説明

水和金属酸化物を用いるリン酸化分子の検出と単離のための方法と組成物

本発明は、水和金属酸化物を含むホスホアフィニティ物質を用いて、ホスホ分子を検出し、単離するための方法を提供する。1実施態様では、サンプル中のホスホ分子を検出する方法は、(a)ホスホ分子がホスホアフィニティ物質に結合して、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で、サンプルを、水和金属酸化物を含むホスホアフィニティ物質と接触させる工程、及び(b)ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の形成を検出して、それによって、該サンプル中のホスホ分子を検出する工程を含む。他の実施態様では、サンプルからホスホ分子を単離する方法は、(a)ホスホ分子がホスホアフィニティ物質に結合して、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で、サンプルを、水和金属酸化物を含むホスホアフィニティ物質と接触させる工程、この場合、該水和金属酸化物はイットリウムを含む、及び(b)該サンプルから該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を分離し、それによって、該サンプルからホスホ分子を単離する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、酸化イットリウム、イットリウムアルミニウムガーネット、及び二酸化チタンのような、1種類以上の水和金属酸化物を含有するホスホアフィニティ物質を用いる、リン酸化分子の検出と単離に関する。
【0002】
身体の細胞は、機能、大きさ、寿命及びその他の非常に多くの特徴において異なる、多くの種類の分子を含有する。これらの分子の一部は、体内でのそれらの寿命中に変化しないが、他の分子は化学反応によって修飾される。これらの修飾は、正常状態並びに、損傷、感染及び疾患によって惹起される異常状態を含めた、特定の細胞状態を示すことができる。
【0003】
例えば、タンパク質は、体内でのそれらの寿命中に、しばしば、化学的に修飾される。タンパク質は、その合成中及び後に、又は両方で修飾されることができ、この修飾は、タンパク質の大きさ及び構造を変えることができ、その結果、細胞内での該タンパク質の機能又は挙動を変化させることが可能になる。タンパク質の修飾の例は、リン酸基の付加(リン酸化)である。
【0004】
キナーゼ(リン酸化)及びホスファターゼ(脱リン酸)と呼ばれる酵素による、タンパク質上のスレオニン、セリン及びチロシン残基の可逆的なリン酸化は、例えば増殖及び細胞サイクル調節のような、多くの細胞プロセスの制御に重要な役割を果たす。リン酸化は、一つのタンパク質から他のタンパク質へと逐次的に起きて、「リン酸化カスケード」と呼ばれる、一種の「シグナル伝達経路」である、活性化の連鎖を生じることができる。リン酸化カスケードは、細胞の増殖、死亡及び分化を導くシグナリング・ネットワーク・・・体内で正常細胞を維持するための重要なシグナル・・・として認識されている。細胞内のある特定の瞬間におけるタンパク質のリン酸化状態の判定は、シグナル伝達状態、例えば、細胞の「オン」又は「オフ」状態を表示することができる。
【0005】
多くの細胞プロセスは、タンパク質の可逆的なリン酸化によって制御され、ヒト細胞によって発現されるタンパク質の総数の30%以上が、それらの存在中のある時点でリン酸化される可能性がある。したがって、タンパク質のリン酸化状態の判定は、プロテインキナーゼ基質の同定並びにシグナル伝達経路のオン/オフ状態の表示のために重要である。シグナル伝達経路のオン/オフ状態は、例えば癌のような病態生理学的プロセスを理解するために重要でありうる。このようなシグナル伝達経路をより良く理解するために、例えば正常状態並びに罹患状態のような、異なる細胞状態下での種々な細胞種類のリン酸化タンパク質を同定する試みが、研究共同体のなかで行なわれている。正常状態及び罹患状態下で起こるリン酸化の差異の判定は、例えば、診断的及び他の医学的試験法の開発に利用することができる。
【0006】
シグナル伝達経路におけるリン酸化の重要な役割を考えるならば、細胞によって発現されるタンパク質の全数で起こるリン酸化イベントの解析(ホスホプロテオーム解析)は、ある範囲の細胞プロセスを理解するために有用である。ホスホプロテオーム解析は、恐らく、例えば分化、増殖調節及び細胞死の制御のような、複雑な生物学的プロセスに関する洞察を明らかにするであろう。したがって、ホスホプロテオーム解析は、診断的及び予後的検査の開発に寄与し、臨床トライアルの状況を改良し、薬物開発中に薬物の安全性及び効力を表示すると期待される。
【0007】
ホスホプロテオーム解析の分野における一つのチャレンジは、タンパク質リン酸化レベルを全体的に評価するための正確な方法を開発することである。タンパク質リン酸化の全体的分析は、シグナリング・ホスホプロテインが体内に典型的に低い存在度で存在するので、分析的チャレンジである。タンパク質リン酸化の全体的分析を改良する分析方法は、例えば、多重のホスホプロテイン・バイオマーカーを同時に検査することができる検査法のような、医学的検査法の開発に寄与することができる。この種類の試験は、単独の診断マーカーが役に立たないか又は利用できない疾患又は状態を検出するために役に立つと期待される。
【0008】
したがって、ホスホプロテインを検出及び/又は単離することができることは、多くの疾患プロセスにおけるリン酸化の重要な役割を考慮するならば、細胞研究並びに医学的検査法開発のために有用である。ホスホ分子の単離と検出のための改良アプローチは、タンパク質リン酸化の全体的分析と、関連した一般的及びバイオメディカル・ホスホ分子研究を促進すると考えられる。
【0009】
概要
本明細書に記載するテクノロジーは、サンプルからホスホ分子を単離する方法に関する。一つの態様では、該方法は、(a)ホスホ分子が、ホスホアフィニティ物質に結合して、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で、サンプルを、水和金属酸化物を含むホスホアフィニティ物質と接触させる工程と、(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を、該サンプルから分離し、それによって、ホスホ分子をサンプルから単離する工程を包含する。他の態様では、該方法は、(a)ホスホ分子が、ホスホアフィニティ物質に結合して、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で、サンプルを、水和金属酸化物と担体を含むホスホアフィニティ物質と接触させる工程と、(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体からホスホ分子を溶離して、それによって、該ホスホ分子を該サンプルから単離する工程を包含する。これらの方法はさらに、ホスホ分子をホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体から分離する工程を包含することができる。
【0010】
1実施態様では、本発明は、サンプルからホスホ分子を単離する方法を提供する。この方法は、(a)ホスホ分子が、ホスホアフィニティ物質に結合して、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で、サンプルを、水和金属酸化物と担体を含むホスホアフィニティ物質と接触させる工程、この場合、該水和金属酸化物はイットリウムを含む、及び(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体をサンプルから分離して、それによって、該ホスホ分子を該サンプルから単離する工程を包含する。他の実施態様では、サンプルからホスホ分子を単離する方法は、(a)ホスホ分子が、ホスホアフィニティ物質に結合して、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で、サンプルを、水和金属酸化物と担体を含むホスホアフィニティ物質と接触させる工程、この場合、該水和金属酸化物はイットリウムを含む、及び(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体からホスホ分子を溶離して、それによって、該ホスホ分子を該サンプルから単離する工程を包含する。必要な場合には、溶離の前に、未結合サンプル成分を該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体から除去することができる。これらの方法の実施態様では、該水和金属酸化物は酸化イットリウムである。これらの方法の、他の実施態様では、該水和金属酸化物はイットリウム鉄ガーネットである。
【0011】
本発明は、サンプルからリン酸化ポリペプチドを単離する方法を提供する。この方法は、(a)サンプルを、水和金属酸化物と担体を含むホスホアフィニティ物質と、ホスホ分子がホスホアフィニティ物質に結合してホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下及び有機溶媒を含む液体媒質中で接触させる工程、及び(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体からホスホ分子を溶離して、それによって、該ホスホ分子を該サンプルから単離する工程を包含する。種々な実施態様において、液体媒質は、例えば、イソプロパノール又はアセトニトリルを含むことができる。1実施態様では、例えばイオン性界面活性剤のような、界面活性剤の存在下で、溶離が行なわれる。
【0012】
本発明は、サンプル中のホスホ分子を検出する方法を提供する。1実施態様において、この方法は、(a)サンプルを、水和金属酸化物を含むホスホアフィニティ物質と、ホスホ分子がホスホアフィニティ物質に結合してホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で接触させる工程、及び(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の形成を検出して、それによって、該サンプル中のホスホ分子を検出する工程を包含する。1実施態様では、該検出は、ホスホ分子とホスホアフィニティ物質との間の結合を測定することを含むことができる。他の実施態様では、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体のホスホアフィニティ物質部分を検出する。特定の実施態様では、該ホスホアフィニティ物質部分の金属を検出する。さらなる実施態様では、該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体のホスホ分子部分。
【0013】
本発明は、サンプル中のホスホ分子を単離及び/又は検出する方法の実施に有用な、種々な商業的パッケージを提供する。1実施態様では、商業的パッケージは、担体に付着した水和金属酸化物を含み、該水和金属酸化物はイットリウムを含む。他の実施態様では、商業的パッケージはホスホアフィニティ・ユニットを含み、該ユニットは、水和金属酸化物で被覆された、複数の担体シートを含む。該担体シートは、例えばセルロースのような、膜又は紙であることができる。さらなる実施態様では、商業的パッケージは、水和金属酸化物と、該水和金属酸化物に結合する、検出可能な作用剤とを含むホスホアフィニティ粒子を含有する。
【0014】
本明細書に記載される方法及び商業的パッケージのいずれにおいても、水和金属酸化物は、例えば、粒子形であることができる。このようなものとして、ホスホアフィニティ物質は担体を含むことができる。該担体は、粒子、ビーズ、ゲル、マトリックス、膜、フィルター、ファイバー、シート、メッシュ、フリット、樹脂、サンプル容器、カラム、ピペット先端、スライドチャンネル及びMALDI−TOFプレートの群から選択することができる。該担体は、必要な場合には、検出可能なタグを含むことができる。
【0015】
