説明

水加熱容器

【課題】フック部材の係脱操作を容易に行うことができながら、転倒したときに蓋体が開くのを防止し得る水加熱容器を提供する。
【解決手段】蓋体にフック部材8の前後進を摺動案内する案内面41が形成され、フック部材8の前後にわたって形成された被案内部8gが案内面41上に載置され、係合部25に係合したフック部材8の被案内部8gの前部及び後部が案内面41と当接した後退可能姿勢のまま後退移動したときには、当該フック部材8と不干渉となり当該後退移動を許容し、且つ、被案内部8gの後部が案内面41から離間した後退不可姿勢のまま後退移動したときには、フック部材8に干渉して当該後退移動を阻止する移動阻止部Sが蓋体に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部が開口し、内部に内容器を有する容器本体と、その容器本体の開口部を開閉自在な蓋体とを備え、前記蓋体を前記容器本体の開口部を閉じる閉じ位置に保持するフック部材が、前記容器本体の径方向に前後進可能で且つ付勢手段により前進方向に付勢された状態で、前記蓋体に設けられ、前記蓋体を前記閉じ位置に位置させたときに前記付勢手段の付勢力により前進する前記フック部材の前端部が係合する係合部が、前記容器本体に設けられた水加熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる水加熱容器は、蓋体を容器本体の開口部を閉じる閉じ位置に位置させて、フック部材を付勢手段の付勢力により前進させて係合部に係合させることにより、フック部材によって蓋体を容器本体の開口部を閉じる閉じ位置に保持するものである(例えば、特許文献1参照。)。
ちなみに、このような水加熱容器の具体例としては、例えば、電気ケトル、電気ポット、加湿器、炊飯器等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−212315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、使用者の不注意等により、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体を、容器本体の上部の開口部が上方を向く正常姿勢から横方向を向く転倒姿勢に転倒させる虞があるが、従来では、容器本体が転倒すると、蓋体が開いて容器本体から湯水が漏出する虞があり、改善が望まれていた。
例えば、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が、上記正常姿勢から転倒姿勢に転倒するときは、フック部材は、フック部材の後方側が先方になる状態で、概ね、容器本体の底部を中心とする弧を描くように動くことがあり、容器本体の側部がテーブル面等に当接した瞬間に、フック部材に対して、後方側(係合部から離脱する方向、即ち、容器本体の径方向において外径側から内径側)に動かそうとする慣性力が働く場合がある。
この場合、そのように働く慣性力により、フック部材が付勢手段の付勢力に抗して後退移動し係合部から離脱する虞があり、フック部材が係合部から離脱すると、蓋体が開く虞がある。
【0005】
そのため、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が転倒したときに、慣性力によりフック部材が後退移動するのを防止するために、付勢手段の付勢力を強くすることが想定される。
しかしながら、付勢手段の付勢力を強くすると、フック部材を係合部に係合させたり係合部から離脱させたりする使用者によるフック部材の係脱操作に大きな力が必要となり、使用者が当該係脱操作を行い難くなる。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フック部材の係脱操作を容易に行うことができながら、転倒したときに蓋体が開くのを防止し得る水加熱容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る水加熱容器は、上部が開口し、内部に内容器を有する容器本体と、その容器本体の開口部を開閉自在な蓋体とを備え、前記蓋体を前記容器本体の開口部を閉じる閉じ位置に保持するフック部材が、前記容器本体の径方向に前後進可能で且つ付勢手段により前進方向に付勢された状態で、前記蓋体に設けられ、前記蓋体を前記閉じ位置に位置させたときに前記付勢手段の付勢力により前進する前記フック部材の前端部が係合する係合部が、前記容器本体に設けられた水加熱容器であって、
その特徴構成は、前記蓋体に前記フック部材の前後進を摺動案内する案内面が形成され、前記フック部材の前後にわたって形成された被案内部が前記案内面上に載置され、
前記係合部に係合した前記フック部材の前記被案内部の前部及び後部が前記案内面と当接した後退可能姿勢のまま後退移動したときには、当該フック部材と不干渉となり当該後退移動を許容し、且つ、前記被案内部の後部が前記案内面から離間した後退不可姿勢のまま後退移動したときには、前記フック部材に干渉して当該後退移動を阻止する移動阻止部が前記蓋体に設けられている点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が、その開口部が上方を向く正常姿勢のときは、フック部材は、その前後にわたって形成された被案内部を介して案内面上に載置された状態であり、フック部材はその被案内部が案内面上を摺動する状態で前後進可能である。
そして、本願発明では、このようにフック部材を案内面上に載置状態とすることにより、フック部材の上方にクリアランスが形成されており、係合部に係合したフック部材を、その被案内部の前部及び後部が案内面と当接した後退可能姿勢と被案内部の少なくとも後部が案内面から離間した後退不可姿勢とに姿勢変更可能とすることができる。
そして、フック部材に対して、後退可能姿勢のままで後退移動させるように力が印加されると、移動阻止部はフック部材と不干渉であるので、フック部材の後退移動が許容される。一方、フック部材に対して、後退不可姿勢のままで後退移動させるように力が印加されると、移動阻止部がフック部材に干渉するので、後退移動が阻止される。
【0009】
説明を加えると、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が、テーブル面等に正常姿勢で設置された状態から、その開口部が横方向を向く転倒姿勢に転倒するときは、係合部に係合されたフック部材は、概ね、容器本体の底部を中心とする弧を描く状態でテーブル面等に対して下向きに動くので、容器本体の側部がテーブル面等に当接した瞬間にフック部材に対して働く慣性力は、フック部材の案内面に沿って当該フック部材の前後方向で、しかも、案内面上から離れる方向(容器本体の上方側)に動かすように作用する。
例えば、フック部材の後方側が先方になる状態で転倒する場合は、容器本体の側部がテーブル面等に当接した瞬間にフック部材に対して働く慣性力は、フック部材の案内面に沿って当該フック部材の後方側(係合部から離脱する方向)で、しかも、案内面上から離れる方向(容器本体の上方側)に動かすように作用する。
