水分測定装置及び水分測定方法
【課題】保温材で取り囲まれる配管及び容器のいずれかの外面とその保温材を取り囲む保温カバーの外面との間に形成される領域内に存在する水分の検出精度を向上できる水分測定装置を提供する。
【解決手段】水分測定装置1は測定装置本体部5を有し、測定装置本体部5のケーシング25内に、中性子源装置3及び中性子検出装置6が設けられる。中性子源装置3は高速中性子を放出する中性子源2を有し、中性子検出装置6は中性子検出器7をコリメータ8で取り囲んでいる。コリメータ8に設けられたコリメータ開口部9には、複数の仕切り部材10が配置され、これらの仕切り部材10によって複数のスリット11が形成されている。中性子源2から放出された高速中性子は、減速材24で減速された後、保温領域内に存在する水分34でさらに減速されて熱中性子になる。この熱中性子はスリット11を通って中性子検出器7で検出される。
【解決手段】水分測定装置1は測定装置本体部5を有し、測定装置本体部5のケーシング25内に、中性子源装置3及び中性子検出装置6が設けられる。中性子源装置3は高速中性子を放出する中性子源2を有し、中性子検出装置6は中性子検出器7をコリメータ8で取り囲んでいる。コリメータ8に設けられたコリメータ開口部9には、複数の仕切り部材10が配置され、これらの仕切り部材10によって複数のスリット11が形成されている。中性子源2から放出された高速中性子は、減速材24で減速された後、保温領域内に存在する水分34でさらに減速されて熱中性子になる。この熱中性子はスリット11を通って中性子検出器7で検出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分測定装置及び水分測定方法に係り、特に、保温材で取り囲まれる配管及び容器(タンク、塔及び槽等)等のいずれかの外面とその保温材を取り囲む保温カバーの外面との間に形成される領域(以下、便宜的に保温領域という)に存在する水分を測定するのに好適な水分測定装置及び水分測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学プラント、原子力プラント及び火力プラント等の各種プラント設備は、配管及び容器を有している。これらの配管及び容器は、保温、保冷及び結露防止等を目的として表面が保温材で覆われている。保温材は、さらに、金属製の保温カバーで覆われている。保温カバーの経年劣化等に起因して、保温カバーの隙間から雨水等の水分が保温カバー内に浸入する。この水分が例えば炭素鋼製の配管の表面を腐食させる要因になっている。
【0003】
配管及び容器の点検は、仮設足場を配管及び容器の周囲に設置し、作業員が保温カバー及び保温材を外して目視により配管及び容器の表面での腐食発生状況を確認することによって行われる。作業員による点検は、配管等の表面から保温カバー及び保温材を取り外す必要があり、多大な時間を必要とする。
【0004】
このような問題を解消するために、保温カバー及び保温材を取り外さないで配管等の腐食を点検する非破壊検査技術が開発されている。この非破壊検査技術の一例が特開2008−215815号公報に説明されている。この技術は、中性子源(例えば、カリホルニウム252)及び中性子検出器を有する水分測定装置を用いて、保温領域内に存在する水分を検出するものである。すなわち、中性子源から放出された高速中性子が配管等に取り付けられている保温材に到達する。保温領域に水分が存在する場合には、その高速中性子は保温領域内に存在する水分によって熱中性子化される。中性子検出器はこの熱中性子を検出する。熱中性子が検出された場合には、保温領域内に水分が存在しており、配管等の表面が腐食される環境にあると判断される。
【0005】
特開2008−215815号公報に記載された水分測定装置では、中性子検出器7を取り囲んでいるコリメータに形成されたコリメータ開口部(中性子入射口)は、コリメータ開口部を基点とした、配管の外面に対する接線がこの外面と接する接点とこの接点を基点とした保温材の厚み方向での保温カバーの外面の位置との間を向いて配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−215815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2008−215815号公報に記載された水分測定装置は、中性子検出器をコリメータで覆っており、コリメータに形成されたコリメータ開口部から入射する限られた中性子を中性子検出器で計測する。このため、コリメータ開口部から中性子検出器に到達する中性子入射量が少なくなり、保温領域に存在する水分の検出精度が低下する。この水分の検出精度を向上させるためには、コリメータ開口部からの入射中性子量を増加させることが必要となる。
【0008】
本発明の目的は、保温材で取り囲まれる配管及び容器のいずれかの外面とその保温材を取り囲む保温カバーの外面との間に形成される領域内に存在する水分の検出精度を向上できる水分測定装置及び水分測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、熱中性子を検出する中性子検出器を取り囲むコリメータの中性子入射開口部内に放射線遮へい材で構成された少なくとも1つの仕切り部材を設置し、この仕切り部材によって仕切られた、中性子検出器に入射される熱中性子が通過する複数のスリットを、中性子入射開口部内に形成することにある。
【0010】
放射線遮へい材で構成された少なくとも1つの仕切り部材で仕切られた複数のスリットを、コリメータの中性子入射開口部内に形成しているので、熱中性子の入射範囲を狭くすることができ、中性子入射開口部の、中性子検出器からスリットの先端に向かう方向と直交する方向で且つ仕切り部材の表面に垂直な方向での幅を広くすることができる。このため、各スリットを通して中性子検出器に入射する熱中性子の量を増加することができるので、水分の検出精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保温材で取り囲まれる配管及び容器のいずれかの外面とその保温材を取り囲む保温カバーの外面との間に形成される領域内に存在する水分の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の水分測定装置の斜視図である。
【図2】図1に示す測定装置本体部の詳細な内部構成を示す斜視図である。
【図3】実施例1の水分測定装置で、配管の周囲に存在する本材内の水分を測定している状態を示す説明図である。
【図4】図1に示す水分測定装置の遮へい蓋移動装置の詳細な構成図である。
【図5】図1に示す遮へい蓋の前面から見た、遮へい蓋が開いている状態を示す説明図である。
【図6】図1に示す遮へい蓋が開いている状態での中性子検出装置の縦断面図である。
【図7】図1に示す遮へい蓋の前面から見た、遮へい蓋が閉じている状態を示す説明図である。
【図8】図1に示す遮へい蓋が閉じている状態での中性子検出装置の縦断面図である。
【図9】図1に示す中性子検出装置における熱中性子の入射範囲を示す説明図である。
【図10】従来の水分測定装置の中性子検出装置における熱中性子の入射範囲を示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例2の水分測定装置における中性子検出装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、プラントに設けられた、検査対象物である配管(または容器)30を、図1及び図3により説明する。配管30は周囲を保温材(断熱材)31で取り囲まれている。金属製の保温カバー32が、保温材31の周囲を取り囲んで設置されている。配管30内には、該当するプラントで扱っている液体33が、プラントの運転中に流れている。
【0015】
本発明の好適な一実施例である水分測定装置を、図1から図4を用いて説明する。水分測定装置1は、測定装置本体部5及びデータ処理装置22を備えている。測定装置本体部5は、中性子源装置3、ケーシング25、中性子検出装置6、遮へい蓋12、遮へい蓋移動装置13、及び減速材24を有する。
【0016】
