説明

水剤供給装置

【課題】水剤の投薬ボトルへの供給時間を短縮できる水剤供給装置を提供する。
【解決手段】水剤供給装置は、水剤を収容した水剤ボトルから水剤を投薬ボトルに供給する水剤供給装置であって、水剤ボトル内の水剤を撹拌する水剤撹拌部と、水剤Gを収容した第一ボトルと水剤Bを収容した第二ボトルとを含む複数の水剤ボトルを保持する、ボトル保持部と、水剤供給装置の動作を制御する制御部と、を備える。制御部は、第一ボトルから投薬ボトルへ水剤Gを供給する間に、水剤撹拌部を作動させ水剤Bを撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水剤供給装置に関し、特に、水剤を収容した水剤ボトルから水剤を投薬ボトルに供給するための水剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調剤薬局などでは、液状の薬剤である水剤の調剤が行なわれている。患者に対する処方箋に従って、一種類または複数種類の水剤が所定量ずつ投薬ボトルに順次注入され、必要な賦形剤が注入されて、水剤の調剤が行なわれる。
【0003】
懸濁性の水剤を調剤する場合、調剤指針によって、水剤ボトル内の水剤を撹拌した後に投薬ボトルへ供給することが求められている。水剤の撹拌に関し、従来、複数の水剤ボトルを保持しつつ回転する回転ユニットを有し、回転ユニットを180度回転させることで水剤ボトルを転倒させる構成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。また、水剤を収容した水剤ボトル内にノズルを挿入し、水剤の吸引および排出を繰り返すことにより、水剤ボトル内の水剤を定期的に撹拌する構成が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−112673号公報
【特許文献2】国際公開第2010/110303号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、投薬ボトルを吐出位置へ移動させた後に水剤ボトルを転倒させて水剤を撹拌する、調剤処理の流れが開示されている。しかし、この調剤処理では、水剤を投薬ボトルへ供給する前に水剤を撹拌するための時間を取ることが必要になる。そのため、水剤の投薬ボトルへの供給時間が長くなるという問題があった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、水剤ボトルに収容された水剤の投薬ボトルへの供給時間を短縮できる、水剤供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一の局面の水剤供給装置は、水剤を収容した水剤ボトルから水剤を投薬ボトルに供給する水剤供給装置であって、水剤ボトル内の水剤を撹拌する水剤撹拌部と、第一水剤を収容した第一ボトルと第二水剤を収容した第二ボトルとを含む複数の水剤ボトルを保持する、ボトル保持部と、水剤供給装置の動作を制御する制御部と、を備える。制御部は、第一ボトルから投薬ボトルへ第一水剤を供給する間に、水剤撹拌部を作動させ第二水剤を撹拌する。
【0008】
上記水剤供給装置において好ましくは、制御部は、第一水剤の投薬ボトルへの供給が完了した後に、第二ボトルから投薬ボトルへの第二水剤の供給を開始する。
【0009】
上記水剤供給装置において好ましくは、第一水剤は、投薬ボトルへの供給前に撹拌が不要である。
【0010】
上記水剤供給装置において好ましくは、ボトル保持部に保持された複数の水剤ボトルの位置を変更するボトル位置変更部を備え、制御部は、ボトル位置変更部が水剤ボトルの位置を変更する間に、水剤撹拌部を作動させ第二水剤を撹拌する。
【0011】
本発明に係る他の局面の水剤供給装置は、水剤を収容した複数の水剤ボトルを有し、水剤を各々の水剤ボトルから投薬ボトルに供給する、水剤供給部を備える。水剤は、投薬ボトルへの供給前に撹拌が必要な撹拌必要水剤を含む。水剤供給装置はさらに、水剤ボトル内の水剤を撹拌する水剤撹拌部と、複数の水剤ボトルに収容された水剤の各々を水剤ボトルから投薬ボトルへ供給する供給順序のうち、撹拌必要水剤を投薬ボトルへ供給する供給順番になるまでに、撹拌必要水剤を撹拌する、制御部と、を備える。
【0012】
上記水剤供給装置において好ましくは、制御部は、撹拌必要水剤よりも供給順番が前の水剤を投薬ボトルへ供給する間に、撹拌必要水剤を撹拌する。
【0013】
上記水剤供給装置において好ましくは、水剤は、投薬ボトルへの供給前に撹拌が不要な撹拌不要水剤を含み、制御部は、撹拌必要水剤の供給順番が撹拌不要水剤の供給順番よりも後になるように、供給順序を設定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水剤供給装置によると、水剤の投薬ボトルへの供給時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態の水剤供給装置1の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す水剤供給装置の正面図である。
【図3】図2に示すIII−III線に沿う水剤供給装置の断面図である。
【図4】図2に示すIV−IV線に沿う水剤供給装置の断面図である。
【図5】図2に示すV−V線に沿う水剤供給装置の断面図である。
【図6】水剤ボトル内の水剤を撹拌する撹拌ユニットの構成を示す斜視図である。
【図7】図6に示す撹拌ユニットの側面図である。
【図8】図7中に示すVIII−VIII線に沿う撹拌ユニットの断面図である。
【図9】水剤供給装置の構成を示すブロック図である。
【図10】各々の水剤ボトルの位置を示す模式図である。
【図11】水剤ボトルの現在位置を示すテーブルの一例である。
【図12】撹拌を必要とする水剤を示すテーブルの一例である。
【図13】投薬ボトルへ供給される水剤の種類を示す処方箋テーブルの一例である。
【図14】本実施の形態に係る水剤供給装置を使用した、水剤ボトルから投薬ボトルへの水剤供給処理のフローチャートである。
【図15】図14に示す順番を決定するステップの詳細を示すフローチャートである。
【図16】TOTAL注出時間を算出するステップの詳細を示すフローチャートである。
【図17】水剤Bが注出位置にあるときの水剤ボトルの現在位置を示すテーブルである。
【図18】水剤Cが注出位置にあるときの水剤ボトルの現在位置を示すテーブルである。
【図19】水剤B,C,Gの順に注出を行なう場合のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。
【図20】水剤Gが注出位置にあるときの水剤ボトルの現在位置を示すテーブルである。
【図21】水剤G,B,Cの順に注出を行なう場合のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。
【図22】水剤G,C,Bの順に注出を行なう場合のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。
【図23】図14に示す水剤を注出するステップの詳細を示すフローチャートである。
【図24】水剤を撹拌するサブルーチンを示すフローチャートである。
【図25】実施の形態2のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。
【図26】実施の形態3のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。
【図27】実施の形態4のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。
【図28】実施の形態5のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態の水剤供給装置1の構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す水剤供給装置1の正面図である。図3は、図2に示すIII−III線に沿う水剤供給装置1の断面図である。図4は、図2に示すIV−IV線に沿う水剤供給装置1の断面図である。図5は、図2に示すV−V線に沿う水剤供給装置1の断面図である。本実施の形態の水剤供給装置1は、患者に対する処方箋に従って、液状の薬剤である水剤5を、水剤5を収容した水剤ボトル23から投薬ボトル2に供給し、調剤するために用いられる。
