説明

水分散ポリエステル樹脂組成物

本発明は、乳化剤D;及びヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂Aと、ラジカル重合することができかつエステル結合又はウレタン結合により該ポリエステル樹脂の主鎖に結合するオレフィン性不飽和化合物Cとの反応生成物ACとからなる、放射線硬化性水分散ポリエステル樹脂組成物、それを製造する方法、並びに、それを使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な基板に塗布され、放射線により及び/又は空気への曝露により硬化し、かつ良好な機械的耐性及び耐薬品性を有する塗膜をこれらの基板にもたらし得る、コーティング組成物や透明な着色コーティング組成物の製造に好適な水分散ポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂、これらの中でもとりわけアルキド樹脂は、常温硬化型(ambient-cure)溶剤系コーティングに用いられる、最も一般的なバインダ種のうちの1つである。伝統的な溶剤系アルキド樹脂の耐性は、空気に曝露した場合における塗料皮膜(paint film)の自動酸化架橋により発現する。アルキドの不飽和脂肪酸又は不飽和油中の活性化メチレン基が、空気中で酸化し、その後分解してフリーラジカルを生成する対応するヒドロペルオキシドとなる場合に、架橋が起こり、このようにして酸化架橋プロセスがもたらされる。この酸化架橋プロセスは通常、例えば、コバルト、ジルコニウム、カルシウム及びマンガンの各種の塩等のいわゆる乾燥剤を添加することによって促進される。しかしながら、アルキド樹脂は、とりわけ常温で比較的遅い「乾燥」時間又は硬化時間を有する。このような問題に対処すべくアルキド樹脂には各種の改良がなされてきた。
【0003】
このような試みの1つには、アルキド樹脂の存在下におけるスチレン又はメチルメタクリレート等のモノマーのフリーラジカル重合を介した、これらのモノマーをベースとするビニルポリマー又はアクリルポリマーによる、ポリエステル樹脂又はアルキド樹脂の改質が含まれ、かかる改質は、ビニル−アルキドコポリマー、又はいわゆる「ビニル化アルキド」若しくは「ビニル化ポリエステル」を生成する。
【0004】
ビニル化アルキド樹脂は一般に、より高いモル質量及びより高いガラス転移温度(Tg)を有し、不粘着時間の短いコーティングをもたらす。しかしながら、このようなコーティングのいわゆる「通し乾燥(through-dry)時間」(改質樹脂のアルキド部を形成する脂肪酸中の不飽和の完全な酸化)は、ビニルモノマーによる共重合の結果としてアルキド中の不飽和度が小さくなるため、非改質アルキドのものよりも長い。さらなる欠点は、ビニル化アルキド樹脂を含有する塗料配合物が、ビニル化アルキドのモル質量及びTgが大きいために、より多量の溶剤を必要とすることである。
【0005】
水系アルキド樹脂は、水性エマルション又は水性分散液の形態で塗布され、凝集添加剤を少量しか必要としない。しかしながら、溶剤系アルキドと同じ時間スケールで、水の蒸発及びアルキドの酸化乾燥が起こる。他の樹脂系はより速い硬化を可能とするが、とりわけ木材基板上における、木材湿潤性(「木質改善性(Anfeuerung)」)等のアルキド樹脂の好ましい特性は、この応用分野におけるアルキドの使用を大いに望ましいものとする。
【0006】
特許文献1には、アクリレート官能化アルキド樹脂と、少なくとも1種の乾燥剤と、水とを含む水系アクリレート官能化アルキドコーティング組成物が、記載されている。アクリレート官能化アルキド樹脂は、(a)アルキド樹脂と、(b)酸無水物と、(c)グリシジルアクリレートとの反応生成物からなる。アルキドのヒドロキシ末端基は、アルキド樹脂と酸無水物との反応によって酸末端基へと変換され、カルボキシル官能性樹脂を生成し、そしてその後、カルボキシ官能性樹脂がグリシジルアクリレートと反応する。水の存在下で、アクリレート官能化アルキド樹脂を少なくとも1種の乾燥剤と接触させる工程を有する、水系アクリレート官能化アルキドコーティング組成物を製造する方法も開示されている。放射線によるこれらの系の硬化は、この文書中に言及されていない。
【0007】
アルキド樹脂の合成に用いられる触媒も存在するなか、ヒドロキシ官能性アルキド樹脂と、酸無水物との反応時の反応条件下では、或る特定の量のエステル交換が起こり、特許文献1の無水トリメリット酸等の酸官能性無水物を使用する場合には、鎖の分枝も誘起される。ポリマー上における2つの連続する反応に関する必要性も欠点である。このプロセスによって導入される不飽和は、樹脂中における3%〜12%の質量分率に相当するグリシジルアクリレート(M=128.13g/mol)の量から算出することができ、234mmol/kg〜936mmol/kgである。
【0008】
特許文献2には、ポリマーが、アルキド部分と、エチレン性不飽和基を含有するチェーンペンダント型フリーラジカル硬化性部分とを含む、アルキド系フリーラジカル硬化性組成物が開示されている。これらの基は、好ましくはイソシアネート官能性エチレン性不飽和化合物を介してポリマー鎖と連結し、この化合物は、好ましくはジイソシアネートと、ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシ官能性(メタ)アクリルエステルとの反応生成物、又はジイソシアネートと、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテルとの反応生成物である。ヒドロキシ官能性アルキド樹脂は、初めにネオデカノイルグリシジルエステル等のエポキシドと反応させることにより、アルキド樹脂中の酸基の大部分をヒドロキシル基に変換することによって調製される。ここに記載されるようなアルキド樹脂の改質は、事前形成されたアルキドから開始する3つの工程、すなわち、第一に、エポキシ化合物との反応によるヒドロキシル基への酸基の変換、第二に、ジイソシアネートをヒドロキシ官能性エチレン性不飽和化合物と反応させることによる官能化剤の調製、及び第三に、ヒドロキシ官能性ポリエステル又はアルキドと、イソシアネート官能性不飽和化合物との反応を含む。ここに記載される硬化性組成物は溶剤系である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2003/087244号
【特許文献2】国際公開第2004/009716号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、オレフィン不飽和を有するポリエステル樹脂又はアルキド樹脂をベースとする水系放射線硬化性組成物を提供することである。
【0011】
この目的は、ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂又はアルキド樹脂と、このポリエステル樹脂又はアルキド樹脂中のヒドロキシル基に対して反応性である反応性基を有するオレフィン性不飽和化合物との反応により生成される、改質ポリエステル樹脂又はアルキド樹脂を提供することによって、及び、この改質ポリエステル樹脂又はアルキド樹脂を水性媒体中にこの改質ポリエステル樹脂又はアルキド樹脂と相溶性である乳化剤を用いて分散させて、紫外光又は電子ビーム等の高エネルギー放射線による照射後にラジカル重合することができる放射線硬化性組成物を形成することによって、達成された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、紫外光又は電子ビーム等の高エネルギー放射線の照射後に、また任意に空気の存在下における酸化によって、ラジカル重合することができる、放射線硬化性水分散ポリエステル樹脂組成物又はアルキド樹脂組成物を提供する。これら放射線硬化性水分散ポリエステル樹脂組成物又はアルキド樹脂組成物は、乳化剤D;及びヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂又はアルキド樹脂Aと、ラジカル重合することができ、かつ、エステル結合又はウレタン結合によりポリエステル樹脂又はアルキド樹脂の主鎖に結合するオレフィン性不飽和化合物Cとの反応生成物ACとからなる。
