説明

水切りごみ袋

【課題】台所用水切りごみ袋において、袋内に堆積された生ごみの小孔からの流出を防止し、かつ生ごみによって小孔をふさぐことをくいとめ、水分のみを小孔から袋外へ排出することができる台所用水切りごみ袋を提供することを目的とする。
【解決手段】例えば袋体の左右両側に袋の内側に向ってV字形に折込んだひだ部を有し、底部を四角底に閉鎖した角底紙袋の前後両面、左右の襞部および袋の底部に、長手方向に向って猫の爪で引き掻いたような略涙滴形の多数の小孔を設け、その小孔を、開口時に発生する引き掻き片を袋体からちぎらずに、小孔の下部に皺状にかたまって滞留するように開口する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は台所用の水切りごみ袋に関し、より詳しくは、袋体に開口した小孔から内部のごみの流出を防止し、水分のみを排出することができる水切りごみ袋に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭の台所で料理の際に発生する食材のくず等の生ごみを捨てるための袋については、従来から流し台の三角コーナーに入れて使用するタイプや、排水口の網籠に設置するタイプなどが知られている。
【0003】
これらのごみ袋においては、袋内に捨てた生ごみから発生する水分を袋外に排出するため袋に多数の排水用小孔を設けた、いわゆる水切りごみ袋となっているのが普通である。しかしながら、これら水切りごみ袋の小孔はニードルやパンチで開口した丸い形状のものがほとんどであり、袋内の水分を速やかに排出することはできるが、袋内の細かな生ごみも水分と一緒に袋外に排出してしまい、環境上の観点から問題となっていた。特許文献1〜3には、この問題点を解決する手段についての記載はない。
【0004】
特許文献2には、実施例として小孔1個当りの面積3.5mm2として生ごみを袋外へ排出させない方法が記載されている。このような場合、細かな生ごみが小孔から袋外へ排出するのを防ぐことはできるが、孔が小さいために袋内に大きな生ごみが堆積されると、小孔が大きな生ごみで塞がれて水切りが悪くなることがある。特許文献2にはこの問題点を解決する手段についての記載はない。
【0005】
これらのごみ袋はフィルムや不織布等でできた袋もしくは網状の袋がほとんどであり、素材が柔らかく底部が直線状に閉鎖されているので、袋を安定した状態で自立させて使うことは困難である。これらのごみ袋は、三角コーナーや編籠に取付けて使用しなければならない。特許文献1〜3には、この問題点を解決する手段についての記載はない。
【0006】
特許文献4のごみ袋は樹脂による不織布で構成されており、排水用小孔を設けなくても水切りが可能な記載があるが、三角コーナーや編籠に取付けずに袋を安定した状態で自立させて使用する記載はない。
【0007】
特許文献5のごみ袋は耐水性の紙から構成され、底部が角底に成形されているので、袋を安定した状態で自立させて使うことはできる。しかし、特許文献5の図面に記載されている該ごみ袋の小孔は丸い形状のものであり、前記の袋内の細かな生ごみも水分と一緒に袋外に排出してしまい、排水を汚すという問題点および大きな生ごみで小孔が塞がれて水切りが悪くなる問題点を解決するための記載はない。また、特許文献5のごみ袋は熱可塑性樹脂をラミネートまたは表面塗工された紙、メラミン樹脂やフッ素樹脂を含浸させた紙等を用いており、廃棄するときに環境への悪影響が問題になることがあった。特許文献5には、この問題点を解決するための記載はない。
【0008】
【特許文献1】特開2002−220101
【特許文献2】特許第3485426号
【特許文献3】実公平3−72504
【特許文献4】特開平10−286414
【特許文献5】実開昭54−111373
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、台所用水切りごみ袋において、袋内に堆積された生ごみの小孔からの排出を防ぎ、かつ生ごみによって小孔を塞がることを防ぎ、水分のみを小孔から袋外へ排出することができ、また、三角コーナーや編籠を必要としない安定した自立性を有し、廃棄時の環境への悪影響を低減することのできる台所用水切りごみ袋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の台所用水切りごみ袋は、以下の発明を包含するものである。