従って、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が正常姿勢のときは、係合部に係合したフック部材が後退可能姿勢となるようにすると、容器本体が転倒した場合、容器本体の側部がテーブル面等に当接した瞬間に、係合部に係合したフック部材の姿勢が慣性力により後退不可姿勢に自動的に変化する。
これにより、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が正常姿勢のときは、フック部材の姿勢は後退可能姿勢であるので、必要に応じて、フック部材を係合部から離脱させて、蓋体を開けることができる。
又、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が転倒すると、フック部材の姿勢が自動的に後退不可姿勢に変化して、移動阻止部によりフック部材の後退が阻止されるので、フック部材が係合部から離脱して蓋体が開くのを防止することができる。
加えて、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が転倒したときは、移動阻止部をフック部材に干渉させることにより、フック部材の後退移動が阻止されるので、フック部材の後退移動を阻止するために、付勢手段の付勢力を強くする必要がなく、フック部材の係脱操作が行い難くなるのを防止することができる。
よって、付勢手段による付勢力を弱くして、フック部材の係脱操作を容易に行うことができながら、転倒したときに蓋体が開くのを防止し得る水加熱容器を提供することができる。
【0010】
本発明に係る水加熱容器の更なる特徴構成は、前記蓋体に、前記フック部材の後端側部分の上方を覆う覆い部が設けられ、
前記移動阻止部が、前記覆い部における前記フック部材側の面である下面に、当該フック部材側に突出するように設けられた突起体にて構成され、
前記係合部に係合した前記フック部材が前記後退不可姿勢のまま後退移動したときは、前記フック部材の後部の上側部分が前記突起体に当接して後退移動が阻止されるように構成されている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が転倒した際に、係合部に係合したフック部材が後退不可姿勢となり、当該フック部材を後退不可姿勢のままで後退移動させるように慣性力が働いても、フック部材の後部の上側部分が突起体に当接して、フック部材の後退移動が阻止される。
従って、水加熱容器が転倒したときに蓋体が開くのをより一層的確に防止することができる。
【0012】
本発明に係る水加熱容器の更なる特徴構成は、前記案内面が、前記係合部に係合した前記フック部材の前記被案内部の前部に当接する部分が前記被案内部の後部に当接する部分よりも高くなる2段状に構成されている点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が正常姿勢のときは、係合部に係合したフック部材は、被案内部の前部が2段状の案内面の高段部に当接し且つ後部が2段状の案内面の低段部に当接する後下がり状の傾斜姿勢で、案内面上に載置されている。従って、フック部材が後退移動した場合であっても、フック部材は、後退可能姿勢で且つ後下がり状の傾斜姿勢であるので、フック部材が移動阻止部に当接することをより確実に防止することができる。
一方、容器本体が正常姿勢において、係合部に係合したフック部材が後下がり状の傾斜姿勢にある状態から、容器本体が転倒して転倒姿勢になると、その転倒姿勢では、2段状の案内面の高段部は、低段部よりも容器本体の上方側(容器本体が設置されるテーブル面等に沿う方向)に突出する状態となるので、係合部に係合したフック部材の後部が2段状の案内面の低段部から離間し易く、それによって、フック部材の姿勢を容易に後退不可姿勢に変化させることができる。
よって、水加熱容器が転倒したときに蓋体が開くのをより一層的確に防止することができる。
【0014】
本発明に係る水加熱容器の更なる特徴構成は、前記2段状の案内面における高段部と低段部との間が、高段部に近づくほど高くなる傾斜面に構成されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、フック部材の被案内部の前部が案内面の高段部から降りて低段部に当接する位置にまでフック部材が後退しても、フック部材が前進移動するときは、フック部材の被案内部の前部が案内面の低段部から傾斜面を摺動して高段部に乗り上げる形態で前進移動する。
従って、案内面を2段状にすることにより、容器本体が転倒した場合にはフック部材の姿勢が的確に後退不可姿勢に変化するようにしながら、容器本体が正常姿勢のときにはフック部材をスムーズに前進移動させることができる。
【0016】
本発明に係る水加熱容器の更なる特徴構成は、前記付勢手段が、前記フック部材を前進する方向に付勢すると共に、前記フック部材の前記被案内部の後部を前記案内面から離間する方向に付勢するように構成されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、付勢手段により、フック部材の被案内部の後部が案内面から離間する方向に付勢される、つまり、フック部材が後退不可姿勢に復帰するように付勢されているので、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が転倒したときには、フック部材の姿勢は確実に後退不可姿勢になっている。
又、フック部材に対して、フック部材の被案内部の後部を付勢手段の付勢力に抗して案内面に近付けるように力を加えると、フック部材の姿勢を後退可能姿勢に変更できることは勿論である。
従って、水加熱容器が転倒したときに蓋体が開くのをより一層的確に防止することができる。
【0018】
本発明に係る水加熱容器の更なる特徴構成は、前記フック部材が、その前後方向に延びる本体部と、その本体部の後端から前記フック部材の上下方向の上側に延びる操作部とを備えて構成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が正常姿勢の状態で、フック部材の操作部の上端部に対して、フック部材を後退させるように力を加えると、その力は、フック部材の被案内部の後部を付勢手段の付勢力に抗して案内面に近付けるようにも作用するので、フック部材の姿勢を容易に後退可能姿勢に変更することができる。
従って、水加熱容器が転倒したときにはフック部材の姿勢が確実に後退不可姿勢になるようにしながら、容器本体が正常姿勢のときにはフック部材の姿勢を容易に後退可能姿勢に変更することができる。
【0020】
本発明に係る水加熱容器の更なる特徴構成は、前記蓋体が前記容器本体から取り外し自在であり、
前記フック部材が、前記蓋体の中心に対して反対側に振り分けられた状態で一対設けられている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、蓋体が容器本体から取り外し自在であるので、蓋体と容器本体とを分離して、それらの洗浄を容易に行うことができる。