【0018】
水剤供給装置1は、水剤5を収容した複数の水剤ボトル23を有し、各々の水剤ボトル23から水剤5を投薬ボトル2に供給する水剤供給部3と、投薬ボトル2に収容される水剤5の重量を検出する重量検出部4と、を備える。重量検出部4により検出される水剤5の重量、および、水剤5の比重から、投薬ボトル2に供給された水剤5の体積が算出される。水剤供給部3は、処方箋に従った所定の体積の水剤5が投薬ボトル2に供給されるように制御される。水剤供給部3と重量検出部4とは、筐体6に設けられる。筐体6は、直方体形状に形成され、起立した状態で水平な設置面に設置される。
【0019】
筐体6の内部には、支持フレーム8が設けられる。支持フレーム8は、筐体6の底板9と筐体6の天板10との間に配置され、詳しくは筐体6の天板10寄りに配置される。筐体6の内部空間は、支持フレーム8によって、支持フレーム8よりも上方の上部空間11と支持フレーム8よりも下方の下部空間12とに仕切られる。筐体6の前面部13には、タッチパネル14と、プリンタ17a,17bとが配置される。また前面部13には、下部空間12と筐体6の外部とを連通する下部開口15が形成される。
【0020】
下部開口15は、筐体6の前面部13における左右両側部16a,16bの間に形成される。左右両側部16a,16bの間の、下部開口15の上側には、下部空間12と筐体6の外部とを仕切る、湾曲した板状の前方カバー部18が配置されている。前方カバー部18は、下部空間12を筐体6の前方側の外部から視認可能なように、透明な材料により形成される。前方カバー部18は、左右両側部16a,16bの一方にヒンジを介して取り付けられ、当該ヒンジの軸周りに回動可能に設けられており、これにより、前方カバー部18は開閉可能とされている。
【0021】
水剤供給部3は、下部空間12に配置され、支持フレーム8に対して鉛直な軸線(以下、「ドラム軸線」という)L1まわりに回転自在に設けられる回転体である回転ドラム21と、支持フレーム8の上面に載置され、支持フレーム8に対してドラム軸線L1まわりに回転ドラム21を回転させるドラム回転用モータ22と、を有する。水剤供給部3はまた、回転ドラム21に設けられ、水剤5が収納された複数の水剤ボトル23から投薬ボトル2に水剤を移送する複数のポンプ24と、各ポンプ24を駆動するポンプ駆動ユニット25と、を有する。各ポンプ24は、チューブポンプであってもよい。
【0022】
回転ドラム21は、各ポンプ24を保持するポンプ保持体31と、複数の水剤ボトル23を開口部23A(後述する図8参照)が上方向に開口するように起立した状態に保持するボトル保持部としての水剤ボトル保持体32と、を有する。水剤ボトル保持体32は、ポンプ保持体31の下方に設けられており、平面視環状の平板形状に形成されている。ポンプ保持体31には、各ポンプ24が、ドラム軸線L1を中心とする周方向(以下、「ドラム周方向」という)に間隔をあけて配置される。水剤ボトル保持体32には、各水剤ボトル23が、ドラム周方向に間隔をあけて配置される。
【0023】
本実施の形態で回転ドラム21に搭載される水剤ボトル23およびポンプ24の個数は、目的に応じて任意に変更できる。複数の水剤ボトル23の各々に異なる水剤5が収容されてもよく、複数の水剤ボトル23に処方頻度の高い同種の水剤5が収容されてもよく、一つまたは複数の水剤ボトル23に常水や単シロップなどの賦形剤が収容されてもよい。
【0024】
各ポンプ24の各々を選択的に駆動するためのポンプ駆動ユニット25は、支持フレーム8に固定される固定部37と、固定部37に対して前後方向(図4および図5中に示す両矢印A方向)に移動自在に設けられる移動部38と、固定部37に固定され、移動部38を固定部37に対して前後方向に移動させる移動用モータ39と、移動部38に固定され、ポンプ24を駆動させるポンプ駆動用モータ40と、を有する。ポンプ駆動用モータ40として、ステッピングモータが用いられてもよい。
【0025】
ポンプ駆動用モータ40によって回転駆動される駆動軸41の先端には、連結部材42が固定される。各ポンプ24のロータの回転軸43には、連結部材42と連結される被連結部材44が固定される。連結部材42と被連結部材44とが連結されることで、ポンプ駆動用モータ40の回転がポンプ24に伝達される。ポンプ24は、ドラム回転用モータ22の間欠駆動に連動して、各々のポンプ24毎に駆動されるよう構成されている。水剤5の投薬ボトル2への供給速度は、ポンプ駆動用モータ40の回転速度が高速になるほど、高速になる。
【0026】
移動用モータ39を駆動することによって、ポンプ駆動用モータ40は前後方向に移動する。このポンプ駆動用モータ40の移動により、ポンプ駆動用モータ40の連結部材42をポンプ24の被連結部材44に連結させる連結状態と、連結部材42が被連結部材44に連結していない連結解除状態と、を切り替えることができるようになっている。
【0027】
たとえば、移動用モータ39の駆動によって移動部38を前進させることで、連結部材42と被連結部材44とを連結することができる。また、移動用モータ39の駆動によって移動部38を後退させることで、連結部材42と被連結部材44との連結を解除することができる。回転ドラム21は、連結解除状態において、支持フレーム8に対して回転することができる。
【0028】
連結解除状態でドラム回転用モータ22を駆動することによって、水剤供給装置1に入力された処方箋情報に基づいて選択された特定のポンプ24の被連結部材44がポンプ駆動用モータ40の連結部材42に対面する位置まで回転ドラム21を回転させ、回転後において連結状態に切り替える。これにより、選択された特定のポンプ24を駆動して、所望の水剤ボトル23から供給される水剤5を投薬ボトル2に分注することができる。なお、連結部材42と被連結部材44とは、共にギヤで構成されているが、動力を伝達可能なものであれば、どのような構成であってもよい。
【0029】
回転ドラム21の上端部26には、ドラム軸線L1と同軸に水平に配置されたリング部材27が、ドラム軸線L1回りに回転可能に配置される。リング部材27の外周側には、リング部材27を支持する3つ以上の支持部材28が設けられる。各支持部材28は、ドラム周方向に、等しい間隔を空けて配置される。
【0030】
各支持部材28は、ドラム軸線L1に平行な軸線回りに、支持フレーム8に対して相対回転自在に設けられる。扁平円筒状の各支持部材28の外周面には、全周にわたって凹条29が形成される。リング部材27の外周部には、全周にわたって環状の凸条30が形成される。リング部材27の凸条30は、各支持部材28の凹条29に嵌り込む。リング部材27と支持部材28とは、互いに相対回転可能に設けられている。
【0031】
ドラム回転用モータ22は、支持フレーム8に固定される。ドラム回転用モータ22の回転軸には、原動歯車(図示せず)が固定される。回転ドラム21の上端部26には、原動歯車に噛合する従動歯車33が固定される。従動歯車33は、環状薄板状に形成され、リング部材27の下面に固定されている。ドラム回転用モータ22の回転は、原動歯車および従動歯車33を介してリング部材27に伝達され、これにより、リング部材27とリング部材が固定された回転ドラム21とが一体として回転する。このような構成によって、支持フレーム8に対して回転ドラム21を円滑に回転させることができる。
【0032】
ドラム回転用モータ22は、回転ドラム21に搭載された複数の水剤ボトル23と、複数の水剤ボトル23毎に対応して設けられたポンプ24および供給ノズル36と、一端が水剤ボトル23の内部に配置され他端が供給ノズル36に取り付けられた後述するチューブ34と、を水平方向に一体に回動させる。回転ドラム21は、水剤供給装置1の筐体6内の水剤ボトル保持体32に保持された複数の水剤ボトル23の位置を変更する、ボトル位置変更部としての機能を有する。
【0033】
