説明

水分制御に使用するための硬化性厚膜ペースト組成物

【課題】水分の影響を受けやすいデバイスで使用することができる硬化性厚膜ゲッタ組成物および/または方法から形成される物品を提供すること。
【解決手段】本発明は、(a)乾燥剤材料を、(b)(1)硬化性有機ポリマー結合剤、(2)モノマー、および(3)光開始剤を含む有機媒体に分散させることを含む厚膜ゲッタ組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分制御に使用するための硬化性厚膜ゲッタペースト組成物を対象とする。一つの実施形態では、硬化性厚膜ゲッタペーストを水分の影響を受けやすい電子デバイス中の水分を制御するために使用する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、水分制御に使用するための厚膜ゲッタ組成物を述べる。多くの環境は、望ましくない水分に影響されやすく、これは、様々な電子デバイスの場合には特にそうである。
【0003】
望ましくない水分を制御する試みとして、ゲッタを使用するという発想が長年知られている。ゲッタは、微量の不純物を消費または不活性化するために、系または混合物に添加する物質である。
【0004】
水分の悪影響を最小限に抑制する一つの手法は、活性物質を酸素および水から隔てるために、水分の影響を受けやすいデバイスをバリヤ内に封入することを含む。この手法はある程度成功しているが、囲い内に捕捉された、または経時的に囲い中に拡散するそれら少量の水分によってさえ引き起こされる問題には必ずしも十分には対応していない。
【0005】
電子部品またはデバイス用の封止された囲い内の水分を制御するためにゲッタを使用することはよく知られている。これらの封止された囲いは、水分を含む外部環境汚染物質質から影響を受けやすい電子部品およびデバイスを保護するように設計されている。しかし、一部の電子デバイスは、水分の影響を非常に受けやすく、水分を非常に低レベルに制御する必要がある。同時に、これらの電子デバイスは、ゲッタ組成物が容易に塗布され、処理されるとともに、処理された組成物が所望の基板に十分に接着することを示すことを必要とする。本発明は、これらの要件を受け入れられる紫外線硬化性組成物を提供する。
【0006】
ゲッタに関連する従来技術の材料、および電子的用途でのその使用を以下に記載する。通常、ゲッタ材料は、スクリーン印刷可能な組成物ではなく、乾燥剤材料(すなわち、ゼオライト、シリカゲルなど)、および結合剤からなる。結合剤は、有機でも無機でもよい。以下に、従来技術の状況を例示する。
【0007】
Shoresは、乾燥剤特性を有するコーティングまたは接着剤を組み込んだ電子デバイスの封止された囲いを開示している(例えば、特許文献1参照)。コーティングまたは接着剤は、ポリマー中に分散されたプロトン化アルミノケイ酸塩粉末を含む。
【0008】
Shoresは、結合剤中に分散された粉末を含み、前記粉末が、ゼオライトモレキュラーシーブ、活性アルミナ、シリカゲル、アルカリ土類酸化物、および炭酸アルカリ金属からなる群から選択され、前記結合剤が、多孔質ガラスまたは多孔質セラミックの連続したマトリックスであり、前記粉末と結合剤の体積比が0.001〜2である、気密性電子デバイス中の乾燥剤として有用な材料の組成物を教示している(例えば、特許文献2参照)。結合剤としての使用のために開示されているガラスは、水蒸気が浸透する流路を作製することによって多孔質にしなければならない。これは、発泡剤の使用、形成中の水または他のガスの急速蒸発、有機金属ポリマーの急速分解、および低温または不完全の焼結など当該技術分野において知られている様々な技術によって行うことができる。
【0009】
MacRaeは、空間を隔てた第1電極および第2電極と、電極の一方に、例示的には2個の電極間で、接触させたパターン化された固体材料層とを含む多画素フラットパネルディスプレイ手段を開示している(例えば、特許文献3参照)。このパターン化した層(ウェブ)は、多数の開口を含み、少なくとも1個の開口が一定の画素と関連付けられている。開口には、特定の量の第2の材料、例示的にはフラットパネル電界放出ディスプレイの場合は蛍光体、または液晶ディスプレイの場合はカラーフィルタ材料が配置されている。ウェブは、スクリーン印刷による第2の材料の付着を容易にすることができる。ウェブは、2個の電極間のスペーサ構造の提供を容易にすることもでき、ゲッタまたは吸湿性材料を含むことができる。
【0010】