中性子源装置3は、容器4を有し、容器4内に中性子源(例えばカリホルニウム252)2を配置している。容器4は放射線遮へい材にて構成し、容器4には中性子放出口(図示せず)が形成されている。減速材24が中性子源2と容器4の間、特に中性子放出口と中性子源2との間に配置される。
【0017】
中性子検出装置6は、細長い中性子検出器7を放射線遮へい材で構成されたコリメータ8で取り囲んで構成される。コリメータ8は、中性子検出器7の軸方向に伸びる、中性子入射口であるコリメータ開口部(中性子入射開口部)9を有する。コリメータ開口部9には、板状の複数枚の仕切り部材10で区切られた複数のスリット11が形成される。仕切り部材10は放射線遮へい材で作られている。本実施例では、3枚の仕切り部材10で4つスリット11が形成される。これらのスリット11が、実質的に中性子入射経路になる。各スリット11は、中性子検出器7の軸方向に細長く伸びている(図5参照)。
【0018】
図3には中性子検出装置6が1つしか示されていないが、水分測定装置1には2つの中性子検出装置6が設けられている(図2参照)。中性子源装置3及びこれらの中性子検出装置6が、ケーシング25内に配置されて測定装置本体部5に取り付けられている。中性子源装置3は、2つの中性子検出装置6の間に配置される。各中性子検出装置6のそれぞれのコリメータ開口部9は、向き合うように、ケーシング25の底面に対して同じ角度で傾斜している。各コリメータ開口部9は、中性子の入射可能な領域を配管30の外面と保温カバー32の内面の間の領域になるように、傾斜角、及び各スリット11の幅を設定している。このスリット11の幅とは、中性子検出器7からスリット11の先端に向う方向と直交する方向で且つ仕切り部材10の表面に垂直な方向(以下、単に、仕切り部材10の表面に垂直な方向という)でのスリット11の幅である。各中性子検出装置6に含まれる各中性子検出器7はケーブル23によってデータ処理装置22に接続される。4個の車輪21、及びハンドル26がケーシング25に設けられる。
【0019】
遮へい蓋移動装置13の詳細な構成を、図4及び図5を用いて説明する。遮へい蓋移動装置13は、モータ14、円板状の回転部材15、ドグ17及びリミットスイッチ18A,18Bを有する。モータ14がコリメータ8の上面に設置された支持部材19に取り付けられ、回転部材15がモータ14の回転軸に取り付けられる。ピン部材16が、回転部材15の前面に取り付けられ、遮へい蓋12に形成された細長い溝20内に挿入されている。ピン部材16は、回転部材15の回転に伴って溝20内を溝20に沿って移動する。遮へい蓋12は、放射線遮へい材で作られており、ピン部材16から外れないようになっている。突起部であるドグ17が回転部材15の裏面に設けられている。リミットスイッチ18A,18Bは、支持部材19に取り付けられ、水平方向において互いに離れた位置に配置される。
【0020】
水分測定装置1を用いた、プラントの配管30を対象とした水分測定方法の一例を、以下に説明する。配管30を対象とした水分測定時には、保温材31及び保温カバー32を取り外さないで、検査対象の配管30を取り囲んでいる保温カバー32の外面に沿って、測定装置本体部5を移動させる。この移動は、作業員が、ケーシング25に設けられたハンドル26を持ち、測定装置本体部5を移動させることによって行われる。4個の車輪21が保温カバー32の外面に接触しているので、測定装置本体部5を容易に移動することができる。
【0021】
測定装置本体部5を保温カバー32の外面に沿って移動させることによって行われる保温領域内に存在する水分34の測定について、詳細に説明する。保温領域は、前述したように、配管30の外面と保温カバー32の外面との間に形成される領域である。
【0022】
中性子源装置3の中性子源2から放出された高速中性子は、中性子源2の前面に位置している減速材24によって減速されてエネルギーの低い中性子(以下、減速中性子という)になる。この減速中性子が保温材31に照射するとき、遮へい蓋12は、図4、図5及び図6に示すように開いており、各スリット11の先端を覆っていない。遮へい蓋12が開いて各スリット11が開放されているとき、ピン部材16が最も高い位置に位置している。配管30の周囲に存在する保温領域内に水分34が存在する場合には、照射された減速中性子はその水分34によってさらに減速され、減速中性子よりもエネルギーが低い熱中性子(以下、第1熱中性子という)になる。減速中性子は、配管30内の液体33によっても減速され、エネルギーの低い熱中性子(以下、第2熱中性子という)になる。第1及び第2熱中性子は、等方的に飛散する。
【0023】
しかしながら、中性子検出装置6のコリメータ開口部9が、中性子の入射可能な領域を配管30の外面と保温カバー32の内面の間の領域にするように、傾斜しているので、配管30内の液体33によって発生した第2熱中性子は、コリメータ8によって遮られて各スリット11を通して中性子検出器7に入射されない。これに対して、水分34によって発生した第1熱中性子35は各スリット11を通過して中性子検出器7に入射される(図6参照)。中性子検出器7は、第1熱中性子35の入射によって中性子検出信号を出力する。この中性子検出信号は、ケーブル23によってデータ処理装置22に入力される。データ処理装置22は、入力した中性子検出信号を計数し、単位時間当たりの熱中性子計数率の情報を求める。
【0024】
保温材31に照射された減速中性子は、保温材31及び保温カバー32並びに保温カバー32の外面に付着した水分、その他の熱中性子発生源によっても減速され減速中性子よりのエネルギーが低い熱中性子(以下、第3熱中性子という)になる。この第3熱中性子も、各スリット11を通過して中性子検出器7によって検出される。中性子検出器7は入射した第3熱中性子に起因した中性子検出信号も出力する。この中性子検出信号もデータ処理装置22に入力され、データ処理装置22で得られる熱中性子計数率情報は、第3熱中性子に基づいた熱中性子計数情報も含んでいる。第3熱中性子に基づいて得られた熱中性子計数情報は、第1熱中性子35に基づいて得られた熱中性子計数率情報に対するノイズとなる。
【0025】
保温領域内に水分34が存在しない正常な状態において、中性子検出器7から出力された中性子検出信号に基づいて得られた正常状態での熱中性子計数率情報がデータ処理装置22の記憶装置(図示せず)に記憶されている。この正常状態での熱中性子計数率情報は、水分34を測定する際におけるバックグラウンド(ノイズ)となる。
【0026】
各スリット11以外の部分でもコリメータ8を透過する熱中性子36が存在する(図6参照)。この熱中性子36は、主に、第2熱中性子であり、中性子検出器7によって検出される。中性子検出器7は、第1熱中性子35、熱中性子36、及び第3熱中性子を検出し、これらの熱中性子による中性子検出信号を出力する。このとき、データ処理装置22で求められる熱中性子計数率は、熱中性子36及び第3熱中性子の影響を受けている。
【0027】
遮へい蓋12を開いて第1熱中性子35の検出を行った後、遮へい蓋12を閉じて各スリット11の先端を遮へい蓋12で覆う。遮へい蓋12を閉じる動作は、遮へい蓋移動装置13によって行われる。モータ14の回転によって回転部材15が回転する。回転部材15は、図5において、時計方向に回転するものとする。この回転部材15の回転によってピン部材16が、下降しながら、図5において、溝20内を右側に移動する。このため、遮へい蓋12は、ピン部材16の動きによって、下方に押し下げられる。ピン部材16が最も低い位置に到達したとき、遮へい蓋12が閉じられ、各スリット11の先端が遮へい蓋12で覆われる(図7及び図8参照)。このとき、ドグ17がリミットスイッチ18Bに接触してリミットスイッチ18Bを作動させる。リミットスイッチ18Bの作動によってモータ停止信号が出力され、このモータ停止信号によってモータ14の駆動が停止される。これにより、各スリット11の先端が遮へい蓋12で覆われた状態に保持される。
【0028】
遮へい蓋12が各スリット11の先端を覆っているとき、この遮へい蓋12を透過する熱中性子35A、及び遮へい蓋12を開いているときと同様に、各スリット11以外の部分でもコリメータ8を透過する熱中性子36が中性子検出器7によって検出される(図8参照)。しかしながら、遮へい蓋12を透過する熱中性子35Aは微少である。このため、遮へい蓋12が閉じられているとき、中性子検出器7は、熱中性子として熱中性子36、熱中性子35Aを検出する。(遮へい蓋12は中性子検出器7側にあり、中性子源2側には無い。)
