水力発電装置及び水力発電システム
【課題】既存の水路を必要としない水力発電装置を提供する。
【解決手段】液体を収容する揺動体1,2と、揺動体1,2がピッチ方向に揺動するように揺動体1,2を支持する支持部3,4と、揺動体1,2の内部に設けられ、揺動体1,2が繰り返し揺動することで揺動体1,2の長手方向LDを往復流動する液体からの圧力によって回転する水車7と、水車7によって発電する発電機10と、発電機10により発電された一部の電力により駆動され、揺動体1,2のピッチ方向の振れ角が最大になったときに、揺動体1,2にピッチ方向への復元力を加えるモータMと、モータMの復元力を揺動体1,2に伝達する伝達部Tを備えている。
【解決手段】液体を収容する揺動体1,2と、揺動体1,2がピッチ方向に揺動するように揺動体1,2を支持する支持部3,4と、揺動体1,2の内部に設けられ、揺動体1,2が繰り返し揺動することで揺動体1,2の長手方向LDを往復流動する液体からの圧力によって回転する水車7と、水車7によって発電する発電機10と、発電機10により発電された一部の電力により駆動され、揺動体1,2のピッチ方向の振れ角が最大になったときに、揺動体1,2にピッチ方向への復元力を加えるモータMと、モータMの復元力を揺動体1,2に伝達する伝達部Tを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電装置及びその水力発電装置を複数を備える水力発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水力発電は、水が落下するときのエネルギーを利用する発電方式であり、水車を水の力によって回転させることで発電を行う。この水力発電は、落差さえあれば発電が可能であり、高所にあるダム、ため池、及びタンク等から水道用水又は農業用水等を供給する水路に発電機を設置すれば発電することができるという特徴を有している。また、水力発電は、太陽光発電や風力発電に比べて単位出力あたりのコストも非常に安いという特徴を有している。更に、水力発電は、CO2や放射能廃棄物等の有害物質も排出されないという特徴を有している。すなわち、水力発電は、低コスト、かつ、クリーンな発電方式として注目を集めている。
【0003】
このような、水力発電による発電装置として、例えば特許文献1には、幅50cm〜3m程度の農業用の水路で使用することを目的として、水車にフロートを取り付け、水に浮く構造とし、水車の下側を通過する水流により水車を回転させる技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、一対のフロートと、このフロート間に配置された水車とを備える水力発電システムを道路の側溝に配置し、側溝を流れる水量が比較的多い場合、一対のフロートの浮力によりこの水力発電システムを水に浮かせ、側溝を流れる水量が比較的少ない場合、重量によりこの水力発電システムを側溝の底に沈める技術が開示されている。
【特許文献1】特開2008−267369号公報
【特許文献2】特開2008−163784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1、2はいずれも既存の水路に配置されるものであり、水路のない環境下では設置することができないという問題を有している。
【0006】
本発明の目的は、既存の水路を必要としない全く新規な発想に基づく水力発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一局面による水力発電装置は、液体を収容する揺動体と、前記揺動体がピッチ方向に揺動するように前記揺動体を支持する支持部と、前記揺動体の内部に設けられ、前記揺動体が繰り返し揺動することで前記揺動体の長手方向を往復流動する液体からの圧力によって回転する水車と、前記水車によって発電する発電機と、前記発電機により発電された一部の電力により駆動され、前記揺動体のピッチ方向の振れ角が最大となったときに、前記揺動体に前記ピッチ方向への復元力を加えるモータと、前記モータの復元力を前記揺動体に伝達する伝達部とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、揺動体は内部に液体が収容され、支持部によってピッチ方向に揺動可能に軸支されている。したがって、この揺動体に何らかの外力が加えられると、この揺動体は、ピッチ方向に揺動する。ここで、揺動体は、振れ角が最大になったときに、本水力発電装置により発電された一部の電力によって駆動されるモータからの復元力を受けるため、揺動時間の長時間化が図られている。これにより、揺動体に収容された液体が揺動体の長手方向を往復流動する結果、この液体により水車が回転し、発電機を発電させることができる。したがって、既存の水路を必要とすることのない水力発電装置を提供することができる。
【0009】
(2)前記揺動体は、第1及び第2の揺動体を備え、前記第1の揺動体は、前記支持部により軸支される第1の揺動軸と、前記第1の揺動軸に設けられた第1のギアとを備え、前記第2の揺動体は、前記支持部により軸支される第2の揺動軸と、前記第2の揺動軸に設けられ、前記第1のギアに噛合された第2のギアとを備えることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第1の揺動体には支持部に軸支される第1の揺動軸が設けられ、第2の揺動体には支持部により軸支される第2の揺動軸が設けられ、第1の揺動軸には第1のギアが設けられ、第2の揺動軸には第1のギアに噛合される第2のギアが設けられている。
【0011】
したがって、第1及び第2の揺動体は、それぞれ反対のピッチ方向に揺動するため、一方の揺動体は、振れ角が増大するにつれて、他方の揺動体から漸次増大する復元力を受け、やがて停止して逆方向への揺動を開始する。すなわち、第1及び第2の揺動体は、相互に復元力を及ぼし合い、揺動するように構成されている。このように、2つの揺動体を用いることで、揺動体の全長を長くしなくても、揺動が持続され易い揺動体を構成することができる。
【0012】
(3)前記第1のギアと前記第2のギアとは歯数が異なることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第1及び第2のギアは歯数が異なるため、第1の揺動体の最大の揺れ角と第2の揺動体の最大の揺れ角とが異なる値となる結果、第1の揺動体内の液体の流速と第2の揺動体内の液体の流速とを異なる値にすることができる。そのため、一方の揺動体の傾斜を大きくして、この揺動体から大きな電力を得ることが可能となり、他方の揺動体の傾斜を小さくして、一方の揺動体の振れ角が過大になることを防止して、揺動が持続され易い揺動体を構成することができる。
【0014】
(4)前記第1及び第2の揺動体は、前記長手方向に直交し、下側に向けて延設されたバランサーをそれぞれ備えることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第1及び第2の揺動体は、それぞれ、バランサーを備えているため、バランサーの重さを調節することで、第1及び第2の揺動体の最大の振れ角を調節することができる。
【0016】
(5)前記揺動体は、第1及び第2の仕切り板により前、中央、後の3つの空間に仕切られ、前記第1の仕切り板は、前記前の空間の前記長手方向視の断面積が前記中央の空間に向けて小さくなるような楔形状を有し、前記楔形状の頂部に前記液体の流通口が形成され、前記第2の仕切り板は、前記後の空間の前記長手方向視の断面積が前記中央の空間に向けて小さくなるような楔形状を有し、前記楔形状の頂部に前記液体の流通口が形成され、前記水車は、前記前の空間と前記後の空間との間に設けられていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、第1及び第2の仕切り板は中央の空間に向かうにつれて、左及び右の空間の長手方向視の断面が小さくなるような楔形状を有し、かつ、頂部に液体の流通口が形成されているため、左の空間から中央の空間に流れる液体の流速を速くすることができると共に、右の空間から中央の空間に流れる液体の流速を速くすることができる。そのため、中央の空間に設けられた水車の回転速度を高くすることができ、より大きな電力を発電することができる。
【0018】
(6)前記前の空間と前記中央の空間との間、及び前記後の空間と前記中央の空間との間にそれぞれ設けられ、前記流通口を流れる液体の流量を調節するための流量調節部を更に備えることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、流通口を流れる液体の流量が調節されるため、揺動体が傾斜したときに流通口から液体が一挙に流れることを防止することができ、液体が一挙に流れることにより発生する液体の対流を防止し、対流による水車の回転速度の低下を防止することができる。また、液体が一挙に流れることが防止されるため、水車の回転に作用しない液体の割合を低くすることができる。
【0020】
(7)前記流量調節部は、前記長手方向の両端に開口部が設けられた管状の筐体と、前記筐体の内部において、前記揺動体の振れ角が増大するにつれて、前記中央の空間側の開口部に近づくようにスライド可能に設けられた障壁部とを備えることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、揺動体の振れ角が増大するにつれて、障壁部が流通口に向けてスライドしていくため、この障壁部が流通口に向けて流れる液体の障壁として作用し、流通口から液体が一挙に流れることを防止することができる。
【0022】
(8)前記水車は、複数設けられていることが好ましい
この構成によれば、水車が複数設けられているため、水車の回転に作用する液体の割合を高くすることができ、発電効率を高め、より多くの電力を発電することができる。
【0023】
(9)本発明の更に別の一局面による水力発電システムは、請求項1〜8のいずれかに記載された複数の水力発電装置と、各水力発電装置により発電された電力を貯蔵するバッテリーとを備え、各水力発電装置のモータは、前記バッテリーからの電力により駆動されることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、各水力発電装置間で発電された電力を相互に用いて、各水力発電装置を構成する揺動体の揺動を持続させることができる。また、複数の水力発電装置を備えているため、発電量を増大させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、揺動体に収容された液体が揺動体の長手方向を往復流動する結果、この液体により水車が回転し、発電機を発電させることができる。したがって、既存の水路を必要とすることのない水力発電装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1による水力発電装置について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1による水力発電装置の前面からの外観構成図を示している。図2は、図1に示す水力発電装置の側面からの外観構成図を示している。図3は、図1に示す水力発電装置の内部構成を示した全体構成図である。なお、図1〜図3に示す左及び右方向は前方向から水力発電装置を見た場合を示している。
【0027】
図1〜図3に示すように水力発電装置は、液体を収容する揺動体1,2と、揺動体1,2がピッチ方向に揺動するように揺動体1,2を支持する支持部3,4と、揺動体1,2の内部に設けられ、揺動体1,2が繰り返し揺動することで揺動体1,2の長手方向LDを往復流動する液体からの圧力によって回転する水車7(図3参照)と、水車7によって発電する発電機10と、発電機10により発電された一部の電力により駆動され、揺動体1,2のピッチ方向の振れ角が最大になったときに、揺動体1,2にピッチ方向への復元力を加えるモータMと、モータMの復元力を揺動体1,2に伝達する伝達部Tを備えている。