しかも、フック部材が蓋体の中心に対して反対側に振り分けられた状態で一対設けられているので、それら一対のフック部材により、蓋体を閉じ位置にて容器本体に確実に保持することができる。
従って、容器本体への蓋体の保持を確実なものとしながら、蓋体及び容器本体の洗浄の容易化を図ることができる。
【0022】
本発明に係る水加熱容器の更なる特徴構成は、前記容器本体における上部の開口部が上方を向く正常姿勢から横方向を向く転倒姿勢となる平面上での転倒において、
前記付勢手段の付勢力が、前記フック部材が前記後退可能姿勢から後退不可姿勢となる付勢力に設定されている点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、平面上において、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が転倒すると、容器本体の側部が平面に当接した瞬間に、フック部材を前進方向に付勢する付勢手段の付勢力に妨げられることなく、フック部材の姿勢が慣性力により後退可能姿勢から後退不可姿勢に的確に変化する。
つまり、付勢手段による付勢力が強くなると、フック部材により蓋体が閉じ位置に保持された容器本体が転倒したときに、フック部材の姿勢が後退可能姿勢から後退不可姿勢に変化し難くなるが、付勢手段による付勢力を弱くすることにより、容器本体が転倒したときのフック部材の後退可能姿勢から後退不可姿勢への姿勢変化を的確なものとすることができる。
しかも、付勢手段による付勢力を弱くすることは、フック部材の係脱操作を容易化するのにも寄与する。
従って、フック部材の係脱操作を容易に行うことができながら、水加熱容器が転倒したときに蓋体が開くのをより一層的確に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】電気ケトルの外観を示す斜視図
【図2】ケトル本体が電源プレートから持ち上げられた状態での電気ケトルの斜視図
【図3】電気ケトルの縦断側面図
【図4】ケトル本体が電源プレートから持ち上げられた状態での電気ケトルの下部の縦断側面図
【図5】蓋体を容器本体から分離した状態でのケトル本体の斜視図
【図6】蓋カバーを省略した状態でのケトル本体の斜視図
【図7】蓋カバーを設けた状態での図6のVII−VII矢視図
【図8】図7の状態から操作部を押し下げて電気ケトルを傾けた状態を示す図
【図9】蓋カバーを設けた状態での図6のIX−IX矢視図
【図10】フック部材の支持構成を説明する要部の分解斜視図
【図11】フック部材が係合状態にある状態を説明する図
【図12】フック部材が係合状態と開放状態との間の位置にある状態を説明する図
【図13】フック部材が開放状態にある状態を説明する図
【図14】フック部材が半掛かり状態にある状態を説明する図
【図15】フック部材がフリー状態にある状態を説明する図
【図16】電気ケトルが転倒した状態を示す図
【図17】電気ケトルが転倒した状態でのフック部材の状態を説明する図
【図18】別実施形態に係るフック部材が係合状態にある状態を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明を水加熱容器の一例としての電気ケトルに適用した場合の実施形態を説明する。
図1〜図3に示すように、電気ケトルは、電源プレートPとその電源プレートPに載置自在なケトル本体Kとを備えて構成されている。
ケトル本体Kの内部には、湯水を貯留する内容器1が設けられ、ケトル本体Kの外周部には、ケトル本体Kを持ち上げるための把手2が設けられ、並びに、ケトル本体Kの外周部の上部側には、内容器1内の湯水を注ぐ注ぎ口3が設けられている。把手2及び注ぎ口3は、ケトル本体Kの上部の中心に対して互いに反対側に振り分けて設けられている。
図5にも示すように、ケトル本体Kは、内部に内容器1を有して上部が開口した概ね有底円筒状の容器本体100と、その容器本体100の開口部を開閉自在な概ね円盤状の蓋体200とを備えて構成されている。そして、蓋体200は、容器本体100の開口部に対して着脱自在で、その開口部に嵌めこまれた状態で容器本体100に装着されることにより、その開口部を閉じるように構成されている。
【0026】
図3及び図4に示すように、ケトル本体Kには、内容器1内の湯水を加熱する電気ヒータ4が備えられ、外部から供給される電力を電気ヒータ4に供給する受電機構5が底面の中央部に位置する状態で備えられ、並びに、図1及び図2に示すように、操作盤6が側周面の下部に位置する状態で備えられている。ちなみに、図示を省略するが、操作盤6には、電気ヒータ4への通電の開始及び停止を指令する運転スイッチ等が備えられている。
図2〜図4に示すように、電源プレートPには、電源コード(図示省略)を通して供給される電力を外部に出力する給電機構7が上面の中央部に位置する状態で備えられている。
そして、ケトル本体Kを電源プレートPに載置した給電姿勢において、受電機構5と給電機構7とが導通状態に接続されて、給電機構7から受電機構5を介して電気ヒータ4に給電されて、内容器1内の湯水が加熱されるように構成されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、ケトル本体Kの蓋体200には、蓋体200を容器本体100の開口部を閉じる閉じ位置に保持する一対のフック部材8、注ぎ口3からの内容器1内の湯水の流出を許容するか否かに切り換えるための弁操作具9、及び、内容器1で発生する蒸気を放出するための蒸気口10等が設けられている。
【0028】
次に、電気ケトルの各部について説明を加える。
図3に示すように、容器本体100は、概ね、有底円筒状の外郭部材11の口縁部に口縁部材12を嵌め込むと共に、その口縁部材12に有底円筒状の内容器1を吊り下げ支持して構成され、更に、中空状の把手2が口縁部材12と外郭部材11とに跨って取り付けられている。
図3及び図4に示すように、電気ヒータ4は、内容器1の底面に当接する状態で設けられている。
外郭部材11の底部の中心部には、その底面から引っ込んだ状態で、給電機構7を嵌め込むことが可能な円状の給電機構嵌め込み用凹部13が設けられ、その給電機構嵌め込み用凹部13内に受電機構5が設けられている。
図2〜図4に示すように、給電機構7は、外観形状が概略円柱状に構成されて、電源プレートPの上面の中央にその上面から突出するように設けられている。
そして、ケトル本体Kが電源プレートP上に給電姿勢で載置されると、給電機構7がケトル本体K底部の給電機構嵌め込み用凹部13内に嵌まり込んで、給電機構7と受電機構5の互いの電極が電気的に接続されて給電が可能となる。
【0029】
図3、図7及び図8に示すように、口縁部材12における把手2の上端部の取付部には、蓋体200に設けられた蒸気検知用通路22(詳細は後述する)を通して内容器1から導かれる蒸気を検知する蒸気検知センサ14が設けられている。
