水力機械
【課題】シリンダゲートの各部で競合いが生じることなく、シリンダゲートが昇降中に停止するのを未然に回避することのできる水力機械を提供する。
【解決手段】ケーシングとランナとの間の流路を開閉するシリンダゲートを備えた水力機械であり、シリンダゲートは、複数の円弧状ゲート20を周方向に配置して円筒状に形成し、複数の円弧状ゲート20のそれぞれに前記流路を開閉する方向に駆動する駆動手段15を設けている。
【解決手段】ケーシングとランナとの間の流路を開閉するシリンダゲートを備えた水力機械であり、シリンダゲートは、複数の円弧状ゲート20を周方向に配置して円筒状に形成し、複数の円弧状ゲート20のそれぞれに前記流路を開閉する方向に駆動する駆動手段15を設けている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングとランナとの間の流路を開閉するためのシリンダゲートを備えた水力機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水力機械のランナは、上流から流入する水が水圧鉄管を流下してケーシングに導かれた後、その水のエネルギによりランナを回転させ、このときに発生する動力をランナ上部に設置した発電機に伝達して発電するための原動機である。
【0003】
このような水力機械では、図示しない入口弁が取り付けられており、この入口弁が上記水圧鉄管の末端部に位置するケーシングの直前に設けられる。上記入口弁は、水車の運転・停止に伴い開閉操作される止水弁として機能し、通常は流量を調整するガイドベーンが全閉状態のときに動作させる。
【0004】
しかしながら、上記ガイドベーンが万一閉鎖しない緊急時には、入口弁単体で水車全流量を流水遮断する能力を持たせることが一般的である。現在採用されている代表的な入口弁の形式としては、ロータリ弁、ちょう形弁、複葉弁が挙げられる。この種の入口弁を水圧鉄管の末端部に設置して止水する技術は、従来から広く採用されてきたものである。また、別の止水方法としては、シリンダゲートを採用した水力機械もある。
【0005】
このシリンダゲートを備えた水力機械の公知技術としては、例えば特許文献1に記載されたシリンダゲート装置がある。この公知技術において、シリンダゲートの設置目的は、ケーシングとランナとの間の流路にゲート筒を設置して、流水を遮断することである。水車構造は、水車の上カバーとステーベーンとの境界に、環状のシリンダ室を形成し、このシリンダ室内に円筒形状のシリンダゲートを上下動可能に組込んだ構造である。具体的に、この公知技術では、シリンダゲートの昇降方法としてシリンダ室を上室と下室とに区分し、この上室または下室の一方のみを加圧することにより昇降させる方法を提案している。
【0006】
この方法以外の昇降方法としては、円筒形状のシリンダゲートに複数のピストンロッドを介して複数のサーボモータ(駆動機構)を連結し、これらのサーボモータを駆動させることによりシリンダゲートを昇降させる方法もある。
【0007】
また、このようなシリンダゲートを備えた水力機械の関連技術としては、特許文献2や特許文献3が挙げられる。但し、これらの技術において、シリンダゲートを設置する目的は、ゲートを昇降させることにより流量を調整することであるため、シリンダゲートを止水するために設置し、かつガイドベーンの開閉により流量を調整する技術とは、根本的に意図が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−248657号公報
【特許文献2】特開平11−72077号公報
【特許文献3】特公平7−18399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、円筒形状のシリンダゲートを昇降させるため、複数のピストンロッドを介して複数のサーボモータ(駆動機構)を連結した水力機械では、各サーボモータのストロークの制御が厳密に均一にならないことに起因して、シリンダゲートの各部で競合いが生じ、昇降中に停止してしまうことが起こり得る。そのため、シリンダゲートの開閉時には、シリンダゲートを昇降させるサーボモータの同期動作が必要で、厳密に均一にすることが望ましい。
【0010】
しかしながら、各サーボモータのストロークの制御を厳密に均一化することは、非常に困難であり、制御システムとしても複雑になる。上記のように昇降中に停止するという問題は、シリンダゲートを流量調整用として設置する場合でも懸念されるものと考えられる。
【0011】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、シリンダゲートの各部で競合いが生じることなく、シリンダゲートが昇降中に停止するのを未然に回避することのできる水力機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る水力機械は、ケーシングとランナとの間の流路を開閉するシリンダゲートを備えた水力機械であって、前記シリンダゲートは、複数の円弧状ゲートを周方向に配置して円筒状に形成し、前記複数の円弧状ゲートのそれぞれに前記流路を開閉する方向に駆動する駆動手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る水力機械は、ケーシングとランナとの間の流路を開閉するシリンダゲートを備えた水力機械であって、前記シリンダゲートは、複数の円弧状ゲートを周方向に配置して円筒状に形成し、前記複数の円弧状ゲートは、前記駆動手段を取り付けた駆動ゲートと、この駆動ゲートに係止されて前記駆動ゲートの駆動に伴って従動する従動ゲートとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シリンダゲートを昇降させる複数の駆動手段の制御が不均一であっても、シリンダゲートの各部で競合いが生じることなく、シリンダゲートが昇降中に停止するのを未然に回避し、シリンダゲートの昇降移動の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る水力機械の第1実施形態を適用したフランシス型水車の構造を示す部分拡大縦断面図である。
【図2】図1のシリンダゲートを示す平面図である。
【図3】図2のシリンダゲートを周方向に分割した一つの円弧状ゲートを示す拡大平面図である。
【図4】複数の図3の円弧状ゲートを正面から見た拡大正面図である。
【図5】(A),(B)は本発明に係る水力機械の第2実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。
【図6】本発明に係る水力機械の第3実施形態におけるシリンダゲートを示す平面図である。
【図7】図6の円弧状ゲートを全閉状態または引上げる過渡状態を示す拡大正面図である。
【図8】図6の円弧状ゲートが閉鎖動作中であることを示す拡大正面図である。
【図9】(A),(B)は本発明に係る水力機械の第4実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。
【図10】本発明に係る水力機械の第5実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。
【図11】本発明に係る水力機械の第6実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る水力機械におけるシリンダゲートの各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態では、本発明をフランシス型水車に適用した例を示している。