【0013】
本発明はまた、乳化剤D;及びヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂又はアルキド樹脂Aと、ラジカル重合することができ、かつ、エステル結合又はウレタン結合によりポリエステル樹脂又はアルキド樹脂の主鎖に結合するオレフィン性不飽和化合物Cとの反応生成物ACとからなる、放射線硬化性水分散ポリエステル樹脂組成物又はアルキド樹脂組成物を提供する。これら放射線硬化性水分散ポリエステル樹脂組成物又はアルキド樹脂組成物は、ラジカル重合することができ、なお、ラジカル重合が放射線若しくは空気、又は好ましくは両方の作用により開始するオレフィン性不飽和化合物Bを含有する。
【0014】
本発明はまた、放射線硬化性水分散ポリエステル樹脂組成物又はアルキド樹脂組成物を製造する方法であって、初めに、オレフィン性不飽和化合物Cを添加するヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂又はアルキド樹脂Aを調製し、この化合物CがAのヒドロキシル基と反応する官能基を有し、AとCとを反応させ、AとCとの反応生成物ACを、乳化剤Dの存在下で水中に分散させて、均質混合物を形成する、放射線硬化性水分散ポリエステル樹脂組成物又はアルキド樹脂組成物を製造する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ポリエステル樹脂又はアルキド樹脂Aは好ましくは、8個〜30個の炭素原子を有する脂肪酸A1と、少なくとも3つのヒドロキシル基を有する多価脂肪族アルコールA3と、少なくとも2つのカルボキシル基を有する芳香族、脂環式、又は直鎖状若しくは分岐状脂肪族のカルボン酸A4、又はその無水物と、任意に、少なくとも2個の炭素原子及び7個以下の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族モノカルボン酸A2とのエステル化生成物である。本発明の特定の実施形態によれば、ポリエステルAは、分子中に少なくとも1つのオレフィン不飽和を含む。このオレフィン不飽和は、不飽和脂肪酸A1を使用することによって、及び/又は分子中に少なくとも1つのオレフィン不飽和を含有する1つ又は複数の油A5を添加することによって導入することができる。特に好ましくは分子中に少なくとも1つのオレフィン不飽和を有する油A5の存在が好ましい。
【0016】
脂肪酸A1は好ましくは、直鎖状又は分岐状脂肪族モノカルボン酸であり、好ましくは8個〜24個の炭素原子を有し、また、オレフィン不飽和を有していてもよい。有用な酸は、ほんのわずか例を挙げると、とりわけ、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びベヘン酸、また、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、パルミトレイン酸、ガドレイン酸及びアラキドン酸等の不飽和脂肪酸である。それらは、単独、又は好ましくは混合物形態で使用してもよい。また、綿実油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸及びヒマワリ油脂肪酸等の、天然原料由来の脂肪酸の混合物を使用してもよい。
【0017】
アルキド樹脂の合成で任意に使用され得る、少なくとも2個の炭素原子及び7個以下の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族モノカルボン酸A2は、直鎖状若しくは分岐状脂肪族又は芳香族の酸、例えば、酪酸、イソ酪酸、2,2−ジメチルペンタン酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、好ましくは安息香酸である。
【0018】
多価脂肪族アルコールA3は、少なくとも3つのヒドロキシル基、及び好ましくは3個〜10個の炭素原子を有する。それらは、直鎖状又は分岐状であってもよく、好ましくは、グリセロール、トレイトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン及びジペンタエリスリトールの1つ又は複数であってもよい。
【0019】
少なくとも2つのカルボキシル基を有する芳香族、脂環式、又は直鎖状若しくは分岐状脂肪族のカルボン酸A4は好ましくは、少なくとも4個の炭素原子、又は芳香族である場合には少なくとも8個の炭素原子を有し、好ましくは、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、及び二量体化プロセスにより不飽和脂肪酸から合成されるいわゆる脂肪酸二量体の1つ又は複数である。脂肪族環状二価酸は、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の異性体(ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸及びテトラヒドロフタル酸等)であってもよく、芳香族二価酸は、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、また、トリメリット酸及びベンゾフェノンテトラカルボン酸等のより高官能性の酸であってもよい。これらの酸の分子内無水物が存在する場合には、当然のことながら、それらも合成に使用され得る。
【0020】
油A5は、グリセロールと、好ましくは少なくとも1つのオレフィン不飽和を有する脂肪酸とのエステル、又はこれらの2つ以上である。好ましくは、油は、多価不飽和油、例えば、アマニ油、ヒマワリ油、エノ油又は麻実油である。このような少なくとも一不飽和油、及び好ましくは多価不飽和油由来の部位を含有するポリエステル樹脂又はアルキド樹脂が、デュアル硬化系、すなわち、放射線の照射及び自然乾燥の両方により誘起されるラジカル重合に使用することができるコーティングバインダをもたらす。
【0021】
ポリエステル樹脂又はアルキド樹脂Aは好ましくは、全成分、すなわち、脂肪酸A1、任意の脂肪族又は芳香族モノカルボン酸A2、多価アルコールA3、及びジカルボン酸又はポリカルボン酸A4、及び任意で油A5を反応器内に充填し、好ましくは、重縮合反応において生じる水との共沸物を形成する共沸剤の存在下で、少なくとも100℃の温度に加熱する反応、形成される水の分離、又は水と共沸剤との混合物の蒸留、縮合すると二相を形成する留出液の液体混合物からの水の分離、共沸剤を反応器内に戻すことによって調製される。また、アルキド樹脂Aの合成において成分A1〜A5の少なくとも1種の、2種以上の異なる化合物を使用することも可能である。別の好ましい実施形態において、遊離体(educts)(出発原料)として油を使用することにより、アルキド樹脂Aの合成を開始することも可能であり、この油は、グリセロール(A3の群に属する)と、A1の群に属する同じであっても異なっていてもよい脂肪酸とのエステルである。有用な油としては、アマニ油、ダイズ油、綿実油、ヤシ油、ヒマワリ油、ナタネ油及びベニバナ油が挙げられる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、放射線硬化性水分散アルキド樹脂組成物中にオレフィン性不飽和化合物Bも存在し、このオレフィン性不飽和化合物Bは、紫外光又は電子ビーム等の高エネルギー放射線の照射後にラジカル重合することができる。
