説明

水又は水溶液を含有するマイクロカプセル及びその製造方法

【課題】 消火や、反応容器の過熱等に対する急速冷却を効率良く行うために水又は水溶液を含有するマイクロカプセルを提供する。
【解決手段】 水及び水溶液のマイクロカプセルを製造する本発明の方法により、水又はゲル状水溶液を含有する微小球状核と、核からの水の蒸発を防止するとともに形状を安定化させるために前記核を覆う主被膜と、追加の親油性外層被膜とを有するマイクロカプセルが得られる。この方法では、微小球内の主水溶液とゲル架橋用の沈殿用水溶液との相互作用により主被膜が形成され、得られたマイクロカプセルと有機溶媒成分との相互作用により追加の親油性被膜が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の分野に使用可能な水又は水溶液を含有するマイクロカプセル、及びその製造方法に関し、特に「乾燥した」又は「凝集しない」状態で水又は水溶液を含有し、消火、工業用反応容器の過熱防止、難燃性化合物の製造、及びその他の工業(食品製造、医薬品工業、化成肥料製造等)に使用するのに好適なマイクロカプセル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水は優れた物理的及び化学的性質を有し、自然界に多量に存在し、かつ低コストであるために、消火に最も使用されている。あらゆる周知の液体のうち、水は通常の条件下で最大の蒸発熱(消火効率に最も影響する)を有する上、消火条件下で全く毒性がなく、燃焼生成物中に有毒成分や腐食性成分が入ることもない。しかし、消火剤としての水には多くの欠点もある。企業や家庭で広く使用されている電気製品や電子製品の消火に水を使用すると、その導電性のためにショートを引き起し、高価な機器に損傷を与える。また水は素早く広がったり、隙間や凹部に浸透したりするので、書類、書籍、貴重品、高価な機器等に著しい損傷を与える。
【0003】
その上、素早く広がるために水を燃焼域に堆積しておくことができない。その結果、水の消費量及び流速は著しく高くならざるを得ない。そのため20世紀後半に、フッ素化炭化水素又はフッ素/臭素含有炭化水素を主体とする新たな液体状又は気体状の消火剤が開発された。これらの材料は、熱により重い遊離ラジカルを生成し、これが燃焼連鎖を切断するので、優れた消火効率を有する。これらの材料はまた電気電子系に対して安全である。
【0004】
しかし、これらの製品は高コストである上、その分解生成物は人体に対して有毒であり、かつ地球のオゾン層を破壊することが分った。その結果、消火に使用されている多くの製品の製造及び使用が国際的に禁止されるようになった(モントリオール・プロトコール)。従って、書類、書籍、電子装置等に損傷を与えない「乾燥」水は電気系のショートを引き起こさず、非常に重要であると考えられる。
【0005】
その上、「乾燥」水は、化学反応容器及び核反応容器の過熱や、熱爆発の危険を予防するのに使用することもできる。過熱状態にある反応容器に多量の「乾燥」水を使用すると、容器の隙間全体に充填できるので、高い予防効果が得られる。
【0006】
「乾燥」水をパッケージ化すると、水を使用地まで簡単に移動することができる。例えば、衝撃でも水のパッケージ容器が破壊することがないので、「乾燥」水のパッケージを航空機から落下することができる。これは、緊急を要する地域に水を輸送するときに重要である。「乾燥」水のパッケージは無重力状態でも使用可能である。
【0007】
水含有ポリマーのマイクロカプセルの形成により「乾燥」又は「凝集しない」水を製造する種々の方法が知られている。例えば、米国企業の3Mは、低融点ポリエチレン被膜によりマイクロカプセル化された肥料(硝酸塩、燐酸塩)水溶液の実験サンプルを提案した(3Mのパンフレット、1974年)。マイクロカプセルの製造方法として、油溶性ビタミン、バリドール、ニトログリセリン溶液等の材料を含有するカプセルを製造する「二重管」法が知られている。しかし、この方法は少量生産に適するだけである。その上、3Mのマイクロカプセルは脆く、崩れ易い。
【0008】
水含有マイクロカプセルの核として塩の結晶水を使用することが知られている(DE 102005002169 A)。マイクロカプセルに、結晶水より高い融点を有する溶融可能な材料が使用されている。しかし、マイクロカプセルの含水率は開示されていない。公知の結晶水では含水率は50質量%を超えず、消火には不十分である。その上、塩を含有するので、消火対象物を腐食させるおそれがある。
【0009】
医薬品、生理活性物質及び培地の水溶液をマイクロカプセル化する方法も知られている。例えば、ポリマーが溶解した有機溶媒に薬効物質の水溶液が分散した「油中水」型のエマルジョンを生成し、このエマルジョンを水及び界面活性剤を含有する別の水相と混合し、その際得られた分散液の上に空気を供給し、もって薬効物質のマイクロカプセルを得る方法が知られている(米国特許6204308号)。マイクロカプセルの被膜用ポリマーとしてポリエチレンカーボネートが使用されている。しかし、ポリエチレンカーボネートの厚さが不均一なために、薬効物質の放出速度が予測できないだけでなく、その充填量も保証されない。その上、被膜は耐水性でないので、水分の蒸発を防止できない。この方法は安定性に劣り、かつ工程が複雑であるので、工業生産に適さない。
【0010】
また、生理活性物質及びアルギン酸ナトリウムを含有する水溶液を140℃の温度でノズルより噴霧して乾燥することにより微粒子を作製した後、続けて攪拌しながら塩化カルシウムの3%酢酸溶液で架橋し、架橋微粒子をキトサン又はポリ-1-リシンの3%酢酸溶液に浸漬し、得られた微粒子を遠心分離し、蒸留水で洗浄し、室温で乾燥することにより、キトサン−アルギン酸塩微粒子を製造する方法が知られている(Burcu Sayim A.、Atilla Hincal、Scyda Senel、「粘膜免疫化用のキトサン−アルギン酸塩微粒子の製造方法」、第15回マイクロカプセル化国際シンポジウム、パルマ(イタリア)、2005年9月18〜21日、329〜330頁)。得られた微粒子は光沢面を有する球形である。架橋は被膜内のゲル粒子の数を増大させるために用いられた。
【0011】
しかし100℃を超える温度での水溶液の噴霧により水が相当蒸発するため、微粒子の水溶液含有量は約15%である。その上、カルシウムイオンによる架橋の後アルギン酸塩に残留する遊離カルボキシル基上に形成された「キトサン−アルギン酸塩」錯化合物は、耐水性が不十分であり、微粒子中の水の蒸発を防止することができない。
【0012】
また、質量比で4%のアルギン酸塩、0.1%のキトサン、15%の塩化カルシウム、20%のリゾチーム、及び10%の加熱活性化したビブリオ・アングイラルムを媒体中で順次エマルジョン化することにより、キトサンに被覆されたリゾチーム含有微小球を製造することも知られている(L. Zorzin、M. Cocchietto、D. Voinovich、A. Marcuzzi、J. Fillipovich-Grcic、C. Casarsa、C. Mulloni及びG. Sava、「キトサンで被覆されたリゾチーム含有経口免疫用アルギン酸塩微小球」、第15回マイクロカプセル化国際シンポジウム、パルマ(イタリア)、2005年9月18〜21日、153〜154頁)。しかし、カルシウムイオンによる架橋後に遊離アルギン酸塩に残留するカルボキシル基上に生成された「キトサン−アルギン酸塩」錯化合物は、耐水性が不十分であり、貯蔵中微粒子中の水の蒸発を防止することができない。その上、架橋微粒子の表面層における遊離カルボキシル基の分布が不均一であるために、「キトサン−アルギン酸塩」錯体からなる被膜の厚さも不均一であり、微粒子は高い多分散性(不均一性)を有する。
【0013】
活性成分を含有する水滴を固体疎水性被膜でマイクロカプセル化する公知の方法は以下の工程を有する(WO 2005/018794、GB 2388581 A及びRU 2006108860 А)。
(a) 一種以上の活性成分を含有する水相を調製し、
(b) 溶融状態の疎水性相を調製し、
(c) カプセル化材料を水相又は疎水性相に溶解又は導入し、
(d) 水相及び疎水性相を均一に混合して、「油中水」型のエマルジョンを調製し、
(e) 水相をエマルジョン内に封入することにより、活性成分含有水相を含有するカプセルを有する分散液を生成し、
(f) カプセルをさらに処理して、固体疎水性被膜を形成したマイクロカプセルを形成する。
【0014】