【0017】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る水力機械の第1実施形態を適用したフランシス型水車の構造を示す部分拡大縦断面図である。図2は図1のシリンダゲートを示す平面図である。図3は図2のシリンダゲートを周方向に分割した一つの円弧状ゲートを示す拡大平面図である。図4は複数の図3の円弧状ゲートを正面から見た拡大正面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態を適用したフランシス型水車は、主軸1により図示しない発電機に動力を伝達する。図示しない上池からの水は、水圧鉄管を流下してケーシング2に導かれた後、リップ3を経て強度部材であるステーベーン(固定翼)4で整流され、流量を調整するガイドベーン(可動翼)5を経てランナ6に流入する。このランナ6から流出する水は、上部吸出し管7に流入し、この上部吸出し管7を経て図示しない下池へと流出する。
【0019】
このような水力機械では、回転部であるランナ6と静止部である上カバー8または下カバー9との間に流入する水の漏洩量を抑制するため、上シール10および下シール11がそれぞれ取り付けられている。ステーベーン4とガイドベーン5との間には、シリンダゲート12が設置され、このシリンダゲート12はケーシング2からランナ6に通じる流路を開閉する。このランナ6は、上側がクラウン13に、下側がバンド14によりそれぞれ保持されている。
【0020】
シリンダゲート12は、弁としての機能を有し、止水する場合にはステーベーン6とガイドベーン5との間に全体が中空円筒状のシリンダゲート12を降下させる。このシリンダゲート12を備えた水車は、通常運転の状態ではシリンダゲート12を全開状態にして流路を確保する必要があるため、シリンダゲート12を収納する空間がステーベーン4およびガイドベーン5の上方に設けられている。
【0021】
また、シリンダゲート12を昇降させるために、後述する複数のサーボモータ(駆動手段)が複数のピストンロッド15で連結されている。シリンダゲート12を昇降させるピストンロッド15は、上カバー8の一部を形成するロッド支持部16で支持される構造となっている。このロッド支持部16は、シール機能を兼ね備えている。
【0022】
図2および図3に示すように、全体が中空円筒状のシリンダゲート12は、例えば周方向に等間隔で6個の円弧状ゲート20に分割されている。なお、図2では、6個に分割した円弧状ゲート20の境界を分かり易くするため、放射状の分割線で示している。これら6個に分割された円弧状ゲート20上面には、それぞれ駆動用に設置するサーボモータ17と連結するためのピストンロッド15が取り付けられている。これらピストンロッド15およびサーボモータ17は、円弧状ゲート20を開閉駆動する駆動手段を構成する。
【0023】
すなわち、本実施形態は、通常、中空円筒状に形成されているシリンダゲート12を図3に示すように周方向に複数分割し、円弧状ゲート20に形成したものである。つまり、サーボモータ17およびピストンロッド15と円弧状ゲート20を一体構造とし、これらを周方向に連続して配置することで、全体を中空円筒状のシリンダゲート構造としている。
【0024】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0025】
本実施形態のシリンダゲート12は、上記のように円弧状に分割された複数個の円弧状ゲート20のそれぞれにサーボモータ17およびピストンロッド15が設置されている。すなわち、円弧状ゲート20とその駆動機構であるサーボモータ17およびピストンロッド15とが一組をなし、これらが互いに独立して昇降可能に構成されている。
【0026】
このため本実施形態では、各サーボモータ17が駆動させる円弧状ゲート20の鉛直方向の昇降運動を、互いに独立して行うことができる。したがって、シリンダゲート12が昇降運動しているときに、仮に図4に示したようにストローク制御が不均一になっても、円弧状ゲート20の各部で競合いが生じることはない。
【0027】
このように本実施形態によれば、円弧状ゲート20を昇降させる各サーボモータ17のストローク制御が不均一であっても、円弧状ゲート20の各部で競合いが生じることはなく、昇降中の停止を未然に回避することができ、シリンダゲート12の昇降移動の信頼性を高めることができる。
【0028】
(第2実施形態)
図5(A),(B)は本発明に係る水力機械の第2実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。なお、本実施形態では、前記第1実施形態と基本構成は共通であるので、共通の構成についてはその説明を省略し、相違する部分について説明する。
【0029】
図5(A),(B)に示すように、円弧状に複数分割した各円弧状ゲート20は、互いに対向する凹部と凸部が嵌り合うように互いの接合面の横断面形状が凹凸状に形成されている。具体的には、隣接する一方の円弧状ゲート21の一側に凸部21aが形成され、他方の円弧状ゲート22の他側に凹部22aが形成されている。また、図示しないが、一方の円弧状ゲート21の他側に凹部が形成され、他方の円弧状ゲート22の一側に凸部が形成されている。したがって、隣接する各円弧状ゲート20の接合面は、全て凹凸により嵌合し、全体を中空円筒状のシリンダゲート12に形成している。
【0030】
図5(A)に示す例では、一方の円弧状ゲート21の凸部21a側にのみ、シリンダゲート12の中心に向かう方向と同方向の3つの面であって、ピストンロッド15と平行に3つのシール部材23が円弧状ゲート22の凹部22aに接触するように取り付けられている。
【0031】
図5(B)に示す例では、一方の円弧状ゲート21の凸部21a側に、シリンダゲート12の中心に向かう方向と対向する面であって、ピストンロッド15と平行に1つのシール部材23が他方の円弧状ゲート22の凹部22aに接触するように取り付けられている。
【0032】
また、図5(B)示す例では、他方の円弧状ゲート22の凹部22a側に、シリンダゲート12の中心に向かう方向と対向する面であって、ピストンロッド15と平行に1つのシール部材23が一方の円弧状ゲート21の凸部21aと接触するように取り付けられている。
【0033】
なお、図5(A),(B)に示す円弧状ゲート21,22において、水流方向に面する側が外周面であり、その反対側が内周面である。
【0034】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0035】
本実施形態では、前記第1実施形態と同様、各サーボモータ17が駆動させる円弧状ゲート21,22の鉛直方向の昇降運動を、互いに独立して行うことができるため、円弧状ゲート21,22各部で競合いが生じることがない。
【0036】
また、隣接する各円弧状ゲート20の接合面の断面形状を凹凸状に形成したことにより、円弧状ゲート20に流水のラジアルスラスト(流水を遮断する際にシリンダゲート外周面側から内周面側に働く力)が作用する場合でも、半径方向の円弧状ゲート20の運動を拘束することができ、ガイドとして機能する。さらに、円弧状ゲート20の接合面にシール部材23を鉛直方向に(ピストンロッド15と平行に)設置したことにより、従来の円筒状のシリンダゲートと同様に止水することが可能となる。
【0037】