図示を省略するが、外郭部材11の底部と内容器1の底部との間の空間には、制御部が設けられている。この制御部は、操作盤6からの指令や蒸気検知センサ14の検出情報に基づく電気ヒータ4への通電の制御等を行うように構成されている。
【0030】
図3、図5、図7及び図9に示すように、蓋体200は、蓋本体部材15、その蓋本体部材15の上方の蓋カバー16、蓋本体部材15の下方に配置された内蓋板17、及び、その内蓋板17の外周部に配置されたシール材18等を一体的に組み付けて構成されている。
容器本体100の口縁部材12には、注ぎ口3の下方部分を構成する溝状部12mが形成され、蓋体200の蓋本体部材15には、注ぎ口3の上方部分を構成する庇部15eが設けられている。
そして、口縁部材12の溝状部12mの上方を蓋本体部材15の庇部15eが覆う状態となる蓋体装着用の相対位置関係で、蓋体200を容器本体100の開口部に装着すると、口縁部材12の溝状部12mと蓋本体部材15の庇部15eにより、筒状の注ぎ口3が形成されることになる。
【0031】
図7及び図8に示すように、内蓋板17には複数の孔17hが形成され、蓋体200における蓋本体部材15と内蓋板17との間には、内蓋板17に形成された複数の孔17hを通して容器本体100の内容器1に連通する容器連通空間19が形成されている。
そして、蓋本体部材15には、基端が容器連通空間19に臨み且つ先端が注ぎ口3内に延びる注ぎ用通路20、及び、基端が容器連通空間19に臨み且つ先端が蓋体200の上面部にまで延びる蒸気放出用通路21が形成され、その蒸気放出用通路21の先端開口部が蒸気口10として機能する。
又、図7及び図8に示すように、蓋本体部材15には、蒸気放出用通路21から分岐する蒸気検知用通路22が形成され、図5にも示すように、その蒸気検知用通路22は、その先端が、蓋体200が容器本体100に装着された状態で、蓋本体部材15の側周部において口縁部材12における把手2の取付部に対向する箇所に開口するように形成されている。
【0032】
詳細な図示を省略するが、図3、図7及び図8に示すように、蒸気放出用通路21における蒸気検知用通路22の分岐箇所よりも上流側の部分には、電気ケトルが転倒すると蒸気放出用通路21を閉じるように移動すべく、2個の錘体23が設けられている。
従って、電気ケトルが転倒しても、2個の錘体23が蒸気放出用通路21を閉じるように移動するので、内容器1内の湯水が蒸気口10や蒸気検知用通路22の先端開口から漏出するのが防止される。
【0033】
蒸気検知センサ14は、蓋体200が容器本体100に装着された状態で、蓋体200の蒸気検知用通路22の先端開口部に臨むように、口縁部材12に取り付けられている。
電気ヒータ4の加熱により内容器1内の水が沸騰して蒸気が発生すると、その蒸気が蒸気放出用通路21を通して蒸気口10に導かれてその蒸気口10から放出されると共に、蒸気放出用通路21及び蒸気検知用通路22により蒸気検知センサ14に導かれる。
そして、制御部は、蒸気検知センサ14が蒸気を感知すると、電気ヒータ4への通電を遮断するように構成されている。
【0034】
図5、図6及び図9に示すように、一対のフック部材8は、蓋体200の中心に対して反対側に振り分けられた状態で設けられ、各フック部材8は、容器本体100の径方向に前後進自在で且つコイルバネ24により前進方向(蓋体200の径方向外方側)に付勢された状態で、蓋本体部材15に設けられている。
又、容器本体100の口縁部材12には、蓋体200を閉じ位置に位置させたときにコイルバネ24の付勢力により前進するフック部材8夫々の前端部8Afが嵌まり込んで係合する係合部25が一対設けられている。
【0035】
そして、図9、図11及び図17に示すように、本発明では、蓋体200の蓋本体部材15に、フック部材8の前後進を摺動案内する案内面41が形成され、フック部材8の下部に前後にわたって形成された被案内部8gが案内面41上に載置されている。尚、図11において、(a)は、蓋体200の上面の要部を示し、(b)は、(a)のXIb−XIb矢視図である。又、図17において、(a)は、蓋体200の上面の要部を示し、(b)は、(a)のXVIIb−XVIIb矢視図である。
そして、係合部25に係合したフック部材8の被案内部8gの前端(前部に相当する)及び後端(後部に相当する)が案内面41と当接した後退可能姿勢(図9及び図11参照)のまま後退移動したときには、当該フック部材8と不干渉となり当該後退移動を許容し、且つ、被案内部8gの後端が案内面41から離間した後退不可姿勢(図17参照)のまま後退移動したときには、フック部材8に干渉して当該後退移動を阻止する移動阻止部Sが蓋体200に設けられている。
【0036】
この実施形態では、一対のフック部材8により蓋体200が閉じ位置に保持された容器本体100が、その容器本体100の開口部が上方を向く正常姿勢のときは、フック部材8の姿勢が後退可能姿勢(図9及び図11参照)となり、一対のフック部材8により蓋体200が閉じ位置に保持された容器本体100が、その容器本体100の開口部が横方向を向く転倒姿勢に転倒すると、容器本体100の側部がテーブル面等に当接した瞬間にフック部材8に対して働く慣性力により、フック部材8の姿勢が後退不可姿勢(図17参照)に変化するように構成されている。
【0037】
そして、容器本体100における上部の開口部が上方を向く正常姿勢から横方向を向く転倒姿勢となる平面上(例えば、テーブル面上)での転倒において、コイルバネ24(付勢手段)の付勢力が、フック部材8が後退可能姿勢から後退不可姿勢となる付勢力に設定されている。
つまり、一対のフック部材8により蓋体200が閉じ位置に保持された容器本体100が転倒すると、容器本体100の側部が平面に当接した瞬間に、フック部材8に対して、フック部材8の案内面41に沿って当該フック部材8の前後方向で、しかも、案内面41上から離れる方向(容器本体100の上方側)に動かすように慣性力が働くが、コイルバネ24の付勢力は、フック部材8の姿勢が慣性力により後退可能姿勢から後退不可姿勢に変化するのを妨げないような力に設定されている。
【0038】
ここで、フック部材8の前後方向とは、フック部材8の前後進方向に沿う方向(図11においては図面上で横方向に相当し、図17においては図面上で上下方向に相当する)であり、フック部材8の上下方向とは、フック部材8の前後方向に直交する方向(図11の(b)においては図面上で上下方向に相当し、図17の(b)においては図面上で横方向に相当する)である。
【0039】
フック部材8及び係合部25について、更に説明を加える。
図5及び図9に示すように、各フック部材8の前端側の下面(以下、前端側下面と記載する場合がある)8sが、後方側ほど上面から遠ざかる形態の後ろ下がり傾斜状に構成されている。
各係合部25は、各フック部材8の後下がり傾斜状の前端側下面8sが容器本体100に当接した状態から、蓋体200が下向きに移動されて閉じ位置に位置されるに伴って、各フック部材8の前端部8Afが嵌まり込むように構成されている。
【0040】