供給ノズル36は、ポンプ保持体31の下端に設けられた環状の平板であるノズル取付板53の、外周部同一円周上に取り付けられている。各供給ノズル36は、ノズル取付板53上に、ドラム軸線L1を中心とする仮想円上でドラム周方向に等間隔をあけて配置される。供給ノズル36は、ドラム軸線L1に対して所定の角度で傾斜して、ノズル取付板53に取付けられている。ノズル取付板53は、水剤ボトル保持体32の上方に配置されている。ノズル取付板53と水剤ボトル保持体32とは互いに並行であり、回転ドラム21と共に水平面上でドラム軸線L1回りに回動可能に構成されている。
【0034】
重量検出部4は、下部開口15に配置される。重量検出部4は、電子天秤45と、電子天秤45を収容するケーシング46と、電子天秤45に載置されて固定され、投薬ボトル2を開口2Aが上方向に開口するように起立した状態に保持する投薬ボトル保持体47とを有する。電子天秤45は、投薬ボトル2に供給された水剤5の重量を検出する。水剤5の重量が所定値に到達することにより、水剤供給部3はポンプ24の駆動を停止し、投薬ボトル2への水剤5の供給を停止する。電子天秤45は、音叉式、ロードセル式または電磁式などの任意の形式であってもよい。ケーシング46は、筐体6の前面部13における左右両側部16a,16b間の下部に設けられる。投薬ボトル保持体47は、投薬ボトル2が載置される載置台48と、載置台48の上側に設けられ投薬ボトル2を保持する保持具49と、を有する。
【0035】
重量検出部4は、図5に示す駆動部としての昇降装置50により昇降されるようになっている。昇降装置50は、初期位置と供給位置との2位置に位置することができるように、重量検出部4を上下方向に移動させ、これに伴い、重量検出部4の載置台48上に載置された投薬ボトル2を移動させる。初期位置は、投薬ボトル2を水剤供給装置1の載置台48上に設置するための位置である。供給位置は、上記初期位置よりも投薬ボトル2と供給ノズル36とが接近して、投薬ボトル2に水剤5を供給するための位置である。昇降装置50によって、投薬ボトル2は、初期位置と供給位置とを往復するように、水剤供給装置1の筐体6の外部と内部とを往復移動する。
【0036】
図6は、水剤ボトル23内の水剤5を撹拌する撹拌ユニットの構成を示す斜視図である。図7は、図6に示す撹拌ユニットの側面図である。図8は、図7中に示すVIII−VIII線に沿う撹拌ユニットの断面図である。本実施の形態の水剤供給部3は、水剤供給装置1の筐体6の内部に、水剤ボトル23内に収容された水剤5を撹拌する水剤撹拌部を備える。以下、この水剤撹拌部について詳細に説明する。
【0037】
なお、図6〜8では、わかりやすさを優先して、水剤ボトル23が一本のみ載置された水剤ボトル保持体32を示している。また、水剤供給装置1は水剤ボトル23を保持するための複数のカップ固定部76,76Aおよびカップ78などを備えるが、図6,7には複数のカップ固定部76,76Aおよびカップ78などの一部のみが図示され、それらの全てが図示されていない。
【0038】
水剤ボトル保持体32の下側には、回転力を発生させる回転駆動部61が配置される。図8に示すように、回転駆動部61は、動力源の一例としてのモータ62と、モータ62を内部に収容するボックス63と、を有する。モータ62の回転軸には、モータ62とともに回転する軸部64が連結される。軸部64は、モータ62と一体に回転軸L3を中心に回転可能に、モータ62に固定されている。軸部64は、ボックス63の内部と外部とに亘るように配置される。軸部64は、平板状の水剤ボトル保持体32を上下方向に貫くように配置され、モータ62の発生する回転力を水剤ボトル保持体32の下側から水剤ボトル保持体32の上側へ伝達する。
【0039】
軸部64は、カバー75によってその周囲を取り囲まれるとともにその上端を覆われている。軸部64には、カバー75を介在させて、カップ78が一体に固定される。カップ78は、有底の中空円筒形状に形成される。カップ78は、水剤ボトル23を保持するホルダとして機能する。カップ78は、図8に示す水剤ボトル23の底部23B側を保持する。水剤ボトル23は、底部23Bがカップ78の内底面に対向するように、カップ78内に収容される。カップ78の側壁の内壁面は、水剤ボトル23の側面の径に対して僅かに大きい径を有する。そのため、水剤ボトル23の側面は、カップ78の側壁の内壁面に対して微小な隙間を介して対向する。水剤ボトル23の側面の一部がカップ78の側壁の内壁面に接触してもよい。
【0040】
水剤ボトル23の内部には、管部としてのチューブ34が配置される。チューブ34は、複数の水剤ボトル23毎に設けられる。チューブ34は、可撓性と弾性とを有する材料で形成され、その断面は押圧により変形可能であり、押圧を解除することにより弾性復元する。チューブ34は、たとえばシリコンチューブなどの合成樹脂製であってもよい。チューブ34は、水剤ボトル23の開口部23Aから底部23Bへ向かって延び、その一端部34aが水剤ボトル23の底部23Bの内面に接触するように、水剤ボトル23の内部に配置されている。
【0041】
水剤ボトル23の開口部23Aには、ベース部材81が固定されている。チューブ34は、ベース部材81に形成された貫通孔に挿通されて、水剤ボトル23の外部から内部に亘って配置されている。ベース部材81は、図8に示すように、水剤ボトル23の開口部23Aに固定される。ベース部材81の内周面には、たとえばシリコーンゴムなどの弾性材料製の、円筒形状のスペーサ82が取り付けられる。ベース部材81または水剤ボトル23に寸法ばらつきが発生しても、確実に水剤ボトル23の開口部23Aにベース部材81を固定させることができるように、ベース部材81は、弾性変形可能なスペーサ82を介在させて、水剤ボトル23に取り付けられる。
【0042】
ベース部材81上には、カバー83が配置されている。カバー83は、ベース部材81に対し非固定状態に、ベース部材81の上面に載置されている。カバー83は、中空円筒状の壁部と壁部の上端を覆う円板状の天井部とを有するキャップ形状に形成される。上記壁部の下端がベース部材81の上面に当接して、ベース部材81上にカバー83が載置される。水剤ボトル23に固定されたベース部材81上にカバー83が載置された状態で、カバー83は、水剤ボトル23の開口部23Aを覆うように設けられている。カバー83の上記天井部には、チューブ34が丁度挿通される程度の径を有する貫通孔が形成されている。
【0043】
カバー83の上記天井部にはさらに、上面の一部が窪んだ窪み部84が形成されている。チューブ34には、位置決め部材85が取り付けられている。位置決め部材85は、チューブ34の内部を経由して流れる水剤5の流れを妨げることなく、チューブ34に取り付けられる。また位置決め部材85は、チューブ34に対するチューブ34の長手方向の移動が困難であるように、チューブ34に取り付けられる。窪み部84と位置決め部材85とは、位置決め部材85が窪み部84内に嵌合するように、互いに対応する形状に形成されている。
【0044】
位置決め部材85は、カバー83に形成された窪み部84と係合することにより、位置決め部材85の取り付けられたチューブ34の、水剤ボトル23に対する位置決めをする。図8に示すように、位置決め部材85がカバー83の窪み部84内に収容されるとき、水剤ボトル23内で僅かに湾曲したチューブ34の一端部34aが水剤ボトル23の底部23Bと接触するように、位置決め部材85は水剤ボトル23に対するチューブ34の位置決めをする。
【0045】
さらに、水剤ボトル23の外部でチューブ34を固定するための、チューブ固定部86が設けられている。チューブ固定部86は、図3に示すように、ノズル取付板53の下面側に固定されている。チューブ34が水剤ボトル23の内部に挿入された、図7および図8に図示された状態で、チューブ固定部86にチューブ34を保持させることにより、チューブ34はノズル取付板53に対して固定される。チューブ34はさらに、ノズル取付板53に形成された切欠き部54(図5参照)に嵌め入れられることにより、ノズル取付板53に対して固定される。
【0046】
以上のような構成を備える水剤撹拌部において、回転駆動部61のモータ62を駆動させると、モータ62に固定された軸部64が、モータ62とともに回転する。このときのモータ62の回転方向を正方向と称する。軸部64の正方向の回転に伴って、軸部64に固定されたカップ78と、カップ78に保持された水剤ボトル23とは、回転軸L3を中心として回転する。水剤ボトル23の回転の中心軸を形成する回転軸L3は、水剤ボトル23の中心線L2に沿っている。ここで、水剤ボトル23の中心線L2とは、水剤ボトル23の開口部23Aと底部23Bとを結ぶ直線をいい、典型的には、平面視円形状の水剤ボトル23の開口部23Aの中心と、平面視円形状の水剤ボトル23の底部23Bの中心とを結ぶ直線をいう。