【0028】
揺動体1は、内部に液体を収容するタンク部11と、支持部3により軸支される揺動軸14と、揺動軸14に設けられたギア15とを備えている。また、揺動体1は、タンク部11の下側に設けられ、タンク部11を支える受け部12と、受け部12を支える支持板13とを備えている。
【0029】
タンク部11は、例えば四角柱状の部材により構成されている。タンク部11の上面には、内部に液体を注入するための円柱状の注入口TN(図略、タンク部21にて図示)が設けられている。液体としては、例えば水を採用することができる。
【0030】
受け部12は、前面視がV字状の平板の部材から構成され、上面側にタンク部11が載置され、下面側の頂部が支持板13に固着されている。ここで、受け部12は、タンク部11の長手方向LDのほぼ中央の位置を支持している。これにより、タンク部11はバランス良く揺動されることになる。
【0031】
支持板13は、揺動軸14に固着されている。ここで、タンク部11及び受け部12は例えば溶接により固着され、受け部12及び支持板13は例えば溶接により固着され、支持板13及び揺動軸14は例えば溶接により固着されている。これにより、タンク部11の下面側に揺動軸14を強固に取り付けることが可能となる。
【0032】
揺動軸14は、長手方向がタンク部11の長手方向LDに直交するように支持板13に取り付けられている。揺動軸14は、左右方向からタンク部11を挟むように設けられた左右一対の軸受31,31によって回転可能に支持されている。揺動軸14の中心側の一端には、ギア15が取り付けられている。
【0033】
支持部3は、例えばタンク部11を左右から挟むように設けられた左右一対の支持柱32,32と、支持柱32,32のそれぞれの上部に取り付けられた軸受31,31とを備えている。支持柱32は、上下方向を長手方向とする柱状の部材により構成されている。支持柱32の上方には、軸受31を取り付けるための平板状の取り付け面321が形成されている。軸受31は、例えばボルトとナットとにより、取り付け面321にネジ止めされている。
【0034】
支持柱32の下方には、底辺を長辺とする2等辺三角形状の枠体33が取り付けられている。この枠体33により水力発電装置を地面に対して安定して設置させることができる。
【0035】
揺動体2は、揺動体1と同様に、タンク部21、受け部22、支持板23(図略)、及び揺動軸24を備えている。揺動軸24は、揺動軸14と同様、左右一対の軸受41,41により左右一対の支持柱42,42に回転可能に取り付けられている。これにより、タンク部21は、タンク部11と同様、ピッチ方向に揺動する。
【0036】
揺動軸24の左端には、ギア25が取り付けられている。ギア25は軸芯がギア15の軸芯よりも上側に位置しており、ギア15と噛み合っている。そのため、揺動体1と揺動体2とは、それぞれ反対のピッチ方向に揺動する。
【0037】
また、ギア25と、ギア15とのギア比は例えば、1:2である。そのため、タンク部11がピッチ方向にある角度θ回転したとすると、タンク部21は、反対のピッチ方向に2θ回転する。なお、ギア25、ギア15のギア比は一例であり、用途に応じて適宜変更してもよい。
【0038】
中央側の支持柱32,42には、ギア15の近傍に設けられ、左右方向を長手方向とし、支持柱32,42を繋ぐブリッジBrが取り付けられている。これにより、ギア25とギア15とは安定して噛み合うことができる。
【0039】
揺動体1,2は、長手方向LDに直交し、下側に向けて延設されたバランサー5,6をそれぞれ備えている。バランサー5は、例えば4本のバランサー柱52と、4本のバランサー柱52の下側に取り付けられた籠部51とを備えている。前面視において、バランサー柱52,52は、タンク部11を左右方向から挟むように、かつ、長手方向がタンク部11の長手方向LDに直交するように、タンク部11に取り付けられている。また、側面視において、バランサー柱52,52は、前後方向から揺動軸14を挟むように、かつ、長手方向がタンク部11の長手方向LDと直交するようにタンク部11に取り付けられている。ここで、各バランサー柱52は、例えば溶接によりタンク部11に固着されている。
【0040】
籠部51は、4本のバランサー柱52の下方において、4本のバランサー柱52を取り囲むように取り付けられた例えば4枚の籠板と、4本のバランサー柱51の下端に底面として取り付けられた1枚の籠板とにより構成されている。
【0041】
このように、バランサー5は、籠部51が設けられているため、籠部51内におもりを出し入れすることが可能となり、これによりバランサー5の重みを所望の重さに調節することができる。そして、バランサー5の重さを調節することで、揺動体1の最大の振れ角を調節することができる。
【0042】
タンク部21には、タンク部11と同様、バランサー6が取り付けられている。図2に示すように、バランサー柱62の全長は、バランサー柱52の全長よりも長い。そのため、揺動体2の最大の振れ角は揺動体1の最大の振れ角よりも大きくなるようにされている。
【0043】
図3に示すように、モータMは、各水車7に接続された発電機10(図4参照)により発電された一部の電力により駆動する。伝達部Tは、バランサー5,6の下面に取り付けられた突起P1,P2と、突起P1及びモータMの回転軸P3に接続されたチェーンC1と、突起P2及び回転軸P3間に接続されたチェーンC2とを備えている。
【0044】
水平線SLを基準とし、反時計回りの角度を正とし、タンク部21の振れ角をθで表すと、タンク部21は、θ=+60度からθ=−60度までの120度の範囲内で揺動する。すなわち、タンク部21は、前方の端部が水平線SLから下方に向けて最大60度傾斜し、また、後方の端部が水平線SLから下方に向けて最大60度傾斜する。
【0045】
したがって、θ=0度のとき突起P2と回転軸P3とは最も近づき、θ=+60度及び−60度のとき突起P2と回転軸P3とは最も離れる。チェーンC2は突起P2と回転軸P3とが最も離れた距離程度の長さを有している。よって、θ=+60度及び−60度のとき、モータMが駆動することで、突起P2が回転軸P3に戻るようにタンク部21にチェーンC2を介して復元力を加えることが可能となり、タンク部21の揺動を持続させることができる。
【0046】
また、同様に、タンク部11の振れ角をθで表すと、タンク部11は、θ=+30度からθ=−30度までの60度の範囲内で揺動する。すなわち、タンク部11は、前方の端部が水平線SLから下方に向けて最大30度傾斜し、また、後方の端部が水平線SLから下方に向けて最大30度傾斜する。
【0047】
したがって、θ=0度のとき突起P1と回転軸P3とは最も近づき、θ=+30度及び−30度のとき突起P1と回転軸P3とは最も離れる。チェーンC1は突起P1と回転軸P3とが最も離れた距離程度の長さを有している。よって、θ=+30度及び−30度のとき、モータMが駆動することで、突起P1が回転軸P3に戻るようにタンク部11にチェーンC1を介して復元力を加えることが可能となり、タンク部11の揺動を持続させることができる。
【0048】
なお、タンク部11とタンク部21とは、ギア15及びギア25を介して接続されている。そのため、タンク部21がθ=+60度になったときタンク部21はθ=−30度になる。また、タンク部21がθ=−60度になったときタンク部21はθ=+30度になる。よって、タンク部11とタンク部21との周期は同一になる。
【0049】
ここで、モータMには、モータ制御部MC(図4参照)が接続されている。このモータ制御部MCは、タンク部11,21の予め定められた周期に基づいて、タンク部11,21がθ=−30度,+60度になるタイミングと、θ=+30度,−60度になるまでのタイミングとを例えばカウンタ等により定め、両タイミングにおいて、所定時間モータMを駆動させる。この所定時間としては、タンク部21の周期よりも遙かに短い時間を採用することができる。
【0050】
なお、タンク部11,21の振れ角を検出するためのロータリーエンコーダや、加速度センサ等の角度検出手段をタンク部11,21に取り付け、モータ制御部MCは、角度検出手段により検出される検出角度にしたがって、タンク部11,21がθ=−30度,+60度及びθ=+30度,−60度になるタイミングを検出し、このタイミングにおいて所定時間、モータMを駆動するようにしてもよい。
【0051】
図3に示すように、タンク部21は、内部に、水車ユニット9、仕切り板81、水車7が設けられている。仕切り板81,82は、長手方向LDの中央部を中心に前後対称となるように、揺動体21の内部を前、中央、後の3つの空間(前空間FS、中央空間CS、後空間BS)に仕切る。
【0052】
仕切り板82は、前空間FSの長手方向LD視の断面積が中央空間CSに向けて小さくなり、かつ、下部の左右中央部が頂部となるような楔形状を有し、頂部に液体の流通口821が形成されている。
【0053】
仕切り板81は、後空間BSの長手方向LD視の断面積が中央空間CSに向けて小さくなり、かつ、下部の左右中央部が頂部となるような楔形状を有し、頂部に液体の流通口811が形成されている。
【0054】
水車ユニット9と流通口821とは流路92を介して連通され、水車ユニット9と流通口811とは流路91を介して連通されている。ここで、流路91は、流通口811から水車ユニット9に向けて伸び、仕切り板81と一体形成され、端部にフランジが設けられた例えば断面四角形状の部材と、水車ユニット9から流通口811に向けて伸び、水車ユニット9と一対形成され、端部にフランジが設けられた例えば断面四角形状の部材とにより構成されている。そして、流路91は、両部材のフランジ部同士が接続されることで構成されている。また、流路92も流路91と同様に構成されている。
【0055】
水車ユニット9は、前面の下部中央に流通口94が形成され、後面の下部中央に流通口93が形成されている。そして、流通口94には流路92が形成され、流通口93には流路91が形成されている。
【0056】
これにより、前空間FS内の液体は、仕切り板82によって流速が高められて、流路92を介して水車ユニット9の内部に侵入して、内部に設けられた水車7(図7参照)を回転させた後、流路91を介して後空間BSへと侵入する。
【0057】
また、後空間BS内の液体は、仕切り板81によって流速が高められて、流路91を介して水車ユニット9の内部に侵入して、内部に設けられた水車7(図7参照)を回転させた後、流路92を介して前空間FSへと侵入する。
【0058】
前空間FS内には、前方に2列に設けられた水車72,72と中央側に設けられた1個の水車71との合計3個の水車7が設けられている。なお、水車71,72を総称するときは7の番号を付して表す。また、水車7の個数は、3個に限定されず、1、2個、4以上であってもよい。
【0059】
後空間BSにも、前空間と同様に3個の水車71,72,72が設けられている。ここで、水車71,72,72は、前空間FSと後空間BSとにおいて、前後対称になるように設けられている。これにより、タンク部21をバランス良く揺動させることができる。
【0060】
水車7は、回転軸701がタンク部21の長手方向LDと直交するように、タンク部21の内部に取り付けられている。タンク部21の上面には、各水車7と対向する位置に軸受201が形成され、タンク部21の下面には、各水車7と対向する位置に軸受201が形成されており、各水車7の回転軸701は対向する軸受201によって回転可能に軸支されている。
【0061】