Fischerは、華氏150度超の温度で使用することができる乾燥剤でコーティングされた基板の作製方法を教示している。この乾燥剤は、粒子の形であり、粒子は細孔を有し、結合剤によって基板に接着される。コーティングされた基板は十分に柔軟であり、かつコーティングは基板への接着が十分であり、したがってコーティングされた基板を波の形状に形成することができる。コーティングされた基板中の乾燥剤粒子は、その元の吸着能力の少なくとも60%を有し、結合剤は良好な通気性を有する。前記方法は、(a)1つまたは複数の乾燥剤粒子、水系有機結合剤、乾燥剤粒子を懸濁状態に保つ助けをする懸濁剤、および少なくともその一部が乾燥剤粒子の細孔の少なくとも一部に入リ込む有機細孔清浄化剤を含む水性懸濁液を形成するステップと、(b)懸濁液を基板上に付着させるステップと、(c)付着した懸濁液の結合剤を、付着した乾燥剤粒子が基板に接着するように硬化させ、細孔清浄化剤の少なくとも一部が乾燥剤粒子の細孔を通り過ぎるようにさせて、結合剤が接着した乾燥剤粒子の細孔の少なくとも一部を閉塞するのを防止し、それによって華氏150度超の温度で使用することができ、十分な柔軟性を有し、基板への接着が十分であるコーティングを有し、したがって乾燥剤でコーティングされた基板を波の形状に形成することができる、乾燥剤でコーティングされた基板を形成するステップとを含み、コーティングされた基板中の乾燥剤粒子がその元の吸着能力の少なくとも60%を有し、結合剤が良好な通気性を有する(例えば、特許文献4参照)。
【0011】
Borosonらは、囲い内に封止された水分の影響を受けやすい電子デバイスを包囲する環境の乾燥方法を教示している(例えば、特許文献5参照)。Borosonは、以下の乾燥剤:アルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、モレキュラーシーブ、および活性アルミナは、「1000ppm未満の湿度レベルで非常に水分の影響を受けやすいデバイスには効果的に機能」しないとはっきりと述べている。
【0012】
Lazaridisは、柔軟な基板への接着を必要とするメンブランタッチスイッチ型回路での硬化性誘電性組成物の使用を開示している(例えば、特許文献6参照)。
【0013】
本発明の発明者らは、湿度レベルを約1000ppm未満に制御することができ、同時に約5秒という速い処理速度、および低い処理温度を可能にする厚膜ゲッタ組成物を作製することを希望した。
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,244,707号明細書
【特許文献2】米国特許第5,591,379号明細書
【特許文献3】米国特許第1,626,682号明細書
【特許文献4】米国特許第5,401,706号明細書
【特許文献5】米国特許第6,226,890号明細書
【特許文献6】米国特許第4,771,085号明細書
【特許文献7】国際公開第02/430098号パンフレット
【特許文献8】米国特許第3,380,831号明細書
【特許文献9】米国特許第4,615,560号明細書
【特許文献10】米国特許第2,760,863号明細書
【特許文献11】米国特許第2,850,445号明細書
【特許文献12】米国特許第2,875,047号明細書
【特許文献13】米国特許第3,097,096号明細書
【特許文献14】米国特許第3,074,974号明細書
【特許文献15】米国特許第3,097,097号明細書
【特許文献16】米国特許第3,145,104号明細書
【特許文献17】米国特許第3,427,161号明細書
【特許文献18】米国特許第3,479,185号明細書
【特許文献19】米国特許第3,549,367号明細書
【特許文献20】米国特許第4,162,162号明細書
【非特許文献1】D. W. Breck, Zeolite Molecular Sieves, John Wiley and Sons, New York, 1974
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、水分を制御する硬化性厚膜ゲッタ組成物、方法、およびしばしば約1000ppm未満、時にはさらに100ppm未満のレベルに至る湿度制御を必要とする電子デバイスを含めて、水分の影響を受けやすいデバイスで使用できる、それらの組成物および/または方法から形成された物品を提供する。さらに、ゲッタ組成物の高速処理が可能になり、高い焼成温度を必要とせず、むしろ組成物に、紫外線を含めて化学線で露光することによって硬化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、(a)乾燥剤材料が、(b)(1)硬化性有機ポリマー結合剤、(2)モノマー、および(3)光開始剤を含む有機媒体中に、分散されていることを含む厚膜ゲッタ組成物に関する。この組成物は、前記モノマーの光重合を開始するのに十分な時間およびエネルギーで処理することができる。