【0023】
ラジカル重合することができるオレフィン性不飽和化合物Bは好ましくは、ポリオールB1と、ラジカル重合することができるオレフィン性不飽和化合物Cとの反応生成物である。かかる化合物Bは好ましくは、少なくとも2個の炭素原子を有するポリオールB1と、以下のC1と同じ群、すなわち、オレフィン性不飽和酸、好ましくは(メタ)アクリル酸、例えば、グリセロールトリ(メタ)アクリレート又はヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートから選択される化合物Cとのエステルである。好ましくは、ポリオールB1は、上記の化合物A3と同じ群から選択され、さらなる変更形態は、ポリオールA3と酸化エチレン及び/又は酸化プロピレンとの反応生成物を使用して、エトキシル化若しくはプロポキシル化ポリオール、又は混合アルコキシル化ポリオールを得ることにある。Cはまた、ヒドロキシ官能性オレフィン性不飽和化合物から選択され、例えば、上述のポリオールB1の(メタ)アリルエーテルをもたらし得る。好ましい実施形態では、化合物B自体は水希釈性でないが、下記のような乳化剤Dの存在下で水又は水溶液中に分散液を形成する。
【0024】
化合物Bは、その調製中又は調製後のいずれの段階でも反応生成物ACに添加することができる。本発明の好ましい実施形態では、アルキド樹脂Aと化合物Cとの反応中に化合物B1を化合物Cと反応させることによって、化合物Bをその場で調製する。
【0025】
本発明において、化合物X、又は化合物の混合物X’が、均質混合物を調製した後、溶液又は分散液中のX又はX’の質量分率が少なくとも10%である水溶液又は水分散液を形成し、混合物の調製後20℃で少なくとも24時間貯蔵しても相分離を示さない場合に、それらを「水希釈性」と称する。
【0026】
オレフィン性不飽和化合物Cは、エステル結合によりアルキド樹脂の主鎖に結合することができる。この場合、オレフィン性不飽和化合物Cは、α,β−不飽和脂肪族モノカルボン酸、及びオレフィン性不飽和脂肪族ジカルボン酸のモノエステルからなる群から選択される不飽和酸C1である。有用な化合物C1は、とりわけ、アクリル酸及びメタクリル酸等の3個〜15個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和直鎖状又は分岐状脂肪族カルボン酸、並びに、エタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸及びイソクロトン酸等のそれらの高級同族体である。他の有用な化合物は、モノメチルマレエート又はモノエチルマレエート等の、オレフィン性不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルである。
【0027】
別の可能性は、ウレタン結合を介して不飽和化合物を結合することであり、例えば、イソシアネート官能性オレフィン性不飽和化合物C2が、ウレタン基の形成下で、ヒドロキシル基に付加することによりアルキド樹脂Aと反応し得る。本実施形態では、使用されるオレフィン性不飽和化合物Cが、イソシアネート官能性反応生成物C2である。C2は、不飽和脂肪族ヒドロキシ官能性化合物C21と、ジイソシアネート、又は1分子当たり3つ以上のイソシアネート基を有する多官能性イソシアネートC22との反応生成物であってもよい。この場合、平均して2つ以上の二重結合を含有する化合物C21を使用して、平均して2つ以上の二重結合を含有する化合物C2を生成することが好ましい。
【0028】
代替的には、アルキド樹脂Aを初めにジイソシアネート又は多官能性イソシアネートC22と反応させた後に、化合物C21とさらに反応させてもよい。
【0029】
ヒドロキシ官能性アルキド樹脂の改質が化合物C2との反応により達成されるこの後者の可能性は多工程反応を伴うのに対し、化合物C1を用いる第1の実施形態に記載される直接エステル化は官能化のために1つの工程しか伴わないため、好ましい。
【0030】
基本的には、改質アルキド樹脂ACと相溶性であるいずれの乳化剤を使用してもよいが、脂肪酸D1と、1分子当たり少なくとも3つのヒドロキシル基を有する多価アルコールD2と、ジカルボン酸若しくはポリカルボン酸D3又はその無水物、より好ましくは脂環式ジカルボン酸若しくはポリカルボン酸D3又はその無水物と、モノアルコキシポリアルキレングリコールD4とのポリエステル化生成物である乳化剤Dを使用することが好ましい。
【0031】
脂肪酸D1は好ましくは、10個〜22個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸又は飽和脂肪酸である。好ましい実施形態によれば、脂肪酸D1は、少なくとも100cg/g、好ましくは120cg/g〜200cg/gのヨウ素価を有する、孤立二重結合及び共役二重結合が存在し得る不飽和脂肪酸D11から選択される。これらは、例えば、加水分解により、ダイズ油等の植物油から、魚油から、ヒマワリ油、アマニ油、ベニバナ油及び綿実油から得られるか、又はトール油の蒸留に由来する。また本発明の目的に有用である共役二重結合を有する脂肪酸は、天然脂肪酸の触媒による異性化により、又は脱水ヒマシ油(リシネン脂肪酸)から得られる。
【0032】
加えて、全部又は一部において、10個〜22個の炭素原子を有する飽和脂肪酸D12を使用することも可能である。好適な例としては、ラウリン酸、パルミチン酸及びステアリン酸が挙げられる。
【0033】
1分子当たり少なくとも3つのヒドロキシル基を有する多価アルコールD2は、1分子当たり少なくとも3つの炭素原子を有する直鎖状又は分岐状又は環状の脂肪族化合物である。グリセロール、エリスリトール、トレイトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン及びトリメチロールエタン、並びにこれら由来の化合物、例えば、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン及びジトリメチロールエタン以外では、ヘキシトール(C糖アルコール)等のいわゆる「糖アルコール」が特に好ましく、これらをペンチトール(C糖アルコール)に一部又はさらには全部置き換えてもよい。ヘキシトールの中では、ソルビトール、マンニトール及びズルシトールの使用、並びにペンチトールの中では、アラビトール及びキシリトール、またそれらの混合物の使用が好ましい。
【0034】
カルボン酸D3は、好ましくは脂環式カルボン酸D3、より好ましくは少なくとも2つのカルボン酸基を有するものであり、特に好ましくは、6個〜12個、特に好ましくは8個〜10個の炭素原子を有する飽和酸又は部分不飽和酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸及びそのアルキル誘導体、例えばメチルテトラヒドロフタル酸であり、これらの酸はそれらの無水物形態で使用することが好ましい。同様に、シクロヘキサン−1,3−及び−1,4−ジカルボン酸、並びに多環式、とりわけ二環式炭化水素由来のジカルボン酸、又はこれらの酸の無水物、例えば、ビシクロ−[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物等を使用することが可能である。驚くべきことに、例えば、フマル酸、無水コハク酸及び無水マレイン酸、またフタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸は、アルキド樹脂エマルションのより高い加水分解速度及びより低い安定性をもたらすため、好適でないことが判明した。
【0035】
