説明

水力発電方法および水力発電装置

【課題】
水槽内にフロートを浮上させ、このフロートを水のエネルギーによって回転させ、フロートに生じたトルクを外部へ取り出して発電することで、発電のためのトルクを取り出しやすくした水力発電方法および水力発電装置を提供する。
【解決手段】
内部にフロート3を配置した水槽1内に給水してフロートを水面上に浮上させるとともに水面を上限高さまで上昇させ、次に水槽内を排水してフロートを下限高さまで下降させる第1の工程と、フロートの上昇および下降の際に水のエネルギーによってフロートを回転させる第2の工程と、フロートの回転により生じたトルクを伝導して発電機6を駆動して発電する第3の工程とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力を利用して発電する水力発電方法およびこの方法に用いる水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
潮位の周期的変動を利用してフロートを上下動させ、その上下動に伴ってエアタンク内の空気を移動させる際に空気タービンを回転させたり、フロートの上下動をラック・ピニオン機構によって回転に変換したりして、発電機を駆動して発電することが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-060441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、エアタンクを用いる構成の場合、エアタンク内に空気を確実に出入させるために気密性を維持するのが困難である。また、ラック・ピニオン機構を用いる場合、十分なトルクを安定して得るのに困難を伴うという課題がある。
【0005】
本発明は、水槽内にフロートを浮上させ、このフロートを水のエネルギーによって回転させ、フロートに生じたトルクを外部へ取り出して発電することで、発電のためのトルクを取り出しやすくした水力発電方法およびこの方法に用いることができる水力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水力発電方法は、第1ないし第3の工程を具備する。第1の工程では、水槽内の水面に浮上するフロートを給水により上限高さまで上昇させ、排水により下限高さまで下降させる。第2の工程では、フロートの上昇および下降の際に水のエネルギーによってフロートを回転させる。第3の工程では、フロートの回転により生じたトルクで発電機を駆動して発電する。
【0007】
本発明の第1の水力発電装置は、水槽、フロート、直線−回転変換機構、トルク取り出し機構および発電機を具備している。水槽は、その内部に給水および排水が可能である。フロートは、水槽内の水面に浮上し、水槽内への給排水に伴う水面の上下動に従動して上下動する。直線−回転変換機構は、フロートの上下動の際にフロートを回転させる。トルク取り出し機構は、フロートの回転により生じたトルクを外部に取り出す。発電機は、外部に取り出したトルクにより発電機を駆動して発電する。
【0008】
本発明の第2の水力発電装置は、水槽、給排水手段、フロート、トルク取り出し機構および発電機を具備している。水槽は、その内部に給水および排水が可能である。給排水手段は、給排水時に水槽の内部に回転水流を生じさせる。フロートは、水槽内の水面に浮上し、回転水流に従動して回転するとともに水面の上下動に従動して上下動する。トルク取り出し機構は、フロートの回転により生じたトルクを外部へ取り出す。発電機は、外部へ取り出したトルクにより発電機を駆動して発電する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水力発電方法によれば、フロートを水槽内で上限高さと下限高さの間を上下動させる際に水力エネルギーによってフロートを回転させることでフロートに生じたトルクを外部へ取り出し、発電機を駆動して発電するので、水力エネルギーを効率よく利用した発電が可能になる。
【0010】
本発明の第1の水力発電装置によれば、フロートが水槽内の水面に浮上するとともに給水および排水に伴って上下動する際に、フロートを主として直線−回転変換機構により回転させ、フロートに生じたトルクを外部へ取り出し、発電機を駆動して発電するので、トルクを効率よく取り出せる水力エネルギーを利用した発電が可能になる。
【0011】
本発明の第2の水力発電装置によれば、フロートが水槽内の水面に浮上するとともに給排水手段より給水および排水の際に水槽内部に回転水流を生じさせ、フロートを主として回転水流によって回転させ、フロートに生じたトルクを外部へ取り出し、発電機を駆動して発電するので、トルクを効率よく取り出せる水力エネルギーを利用した発電が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係わる水力発電装置の縦断面図である。
【図2】図1のII−II´線に沿う水槽部分の断面図である。
【図3】図1のIII−III´線に沿う拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係わる水力発電装置のフロートの底面図である。
【図5】図4のV−V´線に沿う断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係わる水力発電装置の(a)直線−回転変換機構を示す拡大横断面図および(b)拡大縦断面図である。
【図7】図1のVII−VII´線に沿う断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係わる水力発電装置の設置例を示す模式図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係わる水力発電装置の正面縦断面図である。
【図10】同じく側面縦断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係わる水力発電装置の正面縦断面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係わる水力発電装置の正面縦断面図である。
【図13】本発明の水力発電装置の第2の設置例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[水力発電装置の第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態において、水力発電装置WGは、図1に示すように、水槽1、給排水手段2、フロート3、直線−回転変換機構4、トルク取り出し手段5および発電機6を具備している。本実施形態は、水力発電装置に係る第1および第2の発明を合わせて具現化したものであり、また本発明の水力発電方法を実施する際に用いることができる。しかしながら、上記水力発電装置に係る第1および第2の発明は、その各構成要素の多くが共通している。また、後述するように一部の構成要素を除くことにより、水力発電装置に係る第1または第2の発明単独の実施形態として構成することができるとともに、上記第1および第2の発明を組み合わせることにより、水力利用の効率をさらに高めることが可能になる。以下、図1ないし図8を参照して各構成要素について説明する。
【0014】
〔水槽について〕
水槽1は、その内部への給水および内部に貯留した水の排水が可能であるように構成されている。水槽1内へ給水することにより、水槽1に貯留した水の水位が上限高さまで上昇する。また、水槽1内に貯留した水を排水することにより、水の水位が下限高さまで降下する。すなわち、水槽1内への給水および排水に伴い水面が上下動する。しかし、水槽1内の水面の上記の上限高さおよび下限高さは、水槽1が許容する範囲で適宜の値に設定することができる。
【0015】
また、水槽1は、その内容積および形状が特段限定されない。そして、発電容量に応じて適当な内容積、延いては水槽1の開口面積、例えば直径および高さを選定することができる。水槽1の構成材料は、特段限定されない。例えば、金属、コンクリートまたは煉瓦を用いて、あるいは自然地形などを利用して、水槽1を構築することができる。水槽1は、図示実施形態において、円筒状をなしているので、好ましい形状であるが、所望により角筒状などの形状であってもよい。