【0017】
本発明はさらに、このような組成物を使用する水分制御方法、ならびにこのような方法および/または組成物から形成される物品に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の厚膜ゲッタ組成物は、基板上に形成することができる硬化性セラミック組成物である。例えば、様々な電子ディスプレイデバイスで蓋として働くガラス基板。この厚膜ゲッタは、数千ppmから数ppmの湿度レベルという様々な環境条件で水吸着剤として働く。本発明は、ディスプレイデバイスへの用途に限定されるものではなく、水分の存在によってデバイス寿命が低減する恐れがある、あるいは水分の存在の影響を受けやすい恐れがある他の任意の超小型電子デバイスへの用途に使用することができる。
【0019】
本発明の厚膜ゲッタ組成物は、化学線で露光することによって硬化させることができる。「化学線」は、光線、紫および紫外線、X線、または化学変化を生じさせる他の放射線を意味する。本質的には、組成物を、モノマーの光重合/硬化を開始するのに十分な時間およびエネルギーで処理する。本発明の厚膜ゲッタは硬化すると、良好な緻密性、および特にディスプレイデバイス用途に関連するガラス蓋基板との良好な適合性を示す。厚膜ゲッタペーストは、第1に、有機発光ダイオード(OLED)およびエレクトロルミネセンス(EL)を含めて、ディスプレイデバイスの寿命が湿度および他の有害なガスの制御に強く関係している様々なディスプレイ用途に使用することを意図している。ディスプレイへの用途は、水分ゲッタが非常に水分の影響を受けやすいまたはガスの影響を受けやすい環境で働いているという点で、他の気密性超小型電子デバイスと異なる。ディスプレイデバイスは、しばしば約1000ppm未満、時にはさらに100ppm未満のレベルに至る湿度制御を必要とする。
【0020】
厚膜ゲッタ組成物の主成分は、硬化性有機媒体に分散させた乾燥剤粉末である。通常、乾燥剤材料は、厚膜ゲッタの水吸収性能を決定するその主要な機能性部分である。一般に、水吸収能力は乾燥剤材料の相対含有量に依存する。
【0021】
本明細書に記載するとおり、厚膜ゲッタ組成物は、厚膜組成物を基板上に付着し、厚膜を硬化させることによって基板に結合される。デバイス構造および必要とされた性能に応じて、ペーストを順次付着することによって、ゲッタ膜厚を制御することができる。1回印刷し硬化した後の厚膜ゲッタの典型的な厚さは、10μmから30μmである。強力な水分吸収が必要である限り、過度の厚さを考慮する必要はない。
【0022】
スクリーン印刷が厚膜ゲッタを付着するための一般的な方法であると思われるが、ステンシル印刷、シリンジ分注、または他の付着もしくはコーティング技術を含めて、他の任意の通常の方法を利用することができる。
【0023】
本発明は、乾燥剤材料を硬化性有機媒体中で組合せることによって厚膜ゲッタ組成物(「ぺースト」と呼ぶこともある)を作製することができるという発見に基づいている。本発明の組成物を、さらに詳細に下記に記述する。
【0024】
無機組成物:
厚膜ゲッタペーストの無機組成物は、有機媒体中に分散された乾燥剤材料から構成される。ゲッタペースト用途に対して、モレキュラーシーブ(または、ゼオライト)、アルカリ土類金属酸化物、金属酸化物、硫酸塩、塩化物、臭化物など様々な乾燥剤材料を選択することができる。様々なタイプのゼオライトが、その多孔質構造の固有の性質のため、水吸収の能力の点から最良の候補物質であることが知られている。
【0025】
ゼオライトは、物理的吸収によって水分を吸収する材料であり、天然のものでも、合成に由来するものでもよい。天然ゼオライトは、Na2O、Al23、xH2O、およびxSiO2型のアルミニウム、およびナトリウムもしくはカルシウムのいずれかまたは両方の水和ケイ酸塩である。合成ゼオライトは、ゼオライトを添加させるマトリックスを形成するゲル処理または粘土処理によって作製される。天然ゼオライトと合成ゼオライトの両方は、本発明に使用することができる。よく知られたゼオライトには、斜方沸石(ゼオライトDとも呼ばれる)、斜プチロフッ石、毛沸石、フォージャサイト(ゼオライトXおよびゼオライトYとも呼ばれる)、フェリエライト、モルデン沸石、ゼオライトA、およびゼオライトPが含まれる。上記に特定したゼオライト、および他のものに関する詳細な説明は、参照により本明細書に組み込まれる(非特許文献1)に見つかる。例えば、3A、4A、および13X型ゼオライトはすべて、水分子を吸着する能力を有し、現時点で新規の水分ゲッタを作製するための吸着剤モレキュラーシーブとして好ましい。このようなゼオライトは、Na2O、Al23、およびSiO2を含む。ある種の吸着剤ゲッタは、水分に加えて、ガス状のH2やO2などのガス状汚染物質を吸着することができる。有機物および水分を吸着させることができる、ゼオライト技術に基づいた市販の固体状ゲッタ錠剤の例が、Synetixによって記載されている(例えば、特許文献7参照)。