前記マイクロカプセルは、「油中水」型のエマルジョンを冷却しながら噴霧することにより製造される。そのため、水相は、水又は水とエタノール、エチレングリコール又はグリセリンのような水混和性溶媒との混合物からなる。疎水性相は、動物油、脂肪、完全に水素化された植物油又は動物油、脂肪酸の不飽和水素化モノグリセリド等からなる。カプセル化材料は、親水コロイド、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、のり、澱粉、変性澱粉、グアーガム、寒天、ペクチン及びその他ののり、キトサン、キサンタンガム、ゼラチン、ヒアルロン酸、セルロース誘導体、アクリルコポリマー、大豆蛋白質、シェラック樹脂、ゼイン、合成又は天然の水溶性ポリマー、二酸化Si及び二酸化Tiのような水混和性微粒子、合成又は天然のポリマー顆粒、及び凝集可能な水混和性固体粒子(ケーキ)から選ぶ。
【0015】
水相と疎水性相を均一に混合し、相互作用、凝集、ゲル化又は架橋によりカプセル化する。コアセルベーションによるカプセル化は、カプセル化材料を添加するとともに、昇温、pHの変化、又は親水コロイドその他の相互作用開始剤の添加によりカプセル化材料の溶解度を上昇させることにより達成できる。カプセル化材料は、シェラック樹脂、ゼイン、及び合成又は天然の疎水性ポリマー(例えば脂肪、乳化剤、ワックス又はこれらの混合物)から選ぶ。
【0016】
凝集によるカプセル化は、カプセル化材料として固体微粒子(例えば、二酸化Si、二酸化Ti、合成又は天然のポリマー粒子、又はその他の水不溶性固体粒子)を使用し、微粒子を溶融して水相を覆う薄膜とすることにより達成することができる。
【0017】
エマルジョン中で水相をゲル化することによりカプセル化するには、エマルジョンの温度をカプセル化材料のゲル化温度まで低下させる。この場合、カプセル化材料として、ゲル化親水コロイド(例えば、ゼラチン、澱粉、寒天等)を使用する。
【0018】
水相のカプセル化は、カプセル化材料として蛋白質、ゼラチン、澱粉、キトサン、セルロース誘導体、又は熱架橋性の合成及び天然の水溶性ポリマーを使用し、架橋することによっても達成できる。架橋は、媒体の酸−塩基バランスの変化、又はそれらの混合物の化学処理により行う。
【0019】
上記方法で得られる各マイクロカプセルは、疎水性被膜内に1〜100個の水滴(活性成分が溶解している)を含有することができる。
【0020】
しかし、上記マイクロカプセルの製造方法は多くの工程を有するので、工業化するには複雑すぎる。その上、凝集する傾向のある水相の周囲に被膜を形成するために「油中水」型のエマルジョンを噴霧すると、マイクロカプセルの相当の部分を占める厚い被膜が形成され、マイクロカプセルの含水率は50質量%以下となる。また被膜はワックス、脂肪、その他の可燃性材料からなるので、マイクロカプセルを消火手段に使用することができない。その上、噴霧法で得られるマイクロカプセルは高い不均一性を有するので、高温でも水の放出(蒸発)が同時に起こらず、消火効率が低い。そのため、このようなマイクロカプセルを消火や過熱防止(冷却)用に使用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明の目的は、消火や、反応容器の過熱等に対する急速冷却を効率良く行うために水又は水溶液を含有するマイクロカプセルを提供することである。このため、マイクロカプセルは下記定性的又は定量的パラメータを満たす。
(1) マイクロカプセル中の水又は水溶液の含有量はできるだけ高く、実用上90質量%以上とする。
(2) マイクロカプセル中の可燃性部の含有量(被膜の重量比により決まる)はできるだけ少なくする。
(3) マイクロカプセルは強靱で、凝集せず、かつ非溶融性である。
(4) 水又は水溶液の放出(蒸発)の臨界温度に同時に到達するように(協働性)、マイクロカプセルの多分散性(大きさの不均一性)はできるだけ小さくする。
【0022】
本発明の別の目的は、水又は水溶液を均一に封止できる球状核(均一な厚さの被膜にするのに最も適する)を有するマイクロカプセルを提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、水又は水溶液の蒸発を防ぐ主被膜を有するマイクロカプセルを提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、親油性材料に対するぬれ性を高めるために追加の親油性被膜を形成したマイクロカプセルを提供することである。これは、水又は水溶液を含有するマイクロカプセルを例えばポリマーの難燃材として使用する場合に重要である。水含有マイクロカプセルがポリマーに対して良好なぬれ性を有すると(ぬれ角が小さいと)、難燃材としての充填率が上昇するので好ましい。その上、ぬれ性が良いと、難燃材として水含有マイクロカプセルを添加したポリマーは固化後に高強度になる。従って、水又は水溶液を含有するマイクロカプセルの表面の親油性化は、ポリマー用難燃材として使用する場合に重要である。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、均一な大きさの水含有微小球状核と、貯蔵中に水分の蒸発を防止する主被膜とを有し、安定した強度、良好な非凝集性(お互い密着せずに独立している状態)及び高含水率を有するマイクロカプセルを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的は、水、又はカルシウムイオンで架橋されたカルボキシル基含有ゲル生成電解質でゲル化した水溶液を含有する微小球状核を有するマイクロカプセルを作製することにより達成される。前記ゲル生成高分子電解質として、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他のカルボキシル基含有多糖類が好ましい。
【0027】
上記目的はまた、水、又はカルシウムイオンで架橋されたカルボキシル基含有ゲル生成電解質によりゲル化された水溶液を含有する微小球状核を有するとともに、微小球表面に前記核からの水の蒸発を防止する主被膜を有するマイクロカプセルを作製することにより達成される。前記ゲル生成高分子電解質として、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他のカルボキシル基含有多糖類が好ましい。主被膜は、核からの水の蒸発を防止し得る限りできるだけ薄いのが好ましい。
【0028】
主被膜は、第一の高分子量成分と、それと反対の電荷を有する第二の高分子量成分との錯化合物により形成するのが好ましい。より好ましい主被膜は、負の電荷を有する第一の高分子量成分と、正の電荷を有する第二の高分子量成分との錯化合物からなる。さらに好ましい主被膜は、カルボキシル基により負の電荷を有する第一の高分子量成分と、アミノ基により正の電荷を有する第二の高分子量成分との錯化合物により形成されている。主被膜の好ましい一例は、セルロースアセトフタレートとキトサンとの錯化合物からなる。主被膜の好ましい別の例は、ポリアクリル酸とポリビニルピロリドンとの錯化合物からなる。
【0029】
この目的はまた、水又は水溶液(カルボキシル基含有ゲル生成電解質でゲル化し、カルシウムイオンで架橋されている。)を含有する微小球状核と、水の蒸発を防止するために核表面に形成された主被膜と、親油性を有する追加の外層被膜とを有するマイクロカプセルを製造することにより達成される。ゲル生成電解質は、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他のカルボキシル基含有多糖類であるのが好ましい。主被膜はできるだけ薄いのが好ましい。
【0030】
主被膜は、第一の高分子量成分と、それと反対の電荷を有する第二の高分子量成分との錯化合物からなるのが好ましい。具体的には、主被膜は、負の電荷を有する第一の高分子量成分と正の電荷を有する第二の高分子量成分との錯化合物からなるのが好ましい。より具体的には、主被膜は、カルボキシル基により負の電荷を有する第一の高分子量成分とアミノ基により正の電荷を有する第二の高分子量成分との錯化合物からなるのが好ましい。主被膜の一例は、セルロースアセトフタレートとキトサンとの錯化合物からなる。主被膜の別の例は、ポリアクリル酸とポリビニルピロリドンとの錯化合物からなる。
【0031】
親油性を有する追加の外層被膜はポリカルボジイミド又はポリ尿素からなるのが好ましい。
【0032】
本発明のマイクロカプセルは90%以上が0.25〜5.0 mmの範囲内の直径を有し、かつ水又は水溶液の含有量はマイクロカプセルの少なくとも90質量%であるのが好ましい。
【0033】
本発明のマイクロカプセルは、有用な成分(例えば、治療材料、微生物培地の懸濁液、及び高分子電解質及び被膜成分に対して相溶性を有するか不活性なその他の成分)を含有する水溶液を含有することができる。
【0034】
上記目的はまた、水又は水溶液を含有する微小球状核をゲル生成電解質でゲル化した後、カルシウムイオンで架橋することにより、水又は水溶液をマイクロカプセル化する方法により実現することができる。この方法は、下記工程を有する。