データ処理装置22は、遮へい蓋12が開いているときに中性子検出器7から出力された中性子検出信号の計数値を、遮へい蓋12が閉じているときに中性子検出器7から出力された中性子検出信号の計数値にて補正する。この計数値の補正を具体的に説明する。
【0029】
遮へい蓋12が開いているときに、各スリット11を通過した熱中性子35及び第3熱中性子に基づいて中性子検出器7から出力された中性子検出信号の計数値をn1、及びこのとき、熱中性子36に基づいて中性子検出器7から出力された中性子検出信号の計数値をn0とする(図6参照)。さらに、遮へい蓋12が閉じているとき、熱中性子35Aに基づいて中性子検出器7から出力された中性子検出信号の計数値をn1’、及びこのとき、熱中性子36に基づいて中性子検出器7から出力された中性子検出信号の計数値をn0’とする(図8参照)。遮へい蓋12が開いているときにおける中性子検出信号の計数値をD0、遮へい蓋12が閉じているときにおける中性子検出信号の計数値をD1とすると、計数値D0及びD1は以下のように表される。
【0030】
D0=n1+n0、D1=n1’+n0’(n1≫n1’)
データ処理装置22は、計数値D0を、計数値D1を用いて補正するために、
D0−D1=n1−n1’+n0−n0’ (1)
の演算を行う。n0≒n0’かつn1≫n1’であるので、(1)式はD0−D1≒n1となる。
【0031】
データ処理装置22は、(1)式による補正によって得られた計数値(D0−D1)に基づいて単位時間当たりの熱中性子計数率の情報を求める。
【0032】
保温領域の水分計測時に計数値(D0−D1)に基づいて得られた熱中性子計数率情報が上記した正常状態での熱中性子計数率情報よりも大きい場合に、保温領域に水分34が存在すると判定する。この判定結果の情報及び熱中性子計数率情報がデータ処理装置22から出力されて表示装置(図示せず)に表示される。オペレータは、表示された判定結果情報及び熱中性子計数率情報を見ることによって、保温領域に水分が存在するか否かを知ることができる。
【0033】
閉じている遮へい蓋12を開くときには、図7の状態でモータ14を駆動する。モータ14は、遮へい蓋12を閉じるときと同じ方向に回転する。このため、ピン部材16が、上昇しながら、図7において、溝20内を左側に移動する。遮へい蓋12は、ピン部材16の動きによって、上方に押し上げられる。ピン部材16が最も高い位置に到達したとき、遮へい蓋12が開き、全てのスリット11の先端が開放される(図4、図5及び図6参照)。このとき、ドグ17がリミットスイッチ18Aに接触してリミットスイッチ18Aを作動させる。リミットスイッチ18Aの作動によってモータ停止信号が出力され、このモータ停止信号によってモータ14の駆動が停止される。これにより、各スリット11の先端が遮へい蓋12で覆われずに開放された状態に保持される。
【0034】
本実施例は、コリメータ8のコリメータ開口部9内に仕切り部材10を配置して複数のスリット11を形成しているので、保温領域以外から各スリット11を通して中性子検出器7に入射される熱中性子の量を著しく低減するができ、保温領域から各スリット11を通して中性子検出器7に入射される熱中性子の量を増大することができる。本実施例において、保温領域以外から中性子検出器7への熱中性子の入射量を著しく低減でき、保温領域から中性子検出器7への熱中性子の入射量を増大できる理由を、図9及び図10を用いて具体的に説明する。
【0035】
図9は、本実施例に用いられる中性子検出装置6おける、コリメータ開口部9を通してコリメータ8内に入射される熱中性子の入射範囲を示している。中性子検出装置6では、直線37と直線37Aの間の領域の熱中性子が、各スリット11を通してコリメータ8内に入射される。図10は、特開2008−215815号公報に記載された水分測定装置に用いられる中性子検出装置38における、仕切り部材10を配置していないコリメータ開口部9Bを通してコリメータ8内に入射される熱中性子の入射範囲を示している。中性子検出装置38では、直線39と直線39Aの間の領域の熱中性子が、各スリット11を通してコリメータ8内に入射される。直線37と直線37Aの間の領域、及び直線39と直線39Aの間の領域を、熱中性子の入射範囲という。
【0036】
中性子検出装置6でのコリメータ開口部9の、仕切り部材10の表面に垂直な方向での幅Wは、熱中性子の入射範囲が配管30の外面と保温カバー32の内面の間の領域になるように設定されている。この中性子検出装置6では、配管30内の液体33によって発生した第2熱中性子を検出しない。中性子検出装置38でのコリメータ開口部9Bの、仕切り部材10の表面に垂直な方向での幅も、中性子検出装置6での幅Wになっている。
【0037】
図9及び図10から明らかであるように、熱中性子の入射範囲は、中性子検出装置38の方が中性子検出装置6よりも広くなっている。このため、中性子検出装置38では第2熱中性子が検出されるので、コリメータ開口部9Bの、仕切り部材10の表面に垂直な方向での幅をWよりも狭くする必要がある。コリメータ開口部9Bのその幅を狭くすることは、保温領域内に存在する水分34による減速中性子の減速によって発生した第1熱中性子35の、中性子検出器7への入射量を減少させることになる。これでは、保温領域に存在するわずかな水分を検出する性能が劣ることになる。
【0038】
中性子検出装置6では、コリメータ開口部9内に仕切り部材10を配置して複数のスリット11を形成しているので、熱中性子の入射範囲を、仕切り部材10を配置していないコリメータ開口部9Bを有する中性子検出装置38よりも狭くすることができる。この結果、コリメータ開口部9の、仕切り部材10の表面に垂直な方向での幅Wを、コリメータ開口部9Bのその幅よりも広くすることができ、中性子検出装置6において、中性子検出器7への熱中性子の入射量を増大させることができる。中性子検出装置6では、保温領域に存在するわずかな水分も検出することができる。本実施例の水分測定装置1は、保温領域に存在する水分の検出精度を向上させることができる。
【0039】
本実施例では、遮へい蓋12を開いているとき及び遮へい蓋12を閉じているときにおいて、中性子検出器7で熱中性子を検出し、遮へい蓋12を開いているときにおける熱中性子の計数値D0と遮へい蓋12を閉じているときにおける熱中性子の計数値D1の差(D0−D1)を求めているので、各スリット11以外の部分でコリメータ8を透過する熱中性子36の影響を除外することができる。このため、保温領域内の水分34の検出精度が、さらに向上する。
【0040】
各スリット11以外の部分でコリメータ8を透過する熱中性子36が存在するのは、その部分でのコリメータ8、すなわち、放射線遮へい体の厚みが薄いからである。コリメータ8の厚みを厚くすることによって、熱中性子36の中性子検出器7への入射を防止することができる。しかしながら、コリメータ8が重くなり、作業員がハンドル26を持って測定装置本体部5を搬送することが困難になる。本実施例は、各スリット11以外の部分で熱中性子36がコリメータ8を透過するので、コリメータ8を軽量化することができ、作業員が測定装置本体部5を容易に搬送することができる。各スリット11以外の部分で熱中性子36がコリメータ8を透過しても、本実施例は、その熱中性子36の影響を除外することができる。
【0041】
中性子源装置3が減速材24を備えていなくてもよい。この場合には、中性子源2から放出された高速中性子が保温材31に含まれている水分34によって、さらには配管30内の液体33によって減速され、熱中性子となる。液体33によって発生した熱中性子は、前述したように、各スリット11を通過することができず中性子検出器7によって検出されない。水分34によって発生した熱中性子は、各スリット11を通過して中性子検出器7で検出される。このため、減速材24を備えていない場合でも、上記した効果、すなわち、水分34の検出精度の向上を図ることができる。
【0042】