図4(a)はタンク部11の上面図を示し、図4(b)はタンク部11の側面図を示し、図4(c)はタンク部11の正面図を示している。図4(b)に示すように、タンク部11の各水車7の回転軸701には、発電機10が接続されている。ここで、発電機10は、例えばタンク部11の上面の外側に取り付けられ、水車が回転すると電磁誘導により電力を発生する。
【0062】
バッテリーBATは、発電機10により発電された電力を蓄電する。モータMは、バッテリーBATにより蓄電された電力の一部を受けて、駆動する。なお、タンク部21の構成は、図4(a)に示すタンク部11と同一構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0063】
図5は、タンク部11,21に液体LQが収容された状態を示した図である。なお、図5において、バランサー5、水車7、及び発電機10は図示が省略されている。図5に示すように、タンク部11,21には、それぞれ、液体LQが収容されている。図5においては、タンク部21は、前方の端部が下方に向けて60度傾斜している。また、タンク部11は、後方の端部が下方に向けて30度傾斜している。この状態において、タンク部21内の液体LQは全て、前空間FSに移動している。また、タンク部11の液体LQは全て、後空間BSに移動している。このように、タンク部11,21のそれぞれに収容される液体LQの体積としては、タンク部11,21の前空間FS又は後空間BSよりも多少少ない程度が好ましい。
【0064】
図6は、図1に示すギア25とギア15とを拡大して示した図である。図6に示すように、ギア25とギア15とが噛み合っており、ギア25とギア15とのギア比が1:2にされており、ギア25の直径が、ギア15の直径よりも小さくされていることが分かる。また、ギア25には、揺動軸24が接続され、この揺動軸24が支持柱42の上端に設けられた軸受41を貫通しており、軸受41により回転可能に支持されていることが分かる。
【0065】
また、ギア15には、揺動軸14が接続され、この揺動軸14が支持柱32の上端に設けられた軸受31を貫通しており、軸受31により回転可能に支持されていることが分かる。
【0066】
図7は、図3に示す水車ユニット9を拡大して示した図である。図7(a)は側面図であり、図7(b)は正面図であり、図7(c)は上面図を示している。図7(a)〜(c)に示すように水車ユニット9は、水車73と、水車73の全域を覆う筐体9Cとを備えている。図8は、図7に示す水車73(7)の外観図を示している。水車7は、対向する2枚の円板703,703と、2枚の円板703,703の間に設けられた複数の羽根702とを備えている。
【0067】
円板703,703の中心O1には孔が形成され、回転軸701はこの孔を貫通するように取り付けられている。羽根702は短冊状の部材により構成され、外側の一辺H1が円板703,703の外周H2と連なるように設けられている。また、羽根702は、隣接する2枚の羽根702により1組の羽根ユニットが構成され、この1組の羽根ユニットが中心O1を中心として放射状に等間隔で配列されている。
【0068】
図7(a)に戻り、筐体9Cの下部の両端は、図1に示す流路91,92を構成する。流路91,92の端部にはフランジ9F,9Fが形成されている。このフランジ9F,9Fは、仕切り板81,82側に取り付けられ、前空間FS又は後空間BSからの液体LQが筐体9C内部に侵入する。
【0069】
筐体9Cには、流路91,92の上部と連なるように天井板9C1が設けられている。筐体9Cの上面9C3、及び天井板9C1には、それぞれ中央部にベアリング732及び軸受734が設けられている。また、筐体9Cの底面9C2の中央部には、軸受734が設けられている。回転軸701は、下端が底面9C2に設けられた軸受734により軸支されている。また、回転軸701は、天井板9C1に設けられたベアリング732及び軸受734と、上面9C3に設けられたベアリング732及び軸受734とを貫通している。また、回転軸701の上端は発電機10に侵入している。なお、実際には、回転軸701は、タンク部11又はタンク部21の上壁を介して発電機10に侵入しているが、図7では図示を省略している。
【0070】
したがって、流路92から流路91又は流路91から流路92に向けて液体LQが侵入すると、水車73は、この液体LQによる水圧によって回転し、この水車73の回転に伴って回転軸701が回転し、発電機10が発電することになる。
【0071】
次に、主に図3を用いて本水力発電装置の動作について説明する。初期状態において、タンク部11,21は長手方向LDが水平方向を向いて静止しているものとする。まず、タンク部11とタンク部21とに外力が加えられると、タンク部11,21は揺動を開始する。
【0072】
ここで、外力としては、バッテリーBATにより蓄電された一部の電力、又は更に別の電力供給手段の電力により駆動されるモータMの回転力を採用すればよい。或いは、人間が直接、タンク部11,21を押すことでタンク部11,21に外力を加えても良い。この場合、人間がタンク部11,21を引っ張りやすくするために、タンク部11,21に紐等を取り付ければよい。
【0073】
ここでは、まず、タンク部21が反時計回りに揺動を開始し、タンク部11が時計回りに揺動を開始したものとする。タンク部21の振れ角が増大するにつれて、液体LQは後空間BSから流路91,92を介して前空間FSへと侵入する。これにより、水車ユニット9内の水車73が回転され、水車73に接続された発電機10が発電する。また、タンク部21の前空間FSに侵入した液体LQは、前空間FSに設けられた水車71,72を回転させる。これにより、水車71,72に接続された発電機10も発電する。
【0074】
一方、タンク部11では、液体LQは前空間FSから流路92,91を介して後空間BSへと侵入する。これにより、水車ユニット9内の水車73が回転され、水車73に接続された発電機10が発電する。タンク部11の後空間BSに侵入した液体LQは、後空間BSに設けられた水車71,72を回転させる。これにより、水車71,72に接続された発電機10も発電する。
【0075】
タンク部21は、最大の振れ角であるθ=+60になると、バランサー6及びタンク部11と重さが釣り合い、停止する。同様に、タンク部11も、最大の振れ角であるθ=−30度になると、バランサー5及びタンク部21と重さが釣り合い、停止する。
【0076】
このとき、モータMが所定時間駆動し、モータMの駆動力がチェーンC2及びバランサー6を介してタンク部21に復元力となって伝わると共に、モータMの駆動力がチェーンC1及びバランサー5を介してタンク部11に復元力となって伝わる。これにより、タンク部21が時計回りに揺動を開始し、タンク部11が反時計回りに揺動を開始する。
【0077】
やがて、タンク部21は、長手方向LDが水平方向となり、その後、後方の端部が下方に向けて傾斜していく。また、タンク部11は、長手方向LDが水平方向になった後、前方の端部が下方に向けて傾斜していく。
【0078】
これにより、タンク部21の液体LQは、前空間FSから流路92,91を介して後空間BSへと侵入する。また、タンク部11の液体LQは、後空間BSから流路91,92を介して前空間FSへと侵入する。
【0079】
そして、タンク部11,21の水車ユニット9内の水車73が回転し、この水車73に接続された発電機10が発電する。
【0080】
タンク部21は、振れ角が最大の振れ角であるθ=−60度になると、バランサー6及びタンク部11と重さが釣り合い、停止する。また、タンク部11は、振れ角が最大の振れ角であるθ=+30度になると、バランサー5及びタンク部21と重さが釣り合い、停止する。
【0081】
このとき、モータMが所定時間駆動し、タンク部21が反時計回りに揺動を開始し、タンク部11が時計回りに揺動を開始する。上記のようにしてタンク部11、12は繰り返し揺動する。これにより、水車7が回転し、発電機10が発電する。
【0082】
以上説明したように、本水力発電装置によれば、揺動体1,2に収容された液体LQが揺動体1,2の長手方向LDを往復流動する結果、この液体LQにより水車7が回転し、発電機10を発電させることができる。したがって、既存の水路を必要とすることのない水力発電装置を提供することができる。
【0083】
(実施の形態2)
実施の形態2による水力発電装置は、実施の形態1の水力発電装置に対し、流路91,92を流れる液体LQの流量を調節するための流量調節部を設けたことを特徴とする。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同一のものは説明を省略する。
【0084】
図9は、本実施の形態における水力発電装置の内部構成を示した全体構成図である。図10は、タンク部11の内部構成を示した図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図を示している。なお、タンク部21もタンク部11と同一構成であり、図10で表すことができる。
【0085】
図10に示すように、本実施の形態では、仕切り板81と流路91との間に流量調整部100が設けられると共に、仕切り板82と流路92との間に流量調整部100が設けられている。
【0086】
水車ユニット9の両端からは流路91,92が延設されている。実施の形態1では、水車ユニット9は中央空間CSの内部に設けられていたが、本実施の形態では、水車ユニット9及び流路91,92が中央空間CSを構成する。また、本実施の形態では、前空間FS及び後空間BSにはそれぞれ2個の水車7が設けられているものとする。
【0087】
図11は、流量調整部100の詳細な構成を示した図であり、(a)は側面図、(b)は開口部100C1からの正面図、(c)は上面図を示している。なお、図11に示す流量調整部100は、図10のタンク部11の後空間BS側の流量調整部100を示している。タンク部11の前空間FS側の流量調整部100は、後空間BS側の流量調整部100と同一構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0088】
図11に示すように、流量調整部100は、長手方向LDの両端に開口部100C1,100C2が設けられた管状の筐体100Cと、筐体100Cの内部において、開口部100C1に近づくようにスライド可能に設けられた障壁部R1とを備えている。
【0089】
また、筐体100Cは両端にフランジFR1,FR2が形成されている。フランジFR1は、流路91側に取り付けられ、フランジFR2は、仕切り板81側に取り付けられる。これにより、流量調整部100は、流路91と仕切り板81とを連通させる。
【0090】
流量調整部100の断面積はフランジFR1側に向かうにつれて小さくなるように、上面視が台形形状を有している。これにより、液体LQの流速が高められている。
【0091】
障壁部R1は、円筒形状を有し、軸方向が長手方向LDと直交するように取り付けられている。障壁部R1には、ワイヤーWRが取り付けられている。このワイヤーWRは、図10(b)に示すように、後空間BS内を貫通し、2つのプーリーW1,W1を介して「コ」の字状に蛇行し、バランサー5に設けられたモータM1に取り付けられている。
【0092】
モータM1は、図4に示すモータ制御部MCの制御によって駆動し、障壁部R1を前後方向にスライドさせる。具体的には、図10に示すタンク部11が水平方向から時計回りへの揺動を開始すると、モータ制御部MCは前空間FS側の流量調整部100内の障壁部R1が水車ユニット9側に向けてスライドするようにモータM1の駆動を開始する。そして、モータ制御部MCは、タンク部11の時計回りへの振れ角が増大するにつれて、前空間FS側の流量調整部100内の障壁部R1が水車ユニット9側に向けて前進するようにモータM1を駆動する。