本発明の方法に用いる水和金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化チタン、イットリウム鉄ガーネット、イットリウムアルミニウムガーネット、イットリウムガリウムガーネット、酸化第二鉄、酸化ガリウム、酸化イットリウム、酸化バナジウム、酸化ジルコニウム、チタン酸鉄、アルミン酸鉄、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、アルミン酸ジルコニウム、針鉄鉱、ギブス石、バイヤライト、ベーマイト、イルメナイト、イルメノルチル、シュードルチル、ルチル、ブロカイト、シュードブロカイト、ゲルキーライト、パイロファン石、エカンドリュウサイト、メラノスチバイト、アルマルコライト、スリランカイト及びアナターゼの群から選択することができる。特に、金属酸化物は、酸化イットリウム、イットリウム鉄ガーネット及び二酸化チタンから成る群から選択することができる。
【0016】
説明
本発明に記載するテクノロジーは、水和金属酸化物を含有するホスホアフィニティ物質を用いて、リン酸化分子を単離及び/又は検出するための方法、組成物及び商業的パッケージに関する。
【0017】
1実施態様では、本発明は、ホスホ分子を単離するための方法に関する。該単離方法は、多様な種類のホスホ分子集団の作製並びに単一種類のホスホ分子サンプルの調製に適用可能である。該単離方法は、例えば、複合サンプル中のホスホ分子の検出を改良するためにホスホ分子富化サンプルの調製に用いることができる。サンプルからのホスホ分子の単離は、ホスホ分子をホスホアフィニティ物質に結合させて、該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体をサンプルから分離することによって達成することができる。該単離は、ホスホ分子をホスホアフィニティ物質に結合させて、未結合サンプル成分を洗い流し、ホスホ分子を該ホスホアフィニティ物質から溶離することによっても達成することができる。単離されたリン酸化ポリペプチドの調製のために本発明の方法を用いることは、本明細書に、例えば実施例1、2及び3において記載する。
【0018】
本明細書に記載する方法及び商業的パッケージに用いるホスホアフィニティ物質は、水和金属酸化物を含有する、又は組み入れる、或いは水和金属酸化物の固体形であり、該水和金属酸化物はホスホ分子に選択的に結合する。以下で説明するように、多様な水和金属酸化物が、ホスホ分子への結合に適している。実施例1は、ホスホプロテインに選択的に結合させるための、3種類の異なるホスホアフィニティ物質・・・酸化イットリウム、イットリウム鉄ガーネット及び酸化チタン・・・の個別の使用を記載する。ホスホアフィニティ物質とホスホ分子との複合体がひと度形成されたならば、該複合体自体をサンプルから分離することができる、及び/又は該複合体のホスホ分子部分を分離することができる。以下で説明するように、このような分離は、使用者が選択したフォーマットに依存して、多様な手段を用いて行なうことができる。例えば、ホスホアフィニティ物質が固体粒子形であるか又は担体中に組み入れられている場合には、該分離は、サンプル(液体相)から該粒子又は担体(固体相又は半固体相)を分離することによって又は逆も同様に、行なうことができる。
【0019】
本明細書に記載する単離方法は、多様な物理的フォーマットによって行なうことができる。例えば、ホスホ分子をカラム充填ホスホアフィニティ物質から溶離することができる(実施例1参照);ホスホ分子を、マルチサンプル・プレートの穴中に充填された粒子から溶離することができる(実施例2参照);実施例1と2に記載するように調製したホスホ分子サンプルに、分析の前にさらに精製を行なうことができる(実施例3参照);ホスホ分子を、ホスホアフィニティ物質で被覆された膜から溶離することができる(実施例5、7及び8)。本明細書に提供した実施例及びガイダンスを考慮するならば、水和金属酸化物を組み込むホスホアフィニティ物質は、マクロ、ミクロ、低−スループット及び高−スループット・フォーマットで用いることができることは、認識されるであろう。
【0020】
本明細書で用いる限り、「単離(isolating)」なる用語は、ホスホ分子に関連して用いる場合に、ホスホ分子をサンプル中の他の分子、サブスタンス又は物質から分離する行為を意味する。「単離される(isolated)」なる用語は、本発明の方法又は商業的パッケージに有用な、ホスホ分子、ホスホアフィニティ物質、金属酸化物又は他の成分に関連して用いられる場合に、成分が、サンプル又は標本中で該成分と会合する、他の分子、サブスタンス又は物質を除去するように、人の手によって作用されることを意味する。用語「単離される」とは、絶対的純度を必要とせず、むしろ、相対的な用語として意図される。このようなものとして、用語「単離」は、一つ以上の初期サンプル成分の量又は初期ホスホ分子の量に比べて、サンプル中のホスホ分子の量を増加させる(本明細書中で、時には、サンプルを富化させると呼ばれる)ように、サンプルに作用することを包含する。
【0021】
本発明の方法は、種々な複雑さ(varying complexity)のサンプルからホスホ分子を単離する又は富化させるために用いることができる。実施例1、2、5及び8は、リン酸化状態及び非リン酸化状態のペプチドを含有するサンプル中のホスホペプチドの富化を記載する;実施例6は、ヒト血清を含有するサンプル中のホスホプロテインの富化を記載する;実施例7は、トリプシン消化タンパク質を含有するサンプル中のホスホペプチドの富化を記載する;そして実施例8は、5−プロテイン混合物を含有するサンプル中のホスホプロテインの富化を記載する。
【0022】
実施例8に記載するように、水和金属酸化物を含有するホスホアフィニティ物質にサンプルを結合させて;ホスホアフィニティ物質から未結合サンプル成分を除去し;ホスホアフィニティ物質からホスホ分子を溶離することによって、サンプル中のホスホ分子の量を富化させることができる。この特定の実施例では、二酸化チタン塗布膜をホスホアフィニティ物質として用いて、単離を行なう前後の対照タンパク質ウシ血清アルブミン、炭素アンヒドラーゼ及びミオグロブリンの量に比べて、単離を行なう前後のホスホプロテイン量を比較することによって、ホスホプロテイン富化を測定した。BSA、CAH及びmyoに比較して、それぞれ、9.5、8及び11の卵白アルブミン富化が、界面活性剤の不存在下で観察され、界面活性剤の存在下では、それぞれ、17.7、8.4及び125.7の富化が観察された。
【0023】
1実施態様では、本発明は、ホスホ分子を検出する方法を提供する。サンプル中のホスホ分子の検出は、ホスホアフィニティ物質にホスホ分子を結合させ、ホスホアフィニティ物質とホスホ分子との複合体又は該複合体の一部を検出することによって、達成することができる。以下で説明するように、このような複合体又は該複合体の一部の検出に、多くの、多様な分析方法を適用することができる。例えば、複合体の成分に比べた複合体の物理化学的性質、例えば、質量、電荷/質量比率、屈折率、蛍光異方性等を検出することができる。他の例として、複合体化した場合のホスホ分子とホスホアフィニティ物質との間の近似性から生じる性質、例えば、蛍光共鳴エネルギー伝達及び放射性シンチレーション近似性に基づく発光を検出することができる。他の例として、該複合体の成分、例えばホスホ分子又は水和金属酸化物を検出することができる。このような検出は、ホスホ分子若しくは水和金属酸化物を直接検出すること、又はホスホ分子若しくは水和金属酸化物上のタグを検出することを含みうる。ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の金属部分の検出は、実施例11と12に記載する。
【0024】
本明細書に記載する検出方法は、多様な物理的フォーマットで行なうことができる。例えば、ホスホ分子は、溶液中にあるときに;マトリックス中にあるときに(実施例10参照);アレイ中にあるときに(実施例9参照);並びに他のフォーマットで検出することができる。ホスホ分子を検出するための多様な、粒子に基づく方法を本明細書に記載する(例えば、実施例10と11参照)。例えば、水和金属酸化物又は水和金属酸化物で被覆された粒子担体でありうるホスホアフィニティ粒子は、直接検出することができるか;又は標識してから検出することができるか;又はホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を富化させる若しくは単離するために用いることができ、その後に該複合体を検出する。
【0025】
本明細書に記載するテクノロジーは、ホスホ分子と、水和金属酸化物から製造される若しくは水和金属酸化物を含有するホスホアフィニティ物質との間の複合体の形成を包含する。以前の研究によると、特定のホスホ分子がある一定の水和金属酸化物に結合しうることが判明している。無機オルトリン酸塩は、二酸化チタン粒子に吸着することが判明している(Damen et al, 1991; Kim and Chung,2001)。例えば、リン酸化ペプチドのような有機リン酸塩は、二酸化チタン粒子に選択的に結合することが判明しており、二酸化チタン粒子は、HPLC手法においてホスホプロテインを富化させるために用いられている(Sano and Nakamura, 2004a,b)。ピリドキサル5’−ホスフェート含有タンパク質及びホスホマンノース含有タンパク質を含めたリン酸化有機化合物が、酸化アルミニウム粒子に選択的に結合することが判明している(Pugniere et al, 1988; Coletti-Previero and Previero, 1989; Koppel et al, 1994)。オキシ水酸化鉄(III)粒子は、ホスフェート含有化合物を吸着することが判明しており、工業廃水の処理に用いられている(Zeng et al, 2004; Mustafa et al, 2004)。リン酸及びホスホン酸のモノエステルは、広いpH範囲にわたって水和金属酸化物に結合することが判明している。D,L−セリン−O−ホスフェート、エタノールアミン−O−ホスフェート及びフェニルホスホン酸は、酸化アルミニウムに結合することが判明しており(Coletti-Previero and Previero, 1989)、アデノシン 5’−ホスフェートは、酸化アルミニウムに選択的に結合することが判明している(Coletti-Previero and Previero, 1989)。固定金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)は、例えばGa(III)及びFe(III)のような三価遷移金属イオンで荷電した有機キレート基を含有する固定相を用いて、微量化学分析の前にホスホペプチドを富化させる(Posewitz and Tempst, 1999)。IMACでは、サンプル負荷バッファーに比べて高いpH若しくは高濃度の無機リン酸塩を有するバッファーを用いて、樹脂からペプチドを溶出する。
【0026】
商業的IMACに基づく手段の例は、IMAPアッセイ(Molecular Devices, Sunnyvale CA)である。IMAPは、三価遷移金属イオンによって誘導体化されたビーズをリン酸残基への結合に用いる蛍光偏光均一溶液アッセイである。これらのビーズは、蛍光標識ペプチド基質と共にキナーゼ反応に加えられる。キナーゼが基質をリン酸化するならば、該ビーズがリン酸残基に結合する。蛍光リン酸化基質の回転は、ビーズ結合によって緩慢になり、発光の大きな偏光を生じる。IMAPは、ホスホペプチドの測定に適用可能であるが、ホスホプロテインには適用可能ではないように思われる。IMAPでは、蛍光偏光の読み取りは、リン酸基と三価カチオンとの相互作用を保護するために、約6.0未満のpH値において行なわれる。したがって、蛍光偏光が読み取られる低いpHでは、キナーゼ反応が通常阻害されるので、キナーゼ・アッセイの連続モニターリングはIMAPによっては行なうことができない。
【0027】