【0047】
図7および図8に図示された実施の形態では、水剤ボトル23がカップ78の中央に配置されている。これにより、水剤ボトル23の中心線L2と、回転駆動部61の回転軸L3とは、同一直線状に存在している。なお、水剤5をより効率よく撹拌するために、水剤ボトル23の中心線L2を回転駆動部61の回転軸L3からずらしてもよく、水剤ボトル23の中心線L2を回転駆動部61の回転軸L3に対して傾斜させてもよい。
【0048】
この水剤ボトル23の回転に伴って、水剤ボトル23内に収容された水剤5は、水剤ボトル23の回転方向に沿って、水剤ボトル23の内部を、水剤ボトル23の円筒状の側部の周方向に流れる。
【0049】
モータ62を所定時間正方向に回転させた後に、続いて、正方向と反対の方向である逆方向にモータ62を回転させる。回転駆動部61は、正逆両方向の回転力を発生できるように設けられている。水剤供給装置1を操作する操作者がモータ62の回転方向および回転時間を任意に設定可能に、水剤供給装置1を構成してもよい。たとえば、モータ62を正方向に5秒間回転させ水剤ボトル23を複数回回転させた後に、モータ62を逆方向に5秒間回転させ水剤ボトル23を逆方向に複数回回転させるなど、モータ62の正方向の回転と逆方向の回転との時間を等しくしてもよい。またたとえば、モータ62の回転方向を正方向のみに設定してもよい。
【0050】
モータ62の回転方向を切り換えることに伴って、水剤ボトル23の回転方向も切り替わる。すなわち、回転駆動部61は、水剤ボトル23を正方向に回転させた後に、正方向と反対の逆方向に水剤ボトル23を回転させる。回転方向が切り換えられ逆方向に回転する水剤ボトル23の内部では、水剤5の流れにおける乱流の乱れ強さが増大する。加えて、水剤5の流れ中に渦が発生する。この乱流および渦の作用によって、水剤5は水剤ボトル23内で撹拌される。
【0051】
このように、回転駆動部61の発生する回転駆動力によって水剤ボトル23が回転することにより、水剤供給装置1の内部において、水剤ボトル23内に収容された水剤5を撹拌することができる。そのため、撹拌を必要とする水剤5を、本実施の形態の水剤供給装置1を使用して、短時間で効率的に調剤することができる。従来の装置と比較して回転駆動部61が追加された簡単な構成で、水剤ボトル23を保持するカップ78と水剤ボトル23とを一体に回転させ、水剤5を水剤供給装置1内で撹拌することができる。水剤ボトル23の回転方向を正方向から逆方向へ切り換えることにより、水剤ボトル23内の乱流の乱れ強さを増大させることができるので、より効率よく水剤5を撹拌することができる。
【0052】
また、水剤ボトル23の開口部23Aから底部23Bにまで至るように水剤ボトル23内にチューブ34が配置されており、チューブ34は水剤ボトル23の外部で固定されている。そのため、回転する水剤ボトル23に対し、チューブ34は相対回転する。水剤ボトル23とともに水剤ボトル23内を流れる水剤5に対し、チューブ34は固定された状態に保たれるので、チューブ34は水剤5に対する撹拌子として機能する。つまり、チューブ34を水剤ボトル23内に水剤5に浸漬するように配置することにより、水剤5の流れが乱流となり易くなる。したがって、より効率よく水剤5を撹拌することができる。
【0053】
次に、水剤ボトル23から投薬ボトル2へ水剤5を供給して調剤を行なう場合の制御について説明する。図9は、水剤供給装置1の構成を示すブロック図である。図9に示すように、水剤供給装置1は、水剤供給装置1全体の動作を制御する制御部90を備える。タッチパネル14は、処方箋データなどの水剤供給装置1の動作に係る種々のパラメータ、ならびに、患者名および薬剤師名などの各種情報を入力するための、入力部として機能する。タッチパネル14はまた、水剤供給装置1の運転状態を表示する表示部として機能する。水剤供給装置1は、表示部として、タッチパネル14の他に、たとえば水剤供給装置1の動作不良の発生時に点灯するランプを備えてもよい。
【0054】
電子天秤45は、投薬ボトル2に供給された水剤5の重量を検出し、検出された重量の値を制御部90に入力する。制御部90は、電子天秤45から投薬ボトル2内の水剤5の重量データを受け取りながら、所定量の水剤5を投薬ボトル2に供給する。
【0055】
水剤供給装置1は、筐体6の内部の下部空間12における各々の水剤ボトル23の位置を検出する、ボトル位置検出手段91を備える。ボトル位置検出手段91は、たとえば各種のセンサであってもよく、当該センサは水剤ボトル保持体32のドラム軸線L1まわりの回転角を検出してもよい。回転ドラム21の回転に伴って水剤ボトル23はドラム軸線L1まわりに回転移動するので、水剤ボトル23の現在位置は頻繁に変化する。ボトル位置検出手段91を用いて水剤ボトル23の現在位置が正確に検出され、検出された水剤ボトル23の現在位置に係るデータは制御部90に入力される。
【0056】
水剤供給装置1はまた、外部機器との通信を行ないデータを外部機器から受信するための通信部92を備える。水剤供給装置1の動作に係る種々のパラメータは、上述したタッチパネル14の操作によって制御部90に入力されてもよく、または代替的には、通信部92を介して外部のコンピュータから制御部90に入力されてもよい。
【0057】
水剤供給装置1はまた、制御部90が演算を行なうためのメモリ93を備える。メモリ93には、水剤ボトル23の現在位置に係るデータ、および、水剤供給装置1に搭載されている水剤ボトル23に収容された水剤5のデータが格納されてもよい。水剤供給装置1はまた、取り外し可能な記録媒体を装着するための記録媒体アクセス部94を備える。上述した水剤5のデータは、記録媒体アクセス部94に装着された各種記録媒体に格納され、制御部90により記録媒体から適宜読み込まれてもよい。
【0058】
制御部90は、以上説明した各種の機器から入力された情報に基づき、水剤供給装置1を制御する。具体的には、制御部90から、ドラム回転用モータ22、移動用モータ39、ポンプ駆動用モータ40、水剤5の撹拌用のモータ62、および昇降装置50に制御信号が送信され、各モータが適宜運転および停止することにより、水剤ボトル23から投薬ボトル2への水剤5の供給が行なわれる。水剤5の供給終了後、出力部17を構成するプリンタ17a,17bから、注出結果の印字された紙片、ならびに、患者名、薬局名、服薬時刻および服薬量などを印字した投薬ボトル2貼付用のラベルが出力される。
【0059】
図10は、ボトル位置検出手段91によって検出される、各々の水剤ボトル23の位置を示す模式図である。図11は、水剤ボトル23の現在位置を示すテーブルの一例である。図10に示すように、本実施の形態の水剤ボトル保持体32には、8本の水剤ボトル23が搭載可能であるものとする。これら8本の水剤ボトル23が水剤ボトル保持体32上に搭載される位置を、図10中に数字1〜8で示している。数字1で示される位置は、水剤供給装置1の最前面側の、水剤ボトル23に収容された水剤5が投薬ボトルへ払い出される位置であり、この位置を注出位置と称する。
【0060】
図11に示すように、現在水剤供給装置1に搭載されている8本の水剤ボトル23には、それぞれA〜Hの8種類の水剤が収容されている。現時点で、水剤Aが収容された水剤ボトル23が注出位置にあるものとする。回転ドラム21は、ドラム周方向の両側に回転可能であるものとする。水剤ボトル保持体32は、時計回りと反時計回りとの両方向に回転可能である。そのため、現在注出位置にある水剤Aの隣に配置された水剤Bおよび水剤Hを注出位置まで移動させる時間は等しい。
【0061】
以下の例では、水剤ボトル保持体32を45°回転させる時間、すなわち、現在水剤Aが注出位置にあるとき隣の水剤Bを注出位置に移動させるために要する時間を、仮に3秒とする。この場合、水剤ボトル23の移動距離に比例して移動時間がかかり、図11に示すように、水剤Aの二つ隣にある水剤Cおよび水剤Gの注出位置までの移動時間は6秒であり、同様に、水剤Aから回転方向に最も離れる水剤Eの注出位置までの移動時間は12秒である。