【0093】
そして、タンク部11の時計回りへの振れ角が最大になると、モータ制御部MCは、前空間FS側の流量調整部100内の障壁部R1の前進を停止させ、タンク部11が反時計回りへの揺動を開始し、タンク部11が水平方向に戻るまで、障壁部R1を後退させる。
【0094】
これにより、液体LQが、前空間FSから水車ユニット9を介して後空間BS内に一挙に侵入することが防止される。液体LQが、前空間FSから後空間BS内に一挙に侵入すると、後空間BS内で液体LQが対流し、水車7の回転速度を減少させる虞がある。そこで、タンク部11の振れ角が増大するにつれて、障壁部R1を水車ユニット9側に向けて前進させることで、障壁部R1は開口部100C1を通過しようとする液体LQの障壁として作用し、前空間FSから後空間BSに液体LQが一挙に流れることを防止することができる。これにより、水車7の回転速度の減少を抑制し、発電機10による発電量を増大させることができる。
【0095】
また、タンク部11が水平方向から反時計回りへの揺動を開始すると、タンク部11の振れ角が増大するにつれて、モータ制御部MCは、後空間BS側の流量調整部100内の障壁部R1を水車ユニット9側に前進させていく。そして、タンク部11の反時計回りへの振れ角が最大になると、モータ制御部MCは、後空間BS側の流量調整部100内の障壁部R1の前進を停止させる。一方、タンク部11が時計回りへの揺動を開始すると、モータ制御部MCは、タンク部11が水平方向に戻るまで障壁部R1を後退させる。
【0096】
これにより、後空間BSから前空間FSに液体LQが一挙に流れることを防止することができ、発電機10による発電量の低下を抑制することができる。
【0097】
モータ制御部MCは、タンク部11の揺動と同期して、以上の動作を繰り返し行い、液体LQの対流を抑制し、発電量の低下を抑制している。なお、タンク部21に設けられた流量調整部100内の障壁部R1もタンク部11に設けられた流量調整部100内の障壁部R1と同様に動作するため、詳細な説明は省略する。
【0098】
流量調整部100としては、図11に示すものに代えて、図12に示すものを採用してもよい。図12は、流量調整部100の別の一例を示した図であり、(a)は側面図、(b)は上面図を示し、(c)は(a)の開口部100C2側からの正面図を示している。なお、図12では、タンク部11の後空間BS側の流量調整部100を示している。
【0099】
図12(b)に示すように筐体100Cは、右側が膨らんでおり、障壁部R1の待避空間SP1となっている。障壁部R1は球状の部材により構成されている。筐体100Cの右側面には、一対の棒体WR1,WR2が左方向から筐体100Cの内部に向けて侵入可能に設けられている。棒体WR1,WR2にはそれぞれモータM2,M3(図略)が取り付けられている。このモータM2,M3は図4に示すモータ制御部MCの制御に従って動作する。
【0100】
図13は、図12に示す障壁部R1がスライドされる様子を示した図であり、(a)は障壁部R1が開口部100C1近傍に位置するときを示し、(b)は障壁部R1が待避空間SP1に位置するときを示している。
【0101】
タンク部11が水平方向に位置しているとき、障壁部R1は図13(b)に示すように待避空間SP1に位置している。また、棒体WR1,WR2は共に、先端が待避空間SP1に届く程度の位置まで筐体100C内部に侵入している。そして、タンク部11が水平方向から時計回りへの揺動を開始すると、タンク部11の振れ角が増大するにつれて、モータ制御部MCは、モータM2を駆動して、前空間FS側の流量調整部100の棒体WR1を右方向に漸次スライドさせていく。これにより、棒体WR1に支えられつつ障壁部R1は右方向に転がっていく一方、タンク部11の傾斜に伴う障壁部R1の前方向への移動は棒体WR2により規制されている。そして、棒体WR1の右方向へのスライド量が所定量になると、モータ制御部MCは、モータM3を駆動して、棒体WR2の右方向へのスライドを開始させる。このとき、モータ制御部MCは、引き続き、棒体WR1も右方向にスライドさせる。そして、タンク部11の時計回りへの振れ角が最大になると、棒体WR1,WR2は、図13(a)に示すように、先端が筐体100Cの右側の側壁に位置するようにスライドされている。これにより、障壁部R1は、一部が開口部100C1に嵌り込み、開口部100C1を遮蔽する。
【0102】
すなわち、障壁部R1は、タンク部11の振れ角が増大するにつれて、開口部100C1に近づいていき、タンク部11の振れ角が最大になると、開口部100C1を遮蔽する。これにより、障壁部R1は、前空間FSから後空間BSに侵入しようとする液体LQの障壁として作用する。よって、後空間BSに液体LQが一挙に侵入することが防止され、水車7の回転速度の減少が抑制され、発電機10の発電量を確保することができる。
【0103】
そして、タンク部11が反時計回りへの揺動を開始すると、モータ制御部MCは棒体WR1,WR2を左方向に向けてスライドさせ、障壁部R1を待避空間SP1に待避させる。
【0104】
一方、タンク部11が水平方向から反時計回りへの揺動を開始すると、後空間BS側の流量調整部100が前空間FS側の流量調整部100と同様に動作し、後空間BSから前空間FSに向けて液体が一挙に侵入することを防止する。なお、タンク部21に設けられた流量調整部100もタンク部11に設けられた流量調整部100と同様に動作するため、詳細な説明は省略する。
【0105】
このように、実施の形態2による水力発電装置によれば、流量調整部100を設けたため、前空間FSから後空間BSに向けて、或いは後空間BSから前空間FSに向けて液体LQが一挙に流れることを防止することができ、発電量の減少を抑制することができる。
【0106】
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態1又は実施の形態2による水力発電装置を複数設けて、水力発電システムを構成したことを特徴とする。図14は、実施の形態3による水力発電システムの全体構成を示すブロック図である。
【0107】
図14に示すように、水力発電システムは、N(Nは2以上の正の整数)台の水力発電装置A1〜ANと、バッテリーBATとを備えている。水力発電装置としては、実施の形態1,2のいずれかの水力発電装置を採用すればよい。バッテリーBATは、水力発電装置A1〜ANのそれぞれの発電機10と接続され、水力発電装置A1〜ANのそれぞれで発電された電力を蓄える。
【0108】
また、バッテリーBATは、水力発電装置A1〜ANのそれぞれに設けられたモータM,M1〜M3と接続されている。
【0109】
これにより、水力発電装置A1〜ANは、他の水力発電装置A1〜ANにより発電された電力を用いてモータM,M1〜M3を駆動させることが可能となる。これにより、水力発電装置A1〜ANの揺動をより長く持続させることができる。また、複数の水力発電装置A1〜ANを設けたため、より多くの電力を発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施の形態1による水力発電装置の前面からの外観構成図を示している。
【図2】図1に示す水力発電装置の側面からの外観構成図を示している。
【図3】図1に示す水力発電装置の内部構成を示した全体構成図である。
【図4】(a)はタンク部11の上面図を示し、(b)はタンク部11の側面図を示し、(c)はタンク部11の正面図を示している。
【図5】タンク部に液体が収容された状態を示した図である。
【図6】図1に示すギアを拡大して示した図である。
【図7】図3に示す水車ユニットを拡大して示した図である。
【図8】図7に示す水車の外観図を示している。
【図9】実施の形態2における水力発電装置の内部構成を示した全体構成図である。
【図10】タンク部の内部構成を示した図である。
【図11】流量調整部の詳細な構成を示した図である。
【図12】流量調整部の他の一例を示した図である。
【図13】図12に示す障壁部がスライドされる様子を示した図である。
【図14】実施の形態3による水力発電システムの全体構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0111】
1,2 揺動体
3,4 支持部
5,6 バランサー
9 水車ユニット
10 発電機
11,21 タンク部
14 揺動軸
15,25 ギア
7,71,72,73 水車
91,92 流路
100 流量調整部
811 流通口
821 流通口
BAT バッテリー
BS 後空間
CS 中央空間
FS 前空間
LD 長手方向
M モータ
MC モータ制御部
R1 障壁部
T 伝達部
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電装置及びその水力発電装置を複数を備える水力発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水力発電は、水が落下するときのエネルギーを利用する発電方式であり、水車を水の力によって回転させることで発電を行う。この水力発電は、落差さえあれば発電が可能であり、高所にあるダム、ため池、及びタンク等から水道用水又は農業用水等を供給する水路に発電機を設置すれば発電することができるという特徴を有している。また、水力発電は、太陽光発電や風力発電に比べて単位出力あたりのコストも非常に安いという特徴を有している。更に、水力発電は、CO2や放射能廃棄物等の有害物質も排出されないという特徴を有している。すなわち、水力発電は、低コスト、かつ、クリーンな発電方式として注目を集めている。
【0003】
このような、水力発電による発電装置として、例えば特許文献1には、幅50cm〜3m程度の農業用の水路で使用することを目的として、水車にフロートを取り付け、水に浮く構造とし、水車の下側を通過する水流により水車を回転させる技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、一対のフロートと、このフロート間に配置された水車とを備える水力発電システムを道路の側溝に配置し、側溝を流れる水量が比較的多い場合、一対のフロートの浮力によりこの水力発電システムを水に浮かせ、側溝を流れる水量が比較的少ない場合、重量によりこの水力発電システムを側溝の底に沈める技術が開示されている。
【特許文献1】特開2008−267369号公報
【特許文献2】特開2008−163784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1、2はいずれも既存の水路に配置されるものであり、水路のない環境下では設置することができないという問題を有している。
【0006】
本発明の目的は、既存の水路を必要としない全く新規な発想に基づく水力発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一局面による水力発電装置は、液体を収容する揺動体と、前記揺動体がピッチ方向に揺動するように前記揺動体を支持する支持部と、前記揺動体の内部に設けられ、前記揺動体が繰り返し揺動することで前記揺動体の長手方向を往復流動する液体からの圧力によって回転する水車と、前記水車によって発電する発電機と、前記発電機により発電された一部の電力により駆動され、前記揺動体のピッチ方向の振れ角が最大となったときに、前記揺動体に前記ピッチ方向への復元力を加えるモータと、前記モータの復元力を前記揺動体に伝達する伝達部とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、揺動体は内部に液体が収容され、支持部によってピッチ方向に揺動可能に軸支されている。したがって、この揺動体に何らかの外力が加えられると、この揺動体は、ピッチ方向に揺動する。ここで、揺動体は、振れ角が最大になったときに、本水力発電装置により発電された一部の電力によって駆動されるモータからの復元力を受けるため、揺動時間の長時間化が図られている。これにより、揺動体に収容された液体が揺動体の長手方向を往復流動する結果、この液体により水車が回転し、発電機を発電させることができる。したがって、既存の水路を必要とすることのない水力発電装置を提供することができる。