本実施例は、中性子源装置3が中性子源2の前方、すなわち中性子源2より保温材31側に減速材24を配置しているので、上記した中性子源装置3に減速材24を設けていない場合に比べて、水分34によって発生した第2熱中性子の検出感度を向上させることができる。これは、中性子源2から放出された高速中性子が減速材24によって予め減速され、減速中性子となる。これによって発生した減速中性子が水分34によってさらにエネルギーの低い第1熱中性子になるため、第1熱中性子の発生量が増大する。したがって、第1熱中性子の検出感度が向上するのである。
【0043】
また、本実施例における水分測定方法は、保温材31及び保温カバー32を配管30から取り外さないで、保温領域に存在する水分を検出することができる。
【0044】
以上において、配管30の周囲に形成された保温領域に存在する水分34の検出について説明したが、本実施例の水分測定装置1を用いて、プラントに設けられた容器の外面とこの容器の周囲を取り囲む保温材を覆う保温カバーの内面の間に形成される領域(保温領域)に存在する水分を検出することもできる。水分測定装置1を用いた水分測定方法は、配管及び容器いずれかの保温領域に対して適用することが可能である。
【0045】
本実施例の水分測定方法では、作業員が測定装置本体部5を手に持って測定装置本体部5を保温カバー32の外面に沿って走査している。特開2008−215815号公報に記載されたように、軸方向走行装置及び周方走行装置を有する走行装置を、保温カバー32の外面に装着し、この走行装置を用いて測定装置本体部5を走査してもよい。容器を取り囲む保温領域内の水分を測定する場合でも、そのような測定装置本体部5を走査させる走行装置を用いてもよい。
【実施例2】
【0046】
本発明の他の実施例である水分測定装置を、図11を用いて説明する。本実施例の水分測定装置1Aは、実施例1の水分測定装置1において中性子検出装置6を中性子検出装置6Aに替えた構成を有する。水分測定装置1Aの他の構成は水分測定装置1と同じである。中性子検出装置6Aは、中性子検出装置6においてコリメータ開口部9をコリメータ開口部9Aに替えた構成を有する。中性子検出装置6Aの他の構成は中性子検出装置6の構成と同じである。水分測定装置1Aにおいて、水分測定装置1と構成の異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
コリメータ開口部9Aには、4枚の仕切り部材10が配置されている。これらの仕切り部材10の配置によって、3つのスリット11及び2つのスリット11Aがコリメータ開口部9Aに形成される。仕切り部材10の表面に垂直な方向でのスリット11Aの幅は、その垂直な方向でのスリット11の幅よりも狭くなっている。各スリット11Aは、コリメータ開口部9Aを形成している、コリメータ8の一部である筺体40の内面にそれぞれ面している。3つのスリット11が、仕切り部材10の表面に垂直な方向で、2つのスリット11Aの間に配置される。コリメータ開口部9Aでは、仕切り部材10の表面に垂直な方向において、2つのスリット11Aが両端にそれぞれ配置され、3つのスリット11がこれらのスリット11Aの間に配置される。
【0048】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例では、幅の異なるスリット11,11Aがコリメータ開口部9A内に形成され、幅の狭いスリット11Aが、仕切り部材10の表面に垂直な方向で、幅の広いスリット11よりも外側に配置されるので、コリメータ開口部9Aを通してコリメータ8内に入射される熱中性子の入射範囲が、実施例1の中性子検出装置6のコリメータ開口部9を通してコリメータ8内に入射される熱中性子の入射範囲よりもさらに狭くなる。このため、仕切り部材10の表面に垂直な方向で中央に位置するスリット11のその垂直な方向での幅を、実施例1の水分測定装置1でのスリット11のその垂直な方向での幅よりも広くすることができる。中性子検出装置6Aは、実施例1で用いられる中性子検出装置6よりも、中性子検出器7に入射する熱中性子の量を増大することができる。本実施例は、実施例1よりも保温領域内に存在する水分の検出精度をさらに向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、プラントに設けられる配管及び容器を取り囲む保温領域内の水分の検出に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1,1A…水分測定装置、2…中性子源、3…中性子源装置、5…測定装置本体部、6,6A…中性子検出装置、7…中性子検出器、8…コリメータ、9,9A…コリメータ開口部、10…仕切り部材、11,11A…スリット、12…遮へい蓋、13…遮へい蓋移動装置、14…モータ、15…回転部材、16…ピン部材、17…ドグ、18A,18B…リミットスイッチ、20…溝、22…データ処理装置、24…減速材、25…ケーシング、30…配管、31…保温材、32…保温カバー、33…液体、34…水分。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分測定装置及び水分測定方法に係り、特に、保温材で取り囲まれる配管及び容器(タンク、塔及び槽等)等のいずれかの外面とその保温材を取り囲む保温カバーの外面との間に形成される領域(以下、便宜的に保温領域という)に存在する水分を測定するのに好適な水分測定装置及び水分測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学プラント、原子力プラント及び火力プラント等の各種プラント設備は、配管及び容器を有している。これらの配管及び容器は、保温、保冷及び結露防止等を目的として表面が保温材で覆われている。保温材は、さらに、金属製の保温カバーで覆われている。保温カバーの経年劣化等に起因して、保温カバーの隙間から雨水等の水分が保温カバー内に浸入する。この水分が例えば炭素鋼製の配管の表面を腐食させる要因になっている。
【0003】
配管及び容器の点検は、仮設足場を配管及び容器の周囲に設置し、作業員が保温カバー及び保温材を外して目視により配管及び容器の表面での腐食発生状況を確認することによって行われる。作業員による点検は、配管等の表面から保温カバー及び保温材を取り外す必要があり、多大な時間を必要とする。
【0004】
このような問題を解消するために、保温カバー及び保温材を取り外さないで配管等の腐食を点検する非破壊検査技術が開発されている。この非破壊検査技術の一例が特開2008−215815号公報に説明されている。この技術は、中性子源(例えば、カリホルニウム252)及び中性子検出器を有する水分測定装置を用いて、保温領域内に存在する水分を検出するものである。すなわち、中性子源から放出された高速中性子が配管等に取り付けられている保温材に到達する。保温領域に水分が存在する場合には、その高速中性子は保温領域内に存在する水分によって熱中性子化される。中性子検出器はこの熱中性子を検出する。熱中性子が検出された場合には、保温領域内に水分が存在しており、配管等の表面が腐食される環境にあると判断される。
【0005】
特開2008−215815号公報に記載された水分測定装置では、中性子検出器7を取り囲んでいるコリメータに形成されたコリメータ開口部(中性子入射口)は、コリメータ開口部を基点とした、配管の外面に対する接線がこの外面と接する接点とこの接点を基点とした保温材の厚み方向での保温カバーの外面の位置との間を向いて配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−215815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2008−215815号公報に記載された水分測定装置は、中性子検出器をコリメータで覆っており、コリメータに形成されたコリメータ開口部から入射する限られた中性子を中性子検出器で計測する。このため、コリメータ開口部から中性子検出器に到達する中性子入射量が少なくなり、保温領域に存在する水分の検出精度が低下する。この水分の検出精度を向上させるためには、コリメータ開口部からの入射中性子量を増加させることが必要となる。
【0008】