【0062】
図12は、撹拌を必要とする水剤5を示すテーブルの一例である。水剤供給装置1に搭載された8種類の水剤A〜Hのうち、水剤Bおよび水剤Eが投薬ボトル2への供給前に撹拌が必要な撹拌必要水剤である。本実施形態では、撹拌が必要な水剤とは、長時間静置しておくと沈降などによって不均質になる水剤である。撹拌が必要な水剤としては、たとえば懸濁液または乳濁液が挙げられる。これに対し、水剤A,C,DおよびF〜Hは、投薬ボトル2への供給前に撹拌が不要な撹拌不要水剤である。撹拌が不要な水剤とは、長時間静置しても均質な状態を維持できる水剤である。
【0063】
図12に示すように、水剤Bおよび水剤Eの必要な撹拌時間は10秒とされており、この必要撹拌時間に基づいて撹拌用のモータ62の正方向への回転時間(5秒)と逆方向との回転時間(5秒)とが決定される。図12では、撹拌を必要とする水剤B,Eの必要撹拌時間が同じであり、必要撹拌時間は固定されているが、水剤5の種類毎に必要撹拌時間が異なってもよい。
【0064】
図13は、投薬ボトル2へ供給される水剤5の種類を示す処方箋テーブルの一例である。本例では、医師の処方に従って、患者が服用するための3種類の水剤5を混合して投薬ボトル2へ供給する。処方箋テーブルには、水剤の種類と、水剤の注出量とのデータが格納されている。本例の場合、水剤Bを20ml、水剤Cを30ml、および水剤Gを40ml供給する。処方箋テーブルに係る各々のデータは、上述した通り、タッチパネル14を使用して制御部90へ入力されてもよく、または、通信部92を介して外部のコンピュータから制御部90へ入力されてもよい。
【0065】
図14は、本実施の形態に係る水剤供給装置1を使用した、水剤ボトル23から投薬ボトル2への水剤供給処理のフローチャートである。図14に示すように、本実施の水剤供給処理では、まずステップS100において水剤5の注出の順番が決定され、その後ステップS200において実際の注出が行なわれる。本明細書では、複数の水剤ボトル23に収容された水剤5の各々を水剤ボトル23から投薬ボトル2へ連続的に順々に供給するひと続きの順序を、供給順序と称する。この供給順序において、各々の水剤5を供給する順番を、供給順番と称する。
【0066】
図15は、図14に示す順番を決定するステップS100の詳細を示すフローチャートである。複数の水剤5の供給順序と、各々の水剤5の供給順番とは、以下に説明するステップに従って決定される。まずステップS110において、投薬ボトル2へ注出される薬品数を取得する。このとき制御部90は、図13に示す処方箋テーブルを参照して、水剤B、水剤Cおよび水剤Gの三種類の水剤が注出されることを認識する。
【0067】
続いてステップS120において、注出薬品数を取得した段階での水剤ボトル23の現在位置を取得する。このとき制御部90は、ボトル位置検出手段91の検出結果に基づき水剤ボトル23の現在位置が記録された図11に示すテーブルを参照して、現在注出位置にある水剤が水剤Aであること、および、注出される三種類の水剤B,C,Gが収容された水剤ボトル23の現在位置を認識する。続いてステップS130において、ステップS120で取得された水剤ボトル23の現在位置に基づいて、制御部90は、各々の水剤ボトル23の注出位置までの移動時間を算出する。本例の場合、水剤Aが注出位置にあるので、図11に示すように、水剤Bの注出位置までの移動時間は3秒であり、水剤Cの注出位置までの移動時間は6秒であり、水剤Gの注出位置までの移動時間は6秒である。
【0068】
続いてステップS140において、水剤5の撹拌時間を算出する。制御部90は、図13に示す処方箋テーブルと、図12に示す撹拌を必要とする水剤のテーブルとを比較して、今回の調剤処理において注出される水剤Bが撹拌を必要とする水剤であること、および、必要撹拌時間が10秒であることを算出する。
【0069】
続いてステップS150において、各水剤の注出時間を算出する。制御部90は、図13の処方箋テーブルを参照して、三種類の水剤B,C,Gのそれぞれの注出量を認識し、ポンプ駆動用モータ40による単位時間当たりの水剤5の注出量に基づいて、水剤B,C,Gのそれぞれの注出時間を算出する。本例の場合、ポンプ駆動用モータ40は1秒間に10mlの水剤5を移送できる仕様であり、注出時間は水剤5の注出量に比例するものとする。この場合、水剤Bの注出時間は2秒であり、水剤Cの注出時間は3秒であり、水剤Gの注出時間は4秒である。
【0070】
続いて、ステップS160において、三種類の水剤B,C,Gの全ての投薬ボトル2への供給に要する合計供給時間(以下、TOTAL注出時間と称する)を算出する。
【0071】
図16は、TOTAL注出時間を算出するステップS160の詳細を示すフローチャートである。図16を参照して、TOTAL注出時間の算出方法について詳細に説明する。まずステップS161において、変数iを1とし、変数totalを0とする。
【0072】
ここで、変数iは、注出される水剤に付される番号を示すものであり、1以上の整数の値を取り得る。たとえば、図13に示す処方箋テーブルに従って、水剤Bを1番、水剤Cを2番、水剤Gを3番とするように仮の付番が行なわれる。また変数totalは、時間を示すものである。
【0073】
変数iは、ステップS200で実際の注出が行なわれるときの供給順番を示すものではないことに留意されたい。後述するように、実際の注出が行なわれるときの供給順番を決定するためには、考えられる全ての供給順序についてのTOTAL注出時間を算出した上で、その中から最適な供給順序(すなわち、TOTAL注出時間が最短となる供給順序)が選択される。図13では水剤Bに1番、水剤Cに2番、水剤Gに3番の番号が付されているが、これらは、たとえば医師が処方を書いた順番に従った付番、またたとえばデータが入力された順番などに過ぎないものである。TOTAL注出時間を決定する際には、水剤B,CおよびGに1〜3の任意の番号が付されて、計6通りの注出の順序の組合せが試行される。同様に、たとえば二種類の水剤が処方箋テーブルに記載されていれば、計2通りの注出の順序の組合せが試行され、またたとえば四種類の水剤が処方箋テーブルに記載されていれば、計24通りの注出の順序の組合せが試行される。
【0074】
図16に戻って、続いてステップS162において、1番目の薬品である水剤Bの撹拌時間と移動時間とを比較する。この時点で変数totalは0であるので、水剤Bの撹拌時間と移動時間のみを比較すればよい。本例の場合、図12に示すように水剤Bの必要撹拌時間は10秒であり、図11に示すように水剤Bを注出位置まで移動させる移動時間は3秒であるので、撹拌時間の方が長い。つまり、水剤Bを現在位置から注出位置まで移動させる間に水剤Bの撹拌が終了せず、水剤Bの撹拌時間が律速となり、水剤Bの撹拌時間によって変数totalが支配される。そのため、ステップS163へ進み、水剤Bの撹拌時間と注出時間との和(10秒+2秒=12秒)を変数totalとする。
【0075】
ステップS163において1番目の水剤Bの注出までに必要な時間が算出されたので、続いてステップS165に進み、変数iに1を加える。つまり、2番目の水剤Cについての注出時間を、次に検討する。次のステップS166では、全ての処方薬品についての注出時間を算出したかを判断するために、変数iが処方薬品数を越えたかを判断する。本例では、この時点での変数iは2、処方薬品数は3であり、変数iは処方薬品数以下であるので、ステップS162に戻る。
【0076】
2度目のステップS162において、2番目の薬品である水剤Cの撹拌時間と、現時点での変数totalと水剤Cの移動時間との和と、を比較する。本例の場合、水剤Cは撹拌を必要としない水剤であるので、撹拌時間は0である。つまり、水剤Cの撹拌時間よりも、現時点での変数totalと水剤Cの移動時間との和の方が長い。そのため、現時点での変数totalと水剤Cの移動時間との和が律速となり、現時点での変数totalと水剤Cの移動時間との和が新たな変数totalを支配する。そのためステップS164へ進み、現時点での変数totalと、水剤Cの移動時間と、水剤Cの注出時間と、の和を、新たな変数totalとする。
【0077】