モノアルコキシポリアルキレングリコールD4は、アルコキシラジカル中に1個〜8個、好ましくは1個〜4個の炭素原子、及び好ましくは、500g/mol〜2000g/mol、特に好ましくは600g/mol〜1800g/molの数平均モル質量を有する。また、オキシエチレン単位の最大20%をオキシプロピレン単位に置き換えてもよい。600g/mol〜1800g/molの数平均モル質量を有するメトキシ−、エトキシ−及びn−ブトキシ−ポリエチレングリコールが特に好ましい。
【0036】
乳化剤Dは、好ましくは上記のアルキド樹脂Aの調製と同様に、重縮合条件下で、成分D1、成分D2、成分D3、及び成分D4とを反応させることによって得られる。
【0037】
付加的には、出発原料の混合物中において、脂肪酸D1と異なるモノカルボン酸D11、例えば、2−エチルヘキサン酸等の最大9個の炭素原子を有する脂肪族直鎖状若しくは分岐状モノカルボン酸、又は安息香酸、トルイル酸の異性体、フェニル酢酸、及びトリル酢酸の異性体等の芳香族モノカルボン酸を使用することが可能である。
【0038】
乳化剤樹脂Dを調製するために、出発原料の混合物中では以下の質量分率、
10%〜40%、好ましくは15%〜35%のポリヒドロキシル成分D2、
35%〜70%、好ましくは40%〜60%のアルコキシポリエチレングリコールD4、
10%〜30%、好ましくは15%〜25%の脂環式ジカルボン酸又はポリカルボン酸D3、
15%〜40%、好ましくは20%〜35%の脂肪酸D1、及び、
0%〜15%、好ましくは3%〜10%の、D1と異なる別のモノカルボン酸D11を使用することが好ましい。
【0039】
好ましくは10mg/g未満の重縮合物Dの酸価まで重縮合が起こり、Dの水溶液が、30%〜60%の固体質量分率及び5000mPa・s〜50000mPa・sの動粘度を有する。乳化剤Dの酸価は特に好ましくは5mg/g未満である。より高い酸価は、重縮合物Dと、エポキシド、例えば、グリシドールとアルカン酸とのエステル、好ましくは、ネオペンタン酸、2−エチルヘキサン酸又はネオデカン酸等の5個〜12個の炭素原子を有する分岐状脂肪酸のグリシドールエステルとの反応によって、この好ましい範囲に調節することができる。
【0040】
遊離体(出発原料)としての乳化剤Dの合成に油を使用することも可能であり、この乳化剤Dは、グリセロール(D2の群に属する)と、同じであっても異なっていてもよく、D1の群に属する脂肪酸とのエステルである。有用な油としては、アマニ油、ダイズ油、綿実油、ヤシ油、ヒマワリ油、ナタネ油及びベニバナ油が挙げられる。
【0041】
ヒドロキシ官能性アルキド樹脂Aと、ラジカル重合することができ、かつ、エステル結合又はウレタン結合によりアルキド樹脂の主鎖に結合するオレフィン性不飽和化合物Cとの反応生成物ACは、以下のプロセスによって調製することができる。
【0042】
化合物C1の群による化合物を使用する場合、アルキド樹脂Aをエステル化触媒、好ましくはまた重合阻害剤と混合して、化合物C1の早期重合を回避する。この混合物を好ましくは70℃〜110℃の温度に加熱し、均質化し、3%〜10%の酸素含量を有する希薄空気を、この組成物に吹き込む。その後、好ましくは化学量論的に過剰な化合物C1を添加すると共に、希薄空気流を維持し、反応物質を好ましくは115℃〜145℃に加熱する。好ましくは、共沸蒸留による縮合反応において形成される水を除去することによって、エステル化反応を促進させ、反応中にモニタリングされる反応物質の酸価が、アルキド樹脂中の90%を超えるヒドロキシル基の変換を示すまで、反応を継続する。その後、減圧下における蒸留によって共沸剤及び過剰な化合物C1を除去し、改質アルキド樹脂を単離する。
【0043】
C2による化合物を使用する場合、第1の工程では、イソシアネート官能性オレフィン性不飽和化合物C2を、不飽和脂肪族アルコールC21と、ジイソシアネート、又は1分子当たり3つ以上のイソシアネート基を有する多官能性イソシアネートC22とから調製し、その後、この化合物C2は、ウレタン基の形成下で、ヒドロキシル基への付加によりウレタン結合を形成しながらアルキド樹脂と反応する。
【0044】
代替的に、第1の工程では、アルキド樹脂Aを化合物C22と反応させることができ、その後、この反応生成物を化合物C21とさらに反応させる。
【0045】
さらに好ましい実施形態において、Bによる化合物も組成物中に存在する場合には、その前駆体B1、すなわちポリオールを、Cとの反応前にアルキド樹脂Aと混合し、この場合、AとCとの反応生成物及びB1とCとの反応生成物が同時に形成される。ポリオールB1を、アルキド樹脂Aを改質するのに使用されるC種の化合物と同一であるか又は異なるC種の化合物と反応させることも可能である。この場合、反応生成物Bは独立して形成され、この反応生成物Bをその後、Cとの反応前にAと混和するか、又は反応生成物BをAとCとの反応生成物ACと混合する。
【0046】
その後、改質アルキド樹脂AC(又はACとBとの混合物)を、好ましくは40℃〜80℃の温度で乳化剤Dに混和し、十分に均質化した後、水中に分散させるか、又は好ましくは、数回に分けて水を、乳化剤D及び改質アルキド樹脂AC(又はACとBとの混合物)の十分に均質化して加熱された(上述の40℃〜80℃に)混合物に添加する。
【0047】
本発明による放射線硬化性水分散アルキド樹脂組成物は、適切な添加剤、例えば、光開始剤(UV硬化のための)、殺生物剤、顔料、染料、フィラー、レベリング剤、沈降防止剤及び流動性調節剤(flow additives)、また任意でさらに、好ましくは自己乳化するか又は外部乳化される放射線硬化性バインダの添加によって、コーティング組成物へと調合される。
【0048】
これらのコーティング組成物は、とりわけ、インク、オーバープリントワニスとして使用することができ、紙、厚紙、木材又は木質材料、並びにプラスチック及び金属を、とりわけ良好に塗装するのに役立つ。
【0049】
反応生成物AC、及び/又は分子中に少なくとも1つのオレフィン不飽和を含む不飽和脂肪酸又は不飽和油をベースとする乳化剤Dを含むコーティング組成物は、放射線及び/又は自然乾燥によって硬化することができる。
【0050】
本発明はさらに、本発明による組成物を使用する方法であって、光開始剤、顔料、着色剤、分散剤、流動性調節剤、増粘剤、艶消剤及び定着剤の群から選択される添加剤の1つ又は複数を、本発明によるポリエステル樹脂組成物に添加する工程、このようにして得られた混合物を混合し均質化して、塗料、コーティング又はインクを得る工程、前記塗料、コーティング又はインクを、未硬化塗膜(wet film)の形態で基板の表面に塗布する工程、膜に含まれる水及び任意で他の揮発性成分の少なくとも一部を乾燥又はフラッシュオフする工程、並びに膜を硬化するのに十分な高エネルギー放射線にコーティングされた基板を曝露する工程を有する、本発明による組成物を使用する方法を提供する。
【0051】
特定の好ましい実施形態によれば、乾燥剤を添加剤として付加的に使用し、放射線の照射と同時又は照射後に、自然乾燥をもたらすように、塗装基板を空気酸化に付す。
【0052】
限定するものではないが、本発明をさらに説明するために、以下の実施例を提示する。実施例中、並びに本明細書中では、以下の定義を使用する。
【0053】
酸価は、DIN EN ISO 3682(DIN 53 402)に従い、試験中に試料を中和するのに必要とされる水酸化カリウムの質量mKOHと、この試料の質量m、又は溶液若しくは分散液の場合には試料中の固体の質量との比率と定義され、慣習的な単位は「mg/g」である。
【0054】
ヒドロキシル価は、DIN EN ISO 4629(DIN 53 240)に従い、試料と同数のヒドロキシル基を有する水酸化カリウムの質量mKOHと、その試料の質量m(溶液又は分散液に関しては試料中の固体の質量)との比率と定義され、慣習的な単位は「mg/g」である。