【0011】
(1)袋体の左右両側に袋の内側に向ってV字形に折込んだひだ部を有する四角形の角底を有する自立可能でかつ三角コーナーを必要としない紙製水切りごみ袋であり、袋体の少なくとも一面に複数の小孔を設けたことを特徴とする水切りごみ袋において、該小孔は袋の長手方向に向って略涙滴形の形状をなし、該小孔開口時に発生する紙片が袋体から分離せず、該小孔の底部付近に皺状に滞留することを特徴とする水切りごみ袋。
【0012】
(2)前記ごみ袋において、前記袋体が湿潤紙力増強剤を含有する耐水紙であることを特徴とする(1)記載の水切りごみ袋。
【0013】
(3)前記ごみ袋において、前記紙力増強剤がポリアミド系樹脂からなることを特徴とする(1)〜(2)記載の水切りごみ袋。
【0014】
(4)前記ごみ袋において、前記複数の小孔が、その開口断面に紙繊維の毛羽立ちを生じるように開口されたことを特徴とする(1)〜(3)記載の水切りごみ袋。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、袋内に堆積された生ごみを大き目の丸い小孔から排出することなく、かつ生ごみによって小さ目の丸い小孔をふさぐことなく、水分のみを小孔から袋外へ排出することのできる台所用水切りごみを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の台所用水切りごみ袋の形態としては、例えば袋体の左右両側に袋の内側に向ってV字形に折込んだひだ部を有し、底部を四角底に閉鎖した自立可能な角底袋の前後両面、左右のひだ部および袋の底部に、長手方向下方に向って猫の爪で引き掻いたような略涙滴形の多数の小孔を設け、かつ該小孔を、開口時に発生する引き掻き片を袋体からちぎらずに、小孔の下部に皺状にかたまって滞留するように開口する形態があげられる。
【0017】
また、本発明のごみ袋は、底部を四角底に成形することにより、安定した状態で自立可能であるので、台所の流し台に直接置くことができる。
【0018】
また、本発明のごみ袋の素材としては、例えば耐水性を有する紙(坪量は75g/m2〜85g/m2で、ワックスエマルジョンとポリアミド系樹脂を併用して含有させることが好ましい)があげられるが(ワックスエマルジョンとポリアミド系樹脂はそれぞれ紙中固形分に対して0.1〜0.5質量%含有することが好ましい)、該耐水性を有する紙以外に、ごみ袋に用いられ、かつ前記小孔を設けることが可能で、かつ底部を四角底に成形し袋を自立させることが可能で、かつ廃棄時に環境への悪影響を低減することが可能な公知の素材を使用することができる。
【0019】
また、これらの素材に必要に応じて公知の抗菌剤、防臭剤等の各種薬剤を塗布しても良い。
【実施例】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の一形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施の一形態である、袋体の左右両側に袋の内側に向ってV字形に折込んだひだ部を有する自立可能な四角底袋の前後の壁部、左右のひだ部および底部に多数の小孔を設け、かつそれらの小孔が袋の下方に向って引き掻くように略涙滴形に開口され、開口の際に発生する引き掻き片が袋体からちぎれず、皺状になって該小孔の下部周辺に滞留するよう形成した台所用水切りごみ袋の斜視図である。図2は、図1に示す台所用水切りごみ袋の正面図である。図3は、図1に示す台所用水切りごみ袋の側面図である。図4は、図1に示す台所用水切りごみ袋の底面図である。図5〜6は従来の丸い小孔を多数設けた水切りごみ袋の一形態を示す斜視図である。
【0022】
なお、図1における台所用水切りごみ袋は、耐水性を有するクラフト紙(王子製紙株式会社製「防水重包紙」を使用:坪量75g/m2で、防水剤としてパラフィンワックスエマルジョン、紙力増強剤としてポリアミド系樹脂を含有)からなる。本発明の発明者らは、坪量75g/m2〜85g/m2で、パラフィンワックスエマルジョンとポリアミド系樹脂を併用して含有する紙が、本発明の水切りごみ袋に適していることを見出した。
【0023】
図中において同一の符号は同一の意味を有し、1はごみ袋、2は袋前壁部、3は袋後壁部、4はひだ部、5は排水用小孔、6は排水用小孔5の開口部、7は引き掻き片、8はごみ袋の底部、9は従来の水切りごみ袋に設けられる大き目の排水用小孔、10は従来の水切りごみ袋に設けられる小さ目の排水用小孔を示す。