ホスホ分子を単離する及び/又は検出するための本明細書に記載するテクノロジーは、本発明のテクノロジーが、キレート化三価遷移金属カチオンではなく、水和金属酸化物を用いる点で、IMACを用いる単離方法とは異なる。本発明のテクノロジーに用いる水和金属酸化物は、粒子及びフィルムを含めた、種々な形態でサンプルに存在することができる。このような粒子及びフィルムは、例えば、それらの特徴的な表面プラズモン吸収バンドのような、それらの物理的性質において金属イオンとは異なる。他の例として、金属イオンは等電点を有さないが、水和金属酸化物粒子と表面は等電点を有する。表面上でのリン酸部分−金属酸化物相互作用の機構は、遷移金属イオンとの相互作用とは異なる物理化学的現象を含むと考えられる。理論によって縛られるのを望むわけではないが、リン酸部分と水和金属酸化物との相互作用は、金属酸化物の表面上での水酸化物アニオンとリン酸部分との交換が収着を仲介するイオン交換収着型機構を介して生じるように思われる。この理由から、リン酸部分との水和金属酸化物相互作用のための実験条件は、リン酸部分との固定金属イオン相互作用とは異なる可能性がある。特に、水和金属酸化物ホスホアフィニティ物質は、アフィニティ物質上の金属イオン負荷を含まず、使用中に金属イオンを浸出しない。さらに、水和金属酸化物から製造されたデバイスは、厳しい使用に耐えることができ(can be rugged)、オートクレーブ処理可能である。
【0028】
本明細書に記載するテクノロジーは、サンプルからホスホ分子を単離する方法に関する。1態様では、方法は、(a)サンプルを、水和金属酸化物を含むホスホアフィニティ物質と、ホスホ分子がホスホアフィニティ物質に結合してホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で、接触させる工程、及び(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を該サンプルから分離し、それによって、該ホスホ分子を該サンプルから単離する工程を含む。他の態様では、方法は、(a)サンプルを、水和金属酸化物と担体とを含むホスホアフィニティ物質と、ホスホ分子がホスホアフィニティ物質に結合してホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で、接触させる工程、及び(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体からホスホ分子を溶離し、それによって、該ホスホ分子を該サンプルから単離する工程を含む。これらの方法はさらに、ホスホ分子をホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体から分離する工程を含むことができる。
【0029】
1実施態様では、本発明は、サンプルからホスホ分子を単離する方法を提供する。この方法は、(a)ホスホ分子が、ホスホアフィニティ物質に結合して、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で、サンプルを、水和金属酸化物を含むホスホアフィニティ物質と接触させる工程、この場合、該水和金属酸化物はイットリウムを含む、及び(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体をサンプルから分離して、それによって、該ホスホ分子を該サンプルから単離する工程を包含する。他の実施態様では、サンプルからホスホ分子を単離する方法は、(a)ホスホ分子が、ホスホアフィニティ物質に結合して、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で、サンプルを、水和金属酸化物と担体を含むホスホアフィニティ物質と接触させる工程、この場合、該水和金属酸化物はイットリウムを含む、及び(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体からホスホ分子を溶離して、それによって、該ホスホ分子を該サンプルから単離する工程を包含する。必要な場合には、溶離の前に、未結合サンプル成分を該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体から除去することができる。これらの方法の実施態様では、該水和金属酸化物は酸化イットリウムである。これらの方法の、他の実施態様では、該水和金属酸化物はイットリウム鉄ガーネットである。
【0030】
本発明は、サンプルからリン酸化ポリペプチドを単離する方法を提供する。この方法は、(a)サンプルを、水和金属酸化物と担体を含むホスホアフィニティ物質と、ホスホ分子がホスホアフィニティ物質に結合してホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下及び有機溶媒を含む液体媒質中で接触させる工程、及び(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体からホスホ分子を溶離して、それによって、該ホスホ分子を該サンプルから単離する工程を包含する。種々な実施態様において、液体媒質は、例えば、イソプロパノール又はアセトニトリルを含むことができる。1実施態様では、例えばイオン性界面活性剤のような、界面活性剤の存在下で、溶離が行なわれる。
【0031】
本発明は、サンプル中のホスホ分子を検出する方法を提供する。1実施態様において、この方法は、(a)サンプルを、水和金属酸化物を含むホスホアフィニティ物質と、ホスホ分子がホスホアフィニティ物質に結合してホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で接触させる工程、及び(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の形成を検出して、それによって、該サンプル中のホスホ分子を検出する工程を包含する。1実施態様では、該検出は、ホスホ分子とホスホアフィニティ物質との間の結合を測定することを含むことができる。他の実施態様では、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体のホスホアフィニティ物質部分を検出する。特定の実施態様では、該ホスホアフィニティ物質部分の金属を検出する。さらなる実施態様では、該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体のホスホ分子部分。
【0032】
本明細書に記載するテクノロジーを用いて、多様な種類のサンプルからホスホ分子を単離及び/又は検出することができる。本明細書で用いる限り、「サンプル」なる用語は、リン酸化分子を含有する、又は含有すると疑われる物質を意味する。リン酸化分子を単離及び/又は検出するための本発明の方法に有用なサンプルは、液体若しくは固体であることができ、液体中に溶解若しくは懸濁することができ、エマルジョン若しくはゲル状態であることができ、そして物質に結合する若しくは物質上に吸収されることができる。サンプルは、リン酸化分子を含有する又は含有すると疑われる、生物学的サンプル、環境的サンプル、実験的サンプル、診断的サンプル又は他の、任意の種類のサンプルであることができる。このようなものとして、サンプルは、生物(organism)、器官、組織、細胞、体液、バイオプシーサンプル若しくはこれらの断片であるか、又はこれらを含有することができる。本発明の方法に有用なサンプルは、例えば、キナーゼ及びホスファターゼの基質のような、リン酸化分子を含有すると疑われる、任意の物質であることができる。生物学的状況では、サンプルは、生物学的流体、全生物体(whole organism)、器官、組織、細胞、微生物、培養上清、細胞内(subcellular)細胞小器官、タンパク質複合体、個々のタンパク質、組み換えタンパク質、融合タンパク質、ウイルス、ウイルス粒子、ペプチド及びアミノ酸を包含することができる。
【0033】
リン酸化分子を保護する又は安定化するように、サンプルをプロセスすることができる。サンプル中の分子の完全性を保護する方法は、当業者に周知である。このような方法は、サンプル中の分子の変化を保護する又は最小にする、適当なバッファー及び/又は、ヌクレアーゼ、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を含めた阻害剤の使用を包含する。このような阻害剤は、例えば、キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(P−アミノエチルエーテル)N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、プロテアーゼ阻害剤、例えば、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、アプロチニン、ロイペプチン、アンチパイン等、並びにホスファターゼ阻害剤、例えば、ホスフェート、フッ化ナトリウム、バナデート等を包含する。分子間の選択的相互作用を可能にするための適当なバッファー及び条件は、当業者に周知であり、例えば、特徴付けるべきサンプル中の分子の種類に依存して、変化することができる(例えば、Ausubel et al, Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 47), John Wiley & Sons, New York(1999); Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press(1999); Tietz Textbook of Clinical Chemistry, 3rd ed., Burtis and Ashwood,eds., W.B.Saunders Philadelphia,(1999)参照)。
【0034】
妨害物質の存在を減らす及び/又はホスホアフィニティ物質へのサンプル成分の非選択的結合を減ずるように、サンプルをプロセスすることも可能である。リン酸化分子の溶解性を改良するために有用な典型的作用剤は、例えば、TRITON X−100、デオキシコール酸ナトリウム、尿素、チオ尿素及びドデシル硫酸ナトリウムのような界面活性剤を包含する。酸性ポリペプチドが、ホスホアフィニティ物質に非選択的に結合する傾向は、ポリペプチドサンプルのメチルエステル化によって弱めることができる(Ficarro et al, 2004)。
【0035】
本発明の方法では、必要な場合には、サンプルを、使用前に、分画することができる。サンプル分画のためには、例えば、免疫沈降、1−Dゲル電気泳動、2−Dゲル電気泳動、エレクトロブロッティング、液体クロマトグラフィー、エレクトロクロマトグラフィー、透析、2相ポリマー分離及び固相抽出のような、周知の分画方法を用いることができる。細胞内分画(subcellular fractionation)、又は例えばイオン交換、疎水性及び逆相、サイズ排除、アフィニティ、疎水性電荷−誘導クロマトグラフィー(hydrophobic charge-induction chromatography)等のようなクロマトグラフィー手法を含めた、液体サンプル又は細胞抽出物を分画するための種々な方法が、当業者に周知である(Ausubel et al,上記文献,1999; Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Third edition, Springer-Verlag, New York(1993); Burton and Harding, J.Chromatogr. A814:71-81(1998))。
【0036】
本発明の方法では、サンプルを、使用前に、タグで標識することができる。タグの例は、検出可能な部分、例えば、ルミネセンス部分、蛍光部分、放射性部分等;精製タグ、例えば、ポリヒスチジン、フラグ(flag)、myc及びGSTタグ;ポリヌクレオチド・タグ、アプタマー、タンパク質核酸;生物学的タグ、例えば、ファージ;抗体及び抗体様タグ;反応性有機分子若しくはペプチド質量タグ又は他の質量タグ、例えば、一定サイズの粒子(例えば、金属ビーズ及びナノ粒子タグ)等を包含する。実施例11は、蛍光部分でサンプルを標識することを記載する。この実施例では、ホスホ分子タグの蛍光消光を検出することによって、ホスホ分子の検出が行なわれる。
【0037】
