21は、有機物濃度計測手段17の計測値Yが予め設定した下限値Y1以下で、かつ銅濃度計測手段18の計測値Zが上限値Z1以上で銅注入ポンプ11を稼動して、無酸素槽1へ銅を供給する。投入に必要な銅の量は実施例3と同様にして算出する。
【0055】
本実施例によれば、被処理水の有機物濃度が低下し、無酸素槽内の酸化還元電位が上昇した場合に、無酸素槽へ銅を添加する制御により、脱窒反応を促進して、N2O蓄積を解消できる。
【実施例5】
【0056】
本発明の実施例5を図6により説明する。図6は本実施例の下水処理装置の構成図である。
【0057】
本実施例は、実施例1と同様に構成されているが、銅蓄積手段10および銅注入ポンプ11の代わりに、無酸素槽1内に陽極板13及び陰極板14で構成される電極板が設置されている。これらの陽極板13,陰極板14は、定電流電解装置15に接続され、定電流電解装置15は、制御手段21によって通電を制御される。
【0058】
陽極板13に用いられる金属材は銅である。電極表面は、微生物を固定化するため、固定化しやすい形状、即ち凹凸のある粗面、多孔質であることが好ましい。電極の形態は特に限定されず、棒状,板状,フィルム状等がある。一方、陰極板14に用いられる金属材は、特に限定されず、炭素,白金,鉄,銅,亜鉛,チタン,ニッケル,パラジウム等を用いることができる。電極の表面形状,形態についても特に限定されず、陽極と同等のものが適用される。
【0059】
制御手段21は、N2O濃度推定手段12により推定されたN2O濃度に基づいて定電流電解装置15の通電をON−OFF制御し、無酸素槽1への陽極板13からの銅の溶出量を制御する。陽極板13では、反応式1に示す酸化反応により、銅イオンが溶出する。
〔反応式1〕
Cu→Cu2++2e-
【0060】
本実施例によれば、N2O蓄積量に応じて、電解装置の通電量を制御し、銅極板からの銅の溶出量を制御することにより、脱窒反応を促進して、N2O蓄積を解消できる。
【符号の説明】
【0061】
1 無酸素槽
2,3 好気槽
4 循環ポンプ
5 ブロワ
6−1,6−2 散気装置
10 銅蓄積手段
11 銅注入ポンプ
12 N2O濃度推定手段
13 陽極板
14 陰極板
15 定電流電解装置
16 銅濃度計測手段
17 有機物濃度計測手段
18 銅濃度計測手段
21 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的硝化脱窒法を利用した水処理プロセスであって、生物反応槽内のN2O濃度を推定するN2O濃度推定手段と、銅イオンを蓄える銅蓄積手段と、前記銅蓄積手段に蓄えられた銅を生物反応槽に添加する銅イオン注入ポンプと、前記N2O濃度推定手段により推定されたN2O濃度値をフィードバックして前記生物反応槽へ添加する銅の必要量を演算し、該演算された銅の必要量を目標値として前記銅イオン注入ポンプを操作する制御手段を備えたことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記N2O濃度推定手段の計測値が予め設定された目標値を超えた場合に、前記銅注入手段を稼動させる請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記N2O濃度推定手段が、N2Oガスセンサー,NO2計測センサー,NO3計測センサー,UVセンサー,ORPセンサー,全窒素計の少なくとも1つで構成される請求項1に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記生物反応槽内の銅濃度を計測する銅濃度計測手段と、前記銅濃度計測手段の計測値が予め設定された値を超えた場合に、前記制御手段により銅注入ポンプを停止させる請求項1〜3のいずれかに記載の水処理装置。
【請求項5】
銅イオンを蓄える銅蓄積手段と、該銅蓄積手段に蓄えられた銅を生物反応槽に添加する銅イオン注入ポンプと、前記生物反応槽内に設置された酸化還元電位計測手段と、該酸化還元電位計測手段の計測値に基づいて、前記銅イオン注入ポンプを制御する制御手段を備えたことを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
前記生物反応槽へ流入する被処理水中の有機物濃度を計測する有機物計測手段と、該有機物計測手段により計測された有機物濃度値と前記酸化還元電位値に基づいて、有機物濃度が設定値を下回りかつ酸化還元電位値が設定値を上回った場合に、前記制御手段により銅イオン注入ポンプを稼動させる請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
生物学的硝化脱窒法を利用した水処理プロセスであって、生物反応槽におけるN2Oの蓄積量を推定するN2O濃度推定手段と、前記生物反応槽内に設けられた銅電極板と、該銅電極板に通電するための定電流電解装置と、前記N2O濃度推定手段からの計測信号に基づいて前記定電流電解装置を制御する制御手段を備えたことを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−5959(P2012−5959A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144390(P2010−144390)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】