(a) 少なくともカルボキシル基含有ゲル生成高分子電解質が溶解した主水溶液を調製し、
(b) 少なくとも一種の二価のカルシウムイオン源を含有する沈殿用水溶液を調製し、
(c) 前記主水溶液を20〜25℃の前記沈殿用水溶液に攪拌しながら滴下し、その際滴下時間を、前記主水溶液をゲル生成高分子電解質でゲル化し、二価のカルシウムイオンで架橋することにより微小球の分散液を生成するのに十分な時間とし、
(d) 前記微小球を分散液から濾別し、
(e) 前記微小球を乾燥して水分を除去する。
【0035】
高分子電解質は、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他のカルボキシル基含有多糖類であるのが好ましい。二価のカルシウムイオン源は、二塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び/又はその他の水溶性カルシウム塩であるのが好ましい。
【0036】
上記目的はまた、水又はゲル状水溶液を含有する微小球状核と、核中の水分の蒸発を防止する主被膜とを有するマイクロカプセルを製造する方法により実現することができる。この方法は下記工程を有する。
(a) 少なくともカルボキシル基含有ゲル生成高分子電解質と、主被膜を形成し得る第一の高分子量成分とが溶解した主水溶液を調製し、
(b) 少なくとも一種の二価のカルシウムイオン源と、前記第一の高分子量成分と反対の電荷を有し、主被膜を形成し得る第二の高分子量成分とが溶解した沈殿用水溶液を調製し、
(c) 前記主水溶液を20〜25℃の前記沈殿用水溶液に攪拌しながら滴下し、その際滴下時間を、前記主水溶液をゲル生成高分子電解質でゲル化し、二価のカルシウムイオンで架橋することにより微小球の分散液を生成するのに十分な時間とし、
(d) 前記微小球の分散液を20〜25℃に保持し、その際保持時間を、前記第一の高分子量成分と前記第二の高分子量成分との錯化合物により形成された主被膜が微小球状核を封止するのに十分な時間とし、
(e) 得られたマイクロカプセルを前記分散液から濾別し、
(f) 前記マイクロカプセルを水洗した後、大気中で乾燥し、
(g) 前記マイクロカプセルを凝集防止剤で処理し、
(h) 前記マイクロカプセルを乾燥して水分を除去する。
【0037】
前記高分子電解質は、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他のカルボキシル基含有多糖類であるのが好ましい。また二価のカルシウムイオン源は、二塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び/又はその他の水溶性カルシウム塩であるのが好ましい。
【0038】
前記主被膜の第一の高分子量成分は負の電荷を有する高分子量化合物であり、前記主被膜の第二の高分子量成分は正の電荷を有する高分子量化合物であるのが好ましい。具体的には、前記主被膜の第一の高分子量成分はカルボキシル基により負の電荷を有する高分子量化合物であり、前記主被膜の第二の高分子量成分はアミノ基により正の電荷を有する高分子量化合物であるのが好ましい。好ましい一例では、前記主被膜の第一の高分子量成分はセルロースアセトフタレートであり、前記主被膜の第二の高分子量成分はキトサンである。好ましい別の例では、前記主被膜の第一の高分子量成分はポリアクリル酸であり、前記主被膜の第二の高分子量成分はポリビニルピロリドンである。
【0039】
上記目的はまた、水又はゲル状水溶液を含有する微小球状核と、核中の水分の蒸発を防止する主被膜と、追加の親油性被膜とを有するマイクロカプセルの製造方法により実現することができる。この方法は、下記工程を有する。
(a) 少なくともカルボキシル基含有ゲル生成高分子電解質と、主被膜を形成し得る第一の高分子量成分とが溶解した主水溶液を調製し、
(b) 少なくとも一種の二価のカルシウムイオン源と、前記第一の高分子量成分と反対の電荷を有し、主被膜を形成し得る第二の高分子量成分とが溶解した沈殿用水溶液を調製し、
(c) 前記主水溶液を20〜25℃の前記沈殿用水溶液に攪拌しながら滴下し、その際滴下時間を、前記主水溶液をゲル生成高分子電解質でゲル化し、二価のカルシウムイオンで架橋することにより微小球の分散液を生成するのに十分な時間とし、
(d) 前記微小球の分散液を20〜25 ℃に保持し、その際保持時間を、前記第一の高分子量成分と前記第二の高分子量成分との相互作用により形成された主被膜が微小球状核を封止して、マイクロカプセルを形成するのに十分な時間とし、
(e) 得られたマイクロカプセル(追加の外層被膜用の第一の成分として使用する微量の水を主被膜の外面に有する。)を前記分散液から濾別し、
(f) 追加の被膜を形成可能であるとともに親油性を有する第二の成分、及び水溶性であるが有機溶媒に不溶な触媒を含有する高揮発性有機溶媒からなる親油性塗液を調製し、
(g) 前記マイクロカプセルを前記親油性塗液に攪拌しながら入れて、前記マイクロカプセルの分散液を生成し、
(h) 前記マイクロカプセルの分散液を20〜25℃に保持し、その際保持時間を、前記触媒の存在下で前記第一の成分(微量の水)と前記第二の成分との相互作用により前記マイクロカプセルの外面に追加の親油性被膜を形成するのに十分な時間とし、
(k) 得られたマイクロカプセルを前記親油性塗液から濾別し、
(m) 前記マイクロカプセルを高揮発性有機溶媒で洗浄し、
(n) 前記マイクロカプセルを乾燥して水分を除去する。
【0040】
前記ゲル生成高分子電解質として、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他のカルボキシル基含有多糖類を使用するのが好ましい。また前記二価のカルシウムイオン源として、二塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び/又はその他の水溶性カルシウム塩の水溶液を使用するのが好ましい。
【0041】
前記主被膜の第一の高分子量成分は負の電荷を有する高分子量化合物であり、前記主被膜の第二の高分子量成分は正の電荷を有する高分子量化合物であるのが好ましい。具体的には、前記主被膜の第一の高分子量成分はカルボキシル基により負の電荷を有する高分子量化合物であり、前記主被膜の第二の高分子量成分はアミノ基により正の電荷を有する高分子量化合物であるのが好ましい。好ましい一例では、前記主被膜の第一の高分子量成分はセルロースアセトフタレートであり、前記主被膜の第二の高分子量成分はキトサンである。好ましい別の例では、前記主被膜の第一の高分子量成分はポリアクリル酸であり、前記主被膜の第二の高分子量成分はポリビニルピロリドンである。
【0042】
前記高揮発性有機溶媒は四塩化炭素又はジメチルカーボネートが好ましい。追加の親油性被膜を形成する第二の成分はポリイソシアネート、又はポリイソシアネートとトルエンジイソシアネートとの混合物が好ましい。前記触媒はホスホレンが好ましく、特に1-オキソ-1,3-ジメチルホスホレンが好ましい。得られる追加の親油性被膜はポリカルボジイミドを主体とする。
【0043】
上記目的はまた、水又はゲル状水溶液を含有する微小球状核、前記核を覆う主被膜、及び追加の親油性被膜を有するマイクロカプセルを製造する方法により達成される。この方法は下記工程を有する。
(a) 少なくともカルボキシル基含有ゲル生成高分子電解質、主被膜を形成し得る第一の高分子量成分、及び追加の親油性被膜を形成し得る第一の成分が溶解した主水溶液を調製し、
(b) 少なくとも一種の二価のカルシウムイオン源、及び前記第一の高分子量成分と反対の電荷を有し、主被膜を形成し得る第二の高分子量成分が溶解した沈殿用水溶液を調製し、
(c) 前記主水溶液を20〜25℃の前記沈殿用水溶液に攪拌しながら滴下し、その際滴下時間を、前記主水溶液をゲル生成高分子電解質でゲル化し、二価のカルシウムイオンで架橋することにより微小球の分散液を生成するのに十分な時間とし、
(d) 前記微小球の分散液を20〜25℃に保持し、その際保持時間を、前記第一の高分子量成分と前記第二の高分子量成分との相互作用により形成された主被膜が微小球状核を封止するのに十分な時間とし、
(e) 得られたマイクロカプセルを前記分散液から濾別し、
(f) 追加の被膜を形成可能であるとともに親油性を有する第二の成分を含有する高揮発性有機溶媒からなる親油性塗液を調製し、
(g) 前記マイクロカプセルを前記親油性塗液に攪拌しながら添加して、前記マイクロカプセルの分散液を生成し、
(h) 前記マイクロカプセルの分散液を20〜25℃に保持し、その際保持時間を、前記主被膜が前記追加の親油性被膜に封止されるのに十分な時間とし、
(k) 得られたマイクロカプセルを前記親油性塗液から濾別し、
(m) 前記マイクロカプセルを高揮発性有機溶媒で洗浄し、