ホスホ分子又は商業的パッケージを単離及び/又は検出するための本発明の方法に有用なホスホアフィニティ物質は、ホスホ分子に選択的に結合する水和金属酸化物を含有する又は該水和金属酸化物である。典型的な水和金属酸化物は、酸化イットリウム(Y)、酸化鉄(Fe、Fe)、イットリウム鉄ガーネット(Fe12)、イットリウム・ガリウム・ガーネット(YGa12)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAl12)、酸化バナジウム(VO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、チタン酸鉄(FeTi)、アルミン酸鉄(FeAl)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸ナトリウム(NaTiO)及びアルミン酸チタンジルコニウム(ZrTiAl)の水和形を包含する。水和金属酸化物はまた、例えば、アルミナ、二酸化チタン、ジルコニア及びイットリアのような表面コーティングとの、ヘマタイト、マグネタイト、水酸化クロム又は二酸化チタンのコアの複合体(composites)も包含する。無機酸化物は、自然に広く分布しており、水性環境中の懸濁粒子として、しばしば存在する。例えば収着現象のような化学的プロセスは、一部は、金属酸化物−水界面における該粒子の表面性質によって決定される。例えば、針鉄鉱(α−FeOOH)、ギブス石(α−Al(OH))、バイヤライト(β−Al(OH))、ベーマイト(γ−Al(OH))、イルメナイト(FeTiO)、イルメノルチル(Fex(Nb,Ta)x.Ti1−xO)、シュードルチル(FeTi)、ルチル(TiO)、ブロカイト(TiO)、シュードブロカイト(FeTiO)、ゲルキーライト(MgTiO)、パイロファン石(MnTiO)、エカンドリュウサイト(Zn,Fe,Mn)TiO、メラノスチバイト(Mn(Sb,Fe)O)、アルマルコライト(Mg,Fe)Ti、スリランカイト(Ti,Zr)O及びアナターゼ(TiO)のような、多くの天然発生無機酸化物を、ホスホ分子に選択的に結合するためのホスホアフィニティ物質に用いることができる。一般に、これらの及び他の無機金属は、水和される場合には、それらのリン酸化分子吸着能力を含めた、それらの総合的な物理化学的性質に寄与する、金属酸化物、水酸化物又はオキソヒドロキシデヒドロキシル基の層で覆われる表面を提示する。1実施態様では、本発明の方法及び商業的パッケージに有用なホスホアフィニティ物質は、酸化アルミニウム、酸化チタン、イットリウム鉄ガーネット、イットリウム・アルミニウム・ガーネット、イットリウム・ガリウム・ガーネット、酸化第二鉄、酸化ガリウム、酸化イットリウム、酸化バナジウム、酸化ジルコニウム、チタン酸鉄、アルミン酸鉄、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、アルミン酸チタンジルコニウム、針鉄鉱、ギブス石、バイヤライト、ベーマイト、イルメナイト、イルメノルチル、シュードルチル、ルチル、ブロカイト、シュードブロカイト、ゲルキーライト、パイロファン石、エカンドリュウサイト、メラノスチバイト、アルマルコライト、スリランカイト及びアナターゼの群から選択される水和金属酸化物を含有する。特定の実施態様では、該水和金属酸化物は、酸化イットリウム、イットリウム鉄ガーネット及び二酸化チタンである(例えば、実施例1参照)。具体的な実施態様では、選択される水和金属酸化物は、例えば、非チタン水和金属酸化物のように、二酸化チタンではない。他の実施態様では、選択される水和金属酸化物は、酸化鉄ではなく、酸化アルミニウムではない。
【0038】
ホスホ分子を単離し及び/又は検出するための本発明の方法又は商業的パッケージに用いるために選択されるホスホアフィニティ物質は、ホスホ分子に結合することができる。ホスホ分子は、例えばポリペプチド及びポリヌクレオチドのようなマクロ分子、並びに例えばアミノ酸及びヌクレオチドのような小分子であることができる。リン酸化部分を含有しうる分子の非限定的例は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、グリカン及び炭水化物を包含する。例えば、タンパク質又はペプチドのような、リン酸化ポリペプチド上に存在するリン酸化部分は、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、1−ホスホヒスチジン、3−ホスホヒスチジン、ホスホアスパラギン酸、ホスホグルタミン酸、Nε−ホスホリシン、デルタ−O−ホスホヒドロキシリシン、Nω−ホスホアルギニン、チオリン酸化、ホスホシステイン、リシンのε−アミノ基に共役したピリドキサルホスフェート・シッフ塩基、N−アセチルグルコサミン1−ホスフェート修飾セリン、アスパラギン結合オリゴ糖中に存在するマンノース6−ホスフェート又はO−パンテテインリン酸化セリンであることができる。本発明の方法を用いて単離される及び/又は検出されるホスホ分子は、一つ以上のホスホミメティック(phosphomimetic)基を含有する分子を包含する。ホスホミメティック基の非限定的例は、チロシン、セリン若しくはトレオニン残基上で誘導体化された、O−ボラノホスホペプチド及びO−ジチオホスホペプチド、ホスホラミド(phosphoramide)、H−ホスホネート、アルキルホスホネート、ホスホロチオーレート、ホスホジチオーレート及びホスホロフルオリデートを包含する。選択的結合とは、ホスホアフィニティ物質が一つ以上のホスホ分子に結合するが、非ホスホ分子には実質的に結合しないことを意味する。
【0039】
本発明の方法又は商業的パッケージに用いられる特定のホスホアフィニティ物質が、ホスホ分子に又はこれらの種類の、分子のサブセットに選択的に結合する、例えばリン酸化ポリペプチド並びに特定のリン酸化部分に選択的に結合することが可能でありうることは、理解される。特定のリン酸化部分の選択的検出の例として、リン酸化ポリペプチド上のホスホチロシン残基の検出を、実施例9に記載する。
【0040】
本発明の方法又は商業的パッケージに用いられるサンプル又はホスホアフィニティ物質は、担体に付着させることができる。本明細書で用いる限り、「担体(support)」なる用語は、その上に金属酸化物、サンプル若しくはホスホ分子が沈積する、付着固定される、取り込まれる、捕捉される若しくは塗布されることができる、又は金属酸化物、サンプル若しくはホスホ分子を包含するように機能することができる、固体又は半固体物質を意味する。担体は、天然物質又は合成物質であることができ、有機物質又は無機物質、例えば、ポリマー、樹脂、金属又はガラスであることができる。適当な担体は、当該技術分野で知られており、具体的には、例えば、Sepharoseとして商業的に入手可能であるようなアガロース;具体的には、カルボキシメチルセルロースを含むセルロース;例えば、Sephadexとして商業的に入手可能であるようなデキストラン;ポリアクリルアミド;ポリスチレン;ポリエチレングリコール;樹脂;シリケート;ジビニルベンゼン;メタクリレート;ポリメタクリレート;ガラス;セラミック;紙;金属;メタロイド;ポリアクリロイルモルホリド;ポリアミド;ポリ(テトラフルオロエチレン);ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリ(4−メチルブテン);ポリ(エチレンテレフタレート);レーヨン;ナイロン;ポリ(ビニルブチレート);ポリビニリデンジフルオリド(PVDF);シリコーン;ポリホルムアルデヒド;酢酸セルロース;コットン;ウール;デキストラン;トリスアクリル;ヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリ(ビニルアセテート−コ−エチレン)、オキシランアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メチルメタクリレート)、フェノール樹脂、ポリ(ビニリデンジフルオリド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、澱粉、ニトロセルロース、これらの混合物等を包含する。
【0041】
本発明の方法に有用な担体は、例えば、膜、カラム、例えばビーズのような粒子を含有する、中空の固体、半固体、穴若しくはキャビティ、ゲル、ファイバー(ファイバー光学物質を包含する)、シート、マトリックス及びサンプル容器を包含しうる、多様な物理的フォーマットを有することができる。サンプル容器の非限定的例は、サンプルウェル、チューブ、毛管、バイアル及び任意の他の容器、サンプルを保持することができる溝若しくはくぼみ(膜、フィルター、マトリックス等を含有するものを包含する)を包含する。サンプル容器は、例えば、マイクロプレート、スライド、微小流体デバイス、アレー基板(array substrate)、質量分光分析サンプルプレート等のような、マルチサンプル・プラットホーム上に含めることができる。ホスホアフィニティ物質が付着する粒子は、所望の粘度の溶液中に懸濁して留まる粒子並びに所望の粘度の溶液中で容易に沈降する粒子を含めて、多様なサイズを有することができる。特定の実施態様では、例えば結晶のような、粒子担体又はホスホアフィニティ物質粒子は、約1nm〜1μmの直径を有する。「ホスホアフィニティ粒子」なる用語は、粒子形状のホスホアフィニティ物質を意味する。この用語は、例えば結晶又は他の固体形のような、ホスホアフィニティ物質で被覆された粒子並びにホスホアフィニティ物質から製造された粒子を包含する。「ホスホアフィニティ・シート」なる用語は、例えば、紙、膜、フィルター等のような、平たい形状のホスホアフィニティ物質を意味する。ホスホアフィニティ物質は、例えば、スピン−カラム、マイクロカラム・ピペット先端、マルチウェル・ミクロウェルストリップ、マルチウェル・マイクロプレート及び磁気セパレーターのような、デバイスの一部である又はデバイスに組み込まれることができる。例えば、磁気分離手段を用いる場合には、担体はさらに、強磁性又は常磁性物質を含有することも可能である。
【0042】
必要な場合には、担体は、例えば、検出及び/又は精製のために有用なタグのようなタグを含むことができる。担体はまた、例えば金属酸化物粒子、結晶又は他の固体形のような、水和金属酸化物の固有の特徴であることもできる。カラム、ベッド又は表面形状のホスホアフィニティ物質として用いるために、担体は、例えば、均一多孔質ネットワークと、化学的及び/又は生物学的不活性のような、特徴を有することができる。
【0043】
本発明の方法又は商業的パッケージに有用なホスホアフィニティ物質を用意するための担体上に金属酸化物を付着させる又は沈積させるために、多様な手段を用いることができる。例えば、金属酸化物を担体上に、液相沈着、化学浴沈着、連続イオン層吸着と反応(SILAR)、無電解沈着、反応性スパッターリング、反応性蒸発、スプレイ熱分解、トラック−エッチング(track-etching)、陽極酸化、常温プレス成形、化学的蒸着又はゾル−ゲル・プロセシングによって沈着させることができる。沈着した金属酸化物は、結晶質、ナノ結晶質、不完全結晶化又は非晶質であることができる。幾つかの実施態様では、結晶質層をリン酸化分子の結合に適したものにするために、結晶質層をその後にヒドロキシル化する、そして該結晶質層を水性媒質中で一定の時間、例えば1時間〜数か月間インキュベーションすることによって、ヒドロキシル化することができる。
【0044】
1実施態様では、金属酸化物を担体に、ほぼ周囲温度において、水性媒質中で付着させる。この実施態様では、有機担体物質を一般に用いる。有機担体物質の非限定的例は、セルロース、コットン、ウール、デキストラン、アガロース、ポリアクリルアミド、トリスアクリル、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリ(ビニルアセテート−コ−エチレン)、オキシランアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メチルメタクリレート)、フェノール樹脂、ポリ(ビニリデンジフルオリド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート及び澱粉を包含する。沈着は、イオン毎の付着基準(on ion-by-ion attachment basis)又は粒子付着基準で達成されうる。例えば、スルホネート基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基によるような、有機担体の官能基化は、金属酸化物の付着を助成することができる。1実施態様では、水和金属酸化物を、セルロース又は修飾セルロースの担体上に沈着させる。それ故、1実施態様では、本発明の方法又は商業的パッケージに用いられる有機担体を有機基で官能基化し、他の実施態様では、有機担体をスルホネート基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基によって官能基化する。