図5、図9及び図10に示すように、各フック部材8は、夫々の前後方向に延びる本体部としての嵌め込み用辺部8Aと、その嵌め込み用辺部8Aの後端からフック部材8の上下方向の上側に延びる操作部としての操作用辺部8Bを備えて、側面視形状が概ねL字状に構成されている。
そして、一対のフック部材8の夫々は、嵌め込み用辺部8Aの前端部8Afが蓋体200の径方向外方を向き、その嵌め込み用辺部8Aの前端部8Afが蓋本体部材15の側周面から突出する状態で、コイルバネ24により蓋体200の径方向外方に向けて付勢されて蓋本体部材15に設けられている。
【0041】
図5及び図10に示すように、各フック部材8の嵌め込み用辺部8Aの前端部8Afは、最前端8tよりも後退した後退部8rを有する形状に構成され、その後退部8rが、嵌め込み用辺部8Aの幅方向両側に振り分けて一対設けられている。
又、図10及び図11に示すように、フック部材8の嵌め込み用辺部8Aの底部における後方側部分の両側縁夫々には、その後方側部分の前後方向の略全長にわたって直線状に延び且つ底部側に突出するように突条部8bが設けられ、これら一対の突条部8bを被案内部8gとして機能させるように構成されている。
【0042】
図10及び図11に示すように、蓋本体部材15の上面部には、各フック部材8を載置状態で嵌め込み可能な凹部40が設けられ、その凹部40における幅方向(フック部材8の幅方向に相当する)の両端部夫々に、突条部8bを摺動案内する前記案内面41が、凹部40の底面よりも高くなる状態で、凹部40の前後方向(フック部材8の前後方向に相当する)に延びるように設けられている。
又、案内面41において、係合部25に係合したフック部材8の突条部8bにおける前端に当接する部分は、突条部8bにおける後端に当接する部分である低段部41dよりも高い高段部41hとされて、案内面41が、低段部41dと高段部41hとを備えた2段状に構成されている。
更に、2段状の案内面41における高段部41hと低段部41dとの間が、前後方向の前方側に高段部41hに近づくほど高くなる傾斜面41sに構成されている。
【0043】
図9及び図11に示すように、フック部材8の嵌め込み用辺部8Aの後部には、バネ受け用突部8uが後方に向けて突出するように設けられ、蓋本体部材15の凹部40の後方側の内周面には、バネ受け用突部42が前方に向けて突出するように設けられている。
そして、コイルバネ24がその両端がそれぞれフック部材8のバネ受け用突部8u、蓋本体部材15のバネ受け用突部42に嵌め込まれた状態で圧縮状態で設けられて、そのコイルバネ24によりフック部材8が前進方向に付勢されている。
【0044】
図5、図9及び図11に示すように、前記の各係合部25は、容器本体100の口縁部材12に、蓋体200の径方向外方側の端部、即ち、外径側の底部が閉じられた横向きの有底孔状に形成され、各係合部25の上縁部には、口縁部材12の内方側に突出する形態で庇26が設けられている。この庇26の上面26sは、先端側(フック部材8の後方側に相当する)ほど下方に位置する形態(以下、前下がり状と記載する場合がある)の傾斜状に形成されている。
【0045】
図5に示すように、口縁部材12には、フック部材8の嵌め込み用辺部8Aの前端部8Afが係合部25に嵌まり込んだ状態で、フック部材8の前端部8Afにおける後退部8rのみを当接させてフック部材8の前進を阻止する前進阻止受け部36が、各フック部材8の夫々に対応して設けられている。
この前進阻止受け部36は、各フック部材8の一対の後退部8rに対応して、フック部材8毎に一対ずつ設けられている。
つまり、フック部材8の嵌め込み用辺部8Aの前端部8Afが係合部25に嵌まり込んだ(係合された)状態では、その前端部8Afの上面部に係合部25の内周面の上方部分が当接して被さる状態となり、蓋体200が容器本体100の開口部を閉じる閉じ位置に保持されることになる。
【0046】
図5、図7及び図9に示すように、蓋体200の蓋カバー16には、一対のフック部材8夫々を移動操作するための一対のフック操作用開口32に加えて、詳細は後述するが、弁操作具9(具体的には力点側てこ部材91)の把手側の部分を突出させるためのてこ操作用開口33、及び、蓋本体部材15の蒸気口10を臨ませるための蒸気口用開口34が形成されている。ちなみに、各フック部材8は、蓋カバー16の色とは異なる色に着色されている。
又、蓋カバー16の蒸気口用開口34には、複数のスリットが形成された蒸気口キャップ35が嵌め込まれている。
【0047】
図11にも示すように、各フック部材8は、嵌め込み用辺部8Aの上面における蓋体200の径方向外方側の部分、及び、操作用辺部8Bの上面における蓋体200の径方向内方側の部分(フック部材8の後端側部分に相当する)が蓋カバー16に覆われた状態で、フック操作用開口32から外部に臨むように設けられている。つまり、蓋カバー16は、フック部材8の後端側部分の上方を覆う覆い部に相当する。
そして、各係合部25に係合した各フック部材8が蓋カバー16に覆われた状態では、図9及び図11に示すように、フック部材8の操作用辺部8Bの上面と蓋カバー16の裏面との間には隙間が設けられて、各フック部材8が、後退不可姿勢(図17参照)と後退可能姿勢(図9及び図11参照)とに姿勢変更可能なように構成されている。
【0048】
図10、図11及び図17に示すように、この蓋カバー16の裏面(フック部材8側の面、即ち下面に相当する)には、フック部材8の幅方向に相当する方向に振り分けて、フック部材8側に突出するように一対の突起体16pが設けられ、これら一対の突起体16pにより移動阻止部Sが構成されている。
そして、図17に示すように、係合部25に係合したフック部材8が後退不可姿勢のままで後退移動したときは、フック部材8の後端縁(後部に相当する)の上側部分8eが一対の突起体16pに当接して後退移動が阻止されるように構成されている。又、図11に示すように、係合部25に係合したフック部材8が後退可能姿勢のまま後退移動したときは、フック部材8の後端縁の上側部分8eが一対の突起体16p夫々に当接しなくなって、フック部材8の後退移動が許容されるように構成されている。ここで、フック部材8の後端縁の上側部分8eとは、フック部材8の後端縁のうちの、フック部材8の上端で横幅方向に延びる縁部を示し、この実施形態では、一対の突起体16pは、夫々、フック部材8の後端縁の上側部分8eの横幅方向両端夫々に当接するように設けられている。
【0049】
図9及び図11に示すように、蓋体200が正常姿勢の容器本体100に対して閉じ位置に保持されて、フック部材8が係合部25に嵌め込まれた状態(即ち、係合された状態であり、以下、係合状態と称する場合がある)では、フック部材8の前端部8Afの後退部8rが前進阻止受け部36に受け止められ、フック部材8が蓋体200を閉じ位置に保持するための保持位置に保持されることになる。
そして、一対のフック部材8により蓋体200が閉じ位置に保持された容器本体100が正常姿勢のときは、係合部25に係合したフック部材8は、その突条部8bの前端が案内面41の高段部41hに当接し、且つ、突条部8bの後端が案内面41の低段部41dに当接する状態となって、後退可能姿勢で、しかも、後下がり状の傾斜姿勢となる。