【0016】
さらに、水槽1は、上蓋11を開閉可能に備えていて、水槽1の内部のメンテナンスを行いやすくしている。なお、上蓋11の中央部に形成された開口11aは、そこを後述する直線−回転変換機構4のリードねじ部41およびリードナット部42が緩く挿通するための手段である。これにより、水槽1内に塵埃などの異物が進入するのを阻止することが可能になる。また、メンテナンスのために、上蓋11や水槽1の側面に図示しないマンホールを配設することができる。
【0017】
さらにまた、水槽1には、後述するフロート3を水槽1内の所定位置で停止させるために、フロート3の下部停止位置および上部停止位置を検出する位置センサおよび機械式ロック機構(いずれも図示しない。)を配設することができる。そして、位置センサの検出出力を給水および排水などを制御する制御手段(図示しない。)に連動させることができる。なお、下部停止位置および上部停止位置は、水面が下限高さおよび上限高さのときのフロート3の位置である。また、機械式ロック機構は、フロート3をその上限高さ付近で機械的にロックする手段であり、水槽1内の水を抜いて内部をメンテナンスする場合などに使用することができる。
【0018】
〔給排水手段について〕
給排水手段2は、図1ないし図3に示すように、水力発電装置に係る第1の発明においては、水槽1内への給水および水槽1内の排水を行う手段である。また、同じく第2の発明においては、水槽1内への給水および水槽1内の排水を行うとともに、給排水時に水槽1内に回転水流すなわち渦流を形成する手段である。図示実施形態においては、給水および排水をそれぞれ別に行うために、互いに独立した給水口21および排水口22を備えている。しかし、所望により単一の給排水口を備えていて、給排水を切り換えてもよい。
【0019】
給水口21は、水槽1内に水を供給してフロート2を水槽1内で上昇させる手段である。なお、給水口21は、図8に示す集水部8との間が配管で連絡されている場合、給水口21と集水部8との間の落差、換言すれば水圧が、水槽1内の水面が許容される範囲内のどの高さであっても、十分な運動エネルギーすなわち水力で水槽1内に給水できるような値に設定されているのが好ましい。なお、給水口21に対して、配管は、給水管21aとして機能する。
【0020】
また、水力発電装置に係る第2の発明においては、給水によって水槽1内に回転水流すなわち渦流を発生させるように構成されている。この場合、例えば図2に示すように、回転水流の流れる方向に向けて水が噴出されるように給水口21を配設するのが好ましい。例えば、水槽1の内面のほぼ接線方向に向けて給水口21を開口させる。そうすれば、給水口21から放出された水が水槽1の内面に沿って湾曲しながら流れるので、水槽1内に回転水流が形成されやすくなる。
【0021】
さらに、上述のような開口形態の給水口21の複数、例えば一対を、水槽1内面の同一水平面内において点対称関係に離間して配設すると、バランスの良好な回転水流を一層効果的に形成しやすくなる。図2に示す実施形態においては、給水口21の一対が正対すなわち180°間隔で配設されている。
【0022】
さらにまた、図示しないが、所望により水槽1の垂直方向に対して複数組の給水口を配設して、給水中に順次給水口を上側へ切り換えて給水するように構成することができる。これにより、フロート2が上昇する際に、常にフロート2に近い給水口から給水することが可能になる。その結果、給水口から噴出する水流でフロート2を直接的に回転させるような強くて一定の回転水流を生成させることができる。
【0023】
排水口22は、水槽1内の水を外部へ排出させてフロート2を下降させるための手段である。また、排水口22には、排水管22aが接続している。なお、排水口22は、これを水槽1の下部に配設することにより、水槽1内の水を容易に配水管22aを経由して外部へ排出することができる。
【0024】
また、排水時に回転水流すなわち渦流を発生させる場合、排水口へ向かって生じる水流で回転水流を生成するために、排水口22を、例えば図2に示すように、回転水流の流れる方向に向けて排水するのが好ましい。すなわち、水槽1の内面の接線方向に向けて排水口22を開口させるのがよい。そうすれば、排水口22から排出される水が水槽1の内面に沿って湾曲しながら流れるので、給水時における回転水流とはその回転方向が逆の回転水流が形成されやすくなる。
【0025】
排水口22を給水口11と同一の接線方向に開口させることにより、上記正逆反対の回転水流を生成するのに寄与させることができる。図示の実施形態において、排水口12は、図2に示すように、給水口11と回転中心に対して90°ずれて位置し、かつその一対が正対して配設されている。この配置であれば、給水口21および排水口22をバランスよく取り付けることができる。
【0026】
〔フロートについて〕
フロート3は、水槽1内の水面に例えば船のように浮上し、水槽1内への給水および排水に伴う水面の上下動に従動して上下動する。また、フロート3は、その質量を所望の値に設定するために、内部または外部にバラストを付加したり、フロート3の肉厚を大きくしたり、比重の大きな材料を用いて水槽1を製作したり、以上の各手段の一部をまたは全部を適宜組み合わせたりすることができる。その結果、フロート3の排水質量が大きくなり、水面からの沈み込みが増大しても水面に浮上する限りは差し支えない。したがって、本発明において、フロート3は、その上部が水面上に露出する程度であれば、フロート3の上昇時に水による浮力を発電に利用するとともに、フロートの下降時にフロート3の質量を発電に利用することができる。
【0027】
また、本実施形態において、水力発電装置は、水槽1が上昇および降下する際の水槽1内への給水および水槽1内からの排水に伴ってフロート3を回転させるフロート回転手段を具備している。フロート回転手段を具備していることにより、フロートに生じたトルクを外部へ取り出し、発電機を駆動して発電するので、水力エネルギーを効率よく利用した発電が可能になる。フロート回転手段の例を示せば以下のである。
(1)水面の上下動によるフロート3の直線動作を直線−回転変換機構3によりフロート3の回転動作に変換する。
(2)給排水手段2によって水槽1内に回転水流を生成し、この回転水流によりフロート3を回転させる。
(3)上記(1)および(2)に示す手段の併用によりフロート3を回転させる。
【0028】
(1)の回転について説明する。この回転は、水力発電装置の第1の発明において採用される回転であり、水面が上昇する際に、水圧がフロート3に作用するとともに、給水によって水面が上昇していくのに伴いフロート3が上方へ直線移動する際に、後述する直線−回転変換機構4を介してフロート3が回転する。フロート3は、十分な浮力およびトルクを得るために、水槽1内を自由に昇降自在になっている中でなるべく大きな面積を保有するように構成される。また、トルクを大きくするためには、フロート3の質量をなるべく大きく設定すればよい。
【0029】
また、水面が下降する際には、これに伴ってフロート3が下方へ直線移動する。フロート3が直線移動する際に、フロート3は、その排水重力または質量によって、直線−回転変換機構4を介して回転する。したがって、水面が上昇する際には、フロート3の浮力を発電に利用することができる。一方、水面が低下していく際には、水位の低下とフロート3の低下が同期する場合にはフロート3の排水重力を、また排水を早めてフロート3の降下速度より水位の低下速度が大きい場合にはフロート3の質量を、それぞれ発電に利用することができる。
【0030】
(2)の回転について説明する。この回転は、水力発電装置の第2の発明において採用される回転であり、給排水手段2により給排水時に水槽1内の水に回転水流が生成されると、水面に浮上するフロート3も回転水流に追従して回転する。
【0031】
(3)の回転について説明する。この回転は、上記(1)と(2)の回転が同時に生じるので、水力エネルギーを最大限利用して発電することが可能になるので、最適な態様である。