【0026】
組成物に添加される乾燥剤材料の量は、その用途によって指示されるように、水分を吸着するのに必要な容量に基づいて決定すべきである。有機ビヒクルに対する乾燥剤のおよその相対重量%は、10から65である。
【0027】
有機媒体:
乾燥剤材料を分散させる有機媒体は、(ポリマー、コポリマー、オリゴマー、およびその混合物を含めて)1つまたは複数の硬化性有機ポリマー結合剤、1つまたは複数の感光性モノマー、および様々な光化学物質(光開始剤)から構成され、後者の機能は、光プロセスを促進させ、モノマーの光重合を開始させることである。安定化剤、消泡剤、接着剤、当業者に知られている他のものなど追加の添加剤を、有機媒体に添加することができる。通常、一般的な有機溶媒は存在しない。
【0028】
有機ポリマー結合剤:
本発明の硬化性有機ポリマー結合剤は、ポリマー、コポリマー、オリゴマー、またはその混合物とすることができる。有機媒体中に存在する有機ポリマー結合剤は、アクリラート、メタクリラート、ウレタンアクリラート、エポキシアクリラート、およびそれらの混合物、ならびに他の同様なポリマー結合剤から選択することができる。
【0029】
モノマー:
本発明の1つのモノマーまたは複数のモノマーは、アクリラートモノマー、メタクリラートモノマー、およびその混合物から選択される。
【0030】
本発明に有用なモノマーには、トリエチロールプロパンエトキシトリアクリラート、t−ブチルアクリラートおよびメタクリラート、1,5−ペンタンジオールジアクリラートおよびジメタクリラート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリラートおよびメタクリラート、エチレングリコールジアクリラートおよびジメタクリラート、1,4−ブタンジオールジアクリラートおよびジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリラートおよびジメタクリラート、ヘキサメチレングリコールジアクリラートおよびジメタクリラート、1,3−プロパンジオールジアクリラートおよびジメタクリラート、デカメチレングリコールジアクリラートおよびジメタクリラート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリラートおよびジメタクリラート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリラートおよびジメタクリラート、グリセロールジアクリラートおよびジメタクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラートおよびジメタクリラート、グリセロールトリアクリラートおよびトリメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラートおよびトリメタクリラート、ペンタエリトリトールトリアクリラートおよびトリメタクリラート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリラートおよびトリメタクリラート、ならびに(特許文献8)に開示されているような同様の化合物、2,2−ジ(p−ヒドロキシ−フェニル)−プロパンジアクリラート、ペンタエリトリトールテトラアクリラートおよびテトラメタクリラート、2,2−ジ−(p−ヒドロキシフェニル)−プロパンジメタクリラート、トリエチレングリコールジアクリラート、ポリオキシエチル−2,2−ジ−(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリラート、ビスフェノール−Aのジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノール−Aのジ−(2−メタクリルオキシエチル)エーテル、ビスフェノール−Aのジ−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノール−Aのジ−(2−アクリルオキシエチル)エーテル、1,4−ブタンジオールのジ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、トリエチレングリコールジメタクリラート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリラート、ブチレングリコールジアクリラートおよびジメタクリラート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリラートおよびトリメタクリラート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアクリラートおよびジメタクリラート、1−フェニルエチレン−1,2−ジメタクリラート、ジアリルフマラート、スチレン、1,4−ベンゼンジオールジメタクリラート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、ならびに1,3,5−トリイソプロペニルベンゼンが含まれる。