【0024】
図1〜4に示すごみ袋1は、袋体の左右両側に袋の内側に向ってV字形に折込んだひだ部を有し、底部を四角底に閉鎖して成形した、耐水性を有する紙からなる角底袋であり、袋の前壁部2、後壁部3、左右のひだ部4および底部8に多数の排水用小孔5を設けている。排水用小孔5は開口部6と引き掻き片7からなり、袋の製造工程において、例えば複数の爪を植えつけたローラー等の穿孔装置で、袋の表面を長手方向下方に向って引き掻くように開口される。その際、爪に引き裂かれるようにして発生する引き掻き片7は、袋からちぎれずに皺状の壁になって小孔5の下端部に滞留する。
【0025】
図1のごみ袋は剛性を有するクラフト紙袋で構成されているので、袋体の左右両側に袋の内側に向ってV字形に折込んだひだ部4を有し、底部8を四角底に閉鎖して成形すると、図1に示すように、袋を開いた状態では安定した自立性を得ることができる。この自立性は、柔軟な素材である不織布やポリエチレン等のフィルムでは得ることはできない。
【0026】
排水用小孔5の形状は上部方向が狭く下部に向って広がる、いわゆる涙滴形であり、下部の孔が広がった部位に、孔の方向にわずかに伸びた皺状の引き掻き片7が存在する。排水用小孔5の上部は先細りになっているので、袋内部のごみが小孔5の上部から袋外へ排出されるのをくいとめることができる。小孔5の下部は左右に広がる形状になっているが、引き掻き片7がごみの排出を妨げる壁として機能し、袋内のごみが小孔5の下部から袋外へ排出されるのをくいとめることができる。一方、袋内の水分は、小孔5の上部は狭くても下部が広く、かつ引き掻き片7がごみに押されるようにして袋の外側にわずかにせり出して隙間をつくるため、袋内のごみに小孔5を塞がれずに、開口部6から袋外へ排水される。
【0027】
また、図1のごみ袋はクラフト紙からなるので、小孔5の開口時に孔の断面に紙繊維の毛羽立ちが発生するが、小孔5からごみが袋外へ排出されようとすると、この毛羽立ちに引っかかり、排出に抵抗を与えることができる。さらに、図1のごみ袋はポリアミド系樹脂を含有させたことで繊維の結合力が強化されているので、毛羽立ちも強固になり、ごみの排出により抵抗を与える効果がある。
<比較例>
【0028】
本件発明の発明者らは、従来のフィルム袋(直鎖状低密度ポリエチレンから成形した袋)と前記耐水性を有するクラフト紙袋とで、前記穿孔装置で縦方向に小孔5を穿って比較した。その結果、フィルム袋の場合、前記穿孔装置で袋の面を引き掻くと、小孔が引き掻く方向に引き伸ばされた形状で開口し、単なる楕円形の孔になって引き掻き片が形成されない、または、引き掻き片が形成されてもフィルムが柔軟なため、小孔の下端部よりも下に垂れ下がってしまい、小孔からのごみの排出を防ぐ壁として機能することができない。また前記の毛羽立ちも、フィルムでは同様の効果を得られなかった。
さらに、前記フィルム袋の場合、フィルムの伸縮性のために、袋内にごみが蓄積されるとその圧力で孔が目開きすることがあった。
【0029】
前記耐水性を有するクラフト紙袋の場合、前記穿孔装置で袋の面を引き掻くと、引き掻く方向に沿って涙滴型の開口部6と、引き掻き片7からなる小孔5が形成された。該袋はクラフト紙からなるため、引き掻き片7は前記フィルム袋における引き掻き片のように小孔の下端部よりも下に垂れ下がることなく、袋の下端部からわずかに上方に伸びる形で皺状に滞留し、小孔からのごみの排出を防ぐ壁として機能するという良好な結果が得られた。また、クラフト紙には前記フィルムのような伸縮性はないので、孔が目開きするという問題も発生しなかった。
【0030】
次いで、本件発明の発明者らは、前記特許文献5記載の耐水性ごみ袋と本発明の図1の水切りごみ袋を比較した。該耐水性ごみ袋は、耐水性を有する紙からなる点、底部を角底に成形することによって袋に自立性を付与している点、袋の側面と底面に複数の排水用小孔を設けている点および耐水性を付与するためにパラフィンワックスを紙に含浸させている点で、図1の水切りごみ袋と類似している。しかしながら、前記特許文献5の図面に記載されている該耐水性ごみ袋の排水用小孔は、従来の丸い形状の孔であり、本発明における小孔5と同等の効果を得ることはできない。
【0031】