【0032】
さらに、フロート3は、その形状を自由に選択できる。しかしながら、回転しやすい形状としては円盤状をなしているのが好ましい。これにより、回転時における安定性が高くて、しかも一定の水線長で最大の浮力を得る、すなわち最大の排水重力を設定しやすくなる。
【0033】
図示の実施形態において、フロート3の重心部位に後述する直線−回転変換機構4のリードナット部42の下端が固着されていて、フロート3の回転中心部からトルクを外部へ取り出すように構成されている。この構造によれば、トルクの取り出しが容易かつ安定する利点があるので、好適である。
【0034】
水力発電装置の第1および第2の発明のいずれにおいても、フロート3の外面にフロート3の回転を補助する回転補助部材を配設することができる。例えば、フロート3の側面および/または底面にフィン31、32を適宜の数配設することができる。これらのフィン31、32は、回転中心を中心とした放射状に形成される。また、所望に応じてフィン31、32に水車や風車のような曲面を形成して回転水流の運動エネルギーをフロート3の回転の際のトルクに変換しやすくすることができる。上記のように回転補助部材を配設することにより、水力発電装置の第1の発明においては、フロート3を起動促進効果がある。また、水力発電装置の第2の発明においては、回転水流に対するフロート3の従動が一層確実に行われる。
【0035】
水力発電装置の第1の発明における後述する直線−回転変換機構4がフロート3の回転中心部に配設される好適な態様の場合、フロート3の重心位置において水密を維持してフロート3に貫通口33が形成されている。そして、この貫通口33にリードナット部42の下端が固定される。換言すれば、フロート3の重心部位から直線−回転変換機構4のリードナット部42が起立している。
【0036】
〔直線−回転変換機構について〕
直線−回転変換機構4は、水力発電装置の第1の発明における特徴的構成部分であり、フロート3の上下動すなわち直線運動の際に、その直線運動を利用してフロート2を回転させる手段である。フロート3を回転させる駆動力は、上昇の場合、水槽1内における水面の上昇速度とフロート3の浮力との相関によって得られる。また、フロート3が下降する場合、フロート3の排水重力および水面の下降速度の相関によってフロート3を回転させる駆動力が得られる。このため、得られるフロート3の回転は、上昇時と下降時とで互いに反対方向となる。なお、フロート3の浮力と排水重力は、働く向きが逆になるが、力の大きさを等しくすることができる。また、浮力および排水重力は、フロート3の接水面積および質量により変化するので、適当な接水面積および質量を選択することにより所望の浮力および排水重力を設定することができる。水位の上昇速度は単位時間当たりの給水量に比例し、下降速度は単位時間当たりの排水量に比例する。したがって、給水量および排水量を適切に選択することにより、上昇速度およびその際の回転数と下降速度およびその際の回転数とを略一致させることが可能になる。
【0037】
また、直線−回転変換機構4は、既知の手段を用いて構成することができる。基本的には、リードねじ機構を用いて直線−回転変換機構4を構成するのが好ましい。なお、リードねじ機構は、リードねじ部41およびリードナット部42からなる。リードねじ部41は、外面にリードねじ溝41aを形成したフロート3の直線移動距離をカバーする長さを有して固定される。リードナット部42は、リードねじ部41のリードねじ溝41aに螺合した雌ねじ溝42aを備えている。そして、リードナット部42を自由にするとともにリードねじ部41の軸方向に沿って押すと、リードナット部42が回転しながらリードねじ部41に沿って直線運動する。
【0038】
直線−回転変換機構4を水槽1とフロート3の間に適用する場合、フロート3の重心部および水槽1の予定回転中心部との間に直線−回転変換機構3を構成するのが好ましい。しかし、所望によりフロート3の回転周縁部および水槽1の内周面の間に回転変換機構4を構成することもできる。以下、上記両態様についてさらに説明を進める。
【0039】
(フロートの重心部に直線−回転変換機構を配置する構成)
フロート3の回転中心となる重心部と水槽1の回転中心の予定部との間に直線−回転変換機構4を配置する構成は、以下のとおりである。すなわち、直線−回転変換機構4は、図1および図6に示し、かつ上述のように、リードねじ部41およびリードナット部42により構成されている。
【0040】
リードねじ部41は、水槽1内のフロート3の回転中心の予定部から起立した固定軸を構成している。そして、その下端が水槽1底面に例えば台座43を介して固定され、中間部が水槽1の上蓋11の挿通口11aおよび基盤部7をそれぞれ緩く通過し、上端が水槽1および関連設備を覆う屋根などの適当な構造体9に例えば取付台44を介して固定される。また、外面にリードねじ溝41aが形成されている。
【0041】
リードねじ溝41aは、そのリード角が回転水流を併用しない態様では比較的大きく設定するのがリード作用を良好にするために好ましく、例えば45〜85°程度、より一層好ましくは50〜80°程度に設定することができる。しかし、リードねじ溝41aとリードナット部42の雌ねじ溝42aとの間のすべり抵抗を小さくすれば、上記45°未満であっても直線−回転変換動作を行わせることが可能であり、例えばリード角が10°程度以上であってもよい。なお、すべり抵抗を小さくする手段としては既知の手段である例えばボールベアリングなどをすべり部分に介在させることができる。この種の手段としてボールねじを用いることができる。
【0042】
また、給排水手段2により生成される回転水流によってフロート3を回転させる水力発電装置の第2の発明を第1の発明に併せて実施する場合には、回転水流によってトルクが加算されるので、その加算の程度に応じて上記リード角を小さくすることができ、水槽1内への給水量の割りにフロート3の回転数が高くなるので、水力発電装置の第1の発明を単独で実施する場合に比較して相対的にリード角を小さくすることができ、例えば5〜45°程度に設定することができる。
【0043】
リードナット部42は、その下端がフロート3に固定され、上端が水槽1の上蓋11の開口11aおよび基盤部7を緩く貫通していて、全体としてスリーブ状をなしていて、リードねじ軸41の周囲を包囲しているとともに、内面に雌ねじ溝42aが形成されている。そして、雌ねじ溝42aがリードねじ溝41aに螺合している。なお、リードナット部42のフロート3から上方へ突出している部分の外面には、後述するトルク取り出し機構5のトルク取り出し部51のスプライン溝51aが形成される。リードナット部42がリードねじ軸41の軸方向に押されてフロート3と一緒にリードねじ軸41の長手方向へ直線運動を行う際に、リードナット部42が回転し、その結果後述するようにフロート3が回転する。リードナット部42を押し上げる力は、水面の上昇とともにフロート3に作用する浮力である。また、リードナット部42を押し下げる力は、水面の下降とともにフロート3に作用する排水重力またはフロート3の質量である。
【0044】
また、リードナット部42は、その下端が前述のようにフロート3の重心部に固着されて、フロート2と一体化される。このため、リードナット部42が回転すると、フロート3が一緒に回転する。すなわち、フロート3の浮力および排水重力がリードナット部42に対して押し上げ力および押し下げ力として作用し、その結果フロート3も回転してトルクが生じ、フロート3は上下動の際に回転することになる。
【0045】
(フロートの回転周縁部に直線−回転変換機構を配置する構成)
水槽1の内面とフロートの回転周縁部との間に直線−回転変換機構4を配置する構成は、以下のとおりである。すなわち、この態様における直線−回転変換機構3は、図示しないが、水槽1の内周面に形成したリードナット部およびフロート2の外周縁部に形成されたリードねじ部より構成される。
【0046】
リードナット部は、水槽1の内周面に雌ねじが形成されて、螺旋状をなしたフロート3の案内溝として機能する。なお、雌ねじは、横断面凹溝状または凸条状をなすように構成することができる。
【0047】