(n) 前記マイクロカプセルを乾燥して水分を除去する。
【0044】
前記ゲル生成高分子電解質は、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他のカルボキシル基含有多糖類であるのが好ましい。前記二価のカルシウムイオン源は、二塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び/又はその他の水溶性カルシウム塩であるのが好ましい。
【0045】
前記主被膜の第一の高分子量成分は負の電荷を有する高分子量化合物であり、前記主被膜の第二の高分子量成分は正の電荷を有する高分子量化合物であるのが好ましい。前記主被膜の第一の高分子量成分はカルボキシル基により負の電荷を有する高分子量化合物であり、前記主被膜の第二の高分子量成分はアミノ基により正の電荷を有する高分子量化合物であるのが好ましい。好ましい一例では、前記主被膜の第一の高分子量成分はセルロースアセトフタレートであり、前記主被膜の第二の高分子量成分はキトサンである。好ましい別の例では、前記主被膜の第一の高分子量成分はポリアクリル酸であり、前記主被膜の第二の高分子量成分はポリビニルピロリドンである。
【0046】
前記高揮発性有機溶媒は四塩化炭素又はジメチルカーボネートが好ましい。追加の親油性被膜の第一の成分としてヘキサメチレンジアミン又はポリエチレンポリアミン及び/又はその他の水溶性ジアミン及びポリアミンを使用し、第二の成分としてポリイソシアネート又はポリイソシアネートとトルエンジイソシアネートとの混合物を使用するのが好ましい。得られる追加の親油性被膜はポリ尿素を主体とする。
【発明の効果】
【0047】
水又は水溶液を含有する本発明のマイクロカプセルは、特別の材料を用いなくても製造することができる。水及び水溶液を含有する本発明のマイクロカプセルは、消火や、化学反応容器、核反応容器等の過熱事故に対して使用可能なだけでなく、ポリマーの難燃材としても使用可能である。その他、本発明のマイクロカプセルは食品処理、医薬品工業及びその他の工業にも使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明のマイクロカプセル化法により、水又はゲル状水溶液を含有する微小球状核と、前記微小球状核の周囲に形成された主被膜とを有するマイクロカプセル、及び前記微小球状核と、前記主被膜と、追加の被膜とを有するマイクロカプセルが得られる。これらのマイクロカプセルは優れた形状安定性を有する。本発明のマイクロカプセルの製造方法により、複雑な工程を経ずに微小球の形成と同時に主被膜も確実に形成することができる。
【0049】
水又は水溶液を含有する微小球状核を有するマイクロカプセルの第一の製造方法において、カルボキシル基含有ゲル生成高分子電解質はアルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他の多糖類が好ましく、二価のカルシウムイオン源は二塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び/又はその他の水溶性カルシウム塩が好ましい。
【0050】
水又は水溶液を含有する微小球状核及び主被膜を有するマイクロカプセルを製造する本発明の第二の方法の第一の例において、(1) 主水溶液は、一種以上のカルボキシル基含有ゲル生成高分子電解質(好ましくはアルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他の多糖類)、及び前記主被膜を形成する第一の高分子量成分(好ましくはセルロースアセトフタレート)を含有し、(2) 沈殿用水溶液は、少なくとも一種の二価のカルシウムイオン源(好ましくは二塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び/又はその他の水溶性カルシウム塩)、及び前記第一の高分子量成分と反対の電荷を有する主被膜形成用の第二の高分子量成分(好ましくはキトサン)を含有する。
【0051】
水又は水溶液を含有する微小球状核及び主被膜を有するマイクロカプセルを製造する本発明の第二の方法の第二の例において、(1) 主水溶液は、一種以上のカルボキシル基含有ゲル生成高分子電解質(好ましくはアルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他の多糖類)、及び前記主被膜を形成する第一の高分子量成分(好ましくはポリアクリル酸)を含有し、(2) 沈殿用水溶液は、少なくとも一種の二価のカルシウムイオン源(好ましくは二塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び/又はその他の水溶性カルシウム塩)、及び前記第一の高分子量成分と反対の電荷を有する主被膜形成用の第二の高分子量成分(好ましくはポリビニルピロリドン)を含有する。
【0052】
水又は水溶液を含有する微小球状核、主被膜及び追加の親油性被膜を有するマイクロカプセルを製造する本発明の第三の方法の第一の例において、(1) 主水溶液は、一種以上のカルボキシル基含有ゲル生成高分子電解質(好ましくはアルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他の多糖類)、及び前記主被膜を形成する第一の高分子量成分(好ましくはカルボキシル基により負の電荷を有する高分子量化合物、例えばセルロースアセトフタレート又はポリアクリル酸)を含有し、(2) 沈殿用水溶液は、少なくとも一種の二価のカルシウムイオン源(好ましくは二塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び/又はその他の水溶性カルシウム塩)、及び前記第一の高分子量成分と反対の電荷を有する主被膜形成用の第二の高分子量成分(好ましくはアミノ基により正の電荷を有する高分子量化合物、例えばキトサン又はポリビニルピロリドン)を含有し、(3) 親油性塗液は、追加の親油性被膜を形成するための第二の成分(好ましくはポリイソシアネート又はポリイソシアネート及びトルエンジイソシアネートの混合物)と、触媒(好ましくはホスホレン)とを含有する高揮発性有機溶媒(好ましくは四塩化炭素又はジメチルカーボネート)からなる。この例では、追加の親油性被膜を形成するための第一の成分は、主被膜の外面に残留する微量の水である。
【0053】
水又は水溶液を含有する微小球状核、主被膜及び追加の親油性被膜を有するマイクロカプセルを製造する本発明の第三の方法の第二の例において、(1) 主水溶液は、一種以上のカルボキシル基含有ゲル生成高分子電解質(好ましくはアルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他の多糖類)、前記主被膜を形成する第一の高分子量成分(好ましくはカルボキシル基により負の電荷を有する高分子量化合物、例えばセルロースアセトフタレート又はポリアクリル酸)、及び追加の親油性被膜を形成する第一の成分(好ましくはジアミン又はポリアミン)を含有し、(2) 沈殿用水溶液は、少なくとも一種の二価のカルシウムイオン源(好ましくは二塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び/又はその他の水溶性カルシウム塩)、及び前記第一の高分子量成分と反対の電荷を有する主被膜形成用の第二の高分子量成分(好ましくはアミノ基により正の電荷を有する高分子量化合物、例えばキトサン又はポリビニルピロリドン)を含有し、(3) 親油性塗液は、追加の親油性被膜を形成するための第二の成分(好ましくはポリイソシアネート又はポリイソシアネート及びトルエンジイソシアネートの混合物)を含有する高揮発性有機溶媒(好ましくは四塩化炭素又はジメチルカーボネート)からなる。この例では、親油性塗液は触媒を含有しない。
【0054】
本発明の全てのマイクロカプセル化法において、主水溶液を沈殿用水溶液に滴下し、20〜25℃の温度で攪拌する。主水溶液を沈殿用水溶液に滴下すると、カルシウムイオンの拡散及び二価のカルシウムイオンによるカルボキシル基含有ゲル生成電解質の架橋が直ちに起こってゲル化し、水又は所望の組成の水溶液を含有する微小球(マイクロカプセルの核となる)が形成される。得られた微小球は主被膜がないと直ぐに水を失うだけでなく、貯蔵中に凝集して実用上重要な性質である脆砕性を失うので、そのままでは消火剤とし使用できない。
【0055】
本発明の水及び水溶液のマイクロカプセル化法により、水含有微小球と同時に主被膜も形成される。第一及び第二の高分子量成分の相互作用(錯体形成)により、微小球の周囲に水分の蒸発を防ぐ主被膜が形成される。互いに反対の電荷を有する主被膜形成用の第一及び第二の高分子量成分の拡散速度は遅く、主被膜の形成時間は、水含有微小球から第一の高分子量成分が拡散する速度、及び沈殿用水溶液から微小球の表面まで第二の高分子量成分が拡散する速度により決まる。