このように本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様に、円弧状ゲート20各部で競合いが生じることに起因する昇降中の円弧状ゲート20の停止を未然に回避することができる。また、円弧状ゲート20の接合面にシール部材23を鉛直方向に設置したことにより、流水遮断時に十分な止水効果が得られる。
【0038】
なお、本実施形態において、図5(A)に示す例では、一方の円弧状ゲート21の凸部21a側にのみ、3つのシール部材23を円弧状ゲート22の凹部22aに接触するように取り付けたが、これとは逆に、円弧状ゲート22の凹部22a側に、シール部材23を円弧状ゲート21の凸部21aに接触するように取り付けるようにしてもよい。
【0039】
同様に、図5(B)に示す例でも、一方の円弧状ゲート21の凸部21aと、他方の円弧状ゲート22の凹部22aへの取り付ける側を変えるようにしてもよい。
【0040】
(第3実施形態)
図6は本発明に係る水力機械の第3実施形態におけるシリンダゲートを示す平面図である。図7は図6の円弧状ゲートを全閉状態または引上げる過渡状態を示す拡大正面図である。図8は図6の円弧状ゲートが閉鎖動作中であることを示す拡大正面図である。
【0041】
図6に示すように、本実施形態は、前記第1実施形態のように円筒状のシリンダゲート12を円弧状に分割し、分割した全ての円弧状ゲート20にサーボモータ17およびピストンロッド15を設置するのではない。なお、図6では、シリンダゲート12を4個に分割した境界を分かり易くするため、放射状の分割線で示している。
【0042】
すなわち、本実施形態は、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25と、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26とを交互に配置し、円筒状のシリンダゲート12を形成している。
【0043】
また、図7および図8に示すように、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26は、上端両側に張出し凸部26aが一体に形成され、これらの張出し凸部26aは、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25の上端角部に接合するように組み付けられる。
【0044】
したがって、従動ゲート26は、隣接する駆動ゲート25に連動して上昇または下降することが可能となる。また、従動ゲート26自体は、閉操作時に自重で流水を遮断可能な重量を有している。
【0045】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0046】
本実施形態では、駆動ゲート25の上端角部に従動ゲート26の張出し凸部26aが接合するように組み付けられていることから、従動ゲート26は、隣接する駆動ゲート25に連動して上昇または下降することが可能となる。
【0047】
このように本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様に、円弧状ゲート20各部で競合いが生じることに起因する昇降中の円弧状ゲート20の停止を未然に回避することができる。
【0048】
また、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26は、自重で流水を遮断可能であり、隣接する駆動ゲート25に連動して上昇する構造であるため、サーボモータ17およびピストンロッド15の設置数を削減すると同時に、分割した全てのゲートにサーボモータ17を設置した前記第1、第2実施形態と比較して各サーボモータ17のストローク制御が一段と容易になる。
【0049】
(第4実施形態)
図9(A),(B)は本発明に係る水力機械の第4実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。なお、本実施形態では、図6〜図8に示す第3実施形態と同一または対応する部分に同一の符号を付して説明する。
【0050】
本実施形態は、前記第3実施形態と同様、図9(A),(B)に示すようにサーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25と、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26とを交互に配置し、円筒状のシリンダゲート12を形成している。
【0051】
また、本実施形態では、図9(A),(B)に示すように互いに対向する凹部と凸部が嵌り合うように隣接する駆動ゲート25と従動ゲート26との接合面の断面形状を凹凸状に形成する構成については前記第2実施形態と同様であるが、シール部材23の取付位置を、駆動ゲート25および従動ゲート26に作用する流水のラジアルスラスト方向に対して垂直な面に設置し、かつシール部材23が、隣接する駆動ゲート25または従動ゲート26と接触させないように半径方向に間隙を形成するようにしている。なお、前記第2実施形態では、設置するシール材23が、隣接する円弧状ゲート20と接触している。
【0052】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0053】
本実施形態では、前記第3実施形態と同様、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25と、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26とを交互に配置し、円筒状のシリンダゲート12が形成されている。
【0054】
このように構成した場合、サーボモータ17とピストンロッド15を設置しない駆動ゲート25については、流水のラジアルスラスト力(流水を遮断する際にシリンダゲート外周面側から内周面側に働く力)が作用した場合に、内周面方向に平行移動し得る可動構造となる。
【0055】
このようにサーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25と、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26(半径方向に可動なゲート)を交互に配置した状態で、前記のようにシール部材23の取付位置を、駆動ゲート25および従動ゲート26に作用する流水のラジアルスラスト方向に対して垂直な面に設置し、かつシール部材23が、隣接する駆動ゲート25および従動ゲート26と接触させないように半径方向の間隙を設けることにより、駆動ゲート25および従動ゲート26が流水を遮断する際(ラジアルスラストを受けた従動ゲート26が、内周面側へ平行移動した状態に流水を止水できる構造でありながら、駆動ゲート25および従動ゲート26の昇降時におけるシール部材23の摩擦抵抗を低減させることができる。つまり、前記第2実施形態のようにシール部材23が、相対する駆動ゲート25および従動ゲート26面と接触している場合と比較して摩擦抵抗を低減させることができる。
【0056】
このように本実施形態によれば、前記第3実施形態と同様に、サーボモータ17の設置数を削減することができるので、前記第1実施形態と比較して各サーボモータ17のストローク制御が一段と容易になる。
【0057】