【0045】
1実施態様では、水和金属酸化物を無機担体に沈着又は付着させる。典型的な無機担体は、セラミック、金属、ガラス、アルミナ、シリカ、ジルコニア、強磁性物質及び常磁性物質を包含する。例えばアルミナのような、耐久性の大きい多孔質セラミックベース担体は、過酷な条件を用いた、水和金属酸化物による誘導体化を可能にする。セラミック膜は、一般に、種々な過酷な化学薬品(強酸と有機溶媒)及び高温に対して不活性であるため、ある一定のバイオメディカル用途に有用でありうる。例えば、水和金属酸化物は、中性〜塩基性pH値においてガラス内で貯蔵したときに、溶液からシリケート種を吸着して、該物質の等電点を実質的に低下させることが知られている。水和金属酸化物から吸着された物質を除去するための一つのアプローチは、それらを1M水酸化ナトリウム、脱イオン水、1M硝酸、そして再び脱イオン水によって洗浄することである。有機担体又は無機担体のいずれを用いるにしても、該水和金属酸化物は、充分なアフィニティでホスホ分子に結合して、該複合体の検出を可能にし、アッセイ実行の時間にわたって安定である。
【0046】
多孔質水和金属酸化物を製造するための一つのアプローチは、水和金属酸化物コーティング形成のための前駆物質としてTi(IV)、Fe(III)、Zr(IV)又はAl(III)イオンを用いる、水性溶液からの直接沈着による薄フィルムの低温合成を包含する(Niesen and De Guire, 2001)。これらの金属イオンは、酸性の水性媒質中でさえ容易に加水分解されるので、この一般的アプローチのために用いることができる。同様なコーティングを、例えば、2−プロパノール、又は酢酸とアセトンと水との適当に処方されたブレンドのような、代替溶媒を用いて、下にある有機担体を損なうことなく、製造することができる。40〜70℃における1.0〜3.1のpH範囲での0.03〜0.1M四フッ化チタンの水性溶液を、有機基体と無機基体両方上のアナターゼフィルムの沈着のために用いることができる。特に、60℃において有機担体をコーティングするために、pH1.9の0.05M四フッ化チタンを用いることができる。
【0047】
理論によって縛られるのを望むわけではないが、担体の効果的なコーティングのためには、二酸化チタンの異種核形成が必要であるように思われる。チタン−フルオリド結合は比較的安定であるので、該反応物質の加水分解及び重合は、比較的緩慢な速度で生じる。3.1を超えるpH値では、超飽和溶液の同種核形成が優勢であり、沈降が生じる。1.0のpH値未満では、四フッ化チタンは、緩慢な反応速度で準安定性溶液を形成するように思われる。準安定性状態〜超飽和状態間の中間状態において異種核形成が生じる。一定温度に対する金属酸化物出発物質の濃度対pHの状態図を、モノマーの四フッ化チタン、乳酸チタン、チタン・テトライソプロポキシド、及びチタン・テトラブトキシドを含めた、種々の適当な出発物質のための適当な反応条件を決定するために、利用することができる。
【0048】
上記の又は異なる金属酸化物出発物質を用いる異種核形成のための反応条件がひと度決定したならば、担体を適当な沈着溶液中で、所望のコーティング厚さ、特定の金属酸化物及び被覆すべき物質に依存して、一般に0.5〜260時間の期間にわたってインキュベートすることができる。フィルム中の粒子の直径は、通常、沈着時間過程を通して、徐々に増大する。インキュベーション時間を調節して、例えば200nm以下の厚さのような、所望の層厚さを得ることができる。フィルム中の粒子サイズは、通常、数nmから数10nmまでの範囲である。
【0049】
膜の製造後に有機担体に加えられる曲げ応力から生じる亀裂又はひび割れを減ずるために、任意に、沈着溶液中に界面活性剤を含めることができる。このために並びに本出願を通して記載するような、界面活性剤を用いる他の目的のために、用いることができる界面活性剤の非限定的例は、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウム、ビス−2−エチレンヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ペルフルオルデシルブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ジドデシルアンモニウムブロミド、Triton X−100、ポリオキシエチレン10−オレイルエーテル、ポリオキシエチレン10−ドデシルエーテル、N,N−ジメチルドデシルアミン−N−オキシド、Brij35、Tween−20、Tween−80、ソルビタン・モノオレエート、レシチン、ジアシルホスファチジルコリン、スクロース・モノオレエート、及びスクロース・ジラウレートを包含する。水性又は有機性金属酸化物沈着溶液に、結合剤を含めることができる。該結合剤は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリ(ジメチルシロキサン)、ヒドロキシプロピルセルロース、及びポリアクリルアミドであることができる。金属酸化物のために、一般に、親水性担体は、金属酸化物粒子の結合は、該粒子と下にある基体との間の脱水反応によって、水素結合(hydrogen bounds)の形成又は酸素原子の架橋に関与すると思われるので、親水性担体は、疎水性担体よりも好ましいコーティング性能特徴を有することができる。
【0050】
沈着溶液にフルオリド含有出発物質を用いる場合には、水和金属酸化物表面に付加されて留まる可能性がある過剰なフルオリドを除去するために、フルオリド・スカベンジャー(例えば、ホウ酸)を含有する水性溶液を用いることができる。幾つかの実施態様では、四フッ化チタン、乳酸チタン、チタン・テトライソプロポキシド及び/又はチタン・テトラブトキシドが、担体上に水和金属酸化物を沈着させるための前駆金属イオン(precursor metal ion)として役立つことができる。1.0〜3.1のpH範囲内及び40〜70℃の温度範囲内の0.03〜0.1M四フッ化チタン含有水性溶液を、該足場(scaffolding)上に水和金属酸化物を沈着させるために用いることができる。実施態様では、pH1.9及び60℃における0.05M四フッ化チタン含有水性溶液が、担体上に水和金属酸化物を沈着させるために用いられる。
【0051】
他の液相沈着アプローチでは、金属−フルオロ複合体イオン種のリガンド交換(加水分解)平衡反応と、ホウ酸又はアルミニウム金属を用いる、フルオリド消費反応によって、水和金属酸化物若しくは水酸化物薄フィルムを形成することができる(Niesen and De Guire, 2001)。この手法を用いて、沈着溶液中に担体を直接浸漬することによって、多様な有機基体上に薄フィルムを形成することができる。このアプローチを用いて、二酸化チタンで有機担体をコーティングするために、例えば、フッ化チタンアンモニウム((NHTiF)及びホウ酸(HBO)の水溶液を用いることができる。2種類以上の水和金属酸化物(more than one hydrated metal oxide)を含有する、バナジア、オキシ水酸化鉄、ジルコニア及び多成分フィルムに対して、同様なコーティングを製造することができる(Niesen and De Guire, 2001)。
【0052】
液相沈着アプローチの他に、例えば、化学浴沈着、連続イオン層吸着と反応(SILAR)及び無電解沈着のような水性方法を用いて、水和金属酸化物で担体をコーティングすることができる(Niesen and De Guire, 2001)。上記液相沈着アプローチの他の代替手段として、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリ(ジメチルシロキサン)、ヒドロキシプロピルセルロース又はポリアクリルアミドのような、適当な結合剤を含有する溶液と、金属酸化物粉末とを混合して、次に、この物質を薄フィルムとしてセラミック担体上に沈着させることによって、コーティングを行なうことができる。さらに、反応性スパッターリング、反応性蒸発、スプレイ熱分解、トラック−エッチング、陽極酸化、常温プレス成形、化学的蒸着及びゾル−ゲル・プロセシングを含めた、ある範囲の他の沈着手法によって、水和金属酸化物コーティングを作製することができる。一般に、これらの方法は、充分な結晶化度を得るために、400℃を越える、比較的高温での加熱プロセスを必要とする。例えば、これらの及び他のアプローチを用いて、セラミックに基づく膜を製造することができる。
【0053】
結晶質水和金属酸化物コーティングは記載されている。例えば、二酸化チタン薄フィルムは、耐汚れ性家庭用品のための、抗菌性コーティングとして、防臭消毒シートとして、抗藻類性耐油性プレートとして、霧防止性コーティング(antifogging coatings)として、防臭性ファイバーとして、及び太陽電池用の低コスト集光性複合体として用いられている(Niesen and De Guire, 2001)。
【0054】
水和金属酸化物表面の結晶化度は、上記金属酸化物被覆膜のある種の用途のために有用な特徴でありうる。該アフィニティ表面が無数のヒドロキシド基を含有する限り、水和金属酸化物はナノ多孔質性であり、超微細なクリスタライトを含むか、又は不十分に結晶化されることができる。例えば、300℃を越える温度のような、高温での金属酸化物表面を焼結する行為は、これは、該酸化物表面上の側鎖ヒドロキシル基の損失のために、該金属酸化物とリン酸化分子との間の相互作用度を低下させるので、想定された用途に不利であると予想される。したがって、焼結された金属酸化物表面を用いる場合には、加熱プロセス後に、ヒドロキシル化表面を再生する手段が一般に用いられる。ヒドロキシル基を回復するための手段は、該金属酸化物を水性環境中で長時間インキュベートすることを包含する。
【0055】
本明細書に記載する方法は、ホスホ分子をホスホアフィニティ物質に結合させて、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成するような条件下で、実施される。ホスホ分子は、一般に、ホスホアフィニティ物質に、典型的なタンパク質相互作用アッセイの条件下で結合する。このような条件は当業者に周知であり、一般に、大体、生理的な塩レベル、緩衝剤、及び4〜37℃の範囲内の温度を包含する。選択したホスホアフィニティ物質に関して、例えば、特定のpH、塩濃度、界面活性剤性質、粘度等のような、特定の特徴を有するように、サンプルを調節するか、又は溶液若しくは環境中に入れることができる。ホスホアフィニティ物質に選択的に結合するというホスホ分子の能力は、必要な場合には、例えば、無機塩、アルコール、界面活性剤(detergent)及び界面活性剤(surfactant)のような、サンプル成分の存在下で、改良される、強化される及び/又は安定化されることができる。本発明の方法の1実施態様では、サンプルを、界面活性剤の存在下で、ホスホアフィニティ物質と接触させる。特定の実施態様では、界面活性剤は、例えばSDSのような、イオン性界面活性剤である。サンプルをホスホアフィニティ物質と接触させる場合に、多様な界面活性剤を用いることができる。該界面活性剤は、アニオン、カチオン、両性イオン又は非イオン界面活性剤であることができる。当業者は、特定のサンプル及びホスホアフィニティ物質と共に用いるための適当な界面活性剤を選択することできるであろう。実施例7は、ホスホアフィニティ物質とサンプルとのインキュベーション中のイオン界面活性剤の使用と、ホスホアフィニティ物質からのホスホペプチド溶出中の非イオン界面活性剤の使用を記載する。
【0056】