本発明の目的は、保温材で取り囲まれる配管及び容器のいずれかの外面とその保温材を取り囲む保温カバーの外面との間に形成される領域内に存在する水分の検出精度を向上できる水分測定装置及び水分測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、熱中性子を検出する中性子検出器を取り囲むコリメータの中性子入射開口部内に放射線遮へい材で構成された少なくとも1つの仕切り部材を設置し、この仕切り部材によって仕切られた、中性子検出器に入射される熱中性子が通過する複数のスリットを、中性子入射開口部内に形成することにある。
【0010】
放射線遮へい材で構成された少なくとも1つの仕切り部材で仕切られた複数のスリットを、コリメータの中性子入射開口部内に形成しているので、熱中性子の入射範囲を狭くすることができ、中性子入射開口部の、中性子検出器からスリットの先端に向かう方向と直交する方向で且つ仕切り部材の表面に垂直な方向での幅を広くすることができる。このため、各スリットを通して中性子検出器に入射する熱中性子の量を増加することができるので、水分の検出精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保温材で取り囲まれる配管及び容器のいずれかの外面とその保温材を取り囲む保温カバーの外面との間に形成される領域内に存在する水分の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の水分測定装置の斜視図である。
【図2】図1に示す測定装置本体部の詳細な内部構成を示す斜視図である。
【図3】実施例1の水分測定装置で、配管の周囲に存在する本材内の水分を測定している状態を示す説明図である。
【図4】図1に示す水分測定装置の遮へい蓋移動装置の詳細な構成図である。
【図5】図1に示す遮へい蓋の前面から見た、遮へい蓋が開いている状態を示す説明図である。
【図6】図1に示す遮へい蓋が開いている状態での中性子検出装置の縦断面図である。
【図7】図1に示す遮へい蓋の前面から見た、遮へい蓋が閉じている状態を示す説明図である。
【図8】図1に示す遮へい蓋が閉じている状態での中性子検出装置の縦断面図である。
【図9】図1に示す中性子検出装置における熱中性子の入射範囲を示す説明図である。
【図10】従来の水分測定装置の中性子検出装置における熱中性子の入射範囲を示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例2の水分測定装置における中性子検出装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、プラントに設けられた、検査対象物である配管(または容器)30を、図1及び図3により説明する。配管30は周囲を保温材(断熱材)31で取り囲まれている。金属製の保温カバー32が、保温材31の周囲を取り囲んで設置されている。配管30内には、該当するプラントで扱っている液体33が、プラントの運転中に流れている。
【0015】
本発明の好適な一実施例である水分測定装置を、図1から図4を用いて説明する。水分測定装置1は、測定装置本体部5及びデータ処理装置22を備えている。測定装置本体部5は、中性子源装置3、ケーシング25、中性子検出装置6、遮へい蓋12、遮へい蓋移動装置13、及び減速材24を有する。
【0016】
中性子源装置3は、容器4を有し、容器4内に中性子源(例えばカリホルニウム252)2を配置している。容器4は放射線遮へい材にて構成し、容器4には中性子放出口(図示せず)が形成されている。減速材24が中性子源2と容器4の間、特に中性子放出口と中性子源2との間に配置される。
【0017】
中性子検出装置6は、細長い中性子検出器7を放射線遮へい材で構成されたコリメータ8で取り囲んで構成される。コリメータ8は、中性子検出器7の軸方向に伸びる、中性子入射口であるコリメータ開口部(中性子入射開口部)9を有する。コリメータ開口部9には、板状の複数枚の仕切り部材10で区切られた複数のスリット11が形成される。仕切り部材10は放射線遮へい材で作られている。本実施例では、3枚の仕切り部材10で4つスリット11が形成される。これらのスリット11が、実質的に中性子入射経路になる。各スリット11は、中性子検出器7の軸方向に細長く伸びている(図5参照)。
【0018】
図3には中性子検出装置6が1つしか示されていないが、水分測定装置1には2つの中性子検出装置6が設けられている(図2参照)。中性子源装置3及びこれらの中性子検出装置6が、ケーシング25内に配置されて測定装置本体部5に取り付けられている。中性子源装置3は、2つの中性子検出装置6の間に配置される。各中性子検出装置6のそれぞれのコリメータ開口部9は、向き合うように、ケーシング25の底面に対して同じ角度で傾斜している。各コリメータ開口部9は、中性子の入射可能な領域を配管30の外面と保温カバー32の内面の間の領域になるように、傾斜角、及び各スリット11の幅を設定している。このスリット11の幅とは、中性子検出器7からスリット11の先端に向う方向と直交する方向で且つ仕切り部材10の表面に垂直な方向(以下、単に、仕切り部材10の表面に垂直な方向という)でのスリット11の幅である。各中性子検出装置6に含まれる各中性子検出器7はケーブル23によってデータ処理装置22に接続される。4個の車輪21、及びハンドル26がケーシング25に設けられる。
【0019】
遮へい蓋移動装置13の詳細な構成を、図4及び図5を用いて説明する。遮へい蓋移動装置13は、モータ14、円板状の回転部材15、ドグ17及びリミットスイッチ18A,18Bを有する。モータ14がコリメータ8の上面に設置された支持部材19に取り付けられ、回転部材15がモータ14の回転軸に取り付けられる。ピン部材16が、回転部材15の前面に取り付けられ、遮へい蓋12に形成された細長い溝20内に挿入されている。ピン部材16は、回転部材15の回転に伴って溝20内を溝20に沿って移動する。遮へい蓋12は、放射線遮へい材で作られており、ピン部材16から外れないようになっている。突起部であるドグ17が回転部材15の裏面に設けられている。リミットスイッチ18A,18Bは、支持部材19に取り付けられ、水平方向において互いに離れた位置に配置される。
【0020】
水分測定装置1を用いた、プラントの配管30を対象とした水分測定方法の一例を、以下に説明する。配管30を対象とした水分測定時には、保温材31及び保温カバー32を取り外さないで、検査対象の配管30を取り囲んでいる保温カバー32の外面に沿って、測定装置本体部5を移動させる。この移動は、作業員が、ケーシング25に設けられたハンドル26を持ち、測定装置本体部5を移動させることによって行われる。4個の車輪21が保温カバー32の外面に接触しているので、測定装置本体部5を容易に移動することができる。
【0021】
測定装置本体部5を保温カバー32の外面に沿って移動させることによって行われる保温領域内に存在する水分34の測定について、詳細に説明する。保温領域は、前述したように、配管30の外面と保温カバー32の外面との間に形成される領域である。
【0022】
中性子源装置3の中性子源2から放出された高速中性子は、中性子源2の前面に位置している減速材24によって減速されてエネルギーの低い中性子(以下、減速中性子という)になる。この減速中性子が保温材31に照射するとき、遮へい蓋12は、図4、図5及び図6に示すように開いており、各スリット11の先端を覆っていない。遮へい蓋12が開いて各スリット11が開放されているとき、ピン部材16が最も高い位置に位置している。配管30の周囲に存在する保温領域内に水分34が存在する場合には、照射された減速中性子はその水分34によってさらに減速され、減速中性子よりもエネルギーが低い熱中性子(以下、第1熱中性子という)になる。減速中性子は、配管30内の液体33によっても減速され、エネルギーの低い熱中性子(以下、第2熱中性子という)になる。第1及び第2熱中性子は、等方的に飛散する。
【0023】
しかしながら、中性子検出装置6のコリメータ開口部9が、中性子の入射可能な領域を配管30の外面と保温カバー32の内面の間の領域にするように、傾斜しているので、配管30内の液体33によって発生した第2熱中性子は、コリメータ8によって遮られて各スリット11を通して中性子検出器7に入射されない。これに対して、水分34によって発生した第1熱中性子35は各スリット11を通過して中性子検出器7に入射される(図6参照)。中性子検出器7は、第1熱中性子35の入射によって中性子検出信号を出力する。この中性子検出信号は、ケーブル23によってデータ処理装置22に入力される。データ処理装置22は、入力した中性子検出信号を計数し、単位時間当たりの熱中性子計数率の情報を求める。