また、本実施形態によれば、シール部材23の取付位置を、駆動ゲート25および従動ゲート26に作用する流水のラジアルスラスト方向に対して垂直な面に設置し、かつシール部材23が、隣接する駆動ゲート25および従動ゲート26と接触させないように半径方向に間隙を形成することにより、駆動ゲート25および従動ゲート26の昇降時におけるシール部材23の摩擦抵抗を低減させることができる。すなわち、本実施形態によれば、前記第2実施形態のようにシール部材23が、相対する駆動ゲート25および従動ゲート26面と接触している場合と比較して摩擦抵抗を低減させることができる。
【0058】
(第5実施形態)
図10は本発明に係る水力機械の第5実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。
【0059】
図10に示すように、本実施形態は、前記第2、第4実施形態のように隣接する駆動ゲート25と従動ゲート26との接合面の断面形状を凹凸状に形成するのではなく、隣接する駆動ゲート25と従動ゲート26との接合面を平面形状に形成し、かつ隣接する駆動ゲート25と従動ゲート26との間に平行間隙27を設けるようにしている。この平行間隙27は、駆動ゲート25および従動ゲート26に作用する流水のラジアルスラスト方向に対して交差するような面に設置されている。
【0060】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0061】
本実施形態では、前記第4実施形態と同様に、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25と、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26とを交互に配置し、円筒状のシリンダゲート12が形成されている。
【0062】
このように構成した場合、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26については、流水のラジアルスラストが作用した場合に、内周面方向に平行移動し得る可動構造となる。このようにサーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25(不動ゲート)と、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26(可動ゲート)を交互に接合した状態で、前記のように隣接するゲート25,26の接合面を平面形状に形成し、かつ隣接するゲート25,26に平行間隙27を設ける構造としたことにより、ゲート25,26が降下し流水遮断する際(ラジアルスラストを受けた従動ゲート26が、内周面側へ平行移動した状態)に流水を止水できる構造でありながら、駆動ゲート25と従動ゲート26との接合面に平行間隙27を設けているので、ゲート25,26の昇降時の摩擦抵抗を低減させることができる。
【0063】
このように本実施形態によれば、前記第4実施形態と同様に、ゲート25,26の昇降時における摩擦抵抗を低減させることができる。また、本実施形態によれば、ゲート25,26にシール部材23を設置しなくても、前記第4実施形態と同等の止水効果が得られる。
【0064】
(第6実施形態)
図11は本発明に係る水力機械の第6実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。
【0065】
図11に示すように、本実施形態は、前記第5実施形態のように隣接する駆動ゲート25と従動ゲート26との接合面が平面形状であることは同様であるが、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26の接合面における外周側に突部28が形成されている。
【0066】
このように従動ゲート26の接合面における外周側に突部28を形成したことにより、従動ゲート26の外周面側の平行間隙27がその内周面側と比較して最も狭くなっている。
【0067】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0068】
本実施形態では、前記第5実施形態と同様、ゲート25,26が降下し流水遮断する際(ラジアルスラストを受けた従動ゲート26が、内周面側へ平行移動した状態)に流水を止水できる構造でありながら、駆動ゲート25と従動ゲート26との接合面に平行間隙27を設けているので、ゲート25,26の昇降時の摩擦抵抗を低減させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、ゲート25,26の外周面の平行間隙27が最も狭くなっている部分(止水効果のある部分)以外の間隙は、広くしているため、前記第5実施形態よりもゲート25,26の昇降時の摩擦抵抗を低減させることができる。
【0070】
このように本実施形態によれば、ゲート25,26にシール部材23を設置しなくても、前記第4、第5実施形態と同等の止水効果が得られる。また、本実施形態によれば、前記第5実施形態と同様に、ゲート25,26の昇降時における摩擦抵抗を低減することができる上、ゲート25,26の昇降時における摩擦抵抗の低減効果は、前記第5実施形態よりも大きくなる。
【0071】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、上記各実施形態は、本発明をフランシス型水車に適用した例について説明したが、これ以外のカプラン型水車は、勿論のこと、ポンプ水車にも適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…主軸
2…ケーシング
3…リップ
4…ステーベーン
5…ガイドベーン
6…ランナ
7…上部吸出し管
8…上カバー
9…下カバー
10…上シール
11…下シール
12…シリンダゲート
15…ピストンロッド(駆動手段)
16…ロッド支持部
17…サーボモータ(駆動手段)
20…円弧状ゲート
21…一方の円弧状ゲート
21a…凸部
22…他方の円弧状ゲート
22a…凹部
23…シール部材
25…駆動ゲート
26…従動ゲート
27…平行間隙
28…突部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングとランナとの間の流路を開閉するためのシリンダゲートを備えた水力機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水力機械のランナは、上流から流入する水が水圧鉄管を流下してケーシングに導かれた後、その水のエネルギによりランナを回転させ、このときに発生する動力をランナ上部に設置した発電機に伝達して発電するための原動機である。
【0003】
このような水力機械では、図示しない入口弁が取り付けられており、この入口弁が上記水圧鉄管の末端部に位置するケーシングの直前に設けられる。上記入口弁は、水車の運転・停止に伴い開閉操作される止水弁として機能し、通常は流量を調整するガイドベーンが全閉状態のときに動作させる。
【0004】
しかしながら、上記ガイドベーンが万一閉鎖しない緊急時には、入口弁単体で水車全流量を流水遮断する能力を持たせることが一般的である。現在採用されている代表的な入口弁の形式としては、ロータリ弁、ちょう形弁、複葉弁が挙げられる。この種の入口弁を水圧鉄管の末端部に設置して止水する技術は、従来から広く採用されてきたものである。また、別の止水方法としては、シリンダゲートを採用した水力機械もある。
【0005】