リードねじ部は、フロート3の周縁に雄ねじが形成されて、リードナット部に螺合する。そして、リードナット部の雌ねじ溝に係合すなわち螺合する案内子として機能する。雌ねじ溝は、連続した雄ねじ溝を形成していてもよいし、フロート3の周面から一定間隔で突出するアーム状などをなして分断された雄ねじ溝を形成していてもよい。さらに、雄ねじ溝は、リードナット部が凹溝状をなしている場合には、その凹溝内において係合する。また、リードナット部が凸条状をなしている場合には、その凸条部の上下両面を挟むように係合する。上述のいずれの態様においても、係合状態でフロート2が上下動する際の抵抗を低減するために、ローラベアリングまたはボールベアリングなどの滑動部材を案内子の摺動部分に介在させるのが好ましい。
【0048】
〔トルク取り出し機構について〕
トルク取り出し機構5は、回転するフロート3に生じたトルクを水槽1の外部へ取り出して、後述する発電機7を駆動するために、トルクを発電機7まで伝達する手段である。トルク取り出し機構5は、その機能が、トルク取り出し部51、回転方向切替部52および増速器53により構成されている。以下、上記各機能について説明する。
【0049】
(トルク取り出し部について)
トルク取り出し部51は、回転するフロート3からトルクを外部へ取り出すための機能手段であり、本発明において、その具体的な構造は特段限定されない。例えば、水力発電装置の第1の発明において、図1に示すように、直線−回転変換機構4がフロート3の重心部位に配置される構成の場合、リードナット部42の外周面にスプライン溝51aを形成し、このスプライン溝51aに内歯がスプライン結合する歯車51bおよびこの歯車51bに歯合する別軸の歯車51cを配設することにより、トルクを外部へ取り出すことができる。
【0050】
また、直線−回転変換機構4がフロート3の回転周縁部に配置される構成の場合、図示しないが、リードねじ溝41aを有していない以外は図1のリードねじ部41と同様な固定軸を配設するとともに、上記固定軸に嵌合し、雌ねじ溝を有していない以外は図1のリードナット部42と同様なスリーブをフロート3の重心部位に固定し、かつこのスリーブの外面に前記スプライン溝51aと同様なスプライン溝を形成し、このスプライン溝にスプライン結合する歯車51bと同様な歯車と、この歯車51cと同様な歯車を別軸で配設すれば、直線−回転変換機構4がフロート3の重心部位に配置される上述の構成の場合と同様に回転トルクをフロート3の重心部から外部へ取り出すことができる。
【0051】
(回転方向切替部について)
回転方向切替部52は、フロート3の回転が上昇時と下降時とで逆になるが、この場合に発電機7の回転を常時所定の一定方向に転換するための機能手段である。図示の実施形態において、回転方向切替部52は、スラスト軸52a、互いに逆向きの一対の駆動かさ歯車52b、52c、スラスタ52d、従動軸52eおよび従動かさ歯車52fを含んで構成されている。
【0052】
スラスト軸52aは、リードナット部42と平行に配設され、長手方向の一部の外面にスプライン溝52a1が形成されている。そして、前記歯車51cの内歯がスプライン溝52a1にスプライン結合している。なお、歯車51cは、スラスト軸52aがスラスト移動をしても、スラスト歯車51aとの噛み合いが外れないように、図1では図示を省略しているが、上下方向の位置が規制されている。また、スラスト軸52aは、軸方向に所定距離だけスラスト可能に軸止されている。
【0053】
逆向きの一対の駆動かさ歯車52b、52cは、45°傾斜したかさ歯の部分が互いに対向した状態でスラスト軸52aに固定して装荷されている。また、一対の駆動かさ歯車52b、52cは、スラスト軸52aのスラストの際に、後述する従動かさ歯車52fがいずれか一方の駆動かさ歯車52bまたは52cにのみ選択的に噛み合えるような距離だけ離間している。
【0054】
従動軸52eは、スラスト軸52aと直交して配設されるとともに、回転可能に軸止されている。なお、従動軸52aは、後述する増速器53の入力軸がこれを兼ねることができる。
【0055】
従動かさ歯車52fは、従動軸52eに固定して装荷されているとともに、一対の駆動かさ歯車52b、52cのいずれか一方に噛み合い、フロート3のトルクが上述の各機構4、5を経由して伝道され、従動軸(入力軸)52eを回転させる。
【0056】
スラスタ52dは、スラスト軸52aを軸方向にスライドさせて、一対の駆動かさ歯車52b、52cのうち必要な方を従動かさ歯車52fに噛み合わせるための手段である。そして、例えば電動、油圧などの遠隔操作手段を用いて遠隔制御および連動制御を可能にすることができる。
【0057】
(増速器について)
増速器53は、回転方向切替部52および発電機7の間に介在して、回転方向切替部52から得られた回転数を発電機6の効率が高くなる回転数まで増速して、出力軸53aから出力して発電機6を駆動する手段である。既知の増速器を用いることができる。
【0058】
〔発電機について〕
発電機6は、回転するフロート3のトルクにより駆動されて発電するように配設されている。発電機6の種類は、特段限定されない。例えば、同期発電機、誘導発電機などを用いることができる。
【0059】
〔発電ユニットについて〕
以上、説明した歯車51c、回転方向切替部52、増速器53および発電機6を1単位とする発電ユニットGUを構成することができる。本実施形態の場合、フロート3から得られるトルクが大きいので、トルクの大きさに応じて複数の発電機ユニットGUをリードねじ軸41または回転軸の周囲に配設することが可能である。図示の実施形態においては、それぞれ外被によって包囲され得る4つの発電機ユニットGUがリードねじ軸41の周囲に90°間隔で配置されている。
【0060】
〔水力発電方法および水力発電装置の動作について〕
次に、図示の実施形態における水力発電方法および水力発電装置の動作について説明する。
【0061】
(水力発電方法)
第1の工程では、水槽1内への給水を開始すると、水槽1内の水位が上昇しだし、内部にされたフロート3が水面に浮上するので、給水を継続してフロート3を図1の2点鎖線で上に示す上限高さまで上昇させる。上限高さに到達したら給水を停止する。そして、引き続いて水槽1内の排水を開始すると、水槽1内の水位が低下しだし、これに同期してフロート3も降下するので、排水を継続してフロート3を図1の2点鎖線で下に示す下限高さまで降下させる。下限高さに到達したら排水を停止する。以上の操作を連続して繰り返す。
【0062】
第2の工程では、フロート3の上昇および下降の際に、水槽1内の水のエネルギーによってフロート3を回転させる。なお、フロート3を回転させるには、直線−回転変換機構4を用いてフロート3の上昇および下降動作の際に回転させる第1の態様、給水および排水によって水槽1の内部に回転水流を生じさせてフロート3を回転させる第2の態様ならびに第1および第2の態様を併用する第3の態様のいずれであってもよい。
【0063】
第3の工程では、フロート3の回転により生じたトルクをトルク取出し機構5により水槽1から外部へ取り出し、発電機7に伝導して発電を行う。
【0064】
(水力発電装置の第1の発明における動作)
第1の発明において、水力発電装置WGは、フロート3を回転させる手段として直線−回転変換機構4を具備している。この第1の水力発電装置においては、給水口21から水槽1内に給水すると、水槽1内の水位が上昇していく。このため、フロート3が水面に浮上し、水位の上昇に伴ってフロート3が上昇する。フロート3の上昇によって直線−回転変換機構4のリードねじ部41に螺合するリードナット部42がリードねじ部41の軸方向に押される。一方、リードねじ部41は、その上下両端が固定されているので、リードナット部42がリードねじ部41のねじ溝41aに沿って軸方向に移動する。このとき、リードナット部42が回転しながら軸方向に移動する。その結果、フロート3が回転し、回転しながら水面とともに上昇する。
【0065】
フロート3の上昇と一緒にリードナット部42が上昇すると、トルク取り出し機構5の取り出し部51のスプライン溝51a、各歯車51b、51c、回転方向切替部52のかさ歯車52c、従動かさ歯車52f、従動軸52eおよび増速器53を経由してトルクが伝導し、所要の回転数で発電機6が駆動されて発電する。