図17は、水剤Bが注出位置にあるときの水剤ボトル23の現在位置を示すテーブルである。図11に示すテーブルの位置から回転ドラム21が回転移動して水剤ボトル23の位置が変化した結果、現時点で水剤Bが注出位置にある。そのため、2番目の水剤Cを注出位置まで移動させるために要する移動時間は、図17に示すように3秒である。そのため、現時点での変数total(12秒)に、水剤Cの移動時間と注出時間(3秒+3秒=6秒)を加え、新たな変数totalは18秒となる。これにより、2番目の水剤Cの注出までに必要な時間が算出されたことになる。
【0078】
続いてステップS165において変数iに1を加え、変数iを3とする。続いてステップS166で、変数iの値と処方薬品数とを比較し、変数iと処方薬品数とがともに3であって変数iは処方薬品数以下であるので、再びステップS162に戻る。
【0079】
3度目のステップS162において、3番目の薬品である水剤Gの撹拌時間と、現時点での変数totalと水剤Gの移動時間との和と、を比較する。本例の場合、水剤Gは撹拌を必要としない水剤であるので、撹拌時間は0である。そのためステップS164へ進み、現時点での変数totalと、水剤Gの移動時間と、水剤Gの注出時間と、の和を、新たな変数totalとする。
【0080】
図18は、水剤Cが注出位置にあるときの水剤ボトル23の現在位置を示すテーブルである。図17に示すテーブルの位置から回転ドラム21が回転移動して水剤ボトル23の位置が変化した結果、現時点で水剤Cが注出位置にある。そのため、3番目の水剤Gを注出位置まで移動させるために要する移動時間は、図18に示すように12秒である。そのため、現時点での変数total(18秒)に、水剤Cの移動時間と注出時間(12秒+4秒=16秒)を加え、新たな変数totalは34秒となる。これにより、3番目の水剤Gの注出までに必要な時間が算出されたことになる。
【0081】
続いてステップS165において変数iに1を加え、変数iを4とする。続いてステップS166で、変数iの値と処方薬品数とを比較する。この時点での変数iは4、処方薬品数は3であり、変数iが処方薬品数を越えたので、TOTAL注出時間の算出を終了する。
【0082】
図19は、水剤B,C,Gの順に注出を行なう場合のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。上記の説明の通り、水剤Bの移動時間に比較して水剤Bの撹拌時間が長いので、水剤Bの撹拌および注出、水剤Cの移動および注出、ならびに水剤Gの移動および注出に要する時間を加えることにより、水剤B,C,Gの順に注出を行なう場合のTOTAL注出時間が34秒であると算出される。
【0083】
本例の場合、注出薬品数が3であるので、水剤B,CおよびGの順序を入れ替えることによる水剤5の投薬ボトル2への注出の順序の組合せは、合計6通りが考えられる。この6通りの注出の順序の全てについて、上記と同様に、TOTAL注出時間を算出する。
【0084】
たとえば、次に水剤G,B,Cの順に注出を行なう場合のTOTAL注出時間を算出してもよい。この場合、図16を再び参照して、1番目の薬品である水剤Gは投薬ボトル2への供給前に撹拌が不要であるので、水剤Gの注出までに必要な時間は、水剤Gの移動時間と注出時間との和(6秒+4秒=10秒)である。
【0085】
2番目の薬品である水剤Bは、10秒間の撹拌を必要とする。ここで、水剤Bの撹拌は、撹拌を必要としない水剤Gを注出位置まで移動させる移動時間と、水剤Gを注出する注出時間と、の間に行なわれる。水剤Bを収容する水剤ボトル23は、水剤Bが撹拌されながら、ドラム軸線L1まわりに回転移動する。
【0086】
図9に示す制御部90は、投薬ボトル2へ水剤Gを供給する間、および、ボトル位置変更部としての回転ドラム21を回転させ水剤ボトル23の位置を変更する間に、水剤撹拌部を作動させ水剤Bを撹拌する。制御部90は、複数の水剤ボトル23に収容された水剤5の各々を水剤ボトル23から投薬ボトル2へ供給する供給順序のうち、水剤Bを投薬ボトル2へ供給する供給順番になるまで、すなわち、水剤Bの収容された水剤ボトル23を注出位置へ移動させるための回転ドラム21の回転移動が開始されるまでに、水剤Bを撹拌する。制御部90は、水剤Gの投薬ボトル2への供給が完了した後に投薬ボトル2への水剤Bの供給を開始するものであって、水剤Bよりも供給順番が前の水剤Gを投薬ボトル2へ供給する間に、水剤Bを撹拌する。
【0087】
2度目のステップS162において、水剤Bの撹拌時間と、現時点での変数totalと水剤Bの移動時間との和と、を比較する。図20は、水剤Gが注出位置にあるときの水剤ボトル23の現在位置を示すテーブルである。図20を参照して、2番目の水剤Bを注出位置まで移動させるために要する移動時間は、図20に示すように9秒である。現時点での変数totalは、1番目の薬品である水剤Gの移動時間と注出時間との和である。つまり、2度目のステップS162において、制御部90は、水剤Gの供給に要する第一水剤供給時間と、水剤Bの撹拌に要する第二水剤撹拌時間と、を比較する。
【0088】
ここで第一水剤供給時間は、1番目に注出される第一水剤である水剤Gを収容した第一ボトルとしての水剤ボトル23から、投薬ボトル2へ、水剤Gの供給に要する時間である。また第二水剤撹拌時間は、2番目に注出される第二水剤である水剤Bの撹拌に要する時間である。また制御部90は、上記第一水剤供給時間と水剤ボトル23の位置変更に要する位置変更時間とを加えた小計時間と、上記第二水剤撹拌時間と、を比較する。
【0089】
水剤Bの撹拌時間(10秒)と、現時点での変数totalと水剤Bの移動時間との和(10秒+9秒=19秒)と、を比較すると、後者の方が大きい。そのため、ステップS164に進み、現時点での変数total(10秒)に、水剤Bの移動時間と注出時間(9秒+2秒=11秒)を加え、新たな変数totalは21秒となる。これにより、2番目の水剤Bの注出までに必要な時間が算出されたことになる。
【0090】
3番目の薬品である水剤Cは撹拌が不要であるので、ステップS164において、現時点での変数totalと、水剤Cの移動時間と、水剤Cの注出時間と、の和を、新たな変数totalとする。図17を参照して、3番目の水剤Cを注出位置まで移動させるために要する移動時間は、3秒である。そのため、現時点での変数total(21秒)に、水剤Cの移動時間と注出時間(3秒+3秒=6秒)を加え、新たな変数totalは27秒となる。これにより、3番目の水剤Gの注出までに必要な時間が算出されたことになる。
【0091】
図21は、水剤G,B,Cの順に注出を行なう場合のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。上記の説明の通り、水剤Bの撹拌時間に比較して、1番目の水剤Gの移動時間および注出時間ならびに2番目の水剤Bの移動時間の和のほうが長い。そのため、水剤Gの移動および注出、水剤Bの移動および注出、ならびに水剤Cの移動および注出に要する時間を加えることにより、水剤G,B,Cの順に注出を行なう場合のTOTAL注出時間が27秒であると算出される。
【0092】
図22は、水剤G,C,Bの順に注出を行なう場合のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。撹拌を必要とする水剤Bは3番目に注出される。水剤Bの撹拌は1番目の水剤Gの移動開始と同時に開始されるので、2番目の水剤Cの注出が終わるまでに水剤Bの撹拌は既に完了している。制御部90は、水剤Bの撹拌終了後、時間を空けて水剤Bの投薬ボトル2への供給を開始する。そのため、水剤Gの移動および注出、水剤Cの移動および注出、ならびに水剤Bの移動および注出に要する時間を加えることにより、水剤G,C,Bの順に注出を行なう場合のTOTAL注出時間が30秒であると算出される。
【0093】
同様に、水剤B,G,Cの順、水剤C,B,Gの順、水剤C,G,Bの順に注出を行なう場合のTOTAL注出時間を、それぞれ算出する。すなわち、三種類の水剤B,C,Gを順に注出する組合せの全てである6通りのTOTAL注出時間を算出する。
【0094】