このシリンダゲートを備えた水力機械の公知技術としては、例えば特許文献1に記載されたシリンダゲート装置がある。この公知技術において、シリンダゲートの設置目的は、ケーシングとランナとの間の流路にゲート筒を設置して、流水を遮断することである。水車構造は、水車の上カバーとステーベーンとの境界に、環状のシリンダ室を形成し、このシリンダ室内に円筒形状のシリンダゲートを上下動可能に組込んだ構造である。具体的に、この公知技術では、シリンダゲートの昇降方法としてシリンダ室を上室と下室とに区分し、この上室または下室の一方のみを加圧することにより昇降させる方法を提案している。
【0006】
この方法以外の昇降方法としては、円筒形状のシリンダゲートに複数のピストンロッドを介して複数のサーボモータ(駆動機構)を連結し、これらのサーボモータを駆動させることによりシリンダゲートを昇降させる方法もある。
【0007】
また、このようなシリンダゲートを備えた水力機械の関連技術としては、特許文献2や特許文献3が挙げられる。但し、これらの技術において、シリンダゲートを設置する目的は、ゲートを昇降させることにより流量を調整することであるため、シリンダゲートを止水するために設置し、かつガイドベーンの開閉により流量を調整する技術とは、根本的に意図が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−248657号公報
【特許文献2】特開平11−72077号公報
【特許文献3】特公平7−18399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、円筒形状のシリンダゲートを昇降させるため、複数のピストンロッドを介して複数のサーボモータ(駆動機構)を連結した水力機械では、各サーボモータのストロークの制御が厳密に均一にならないことに起因して、シリンダゲートの各部で競合いが生じ、昇降中に停止してしまうことが起こり得る。そのため、シリンダゲートの開閉時には、シリンダゲートを昇降させるサーボモータの同期動作が必要で、厳密に均一にすることが望ましい。
【0010】
しかしながら、各サーボモータのストロークの制御を厳密に均一化することは、非常に困難であり、制御システムとしても複雑になる。上記のように昇降中に停止するという問題は、シリンダゲートを流量調整用として設置する場合でも懸念されるものと考えられる。
【0011】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、シリンダゲートの各部で競合いが生じることなく、シリンダゲートが昇降中に停止するのを未然に回避することのできる水力機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る水力機械は、ケーシングとランナとの間の流路を開閉するシリンダゲートを備えた水力機械であって、前記シリンダゲートは、複数の円弧状ゲートを周方向に配置して円筒状に形成し、前記複数の円弧状ゲートのそれぞれに前記流路を開閉する方向に駆動する駆動手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る水力機械は、ケーシングとランナとの間の流路を開閉するシリンダゲートを備えた水力機械であって、前記シリンダゲートは、複数の円弧状ゲートを周方向に配置して円筒状に形成し、前記複数の円弧状ゲートは、前記駆動手段を取り付けた駆動ゲートと、この駆動ゲートに係止されて前記駆動ゲートの駆動に伴って従動する従動ゲートとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シリンダゲートを昇降させる複数の駆動手段の制御が不均一であっても、シリンダゲートの各部で競合いが生じることなく、シリンダゲートが昇降中に停止するのを未然に回避し、シリンダゲートの昇降移動の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る水力機械の第1実施形態を適用したフランシス型水車の構造を示す部分拡大縦断面図である。
【図2】図1のシリンダゲートを示す平面図である。
【図3】図2のシリンダゲートを周方向に分割した一つの円弧状ゲートを示す拡大平面図である。
【図4】複数の図3の円弧状ゲートを正面から見た拡大正面図である。
【図5】(A),(B)は本発明に係る水力機械の第2実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。
【図6】本発明に係る水力機械の第3実施形態におけるシリンダゲートを示す平面図である。
【図7】図6の円弧状ゲートを全閉状態または引上げる過渡状態を示す拡大正面図である。
【図8】図6の円弧状ゲートが閉鎖動作中であることを示す拡大正面図である。
【図9】(A),(B)は本発明に係る水力機械の第4実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。
【図10】本発明に係る水力機械の第5実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。
【図11】本発明に係る水力機械の第6実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る水力機械におけるシリンダゲートの各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態では、本発明をフランシス型水車に適用した例を示している。
【0017】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る水力機械の第1実施形態を適用したフランシス型水車の構造を示す部分拡大縦断面図である。図2は図1のシリンダゲートを示す平面図である。図3は図2のシリンダゲートを周方向に分割した一つの円弧状ゲートを示す拡大平面図である。図4は複数の図3の円弧状ゲートを正面から見た拡大正面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態を適用したフランシス型水車は、主軸1により図示しない発電機に動力を伝達する。図示しない上池からの水は、水圧鉄管を流下してケーシング2に導かれた後、リップ3を経て強度部材であるステーベーン(固定翼)4で整流され、流量を調整するガイドベーン(可動翼)5を経てランナ6に流入する。このランナ6から流出する水は、上部吸出し管7に流入し、この上部吸出し管7を経て図示しない下池へと流出する。
【0019】
このような水力機械では、回転部であるランナ6と静止部である上カバー8または下カバー9との間に流入する水の漏洩量を抑制するため、上シール10および下シール11がそれぞれ取り付けられている。ステーベーン4とガイドベーン5との間には、シリンダゲート12が設置され、このシリンダゲート12はケーシング2からランナ6に通じる流路を開閉する。このランナ6は、上側がクラウン13に、下側がバンド14によりそれぞれ保持されている。
【0020】
シリンダゲート12は、弁としての機能を有し、止水する場合にはステーベーン6とガイドベーン5との間に全体が中空円筒状のシリンダゲート12を降下させる。このシリンダゲート12を備えた水車は、通常運転の状態ではシリンダゲート12を全開状態にして流路を確保する必要があるため、シリンダゲート12を収納する空間がステーベーン4およびガイドベーン5の上方に設けられている。
【0021】