【0066】
次に、排水口22から排水を開始すると、これと連動してスラスタ52dが制御されてスラスタ軸52aが図1において引き上げられるとともに、水面が低下しだし、これに伴いフロート3が下降しだす。このとき、直線−回転変換機構4のリードねじ部41に螺合するリードナット部42がリードねじ部41の軸方向下方へ押される。このため、フロート3が上昇時とは逆の方向に回転する。このときの回転は、リードナット部42の外周のスプライン溝51a、各歯車51b、51cに順次伝導されるが、上述とは逆に回転する。スラスタ52dの上記駆動によって、今度はかさ歯車52bが従動かさ歯車52fに歯合するので、従動軸52eは上昇時と同じ方向に回転する。
【0067】
そうして、フロート3の下降のときにも発電機6は上昇時と同様に駆動されて発電する。水面の上昇および下降に伴ってフロート3が回転するときに大きなトルクが生じるので、十分な発電電力を得ることができる。また、大きなトルクをトルク取り出し機構5の歯車51bに4つの発電ユニットGUのそれぞれの歯車51cが歯合して配置されているので、トルクを分け合って4機の発電機6が並列運転を行う。
【0068】
(水力発電装置の第2の発明における動作)
第2の発明において、水力発電装置WGは、フロート3を回転させる手段として給排水手段2を直線−回転変換機構4に代えて具備している。この第2の水力発電装置においては、給排水によって回転水流が生じてフロート3を回転させるから、回転生成のための構造が簡単化される。
【0069】
(水力発電装置の第1および第2の発明の融合における動作)
第1および第2の発明において、各発明の特徴的な構成部分を融合させて水力発電装置を構成することができる。この場合、フロート3の浮力および排水重力による回転と給排水時の回転水流による回転とが得られるから、より多くのトルクが得られる。このため、より多くの発電電力を得ることができる。
【0070】
次に、図8を参照して本発明の水力発電装置WGの第1の設置例について説明する。集水部8において発電に使用する水量を確保し、集水部8から所要落差(あるいは水圧)が得られる位置に以上説明した水力発電装置WGを単一または複数順次縦列して配置する。そして、集水部8と水力発電装置WGの間を水管で連結する。水力発電装置WGから見ると、水管は給水側が給水管21aであり、排水側が排水管22aである。
【0071】
川の上流や例えば水道システムの中の給水塔を集水部8とし、川下や給水搭につながる水道管に水力発電装置WGを設置してもよい。なお、水道システムの場合、所要落差に相応する水圧があれば実際の落差がなくても本発明の水力発電方法および水力発電装置が正常に作動するので、特段の問題はない。
【0072】
[水力発電装置の第2の実施形態]
図9および図10を参照して本発明の水力発電装置の第2の実施形態について説明する。なお、図1ないし図8と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0073】
本実施形態は、水槽1の上下動からトルクを取り出して利用するように構成している。そして、水槽1、水槽上下動手段110、直線−回転変換手段120およびトルク利用手段130を具備している。
【0074】
〔水槽1〕
水槽1は、図10に示す給排水手段2´を備えていて、水槽1の内部に対する給水と、その内部に貯留した水を外部へ排水するのが水槽1の上下動に影響を実質的に受けることなしに可能である。水槽1は、その内部に貯留した水を含む全体の質量が給水および排水に伴って変化する。水槽1は、上記以外の機能を備えていることが許容される。例えば、図1に示す第1の実施形態におけるように、水槽1内にフロート3を配設することができる。そして、水槽1内の水位の上下動とともにフロート3が回転しながら上下動するので、そのときの回転からトルクを取り出して発電の動力源とすることができる。
【0075】
図示の実施形態において、水槽1の上下運動の妨げにならないようにした給排水手段2´の具体的な構成は、既知の各種手段を選択して採用すればよいので、特段限定されない。例えば、図8に示すように、テレスコピック配管構造をそれぞれ備えた給水管21´および排水管22´を用いて給排水手段2´を構成している。なお、本実施形態において、給水管21´および排水管22´は、後述するトルク利用手段であるところの一対のポンプ装置Pと直交する方向において、水槽1の底部に中心を挟んで対称的に配置されている。
【0076】
給水管21´は、水槽1の底部から外部へ水密に延在して水槽1に直結した外側管21a´およびこの外側管21a´の内側へシール構造21c´を介して進退可能に嵌合する内側管21b´を備えている。そして、内側管21bが水源(図示しない。)に接続する。
【0077】
排水管22´は、水槽1の底部から外部へ水密に延在して水槽1に直結した内側管22a´およびこの内側管22a´の外側へシール構造22c´を介して進退可能に嵌合する外側管22b´を備えている。そして、外側管22bから外部へ排水が行われる。
【0078】
〔水槽上下動手段110〕
水槽上下動手段110は、水槽1内への給水および排水に伴う水槽1全体の質量変化に応じて水槽1を上下運動させる手段である。水槽1の上下動は、水槽1の上記全体の質量が大きくなると降下し、反対に質量が小さくなると上昇して元の位置に復帰する態様で上下動するのが好ましい。
【0079】
図示の実施形態において、水槽上下動手段110は、水槽抱持体111および復帰機構112を備えて構成されている。
【0080】
水槽抱持体111は、水槽1を外側から抱持して水槽1が上下動を円滑に行えるように案内する案内部111a、基底部111b、滑動手段111cおよび上蓋111dを備えて構成されている。水槽案内部111aは、水槽1を外側から緩く抱持する筒状ないし枠状をなしている部分である。水槽1は、水槽案内部111aの内部を上下動する。基底部111bは、水槽案内部111aの基部に位置して水槽抱持体111を支えている。また、図示の実施形態においては、2重底構造を構成していて、上底部Aが水槽1の底部に対向している。また、下底部Bと上底部Aの間の空間内に後述するトルク利用手段130と直線−回転変換手段120の一部が配置されている。滑動手段111cは、水槽案内部111aの側面と水槽1の側面の間に介在して水槽1の滑りを良好にする手段であり、例えばローラーを水槽案内部111aの内面に支持することによって構成されている。上蓋111dは、案内部111aの上端開口部を閉鎖するとともに、上面に発電ユニットGUを載置している。
【0081】
復帰機構112は、給水により内部に貯留する水の量が増加して水槽1全体の質量が大きくなったときに水槽1が下降した後、排水により水槽1全体の質量が小さくなったときに水槽1を上昇させて元の位置に戻す手段である。復帰機構112のその余の構成は特段限定されない。
【0082】
図示の実施形態においては、一例として油圧シリンダー112aおよびコイルばね112bの併用により復帰機構112が構成されている。この復帰機構112は、水槽1の下面と上底部Aとの間において水槽1の周囲に適数組、例えば90°間隔で4組が等配して配設される。なお、水槽1の底部は、復帰機構112の上端部を受け入れて定置させるために、適当な深さの凹窪部1aを上記上端部の受け入れ部分に形成している。しかし、復帰機構112は、水槽1全体の質量が大きいときに水槽1が下降した後、排水によって水槽1の質量が小さくなったときに水槽1を上昇させて元の位置に復帰させる機構であればよいので、上記実施形態に限定されないことを理解できるであろう。
【0083】
〔直線−回転変換手段120〕
直線−回転変換手段120は、水槽1の上下運動を回転運動に変換してトルクを取り出す手段である。直線−回転変換手段120のその余の構成は特段限定されない。例えば、水槽1の底部中心部に直線−回転変換手段120を配設するのが好ましい。
【0084】