【0031】
光開始剤:
有機媒体中に存在する光開始剤は、熱的には不活性であるが、化学線で露光すると遊離基を発生するものである。典型的な光開始剤は、参照により本明細書に組み込まれるDueberらの(例えば、特許文献9参照)に開示されている。
【0032】
これらの光開始剤には、共役炭素環系中に2個の環内炭素原子を有する化合物である置換または非置換の多核キノン、例えば2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、9,10−アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントレンキノン、ベンゾ(a)アントラセン−7,12−ジオン、2,3−ナフタセン−5,12−ジオン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、1,4−ジメチル−アントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、レテンキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフトラセン−5,12−ジオン、および1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ(a)アントラセン−7,12−ジオンが含まれる。たとえ85℃という低温で熱的に活性なものがあるにしても、他の光開始剤も有用であり、これらは(特許文献10)に記載されており、ベンゾイン、ピバロイン、アシロインエーテルなどのビシナルケトアルドニルアルコール、例えばベンゾインメチルおよびエチルエーテル;α−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、およびα−フェニルベンゾインを含むα−炭化水素置換芳香族アシロイン、チオキサントンおよび/またはチオキサントン誘導体、ならびに適切な水素供与体が含まれる。(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献14)、(特許文献15)、および(特許文献16)に開示されている光還元性染料および還元剤、ならびに(特許文献17)、(特許文献18)および(特許文献19)に記載されているようなフェナジン、オキサジンおよびキノンクラスの染料、ミヒラーケトン(Michler’s ketone)、ベンゾフェノン、ロイコ染料を含めた水素供与体を有する2,4,5−トリフェニルイミダゾリル二量体、ならびにその混合物を、開始剤として使用することができる。また、(特許文献20)に開示されている増感剤も、光開始剤および光阻害剤とともに有用である。
【0033】
一つの実施形態では、有機媒体は、E.I.Du Pont de Nemours and Companyによる製品番号5017Aである。さらに別の実施形態では、有機媒体は、E.I.Du Pont de Nemours and Companyによる製品番号5018Aである。 分散液中の無機固体物質に対する厚膜組成物中の有機媒体の比率は、ペーストの塗布方法、および使用する有機媒体の種類に依存して、変わり得る。通常、分散液は、良好なコーティングを得るために10〜65重量%の無機固体物質、35〜90重量%のビヒクルを含む。これらの制限内において、有機物の量を低減し、よりよい品質の厚膜を得るために、固体物質に対して可能な限り最少量の結合剤を使用することが望ましい。有機媒体の含有量は、流延、シルクスクリーン印刷やインクジェット印刷などの印刷、または噴霧、はけ塗り、シリンジ分注、ドクターブレードなどによるコーティングに適した濃度、およびレオロジーが得られるように選択する。
【0034】
さらに、ゲッタペースト中の分散性有機媒体の割合によって、吸収剤ゲッタの固化層の厚さを制御することができる。例えば、最小限の有機媒体を含む厚膜ペーストによって、より厚いゲッタ層を形成することになる(このような分散液は、表面上で処理されているときせん断減粘を受け、したがってより厚くなる)。