【0009】
(2)前記揺動体は、第1及び第2の揺動体を備え、前記第1の揺動体は、前記支持部により軸支される第1の揺動軸と、前記第1の揺動軸に設けられた第1のギアとを備え、前記第2の揺動体は、前記支持部により軸支される第2の揺動軸と、前記第2の揺動軸に設けられ、前記第1のギアに噛合された第2のギアとを備えることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第1の揺動体には支持部に軸支される第1の揺動軸が設けられ、第2の揺動体には支持部により軸支される第2の揺動軸が設けられ、第1の揺動軸には第1のギアが設けられ、第2の揺動軸には第1のギアに噛合される第2のギアが設けられている。
【0011】
したがって、第1及び第2の揺動体は、それぞれ反対のピッチ方向に揺動するため、一方の揺動体は、振れ角が増大するにつれて、他方の揺動体から漸次増大する復元力を受け、やがて停止して逆方向への揺動を開始する。すなわち、第1及び第2の揺動体は、相互に復元力を及ぼし合い、揺動するように構成されている。このように、2つの揺動体を用いることで、揺動体の全長を長くしなくても、揺動が持続され易い揺動体を構成することができる。
【0012】
(3)前記第1のギアと前記第2のギアとは歯数が異なることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第1及び第2のギアは歯数が異なるため、第1の揺動体の最大の揺れ角と第2の揺動体の最大の揺れ角とが異なる値となる結果、第1の揺動体内の液体の流速と第2の揺動体内の液体の流速とを異なる値にすることができる。そのため、一方の揺動体の傾斜を大きくして、この揺動体から大きな電力を得ることが可能となり、他方の揺動体の傾斜を小さくして、一方の揺動体の振れ角が過大になることを防止して、揺動が持続され易い揺動体を構成することができる。
【0014】
(4)前記第1及び第2の揺動体は、前記長手方向に直交し、下側に向けて延設されたバランサーをそれぞれ備えることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第1及び第2の揺動体は、それぞれ、バランサーを備えているため、バランサーの重さを調節することで、第1及び第2の揺動体の最大の振れ角を調節することができる。
【0016】
(5)前記揺動体は、第1及び第2の仕切り板により前、中央、後の3つの空間に仕切られ、前記第1の仕切り板は、前記前の空間の前記長手方向視の断面積が前記中央の空間に向けて小さくなるような楔形状を有し、前記楔形状の頂部に前記液体の流通口が形成され、前記第2の仕切り板は、前記後の空間の前記長手方向視の断面積が前記中央の空間に向けて小さくなるような楔形状を有し、前記楔形状の頂部に前記液体の流通口が形成され、前記水車は、前記前の空間と前記後の空間との間に設けられていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、第1及び第2の仕切り板は中央の空間に向かうにつれて、左及び右の空間の長手方向視の断面が小さくなるような楔形状を有し、かつ、頂部に液体の流通口が形成されているため、左の空間から中央の空間に流れる液体の流速を速くすることができると共に、右の空間から中央の空間に流れる液体の流速を速くすることができる。そのため、中央の空間に設けられた水車の回転速度を高くすることができ、より大きな電力を発電することができる。
【0018】
(6)前記前の空間と前記中央の空間との間、及び前記後の空間と前記中央の空間との間にそれぞれ設けられ、前記流通口を流れる液体の流量を調節するための流量調節部を更に備えることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、流通口を流れる液体の流量が調節されるため、揺動体が傾斜したときに流通口から液体が一挙に流れることを防止することができ、液体が一挙に流れることにより発生する液体の対流を防止し、対流による水車の回転速度の低下を防止することができる。また、液体が一挙に流れることが防止されるため、水車の回転に作用しない液体の割合を低くすることができる。
【0020】
(7)前記流量調節部は、前記長手方向の両端に開口部が設けられた管状の筐体と、前記筐体の内部において、前記揺動体の振れ角が増大するにつれて、前記中央の空間側の開口部に近づくようにスライド可能に設けられた障壁部とを備えることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、揺動体の振れ角が増大するにつれて、障壁部が流通口に向けてスライドしていくため、この障壁部が流通口に向けて流れる液体の障壁として作用し、流通口から液体が一挙に流れることを防止することができる。
【0022】
(8)前記水車は、複数設けられていることが好ましい
この構成によれば、水車が複数設けられているため、水車の回転に作用する液体の割合を高くすることができ、発電効率を高め、より多くの電力を発電することができる。
【0023】
(9)本発明の更に別の一局面による水力発電システムは、請求項1〜8のいずれかに記載された複数の水力発電装置と、各水力発電装置により発電された電力を貯蔵するバッテリーとを備え、各水力発電装置のモータは、前記バッテリーからの電力により駆動されることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、各水力発電装置間で発電された電力を相互に用いて、各水力発電装置を構成する揺動体の揺動を持続させることができる。また、複数の水力発電装置を備えているため、発電量を増大させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、揺動体に収容された液体が揺動体の長手方向を往復流動する結果、この液体により水車が回転し、発電機を発電させることができる。したがって、既存の水路を必要とすることのない水力発電装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1による水力発電装置について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1による水力発電装置の前面からの外観構成図を示している。図2は、図1に示す水力発電装置の側面からの外観構成図を示している。図3は、図1に示す水力発電装置の内部構成を示した全体構成図である。なお、図1〜図3に示す左及び右方向は前方向から水力発電装置を見た場合を示している。
【0027】
図1〜図3に示すように水力発電装置は、液体を収容する揺動体1,2と、揺動体1,2がピッチ方向に揺動するように揺動体1,2を支持する支持部3,4と、揺動体1,2の内部に設けられ、揺動体1,2が繰り返し揺動することで揺動体1,2の長手方向LDを往復流動する液体からの圧力によって回転する水車7(図3参照)と、水車7によって発電する発電機10と、発電機10により発電された一部の電力により駆動され、揺動体1,2のピッチ方向の振れ角が最大になったときに、揺動体1,2にピッチ方向への復元力を加えるモータMと、モータMの復元力を揺動体1,2に伝達する伝達部Tを備えている。
【0028】
揺動体1は、内部に液体を収容するタンク部11と、支持部3により軸支される揺動軸14と、揺動軸14に設けられたギア15とを備えている。また、揺動体1は、タンク部11の下側に設けられ、タンク部11を支える受け部12と、受け部12を支える支持板13とを備えている。
【0029】
タンク部11は、例えば四角柱状の部材により構成されている。タンク部11の上面には、内部に液体を注入するための円柱状の注入口TN(図略、タンク部21にて図示)が設けられている。液体としては、例えば水を採用することができる。
【0030】
受け部12は、前面視がV字状の平板の部材から構成され、上面側にタンク部11が載置され、下面側の頂部が支持板13に固着されている。ここで、受け部12は、タンク部11の長手方向LDのほぼ中央の位置を支持している。これにより、タンク部11はバランス良く揺動されることになる。
【0031】
支持板13は、揺動軸14に固着されている。ここで、タンク部11及び受け部12は例えば溶接により固着され、受け部12及び支持板13は例えば溶接により固着され、支持板13及び揺動軸14は例えば溶接により固着されている。これにより、タンク部11の下面側に揺動軸14を強固に取り付けることが可能となる。
【0032】
揺動軸14は、長手方向がタンク部11の長手方向LDに直交するように支持板13に取り付けられている。揺動軸14は、左右方向からタンク部11を挟むように設けられた左右一対の軸受31,31によって回転可能に支持されている。揺動軸14の中心側の一端には、ギア15が取り付けられている。
【0033】
支持部3は、例えばタンク部11を左右から挟むように設けられた左右一対の支持柱32,32と、支持柱32,32のそれぞれの上部に取り付けられた軸受31,31とを備えている。支持柱32は、上下方向を長手方向とする柱状の部材により構成されている。支持柱32の上方には、軸受31を取り付けるための平板状の取り付け面321が形成されている。軸受31は、例えばボルトとナットとにより、取り付け面321にネジ止めされている。
【0034】
支持柱32の下方には、底辺を長辺とする2等辺三角形状の枠体33が取り付けられている。この枠体33により水力発電装置を地面に対して安定して設置させることができる。
【0035】
揺動体2は、揺動体1と同様に、タンク部21、受け部22、支持板23(図略)、及び揺動軸24を備えている。揺動軸24は、揺動軸14と同様、左右一対の軸受41,41により左右一対の支持柱42,42に回転可能に取り付けられている。これにより、タンク部21は、タンク部11と同様、ピッチ方向に揺動する。
【0036】
揺動軸24の左端には、ギア25が取り付けられている。ギア25は軸芯がギア15の軸芯よりも上側に位置しており、ギア15と噛み合っている。そのため、揺動体1と揺動体2とは、それぞれ反対のピッチ方向に揺動する。
【0037】
また、ギア25と、ギア15とのギア比は例えば、1:2である。そのため、タンク部11がピッチ方向にある角度θ回転したとすると、タンク部21は、反対のピッチ方向に2θ回転する。なお、ギア25、ギア15のギア比は一例であり、用途に応じて適宜変更してもよい。
【0038】
中央側の支持柱32,42には、ギア15の近傍に設けられ、左右方向を長手方向とし、支持柱32,42を繋ぐブリッジBrが取り付けられている。これにより、ギア25とギア15とは安定して噛み合うことができる。
【0039】
揺動体1,2は、長手方向LDに直交し、下側に向けて延設されたバランサー5,6をそれぞれ備えている。バランサー5は、例えば4本のバランサー柱52と、4本のバランサー柱52の下側に取り付けられた籠部51とを備えている。前面視において、バランサー柱52,52は、タンク部11を左右方向から挟むように、かつ、長手方向がタンク部11の長手方向LDに直交するように、タンク部11に取り付けられている。また、側面視において、バランサー柱52,52は、前後方向から揺動軸14を挟むように、かつ、長手方向がタンク部11の長手方向LDと直交するようにタンク部11に取り付けられている。ここで、各バランサー柱52は、例えば溶接によりタンク部11に固着されている。