【0055】
特に明記しない限り、単位「%」(「g/(100g)」、又は「cg/g」)を有する全ての量、とりわけ溶液又は分散液の濃度又は強度は、溶解若しくは分散又は混和した物質の質量を、溶液若しくは分散液又は混合物の質量で除すことによって算出される質量分率である。
【0056】
動粘度は、コーンプレート型粘度計を用いて100s−1の剪断速度により25℃で測定される。
【実施例】
【0057】
ビニル官能性アルキド樹脂
[実施例R1]ビニル官能性アルキド樹脂とビニル官能性ポリオールとの混合物
標準的な樹脂合成反応装置内で、62kgの安息香酸、105kgのヤシ油脂肪酸、87kgのペンタエリスリトール、及び70kgの無水フタル酸を230℃に加熱した。共沸剤としてトルエンを用いた230℃における共沸蒸留、及び固体質量分率80%までのトルエンによるその後の希釈により、3.0mg/gの酸価、トルエンにより固体質量分率50%まで希釈された45mPa・sの動粘度、及び120mg/gのヒドロキシル価を有する、373kgのアルキド樹脂が得られた。アルキド樹脂を、355g/molの平均モル質量を有する87kgのグリセロールプロポキシレートと90℃で混合し、2.5kgのp−トルエンスルホン酸及び1.2kgのヒドロキノンモノメチルエーテルを触媒及び阻害剤としてそれぞれ添加した。78.5kgのアクリル酸の添加後、反応物質を125℃に加熱すると共に、7%の酸素含量を有する希薄空気流を3m/時間で反応装置に吹き込んだ。125℃で、酸価が30mg/g未満に達するまで、共沸剤としてトルエンを用いた共沸蒸留を行った。共沸剤を除去する減圧下におけるその後の蒸留により、99.5%の純度、10mg/gの酸価、及び25Pa・sの動粘度を有する、445kgの生成物が得られた。
【0058】
[実施例R2]ビニル官能性アルキド樹脂
実施例R1と同様に、137kgの綿実油脂肪酸、87kgのペンタエリスリトール、及び74kgの無水フタル酸を230℃に加熱した。共沸剤としてトルエンを用いた230℃における共沸蒸留、及び固体質量分率80%までのトルエンによるその後の得られた樹脂の希釈により、1.5mg/gの酸価、トルエンにより固体質量分率50%まで希釈された溶液に関して測定された40mPa・sの動粘度、及び210mg/gのヒドロキシル価を有する、373kgのアルキド樹脂が得られた。このアルキド樹脂中に、2.5kgのp−トルエンスルホン酸及び1.2kgのヒドロキノンモノメチルエーテルを、触媒及び阻害剤としてそれぞれ添加した。85kgのアクリル酸を添加した後、反応物質を125℃に加熱すると共に、7%の酸素含量を有する希薄空気流を3m/時間で反応装置に吹き込んだ。125℃で、酸価が30mg/g未満に達するまで、共沸剤としてトルエンを用いた共沸蒸留を行った。トルエン及び過剰なアクリル酸を除去するための減圧下におけるその後の蒸留により、99.0%の純度、12mg/gの酸価、及び13Pa・sの動粘度を有する、340kgの生成物が得られた。
【0059】
[実施例R3]ビニル官能性アルキド樹脂
標準的な樹脂合成反応装置内で、210kgのダイズ油及び55kgのペンタエリスリトールを、触媒として0.03gの水酸化リチウムを用いて265℃でエステル交換し、82kgの無水フタル酸を200℃で添加した後、反応混合物を230℃に加熱した。共沸剤としてトルエンを用いた230℃における共沸蒸留、及び固体質量分率80%までのトルエンによるその後の希釈により、5.0mg/gの酸価、60%強度のトルエン溶液に関して測定された250mPa・sの動粘度、及び90mg/gのヒドロキシル価を有する、422kgのアルキド樹脂が得られた。このアルキド樹脂を、触媒及び阻害剤としてそれぞれ2.5kgのp−トルエンスルホン酸及び1.2kgのヒドロキノンモノメチルエーテルと90℃で混合した。42.2kgのアクリル酸を添加した後、反応物質を125℃に加熱すると共に、7%の酸素含量を有する希薄空気流を3m/時間で反応装置に吹き込んだ。125℃で、酸価が30mg/g未満に達するまで、共沸剤としてトルエンを用いた共沸蒸留を行った。トルエン及び過剰なアクリル酸を除去する減圧下におけるその後の蒸留により、99.0%の純度、9mg/gの酸価、及び42Pa・sの動粘度を有する、374kgの生成物が得られた。
【0060】
[実施例R4]ビニル官能性アルキド樹脂
34.1kgのトルエンジイソシアネートを、23kgのヒドロキシエチルアクリレート、及び触媒として0.02kgのジブチルスズジラウレート、及び安定剤として0.09kgのブチル化ヒドロキシトルエンと反応させた。反応は50℃を超えない温度で行い、比イソシアネート基含量が3.44mmol/gである生成物が得られた(14.4%のイソシアネート基(M=42.02g/mol)の質量分率に相当する)。この生成物をM1と称する。
【0061】
100%の固体質量分率を有し、110mg/gのヒドロキシル価を有する、実施例R1で調製したような100kgのアルキド樹脂を、触媒として44.8kgのグリセロールプロポキシレートトリアクリレート及び0.05kgのジブチルスズジラウレート、並びに安定剤として0.05kgのブチル化ヒドロキシトルエンと混合した。この混合物をM2と称する。
【0062】
成分M1及び成分M2を共に反応装置内に添加し、85℃に加熱した。85℃で熟成させると、0.05mmol/g以下の比イソシアネート基含量が得られた(0.20%のイソシアネート基(M=42.02g/mol)の質量分率に相当する)。事後安定化(post-stabilisation)を0.05kgのブチル化ヒドロキシトルエンにより行った。22kgのグリセロールプロポキシレートトリアクリレートによるさらなる希釈により、60℃における15Pa・sの動粘度を有するウレタンアクリレート生成物が得られた。
【0063】
[実施例R5]ビニル官能性アルキド樹脂
43.6kgのイソホロンジイソシアネートを、23kgのヒドロキシエチルアクリレート、及び触媒として0.02kgのジブチルスズジラウレート、及び安定剤として0.10kgのブチル化ヒドロキシトルエンと反応させた。反応は、50℃を超えない温度で行い、2.96mmol/gの比イソシアネート基含量を有する生成物が得られた(12.4%のイソシアネート基(M=42.02g/mol)の質量分率に相当する)。この反応生成物をM1と称する。
【0064】
100%の固体質量分率を有し、110mg/gのヒドロキシル価を有する、実施例R1で調製したような100kgのアルキド樹脂を、47.5kgのグリセロールプロポキシレートトリアクリレート、及び触媒として0.05kgのジブチルスズジラウレート、及び安定剤として0.05kgのブチル化ヒドロキシトルエンと混合した。この混合物をM2と称する。
【0065】
成分M1及び成分M2の両方を共に反応装置内に添加し、85℃に加熱した。85℃で熟成させると、0.05mmol/g以下の比イソシアネート基含量が得られた(0.20%のイソシアネート基(M=42.02g/mol)の質量分率に相当する)。事後安定化を0.05kgのブチル化ヒドロキシトルエンにより行った。24kgのグリセロールプロポキシレートトリアクリレートによるさらなる希釈により、60℃における10Pa・sの動粘度を有するウレタンアクリレート生成物が得られた。
【0066】
[実施例R6]ビニル官能性アルキド樹脂
34.1kgのトルエンジイソシアネートを、26kgのヒドロキシプロピルアクリレート、及び触媒として0.02kgのジブチルスズジラウレート、及び安定剤として0.1kgのブチル化ヒドロキシトルエンと反応させた。反応は、50℃を超えない温度で行い、3.29mmol/gの比イソシアネート基含量を有する生成物が得られた(13.8%のイソシアネート基(M=42.02g/mol)の質量分率に相当する)。この生成物をM1と称する。