【0035】
厚膜の塗布:
厚膜ゲッタは、通常はガラス、低温同時焼成セラミックス(LTCC)、シリコーンなど、ガスおよび水分に対して不浸透性の基板上に付着される。基板は、ポリエステルなどの不浸透性プラスチック、例えばポリエチレンテレフタレートなど柔軟な材料のシート、あるいはプラスチックシートとその上に付着されたオプションの任意の金属性または誘電性層との組合せからなる複合材料のシートとすることもできる。一つの実施形態では、光が封入領域に入り込むことができるか、あるいは光が封入領域から基板を通り抜けて放出されるように、基板は透明(または半透明)とすることができる。
【0036】
厚膜ゲッタの付着は、ステンシル印刷、シリンジ分注、またはコーティング技術など他の付着技術を利用することができるが、好ましくはスクリーン印刷によって行う。スクリーン印刷の場合、付着された厚膜をスクリーンメッシュサイズによって制御する。
【0037】
付着された厚膜は、化学線で露光することによって硬化することができる。この組成物によって、上記に記載するような、ゲッタ組成物を基板に塗布し、処理して組成物を硬化させ、したがって硬化ゲッタ組成物が接着した基板を形成する水分制御方法が得られる。この方法は、硬化ゲッタ組成物を、基板が囲いの一つの境界線である囲い内に封止するステップをさらに含むことができる。これらの方法は、水分を制御する物品を形成する。例えば、物品は、電子ディスプレイデバイスなど水分の影響を受けやすい電子デバイスとすることができる。
【0038】
組成物は、UV露光、例えばUVベルト式炉中で約1〜5秒のUV露光によって硬化させることができる。UV光の線束密度は、通常は300〜950mJ/cm2である。硬化厚膜の厚さは、10μmから30μmである。揮発性物質の再吸着(およびゼオライトの不活性化)を防止するために、硬化ステップは、しばしば真空下など、水分および他のガスのない制御された雰囲気中で実施する。硬化ステップは、硬化ゲッタを、水分および/または他のガスのない雰囲気中に貯蔵しない限り、通常はデバイスを気密性容器中に封止する直前に行う。処理手順に応じて、吸収された水分を蒸発させるために、ゲッタの活性化のための100〜250℃での追加の焼成を必要とすることがある。
【0039】
焼成したゲッタ厚膜の感湿性は、ゲッタ組成物を、様々な湿度レベル、暴露時間、温度など変化する湿度状態に暴露させることによって評価した。熱重量分析法(TGA)を用いて、ある温度まで損失重量を定量した。TGA評価結果は、乾燥剤材料の含有量が増加するとともに損失重量も同一の増加傾向にあることを示した。約250℃までの損失重量は大部分、硬化されたゲッタ中に吸収された水分に対応する。300℃超から500℃までの損失重量は、主に有機ビヒクルの揮発に起因する。
【0040】
実施例を挙げることによって、本発明をさらに詳しく述べる。しかし、本発明の範囲は、これらの実施例によっていかなる形でも限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
(実施例1〜10)
厚膜ゲッタペーストは、平均粒径2μmの乾燥剤材料(13x型モレキュラーシーブ粉末)を本件特許出願人から市販されている硬化性有機媒体と混合することによって調製した。この実験では、2種のDuPont製品5017Aおよび5018Aを使用した。表1は、20〜58%のモレキュラーシーブを含む厚膜組成物の実施例を示している。有機媒体に対する様々なレベルの乾燥剤が最適化された性能で適用された。様々な付着方法向けにペースト粘度および膜厚を調整するためには、溶媒の含有量を変更することが必要であった。
【0042】
ゲッタペーストは、ソーダ石灰ケイ酸塩をベースとするガラス蓋基板上の200メッシュスクリーン、およびUVベルト式炉中約2秒間UVで処理する露光を用いて印刷した。UV光の強度は920mJ/cm2であった。硬化厚膜の厚さは、乾燥剤の含有量およびスクリーンメッシュサイズに応じて、10μmから30μmであった。
【0043】
厚膜は、緻密に硬化し、ガラス基板との良好な接着性を示した。ひび割れも、膨れも、焼成された厚膜の表面には観察されなかった。焼成された膜の良好な厚さ均一性は、ペースト組成物に関係なく+/−3μm以内に入っていた。
【0044】
焼成厚膜試料を、ある種の湿度環境に暴露した後の水分吸収の程度を定量して評価した。表2は、選択されたゲッタ試料の熱重量分析法(TGA)結果に基づく吸収性能を示している。吸収結果は、一定の温度までの厚膜の損失重量%として表す。表2のTGA試料はすべて、85℃/85%RH湿度状態に1時間暴露することによって調製した。
【0045】