【0056】
主被膜の形成には約1〜2時間かかるが、形成された主被膜により第一及び第二の高分子量成分の拡散が阻止されるので、反応は自然に停止する。このような被膜形成方法により、前記水含有微小球状核から水分の蒸発を防止するのに必要な主被膜をできるだけ薄く形成することができる。
【0057】
得られたマイクロカプセル(ゲル状水又はゲル状水溶液を含有する微小球状核、及び核を覆う主被膜を有する)を濾別し、凝集防止剤で処理し、貯蔵のために密閉容器に入れ、乾燥により水分を除去する。このマイクロカプセルは、例えば消火又は過熱の冷却に直ぐに使用できる状態にある。
【0058】
本発明のマイクロカプセルの主被膜表面に追加の親油性外層被膜を設けることができる。追加の親油性外層被膜の形成するために、既に主被膜を有するマイクロカプセルを、追加の親油性被膜を形成し得る第二の成分を含有する高揮発性有機溶媒に浸漬する。第二の成分は、ポリイソシアネート又はポリイソシアネートとトルエンジイソシアネートとの混合物が好ましい。
【0059】
本発明の第三の方法の第一の例において、追加の親油性被膜を形成するための第一の成分は主被膜の外面に残留する微量の水である。マイクロカプセルを分散液から濾別した後、触媒(好ましくは有機溶媒に分散するが溶解せず、例えばホスホレン)の存在下で、第一及び第二の成分の相互作用(反応)により追加の親油性被膜を形成する。この例では、得られる追加の親油性外層被膜はポリカルボジイミドからなる。
【0060】
本発明の第三の方法の第二の例において、追加の親油性被膜を形成するための第一の成分は、主水溶液に溶解したヘキサメチレンジアミン又はポリエチレンポリアミン、及び/又はその他の水溶性ジアミン及びポリアミンが好ましく、第二の成分は親油性塗液に溶解したポリイソシアネート又はポリイソシアネートとトルエンジイソシアネートとの混合物が好ましい。触媒としてホスホレンを使用せずに、第一及び第二の成分の相互作用(反応)により、ポリ尿素からなる追加の親油性被膜が形成される。
【0061】
追加の被膜の形成機構は以下の通りである。第三のマイクロカプセル化法の第一の例の条件下で、ホスホレン触媒は主被膜表面の微量の水に溶解し、微量の水と第二の成分(ポリイソシアネート又はポリイソシアネート及びトルエンジイソシアネートの混合物)との反応を賦活する。その結果、主被膜表面にポリカルボジイミド 被膜が形成される。
【0062】
第三の方法の第二の例の条件下では、水中のマイクロカプセルの主被膜表面で、追加の親油性被膜用の第一の成分(ジアミン又はポリアミン)と追加の親油性被膜用の第二の成分(ジイソシアネート又はポリイソシアネート)との相互作用(反応)が起こり、ポリ尿素被膜が形成される。マイクロカプセルを含有する有機溶媒は約20〜 25℃の温度で攪拌するのが好ましい。
【0063】
追加の被膜が形成されると、第一及び第二の成分の相互拡散が阻止され、反応は停止する。このようにしてマイクロカプセルの親油性を確実にするのに必要な厚さに達するまで、追加の被膜は形成される。
【0064】
主被膜及び追加の親油性被膜を有するマイクロカプセルを高揮発性有機溶媒(好ましくは四塩化炭素又はジメチルカーボネート)で洗浄し、濾別し、貯蔵用密封容器に入れる。
【0065】
本発明のマイクロカプセル化方法により、水又は所望の組成のゲル状水溶液を含有する微小球状核、及びその周囲に形成されたできるだけ薄い主被膜及び追加の被膜を有するマイクロカプセル(0.25〜5.0 mmの粒径範囲を有する単分散)を、公知の方法(例えば噴霧法又はダブルエマルジョン法)では不可能なほど高い含水率で製造することができる。
【0066】
本発明の水又は水溶液のマイクロカプセル化法により、主水溶液の液滴を形成するために適当な直径の穴を有するノズル又は針を使用することにより、所望の直径を有するマイクロカプセルを製造することができる。
【0067】
本発明の水又は水溶液を含有するマイクロカプセルは、90%以上が所望の直径を有し、マイクロカプセルの質量当たり90%以上、好ましくは90〜96%の水を含有することができる。
【0068】
水又は水溶液をマイクロカプセル化する本発明の方法は、エネルギー消費量が少なく、有害な排水がないので生態系に安全であり、かつ水又は水溶液を含有するマイクロカプセルの製造時間(全体の経済性を決める)が短いという利点を有する。
【0069】
水及び水溶液をマイクロカプセル化する本発明の方法、及び種々の直ぐ使える製品を、以下の例により説明する。例1〜4は、水含有微小球状核だけを有するマイクロカプセルを製造する方法を示し、例5〜7は水含有微小球状核の表面に主被膜を有するマイクロカプセルの製造方法を示し、例8〜10は水含有微小球状核の表面に主被膜及び追加の被膜を有するマイクロカプセルの製造方法を示す。例5〜10で製造したマイクロカプセルに対して以下の試験を行った。
【0070】
試験A
微小球又はマイクロカプセルをペトリ皿に5.0 mmの厚さに入れ、20〜22℃の温度で24時間放置したときの重量減を測定した。なおこの試験は比較のためだけに行ったもので、製品の安全性を評価するものではない。
【0071】
試験B
100 gの微小球又はマイクロカプセルを密閉ガラス容器に入れ、滲出及び凝集について1カ月間測定した。
【0072】
例1
水含有微小球(被膜なし)の製造
96.0 mlの蒸留水に4.0 gのアルギン酸ナトリウムを添加し、20〜25℃の温度で4〜5時間攪拌しながら溶解させることにより、主水溶液を調製した。また二塩化カルシウムの2.5%水溶液150 mlからなる沈殿用水溶液を調製した。
【0073】
主水溶液を沈殿用水溶液に滴下し、アルギン酸ナトリウムによりゲル化した水溶液を含有する微小球を形成し、それを沈殿用水溶液中の二価のカルシウムイオンで架橋した。約20分間攪拌した後、沈殿用水溶液から微小球を濾別し、水洗し、密封容器に入れた。得られた水含有微小球の直径は2.0 mmであり、含水率は96質量%であった。試験Aでは微小球は28質量%減量し、試験Bでは滲出及び粒子の凝集が観察された。
【0074】
例2
水含有微小球(被膜なし)の製造
92.0 mlの蒸留水に8.0 gのアルギン酸ナトリウムを添加し、20〜25℃の温度で4〜5時間攪拌しながら溶解させることにより、主水溶液を調製した。また二塩化カルシウムの2.5%水溶液150 mlからなる沈殿用水溶液を調製した。
【0075】
主水溶液を沈殿用水溶液に滴下し、アルギン酸ナトリウムによりゲル化した水溶液の微小球を形成し、それを二価のカルシウムイオンで架橋した。約20分間攪拌後、得られた微小球を濾別し、水洗し、密封容器に入れた。得られた微小球の直径は5.0 mmであり、含水率は90質量%であった。試験Aでは微小球の重量減は24質量%であり、試験Bでは滲出及び粒子の凝集が観察された。
【0076】
例3
水含有微小球(被膜なし)の製造
96.0 mlの蒸留水に4.0 gのペクチンを添加し、次いで20〜25℃の温度で4〜5時間攪拌しながら溶解させることにより、前記主水溶液を調製した。また二塩化カルシウムの2.5%水溶液150 mlからなる沈殿用水溶液を調製した。
【0077】
前記主水溶液を前記沈殿用水溶液に滴下し、ペクチンによりゲル化した水溶液の微小球を形成し、それを沈殿用水溶液中の二価のカルシウムイオンで架橋した。約20分間攪拌後、得られた微小球を濾別し、水洗し、密封容器に入れた。得られた微小球の直径は2.0 mmであり、含水率は96質量%であった。試験Aでは微小球の重量減は28質量%であり、試験Bでは滲出及び粒子の凝集が観察された。
【0078】
例4
水含有微小球(被膜なし)の製造
98 mlの蒸留水を2.0 gのアラビアガムに添加し、20〜25℃の温度で4〜5時間攪拌しながら溶解させることにより、主水溶液を調製した。また二塩化カルシウムの4.0%水溶液150 mlからなる沈殿用水溶液を調製した。
【0079】
主水溶液を沈殿用水溶液に滴下し、アラビアガムによりゲル化した水溶液の微小球を形成し、それを二価のカルシウムイオンで架橋した。約20分間攪拌後、得られた微小球を濾別し、水洗し、密封容器に入れた。得られた微小球の直径は0.25 mmであり、含水率は94質量%であった。試験Aでは微小球の重量減は28質量%であり、試験Bでは滲出及び粒子の凝集が観察された。
【0080】
例5
水溶液含有微小球を覆う主被膜を有するマイクロカプセルの製造
96.0 mlの蒸留水に3.0 gのアルギン酸ナトリウムを添加し、20〜25℃の温度で4〜5時間攪拌しながら溶解させることにより、主水溶液を調製した。この主水溶液に1.0 gのセルロースアセトフタレートを溶解させた後、20〜25℃の温度で2〜3時間攪拌した。また150 mlの蒸留水に2.25 gのキトサンを20〜25℃の温度で2〜3時間攪拌しながら溶解させ、次いで3.75 gの二塩化カルシウムを添加し、30〜40分間攪拌しながら溶解させることにより、沈殿用水溶液を調製した。