【0067】
100%の固体質量分率を有し、110mg/gのヒドロキシル価を有する、実施例R1で調製したような100kgのアルキド樹脂を、45.6kgのグリセロールプロポキシレートトリアクリレート、及び触媒として0.05kgのジブチルスズジラウレート、及び安定剤として0.05kgのブチル化ヒドロキシトルエンと混合した。この混合物をM2と称する。
【0068】
成分M1及び成分M2の両方を共に反応装置内に添加し、85℃に加熱した。85℃で熟成させると、0.05mmol/g以下の比イソシアネート基含量が得られた(0.20%のイソシアネート基(M=42.02g/mol)の質量分率に相当する)。事後安定化を0.05kgのブチル化ヒドロキシトルエンにより行った。23kgのグリセロールプロポキシレートトリアクリレートによるさらなる希釈により、60℃における15Pa・sの動粘度を有するウレタンアクリレート生成物が得られた。
【0069】
[実施例R7]ビニル官能性アルキド樹脂
標準的な樹脂合成反応装置内で、410kgのアマニ油、8kgのトール油脂肪酸、70kgのグリセロール及び24kgのペンタエリスリトールを、0.10kgの水酸化リチウムを触媒として用いて260℃でエステル交換し、135kgの無水フタル酸を180℃で添加した後、共沸蒸留しながら反応混合物を230℃に加熱した。酸価が3mg/g未満に達したら、減圧下における蒸留を230℃で行い、0.5mg/gの酸価、60%強度のトルエン溶液に関して測定された100mPa・sの動粘度、及び100mg/gのヒドロキシル価を有する、631kgの無溶剤アルキド樹脂が得られた。
【0070】
100kgのこのアルキド樹脂を、(実施例R6に記載したように)トルエンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとの52kgの反応生成物と混合し、85℃に加熱した。85℃で熟成させると、0.05mmol/g以下の比イソシアネート基含量が得られた(0.20%のイソシアネート基(M=42.02g/mol)の質量分率に相当する)。事後安定化は0.05kgのブチル化ヒドロキシトルエンにより行った。17kgのグリセロールプロポキシレートトリアクリレートによるさらなる希釈により、60℃における20Pa・sの動粘度を有するウレタンアクリレート生成物が得られた。
【0071】
[実施例R8]ビニル官能性アルキド樹脂
34.1kgのトルエンジイソシアネートを、74kgのジトリメチロールプロパントリアクリレート、及び触媒として0.02kgのジブチルスズジラウレート、及び安定剤として0.1kgのブチル化ヒドロキシトルエンと反応させた。反応は、50℃を超えない温度で行い、1.81mmol/gの比イソシアネート基含量を有する生成物が得られた(7.6%のイソシアネート基(M=42.02g/mol)の質量分率に相当する)。この生成物をM1と称する。
【0072】
100%の固体質量分率を有し、110mg/gのヒドロキシル価を有する、実施例R1で調製したような100kgのアルキド樹脂を、59.1kgのグリセロールプロポキシレートトリアクリレート、及び触媒として0.06kgのジブチルスズジラウレート、及び安定剤として0.06kgのブチル化ヒドロキシトルエンと混合した。この混合物をM2と称する。
【0073】
成分M1及び成分M2の両方を共に反応装置内に添加し、85℃に加熱した。85℃で熟成させると、0.05mmol/g以下の比イソシアネート基含量が得られた(0.20%のイソシアネート基(M=42.02g/mol)の質量分率に相当する)。事後安定化を0.05kgのブチル化ヒドロキシトルエンにより行った。630kgのグリセロールプロポキシレートトリアクリレートによるさらなる希釈により、60℃における62.8Pa・sの動粘度を有するウレタンアクリレート生成物が得られた。
【0074】
乳化剤
[実施例E1]
標準的な樹脂合成反応装置内で、476kgのヒマワリ油脂肪酸、176kgのソルビトール、335kgの無水テトラヒドロフタル酸、及び触媒として2kgのジブチルスズジラウレートを180℃に加熱し、750g/molの数平均モル質量を有する820kgのモノメトキシポリエチレングリコールを添加し、混合物をさらに230℃に加熱した。共沸剤としてキシレンを用いた230℃における共沸蒸留、及び共沸剤を除去するための減圧下におけるその後の蒸留により、100%の純度、3mg/gの酸価、及び固体質量分率が45%になるまで水で希釈された7500mPa・sの動粘度を有する、1850kgの生成物が得られた。
【0075】
[実施例E2]
反応物質がエタノール中に無限溶解するまで、5gの水酸化リチウムを触媒として用いて、27.2kgのアマニ油及び7.2kgのグリセロールを265℃でエステル交換した。100℃に冷却した後、21.2kgの無水ヘキサヒドロフタル酸、及び750g/molの数平均モル質量を有する46.4kgのモノメトキシポリエチレングリコールを充填し、0.2kgのトリエチルアミンを触媒として添加し、反応混合物をさらに230℃に加熱した。共沸剤としてキシレンを用いた230℃における共沸蒸留、及びキシレンを除去するための減圧下におけるその後の蒸留により、1.5mg/gの酸価、及び固体質量分率が50%になるまで水で希釈された7200mPa・sの動粘度を有する、100kgの生成物が得られた。
【0076】
[実施例E3]
実施例E1と同様に、15.8kgのヤシ油脂肪酸、9.6kgのグリセロール、19.1kgの無水テトラヒドロフタル酸、及び触媒として0.09kgのトリエチルアミンを180℃に加熱し、750g/molの数平均モル質量を有する55.3kgのモノブトキシポリエチレングリコールを添加し、混合物を230℃に加熱した。共沸剤としてキシレンを用いた230℃における共沸蒸留、及び共沸剤を除去するための減圧下におけるその後の蒸留により、100%の純度及び8mg/gの酸価を有する100kgの生成物が得られた。残ったカルボキシル官能基を、3.7kgのネオデカン酸オキシラニルメチルエステルと反応させて、酸価を1.0mg/g未満にした。50%強度の水分散液に関して測定された生成物の動粘度は5500mPa・sであった。
【0077】
[実施例1〜実施例12]
本発明に従い、表1に定めた割合及び条件下でエマルションを調製した。成分Eを、適切な攪拌器を備える標準的な樹脂合成反応装置に充填し、事前加熱した成分R(添加温度T)を60分にわたって攪拌しながら添加した。1時間の均質化後に、脱塩水を数回に分けて添加することによって、エマルション中における63%〜67%の固体質量分率に相当する所望の塗布粘度まで生成物を希釈した。
【0078】
エマルションは全て、乾燥特性及び膜品質の観点から、溶剤を含有する系に相当する膜をもたらした。エマルションの安定性は、40℃及び80℃における貯蔵、また−10℃/25℃における3回の凍結融解サイクルにより求めた。本発明のエマルションは全て240時間(80℃)及び2160時間(40℃)後でも満足のいくものであった。3回の凍結融解サイクル後にエマルションの有意な変化はなかった。
【0079】
表1:エマルションの調製、実施例1〜実施例8
【表1】

【0080】
*)およそ80%のオキシエチレン単位の質量分率を有するオレイルアルコールエトキシレートを、エマルションの固形分中におけるオレイルアルコールエトキシレートの質量分率が2%となるような量でさらに添加した。
:固体質量分率
η:動粘度
【0081】
CE1(比較例1)、すなわち、60mPa・sの粘度、40%の固体質量分率及び7.2のpHを有する、水分散ポリウレタンアクリレートを含む商業用UV硬化系、及び