また、シリンダゲート12を昇降させるために、後述する複数のサーボモータ(駆動手段)が複数のピストンロッド15で連結されている。シリンダゲート12を昇降させるピストンロッド15は、上カバー8の一部を形成するロッド支持部16で支持される構造となっている。このロッド支持部16は、シール機能を兼ね備えている。
【0022】
図2および図3に示すように、全体が中空円筒状のシリンダゲート12は、例えば周方向に等間隔で6個の円弧状ゲート20に分割されている。なお、図2では、6個に分割した円弧状ゲート20の境界を分かり易くするため、放射状の分割線で示している。これら6個に分割された円弧状ゲート20上面には、それぞれ駆動用に設置するサーボモータ17と連結するためのピストンロッド15が取り付けられている。これらピストンロッド15およびサーボモータ17は、円弧状ゲート20を開閉駆動する駆動手段を構成する。
【0023】
すなわち、本実施形態は、通常、中空円筒状に形成されているシリンダゲート12を図3に示すように周方向に複数分割し、円弧状ゲート20に形成したものである。つまり、サーボモータ17およびピストンロッド15と円弧状ゲート20を一体構造とし、これらを周方向に連続して配置することで、全体を中空円筒状のシリンダゲート構造としている。
【0024】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0025】
本実施形態のシリンダゲート12は、上記のように円弧状に分割された複数個の円弧状ゲート20のそれぞれにサーボモータ17およびピストンロッド15が設置されている。すなわち、円弧状ゲート20とその駆動機構であるサーボモータ17およびピストンロッド15とが一組をなし、これらが互いに独立して昇降可能に構成されている。
【0026】
このため本実施形態では、各サーボモータ17が駆動させる円弧状ゲート20の鉛直方向の昇降運動を、互いに独立して行うことができる。したがって、シリンダゲート12が昇降運動しているときに、仮に図4に示したようにストローク制御が不均一になっても、円弧状ゲート20の各部で競合いが生じることはない。
【0027】
このように本実施形態によれば、円弧状ゲート20を昇降させる各サーボモータ17のストローク制御が不均一であっても、円弧状ゲート20の各部で競合いが生じることはなく、昇降中の停止を未然に回避することができ、シリンダゲート12の昇降移動の信頼性を高めることができる。
【0028】
(第2実施形態)
図5(A),(B)は本発明に係る水力機械の第2実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。なお、本実施形態では、前記第1実施形態と基本構成は共通であるので、共通の構成についてはその説明を省略し、相違する部分について説明する。
【0029】
図5(A),(B)に示すように、円弧状に複数分割した各円弧状ゲート20は、互いに対向する凹部と凸部が嵌り合うように互いの接合面の横断面形状が凹凸状に形成されている。具体的には、隣接する一方の円弧状ゲート21の一側に凸部21aが形成され、他方の円弧状ゲート22の他側に凹部22aが形成されている。また、図示しないが、一方の円弧状ゲート21の他側に凹部が形成され、他方の円弧状ゲート22の一側に凸部が形成されている。したがって、隣接する各円弧状ゲート20の接合面は、全て凹凸により嵌合し、全体を中空円筒状のシリンダゲート12に形成している。
【0030】
図5(A)に示す例では、一方の円弧状ゲート21の凸部21a側にのみ、シリンダゲート12の中心に向かう方向と同方向の3つの面であって、ピストンロッド15と平行に3つのシール部材23が円弧状ゲート22の凹部22aに接触するように取り付けられている。
【0031】
図5(B)に示す例では、一方の円弧状ゲート21の凸部21a側に、シリンダゲート12の中心に向かう方向と対向する面であって、ピストンロッド15と平行に1つのシール部材23が他方の円弧状ゲート22の凹部22aに接触するように取り付けられている。
【0032】
また、図5(B)示す例では、他方の円弧状ゲート22の凹部22a側に、シリンダゲート12の中心に向かう方向と対向する面であって、ピストンロッド15と平行に1つのシール部材23が一方の円弧状ゲート21の凸部21aと接触するように取り付けられている。
【0033】
なお、図5(A),(B)に示す円弧状ゲート21,22において、水流方向に面する側が外周面であり、その反対側が内周面である。
【0034】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0035】
本実施形態では、前記第1実施形態と同様、各サーボモータ17が駆動させる円弧状ゲート21,22の鉛直方向の昇降運動を、互いに独立して行うことができるため、円弧状ゲート21,22各部で競合いが生じることがない。
【0036】
また、隣接する各円弧状ゲート20の接合面の断面形状を凹凸状に形成したことにより、円弧状ゲート20に流水のラジアルスラスト(流水を遮断する際にシリンダゲート外周面側から内周面側に働く力)が作用する場合でも、半径方向の円弧状ゲート20の運動を拘束することができ、ガイドとして機能する。さらに、円弧状ゲート20の接合面にシール部材23を鉛直方向に(ピストンロッド15と平行に)設置したことにより、従来の円筒状のシリンダゲートと同様に止水することが可能となる。
【0037】
このように本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様に、円弧状ゲート20各部で競合いが生じることに起因する昇降中の円弧状ゲート20の停止を未然に回避することができる。また、円弧状ゲート20の接合面にシール部材23を鉛直方向に設置したことにより、流水遮断時に十分な止水効果が得られる。
【0038】
なお、本実施形態において、図5(A)に示す例では、一方の円弧状ゲート21の凸部21a側にのみ、3つのシール部材23を円弧状ゲート22の凹部22aに接触するように取り付けたが、これとは逆に、円弧状ゲート22の凹部22a側に、シール部材23を円弧状ゲート21の凸部21aに接触するように取り付けるようにしてもよい。
【0039】
同様に、図5(B)に示す例でも、一方の円弧状ゲート21の凸部21aと、他方の円弧状ゲート22の凹部22aへの取り付ける側を変えるようにしてもよい。
【0040】
(第3実施形態)
図6は本発明に係る水力機械の第3実施形態におけるシリンダゲートを示す平面図である。図7は図6の円弧状ゲートを全閉状態または引上げる過渡状態を示す拡大正面図である。図8は図6の円弧状ゲートが閉鎖動作中であることを示す拡大正面図である。
【0041】
図6に示すように、本実施形態は、前記第1実施形態のように円筒状のシリンダゲート12を円弧状に分割し、分割した全ての円弧状ゲート20にサーボモータ17およびピストンロッド15を設置するのではない。なお、図6では、シリンダゲート12を4個に分割した境界を分かり易くするため、放射状の分割線で示している。
【0042】
すなわち、本実施形態は、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25と、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26とを交互に配置し、円筒状のシリンダゲート12を形成している。
【0043】
また、図7および図8に示すように、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26は、上端両側に張出し凸部26aが一体に形成され、これらの張出し凸部26aは、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25の上端角部に接合するように組み付けられる。