【0040】
籠部51は、4本のバランサー柱52の下方において、4本のバランサー柱52を取り囲むように取り付けられた例えば4枚の籠板と、4本のバランサー柱51の下端に底面として取り付けられた1枚の籠板とにより構成されている。
【0041】
このように、バランサー5は、籠部51が設けられているため、籠部51内におもりを出し入れすることが可能となり、これによりバランサー5の重みを所望の重さに調節することができる。そして、バランサー5の重さを調節することで、揺動体1の最大の振れ角を調節することができる。
【0042】
タンク部21には、タンク部11と同様、バランサー6が取り付けられている。図2に示すように、バランサー柱62の全長は、バランサー柱52の全長よりも長い。そのため、揺動体2の最大の振れ角は揺動体1の最大の振れ角よりも大きくなるようにされている。
【0043】
図3に示すように、モータMは、各水車7に接続された発電機10(図4参照)により発電された一部の電力により駆動する。伝達部Tは、バランサー5,6の下面に取り付けられた突起P1,P2と、突起P1及びモータMの回転軸P3に接続されたチェーンC1と、突起P2及び回転軸P3間に接続されたチェーンC2とを備えている。
【0044】
水平線SLを基準とし、反時計回りの角度を正とし、タンク部21の振れ角をθで表すと、タンク部21は、θ=+60度からθ=−60度までの120度の範囲内で揺動する。すなわち、タンク部21は、前方の端部が水平線SLから下方に向けて最大60度傾斜し、また、後方の端部が水平線SLから下方に向けて最大60度傾斜する。
【0045】
したがって、θ=0度のとき突起P2と回転軸P3とは最も近づき、θ=+60度及び−60度のとき突起P2と回転軸P3とは最も離れる。チェーンC2は突起P2と回転軸P3とが最も離れた距離程度の長さを有している。よって、θ=+60度及び−60度のとき、モータMが駆動することで、突起P2が回転軸P3に戻るようにタンク部21にチェーンC2を介して復元力を加えることが可能となり、タンク部21の揺動を持続させることができる。
【0046】
また、同様に、タンク部11の振れ角をθで表すと、タンク部11は、θ=+30度からθ=−30度までの60度の範囲内で揺動する。すなわち、タンク部11は、前方の端部が水平線SLから下方に向けて最大30度傾斜し、また、後方の端部が水平線SLから下方に向けて最大30度傾斜する。
【0047】
したがって、θ=0度のとき突起P1と回転軸P3とは最も近づき、θ=+30度及び−30度のとき突起P1と回転軸P3とは最も離れる。チェーンC1は突起P1と回転軸P3とが最も離れた距離程度の長さを有している。よって、θ=+30度及び−30度のとき、モータMが駆動することで、突起P1が回転軸P3に戻るようにタンク部11にチェーンC1を介して復元力を加えることが可能となり、タンク部11の揺動を持続させることができる。
【0048】
なお、タンク部11とタンク部21とは、ギア15及びギア25を介して接続されている。そのため、タンク部21がθ=+60度になったときタンク部21はθ=−30度になる。また、タンク部21がθ=−60度になったときタンク部21はθ=+30度になる。よって、タンク部11とタンク部21との周期は同一になる。
【0049】
ここで、モータMには、モータ制御部MC(図4参照)が接続されている。このモータ制御部MCは、タンク部11,21の予め定められた周期に基づいて、タンク部11,21がθ=−30度,+60度になるタイミングと、θ=+30度,−60度になるまでのタイミングとを例えばカウンタ等により定め、両タイミングにおいて、所定時間モータMを駆動させる。この所定時間としては、タンク部21の周期よりも遙かに短い時間を採用することができる。
【0050】
なお、タンク部11,21の振れ角を検出するためのロータリーエンコーダや、加速度センサ等の角度検出手段をタンク部11,21に取り付け、モータ制御部MCは、角度検出手段により検出される検出角度にしたがって、タンク部11,21がθ=−30度,+60度及びθ=+30度,−60度になるタイミングを検出し、このタイミングにおいて所定時間、モータMを駆動するようにしてもよい。
【0051】
図3に示すように、タンク部21は、内部に、水車ユニット9、仕切り板81、水車7が設けられている。仕切り板81,82は、長手方向LDの中央部を中心に前後対称となるように、揺動体21の内部を前、中央、後の3つの空間(前空間FS、中央空間CS、後空間BS)に仕切る。
【0052】
仕切り板82は、前空間FSの長手方向LD視の断面積が中央空間CSに向けて小さくなり、かつ、下部の左右中央部が頂部となるような楔形状を有し、頂部に液体の流通口821が形成されている。
【0053】
仕切り板81は、後空間BSの長手方向LD視の断面積が中央空間CSに向けて小さくなり、かつ、下部の左右中央部が頂部となるような楔形状を有し、頂部に液体の流通口811が形成されている。
【0054】
水車ユニット9と流通口821とは流路92を介して連通され、水車ユニット9と流通口811とは流路91を介して連通されている。ここで、流路91は、流通口811から水車ユニット9に向けて伸び、仕切り板81と一体形成され、端部にフランジが設けられた例えば断面四角形状の部材と、水車ユニット9から流通口811に向けて伸び、水車ユニット9と一対形成され、端部にフランジが設けられた例えば断面四角形状の部材とにより構成されている。そして、流路91は、両部材のフランジ部同士が接続されることで構成されている。また、流路92も流路91と同様に構成されている。
【0055】
水車ユニット9は、前面の下部中央に流通口94が形成され、後面の下部中央に流通口93が形成されている。そして、流通口94には流路92が形成され、流通口93には流路91が形成されている。
【0056】
これにより、前空間FS内の液体は、仕切り板82によって流速が高められて、流路92を介して水車ユニット9の内部に侵入して、内部に設けられた水車7(図7参照)を回転させた後、流路91を介して後空間BSへと侵入する。
【0057】
また、後空間BS内の液体は、仕切り板81によって流速が高められて、流路91を介して水車ユニット9の内部に侵入して、内部に設けられた水車7(図7参照)を回転させた後、流路92を介して前空間FSへと侵入する。
【0058】
前空間FS内には、前方に2列に設けられた水車72,72と中央側に設けられた1個の水車71との合計3個の水車7が設けられている。なお、水車71,72を総称するときは7の番号を付して表す。また、水車7の個数は、3個に限定されず、1、2個、4以上であってもよい。
【0059】
後空間BSにも、前空間と同様に3個の水車71,72,72が設けられている。ここで、水車71,72,72は、前空間FSと後空間BSとにおいて、前後対称になるように設けられている。これにより、タンク部21をバランス良く揺動させることができる。
【0060】
水車7は、回転軸701がタンク部21の長手方向LDと直交するように、タンク部21の内部に取り付けられている。タンク部21の上面には、各水車7と対向する位置に軸受201が形成され、タンク部21の下面には、各水車7と対向する位置に軸受201が形成されており、各水車7の回転軸701は対向する軸受201によって回転可能に軸支されている。
【0061】
図4(a)はタンク部11の上面図を示し、図4(b)はタンク部11の側面図を示し、図4(c)はタンク部11の正面図を示している。図4(b)に示すように、タンク部11の各水車7の回転軸701には、発電機10が接続されている。ここで、発電機10は、例えばタンク部11の上面の外側に取り付けられ、水車が回転すると電磁誘導により電力を発生する。
【0062】
バッテリーBATは、発電機10により発電された電力を蓄電する。モータMは、バッテリーBATにより蓄電された電力の一部を受けて、駆動する。なお、タンク部21の構成は、図4(a)に示すタンク部11と同一構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0063】
図5は、タンク部11,21に液体LQが収容された状態を示した図である。なお、図5において、バランサー5、水車7、及び発電機10は図示が省略されている。図5に示すように、タンク部11,21には、それぞれ、液体LQが収容されている。図5においては、タンク部21は、前方の端部が下方に向けて60度傾斜している。また、タンク部11は、後方の端部が下方に向けて30度傾斜している。この状態において、タンク部21内の液体LQは全て、前空間FSに移動している。また、タンク部11の液体LQは全て、後空間BSに移動している。このように、タンク部11,21のそれぞれに収容される液体LQの体積としては、タンク部11,21の前空間FS又は後空間BSよりも多少少ない程度が好ましい。
【0064】
図6は、図1に示すギア25とギア15とを拡大して示した図である。図6に示すように、ギア25とギア15とが噛み合っており、ギア25とギア15とのギア比が1:2にされており、ギア25の直径が、ギア15の直径よりも小さくされていることが分かる。また、ギア25には、揺動軸24が接続され、この揺動軸24が支持柱42の上端に設けられた軸受41を貫通しており、軸受41により回転可能に支持されていることが分かる。
【0065】
また、ギア15には、揺動軸14が接続され、この揺動軸14が支持柱32の上端に設けられた軸受31を貫通しており、軸受31により回転可能に支持されていることが分かる。
【0066】
図7は、図3に示す水車ユニット9を拡大して示した図である。図7(a)は側面図であり、図7(b)は正面図であり、図7(c)は上面図を示している。図7(a)〜(c)に示すように水車ユニット9は、水車73と、水車73の全域を覆う筐体9Cとを備えている。図8は、図7に示す水車73(7)の外観図を示している。水車7は、対向する2枚の円板703,703と、2枚の円板703,703の間に設けられた複数の羽根702とを備えている。
【0067】
円板703,703の中心O1には孔が形成され、回転軸701はこの孔を貫通するように取り付けられている。羽根702は短冊状の部材により構成され、外側の一辺H1が円板703,703の外周H2と連なるように設けられている。また、羽根702は、隣接する2枚の羽根702により1組の羽根ユニットが構成され、この1組の羽根ユニットが中心O1を中心として放射状に等間隔で配列されている。
【0068】
図7(a)に戻り、筐体9Cの下部の両端は、図1に示す流路91,92を構成する。流路91,92の端部にはフランジ9F,9Fが形成されている。このフランジ9F,9Fは、仕切り板81,82側に取り付けられ、前空間FS又は後空間BSからの液体LQが筐体9C内部に侵入する。
【0069】
筐体9Cには、流路91,92の上部と連なるように天井板9C1が設けられている。筐体9Cの上面9C3、及び天井板9C1には、それぞれ中央部にベアリング732及び軸受734が設けられている。また、筐体9Cの底面9C2の中央部には、軸受734が設けられている。回転軸701は、下端が底面9C2に設けられた軸受734により軸支されている。また、回転軸701は、天井板9C1に設けられたベアリング732及び軸受734と、上面9C3に設けられたベアリング732及び軸受734とを貫通している。また、回転軸701の上端は発電機10に侵入している。なお、実際には、回転軸701は、タンク部11又はタンク部21の上壁を介して発電機10に侵入しているが、図7では図示を省略している。
【0070】