【0024】
保温材31に照射された減速中性子は、保温材31及び保温カバー32並びに保温カバー32の外面に付着した水分、その他の熱中性子発生源によっても減速され減速中性子よりのエネルギーが低い熱中性子(以下、第3熱中性子という)になる。この第3熱中性子も、各スリット11を通過して中性子検出器7によって検出される。中性子検出器7は入射した第3熱中性子に起因した中性子検出信号も出力する。この中性子検出信号もデータ処理装置22に入力され、データ処理装置22で得られる熱中性子計数率情報は、第3熱中性子に基づいた熱中性子計数情報も含んでいる。第3熱中性子に基づいて得られた熱中性子計数情報は、第1熱中性子35に基づいて得られた熱中性子計数率情報に対するノイズとなる。
【0025】
保温領域内に水分34が存在しない正常な状態において、中性子検出器7から出力された中性子検出信号に基づいて得られた正常状態での熱中性子計数率情報がデータ処理装置22の記憶装置(図示せず)に記憶されている。この正常状態での熱中性子計数率情報は、水分34を測定する際におけるバックグラウンド(ノイズ)となる。
【0026】
各スリット11以外の部分でもコリメータ8を透過する熱中性子36が存在する(図6参照)。この熱中性子36は、主に、第2熱中性子であり、中性子検出器7によって検出される。中性子検出器7は、第1熱中性子35、熱中性子36、及び第3熱中性子を検出し、これらの熱中性子による中性子検出信号を出力する。このとき、データ処理装置22で求められる熱中性子計数率は、熱中性子36及び第3熱中性子の影響を受けている。
【0027】
遮へい蓋12を開いて第1熱中性子35の検出を行った後、遮へい蓋12を閉じて各スリット11の先端を遮へい蓋12で覆う。遮へい蓋12を閉じる動作は、遮へい蓋移動装置13によって行われる。モータ14の回転によって回転部材15が回転する。回転部材15は、図5において、時計方向に回転するものとする。この回転部材15の回転によってピン部材16が、下降しながら、図5において、溝20内を右側に移動する。このため、遮へい蓋12は、ピン部材16の動きによって、下方に押し下げられる。ピン部材16が最も低い位置に到達したとき、遮へい蓋12が閉じられ、各スリット11の先端が遮へい蓋12で覆われる(図7及び図8参照)。このとき、ドグ17がリミットスイッチ18Bに接触してリミットスイッチ18Bを作動させる。リミットスイッチ18Bの作動によってモータ停止信号が出力され、このモータ停止信号によってモータ14の駆動が停止される。これにより、各スリット11の先端が遮へい蓋12で覆われた状態に保持される。
【0028】
遮へい蓋12が各スリット11の先端を覆っているとき、この遮へい蓋12を透過する熱中性子35A、及び遮へい蓋12を開いているときと同様に、各スリット11以外の部分でもコリメータ8を透過する熱中性子36が中性子検出器7によって検出される(図8参照)。しかしながら、遮へい蓋12を透過する熱中性子35Aは微少である。このため、遮へい蓋12が閉じられているとき、中性子検出器7は、熱中性子として熱中性子36、熱中性子35Aを検出する。(遮へい蓋12は中性子検出器7側にあり、中性子源2側には無い。)
データ処理装置22は、遮へい蓋12が開いているときに中性子検出器7から出力された中性子検出信号の計数値を、遮へい蓋12が閉じているときに中性子検出器7から出力された中性子検出信号の計数値にて補正する。この計数値の補正を具体的に説明する。
【0029】
遮へい蓋12が開いているときに、各スリット11を通過した熱中性子35及び第3熱中性子に基づいて中性子検出器7から出力された中性子検出信号の計数値をn1、及びこのとき、熱中性子36に基づいて中性子検出器7から出力された中性子検出信号の計数値をn0とする(図6参照)。さらに、遮へい蓋12が閉じているとき、熱中性子35Aに基づいて中性子検出器7から出力された中性子検出信号の計数値をn1’、及びこのとき、熱中性子36に基づいて中性子検出器7から出力された中性子検出信号の計数値をn0’とする(図8参照)。遮へい蓋12が開いているときにおける中性子検出信号の計数値をD0、遮へい蓋12が閉じているときにおける中性子検出信号の計数値をD1とすると、計数値D0及びD1は以下のように表される。
【0030】
D0=n1+n0、D1=n1’+n0’(n1≫n1’)
データ処理装置22は、計数値D0を、計数値D1を用いて補正するために、
D0−D1=n1−n1’+n0−n0’ (1)
の演算を行う。n0≒n0’かつn1≫n1’であるので、(1)式はD0−D1≒n1となる。
【0031】
データ処理装置22は、(1)式による補正によって得られた計数値(D0−D1)に基づいて単位時間当たりの熱中性子計数率の情報を求める。
【0032】
保温領域の水分計測時に計数値(D0−D1)に基づいて得られた熱中性子計数率情報が上記した正常状態での熱中性子計数率情報よりも大きい場合に、保温領域に水分34が存在すると判定する。この判定結果の情報及び熱中性子計数率情報がデータ処理装置22から出力されて表示装置(図示せず)に表示される。オペレータは、表示された判定結果情報及び熱中性子計数率情報を見ることによって、保温領域に水分が存在するか否かを知ることができる。
【0033】
閉じている遮へい蓋12を開くときには、図7の状態でモータ14を駆動する。モータ14は、遮へい蓋12を閉じるときと同じ方向に回転する。このため、ピン部材16が、上昇しながら、図7において、溝20内を左側に移動する。遮へい蓋12は、ピン部材16の動きによって、上方に押し上げられる。ピン部材16が最も高い位置に到達したとき、遮へい蓋12が開き、全てのスリット11の先端が開放される(図4、図5及び図6参照)。このとき、ドグ17がリミットスイッチ18Aに接触してリミットスイッチ18Aを作動させる。リミットスイッチ18Aの作動によってモータ停止信号が出力され、このモータ停止信号によってモータ14の駆動が停止される。これにより、各スリット11の先端が遮へい蓋12で覆われずに開放された状態に保持される。
【0034】
本実施例は、コリメータ8のコリメータ開口部9内に仕切り部材10を配置して複数のスリット11を形成しているので、保温領域以外から各スリット11を通して中性子検出器7に入射される熱中性子の量を著しく低減するができ、保温領域から各スリット11を通して中性子検出器7に入射される熱中性子の量を増大することができる。本実施例において、保温領域以外から中性子検出器7への熱中性子の入射量を著しく低減でき、保温領域から中性子検出器7への熱中性子の入射量を増大できる理由を、図9及び図10を用いて具体的に説明する。
【0035】
図9は、本実施例に用いられる中性子検出装置6おける、コリメータ開口部9を通してコリメータ8内に入射される熱中性子の入射範囲を示している。中性子検出装置6では、直線37と直線37Aの間の領域の熱中性子が、各スリット11を通してコリメータ8内に入射される。図10は、特開2008−215815号公報に記載された水分測定装置に用いられる中性子検出装置38における、仕切り部材10を配置していないコリメータ開口部9Bを通してコリメータ8内に入射される熱中性子の入射範囲を示している。中性子検出装置38では、直線39と直線39Aの間の領域の熱中性子が、各スリット11を通してコリメータ8内に入射される。直線37と直線37Aの間の領域、及び直線39と直線39Aの間の領域を、熱中性子の入射範囲という。
【0036】
中性子検出装置6でのコリメータ開口部9の、仕切り部材10の表面に垂直な方向での幅Wは、熱中性子の入射範囲が配管30の外面と保温カバー32の内面の間の領域になるように設定されている。この中性子検出装置6では、配管30内の液体33によって発生した第2熱中性子を検出しない。中性子検出装置38でのコリメータ開口部9Bの、仕切り部材10の表面に垂直な方向での幅も、中性子検出装置6での幅Wになっている。
【0037】