【0044】
したがって、従動ゲート26は、隣接する駆動ゲート25に連動して上昇または下降することが可能となる。また、従動ゲート26自体は、閉操作時に自重で流水を遮断可能な重量を有している。
【0045】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0046】
本実施形態では、駆動ゲート25の上端角部に従動ゲート26の張出し凸部26aが接合するように組み付けられていることから、従動ゲート26は、隣接する駆動ゲート25に連動して上昇または下降することが可能となる。
【0047】
このように本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様に、円弧状ゲート20各部で競合いが生じることに起因する昇降中の円弧状ゲート20の停止を未然に回避することができる。
【0048】
また、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26は、自重で流水を遮断可能であり、隣接する駆動ゲート25に連動して上昇する構造であるため、サーボモータ17およびピストンロッド15の設置数を削減すると同時に、分割した全てのゲートにサーボモータ17を設置した前記第1、第2実施形態と比較して各サーボモータ17のストローク制御が一段と容易になる。
【0049】
(第4実施形態)
図9(A),(B)は本発明に係る水力機械の第4実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。なお、本実施形態では、図6〜図8に示す第3実施形態と同一または対応する部分に同一の符号を付して説明する。
【0050】
本実施形態は、前記第3実施形態と同様、図9(A),(B)に示すようにサーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25と、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26とを交互に配置し、円筒状のシリンダゲート12を形成している。
【0051】
また、本実施形態では、図9(A),(B)に示すように互いに対向する凹部と凸部が嵌り合うように隣接する駆動ゲート25と従動ゲート26との接合面の断面形状を凹凸状に形成する構成については前記第2実施形態と同様であるが、シール部材23の取付位置を、駆動ゲート25および従動ゲート26に作用する流水のラジアルスラスト方向に対して垂直な面に設置し、かつシール部材23が、隣接する駆動ゲート25または従動ゲート26と接触させないように半径方向に間隙を形成するようにしている。なお、前記第2実施形態では、設置するシール材23が、隣接する円弧状ゲート20と接触している。
【0052】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0053】
本実施形態では、前記第3実施形態と同様、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25と、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26とを交互に配置し、円筒状のシリンダゲート12が形成されている。
【0054】
このように構成した場合、サーボモータ17とピストンロッド15を設置しない駆動ゲート25については、流水のラジアルスラスト力(流水を遮断する際にシリンダゲート外周面側から内周面側に働く力)が作用した場合に、内周面方向に平行移動し得る可動構造となる。
【0055】
このようにサーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25と、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26(半径方向に可動なゲート)を交互に配置した状態で、前記のようにシール部材23の取付位置を、駆動ゲート25および従動ゲート26に作用する流水のラジアルスラスト方向に対して垂直な面に設置し、かつシール部材23が、隣接する駆動ゲート25および従動ゲート26と接触させないように半径方向の間隙を設けることにより、駆動ゲート25および従動ゲート26が流水を遮断する際(ラジアルスラストを受けた従動ゲート26が、内周面側へ平行移動した状態に流水を止水できる構造でありながら、駆動ゲート25および従動ゲート26の昇降時におけるシール部材23の摩擦抵抗を低減させることができる。つまり、前記第2実施形態のようにシール部材23が、相対する駆動ゲート25および従動ゲート26面と接触している場合と比較して摩擦抵抗を低減させることができる。
【0056】
このように本実施形態によれば、前記第3実施形態と同様に、サーボモータ17の設置数を削減することができるので、前記第1実施形態と比較して各サーボモータ17のストローク制御が一段と容易になる。
【0057】
また、本実施形態によれば、シール部材23の取付位置を、駆動ゲート25および従動ゲート26に作用する流水のラジアルスラスト方向に対して垂直な面に設置し、かつシール部材23が、隣接する駆動ゲート25および従動ゲート26と接触させないように半径方向に間隙を形成することにより、駆動ゲート25および従動ゲート26の昇降時におけるシール部材23の摩擦抵抗を低減させることができる。すなわち、本実施形態によれば、前記第2実施形態のようにシール部材23が、相対する駆動ゲート25および従動ゲート26面と接触している場合と比較して摩擦抵抗を低減させることができる。
【0058】
(第5実施形態)
図10は本発明に係る水力機械の第5実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。
【0059】
図10に示すように、本実施形態は、前記第2、第4実施形態のように隣接する駆動ゲート25と従動ゲート26との接合面の断面形状を凹凸状に形成するのではなく、隣接する駆動ゲート25と従動ゲート26との接合面を平面形状に形成し、かつ隣接する駆動ゲート25と従動ゲート26との間に平行間隙27を設けるようにしている。この平行間隙27は、駆動ゲート25および従動ゲート26に作用する流水のラジアルスラスト方向に対して交差するような面に設置されている。
【0060】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0061】
本実施形態では、前記第4実施形態と同様に、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25と、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26とを交互に配置し、円筒状のシリンダゲート12が形成されている。
【0062】