したがって、流路92から流路91又は流路91から流路92に向けて液体LQが侵入すると、水車73は、この液体LQによる水圧によって回転し、この水車73の回転に伴って回転軸701が回転し、発電機10が発電することになる。
【0071】
次に、主に図3を用いて本水力発電装置の動作について説明する。初期状態において、タンク部11,21は長手方向LDが水平方向を向いて静止しているものとする。まず、タンク部11とタンク部21とに外力が加えられると、タンク部11,21は揺動を開始する。
【0072】
ここで、外力としては、バッテリーBATにより蓄電された一部の電力、又は更に別の電力供給手段の電力により駆動されるモータMの回転力を採用すればよい。或いは、人間が直接、タンク部11,21を押すことでタンク部11,21に外力を加えても良い。この場合、人間がタンク部11,21を引っ張りやすくするために、タンク部11,21に紐等を取り付ければよい。
【0073】
ここでは、まず、タンク部21が反時計回りに揺動を開始し、タンク部11が時計回りに揺動を開始したものとする。タンク部21の振れ角が増大するにつれて、液体LQは後空間BSから流路91,92を介して前空間FSへと侵入する。これにより、水車ユニット9内の水車73が回転され、水車73に接続された発電機10が発電する。また、タンク部21の前空間FSに侵入した液体LQは、前空間FSに設けられた水車71,72を回転させる。これにより、水車71,72に接続された発電機10も発電する。
【0074】
一方、タンク部11では、液体LQは前空間FSから流路92,91を介して後空間BSへと侵入する。これにより、水車ユニット9内の水車73が回転され、水車73に接続された発電機10が発電する。タンク部11の後空間BSに侵入した液体LQは、後空間BSに設けられた水車71,72を回転させる。これにより、水車71,72に接続された発電機10も発電する。
【0075】
タンク部21は、最大の振れ角であるθ=+60になると、バランサー6及びタンク部11と重さが釣り合い、停止する。同様に、タンク部11も、最大の振れ角であるθ=−30度になると、バランサー5及びタンク部21と重さが釣り合い、停止する。
【0076】
このとき、モータMが所定時間駆動し、モータMの駆動力がチェーンC2及びバランサー6を介してタンク部21に復元力となって伝わると共に、モータMの駆動力がチェーンC1及びバランサー5を介してタンク部11に復元力となって伝わる。これにより、タンク部21が時計回りに揺動を開始し、タンク部11が反時計回りに揺動を開始する。
【0077】
やがて、タンク部21は、長手方向LDが水平方向となり、その後、後方の端部が下方に向けて傾斜していく。また、タンク部11は、長手方向LDが水平方向になった後、前方の端部が下方に向けて傾斜していく。
【0078】
これにより、タンク部21の液体LQは、前空間FSから流路92,91を介して後空間BSへと侵入する。また、タンク部11の液体LQは、後空間BSから流路91,92を介して前空間FSへと侵入する。
【0079】
そして、タンク部11,21の水車ユニット9内の水車73が回転し、この水車73に接続された発電機10が発電する。
【0080】
タンク部21は、振れ角が最大の振れ角であるθ=−60度になると、バランサー6及びタンク部11と重さが釣り合い、停止する。また、タンク部11は、振れ角が最大の振れ角であるθ=+30度になると、バランサー5及びタンク部21と重さが釣り合い、停止する。
【0081】
このとき、モータMが所定時間駆動し、タンク部21が反時計回りに揺動を開始し、タンク部11が時計回りに揺動を開始する。上記のようにしてタンク部11、12は繰り返し揺動する。これにより、水車7が回転し、発電機10が発電する。
【0082】
以上説明したように、本水力発電装置によれば、揺動体1,2に収容された液体LQが揺動体1,2の長手方向LDを往復流動する結果、この液体LQにより水車7が回転し、発電機10を発電させることができる。したがって、既存の水路を必要とすることのない水力発電装置を提供することができる。
【0083】
(実施の形態2)
実施の形態2による水力発電装置は、実施の形態1の水力発電装置に対し、流路91,92を流れる液体LQの流量を調節するための流量調節部を設けたことを特徴とする。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同一のものは説明を省略する。
【0084】
図9は、本実施の形態における水力発電装置の内部構成を示した全体構成図である。図10は、タンク部11の内部構成を示した図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図を示している。なお、タンク部21もタンク部11と同一構成であり、図10で表すことができる。
【0085】
図10に示すように、本実施の形態では、仕切り板81と流路91との間に流量調整部100が設けられると共に、仕切り板82と流路92との間に流量調整部100が設けられている。
【0086】
水車ユニット9の両端からは流路91,92が延設されている。実施の形態1では、水車ユニット9は中央空間CSの内部に設けられていたが、本実施の形態では、水車ユニット9及び流路91,92が中央空間CSを構成する。また、本実施の形態では、前空間FS及び後空間BSにはそれぞれ2個の水車7が設けられているものとする。
【0087】
図11は、流量調整部100の詳細な構成を示した図であり、(a)は側面図、(b)は開口部100C1からの正面図、(c)は上面図を示している。なお、図11に示す流量調整部100は、図10のタンク部11の後空間BS側の流量調整部100を示している。タンク部11の前空間FS側の流量調整部100は、後空間BS側の流量調整部100と同一構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0088】
図11に示すように、流量調整部100は、長手方向LDの両端に開口部100C1,100C2が設けられた管状の筐体100Cと、筐体100Cの内部において、開口部100C1に近づくようにスライド可能に設けられた障壁部R1とを備えている。
【0089】
また、筐体100Cは両端にフランジFR1,FR2が形成されている。フランジFR1は、流路91側に取り付けられ、フランジFR2は、仕切り板81側に取り付けられる。これにより、流量調整部100は、流路91と仕切り板81とを連通させる。
【0090】
流量調整部100の断面積はフランジFR1側に向かうにつれて小さくなるように、上面視が台形形状を有している。これにより、液体LQの流速が高められている。
【0091】
障壁部R1は、円筒形状を有し、軸方向が長手方向LDと直交するように取り付けられている。障壁部R1には、ワイヤーWRが取り付けられている。このワイヤーWRは、図10(b)に示すように、後空間BS内を貫通し、2つのプーリーW1,W1を介して「コ」の字状に蛇行し、バランサー5に設けられたモータM1に取り付けられている。
【0092】
モータM1は、図4に示すモータ制御部MCの制御によって駆動し、障壁部R1を前後方向にスライドさせる。具体的には、図10に示すタンク部11が水平方向から時計回りへの揺動を開始すると、モータ制御部MCは前空間FS側の流量調整部100内の障壁部R1が水車ユニット9側に向けてスライドするようにモータM1の駆動を開始する。そして、モータ制御部MCは、タンク部11の時計回りへの振れ角が増大するにつれて、前空間FS側の流量調整部100内の障壁部R1が水車ユニット9側に向けて前進するようにモータM1を駆動する。
【0093】
そして、タンク部11の時計回りへの振れ角が最大になると、モータ制御部MCは、前空間FS側の流量調整部100内の障壁部R1の前進を停止させ、タンク部11が反時計回りへの揺動を開始し、タンク部11が水平方向に戻るまで、障壁部R1を後退させる。
【0094】
これにより、液体LQが、前空間FSから水車ユニット9を介して後空間BS内に一挙に侵入することが防止される。液体LQが、前空間FSから後空間BS内に一挙に侵入すると、後空間BS内で液体LQが対流し、水車7の回転速度を減少させる虞がある。そこで、タンク部11の振れ角が増大するにつれて、障壁部R1を水車ユニット9側に向けて前進させることで、障壁部R1は開口部100C1を通過しようとする液体LQの障壁として作用し、前空間FSから後空間BSに液体LQが一挙に流れることを防止することができる。これにより、水車7の回転速度の減少を抑制し、発電機10による発電量を増大させることができる。
【0095】
また、タンク部11が水平方向から反時計回りへの揺動を開始すると、タンク部11の振れ角が増大するにつれて、モータ制御部MCは、後空間BS側の流量調整部100内の障壁部R1を水車ユニット9側に前進させていく。そして、タンク部11の反時計回りへの振れ角が最大になると、モータ制御部MCは、後空間BS側の流量調整部100内の障壁部R1の前進を停止させる。一方、タンク部11が時計回りへの揺動を開始すると、モータ制御部MCは、タンク部11が水平方向に戻るまで障壁部R1を後退させる。
【0096】
これにより、後空間BSから前空間FSに液体LQが一挙に流れることを防止することができ、発電機10による発電量の低下を抑制することができる。
【0097】
モータ制御部MCは、タンク部11の揺動と同期して、以上の動作を繰り返し行い、液体LQの対流を抑制し、発電量の低下を抑制している。なお、タンク部21に設けられた流量調整部100内の障壁部R1もタンク部11に設けられた流量調整部100内の障壁部R1と同様に動作するため、詳細な説明は省略する。
【0098】
流量調整部100としては、図11に示すものに代えて、図12に示すものを採用してもよい。図12は、流量調整部100の別の一例を示した図であり、(a)は側面図、(b)は上面図を示し、(c)は(a)の開口部100C2側からの正面図を示している。なお、図12では、タンク部11の後空間BS側の流量調整部100を示している。
【0099】
図12(b)に示すように筐体100Cは、右側が膨らんでおり、障壁部R1の待避空間SP1となっている。障壁部R1は球状の部材により構成されている。筐体100Cの右側面には、一対の棒体WR1,WR2が左方向から筐体100Cの内部に向けて侵入可能に設けられている。棒体WR1,WR2にはそれぞれモータM2,M3(図略)が取り付けられている。このモータM2,M3は図4に示すモータ制御部MCの制御に従って動作する。
【0100】
図13は、図12に示す障壁部R1がスライドされる様子を示した図であり、(a)は障壁部R1が開口部100C1近傍に位置するときを示し、(b)は障壁部R1が待避空間SP1に位置するときを示している。
【0101】
タンク部11が水平方向に位置しているとき、障壁部R1は図13(b)に示すように待避空間SP1に位置している。また、棒体WR1,WR2は共に、先端が待避空間SP1に届く程度の位置まで筐体100C内部に侵入している。そして、タンク部11が水平方向から時計回りへの揺動を開始すると、タンク部11の振れ角が増大するにつれて、モータ制御部MCは、モータM2を駆動して、前空間FS側の流量調整部100の棒体WR1を右方向に漸次スライドさせていく。これにより、棒体WR1に支えられつつ障壁部R1は右方向に転がっていく一方、タンク部11の傾斜に伴う障壁部R1の前方向への移動は棒体WR2により規制されている。そして、棒体WR1の右方向へのスライド量が所定量になると、モータ制御部MCは、モータM3を駆動して、棒体WR2の右方向へのスライドを開始させる。このとき、モータ制御部MCは、引き続き、棒体WR1も右方向にスライドさせる。そして、タンク部11の時計回りへの振れ角が最大になると、棒体WR1,WR2は、図13(a)に示すように、先端が筐体100Cの右側の側壁に位置するようにスライドされている。これにより、障壁部R1は、一部が開口部100C1に嵌り込み、開口部100C1を遮蔽する。