CE2(比較例2)、すなわち、42%の固体質量分率、23℃における700mPa・sの粘度、及び8.0のpHを有する、ウレタン及びアクリルの両方で改質される商業用酸化乾燥用水系アルキド、
と比較して、実施例1〜実施例8のエマルションを試験した。
【0082】
実施例の組成物に、光開始剤配合物(エマルション中のバインダ固体質量の1%の、同質量のベンゾフェノンとCPK(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン)との混合物、及びエマルション中のバインダ固体質量の0.5%のIRGACURE(登録商標)DW 819(ビス−アシルホスフィンオキシドの45%強度の水分散液、Ciba Specialty Chemicals))、並びに、艶消剤として、バインダ固体の1.5%の、10μmの平均粒径を有する熱処理された非被覆シリカ((登録商標)Acematt TS 100、Degussa-Evonik Industries)、及びバインダ固体質量の3%の、25μmの平均粒径を有する高密度ポリエチレンワックス水分散液((登録商標)Aquamat 208、BYK-Chemie GmbH)を添加した。同質量のポリエーテルポリウレタン増粘剤(ADDITOL(登録商標)VXW 6360、Cytec Surface Specialties Austria GmbH)と脱塩水との混合物をエマルション中のバインダ固体質量の1.5%に相当する量で添加することによって、調合組成物の粘度を500mPa・s〜1000mPa・sに調節した。調合組成物を、12g/m〜14g/mの単位面積充填量(areal load)でサペリ材(sappelli)パネル及びブナ材パネルに塗布し、80℃の炉内で5分間乾燥させた。塗装及び乾燥させたパネルを、5m/分、10m/分及び15m/分のコンベヤ速度で80W/cmの水銀紫外線ランプに曝露することによって、放射線硬化を行った。反応性、耐引っ掻き性(コインテスト、Hamberger Hobelの試験、Erichsenの引っ掻き試験を用いる)及び接着性及び「木質改善性」(木材湿潤性)についてパネルを評価した。
【0083】
以下の試験方法を用いた。
【0084】
50回のアセトン二重摩擦(ADR試験)又は指の爪による引っ掻きに耐えるコーティングをもたらす反応性は、m/分単位のコンベヤ速度として表す。この方法は、UV硬化型コーティングを完全に架橋するのに必要な最小UV線量を満たすものである。爪による耐引っ掻き性試験は、UV硬化の1時間後コーティングを指の爪で引っ掻くことによって、室温で行った。
【0085】
接着性試験の手法は、ASTM D3359、DIN 53 151及びISO 2409規格に基づくものである。接着テープの細片を表面上に置き、剥ぎ取った。評定は「5B」(最高)から「0B」(最低)までである。
【0086】
「木質改善性」は、木材の湿潤性及び木造建築物の改善性に及ぶものである。コーティングをサペリ材上に塗布すること、それを乾燥させること、及びそれをUVにより硬化させることによって、試験を行う。外観検査を用いて、参照例(reference)と比較して温かみのある艶出し外観(warm wet look aspect)を評価する。サペリ材は暗色の木材であり、かつ水系によりもたらされる白色化を証明するのに適切であるため、これを選ぶ。評定は「1」(最良)から「5」(最低)までである。
【0087】
耐引っ掻き性は、Hambergerの方法に従いかつErichsenの方法に従って、いわゆる「コインテスト」により評価される。
【0088】
コインテストを用いて、硬化膜を鋭い縁を有する硬貨で引っ掻く(真新しい2ユーロ硬貨を用いる)。微小クラックをメチレンブルー溶液(1%強度の水溶液)により着色した後、引っ掻いた表面を参照試料と比較する。評定はスケール1(最高)から5(最低)までで行う。
【0089】
Hamberger Hobelの耐引っ掻き性試験:コーティングをHamberger Hobelの試験機で1時間後に引っ掻くことによって、室温で試験を行う。結果はニュートンで表す。高レベルは、如何なる住居の劣化に対しても最高の保護をもたらすと予想される。コーティングは、堅い平らな基板上に塗布しなければならず、その上に装置を押し付ける必要がある。数センチメートルの引っ掻き傷が塗装表面上にできるまで、スクリューにかかる圧力を増大させる。スクリューの先端にかけられた力を記録する。
【0090】
Erichsenの方法による耐引っ掻き性評価:引っ掻き用のピンがコーティングの表面を引っ掻く重量を求める。かけられた重量が大きいほど、コーティングの耐引っ掻き性は良好である。結果はN単位の重量として読める。
【0091】
実施例1〜実施例8に関する結果を表2にまとめる。
【0092】
【表2】

【0093】
「2×5」は、各々5m/分の速度における2回のパスを意味する。本発明による、アルキド樹脂をベースとする放射線硬化性組成物は、反応性、耐引っ掻き性及び接着性に関して、ポリウレタンアクリレートをベースとする商業用UV硬化系と同様の好ましい特性を有するが、より良好な木材湿潤性及び木造建築物の改善(「木質改善性」)を示すことを、この表から見ることができる。
【0094】
[実施例9〜実施例12]
本発明に従い、表4に定めた割合及び条件を用いてさらなるエマルションを調製した。初めに成分Eを、適切な攪拌器を備える標準的な樹脂合成反応装置に充填し、事前加熱した成分R(添加温度T)を60分にわたって攪拌しながら添加した。1時間の均質化後に、脱塩水を数回に分けて添加することによって、エマルション中における63%〜67%の固体質量分率に相当する所望の塗布粘度まで生成物を希釈した。
【0095】
エマルションは全て、乾燥特性及び膜品質の観点から、溶剤を含有する系に相当する膜をもたらした。エマルションの安定性は、40℃及び80℃における貯蔵、また−10℃/25℃における3回の凍結融解サイクルにより求めた。本発明のエマルションは全て240時間(80℃)及び2160時間(40℃)後でも満足のいくものであった。3回の凍結融解サイクル後にエマルションの有意な変化はなかった。
【0096】
表4:エマルションの調製、実施例9〜実施例12
【表3】

【0097】
実施例11において、水乳化性組合せ乾燥剤(それぞれ約5%の質量分率のコバルトと、約0.22%の質量分率のリチウムと、約7.5%の質量分率のジルコニウムとを含み、ノニルフェノールエトキシレートを含まない)を添加すると、バインダ固体に対する金属の質量比率が約2%となる。他の添加剤及び処理条件は、実施例1〜実施例8に記載したものと同様とした。表6に挙げた硬度値は、秒単位で測定される減衰時間として定められる、Persozの方法(DIN EN ISO 1522)に従って求められる振子硬度の値である。他の試験方法は全て上記で説明した通りである。
【0098】
表5:結果
【表4】

【0099】
結果から、アルキド樹脂と反応させるのに多官能性アクリレートを使用した実施例12の組成物が、単官能性の生成物と比較して、より高い反応性をもたらすことが分かる。
【0100】
表6は、実施例11の系による自然乾燥単独と、自然乾燥及びUV放射の組合せとの比較を示す。
【0101】
表6:Persoz硬度結果(デュアル硬化作用、減衰時間(秒))
【表5】

【0102】
自然乾燥単独の場合には、塗装されたばかりの基板に関する取扱い性の問題を示すおそれのある硬度のゆっくりとした上昇を有することが、はっきりと分かる。自然乾燥及び放射線の照射による架橋の組合せは、自然乾燥単独(表6の左側)に対して、良好な初期硬化及び最終硬度値の増大を示す。架橋の開始は当然のことながら、放射線の照射により促進され、これは予想することができるが、より高い硬度は通常、脆性を伴うため、塗膜の弾性を維持している間の最終硬度の改善は予想できなかったことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化性水分散ポリエステル樹脂組成物であって、