図示の実施形態において、直線−回転変換手段120は、第1の実施形態におけるフロート3の浮力および質量によるフロート3の上下運動を回転運動に変換してトルクを取り出すか、またはフロートの回転運動からトルクを取り出す直線−回転変換機構4と同様な機構により構成されている。すなわち、直線−回転変換手段120は、雄ねじ軸121および雌ねじ体122を主体として構成されている。そして、雄ねじ軸121が支持部123によって水槽1の底部外面の好ましくは重心部分から下方へ回転不能に突出して固定され、雌ねじ体122が水槽上下動手段110の基底部111b内において回転可能に配置されている。しかし、所望により第1の実施形態の直線−回転変換機構4におけるのと逆の入出力関係とすることもできる。
【0085】
したがって、水槽1が上下動すると、雄ねじ軸121が水槽1と一緒に上下動するのに伴い雌ねじ体122が、上底部AとカバーCとの間に挟まれて実質的に上下動できないようになっているので、雄ねじ軸121の上下動に際に回転する。雌ねじ体122の回転は、水槽1の上昇時と下降時とで互いに逆方向になる。
【0086】
〔トルク利用手段130〕
トルク利用手段130は、水槽1の上下動が直線−回転変換手段120によって回転運動に変換されてトルクが取り出されるので、この取り出されたトルクによって作動する。トルクの利用の態様は、特段限定されない。例えば、取り出されたトルクで直接汲み上げポンプなどの機械を作動させることができる。また、第1の実施形態におけるのとは別設の発電機を駆動して発電することもできる。したがって、本実施形態において、トルク利用手段は特段限定されない。
【0087】
図示の実施形態において、トルク利用手段130は、第1のギア131、第2のギア132、回転方向切替部133、増速機134および汲み上げポンプ136を備えたポンプ装置Pからなる。
【0088】
第1のギア131は、直線−回転変換手段120の雌ねじ体122の周囲に一体化されている。そして、第1のギア131の上下両面に一対のフランジ131aが当接しているとともに、図において上側のフランジ131aと上底部Aの下面の間および下側のフランジ131aとカバーCとの間に、それぞれ介在するように滑動手段131bが配設されている。また、雄ねじ軸121が降下するまでの間、雌ねじ体122は、滑動手段131bを介して上底部Aの下面に当接している。
【0089】
そうして、第1のギア131は、雄ねじ軸121が降下するときに、最初は雌ねじ体122が雄ねじ軸121に従動するので、上底部Aの下面から離れて軸方向に若干降下してカバーCの内面に当接して停止する。その結果、雌ねじ体122の軸移動が停止するので、雄ねじ軸121が引き続き降下すると、雌ねじ体122はカバーCの内面に当接しながら回転し、第1のギア131も一緒に回転する。これに対して、雄ねじ軸121が上昇するときに、最初は雌ねじ体122がカバーCの内面に当接している。雄ねじ軸121が上昇するときに、最初は雌ねじ体122も従動するので、雄ねじ軸121の軸方向に若干上昇するが、雌ねじ体122は、直ぐ上底部Aの下面に当接するので、停止する。その後は、雄ねじ軸121が引き続き上昇するが、雌ねじ体122は上底部Aの下面に当接した状態で回転する。雄ねじ軸121が上昇するときの雌ねじ体122の回転は、上述の降下時の回転とは逆である。したがって、第1のギア131の回転も逆になる。
【0090】
第2のギア132は、後述する回転方向切替部133の駆動軸133aに固定的に装架されていて、かつ第1のギア131に噛合する。この状態において、第2のギア132は、第1のギア131の一対のフランジ131a、131aの間で挟まれている。このため、第2のギア132は、直線−回転変換手段120の雄ねじ軸121の降下および上昇に従動して、第1のギア131と一緒に軸方向に若干移動するとともに、回転する。
【0091】
回転方向切替部133は、駆動軸133a、コイルばね133b、一対の逆向きかさ歯車133c、133dおよび出力かさ歯車133eを備えている。駆動軸133aは、図7において一対の軸受133a1、133a2によって上下方向に変位可能で、かつ回転自在に支持されている。コイルばね133dは、なくてもよいが、水槽1が上昇する際に、その弾力によって駆動軸134aの上方への変位を補助するので、第2のギア132および第1のギア131の軸移動の際の負荷が軽減される。一対の逆向きかさ歯車133c、133dは、駆動軸133aに離間対向して固定的に装架されている。出力かさ歯車133eは、駆動軸133aの変位に応じて一対の逆向きかさ歯車133c、133dのいずれかに噛合する。
【0092】
増速機134は、入力軸134aを備え、出力かさ歯車133eが入力軸134aに固定的に装架されている。そして、図示を省略している出力軸から増速された回転を得ることができる。
【0093】
汲み上げポンプ135は、増速機135の出力により駆動されるポンプであり、吸水管135aおよび送水管135bを備えている。本実施形態において、汲み上げポンプ135の用途は特段限定されない。しかし、好ましい用途は、発電に使用された後に水槽1から排水された水を高所に揚水して、発電に再利用することである。また、この場合の揚水は、多様な目的に適合させることができ、例えば発電容量の大きな場合における一般的な送電系統のピーク負荷時の発電に適応させることも可能であるが、水槽1内のフロート3の回転による発電における水の使用量を低減する目的に用いることができる。
【0094】
汲み上げポンプ135を揚水に利用する場合、後述するように吸水管135aを落差の低い集水部から吸水し、汲み上げポンプ135で加圧して送水管135bに送り出す。そして、送水管135bを経由して水力発電装置から見て高落差の位置に配設された集水部に揚水する。そうすれば、揚水された水を集水部からの高落差の水にして、発電に再利用することができる。
【0095】
〔第2の実施形態における動作説明〕
第2の実施形態においては、水槽1内への給水による水位の上昇に伴いフロート3が水槽1内で上昇するときの回転と、排水による水位の低下に伴いフロート3が水槽1内で降下するときの回転と、を利用した第1の実施形態における既述のと同様な発電が行われるのに加えて、水槽1内の水量の増減が加わることによる水槽1全体の質量の増減に伴う水槽1の上下運動を利用してトルクを取り出し、これを利用するようにしている。以下、上記後者の発電について詳細に説明する。
【0096】
内部に貯留する水を含めた水槽1全体の質量が水槽1内への給水時には増大していくのに伴って、水槽上下動手段110によって水槽1が降下する。水槽1が降下を開始すると、直線−回転変換手段120の雄ねじ軸121が水槽1と一緒に降下するので、雄ねじ軸121に噛合している雌ねじ体122が前述のように最初若干下方へ軸移動してから反時計方向へ回転する。この回転により第1のギア132が雌ねじ体122と一緒に回転するので、第1のギア132に噛合する第2のギア133が従動して時計方向へ回転する。
【0097】
また、駆動軸133aは、第1のギア131の上記軸移動に従動する第2のギア132の軸移動に応じてコイルばね133bの弾力に抗して図9において下方へ軸移動している。このため、方向切替部133の出力かさ歯車133eは、図において上側のかさ歯車133cに噛合している。以上を要約すれば、水槽1の下降時において、かさ歯車133cの時計方向への回転に伴い出力かさ歯車133eも時計方向へ回転する。そして、増速機134がこの回転をさらに増速し、汲み上げポンプ135は、増速機134の増速された出力により作動する。
【0098】
次に、水槽1が排水を開始すると、水槽1全体の質量が低下していくのに伴って、水槽上下動手段110によって水槽1が上昇する。水槽1が上昇すると、直線−回転変換手段120の雄ねじ軸121が水槽1と一緒に上昇するので、雄ねじ軸121に噛合している雌ねじ体122が今度は最初に若干上昇して、上下動手段110の上底部Aの内面に滑動手段131bを介して当接した後に時計方向へ回転する。この回転により第1のギア132が時計方向へ回転し、第1のギア132に噛合する第2のギア133が従動して反時計方向へ回転する。
【0099】