【0102】
すなわち、障壁部R1は、タンク部11の振れ角が増大するにつれて、開口部100C1に近づいていき、タンク部11の振れ角が最大になると、開口部100C1を遮蔽する。これにより、障壁部R1は、前空間FSから後空間BSに侵入しようとする液体LQの障壁として作用する。よって、後空間BSに液体LQが一挙に侵入することが防止され、水車7の回転速度の減少が抑制され、発電機10の発電量を確保することができる。
【0103】
そして、タンク部11が反時計回りへの揺動を開始すると、モータ制御部MCは棒体WR1,WR2を左方向に向けてスライドさせ、障壁部R1を待避空間SP1に待避させる。
【0104】
一方、タンク部11が水平方向から反時計回りへの揺動を開始すると、後空間BS側の流量調整部100が前空間FS側の流量調整部100と同様に動作し、後空間BSから前空間FSに向けて液体が一挙に侵入することを防止する。なお、タンク部21に設けられた流量調整部100もタンク部11に設けられた流量調整部100と同様に動作するため、詳細な説明は省略する。
【0105】
このように、実施の形態2による水力発電装置によれば、流量調整部100を設けたため、前空間FSから後空間BSに向けて、或いは後空間BSから前空間FSに向けて液体LQが一挙に流れることを防止することができ、発電量の減少を抑制することができる。
【0106】
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態1又は実施の形態2による水力発電装置を複数設けて、水力発電システムを構成したことを特徴とする。図14は、実施の形態3による水力発電システムの全体構成を示すブロック図である。
【0107】
図14に示すように、水力発電システムは、N(Nは2以上の正の整数)台の水力発電装置A1〜ANと、バッテリーBATとを備えている。水力発電装置としては、実施の形態1,2のいずれかの水力発電装置を採用すればよい。バッテリーBATは、水力発電装置A1〜ANのそれぞれの発電機10と接続され、水力発電装置A1〜ANのそれぞれで発電された電力を蓄える。
【0108】
また、バッテリーBATは、水力発電装置A1〜ANのそれぞれに設けられたモータM,M1〜M3と接続されている。
【0109】
これにより、水力発電装置A1〜ANは、他の水力発電装置A1〜ANにより発電された電力を用いてモータM,M1〜M3を駆動させることが可能となる。これにより、水力発電装置A1〜ANの揺動をより長く持続させることができる。また、複数の水力発電装置A1〜ANを設けたため、より多くの電力を発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施の形態1による水力発電装置の前面からの外観構成図を示している。
【図2】図1に示す水力発電装置の側面からの外観構成図を示している。
【図3】図1に示す水力発電装置の内部構成を示した全体構成図である。
【図4】(a)はタンク部11の上面図を示し、(b)はタンク部11の側面図を示し、(c)はタンク部11の正面図を示している。
【図5】タンク部に液体が収容された状態を示した図である。
【図6】図1に示すギアを拡大して示した図である。
【図7】図3に示す水車ユニットを拡大して示した図である。
【図8】図7に示す水車の外観図を示している。
【図9】実施の形態2における水力発電装置の内部構成を示した全体構成図である。
【図10】タンク部の内部構成を示した図である。
【図11】流量調整部の詳細な構成を示した図である。
【図12】流量調整部の他の一例を示した図である。
【図13】図12に示す障壁部がスライドされる様子を示した図である。
【図14】実施の形態3による水力発電システムの全体構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0111】
1,2 揺動体
3,4 支持部
5,6 バランサー
9 水車ユニット
10 発電機
11,21 タンク部
14 揺動軸
15,25 ギア
7,71,72,73 水車
91,92 流路
100 流量調整部
811 流通口
821 流通口
BAT バッテリー
BS 後空間
CS 中央空間
FS 前空間
LD 長手方向
M モータ
MC モータ制御部
R1 障壁部
T 伝達部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する揺動体と、
前記揺動体がピッチ方向に揺動するように前記揺動体を支持する支持部と、
前記揺動体の内部に設けられ、前記揺動体が繰り返し揺動することで前記揺動体の長手方向を往復流動する液体からの圧力によって回転する水車と、
前記水車によって発電する発電機と、
前記発電機により発電された一部の電力により駆動され、前記揺動体のピッチ方向の振れ角が最大となったときに、前記揺動体に前記ピッチ方向への復元力を加えるモータと、
前記モータの復元力を前記揺動体に伝達する伝達部とを備えることを特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
前記揺動体は、第1及び第2の揺動体を備え、
前記第1の揺動体は、前記支持部により軸支される第1の揺動軸と、
前記第1の揺動軸に設けられた第1のギアとを備え、
前記第2の揺動体は、
前記支持部により軸支される第2の揺動軸と、
前記第2の揺動軸に設けられ、前記第1のギアに噛合された第2のギアとを備えることを特徴とする請求項1記載の水力発電装置。
【請求項3】
前記第1のギアと前記第2のギアとは歯数が異なることを特徴とする請求項2記載の水力発電装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の揺動体は、前記長手方向に直交し、下側に向けて延設されたバランサーをそれぞれ備えることを特徴とする請求項2又は3記載の水力発電装置。
【請求項5】
前記揺動体は、第1及び第2の仕切り板により前、中央、後の3つの空間に仕切られ、
前記第1の仕切り板は、前記前の空間の前記長手方向視の断面積が前記中央の空間に向けて小さくなるような楔形状を有し、前記楔形状の頂部に前記液体の流通口が形成され、
前記第2の仕切り板は、前記後の空間の前記長手方向視の断面積が前記中央の空間に向けて小さくなるような楔形状を有し、前記楔形状の頂部に前記液体の流通口が形成され、
前記水車は、前記前の空間と前記後の空間との間に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水力発電装置。
【請求項6】
前記前の空間と前記中央の空間との間、及び前記後の空間と前記中央の空間との間にそれぞれ設けられ、前記流通口を流れる液体の流量を調節するための流量調節部を更に備えることを特徴とする請求項5記載の水力発電装置。
【請求項7】
前記流量調節部は、
前記長手方向の両端に開口部が設けられた管状の筐体と、
前記筐体の内部において、前記揺動体の振れ角が増大するにつれて、前記中央の空間側の開口部に近づくようにスライド可能に設けられた障壁部とを備えることを特徴とする請求項6記載の水力発電装置。
【請求項8】
前記水車は、複数設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水力発電装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載された複数の水力発電装置と、
各水力発電装置により発電された電力を貯蔵するバッテリーとを備え、
各水力発電装置のモータは、前記バッテリーからの電力により駆動されることを特徴とする水力発電システム。
【請求項1】
液体を収容する揺動体と、
前記揺動体がピッチ方向に揺動するように前記揺動体を支持する支持部と、
前記揺動体の内部に設けられ、前記揺動体が繰り返し揺動することで前記揺動体の長手方向を往復流動する液体からの圧力によって回転する水車と、
前記水車によって発電する発電機と、
前記発電機により発電された一部の電力により駆動され、前記揺動体のピッチ方向の振れ角が最大となったときに、前記揺動体に前記ピッチ方向への復元力を加えるモータと、
前記モータの復元力を前記揺動体に伝達する伝達部とを備えることを特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
前記揺動体は、第1及び第2の揺動体を備え、
前記第1の揺動体は、前記支持部により軸支される第1の揺動軸と、
前記第1の揺動軸に設けられた第1のギアとを備え、
前記第2の揺動体は、
前記支持部により軸支される第2の揺動軸と、
前記第2の揺動軸に設けられ、前記第1のギアに噛合された第2のギアとを備えることを特徴とする請求項1記載の水力発電装置。
【請求項3】
前記第1のギアと前記第2のギアとは歯数が異なることを特徴とする請求項2記載の水力発電装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の揺動体は、前記長手方向に直交し、下側に向けて延設されたバランサーをそれぞれ備えることを特徴とする請求項2又は3記載の水力発電装置。
【請求項5】
前記揺動体は、第1及び第2の仕切り板により前、中央、後の3つの空間に仕切られ、
前記第1の仕切り板は、前記前の空間の前記長手方向視の断面積が前記中央の空間に向けて小さくなるような楔形状を有し、前記楔形状の頂部に前記液体の流通口が形成され、
前記第2の仕切り板は、前記後の空間の前記長手方向視の断面積が前記中央の空間に向けて小さくなるような楔形状を有し、前記楔形状の頂部に前記液体の流通口が形成され、
前記水車は、前記前の空間と前記後の空間との間に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水力発電装置。
【請求項6】
前記前の空間と前記中央の空間との間、及び前記後の空間と前記中央の空間との間にそれぞれ設けられ、前記流通口を流れる液体の流量を調節するための流量調節部を更に備えることを特徴とする請求項5記載の水力発電装置。
【請求項7】
前記流量調節部は、
前記長手方向の両端に開口部が設けられた管状の筐体と、
前記筐体の内部において、前記揺動体の振れ角が増大するにつれて、前記中央の空間側の開口部に近づくようにスライド可能に設けられた障壁部とを備えることを特徴とする請求項6記載の水力発電装置。
【請求項8】
前記水車は、複数設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水力発電装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載された複数の水力発電装置と、
各水力発電装置により発電された電力を貯蔵するバッテリーとを備え、
各水力発電装置のモータは、前記バッテリーからの電力により駆動されることを特徴とする水力発電システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−151097(P2010−151097A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332851(P2008−332851)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(302024191)株式会社マザーズ (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(302024191)株式会社マザーズ (4)
【Fターム(参考)】
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