図9及び図10から明らかであるように、熱中性子の入射範囲は、中性子検出装置38の方が中性子検出装置6よりも広くなっている。このため、中性子検出装置38では第2熱中性子が検出されるので、コリメータ開口部9Bの、仕切り部材10の表面に垂直な方向での幅をWよりも狭くする必要がある。コリメータ開口部9Bのその幅を狭くすることは、保温領域内に存在する水分34による減速中性子の減速によって発生した第1熱中性子35の、中性子検出器7への入射量を減少させることになる。これでは、保温領域に存在するわずかな水分を検出する性能が劣ることになる。
【0038】
中性子検出装置6では、コリメータ開口部9内に仕切り部材10を配置して複数のスリット11を形成しているので、熱中性子の入射範囲を、仕切り部材10を配置していないコリメータ開口部9Bを有する中性子検出装置38よりも狭くすることができる。この結果、コリメータ開口部9の、仕切り部材10の表面に垂直な方向での幅Wを、コリメータ開口部9Bのその幅よりも広くすることができ、中性子検出装置6において、中性子検出器7への熱中性子の入射量を増大させることができる。中性子検出装置6では、保温領域に存在するわずかな水分も検出することができる。本実施例の水分測定装置1は、保温領域に存在する水分の検出精度を向上させることができる。
【0039】
本実施例では、遮へい蓋12を開いているとき及び遮へい蓋12を閉じているときにおいて、中性子検出器7で熱中性子を検出し、遮へい蓋12を開いているときにおける熱中性子の計数値D0と遮へい蓋12を閉じているときにおける熱中性子の計数値D1の差(D0−D1)を求めているので、各スリット11以外の部分でコリメータ8を透過する熱中性子36の影響を除外することができる。このため、保温領域内の水分34の検出精度が、さらに向上する。
【0040】
各スリット11以外の部分でコリメータ8を透過する熱中性子36が存在するのは、その部分でのコリメータ8、すなわち、放射線遮へい体の厚みが薄いからである。コリメータ8の厚みを厚くすることによって、熱中性子36の中性子検出器7への入射を防止することができる。しかしながら、コリメータ8が重くなり、作業員がハンドル26を持って測定装置本体部5を搬送することが困難になる。本実施例は、各スリット11以外の部分で熱中性子36がコリメータ8を透過するので、コリメータ8を軽量化することができ、作業員が測定装置本体部5を容易に搬送することができる。各スリット11以外の部分で熱中性子36がコリメータ8を透過しても、本実施例は、その熱中性子36の影響を除外することができる。
【0041】
中性子源装置3が減速材24を備えていなくてもよい。この場合には、中性子源2から放出された高速中性子が保温材31に含まれている水分34によって、さらには配管30内の液体33によって減速され、熱中性子となる。液体33によって発生した熱中性子は、前述したように、各スリット11を通過することができず中性子検出器7によって検出されない。水分34によって発生した熱中性子は、各スリット11を通過して中性子検出器7で検出される。このため、減速材24を備えていない場合でも、上記した効果、すなわち、水分34の検出精度の向上を図ることができる。
【0042】
本実施例は、中性子源装置3が中性子源2の前方、すなわち中性子源2より保温材31側に減速材24を配置しているので、上記した中性子源装置3に減速材24を設けていない場合に比べて、水分34によって発生した第2熱中性子の検出感度を向上させることができる。これは、中性子源2から放出された高速中性子が減速材24によって予め減速され、減速中性子となる。これによって発生した減速中性子が水分34によってさらにエネルギーの低い第1熱中性子になるため、第1熱中性子の発生量が増大する。したがって、第1熱中性子の検出感度が向上するのである。
【0043】
また、本実施例における水分測定方法は、保温材31及び保温カバー32を配管30から取り外さないで、保温領域に存在する水分を検出することができる。
【0044】
以上において、配管30の周囲に形成された保温領域に存在する水分34の検出について説明したが、本実施例の水分測定装置1を用いて、プラントに設けられた容器の外面とこの容器の周囲を取り囲む保温材を覆う保温カバーの内面の間に形成される領域(保温領域)に存在する水分を検出することもできる。水分測定装置1を用いた水分測定方法は、配管及び容器いずれかの保温領域に対して適用することが可能である。
【0045】
本実施例の水分測定方法では、作業員が測定装置本体部5を手に持って測定装置本体部5を保温カバー32の外面に沿って走査している。特開2008−215815号公報に記載されたように、軸方向走行装置及び周方走行装置を有する走行装置を、保温カバー32の外面に装着し、この走行装置を用いて測定装置本体部5を走査してもよい。容器を取り囲む保温領域内の水分を測定する場合でも、そのような測定装置本体部5を走査させる走行装置を用いてもよい。
【実施例2】
【0046】
本発明の他の実施例である水分測定装置を、図11を用いて説明する。本実施例の水分測定装置1Aは、実施例1の水分測定装置1において中性子検出装置6を中性子検出装置6Aに替えた構成を有する。水分測定装置1Aの他の構成は水分測定装置1と同じである。中性子検出装置6Aは、中性子検出装置6においてコリメータ開口部9をコリメータ開口部9Aに替えた構成を有する。中性子検出装置6Aの他の構成は中性子検出装置6の構成と同じである。水分測定装置1Aにおいて、水分測定装置1と構成の異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
コリメータ開口部9Aには、4枚の仕切り部材10が配置されている。これらの仕切り部材10の配置によって、3つのスリット11及び2つのスリット11Aがコリメータ開口部9Aに形成される。仕切り部材10の表面に垂直な方向でのスリット11Aの幅は、その垂直な方向でのスリット11の幅よりも狭くなっている。各スリット11Aは、コリメータ開口部9Aを形成している、コリメータ8の一部である筺体40の内面にそれぞれ面している。3つのスリット11が、仕切り部材10の表面に垂直な方向で、2つのスリット11Aの間に配置される。コリメータ開口部9Aでは、仕切り部材10の表面に垂直な方向において、2つのスリット11Aが両端にそれぞれ配置され、3つのスリット11がこれらのスリット11Aの間に配置される。
【0048】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例では、幅の異なるスリット11,11Aがコリメータ開口部9A内に形成され、幅の狭いスリット11Aが、仕切り部材10の表面に垂直な方向で、幅の広いスリット11よりも外側に配置されるので、コリメータ開口部9Aを通してコリメータ8内に入射される熱中性子の入射範囲が、実施例1の中性子検出装置6のコリメータ開口部9を通してコリメータ8内に入射される熱中性子の入射範囲よりもさらに狭くなる。このため、仕切り部材10の表面に垂直な方向で中央に位置するスリット11のその垂直な方向での幅を、実施例1の水分測定装置1でのスリット11のその垂直な方向での幅よりも広くすることができる。中性子検出装置6Aは、実施例1で用いられる中性子検出装置6よりも、中性子検出器7に入射する熱中性子の量を増大することができる。本実施例は、実施例1よりも保温領域内に存在する水分の検出精度をさらに向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、プラントに設けられる配管及び容器を取り囲む保温領域内の水分の検出に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1,1A…水分測定装置、2…中性子源、3…中性子源装置、5…測定装置本体部、6,6A…中性子検出装置、7…中性子検出器、8…コリメータ、9,9A…コリメータ開口部、10…仕切り部材、11,11A…スリット、12…遮へい蓋、13…遮へい蓋移動装置、14…モータ、15…回転部材、16…ピン部材、17…ドグ、18A,18B…リミットスイッチ、20…溝、22…データ処理装置、24…減速材、25…ケーシング、30…配管、31…保温材、32…保温カバー、33…液体、34…水分。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速中性子を放出する中性子源を有する中性子源装置と、
中性子入射開口部を有し、放射線遮へい材で構成されたコリメータ、及び前記コリメータ内に配置され、熱中性子を検出する中性子検出器を有する中性子検出装置と、