一方、駆動軸133aは、その上昇開始時における第1のギア131の軸移動に従動する第2のギア132の軸移動によって、図9において上側へ軸移動しているから、出力かさ歯車133eが図において下側のかさ歯車113dに噛合している。このため、第2のギア132が上述のように反時計方向へ回転すると、出力かさ歯車133eは、水槽1の降下時と同じ時計方向へ回転する。したがって、増速機134は、水槽1の上下動の際には常に時計方向へ回転して増速作用を呈する。このため、汲み上げポンプ135は、水槽1の上下動、換言すれば水槽1内への給水時および排水時のいずれにおいても駆動される。
【0100】
[水力発電装置の第3の実施形態]
図11を参照して本発明の水力発電装置の第3の実施形態について説明する。なお、図9および図10に示す水力発電装置の第2の実施形態と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0101】
本実施形態は、水槽1の上下動から得られるトルクだけを取り出して発電する構成である。そして、第2の実施形態におけるのと同様な上下動手段110を具備するとともに、簡素化された水槽1と、第2の実施形態におけるのと逆関係の直線−回転変換手段120と、発電装置Gからなるトルク利用手段130とを具備している。
【0102】
〔水槽1〕
水槽1は、図示を省略している吸排水手段2´を備えているとともに、その底部内面の中央から起立した有底中空筒体16を備えている。上記吸排水手段2は、図10に示す第2の実施形態における構造と同じである。上記有底中空筒体16内に形成される中空部は、水密関係を維持しながら水槽1の底面を貫通して外部に臨んでいる。なお、水密関係の維持には、後述する直線−回転変換手段120の雌ねじ体121が介在することが許容される。また、水槽1は、上述のように構造が簡単なので、所望により第1の実施形態に比較して深さ寸法を小さくすることができる。
【0103】
〔水槽上下動手段110〕
水槽上下動手段110は、第2の実施形態と同様な構成である。
【0104】
〔直線−回転変換手段120〕
直線−回転変換手段120は、雌ねじ体122が水槽1に固定されるとともに、雄ねじ軸121が水槽上下動手段110に回転自在に軸止される逆の関係である点を除いて図9および図10に示す第2の実施形態におけるのと略同様である。すなわち、雌ねじ体122は、水槽1の底部中心部において、有底中空体16の開口端を塞ぐように同軸関係に配設されている。雄ねじ軸121は、水槽上下動手段110の基底部111bの上底部Aに配設された軸受124に回転可能に軸止されていて、水槽1の上下動の際に雌ねじ体122が上下動するとこれに従動して回転する。そして、雌ねじ体122から上側に突出した部分の雄ねじ軸121が有底中空体16の内部に進入する。したがって、有底中空体16の内部の奥行寸法は、水槽1の上下動の最大距離に対応する距離だけねじ軸121が、その先端から中空部12a内部へ進入できるように決められる。このため、水槽1が上下動すると、雌ねじ体122が水槽1と一緒に雄ねじ軸121の軸方向に沿って移動するのに伴い雄ねじ軸121が上下方向の位置を変えないで回転する。雄ねじ軸121の回転は、水槽1の上昇時と下降時とで互いに逆方向になる。
【0105】
〔トルク利用手段130〕
トルク利用手段130は、回転軸136、第1のギア131´、回転方向切替部133および発電機135を備えていて、全体として発電装置Gを構成している点で第2の実施形態と異なる。
【0106】
回転軸136は、直線−回転変換手段120の雄ねじ軸121と一体化していて、その下端が軸受136aに回転自在に軸止されている。第1のギア131´は、回転軸136に固定的に装架されていて、歯幅が相対的に大きくなっている。第2のギア133は、後述する回転方向切替部134の駆動軸131に固定して装架されているとともに、歯合する第1のギア131´の歯幅が広いので、駆動軸133aが後述するように軸方向に変位したときであっても常に第1のギア132に噛合している。
【0107】
回転方向切替部133は、駆動軸133a、コイルばね133b、一対の逆向きかさ歯車133c、133d、出力かさ歯車133e、エアポンプ133fおよび油圧ポンプ133gを備えている。駆動軸133aは、一対の軸受134a1、134a2によって軸方向に変位可能で、かつ回転自在に支持されている。エアポンプ133bは、水槽1の降下に連動して駆動軸133aを押し下げる。このとき、油圧ポンプ134cは、ショックアブゾーバーとして作用する。コイルばね133bは、水槽1が上昇する際に、エアポンプ134bおよび油圧ポンプ134cによる押し下げ力が消失すると、自身の弾力によって駆動軸134aを上方へ変位させる。一対の逆向きかさ歯車133c、133dおよび出力かさ歯車133eは、第2の実施形態におけるのと同様である。
【0108】
増速機134および発電機135は、基台137の上に配置されている。発電機135は、増速機134の出力により駆動されて、発電する。
【0109】
[水力発電装置の第4の実施形態]
図12を参照して本発明の水力発電装置の第4の実施形態について説明する。
【0110】
本実施形態は、第1の実施形態の構成に加えて、フロート3の上昇および下降動作の所定区間において発電しないように制御する発電制御手段GCを具備している。図1に示す第1の実施形態においては、フロート3の上昇および下降動作の全区間において発電することができる。しかしながら、全区間における発電に止まらずフロート3の上昇および下降動作の一部の区間において発電をしない態様であっても、本発明の本質は何ら変化していないことが既述の説明から明瞭である。そこで、本実施形態においては、例えばフロート3の上昇動作の区間またはフロート3の下降動作の区間などの所望の一部区間において発電しないように発電制御手段GCによって制御するとともに、残余の区間においては発電する構成を採用している。
【0111】
〔発電制御手段GC〕
発電制御手段GCは、フロート3の上昇および下降動作の所定区間において発電しないように制御する手段であればよく、そのための具体的な構成については特段限定されない。発明の理解を容易にするために、発電制御手段GCの具体的な構成を例示すれば以下のとおりであり、この例示から明らかなように多様な構成を採用することが可能であることを理解できる。
(1)上記所定区間において、直線−回転変換機構4を無能化させて、フロート3が自由に上昇または下降できるように構成する。すなわち、直線−回転変換機構4を無能化させることにより、フロート3が上昇または下降しても直線−回転変換機構4がトルクを発生しないので、発電機6が駆動されなくなる。
(2)上記所定区間において、直線−回転変換機構4と発電機6の間のトルク伝達を停止させるように構成する。すなわち、フロート3が上昇または下降するのに伴って直線−回転変換機構4がトルクを発生するが、このトルクは発電機6に到達しないので、発電機6が駆動されなくなる。後述する図示の実施形態は、本構成の一例である。
(3)上記所定区間において、発電機6を無負荷運転させるように構成する。すなわち、発電機6を負荷回路から開放させる。これにより、負荷回路から見ると、水力発電装置が発電しなくなる。
【0112】
図12に示す実施形態において、発電制御手段GCは、回転方向切替部52のスラスタ52dの一機能として内蔵されている。すなわち、スラスタ52dは、発電制御手段GCを内蔵することにより、スラスト軸52aを一対のかさ歯車52b、52cの従動かさ歯車52fに対する噛合の切り替えに加えて、従動かさ歯車52fに噛合しない位置にも選択的に切り替えできるように構成されている。発電制御手段GCが機能するようにスラスタ52dを切り替えることにより、直線−回転変換機構4から歯車51bおよび51cを経由してスラスト軸52aに伝達されたトルクは、従動かさ歯車52fに伝達されなくなる。その結果、発電機6は駆動されない。
【0113】
したがって、フロート3の上昇および下降時の所望区間において、発電は行われない。なお、発電制御手段GCをフロート3の動きに連動して作動させるためには、例えば図示を省略しているセンサなどの検出手段によりフロート3の移動方向および位置を検出して、フロート3の移動方向および位置が所定区間に到達したことを判定したときに、発電制御手段GCを上述のように動作させて、発電しないようにすることができる。