このように構成した場合、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26については、流水のラジアルスラストが作用した場合に、内周面方向に平行移動し得る可動構造となる。このようにサーボモータ17およびピストンロッド15を設置した駆動ゲート25(不動ゲート)と、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26(可動ゲート)を交互に接合した状態で、前記のように隣接するゲート25,26の接合面を平面形状に形成し、かつ隣接するゲート25,26に平行間隙27を設ける構造としたことにより、ゲート25,26が降下し流水遮断する際(ラジアルスラストを受けた従動ゲート26が、内周面側へ平行移動した状態)に流水を止水できる構造でありながら、駆動ゲート25と従動ゲート26との接合面に平行間隙27を設けているので、ゲート25,26の昇降時の摩擦抵抗を低減させることができる。
【0063】
このように本実施形態によれば、前記第4実施形態と同様に、ゲート25,26の昇降時における摩擦抵抗を低減させることができる。また、本実施形態によれば、ゲート25,26にシール部材23を設置しなくても、前記第4実施形態と同等の止水効果が得られる。
【0064】
(第6実施形態)
図11は本発明に係る水力機械の第6実施形態であり、隣接して配置された円弧状ゲートの接合面を示す部分拡大平面図である。
【0065】
図11に示すように、本実施形態は、前記第5実施形態のように隣接する駆動ゲート25と従動ゲート26との接合面が平面形状であることは同様であるが、サーボモータ17およびピストンロッド15を設置しない従動ゲート26の接合面における外周側に突部28が形成されている。
【0066】
このように従動ゲート26の接合面における外周側に突部28を形成したことにより、従動ゲート26の外周面側の平行間隙27がその内周面側と比較して最も狭くなっている。
【0067】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0068】
本実施形態では、前記第5実施形態と同様、ゲート25,26が降下し流水遮断する際(ラジアルスラストを受けた従動ゲート26が、内周面側へ平行移動した状態)に流水を止水できる構造でありながら、駆動ゲート25と従動ゲート26との接合面に平行間隙27を設けているので、ゲート25,26の昇降時の摩擦抵抗を低減させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、ゲート25,26の外周面の平行間隙27が最も狭くなっている部分(止水効果のある部分)以外の間隙は、広くしているため、前記第5実施形態よりもゲート25,26の昇降時の摩擦抵抗を低減させることができる。
【0070】
このように本実施形態によれば、ゲート25,26にシール部材23を設置しなくても、前記第4、第5実施形態と同等の止水効果が得られる。また、本実施形態によれば、前記第5実施形態と同様に、ゲート25,26の昇降時における摩擦抵抗を低減することができる上、ゲート25,26の昇降時における摩擦抵抗の低減効果は、前記第5実施形態よりも大きくなる。
【0071】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、上記各実施形態は、本発明をフランシス型水車に適用した例について説明したが、これ以外のカプラン型水車は、勿論のこと、ポンプ水車にも適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…主軸
2…ケーシング
3…リップ
4…ステーベーン
5…ガイドベーン
6…ランナ
7…上部吸出し管
8…上カバー
9…下カバー
10…上シール
11…下シール
12…シリンダゲート
15…ピストンロッド(駆動手段)
16…ロッド支持部
17…サーボモータ(駆動手段)
20…円弧状ゲート
21…一方の円弧状ゲート
21a…凸部
22…他方の円弧状ゲート
22a…凹部
23…シール部材
25…駆動ゲート
26…従動ゲート
27…平行間隙
28…突部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングとランナとの間の流路を開閉するシリンダゲートを備えた水力機械であって、
前記シリンダゲートは、複数の円弧状ゲートを周方向に配置して円筒状に形成し、前記複数の円弧状ゲートのそれぞれに前記流路を開閉する方向に駆動する駆動手段を設けたことを特徴とする水力機械。
【請求項2】
前記複数の円弧状ゲートは、互いに対向する凹部と凸部が嵌り合うように互いの接合面を凹凸状に形成し、その接合面に、隣接する円弧状ゲートと接触するシール部材を設置したこと、
を特徴とする請求項1に記載の水力機械。
【請求項3】
ケーシングとランナとの間の流路を開閉するシリンダゲートを備えた水力機械であって、
前記シリンダゲートは、複数の円弧状ゲートを周方向に配置して円筒状に形成し、
前記複数の円弧状ゲートは、前記駆動手段を取り付けた駆動ゲートと、この駆動ゲートに係止されて前記駆動ゲートの駆動に伴って従動する従動ゲートとを有することを特徴とする水力機械。
【請求項4】
前記複数の円弧状ゲートは、互いに対向する凹部と凸部が嵌り合うように互いの接合面を断面凹凸状に形成し、その接合面に、隣接する円弧状ゲートに間隙を有してシール部材を設置したこと、
を特徴とする請求項3に記載の水力機械。
【請求項5】
前記複数の円弧状ゲートは、互いの接合面を平面状に形成し、その接合面に水流方向に対して交差する方向に平行間隙を形成したこと、
を特徴とする請求項3または4に記載の水力機械。
【請求項6】
前記平行間隙は、水流方向に対する外周側を内周側より狭く形成したこと、
を特徴とする請求項5に記載の水力機械。
【請求項1】
ケーシングとランナとの間の流路を開閉するシリンダゲートを備えた水力機械であって、
前記シリンダゲートは、複数の円弧状ゲートを周方向に配置して円筒状に形成し、前記複数の円弧状ゲートのそれぞれに前記流路を開閉する方向に駆動する駆動手段を設けたことを特徴とする水力機械。
【請求項2】
前記複数の円弧状ゲートは、互いに対向する凹部と凸部が嵌り合うように互いの接合面を凹凸状に形成し、その接合面に、隣接する円弧状ゲートと接触するシール部材を設置したこと、
を特徴とする請求項1に記載の水力機械。
【請求項3】
ケーシングとランナとの間の流路を開閉するシリンダゲートを備えた水力機械であって、
前記シリンダゲートは、複数の円弧状ゲートを周方向に配置して円筒状に形成し、
前記複数の円弧状ゲートは、前記駆動手段を取り付けた駆動ゲートと、この駆動ゲートに係止されて前記駆動ゲートの駆動に伴って従動する従動ゲートとを有することを特徴とする水力機械。
【請求項4】
前記複数の円弧状ゲートは、互いに対向する凹部と凸部が嵌り合うように互いの接合面を断面凹凸状に形成し、その接合面に、隣接する円弧状ゲートに間隙を有してシール部材を設置したこと、
を特徴とする請求項3に記載の水力機械。
【請求項5】
前記複数の円弧状ゲートは、互いの接合面を平面状に形成し、その接合面に水流方向に対して交差する方向に平行間隙を形成したこと、
を特徴とする請求項3または4に記載の水力機械。
【請求項6】
前記平行間隙は、水流方向に対する外周側を内周側より狭く形成したこと、
を特徴とする請求項5に記載の水力機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−117375(P2011−117375A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276035(P2009−276035)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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