【0050】
図16及び図17に示すように、一対のフック部材8により蓋体200が閉じ位置に保持された容器本体100が、テーブル面等に正常姿勢で設置された状態から、その容器本体100の開口部が横方向を向く転倒姿勢に転倒するときは、係合部25に係合されたフック部材8は、概ね、容器本体100の底部を中心とする弧を描く状態でテーブル面等に対して下向きに動くので、容器本体100の側部がテーブル面等に当接した瞬間にフック部材8に対して働く慣性力は、フック部材8の案内面41に沿って当該フック部材8の前後方向で、しかも、案内面41上から離れる方向(容器本体100の上方側)に動かすように作用する。
【0051】
例えば、一対のフック部材8により蓋体200が閉じ位置に保持された容器本体100が、一対のフック部材8のうちのいずれか一方のフック部材8の後方側が先方となる状態で転倒姿勢に転倒する場合に、フック部材8の後方側が先方になる(転倒姿勢において、フック部材8の前端がテーブル面等とは反対側(上側)を向く)フック部材8に対して働く慣性力は、フック部材8の案内面41に沿って当該フック部材8の後方側(係合部25から離脱する方向)で、しかも、案内面41上から離れる方向に動かすように作用し、一方、フック部材8の前方側が先方になる(転倒姿勢において、フック部材8の前端がテーブル面等の側(下側)を向く)フック部材8に対して働く慣性力は、フック部材8の案内面41に沿って当該フック部材8の前方側(係合部25に係合する方向)で、しかも、案内面41上から離れる方向に動かすように作用する。
従って、一対のフック部材8により蓋体200が閉じ位置に保持された容器本体100が転倒した場合、容器本体100の側部がテーブル面等に当接した瞬間に、一対のフック部材8はいずれも、突条部8bの前端及び後端が案内面41の低段部41dから離間する後退不可姿勢に姿勢が変化する。
【0052】
ここで、容器本体10の開口部が横方向を向く転倒姿勢とは、図16に示すように、フック部材8の前端が鉛直方向で上を向く形態に限定されるものではなく、フック部材8の前端が鉛直方向に交差する方向で上を向く斜め上向きの形態も含むものである。
【0053】
図13に示すように、フック部材8がその移動可能範囲における蓋体200の中央側の端部に移動されると、フック部材8の全体が係合部25の外部に位置する状態(以下、開放状態と称する場合がある)となり、フック部材8が蓋体200の保持を開放するための開放位置に位置することになる。尚、図13において、(a)は、蓋体200の上面の要部を示し、(b)は、(a)のXIIIb−XIIIb矢視図である。
このようにフック部材8が開放位置に位置する状態では、突条部8bがその全長にわたって案内面41の傾斜面41sよりも後方側に位置して、突条部8bがその全長にわたって低段部41dに当接する状態となっている。
【0054】
又、図14に示すように、蓋体200が容器本体100に対して閉じ位置に保持されずに、フック部材8の最前端8tが庇26の先端に引っ掛かって釣合っている状態(以下、半掛かり状態と称する場合がある)では、フック部材8は蓋体200の径方向において係合状態のときと開放状態のときとの中間に位置することになる。尚、図14において、(a)は、蓋体200の上面の要部を示し、(b)は、(a)のXIVb−XIVb矢視図である。
又、図15に示すように、蓋体200が容器本体100に対して閉じ位置よりも上方に位置して、フック部材8が係合部25に嵌め込まれていない状態では、フック部材8はフック操作用開口32における蓋体200の径方向外方側の口縁部にて受け止められて前進が阻止される状態(以下、フリー状態と称する場合がある)となっている。尚、図15において、(a)は、蓋体200の上面の要部を示し、(b)は、(a)のXVb−XVb矢視図である。
【0055】
図11及び図15に示すように、フック部材8の操作用辺部8Bの上面部には、フック部材8が係合状態にあるときには蓋カバー16に覆われ且つフック部材8がフリー状態にあるときは露出する位置に位置させて、フリー状態表示シート37が貼着されている。
又、図11、図13及び図14に示すように、フック部材8の嵌め込み用辺部8Aの上面部には、フック部材8が係合状態にあるときには蓋カバー16に覆われ且つフック部材8が半掛かり状態及び開放状態にあるときは露出する位置に位置させて、半掛かり状態表示シート38が貼着されている。
【0056】
図3、図7及び図8に示すように、蓋体200内には、弁体27の上下動により注ぎ口3からの内容器1内の湯水の流出を許容する開き状態と阻止する閉じ状態とに切り換え自在な弁機構Vが設けられている。
更に、蓋体200には、弁体27を上下動させて弁機構Vを開き状態と閉じ状態とに切り換える弁操作具9が、弁体27を開き状態とする開き操作位置と弁体27を閉じ状態とする閉じ操作位置とに移動自在な状態で設けられている。
【0057】
図7及び図8に示すように、弁機構Vは、蓋本体部材15により形成される弁ケース28と、その弁ケース28に上下動自在に保持された弁体27と、その弁体27を上方側に付勢することにより弁座29に押し付けるコイルバネ30等を備えて構成されている。
つまり、図7に示すように、弁体27を下方側に押し下げる力が作用しない状態では、コイルバネ30の付勢力により弁体27が弁座29に押し付けられる状態に保持されることになり、弁機構Vが注ぎ用通路20を閉じる閉じ状態に保持されることになる。
【0058】
図6〜図8に示すように、弁操作具9は、端部同士が連結された作用点側てこ部材92と力点側てこ部材91とを備えて構成されている。
これら連結状態の作用点側てこ部材92及び力点側てこ部材91は、作用点側てこ部材92における連結されていない方の端部を作用点9wとして弁体27の上方に位置させ、且つ、力点側てこ部材91における連結されていない方の端部を操作部9hとして把手2の上方に位置させた状態で、長手方向を注ぎ口3、蒸気口10及び把手2の並び方向に沿わせて、蓋体200に設けられている。
【0059】
作用点側てこ部材92は、長手方向の中間を支点P2として水平方向の軸心周りに揺動自在に設けられ、力点側てこ部材91は、長手方向の中間を支点P1として水平方向の軸心周りに揺動自在に設けられている。
更に、作用点側てこ部材92をその力点側てこ部材91に連結される端部である力点が下方に移動する方向に揺動させる、即ち、力点側てこ部材91をその力点に相当する操作部9hが上方に移動する方向に揺動させるように付勢するバネ部材31が設けられている。
尚、力点側てこ部材91及び作用点側てこ部材92夫々の互いに連結される端部側の部分が二股状に構成されて、力点側てこ部材91の二股状の部分と作用点側てこ部材92の二股状の部分とが、蒸気口10の両側部を囲む状態で連結されている。
【0060】
つまり、図7及び図8に示すように、力点側てこ部材91における作用点側てこ部材92に連結される側とは反対側の端部の操作部9hが上下移動されることにより、力点側てこ部材91が上下方向に揺動されると、その上下方向の揺動に連動して、作用点側てこ部材92が上下方向に揺動する構成となっている。