水和金属酸化物を含有するホスホアフィニティ物質に選択的に結合するというホスホ分子の能力は、必要な場合には、pHによってモジュレートすることができる。水性媒質中で、金属酸化物上の支配的な表面官能基は、ヒドロキシル基である。理論によって縛られるのを望むわけではないが、水和金属酸化物のヒドロキシル基は分極化され、帯電され、この状態が、ある一定のpH条件下で、リン酸化分子との相互作用を可能にするように思われる。該酸化物表面は溶液からプロトンを吸着及び/又は脱着する、したがって、表面電荷に影響を及ぼす。これは、帯電した表面の付近に静電効果を誘発し、このことが、水性媒質からの異なるイオン種を収着する金属酸化物の容量に影響を及ぼす。低pH値では、表面電荷は正になり、高pH値では、負になる。粒子が表面電荷を有さないpH値は、等電点又は零ゼータ(ζ)電位のpHと呼ばれる。プロトンの損失又は獲得は、金属酸化物表面における酸−塩基反応と一般に考えられる。金属酸化物表面には、多様な異なる表面ヒドロキシル基が存在しうる。表面ヒドロキシル基が単独金属原子に配位する場合には、この基は単独配位したヒドロキシル基又は末端ヒドロキシル基と呼ばれるが、該ヒドロキシル基が2、3又は4個の金属原子に配位する場合には、これは架橋ヒドロキシル基(bridging hydroxyl group)と呼ばれる。酸化鉄に関しては、表面ヒドロキシル基は1個、2個又は3個さえもの下方金属原子に配位する。2個の表面ヒドロキシル基が単独金属原子に結合することも可能である。異なる種類の表面基の配置は、酸化物の構造と検査すべき結晶面に依存し、異なる表面基は異なる化学的性質を示すように思われる。溶解したリン酸化溶質と、水和金属酸化物表面の滴定可能な表面官能基との間の複合体形成反応によって、リン酸化分子の吸着が生じる。当業者は、特定水和金属酸化物の使用のための適当なpHを経験的に確認することができるであろう。
【0057】
二酸化チタンの場合には、表面、プロトン化、その結果の正電荷の特性が約6.0の該物質の等電点未満で得られる。他の金属酸化物表面は、リン酸化分子をアフィニティ捕捉するための適当な表面の形成に役立つ等電点において異なる。例えば、水和ジルコニアは8.2の等電点を有するが、ヘマタイト、酸化イットリウム、及びギブス石は、それぞれ、7.5、8.5及び10.0の等電点値を有する。バリウム塩、カルシウム塩又はマグネシウム塩と共にインキュベートしたルチル粒子によって観察されるように、媒質中にある種のアルカリ金属を含めると、水和金属酸化物粒子の等電点が高いpH値方向にシフトする可能性がある。製造方法、微量不純物及び水和度等に依存しても、水和金属酸化物の等電点がシフトする可能性がある。全般的に、一般式:Meで示される金属酸化物は、典型的に、約9.0の等電点を有する。一般式:MeOで示される金属酸化物は、金属原子イオン半径と共に及び金属原子の電気陰性度の減少と共に増加する等電点を有する。これらの要因は、当業者がホスホ分子の単離及び/又は検出のための条件を決定する上で役立つ可能性がある。
【0058】
例えば、水和金属酸化物の等電点は、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成する際に用いられるサンプル溶液のpHの上限を確立することができる。相互関係的に、水和金属酸化物の等電点を超えるpH値において、溶出を有利に行なうことができる。非晶質又は不十分に結晶化した水和金属酸化物を含有する膜又はフィルターを用いる場合には、強酸性(pH<3.0)及び強塩基性(pH>11.0)溶液は、水和金属酸化物表面の化学的不安定性を招く可能性がある。当業者は、種々なpH条件下でプロセスされた膜、フィルター及び他の担体の完全性を確認することができるであろう。
【0059】
ホスホ分子への水和金属酸化物の結合を調節するために、アルカリ金属又はアルカリ土類金属カチオンの吸着が有用である可能性がある。このために有用な、典型的な金属カチオンは、Ba(II)、Mg(II)及びCa(II)を包含する。
【0060】
本発明のある一定の実施態様では、本発明の方法を用いて単離及び/又は検出されるホスホ分子を、サンプル溶液中に含有させる。本発明の他の実施態様では、該ホスホ分子を担体上に含有させる。必要な場合には、1種類以上のホスホ分子を担体上に存在させることができ、他の種類のホスホ分子を溶液中に存在させることができる。担体にホスホ分子を付着させる方法は、当業者に周知であり、本明細書で以下に例示する。
【0061】
本明細書に記載する方法は、サンプルからホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体をサンプルから分離し、それによって、該サンプルから該ホスホ分子を単離することを含みうる。ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の分離は、多様な周知手段によって達成することができる。ある一定の実施態様では、ホスホ分子及び/又はサンプル(即ち、サンプル中に含有されるホスホ分子)を担体に付着させることができる。ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の一部を担体に付着させる場合には、該担体から液相を除去することによって、及び/又は該担体を洗浄して、液相、ゲル、コロイド若しくは他の種類の非液相を該担体から除去することによって、分離を行なうことができる。分離は、例えば、カラム、膜、重力、真空、磁気若しくは他の力による粒子分離等のような、多様なフォーマットで生じることができる。同様に、ある一定の実施態様では、水和金属酸化物は粒子であり、粒子分離によって、分離が行なわれうる。或いは、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体内のエピトープに選択的に結合する、例えば、抗体、リガンド、受容体、抗原、相補的シーケンス等のような結合パートナーを用いて、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体又はその一部を回収することによって、分離を行なうことができる。
【0062】
本明細書に記載する方法は、サンプル中のホスホ分子を検出するために、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の形成を検出することを含むことができる。分子実体(molecular entities)間の相互作用を検出するための手段は、当業者に周知である。このような検出手段は、一般に、相互作用実体の少なくとも一方の物理化学的変化を検出する、又は他方の実体の存在が知られている場合に、相互作用実体の一方の存在を検出することを含む。ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体又はその一部は、物理化学的性質を観察することによって、並びに機能的活性(functional activity)を観察することによって検出することができる。必要な場合には、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を化学的に修飾することなしに、例えば、質量、蛍光吸収、発光(emission)、エネルギー転移、偏光(polarization)、異方性等のような物理化学的性質を観察することができる。或いは、該複合体又はその一部に、物理化学的性質の検出を容易にする、ある種の化学的修飾を行なうことができる。例えば、相互作用能力(interaction capacity)、酵素活性等のような機能的性質は、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体又はその一部を、適当な結合パートナーと、例えば、抗体、抗原、受容体、リガンド、補因子(co-factor)、サブユニット、相補的シーケンス、基板等と接触させることによって観察することができる。
【0063】
分子複合体とその成分を検出するための典型的な周知方法は、吸光度、透過、質量測定、電荷対質量比率、蛍光強度、蛍光偏光、時間分解蛍光、共鳴光散乱、表面増強ラマン散乱、電子常磁性共鳴、屈折率吸光度(refractive index absorbance)、核磁気共鳴、マイクロ熱量測定、表面プラズモン共鳴、屈折率変化、分光偏光測定、偏光解析法、並びに例えば、誘導結合プラズマ質量分光分析、フーリエ変換赤外分光分析及び原子吸収分光分析によって測定可能であるような、多様な分光学的特徴の測定を包含する。
【0064】
ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体又はその成分が発光成分又は染料成分を含有する場合には、検出は、UVトランスイルミネーター上での目視観察によって、又はUVに基づく電荷結合素子(CCD)カメラ検出系、レーザーに基づくゲルスキャナー、キセノン−アークに基づくCCDカメラ検出系、UV−トランスイルミネーターと組み合わせたポラロイドカメラ、並びに発光検出に用いる、多様な他のデバイスの使用によって行なうことができる。
【0065】
検出剤として有用なホスホアフィニティ物質は、多様な物理的形態を有することができる。例えば、粒子形では、ホスホアフィニティ物質はホスホ分子に結合することができ、検出は該粒子の物理化学的性質の検出又はホスホ分子と該粒子との相互作用の検出によって達成することができる。実施例10と13は、水和金属酸化物の蛍光タグを用いて、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の水和金属酸化物部分を検出することを記載する。実施例11は、蛍光共鳴エネルギー転移による、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の形成中のホスホ分子とホスホアフィニティ物質との間の相互作用の検出を記載する。実施例12は、誘導結合質量分光分析による、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の金属部分の検出を記載する。
【0066】
ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を検出する方法のさらなる非限定的例として、固体担体上のリン酸化基質への水和金属酸化物粒子の結合は、共鳴光散乱(RLS)手法による銀と金の粒子の検出に用いられる方法と同様な方法によって検出することができる。RLS粒子は、分析物検出のための標識として用いられている(Ygueyabide and Ygueyabide, 2001)。RLS粒子は、広範囲な分析バイオアッセイに導入されている、超高感度な標識である。約40〜120nm直径の範囲の均一なサイズの球状金及び銀RLS粒子は、白色光の狭いビームで照射されたときに、強度な単色散乱光を発生する。単一RLS粒子によって発生される散乱光シグナルは、慣用的な小分子発蛍光団に関して得られるシグナルよりも約10〜10倍大きく、暗視野照明によって比較的容易に検出される。個々のRLS粒子によって発生される散乱光の強度と色は、光安定性であり、該粒子の組成と直径に依存する。RLS粒子の表面を多様な官能基によって誘導体化して、分析アッセイにおいて選択的結合を誘導することができる。マイクロアレイ、免疫細胞学/組織学、in situハイブリダイゼーション、マイクロタイター・ウェル・アッセイ及びマイクロフルイディクス(microfluidics)のための高感度RLS試薬及び計測器系が、開発されている。必要な場合には、金及び銀以外の物質から作製された粒子を、RLS手法のために用いることができる。例えば、ポリスチレン−ポリアクリル酸粒子が、タンパク質と共にRLS実験に用いられている(Wang et al, 2004)。水和金属酸化物粒子又は、水和金属酸化物の表面を含むホスホアフィニティ粒子をRLSアッセイによって用いて、ホスホ分子又はホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を検出することができる。
【0067】