【0081】
主水溶液を沈殿用水溶液に滴下し、1.0〜2.0時間攪拌した後液相を濾別し、得られたマイクロカプセルを水洗し、完全に排水した。マイクロカプセルを凝集防止剤(アエロジル)で処理し、貯蔵のため密閉容器に入れた。マイクロカプセルの直径は1.5 mmであり、含水率は91質量%であった。試験Aではマイクロカプセルの減水率は4質量%を超えず、試験Bでは滲出液は出ず、凝集は起こらなかった。密閉容器内に6カ月間貯蔵したところ、重量減は認められなかった。これらのデータから、得られたマイクロカプセルは、密閉容器内に貯蔵する条件下では使用する瞬間まで安定であることが分った。
【0082】
例6
水含有微小球を覆う主被膜を有するマイクロカプセルの製造
アルギン酸ナトリウムの代わりにペクチンを使用する以外例5と同様にしてマイクロカプセルを製造した。得られたマイクロカプセルの直径は4.0 mmであり、含水率は96質量%であった。試験Aではマイクロカプセルの減水率は4質量%を超えず、試験Bでは滲出液は出ず、粒子の凝集は認められなかった。傾斜法における安息角は32〜34°と、良好な非凝集性を有することが分った。密閉容器内に6カ月間貯蔵したところ、重量減は認められなかった。これらのデータから、得られたマイクロカプセルは、密閉容器内に貯蔵する条件下では使用する瞬間まで安定であることが分った。
【0083】
例7
水含有微小球上の主被膜表面に水を含有するマイクロカプセルの製造
3.0 gのアルギン酸ナトリウム及び1.0 gのポリアクリル酸を97 mlの蒸留水に添加して主水溶液を調製し、かつキトサンの代わりに2.25 gのポリビニルピロリドンを沈殿用水溶液に添加した以外、例5と同様にしてマイクロカプセルを製造した。得られたマイクロカプセルの直径は0.25 mmであり、含水率は90質量%であった。試験Aではマイクロカプセルの減水率は4質量%を超えず、試験Bでは滲出液は出ず、粒子の凝集は認められなかった。傾斜法における安息角は32〜34°であり、良好な非凝集性を有することが分った。密閉容器内に6カ月間貯蔵したところ、重量減は認められなかった。これらのデータから、得られたマイクロカプセルは、密閉容器内に貯蔵する条件下では使用する瞬間まで安定であることが分った。
【0084】
例8
主被膜及び追加の被膜を有する含水マイクロカプセルの製造
例5と同様に製造した30.0 gのマイクロカプセル(セルロースアセトフタレート及びキトサンを含有する主被膜を有する)に、50.0 mlの四塩化炭素(CCl4)を添加し、10〜15分間攪拌した後、触媒として0.36 mlのホスホレンを添加した。得られた混合物を10〜15分間攪拌し、次いで10 mlのCCl4に溶解した3.0 gのポリイソシアネートを徐々に添加した。攪拌を20〜25℃の温度で3時間続けた。処理の終了後、液相を濾別し、排気フード内で約30分間乾燥した後、マイクロカプセルを密封容器に入れた。
【0085】
試験Aではマイクロカプセルの減水率は3.9質量%を超えず、試験Bでは滲出液は出ず、粒子の凝集は認められなかった。傾斜法における安息角は32〜34°であり、良好な非凝集性を有することが分った。
【0086】
例9
主被膜及び追加の被膜を有する水含有マイクロカプセルの製造
3 gのポリイソシアネートの代わりに、2.1 gのポリイソシアネートと0.9 gのトルエンジイソシアネートとの混合物(重量比は70〜30質量%の範囲内)を使用した以外、例8と同じ方法によりマイクロカプセルを製造した。試験Aではマイクロカプセルの減水率は3.9質量%を超えず、試験Bでは滲出液は出ず、凝集は起こらなかった。傾斜法における安息角は32〜34°であり、良好な非凝集性を有することが分った。
【0087】
例10
主被膜及び追加の被膜を有する水含有マイクロカプセルの製造
96.0 mlの蒸留水に3.0 gのアルギン酸ナトリウムを添加した後20〜25℃の温度で4〜5時間攪拌することにより得た溶液に、1.0 gのセルロースアセトフタレートを溶解させ、20〜25℃の温度で2〜3時間攪拌した。得られた溶液に、追加の被膜の第一の成分(1.0 gのヘキサメチレンジアミン)を添加し、25〜30分間攪拌することにより、主水溶液を調製した。また150 mlの蒸留水に2.25 gのキトサンを溶解させ、20〜25℃の温度で2〜3時間攪拌し、次いで3.75 gの二塩化カルシウムを添加し、30〜40分間攪拌しながら溶解させることにより、沈殿用水溶液を調製した。
【0088】
主水溶液を20〜25℃の沈殿用水溶液に滴下し、1.0〜2.0時間攪拌し、液相を濾別し、得られたマイクロカプセルを水洗し、完全に排水した。30.0 gのマイクロカプセルに50.0 mlの四塩化炭素(CCl4)を添加し、攪拌した後、10 mlのCCl4に溶解した3.0 gのポリイソシアネートを徐々に添加した。攪拌は20〜25℃の温度で3時間行った。処理が終了すると液相を濾別し、マイクロカプセルをCCl4で一回洗浄し、濾別し、排気フード内で約30分間乾燥した。
【0089】
試験Aではマイクロカプセルの減水率は4.0質量%を超えず、試験Bでは滲出液は出ず、凝集は起こらなかった。傾斜法における安息角は32〜34°であり、良好な非凝集性を有することが分った。
【0090】
例8、9及び10のマイクロカプセルの試験の結果、主被膜及び追加の被膜を有するマイクロカプセルは例6及び7で得られたマイクロカプセルと比較して性能は本質的に異ならないが、表面の親油性が向上していることが分った。これらの特性はマイクロカプセルのぬれ角の測定により確認された。ぬれ角の測定結果の代表を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
上記例は本発明のマイクロカプセル化法を限定するものではない。例えば、本発明のマイクロカプセルに用いる追加の被膜は上記組成に限定されず、その特性(例えば、添加するポリマーの性質に応じた被膜の親油性化)も制御可能である。
【0093】
本発明のマイクロカプセルは密閉容器内に貯蔵する温度条件下で安定であり、水を長時間保持することができ、非凝集性に優れており、消火剤又は冷却剤として直ぐに使用可能である。
【0094】
本発明のマイクロカプセルは、追加の被膜を形成して表面を親油性化することにより、ポリマーの燃焼性を低減する充填材(例えば難燃材)として使用可能となる。
【0095】
マイクロカプセル化した水溶液及び懸濁液は、例えば環境に対して培地をプログラム通りに保護したり、食品処理工業その他の分野において活性を長期化したりするために、新規な医薬品、微生物培地等を作製するのに使用することができる。ポリマーの物理化学及びマイクロカプセル化の分野における当業者であれば、本発明のマイクロカプセル及びその製造方法を本発明の範囲を逸脱することなく修正又は改良することができる。例えば、主被膜及び追加の被膜の組成を、酸性又はアルカリ性の媒体や他の刺激性媒体と接触し得る成分から選択することができるし、マイクロカプセルから水又は水溶液を所定の条件及び速度でプログラム通りに開放するために修正することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水又はゲル状水溶液を含有するマイクロカプセルにおいて、水又はカルシウムイオンで架橋されたカルボキシル基含有ゲル生成電解質によりゲル化した水溶液を含有する微小球状核を有することを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロカプセルにおいて、前記微小球中の前記ゲル生成高分子電解質がアルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他のカルボキシル基含有多糖類を含有することを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項3】
水又はゲル状水溶液を含有するマイクロカプセルにおいて、水又はカルシウムイオンで架橋されたカルボキシル基含有ゲル生成電解質によりゲル化された水溶液を含有する微小球状核と、前記微小球状核中の水分の蒸発を防止するために微小球表面に形成された主被膜とを有することを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項4】
請求項3に記載のマイクロカプセルにおいて、前記微小球中の前記ゲル生成高分子電解質がアルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他のカルボキシル基含有多糖類であることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項5】