そして、図8に示すように、バネ部材31の付勢力に抗して力点側てこ部材91の把手側の端部の操作部9hを押し下げると、その弁機構側の端部が上昇し、それに伴って、その端部に連結された作用点側てこ部材92の把手側の端部の力点が上昇して、弁機構側の端部の作用点9wが下降し、弁体27がコイルバネ30の付勢力に抗して押し下げられることになり、弁機構Vが注ぎ用通路20を開く開き状態に切り換えられる。
【0061】
次に、蓋体200を容器本体100に装着したり容器本体100から取り外すときの手順について、説明を加える。
蓋体200を容器本体100に装着するときは、蓋体200を蓋体装着用の相対位置関係で正常姿勢の容器本体100の開口部に載置する。すると、図15の(b)に示すように、一対のフック部材8夫々の前端部8Afにおける後下がり傾斜状の前端側下面8sが一対の係合部25夫々の庇26における前下がり傾斜状の上面26sと略平行状態となってその上面26sに当接する状態となる。
その状態で、蓋体200を下方に押し下げると、一対のフック部材8夫々が、一対の係合部25夫々の庇26における前下がり傾斜状の上面26sの案内によりコイルバネ24の付勢力に抗して後退させられることになる。
更に蓋体200を下方に押し下げると、図11に示すように、一対のフック部材8が庇26を乗り越えて、コイルバネ24の付勢力により前進して一対の係合部25夫々に嵌まり込んで係合され、蓋体200が閉じ位置で容器本体100に保持される。
このように、一対のフック部材8により蓋体200が閉じ位置に保持された容器本体100が正常姿勢のときは、図11に示すように、一対のフック部材8夫々が後退可能姿勢で且つ後下がり状の傾斜姿勢となっているので、一対のフック部材8夫々を一対の突起体16pに当接することなく確実に後退移動させることが可能である。
【0062】
蓋体200を容器本体100から取り外すときは、図11に示すように、夫々係合部25に係合されている一対のフック部材8に対して互いに近接させる方向に力を加える。すると、図12に示すように、一対のフック部材8夫々を、夫々の操作用辺部8Bが蓋カバー16の裏面の突起体16pの下方を通る状態で後退移動させて、図13に示すように、開放位置に位置させることができるので、そのまま蓋体200を持ち上げると、蓋体200を容器本体100から取り外すことができる。尚、図12において、(a)は、蓋体200の上面の要部を示し、(b)は、(a)のXIIb−XIIb矢視図である。
【0063】
一対のフック部材8夫々を開放位置に位置させた状態で、一対のフック部材8夫々に対して後退させるように印加している力を解放すると、一対のフック部材8夫々がコイルバネ24の付勢力により前進移動してフリー状態に戻る。
図13に示すように、一対のフック部材8夫々が開放位置に位置する状態では、各フック部材8の突条部8bがその全長にわたって案内面41の低段部41dに当接する状態となっているが、案内面41の低段部41dと高段部41hとの間が傾斜面41sになっているので、各フック部材8が前進移動する際には、その突条部8bの前端が案内面41の低段部41dから傾斜面41sを摺動して高段部41hに乗り上げることになり、各フック部材8をスムーズに前進移動させることができる。
【0064】
図16に示すように、一対のフック部材8により蓋体200が閉じ位置に保持された容器本体100が転倒姿勢に転倒すると、転倒姿勢において上側に位置するフック部材8(前端がテーブル面等とは反対側(上側)を向くフック部材8)は、上述したように慣性力により後退不可姿勢に姿勢が変化するので、そのフック部材8に対して後方側に動かそうとする慣性力が働いても、フック部材8の後端縁の上側部分8eが蓋カバー16の裏面の一対の突起部16pに当たって、フック部材8の後退が阻止されることになり、フック部材8が係合部25から離脱することがない。
又、容器本体100が転倒姿勢に転倒したときに、転倒姿勢において下側に位置するフック部材8(フック部材8の前端がテーブル面等の側(下側)を向くフック部材8)も、慣性力により同様に後退不可姿勢に姿勢が変化し、しかも、そのフック部材8に対しては前方側(係合部25に係合する方向)に動かそうとする慣性力が働くので、そのフック部材8も係合部25から離脱することがない。
従って、一対のフック部材8により蓋体200が閉じ位置に保持された容器本体100が転倒しても、蓋体200が容器本体100から外れるのが防止されるので、容器本体100から湯水が漏出するのを防止することができる。
【0065】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(A) 上記の実施形態では、容器本体100が正常姿勢のときは後退可能姿勢になるように、フック部材8を設けたが、フック部材8を後退不可姿勢に復帰付勢することにより、容器本体100が正常姿勢のときは後退不可姿勢になるように、フック部材8を設けても良い。
この場合、図18に示すように、コイルバネ24を、フック部材8を前進方向に付勢すると共に、フック部材8の後端を案内面41から離間する方向に付勢するように構成して、フック部材8を後退不可姿勢に復帰付勢することになる。
このようにコイルバネ24によりフック部材8を付勢するには、例えば、図18に示すように、フック部材8の嵌め込み用辺部8Aの後部に、バネ受け用突部8uを先端側ほど案内面41に近付く傾斜状に設けることになる。
この場合、図18において白抜き矢印にて示す如く、フック部材8の操作用辺部8Bの上部にフック部材8を後退させるように力を加えると、その力によってフック部材8の後部が押し下げられるので、フック部材8の姿勢を簡単に後退不可姿勢から後退可能姿勢に変更することができる。
又、各フック部材8は後退不可姿勢に付勢されているので、フック部材8により蓋体200が閉じ位置に保持された容器本体100が転倒しても、フック部材8は後退不可姿勢に保持されていることとなり、フック部材8の後退移動を的確に防止することができる。
【0066】
(B) 上記の実施形態のように、フック部材8を後退不可姿勢に復帰付勢させることなくコイルバネ24を設ける場合、容器本体100が転倒したときの慣性力がなくなっても、容器本体100が転倒姿勢に維持される間はフック部材8が後退不可姿勢に保持されるように、フック部材8の重心を設定しても良い。
【0067】
(C) 上記の実施形態では、蓋体200を容器本体100に対して着脱自在としたが、蓋体200を容器本体100の開口部の外周部に設けられた当該開口部の接線方向に略平行な揺動軸周りに揺動自在に支持して設けても良い。この場合、フック部材8は、蓋体200の中心に対して揺動軸とは反対側に1個設けることになる。
【0068】
(D) 移動阻止部Sの具体例としては、上記の実施形態において例示した突起体16pに限定されるものではない。
例えば、蓋カバー16の裏面を、フック部材8の後端からフック部材8の後方側に離れるほど低くなる(案内面41に近付く)形態の傾斜状にして、その蓋カバー16の傾斜状の裏面により移動阻止部Sを構成しても良い。