水和金属酸化物粒子の他の性質も、ホスホ分子とホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の検出に有用でありうる。それらが蛍光標識若しくは他の放射性標識なしに結合を直接検出するために、無標識検出系としても知られるバイオセンサーは、固体担体に固定された認識分子(recognition molecules)に結合した実体の質量を検出する。例えば、共鳴カンチレバー(resonant cantilevers)、表面音波センサー等のような、幾つかのバイオセンサー方法が質量結合を直接検出する。二酸化チタンの密度は約4g/cmであり、タンパク質の密度よりも顕著に大きく、このことが、二酸化チタンをこの種の検知(sensing)のために適当な質量標識にする。光学的バイオセンサーとして知られる、他のセンサーは、該センサーの局所結合領域(local binding area)における屈折率の変化を検出する。局所屈折率は、高屈折率分子の密度が増加し、粒子が表面に結合するにつれて増大する。例えば、二酸化チタンは、タンパク質の屈折率約1.45及び水性バッファーの屈折率1.33に比べて、2種類の一般結晶形、屈折率約2.49を有するアナターゼと屈折率2.903を有するルチルとして存在する。それ故、二酸化チタンは、光学的バイオセンサーのための高感度標識でありうる。一般的光学的バイオセンサーは、表面プラズモン共鳴(SPR)、エヴァネセント導波管(evanescent waveguide)及び比色共鳴型反射デバイス(colorimetric resonant reflective device)を包含する。最後に、表面増強ラマン散乱は、単分子検出を含めた、超高感度検出のために有用でありうる。例えば、Ag−TiOの結晶は、表面増強ラマン散乱によってホスホ分子及びホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を検出するために有用でありうる。
【0068】
検出剤として用いるために、ホスホアフィニティ物質を検出可能なタグによって標識する又は検出可能なタグを結合させることができる。例えば、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の形成の前又は後に、水和金属酸化物を染料で標識することができる。特定の例として、例えばナノ粒子のような、金属酸化物粒子をホスホアフィニティ物質として用いる場合に、該ナノ粒子をホスホ分子に結合させ、その後に、染料で標識することができる。これは、例えば、媒染染料レーキの形成によって、達成することができる(Kornblum and Lopez, 1970)。レーキは、染料の水不溶形である(Marshall and Horobin, 1973; Wou and Mulley, 1988; Lillie et al, 1976; Meloan et al, 1973; Ishikawa et al, 2003)。水和金属酸化物又は新たに沈殿した塩(例えば、硫酸カルシウム若しくは硫酸バリウム)とある一定の染料分子との間の強い引力が、それらの共沈を生じると考えられる。レーキは、一般に、染料よりも安定であり、油脂を含有する生成物又は染料を溶解するために充分な水分を有さないアイテムを着色するために理想的だと考えられる。アントラセン、アゾ、インジゴイド、ジアリールメタン、トリアリールメタン、オキシケトン、アクリジン、アジン、オキサジン、チアジン、キノリン、ポリメチン、ヒドラゾン、トリアゼン、ポルフィリン、ポルフィアジン、ポルフィアジン(porphyazin)、キナクリドン、ホルマザンニトロ、硫黄、ニトロソキノンイミド、アザフィロン、シアニン及びアゾメチンを含めた、多様な構造種類を表す、ある範囲の染料は、このようにして、無機金属酸化物粒子を強調表示するために適切でありうる。特定染料の非限定的例は、ローダミンB、ローダミン6G、酸性アリザリン・バイオレット、モリン(morin)、テトラヒドロキシフラバノール、2−(4−ピリジル)-5-((4-(2-ジメチルアミノエチルアミノカルバモイル)メトキシ)フェニル)オキサゾール、2−ヒドロキシテレフタレート、2−[6−(4’−ヒドロキシ)フェノキシ−3H−キサンテン−3−オン−9−イル]安息香酸、2−[6−(4’−アミノ)フェノキシ−3H−キサンテン−3−オン−9−イル]安息香酸、N−tert−ブチル−フェニルニトロン、2−メチル−2−ニトロソプロパンダイマー、TEMPO−9−AC、プロキシルフルオレスカミン、及びクマリン−3−カルボン酸を包含する。上記に列挙したものを包含する染料ファミリーは、例えば、Handbook of Fluorescent Probes and Research Products, Ninth Edition by Dr.Richard P. Haugland(Molecular Process, 2003)に記載されている。
【0069】
例えば二酸化チタンのような、ある種の金属酸化物粒子は、染料を光触媒酸化することができる(Marci et al, 2003; Saquib and Muneeer, 2003)。例えば、Degussa P25及びUV100のような光触媒は、この反応を促進することが知られている。リン酸化分子の検出には、光触媒酸化反応を用いることができる。UV光線を照射された二酸化チタンの水性懸濁液中では主として有機化合物のヒドロキシ誘導体が同定されるので、分解の機構は、ヒドロキシルラジカル作用に基づくと考えられる。例えばヒドロキシルラジカルのような、形成された高反応性酸素種(hROS)を選択的に検出するためには、例えば、2−ヒドロキシテレフタレート、2−[6−(4’−ヒドロキシ)フェノキシ−3H−キサンテン−3−オン−9−イル]安息香酸(HPF)及び2−[6−(4’−アミノ)フェノキシ−3H−キサンテン−3−オン−9−イル]安息香酸(APF)のような発蛍光団を用いることができる。さらに、N−tert−ブチル−フェニルニトロンと2−メチル−2−ニトロソプロパンダイマーの両方は、それらの電子常磁性共鳴によって検出することができる比較的安定なフリーラジカルを形成する。TEMPO−9−ACとプロキシルフルオレスカミンは、ヒドロキシルラジカルを検出するための、他の2種類の蛍光発生的プローブである。これらの分子の両方ともが、それらの蛍光を消光するニトロキシド部分を含有する。しかし、TEMPO−9−AC又はプロキシルフルオレスカミンがひと度ヒドロキシルラジカル又はスーパーオキシドに遭遇するならば、その蛍光が復活され、該ラジカルのスピンシグナルは減衰し、このことは、これらのプローブを蛍光又は電子スピン共鳴分光分析のいずれかによるラジカル検出に有用にする。クマリン−3−カルボン酸のスクシンイミジルエステル(SECCA)は、ヒドロキシルラジカル検出のためのもうひとつの有用な蛍光試薬である。非常に多様な分子に結合することができる、このアミン反応性試薬は、ヒドロキシルラジカルによって、高蛍光性の7−ヒドロキシクマリン・アダクツに転化される。ヒドロキシルラジカル形成によるホスホ分子の検出は、ポリマー膜、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル、マイクロアレイ又はポリマービーズを含めた、ある範囲の固体又は半固体表面上で行なわれうる。
【0070】
ホスホ分子を単離及び/又は検出するための本発明の方法は、必要な場合には、多様なマルチウェル・プレートに基づくフォーマットで行なわれうる。このような方法は、図1〜4に例示する。図1は、マルチウェル・マイクロプレートデバイスのウェルの底部に配置された多孔質担体の上方に懸濁する水和金属酸化物粒子を用いる、比較的簡単な分画アプローチを示す。該概略図では、濾過デバイスを一般的に示す。該ダイアグラムには、該マルチウェルプレートの3個のウェルを示す。このアプローチに適した、一つのプレートは、Durapore0.65μm膜を含有するMillipore MultiScreen96ウェル濾過プレートである。このデバイスは、分離プレート・ウェル(2)、アウトプット開口(3)及び多孔質担体(4)を含有する分離マルチウェル構造若しくはプレート(1)を含む。水和金属酸化物粒子(5)は、該多孔質担体の頂部上に取り込まれる。該粒子は、リン酸化分子を捕捉するためのアフィニティ・マトリックスとして役立つ。このダイアグラムには、洗液受容プレート・ウェル(8)を含む洗液受容マルチウェル構造若しくはプレート(7)も示される。インキュベーション及び結合は(A)に例示される。インキュベーション及び結合(A)中に、リン酸化分子を含有すると疑われるサンプルが、結合バッファー(6)中で調製されて、分離マルチウェル構造若しくはプレート(1)のウェル中でインキュベートされる。その後、該マルチウェル・デバイスを真空マニホルド上に配置し、サンプルを濾過して(8〜18”Hg圧)、未結合物質を除去する。洗浄は(B)に例示する。洗浄バッファー(9)、通常は結合バッファーをマイクロプレート・デバイス(1)のウェルに加えて、続いて、真空マニホルドを用いて、濾過デバイスに通して濾過する。洗浄生成物(10)を受容マルチウェル構造若しくはプレート(7)中に回収する。洗浄プロセスは、ダイアグラム(A)をダイアグラム(B)に連結する曲線状矢印によって示すように、繰り返して、行なうことができる。即ち、ウェルを新鮮な結合バッファーで再充填して、粒子を1回以上洗浄して、汚染物質を減少させる。溶離は(C)に示す。溶離バッファー(11)を分離マルチウェル構造若しくはプレート(1)に加えて、水和金属酸化物被覆粒子からリン酸化分子を放出させる。最後に、リン酸化分子を含む溶離液(12)を溶離液受容マルチウェル構造若しくはプレート(13)中に真空によって回収する。最終生成物は(D)に示す。溶離液受容マルチウェル構造若しくはプレート(13)は、今や、リン酸化分子を含有する溶離液(12)を有する。この物質は、タンパク質若しくはペプチド特徴づけ及び同定手段を含めた、多様な下流アッセイのために、直接用いる、又はさらなるプロセシング及びサンプルクリーンアップ後に用いることができる。或いは、リン酸化分子を、例えば、逆相パッキング(Millipore Zip−Tip C18樹脂)若しくはアニオン交換パッキングを充填したピペット先端又はマルチウェル・プレートのような、脱塩サンプルに設計された樹脂中に直接溶出することができる。ある種の下流用途のためには、溶離が好ましくない可能性があり、水和金属酸化物粒子自体の上で直接、アッセイを行なうことができる。
【0071】
図2は、セルロース又はポリビニリデンジフルオリド・コアと水和金属酸化物表面コーティングとを有する複合膜を含む、より進歩した分画デバイスを示す。この概略図には、一般的に、濾過デバイスを示す。該ダイアグラムには、該マルチウェルプレートの3個のウェルを示す。このデバイスは、分離プレート・ウェル(15)、アウトプット開口(16)及び水和金属酸化物−セルロース複合膜(17)を含有する分離マルチウェル構造若しくはプレート(14)を含む。該複合膜は、リン酸化分子を捕捉するためのアフィニティ・マトリックスとして役立つ。単一膜又は膜スタックを該マルチウェル構造若しくはプレート中に組み入れることができる。このダイアグラムには、洗液受容プレート・ウェル(20)を含む洗液受容マルチウェル構造若しくはプレート(19)も示される。インキュベーション及び結合は(A)に例示される。インキュベーション及び結合(A)中に、リン酸化分子を含有すると疑われるサンプルが、結合バッファー(18)中で調製されて、分離マルチウェル構造若しくはプレート(14)のウェル中でインキュベートされる。その後、該マルチウェル・デバイスを真空マニホルド上に配置し、サンプルを濾過して(8〜18”Hg圧)、未結合物質を除去する。洗浄は(B)に例示する。洗浄バッファー(21)、通常は結合バッファーを分離マルチウェル構造若しくはプレート(14)のウェルに加えて、続いて、真空マニホルドを用いて、濾過デバイスに通して濾過する。洗浄生成物(22)を受容マルチウェル構造若しくはプレート(19)中に回収する。洗浄プロセスは、ダイアグラム(A)をダイアグラム(B)に連結する曲線状矢印によって示すように、繰り返して、行なうことができる。即ち、ウェルを新鮮な結合バッファーで再充填して、該複合膜を1回以上洗浄して、汚染物質を減少させる。溶離は(C)に示す。溶離バッファー(23)を分離マルチウェル構造若しくはプレート(14)のウェルに加えて、水和金属酸化物被覆粒子からリン酸化分子を放出させる。最後に、リン酸化分子を含む溶離液(24)を溶離液受容マルチウェル構造若しくはプレート(25)中に真空によって回収する。最終生成物は(D)に示す。溶離液受容マルチウェル構造若しくはプレート(25)は、今や、リン酸化分子を含有する溶離液(24)を有する。この物質は、タンパク質若しくはペプチド特徴づけ及び同定手段を含めた、多様な下流アッセイのために、直接用いる、又はさらなるプロセシング及びサンプルクリーンアップ後に用いることができる。或いは、リン酸化分子を、例えば、逆相パッキング(Millipore Zip−Tip C18樹脂)若しくはアニオン交換パッキングを充填したピペット先端又はマルチウェル・プレートのような、脱塩サンプルに設計された樹脂中に直接溶出することができる。ある種の下流用途のためには、溶出は好ましくない可能性があり、複合膜自体の上で直接、アッセイを行なうことができる。