ゲッタペーストの水分吸収は、実施例に見られるように、温度、およびモレキュラーシーブの相対含有量に強く依存していることが判明した。特に、モレキュラーシーブの含有量が増大すると、損失重量の百分率が上昇する傾向にあった。例えば、50%ガラスを含有する試料に対しては、200℃までTGAに従って11%の損失重量が検出されたが、20%ガラスの組成物に対してはわずか5%の損失重量が検出された。この傾向は、吸収能力は主として乾燥剤材料の相対含有量により決定されることを考慮すると、妥当である。
【0046】
表2は、また、モレキュラーシーブの含有量が増大した場合の2種のUV−有機媒体5017Aと5018Aも比較している。5018Aは、接着性を高めるためにもともと組み込まれた無機材料を含有しているので、添加できるモレキュラーシーブの最大含有量に上限があった。したがって、実施例8および9は、厚すぎて、一般的な印刷技法でスクリーン印刷することができなかった。
【0047】
実施例10は、乾燥剤材料を含まず、UV−有機媒体5018Aしか含んでいなかった。実施例10は、表2に見られるように、300℃までの場合、29%モレキュラーシーブを含有するペースト(実施例7)に比べて低い損失重量を示した。これは、モレキュラーシーブによる水分吸収の効果である。UV有機物の揮発性は、300℃を超えた場合のより高い損失重量の原因となる。
【0048】
表3および4はそれぞれ、100℃および200℃でUVゲッタペーストを再焼結した後の実施例1〜5の損失重量を表している。再焼結は、デバイス封止をする前の水分脱着用に設計された潜在的な活性化プロセスを起こさせるためであった。100℃での再焼結後の損失重量に有意差は無いが、200℃での再焼結は、損失重量値の全体的な減少を示す傾向にある。この減少によって、脱着はより高温でより効果的に起こり得るものであり、水分吸収は可逆プロセスであることが示唆されている。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥剤材料を
(1)硬化性有機ポリマー結合剤、(2)モノマー、および(3)光開始剤を含む有機媒体に分散させて含むことを特徴とする厚膜ゲッタ組成物。
【請求項2】
前記乾燥剤材料は、ゼオライト、アルカリ土類金属酸化物、金属酸化物、硫酸塩、塩化物、臭化物、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記硬化性有機ポリマー結合剤は、アクリラート、メタクリラート、ウレタンアクリラート、エポキシアクリラート、およびそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記モノマーは、アクリラートモノマー、メタクリラートモノマー、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記乾燥剤材料は、全組成物の10〜65重量パーセントを構成することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機媒体は、全組成物の35から90重量パーセントを構成することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、前記モノマーの光重合を開始するのに十分な時間およびエネルギーで処理されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のゲッタ組成物を提供するステップと、
前記ゲッタ組成物を基板に塗布するステップと、
前記ゲッタ組成物および基板を処理して前記有機媒体を硬化させ、それによって硬化ゲッタ組成物が接着した基板を形成するステップを含むことを特徴とする水分制御方法。
【請求項9】
前記基板はガラスであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記硬化ゲッタ組成物を囲い内に封止するステップをさらに含み、前記基板は囲いの一つの境界線であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法で作製された物品。
【請求項12】
前記物品は水分の影響を受けやすい電子デバイスである請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記組成物を処理して有機媒体を硬化させた請求項1に記載のゲッタ組成物を含む物品。

【公開番号】特開2006−124702(P2006−124702A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−306950(P2005−306950)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】