この移動阻止部Sの構成は、図18に示す如き、フック部材8をコイルバネ24により後退不可姿勢に復帰付勢する場合に適用するのが好ましい。
つまり、フック部材8により蓋体200が閉じ位置に保持された容器本体100が転倒すると、フック部材8は慣性力により後退しようとするが、その後端縁の上側部分8eが蓋カバー16の傾斜状の裏面に当接する状態となって(移動阻止部Sがフック部材8に干渉する状態に相当する)、後方側への動きに対する抵抗が大きくなるので、フック部材8の後退移動が阻止されることになり、フック部材8が係合部25から離脱するのを防止することができる。
又、移動阻止部Sの具体例として、上記の実施形態の如き突起体16pを適用する場合、その個数は、上記の実施形態に如き2個に限定されるものではなく、1個でも、3個以上でも良い。
突起体16pを1個設ける場合、突起体16pをフック部材8の横幅方向に沿って延びる細長状に設けて、フック部材8の後端縁の上側部分8eにおける横幅方向の広い範囲に当接させるように構成しても良い。
【0069】
(E) 上記の実施形態では、案内面41を2段状に構成したが、案内面41を平坦な一面にて構成しても良い。この構成は、図18に示すように、フック部材8をコイルバネ24により後退不可姿勢に復帰付勢する場合に適用するのが好ましい。
【0070】
(F) フック部材8に設ける被案内部8gの具体例は、上記の実施形態において例示した突条部8bに限定されるものではない。
例えば、フック部材8の左右両側部に横方向に突出する翼状体を前後方向にわたるように設けて、それら一対の翼状体により被案内部8gを構成しても良い。
又、突条部8bの幅を広くして、突条部8bにおける案内面41に案内される面を広くしても良い。
又、突条部8bを省略して、フック部材8の下面を一面の平坦面に構成して、その下面全面を被案内部8gとしても良い。
【0071】
(G) フック部材8の後退可能姿勢や後退不可姿勢を規定する際に用いる被案内部8gの前部及び後部とは、被案内部8gの前後方向に多少の長さを有する範囲も含むものである。
又、フック部材8の後退移動を阻止するために突起体16pに当接させるフック部材8の後部とは、フック部材8の前後方向に多少の長さを有する範囲も含むものである。
【0072】
(F) 本発明を適用可能な水加熱容器の具体例としては、上記の実施形態において例示した電気ケトルに限定されるものではなく、例えば、電気ポット、加湿器、炊飯器等でも良い。ちなみに、本発明に係る水加熱容器において、加熱対象の水とは、固形物を含んだ水を含むものであり、例えば、水加熱容器の具体例が炊飯器の場合は、米粒を含んだ水が加熱対象の水となる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、フック部材の係脱操作を容易に行うことができながら、転倒したときに蓋体が開くのを防止し得る水加熱容器を提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 内容器
8 フック部材
8e 後端縁の上側部分
8g 被案内部
8A 嵌め込み用辺部(本体部)
8B 操作用辺部(操作部)
16 蓋カバー(覆い部)
16p 突起体(移動阻止部)
24 コイルバネ(付勢手段)
25 係合部
41 案内面
41d 低段部
41h 高段部
41s 傾斜面
100 容器本体
200 蓋体
S 移動阻止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口し、内部に内容器を有する容器本体と、
その容器本体の開口部を開閉自在な蓋体とを備え、
前記蓋体を前記容器本体の開口部を閉じる閉じ位置に保持するフック部材が、前記容器本体の径方向に前後進可能で且つ付勢手段により前進方向に付勢された状態で、前記蓋体に設けられ、
前記蓋体を前記閉じ位置に位置させたときに前記付勢手段の付勢力により前進する前記フック部材の前端部が係合する係合部が、前記容器本体に設けられた水加熱容器であって、
前記蓋体に前記フック部材の前後進を摺動案内する案内面が形成され、前記フック部材の前後にわたって形成された被案内部が前記案内面上に載置され、
前記係合部に係合した前記フック部材の前記被案内部の前部及び後部が前記案内面と当接した後退可能姿勢のまま後退移動したときには、当該フック部材と不干渉となり当該後退移動を許容し、且つ、前記被案内部の後部が前記案内面から離間した後退不可姿勢のまま後退移動したときには、前記フック部材に干渉して当該後退移動を阻止する移動阻止部が前記蓋体に設けられている水加熱容器。
【請求項2】
前記蓋体に、前記フック部材の後端側部分の上方を覆う覆い部が設けられ、
前記移動阻止部が、前記覆い部における前記フック部材側の面である下面に、当該フック部材側に突出するように設けられた突起体にて構成され、
前記係合部に係合した前記フック部材が前記後退不可姿勢のまま後退移動したときは、前記フック部材の後部の上側部分が前記突起体に当接して後退移動が阻止されるように構成されている請求項1に記載の水加熱容器。
【請求項3】
前記案内面が、前記係合部に係合した前記フック部材の前記被案内部の前部に当接する部分が前記被案内部の後部に当接する部分よりも高くなる2段状に構成されている請求項1又は2に記載の水加熱容器。
【請求項4】
前記2段状の案内面における高段部と低段部との間が、高段部に近づくほど高くなる傾斜面に構成されている請求項3に記載の水加熱容器。
【請求項5】
前記付勢手段が、前記フック部材を前進する方向に付勢すると共に、前記フック部材の前記被案内部の後部を前記案内面から離間する方向に付勢するように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の水加熱容器。
【請求項6】
前記フック部材が、その前後方向に延びる本体部と、その本体部の後端から前記フック部材の上下方向の上側に延びる操作部とを備えて構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の水加熱容器。
【請求項7】
前記蓋体が前記容器本体から取り外し自在であり、
前記フック部材が、前記蓋体の中心に対して反対側に振り分けられた状態で一対設けられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の水加熱容器。
【請求項8】
前記容器本体における上部の開口部が上方を向く正常姿勢から横方向を向く転倒姿勢となる平面上での転倒において、
前記付勢手段の付勢力が、前記フック部材が前記後退可能姿勢から後退不可姿勢となる付勢力に設定されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の水加熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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