【0114】
次に、前記所定区間がフロート3の上昇時である第1の態様と、同じく下降時である第2の態様とにおける水力発電装置のその他の構成および効果について説明する。
【0115】
〔第1の態様における構成および効果〕
給排水手段2は、水槽1内への単位時間当たりの給水量(給水速度)を多く(高く)して水槽1内の水位上昇を早めることができる。給水速度を高めると、水槽1内の水の動きが乱れやすくなり、フロート3が比較的小型で、その接水面積が小さい場合には影響を受けやすくなる。その結果、フロート3が上昇時に揺れて直線−回転変換機構4が円滑な変換動作を行わなくなったり、直線−回転変換機構4の耐久性が低下したりする虞がある。なお、フロート3が大きい場合には、その質量が大きくなるために、水槽1内の水の動きが乱れてもその影響を受けにくくなる。
【0116】
これに対して、第1の態様においては、フロート3の上昇時に直線−回転変換機構4に発電による負荷が作用しなくなり、したがってフロート3がフリーになるので、上述した不都合が生じにくくなる。
【0117】
フロート3は、その下降時にその質量によって発電に利用するトルクを発生させるので、たとえフロート3が比較的小型であったとしても、大きなトルクを得るためには、質量をなるべく大きく設定するのが好ましい。なお、フロート3の質量は、フロート3が水に浮く範囲内で大きく設定することが可能である。
【0118】
第1の態様によれば、フロート3の上昇時に給水に伴って水の動きの乱れが発生したとしても、その区間では発電しないので、フロート3、直線−回転変換機構4および発電機6に対する影響は実用上問題を生じにくいから、フロート3および水槽1を小型化してコンパクトな小電力用の水力発電装置を提供することができる。
【0119】
〔第2の態様における構成および効果〕
第2の態様においては、水槽1内の水位の上昇時に水面に浮かぶフロート3を経由して発電に利用するトルクを発生させ、下降時には発電しない。したがって、発電時に大きなトルクを得るためには、フロート3の質量は殆ど影響することなしに、フロート3に作用する水の浮力が大きいのであればよい。このため、フロート3は、軽量であってもよく、その接水面積さえ大きく設定されていれば、水位の上昇時に水の大きな浮力をトルクに変換することができる。なお、フロート3の質量は、フロート3が自重によって降下時できる程度にあればよい。
【0120】
第2の態様によれば、フロート3の質量を小さくすることが可能であるから、軽量で移動が容易な水力発電装置を提供することができる。
【0121】
[水力発電装置の設置例]
図12を参照して本発明の水力発電装置の第2の設置例について以下説明する。本例においては、既述の水力発電装置の第1ないし第3のいずれか所望の対WG1およびWG2を、その水路を縦列接続した基本配置を備えている。なお、所望により基本配置の複数をさらに並列および/または直列に接続することができる。
【0122】
すなわち、図12において、高落差点に位置する第1の集水部8Aにおいて発電に使用する水量を確保し、第1の集水部8Aから所要落差(あるいは水圧)が得られる位置に第1の水力発電装置WG1を配設し、その給水管21a1を集水部8Aに水路を介して接続する。また、第1の水力発電装置WG1の排水管22a1から所要落差(あるいは水圧)を得る位置に第2の水力発電装置WG2を配設し、その給水管21a2を第1の水力発電装置WG1の排水管22a1に水路を介して接続している。さらに、第2の水力発電装置WG2の配水管22a2から流出する排水を第2の集水部8Bに放流する。そして、第2の集水部8Bの少なくとも一部をポンプ9および揚水管10を介して第1の集水部8へ揚水するように構成されている。
【0123】
本設置例によれば、第2の水力発電装置の排水工程における排水をいったん第2の集水部8Bに溜め、この集水部8Bに溜まった水をポンプPで高落差点の第1の集水部8Aへ揚水するので、排水第2の水力発電装置の排水工程ではない時間帯であっても揚水が可能になる。そのため、比較的小容量のポンプPであっても所要量の揚水が可能になる。また、第2の実施形態の水力発電装置が具備しているポンプ装置Pを用いることにより、電力を消費することなしに揚水することができる。さらに、所望により第2の実施形態の水力発電装置において、水槽1の上下運動を利用して作動するトルク利用手段130のポンプ装置Pを発電装置Gに代えるとともに、本設置例における揚水用のポンプPを集水部またはその近傍に配設して、上記発電装置Gで発生した電力を使用して上記ポンプPを駆動することができる。これによりポンプPに対する配管が簡素化したり、ポンプの配設位置に対する自由度が向上したりする。
【符号の説明】
【0124】
1…水槽、11…上蓋、11a…開口、2…給排水手段、21…給水口、21a…給水管、22…排水口、22a…排水管、3…フロート、31、32…フィン、4…直線−回転変換機構、41…リードねじ部、41a…リードねじ溝、42…リードナット部、42a…雌ねじ溝、5…トルク取り出し機構、51…トルク取り出し部、51a…スプライン溝、51b…歯車、51c…歯車、52…回転方向切替部、52a…スラスト軸、52b…かさ歯車、52c…かさ歯車、52d…スラスタ、52e…従動軸(入力軸)、52f…従動かさ歯車、53…増速器、53a…出力軸、6…発電機、7…基盤部、8A…第1の集水部、8B…第2の集水部、GU…発電ユニット、WG…水力発電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にフロートを配置した水槽内に給水してフロートを水面上に浮上させるとともに水面を上限高さまで上昇させ、次に水槽内を排水してフロートを下限高さまで下降させる第1の工程と;
フロートの上昇および下降の際に水のエネルギーによってフロートを回転させる第2の工程と;
フロートの回転により生じたトルクを伝導して発電機を駆動して発電する第3の工程と;
を具備していることを特徴とする水力発電方法。
【請求項2】
給水および排水が可能な水槽と;
水槽内の水面に浮上し、水槽内への給水および排水に伴う水面の上下動に従動して上下動するフロートと;
フロートの上下動の際にフロートを回転させる直線−回転変換機構と;
フロートに生じたトルクを外部に取り出すトルク取出し機構と;
外部に取り出したトルクにより駆動されて発電する発電機と;
を具備していることを特徴とする水力発電装置。
【請求項3】
給水および排水が可能な水槽と;
水槽内への給水および排水によって水槽内部に回転水流を生じさせる給排水手段と;
水槽内の水面に浮上し、回転水流に従動して回転するとともに水面の上下動に従動して上下動するフロートと;
フロートに生じたトルクを外部に取り出すトルク取出し機構と;
外部に取り出したトルクにより駆動されて発電する発電機と;
を具備していることを特徴とする水力発電装置。
【請求項4】
水槽内への給水および排水に伴う水槽の質量変化に応じて水槽を上下運動させる水槽上下動手段と;
水槽の上下運動を回転運動に変換してトルクを取り出す直線−回転変換手段と;
直線−回転変換手段によって取り出されたトルクを利用するトルク利用手段と;
を具備していることを特徴とする請求項2または3記載の水力発電装置。
【請求項5】
フロートの上昇および下降動作の所定区間において発電しないように制御する発電制御手段を具備していることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一記載の水力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−76392(P2013−76392A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225570(P2011−225570)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(311005666)
【Fターム(参考)】