図15に戻って、次にステップS170において、上記の6通りのTOTAL注出時間の算出結果に基づいて、実際に水剤5の投薬ボトル2への注出を行なう際の注出の順序を決定する。具体的には、6通りのTOTAL注出時間のうち、TOTAL注出時間が最短となる順序を選択し、その順序を、複数の水剤ボトル23に収容された水剤5の各々を水剤ボトル23から投薬ボトル2へ供給する供給順序として決定する。このようにして、各々の水剤5(すなわち水剤B,CおよびG)を投薬ボトル2へ供給する供給順番が決定され、図14に示すステップS100が完了したことになる。
【0095】
回転ドラム21の回転量を最小にすることにより、水剤ボトル23の注出位置への移動に要する時間を最短にすることができる。制御部90は、撹拌必要水剤の供給順番が撹拌不要水剤の供給順番よりも後になるように、複数の水剤ボトル23に収容された複数種類の水剤5を投薬ボトル2へ供給する供給順序を設定する。これにより、撹拌必要水剤の撹拌に要する時間のうち、TOTAL注出時間に影響する時間を短縮できる。したがって、複数種類の水剤の全ての注出を行なうために必要な時間を短縮することができる。
【0096】
続いて、水剤5を収容した複数の水剤ボトル23の各々から投薬ボトル2への水剤5の供給が行なわれる。図23は、図14に示す水剤5を注出するステップS200の詳細を示すフローチャートである。図23を参照して、まずステップS210において、投薬ボトル2へ供給される複数の水剤5に、撹拌が必要な薬品が含まれるかどうかが判断される。撹拌必要水剤があれば、ステップS220に進み、撹拌動作フラグがセットされ、その後ステップS230へ進む。撹拌が必要な薬品がなければ、ステップS220を抜かして、直接ステップS230へ進む。
【0097】
図24は、水剤5を撹拌するサブルーチンを示すフローチャートである。図24に示すサブルーチンは、水剤供給装置1の起動と同時に開始し、常時実行されている。ステップS221に示すように、撹拌動作フラグがセットされたか否かが常時監視され、撹拌動作フラグがセットされていない間は指示を待っている待機状態となる。
【0098】
図23に示すステップS220において撹拌動作フラグがセットされると、ステップS221において撹拌動作フラグがセットされたと判断されて、ステップS222へ進む。ステップS222では、制御部90が水剤5の撹拌用のモータ62を駆動することにより、水剤ボトル23を回転させる。水剤ボトル23を正逆両方向に回転させることにより水剤ボトル23内に乱流が発生し、これにより水剤ボトル23内の水剤5を撹拌する。ステップS223で撹拌が完了したと判断されるまで、撹拌が続けられる。撹拌の完了の判断は、たとえばモータ62の駆動時間が所定時間を越えたか否かをタイマーで検出することにより、行なわれる。
【0099】
ステップS220で撹拌動作フラグがセットされたときに、ステップS221における判断がYESとなり、ステップS222に進んで撹拌が開始される。一つの処方箋が撹拌が必要な水剤5を複数含む場合、複数の水剤5の撹拌動作フラグが同時にセットされ、複数の水剤5の撹拌が一斉に開始される。
【0100】
撹拌が完了したと判断されると、モータ62が停止され、続いてステップS224に進み、撹拌動作フラグがクリアされる。図24のサブルーチンはその後リターンされ、再び待機状態に戻る。
【0101】
なお、図24に示すサブルーチンは、上述したように装置起動と同時に常時実行されてもよいが、水剤5の供給順序決定後にサブルーチン開始フラグを設定してもよく、この場合、必要な複数種類の水剤5の全てが投薬ボトル2へ供給された後にサブルーチンを終了させればよい。
【0102】
図23に戻って、次にステップS230において、撹拌が必要な薬品の分注の順番であるか否かが判断される。撹拌必要水剤の供給順番であれば、次にステップS240において、撹拌動作フラグがクリアされているかが判断される。つまり、撹拌必要水剤の供給順番になったときに、図24に示すサブルーチンに従って既に水剤5の撹拌が行なわれ、その結果ステップS224において撹拌動作フラグがクリアされたのか否かが判断される。撹拌動作フラグがクリアされていなければ、撹拌が未だ終了していない状態であるから、撹拌が完了して撹拌動作フラグがクリアされるまで待機する。撹拌動作フラグがクリアされたと判断されれば、ステップS250へ進む。
【0103】
撹拌が不要な撹拌不要水剤の供給順番であれば、撹拌動作フラグとは関係なく水剤5の注出が可能であるので、ステップS230から直接ステップS250へ進む。続いてステップS250において、注出される水剤5を収容する水剤ボトル23を注出位置へ移動させ、その後水剤5の水剤ボトル23から投薬ボトル2への注出が行なわれる。
【0104】
ここで、ステップS220において撹拌動作フラグがセットされると、直ちにステップS222において撹拌が開始される。また、ステップS220で撹拌動作フラグがセットされた後、最初に投薬ボトル2へ供給される水剤5が投薬ボトル2への供給前に撹拌が不要な撹拌不要水剤であれば、直ちにステップS250において水剤ボトル23の移動が開始される。制御部90は、回転ドラム21が水剤ボトル23の位置を変更する間に、水剤撹拌部を構成する回転駆動部61を作動させ、水剤ボトル23内の水剤5を撹拌する。
【0105】
続いてステップS260へ進み、処方箋に記載された全ての対象の水剤5が投薬ボトル2へ供給されたか否かが判断され、完了していなければ、ステップS230へ戻る。全ての水剤5が注出されていれば、水剤5の投薬ボトル2への供給が完了し、図14に示すステップS200が完了したことになる。
【0106】
以上説明したように、本実施の形態の水剤供給装置1では、投薬ボトル2への供給前に撹拌が必要な水剤5は、他の水剤5を投薬ボトル2へ供給する間、および/または、水剤ボトル23の位置を変更する間に、撹拌される。撹拌必要水剤の撹拌時間を、他の水剤5の注出時間および/または移動時間に重ねることにより、撹拌のみを行なう時間を短縮でき、典型的には撹拌のみを行なう時間を無くすことができる。したがって、水剤5の注出時間を短縮することができる。
【0107】
なお、複数の水剤ボトル23に収容された複数種類の水剤5を投薬ボトル2へ供給する供給順序は、撹拌必要水剤である水剤Bの供給順番が撹拌不要水剤である水剤Gの供給順番よりも後になるように、設定されてもよい。または、供給順序は、医師が処方を書いた順番に従って設定されるなど、予め設定されたものであって、制御部90は供給順序を変更しなくてもよい。供給順序が予め設定されたものであり、撹拌が必要な水剤Bが最初の供給順番に設定されていても、図19に示すように、水剤Bの撹拌時間と移動時間とを重ねることにより、水剤Bの撹拌のみを行なう時間を短縮できる。したがって、水剤5の注出時間を短縮することができる。
【0108】
(実施の形態2)
図25は、実施の形態2のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。実施の形態2では、5種類の水剤P,Q,R,SおよびTをそれぞれ50mlずつ供給する処方箋に従って、水剤5の投薬ボトル2への供給を行なう例について説明する。水剤P,Q,R,SおよびTの注出時間は全て等しく5秒とする。このとき、5種類の水剤P,Q,R,SおよびTが収容された水剤ボトル23は、水剤ボトル保持体32上にそれぞれ隣り合って並べられており、そのため、各水剤ボトル23の注出位置までの移動時間は3秒であるとする。
【0109】
また、5種類の水剤P,Q,R,SおよびTのうち、水剤Tのみが投薬ボトル2への供給前に撹拌が必要な撹拌必要水剤であり、他の水剤P,Q,RおよびSはいずれも、投薬ボトル2への供給前に撹拌が不要な撹拌不要水剤であるとする。
【0110】
図23を参照して説明した通り、水剤5の投薬ボトル2への供給開始時に撹拌動作フラグがセットされるので、図25に示す通り、水剤Pの移動開始と同時に水剤Tの撹拌が開始されている。水剤Tは、10秒間撹拌された後に撹拌が停止される。また水剤Tは、所定時間(本例の場合10秒間)停止した後に、再度10秒間の撹拌が行なわれる。
【0111】
このように、撹拌必要水剤である水剤Tを、その投薬ボトル2への供給前に繰り返し撹拌すれば、水剤Tの供給順番になる時点、すなわち水剤Tを収容した水剤ボトル23の注出位置への移動が開始される時点により近い時間帯において、水剤Tを撹拌することができる。したがって、水剤Tに含まれる懸濁成分の水剤ボトル23の底部への沈降をより確実に抑制できるので、より均一な状態の水剤Tを投薬ボトル2に供給することができる。