請求項3に記載のマイクロカプセルにおいて、前記主被膜が前記微小球状核中の水分の蒸発を防止するのに必要な厚さを有することを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項6】
請求項3に記載のマイクロカプセルにおいて、前記核の外面上に、第一の高分子量成分と反対の電荷を有する第二の高分子量成分との錯化合物からなる主被膜が形成されていることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項7】
請求項3に記載のマイクロカプセルにおいて、前記主被膜が負の電荷を有する第一の高分子量成分と正の電荷を有する第二の高分子量成分との錯化合物により形成されていることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項8】
請求項3に記載のマイクロカプセルにおいて、前記主被膜がカルボキシル基により負の電荷を有する第一の高分子量成分とアミノ基により正の電荷を有する第二の高分子量成分との錯化合物により形成されていることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項9】
請求項3に記載のマイクロカプセルにおいて、前記主被膜がセルロースアセトフタレートとキトサンとの錯化合物により形成されていることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項10】
請求項3に記載のマイクロカプセルにおいて、前記主被膜がポリアクリル酸とポリビニルピロリドンとの錯化合物により形成されていることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項11】
請求項3に記載のマイクロカプセルにおいて、親油性を有する追加の外層被膜を有することを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項12】
請求項11に記載のマイクロカプセルにおいて、前記追加の外層被膜がポリカルボジイミドにより形成されていることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項13】
請求項11に記載のマイクロカプセルにおいて、前記追加の外層被膜がポリ尿素により形成されていることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項14】
請求項1、3及び11のいずれかに記載のマイクロカプセルにおいて、90%以上が0.25〜5.0 mmの範囲内の直径を有し、90質量%以上が水又は水溶液であることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項15】
水又はカルシウムイオンで架橋されたゲル生成電解質により生成されたゲル状水溶液を含有する微小球状核を有するマイクロカプセルを製造する方法であって、
(a) 少なくともカルボキシル基含有ゲル生成電解質が溶解した主水溶液を生成し、
(b) 少なくとも一種の二価のカルシウムイオン源が溶解した沈殿用水溶液を生成し、
(c) 前記主水溶液を20〜25℃の前記沈殿用水溶液に、微小球の分散液を生成するのに必要な時間攪拌しながら滴下し、もって前記ゲル生成高分子電解質を前記二価のカルシウムイオンにより架橋して、前記主水溶液をゲル状とし、
(d) 前記分散液から前記微小球を濾別し、
(e) 前記微小球を乾燥して水分を除去する
工程を有することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記ゲル生成高分子電解質がアルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他のカルボキシル基含有多糖類であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法において、前記二価のカルシウムイオン源として二塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び/又はその他の水溶性カルシウム塩の水溶液を使用することを特徴とする方法。
【請求項18】
水又はゲル状水溶液を含有する微小球状核、及び前記微小球状核中の水分の蒸発を防止する主被膜を有するマイクロカプセルを製造する方法であって、
(a) 少なくともカルボキシル基含有ゲル生成高分子電解質、及び主被膜を形成し得る第一の高分子量成分が溶解した主水溶液を生成し、
(b) 少なくとも一種の二価のカルシウムイオン源、及び前記第一の高分子量成分と反対の電荷を有し、主被膜を形成し得る第二の高分子量成分が溶解した沈殿用水溶液を生成し、
(c) 前記主水溶液を20〜25℃の前記沈殿用水溶液に、微小球の分散液を生成するのに必要な時間攪拌しながら滴下し、もって前記ゲル生成高分子電解質を前記二価のカルシウムイオンにより架橋して、前記主水溶液をゲル状とし、
(d) 前記分散液を、微小球状核を有するマイクロカプセルを形成するのに必要な時間20〜25℃の温度に保持し、もって前記第一の高分子量成分と前記第二の高分子量成分との錯化合物により形成された主被膜内に前記微小球状核を閉じ込め、
(e) 前記マイクロカプセルを前記分散液から濾別し、
(f) 前記マイクロカプセルを水洗した後大気中で乾燥し、
(g) 前記マイクロカプセルを凝集防止剤で処理し、
(h) 得られたマイクロカプセルを乾燥して水分を除去する
工程を有することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記ゲル生成高分子電解質がアルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他のカルボキシル基含有多糖類であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法において、前記二価のカルシウムイオン源として二塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び/又はその他の水溶性カルシウム塩の水溶液を用いることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法において、前記主被膜の第一の高分子量成分が負の電荷を有する高分子量化合物であり、前記主被膜の第二の高分子量成分が正の電荷を有する高分子量化合物であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項18に記載の方法において、前記主被膜の第一の高分子量成分がカルボキシル基により負の電荷を有する高分子量化合物であり、前記主被膜の第二の高分子量成分がアミノ基により正の電荷を有する高分子量化合物であることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項18に記載の方法において、前記主被膜の第一の高分子量成分がセルロースアセトフタレートであり、前記主被膜の第二の高分子量成分がキトサンであることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項18に記載の方法において、前記主被膜の第一の高分子量成分がポリアクリル酸であり、前記主被膜の第二の高分子量成分がポリビニルピロリドンであることを特徴とする方法。
【請求項25】
水又は前記ゲル状水溶液を含有する微小球状核、前記微小球状核中の水分の蒸発を防止する主被膜、及び追加の親油性被膜を有するマイクロカプセルを製造する方法であって、
(a) 少なくともカルボキシル基含有ゲル生成高分子電解質、及び主被膜を形成し得る第一の高分子量成分が溶解した主水溶液を生成し、
(b) 少なくとも一種の二価のカルシウムイオン源、及び前記第一の高分子量成分と反対の電荷を有し、主被膜を形成し得る第二の高分子量成分が溶解した沈殿用水溶液を生成し、
(c) 前記主水溶液を、微小球の分散液を生成するのに必要な時間攪拌しながら20〜25℃の前記沈殿用水溶液に滴下し、もって前記ゲル生成高分子電解質を前記二価のカルシウムイオンにより架橋して前記主水溶液をゲル状とし、
(d) 前記分散液を、微小球状核を有するマイクロカプセルを生成するのに十分な時間20〜25℃の温度に保持し、もって前記第一の高分子量成分と前記第二の高分子量成分との相互作用により形成された主被膜内に前記微小球状核を閉じ込め、
(e) 追加の親油性被膜の形成に使用すべき第一の成分としての微量の水を前記主被膜の外面に有する前記マイクロカプセルを前記分散液から濾別し、
(f) 追加の親油性被膜を形成し得る第二の成分、及び水溶性であるが有機溶媒に溶解しない触媒を含有する高揮発性有機溶媒からなる親油性塗液を調製し、