特許文献5記載のごみ袋には、耐水性を付与するためにメラミン樹脂やフッ素樹脂が用いられており、廃棄時に環境に悪影響を及ぼすことが懸念されるが、特許文献5にはこの問題を解決する手がかりはなかった。本発明の水切りごみ袋では、前記のとおりパラフィンワックスエマルジョンとポリアミド系樹脂を併用することにより、前記メラミン樹脂やフッ素樹脂を用いなくとも耐水性と耐久性を同時に得ることができた。ポリアミド系樹脂には、前記メラミン樹脂やフッ素樹脂ほど毒性は強くないので、廃棄時に環境に悪影響を及ぼす懸念が解消された。
【0032】
以上の効果によって、図5に示す従来のごみ袋のように、袋内のごみが小孔から袋外へ排出されるのを防ぐことができ、また、図6に示す従来のごみ袋のように、小孔が袋内のごみで塞がれ排水が妨げられるのを防ぐことができる、環境への悪影響を低減できる台所用水切りごみ袋を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の台所用水切りごみ袋は、内部のごみが排水用小孔から袋外へ排出するのを防ぐことができる構造であり、また、袋体の左右にひだ部を有する四角底袋のため、袋を開いた状態では安定した状態で自立することができるので、三角コーナーや編籠を必要とせず、台所の流し台に直接置いて使用するのに適している。
【0034】
さらに、本発明の袋を前記実施例のような紙で構成した場合、内部の生ごみを分別せずに、袋ごと可燃物として環境への悪影響を懸念せずに廃棄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の一形態である、袋体の左右両側に袋の内側に向ってV字形に折込んだひだ部を有する四角底袋の前後の壁部、左右のひだ部および底部に多数の小孔を設け、かつそれらの小孔が袋の下方に向って引き掻くように略涙滴形に開口され、開口の際に発生する引き掻き片が袋体からちぎれず、皺状になって該小孔の下部周辺に滞留するよう形成した台所用水切りごみ袋の斜視図である。
【図2】図1に示す台所用水切りごみ袋の正面図である。
【図3】図1に示す台所用水切りごみ袋の側面図である。
【図4】図1に示す台所用水切りごみ袋の底面図である。
【図5】従来の大き目の丸い小孔を多数設けた水切りごみ袋の一形態を示す斜視図である。
【図6】従来の小さ目の丸い小孔を多数設けた水切りごみ袋の一形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ごみ袋
2 袋の前壁部
3 袋の後壁部
4 ひだ部
5 排水用小孔
6 小孔の開口部
7 小孔の引き掻き片
8 袋の底部
9 従来の大き目の丸い排水用小孔
10 従来の小さ目の丸い排水用小孔
を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体の左右両側に袋の内側に向ってV字形に折込んだひだ部を有する四角形の角底を有する自立可能でかつ三角コーナーを必要としない紙製水切りごみ袋であり、袋体の少なくとも一面に複数の小孔を設けたことを特徴とする水切りごみ袋において、該小孔は袋の長手方向に向って略涙滴形の形状をなし、該小孔開口時に発生する紙片が袋体から分離せず、該小孔の底部付近に皺状に滞留することを特徴とする水切りごみ袋。
【請求項2】
前記ごみ袋において、前記袋体が湿潤紙力増強剤を含有する耐水紙であることを特徴とする請求項1記載の水切りごみ袋。
【請求項3】
前記ごみ袋において、前記紙力増強剤がポリアミド系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜2記載の水切りごみ袋。
【請求項4】
前記ごみ袋において、前記複数の小孔が、その開口断面に紙繊維の毛羽立ちを生じるように開口されたことを特徴とする請求項1〜3記載の水切りごみ袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−120718(P2010−120718A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294047(P2008−294047)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(591033261)王子製袋株式会社 (9)
【出願人】(508133949)王子アドバ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】