前記中性子検出器から出力される信号を処理するデータ処理装置とを備え、
放射線遮へい材で構成された少なくとも1つの仕切り部材を前記中性子入射開口部内に設置し、この仕切り部材によって仕切られた、前記中性子検出器に入射される前記熱中性子が通過する複数のスリットを、前記中性子入射開口部内に形成することを特徴とする水分測定装置。
【請求項2】
それぞれの前記スリットの前面で移動され、各前記スリットの開放及び封鎖を行う遮へい蓋と、前記コリメータに設けられて、前記遮へい蓋を、前記中性子検出器から前記スリットの先端に向かう方向と直交する方向で且つ前記仕切り部材の表面に垂直な方向に移動させる遮へい蓋移動装置とを備えた請求項1に記載の水分測定装置。
【請求項3】
前記複数のスリットが、第1スリットと、前記中性子検出器から前記スリットの先端に向かう方向と直交する方向で且つ前記仕切り部材の表面に垂直な方向における幅が前記第1スリットよりも狭い複数の第2スリットとを含んでおり、
前記第1スリットが、前記直交する方向で且つ前記垂直な方向において、前記複数の第2スリットの間に配置されている請求項1に記載の水分測定装置。
【請求項4】
前記第1及び第2スリットの前面で移動され、前記第1及び第2スリットの開放及び封鎖を行う遮へい蓋と、前記コリメータに設けられて、前記遮へい蓋を、前記直交する方向で且つ前記垂直な方向に移動させる遮へい蓋移動装置とを備えた請求項3に記載の水分測定装置。
【請求項5】
保温材によって取り囲まれた配管及び容器のいずれかの外面と前記保温材を取り囲む保温カバーの外面の間に形成される領域に存在する水分を測定する水分測定方法において、
高速中性子を前記領域に照射し、
放射線遮へい材で構成されたコリメータの中性子入射開口部口内に、放射線遮へい材製の少なくとも1つの仕切り部材で仕切られた複数のスリットを内部に形成した中性子入射開口部を有するコリメータで取り囲まれた中性子検出器によって、それぞれのスリットに入射される熱中性子を検出し、
前記熱中性子の検出によって前記中性子検出器から出力される信号に基づいて前記領域における水分の存在を判定することを特徴とする水分測定方法。
【請求項6】
保温材によって取り囲まれた配管及び容器のいずれかの外面と前記保温材を取り囲む保温カバーの外面の間に形成される領域に存在する水分を測定する水分測定方法において、
中性子源及び減速材を有する中性子源装置を用い、前記中性子源から放出される高速中性子を前記減速材によって減速させてエネルギーのより小さな中性子を生成し、生成されたこの中性子を前記保温材に照射し、
放射線遮へい材で構成されたコリメータの中性子入射開口部口内に、放射線遮へい材製の少なくとも1つの仕切り部材で仕切られた複数のスリットを内部に形成した中性子入射開口部を有するコリメータで取り囲まれた中性子検出器によって、それぞれのスリットに入射される熱中性子を検出し、
前記熱中性子の検出によって前記中性子検出器から出力される信号に基づいて前記領域における水分の存在を判定することを特徴とする水分測定方法。
【請求項7】
前記複数のスリットが開放されている状態で、それぞれの前記スリットを通過して入射される第1の前記熱中性子、及び前記複数のスリット以外の部分で前記コリメータを透過する第2の熱中性子を前記中性子検出器で検出し、
前記複数のスリットの前面が放射線遮へい材製の遮へい蓋で覆われている状態で、前記第2の熱中性子を前記中性子検出器で検出し、
前記複数のスリットが開放されている状態において前記中性子検出器から出力される第1信号、及び前記複数のスリットの前面が前記遮へい蓋で覆われている状態において前記中性子検出器から出力される第2信号に基づいて、前記水分の存在の判定を行う請求項5または請求項6に記載の水分測定方法。
【請求項1】
高速中性子を放出する中性子源を有する中性子源装置と、
中性子入射開口部を有し、放射線遮へい材で構成されたコリメータ、及び前記コリメータ内に配置され、熱中性子を検出する中性子検出器を有する中性子検出装置と、
前記中性子検出器から出力される信号を処理するデータ処理装置とを備え、
放射線遮へい材で構成された少なくとも1つの仕切り部材を前記中性子入射開口部内に設置し、この仕切り部材によって仕切られた、前記中性子検出器に入射される前記熱中性子が通過する複数のスリットを、前記中性子入射開口部内に形成することを特徴とする水分測定装置。
【請求項2】
それぞれの前記スリットの前面で移動され、各前記スリットの開放及び封鎖を行う遮へい蓋と、前記コリメータに設けられて、前記遮へい蓋を、前記中性子検出器から前記スリットの先端に向かう方向と直交する方向で且つ前記仕切り部材の表面に垂直な方向に移動させる遮へい蓋移動装置とを備えた請求項1に記載の水分測定装置。
【請求項3】
前記複数のスリットが、第1スリットと、前記中性子検出器から前記スリットの先端に向かう方向と直交する方向で且つ前記仕切り部材の表面に垂直な方向における幅が前記第1スリットよりも狭い複数の第2スリットとを含んでおり、
前記第1スリットが、前記直交する方向で且つ前記垂直な方向において、前記複数の第2スリットの間に配置されている請求項1に記載の水分測定装置。
【請求項4】
前記第1及び第2スリットの前面で移動され、前記第1及び第2スリットの開放及び封鎖を行う遮へい蓋と、前記コリメータに設けられて、前記遮へい蓋を、前記直交する方向で且つ前記垂直な方向に移動させる遮へい蓋移動装置とを備えた請求項3に記載の水分測定装置。
【請求項5】
保温材によって取り囲まれた配管及び容器のいずれかの外面と前記保温材を取り囲む保温カバーの外面の間に形成される領域に存在する水分を測定する水分測定方法において、
高速中性子を前記領域に照射し、
放射線遮へい材で構成されたコリメータの中性子入射開口部口内に、放射線遮へい材製の少なくとも1つの仕切り部材で仕切られた複数のスリットを内部に形成した中性子入射開口部を有するコリメータで取り囲まれた中性子検出器によって、それぞれのスリットに入射される熱中性子を検出し、
前記熱中性子の検出によって前記中性子検出器から出力される信号に基づいて前記領域における水分の存在を判定することを特徴とする水分測定方法。
【請求項6】
保温材によって取り囲まれた配管及び容器のいずれかの外面と前記保温材を取り囲む保温カバーの外面の間に形成される領域に存在する水分を測定する水分測定方法において、
中性子源及び減速材を有する中性子源装置を用い、前記中性子源から放出される高速中性子を前記減速材によって減速させてエネルギーのより小さな中性子を生成し、生成されたこの中性子を前記保温材に照射し、
放射線遮へい材で構成されたコリメータの中性子入射開口部口内に、放射線遮へい材製の少なくとも1つの仕切り部材で仕切られた複数のスリットを内部に形成した中性子入射開口部を有するコリメータで取り囲まれた中性子検出器によって、それぞれのスリットに入射される熱中性子を検出し、
前記熱中性子の検出によって前記中性子検出器から出力される信号に基づいて前記領域における水分の存在を判定することを特徴とする水分測定方法。
【請求項7】
前記複数のスリットが開放されている状態で、それぞれの前記スリットを通過して入射される第1の前記熱中性子、及び前記複数のスリット以外の部分で前記コリメータを透過する第2の熱中性子を前記中性子検出器で検出し、
前記複数のスリットの前面が放射線遮へい材製の遮へい蓋で覆われている状態で、前記第2の熱中性子を前記中性子検出器で検出し、
前記複数のスリットが開放されている状態において前記中性子検出器から出力される第1信号、及び前記複数のスリットの前面が前記遮へい蓋で覆われている状態において前記中性子検出器から出力される第2信号に基づいて、前記水分の存在の判定を行う請求項5または請求項6に記載の水分測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−27559(P2011−27559A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173896(P2009−173896)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】
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