乳化剤(D);及び
ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂(A)と、ラジカル重合することができ、かつ、エステル結合又はウレタン結合によりこのポリエステル樹脂の主鎖に結合するオレフィン性不飽和化合物(C)との反応生成物(AC)、
からなる、放射線硬化性水分散ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記乳化剤(D)が、脂肪酸(D1)と、1分子当たり少なくとも3つのヒドロキシル基を有する多価アルコール(D2)と、カルボン酸(D3)又はその無水物と、モノアルコキシポリアルキレングリコール(D4)とのポリエステル化生成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ラジカル重合することができるオレフィン性不飽和化合物(B)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記化合物(B)が、ポリオール(B1)と、ラジカル重合することができるオレフィン性不飽和化合物(C)との反応生成物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂(A)が、8個〜24個の炭素原子を有する脂肪酸(A1)と、少なくとも3つのヒドロキシル基を有する多価脂肪族アルコール(A3)と、少なくとも2つのカルボキシル基を有する芳香族、脂環式、又は直鎖状若しくは分岐状脂肪族のカルボン酸(A4)、又はその無水物と、任意に、少なくとも2個の炭素原子及び7個以下の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族モノカルボン酸(A2)と、さらに任意に、好ましくは不飽和油である油(A5)とのエステル化生成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオール(B1)が、2個〜6個の炭素原子を有する1,2−エポキシアルカン(B11)と、1分子当たり少なくとも3個の炭素原子及び少なくとも3つのヒドロキシル基を有する多価脂肪族アルコール(B12)との反応生成物である、脂肪族ポリエーテルポリオールである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記オレフィン性不飽和化合物(C)が、エステル結合により前記ポリエステル樹脂の主鎖に結合し、前記オレフィン性不飽和化合物(C)が、α,β−不飽和脂肪族モノカルボン酸、及びオレフィン性不飽和脂肪族ジカルボン酸のモノエステルからなる群から選択される不飽和酸(C1)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記オレフィン性不飽和化合物(C)が、ウレタン結合により前記ポリエステル樹脂の主鎖に結合し、使用される前記オレフィン性不飽和化合物(C)が、不飽和脂肪族アルコール(C21)と、ジイソシアネート、又は1分子当たり3つ以上のイソシアネート基を有する多官能性イソシアネート(C22)とのイソシアネート官能性反応生成物(C2)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
比不飽和度n/mACが0.3mol/kg〜3mol/kgであり、nは、前記反応生成物(AC)の質量mAC中のオレフィン性二重結合の物質量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記反応生成物(AC)の質量mACに対する前記乳化剤(D)の質量mの比率が0.03〜0.25である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記乳化剤(D)中の前記脂肪酸(D1)の少なくとも一部及び/又は前記多価アルコール(D2)の少なくとも一部が、D1による1つ又は複数の脂肪酸のエステルである油、及びグリセロールに置き換えられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物を製造する方法であって、
a)反応器中で、8個〜24個の炭素原子を有する脂肪酸(A1)と、少なくとも3つのヒドロキシル基を有する多価脂肪族アルコール(A3)と、少なくとも2つのカルボキシル基を有する芳香族、脂環式、又は直鎖状若しくは分岐状脂肪族のカルボン酸(A4)、又はその無水物と、任意に、少なくとも2個の炭素原子及び7個以下の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族モノカルボン酸(A2)と、任意に、好ましくは不飽和油である油(A5)とを混合する工程であって、これらの遊離体の混合物中でヒドロキシル基が確実に化学量論的に過剰となるように前記遊離体の量及び種類を選ぶ工程、
b)このようにして得られた前記混合物を、水を除去しながら140℃〜250℃の温度に加熱して、ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂(A)を得る工程、
c)エステル基又はウレタン基である基の化学結合の形成下で、Aのヒドロキシル基と反応性であるオレフィン性不飽和化合物(C)を添加し、AとCとの混合物を加熱して、反応及び前記化学結合の形成を行う工程、
d)均質混合物が得られるまで攪拌しながら、工程c)の反応生成物を乳化剤(D)に添加する工程、及び
e)数回に分けて攪拌しながら水を工程d)の混合物に添加し、45%〜75%の固体質量分率に調節して、安定なエマルションを得る工程、
からなる、請求項1に記載の組成物を製造する方法。
【請求項13】
前記オレフィン性不飽和化合物(C)との工程c)の反応前に、工程a)のポリエステル樹脂(A)をポリオール(B1)と混合する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物を使用する方法であって、
光開始剤、顔料、着色剤、分散剤、流動性調節剤、増粘剤、艶消剤及び定着剤の群から選択される添加剤の1つ又は複数を、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物に添加する工程、
このようにして得られた混合物を混合し均質化して、塗料、コーティング又はインクを得る工程、
前記塗料、コーティング又はインクを、未硬化塗膜の形態で基板の表面に塗布する工程、
前記膜に含まれる水の少なくとも一部を乾燥又はフラッシュオフする工程、及び
前記コーティングされた基板を高エネルギー放射線に曝露して、前記膜を硬化させる工程、
からなる、請求項1に記載の組成物を使用する方法。
【請求項15】
乾燥剤も添加剤として使用し、前記放射と同時又は前記放射後に、自然乾燥をもたらすように前記コーティングされた基板を空気酸化に付す、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2012−505276(P2012−505276A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530494(P2011−530494)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063151
【国際公開番号】WO2010/040821
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(509058612)サイテク サーフェイス スペシャルティーズ エス.エー. (2)
【Fターム(参考)】