【0112】
(実施の形態3)
図26は、実施の形態3のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。実施の形態3は、上述した実施の形態2と同様の、5種類の水剤P,Q,R,SおよびTを投薬ボトル2へ供給する例である。実施の形態3では、図26に示すように、水剤Pの移動開始から水剤Sの注出終了まで、すなわち、水剤Tの供給順番になるまで、水剤Tの撹拌が連続的に続けられる。
【0113】
実施の形態3に示す調剤処理によると、実施の形態2と同様に、投薬ボトル2への供給開始時点により近い時間帯に水剤Tを撹拌でき、水剤Tに含まれる懸濁成分の水剤ボトル23の底部への沈降をより確実に抑制できるので、より均一な状態の水剤Tを投薬ボトル2に供給することができる。
【0114】
(実施の形態4)
図27は、実施の形態4のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。実施の形態4では、図11に示すテーブルの通り配置された2種類の水剤BおよびHを供給し、水剤Bの注出量が20ml、水剤Hの注出量が50mlである処方箋に従って、水剤5の投薬ボトル2への供給を行なう例について説明する。水剤Bの注出時間は2秒、水剤Hの注出時間は5秒とする。図12に示すように、水剤Bは撹拌必要水剤であり、水剤Hは撹拌不要水剤であるとする。また、図27に示すように、水剤B,Hを供給する処方が3回連続して行なわれる場合であるとする。
【0115】
この場合、投薬ボトル2への供給前に撹拌が必要な水剤Bは、3回の連続処方のうちの最初の回のみに撹拌すればよい。1回目の処方において水剤Bを撹拌してから短時間後に、2,3回目の処方に従った水剤Bの注出が行なわれる。2,3回目の処方においては、1回目の処方で水剤Bが撹拌されてから時間が経過しておらず、水剤Bは既に撹拌済みであると考えられる。1回目の処方では水剤Bは撹拌必要水剤であるが、2,3回目の処方では水剤Bは撹拌不要水剤として扱うことができる。そのため、2,3回目の処方において、水剤Bの再撹拌は不要であり、水剤Bの撹拌時間の分所要時間を短縮できる。
【0116】
このようにすれば、2,3回目の処方における水剤BおよびHのTOTAL注出時間を短縮することができる。2,3回目の処方において、制御部90は、水剤Bの撹拌終了後、時間を空けて水剤Bの投薬ボトル2への供給を開始する。このような調剤処理は、処方箋に含まれる水剤が全て撹拌必要水剤である場合に、TOTAL注出時間を短縮するために特に有効である。
【0117】
(実施の形態5)
図28は、実施の形態5のTOTAL注出時間を示すタイミングチャートである。実施の形態5は、上述した実施の形態1と同様の、3種類の水剤B,CおよびGを投薬ボトル2へ供給する例である。撹拌必要水剤の種類によっては、撹拌した後、長時間(たとえば10時間以上)水剤5を均一に保つことができる。このような水剤の場合、一日一回、たとえば一日のうちの水剤供給装置1の起動時のみに撹拌すれば、その後の実際の注出時に撹拌は不要である。実施の形態5では、水剤Bが、一日一回の撹拌で十分な均一性を保つことのできる種類の水剤であるとする。
【0118】
そのため、図28に示すように、事前に水剤Bを撹拌しておくことにより、実際の注出時には、水剤Bは投薬ボトル2への供給前に撹拌が不要な撹拌不要水剤として扱うことができるので、水剤Bの撹拌時間の分、TOTAL所要時間を短縮できる。制御部90は、水剤Bの撹拌終了後、時間を空けて水剤Bの投薬ボトル2への供給を開始する。このようにすれば、図19と比較して、水剤B,CおよびGの順序で注出を行なう場合のTOTAL注出時間を大幅に短縮することができる。
【0119】
なお、これまでの実施の形態においては、水剤ボトル23が水剤供給装置1内で移動可能な構成において、水剤ボトル23を注出位置に移動させる移動時間を考慮して、TOTAL注出時間を算出した。水剤ボトル23が水剤供給装置1内で移動しない構成においては、水剤ボトル23の移動時間を考慮せずにTOTAL注出時間を算出すればよい。つまり、複数の水剤5の注出時間と撹拌時間とを適宜加えることにより、TOTAL注出時間を算出すればよい。
【0120】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、各実施の形態の構成を適宜組合わせてもよい。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0121】
1 水剤供給装置、2 投薬ボトル、3 水剤供給部、5 水剤、14 タッチパネル、17 出力部、17a,17b プリンタ、21 回転ドラム、22 ドラム回転用モータ、23 水剤ボトル、32 水剤ボトル保持体、39 移動用モータ、40 ポンプ駆動用モータ、45 電子天秤、50 昇降装置、61 回転駆動部、62 モータ、90 制御部、91 ボトル位置検出手段、92 通信部、93 メモリ、94 記録媒体アクセス部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水剤を収容した水剤ボトルから前記水剤を投薬ボトルに供給する、水剤供給装置であって、
前記水剤ボトル内の前記水剤を撹拌する水剤撹拌部と、
第一水剤を収容した第一ボトルと第二水剤を収容した第二ボトルとを含む複数の前記水剤ボトルを保持する、ボトル保持部と、
前記水剤供給装置の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第一ボトルから前記投薬ボトルへ前記第一水剤を供給する間に、前記水剤撹拌部を作動させ前記第二水剤を撹拌する、水剤供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第一水剤の前記投薬ボトルへの供給が完了した後に、前記第二ボトルから前記投薬ボトルへの前記第二水剤の供給を開始する、請求項1に記載の水剤供給装置。
【請求項3】
前記第一水剤は、前記投薬ボトルへの供給前に撹拌が不要である、請求項1または請求項2に記載の水剤供給装置。
【請求項4】
前記ボトル保持部に保持された複数の前記水剤ボトルの位置を変更するボトル位置変更部を備え、
前記制御部は、前記ボトル位置変更部が前記水剤ボトルの位置を変更する間に、前記水剤撹拌部を作動させ前記第二水剤を撹拌する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の水剤供給装置。
【請求項5】
水剤を収容した複数の水剤ボトルを有し、前記水剤を各々の前記水剤ボトルから投薬ボトルに供給する、水剤供給部を備え、前記水剤は、前記投薬ボトルへの供給前に撹拌が必要な撹拌必要水剤を含み、さらに、
前記水剤ボトル内の前記水剤を撹拌する水剤撹拌部と、
複数の前記水剤ボトルに収容された前記水剤の各々を前記水剤ボトルから前記投薬ボトルへ供給する供給順序のうち、前記撹拌必要水剤を前記投薬ボトルへ供給する供給順番になるまでに、前記撹拌必要水剤を撹拌する、制御部と、を備える、水剤供給装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記撹拌必要水剤よりも前記供給順番が前の前記水剤を前記投薬ボトルへ供給する間に、前記撹拌必要水剤を撹拌する、請求項5に記載の水剤供給装置。
【請求項7】
前記水剤は、前記投薬ボトルへの供給前に撹拌が不要な撹拌不要水剤を含み、
前記制御部は、前記撹拌必要水剤の前記供給順番が前記撹拌不要水剤の前記供給順番よりも後になるように、前記供給順序を設定する、請求項6に記載の水剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−139277(P2012−139277A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292637(P2010−292637)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(510154420)高園テクノロジー株式会社 (29)
【Fターム(参考)】