(g) 前記マイクロカプセルを前記親油性塗液に攪拌しながら添加して、前記マイクロカプセルの分散液を生成し、
(h) 前記マイクロカプセルの分散液を、前記触媒の存在下で前記マイクロカプセルの外面上の微量の水(前記第一の成分)が前記第二の成分と相互作用して追加の親油性外層被膜を形成するのに十分な時間、20〜25℃の温度に保持し、
(k) 前記マイクロカプセルを前記親油性塗液から濾別し、
(m) 前記マイクロカプセルを高揮発性有機溶媒で洗浄し、
(n) 前記マイクロカプセルを乾燥して水分を除去する
工程を有することを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法において、工程(a) での前記ゲル生成高分子電解質がアルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他のカルボキシル基含有多糖類であることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項25に記載の方法において、工程25における前記二価のカルシウムイオン源として二塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び/又はその他の水溶性カルシウム塩の水溶液を使用することを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項25に記載の方法において、前記主被膜の第一の高分子量成分が負の電荷を有する高分子量化合物であり、前記主被膜の第二の高分子量成分が正の電荷を有する高分子量化合物であることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項25に記載の方法において、前記主被膜の第一の高分子量成分がカルボキシル基により負の電荷を有する高分子量化合物であり、前記主被膜の第二の高分子量成分がアミノ基により正の電荷を有する高分子量化合物であることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項25に記載の方法において、前記主被膜の第一の高分子量成分がセルロースアセトフタレートであり、前記主被膜の第二の高分子量成分がキトサンであることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項25に記載の方法において、前記主被膜の第一の高分子量成分がポリアクリル酸であり、前記主被膜の第二の高分子量成分がポリビニルピロリドンであることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項25に記載の方法において、前記高揮発性有機溶媒が四塩化炭素又はジメチルカーボネートであることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項25に記載の方法において、前記追加の親油性被膜が、前記第一の成分としての微量の水と、前記第二の成分としてのポリイソシアネート又はポリイソシアネート及びトルエンジイソシアネートの混合物との相互作用により形成されたポリカルボジイミドであることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項25に記載の方法において、前記触媒がホスホレンを主体とし、好ましくは1-オキソ-1.3-ジメチルホスホレンであることを特徴とする方法。
【請求項35】
水又はゲル状水溶液を含有する微小球状核、前記微小球状核を覆う主被膜、及び追加の親油性外層被膜を有するマイクロカプセルを製造する方法であって、
(a) 少なくともカルボキシル基含有ゲル生成高分子電解質、主被膜を形成し得る第一の高分子量成分、及び前記追加の親油性被膜を形成し得る第一の成分が溶解した主水溶液を生成し、
(b) 少なくとも一種の二価のカルシウムイオン源、及び前記第一の高分子量成分と反対の電荷を有し、主被膜を形成し得る第二の高分子量成分が溶解した沈殿用水溶液を生成し、
(c) 前記主水溶液を、微小球の分散液を生成するのに十分な時間20〜25℃の前記沈殿用水溶液に攪拌しながら滴下し、もって前記ゲル生成高分子電解質を前記二価のカルシウムイオンにより架橋して、前記主水溶液をゲル状とし、
(d) 前記微小球の分散液を、微小球状核を有するマイクロカプセルを形成するのに十分な時間20〜25℃の温度に保持し、もって前記第一の高分子量成分と前記第二の高分子量成分との相互作用により形成された主被膜内に前記微小球状核を閉じ込め、
(e) 前記マイクロカプセルを前記分散液から濾別し、
(f) 追加の親油性被膜を形成し得る第二の成分を含有する高揮発性有機溶媒からなる親油性塗液を調製し、
(g) 前記マイクロカプセルを 前記親油性塗液に攪拌しながら添加して、前記マイクロカプセルの分散液を生成し、
(h) 前記マイクロカプセルの分散液を、前記追加の親油性被膜を形成するのに十分な時間20〜25℃の温度に保持し、
(k) 前記マイクロカプセルを前記親油性塗液から濾別し、
(m) 前記マイクロカプセルを高揮発性有機溶媒で洗浄し、
(n) 前記マイクロカプセルを乾燥して水分を除去する
工程を有することを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法において、工程(a) での前記ゲル生成高分子電解質がアルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム及び/又はその他のカルボキシル基含有多糖類であることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法において、前記二価のカルシウムイオン源として、二塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム及び/又はその他の水溶性カルシウム塩の水溶液を使用することを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項35に記載の方法において、前記主被膜の第一の高分子量成分が負の電荷を有する高分子量化合物であり、前記主被膜の第二の高分子量成分が正の電荷を有する高分子量化合物であることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項35に記載の方法において、前記主被膜の第一の高分子量成分がカルボキシル基により負の電荷を有する高分子量化合物であり、前記主被膜の第二の高分子量成分がアミノ基により正の電荷を有する高分子量化合物であることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項35に記載の方法において、前記主被膜の第一の高分子量成分がセルロースアセトフタレートであり、前記主被膜の第二の高分子量成分がキトサンであることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項35に記載の方法において、前記主被膜の第一の高分子量成分がポリアクリル酸であり、前記主被膜の第二の高分子量成分がポリビニルピロリドンであることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項35に記載の方法において、前記高揮発性有機溶媒が四塩化炭素又はジメチルカーボネートであることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項35に記載の方法において、前記追加の親油性被膜が、前記第一の成分としてのヘキサメチレンジアミン又はポリエチレンポリアミン、及び/又はその他の水溶性ジアミン及びポリアミンと、前記第二の成分としてのポリイソシアネート又はポリイソシアネート及びトルエンジイソシアネートの混合物とからなるポリ尿素からなることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項15、18、25及び35のいずれかに記載の方法において、前記マイクロカプセルの90%以上が0.25〜5.0 mmの範囲内にある直径を有し、90質量%以上が水又は前記水溶液からなることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2010−179095(P2010−179095A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5348(P2010−5348)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(597113930)
【出願人】(510012843)
【Fターム(参考)】