【0072】
図3は、デバイスのウェルが水和金属酸化物によって被覆されているポリスチレン・マルチウェル・マイクロプレートを用いて、リン酸化分子を回収するための代替アプローチを示す。この概略図では、マルチウェル・マイクロプレート・デバイスを一般的に示す。該ダイアグラムには、該マルチウェルプレートの3個のウェルを示す。このデバイスは、分離プレート・ウェル(27)を含有する、ウェル壁上に水和金属酸化物コーティングを有する分離マルチウェル構造若しくはプレート(26)を含む。該水和金属酸化物コーティング(28)は、リン酸化分子を捕捉するためのアフィニティ・マトリックスとして役立つ。インキュベーションは(A)に例示される。インキュベーション(A)中に、リン酸化分子を含有すると疑われるサンプルが、結合バッファー(29)中で調製されて、次に、分離マルチウェル構造若しくはプレート(26)のウェル中でインキュベートされる。結合は(B)に示す。捕捉されたリン酸化分子(30)は、水和金属コーティング(28)に結合して、リン酸化分子が枯渇したサンプル結合バッファー(31)から離れる。洗浄は(C)に示される。リン酸化分子が枯渇したサンプルバッファーを、手動若しくは自動化ピペッティング・デバイス(32)を用いて、取り出して、洗浄溶液(33)、通常は結合バッファーを該ウェルに再び加える。この洗浄は、1回以上繰り返すことができる。水和金属酸化物コーティングを有する分離マルチウェル構造若しくはプレートのウェルに結合した最終生成物を(D)で示す。溶離バッファーが加えられて、該壁からリン酸化分子の放出を生じる可能性があるとしても、リン酸化分子(30)は、その後の分析のために該ウェルの壁上に保持され、次に、該リン酸化分子は手動若しくは自動化ピペッティングによって回収することができる。
【0073】
図4は、マルチウェル・マイクロプレートと無機複合物質を用いて、リン酸化分子を回収するための他のアプローチを示す。この場合には、磁気コアと、水和金属酸化物シェルとを有する粒子を用いる。この概略図には、一般的に、マルチウェル・マイクロプレート・デバイスを示す。該ダイアグラムには、該マルチウェルプレートの3個のウェルを示す。このデバイスは、分離プレート・ウェル(35)と、水和金属酸化物コーティングを有する磁気粒子(36)とを含有する分離マルチウェル構造若しくはプレート(34)を含む。該複合粒子は、リン酸化分子を捕捉するためのアフィニティ・マトリックスとして役立つ。インキュベーション及び結合は(A)に例示される。インキュベーション及び結合(A)中に、リン酸化分子を含有すると疑われるサンプルが、結合バッファー(37)中で調製されて、分離マルチウェル構造若しくはプレート(34)のウェル中でインキュベートされる。リン酸化分子の磁気粒子への結合と、その後の、該粒子のバルク溶液からの、磁気セパレーターによる分離は、(B)に示す。捕捉されたリン酸化分子を有する磁気粒子(39)は、磁気セパレーター(41)の助けによって、該ウェルの底部(40)において濃縮される。このプロセスでは、結合バッファー(38)はリン酸化分子を枯渇する。洗浄は(C)に示される。リン酸化分子が枯渇したサンプルバッファーは、手動又は自動化ピペッティング・デバイス(42)を用いて、取り出される。洗浄溶液(43)、通常は結合バッファーを、該ウェルに再び加える。この洗浄は、1回以上繰り返すことができる。溶離は(D)に示す。溶離バッファー(45)を、手動若しくは自動化ピペット(44)を用いて、分離マルチウェル構造若しくはプレートのウェルに加えて、磁気粒子からリン酸化分子を放出させる。最終生成物の回収は(D)に示す。溶液(45)中の溶離したリン酸化分子は、手動若しくは自動化ピペット(44)を用いて、取り出されて、その後に、リン酸化分子の特徴づけ又は同定のために考案されたアッセイを含めた、多様な下流アッセイのために分配されうる。リン酸化分子を、例えば、逆相パッキング(Millipore Zip−Tip C18樹脂)若しくはアニオン交換パッキングを充填したピペット先端又はマルチウェル・プレートのような、脱塩サンプルに設計された樹脂中に直接分配することができる。望ましい場合に、アッセイをマルチウェル・プレート中で直接行うことができるならば、溶離を行なう必要はない。
【0074】
上述したように、本発明の方法は、例えば粒子又は膜のような、ホスホアフィニティ物質の存在下でサンプルを濾過することを含みうる。粒子の水性懸濁液の粘度は、溶液pHの関数として数桁の大きさで変化することができる。例えば、30%アナターゼを含有する溶液は、粒子等電点から大きく異なる水の粘度を有し、糖液の粘度は等電点に近い。濾過デバイスに界面活性剤(detergent)又は界面活性剤(surfactant)を含有するサンプルを加える場合には、濾過中にサンプル発泡が起こる可能性がある。このような発泡は、サンプル取り扱い問題を招いて、サンプルウェル間の交差汚染の原因になる可能性がある。例えば有機溶媒(例えば、メタノール又はアセトニトリル)のような消泡剤を含有する溶液中に、サンプルを入れることによって、このような発泡を減ずることができる。典型的なサンプル溶液は、60%メタノール若しくはアセトニトリル、40%水(0.1%蟻酸を含有)、又は60%メタノール若しくはアセトニトリル、40%50mM炭酸アンモニウム、pH8.0を含む。サンプル溶液の選択は、選択したホスホアフィニティ物質の特定の水和金属酸化物の等電点を考慮することができる。サンプル溶液中の最終タンパク質濃度は、典型的に、0.05〜5mg/mlであることができ、例えば約0.4〜0.6mg/mlであることができるが、これより高い又は低いタンパク質濃度を用いることもできる。サンプルの抽出と可溶化は、必要な場合には、間欠的な渦流形成又は音波処理によって促進することができる。本明細書に記載する方法に用いるために可溶化物質を選択する場合には、該可溶化物質と選択した分析方法との相互作用を考慮することができる。例えば、界面活性剤は質量分光分析においてペプチドのイオン化を減じて、例えば逆相液体クロマトグラフィーのような、クロマトグラフィー分離を妨害する可能性があるが、有機溶媒を含有する溶液は、より大きく適合する質量分光分析及び液体クロマトグラフィーであることができる。緩衝化有機溶媒は、例えば、膜貫通型スパンヘリックスを含有するタンパク質のような、インテグラル膜タンパク質を含めた、多様なタンパク質を可溶化及び単離するために有用でありうる。
【0075】
本発明は、本明細書に記載するような、ホスホ分子を単離及び/又は検出する方法の実施に有用な商業的パッケージを提供する。本発明の商業的パッケージは、金属酸化物を組み入れたホスホアフィニティ物質、又はこのような物質を形成するために有用な試薬を含有する。本発明の商業的パッケージは、ホスホアフィニティ物質の他に、多様な成分を含有することができる。該パッケージは、例えば、ホスホアフィニティ物質の作製に関する説明書;ホスホ分子の単離のためのホスホアフィニティ物質の使用に関する説明書;ホスホ分子の検出のためのホスホアフィニティ物質の使用に関する説明書;又は説明書の組み合わせを含有することができる。説明書は、場合によっては、特定の用途に用いるためのサンプル濃度に関する勧告、並びに温度、バッファー条件及びインキュベーション時間に関する手引きを含むことができる。本発明の商業的パッケージは、場合によっては、例えば、一つ以上のタンパク質若しくはペプチド分画デバイス、標識したポリペプチド、蛍光染料、結合バッファー、洗浄バッファー、分子量基準(molecular weight standards)、等電点基準、リン酸化基準、定着剤(fixatives)、ステイン、抗体、レクチン、アプタマー、ホスファターゼ基質、キナーゼ基質、検出試薬、磁気セパレーター等のような、他の成分を含有することができる。当業者は、例えば、アッセイ・プロトコールの設計、検出若しくは単離のために用いる特定のホスホアフィニティ物質、アッセイを実行した後に用いる測定方法、小売価格(consumer price point)、適切な輸送と取り扱い等のような、典型的なファクターに基づいて、本発明の商業的パッケージに含めるための適当な成分を選択することができるであろう。
【0076】
特定の実施態様では、該ホスホアフィニティ物質は担体を含む。典型的な担体は、膜、粒子、マトリックス、スピン−カラム、マイクロカラム・ピペット先端、マルチウェル・ミクロウェルストリップ及びマルチウェル・マイクロプレートを包含する。ホスホアフィニティ物質の特定の例は、一つ以上の多孔質若しくは半多孔質水和金属酸化物表面若しくはコーティングを含有する膜及びフィルター;膜のポリマーマトリックス若しくは孔内に取り込まれた又は膜の頂部上の層として提示された、ファイバー表面上のコーティングとしての水和金属酸化物を含有する若しくは組み込むフィルター、粒子及び/又は膜を含有するフィルターデバイス;並びにスピン−カラム、マイクロカラム・ピペット先端、マルチウェル・ストリップ、及び/又はマルチウェル・マイクロプレートとしての形態の濾過デバイスを包含する。
【0077】
本発明は、サンプル中のホスホ分子を単離及び/又は検出する方法を実施するために有用な、多様な商業的パッケージを提供する。1実施態様では、商業的パッケージは、担体に付着した水和金属酸化物を含み、この場合、該水和金属酸化物はイットリウムを含む。他の実施態様では、商業的パッケージは、ホスホアフィニティ・ユニットを含み、該ユニットは、水和金属酸化物で被覆された、複数の担体シートを含む。本明細書で用いる限り、「ホスホアフィニティ・ユニット」なる用語は、例えば、サンプル容器、カラム、プレート等のような、ホスホアフィニティ物質を含有するデバイスを意味する。該担体シートは、例えば、セルロースのような、膜又は紙であることができる。さらなる実施態様では、商業的パッケージは、水和金属酸化物と、該水和金属酸化物に結合する検出可能な作用剤とを含むホスホアフィニティ粒子を含有する。1実施態様では、本発明の商業的パッケージは、二酸化チタン粒子と、二酸化チタン粒子に結合する検出可能な作用剤とを含むホスホアフィニティ物質を包含する。特定の実施態様では、該二酸化チタン粒子は二酸化チタンの結晶である。他の実施態様では、該二酸化チタン粒子は二酸化チタンで被覆された粒子担体である。
【0078】
本発明は、ホスホアフィニティ物質とホスホ分子との複合体を含む組成物を提供する。該複合体は、例えば、基準、対照、既知若しくは未知の基質若しくは分析物の結合パートナー等として用いることが可能である。
【0079】
本発明の種々な実施態様のアクティビティ(activity)に実質的に影響を及ぼさない修飾も、本明細書に提供する本発明の定義の範囲内に含まれると理解される。したがって、以下の実施例は、本発明を例示するが、限定しないように意図される。
【実施例1】
【0080】
本実施例では、酸化イットリウム、イットリウム鉄ガーネットまたは二酸化チタンとの選択的結合によるホスホプロテインの単離について記載する。
ホスホペプチドを単離するためのアフィニティカラムは以下のように調製した:15〜25mgの酸化イットリウム(Aldrichカタログ番号205168−10)、イットリウム鉄ガーネット(Aldrichカタログ番号634417−10)または二酸化チタン(Aldrichカタログ番号634662−25)粒子を5インチの使い捨てカラム(Evergreen Scientific、Los Angeles、CA)へ充填した。各カラムを1%(v/v)のギ酸を含有する脱イオン水1mlで2回洗浄した。カラムの内容物をボルテックスミキサーを用いて断続的に混合した。次いで各カラムを結合緩衝液(0.5M酢酸ナトリウム、0.2M塩化ナトリウム、pH5.5)1mlで3回洗浄した。カラムの内容物をボルテックスミキサーを用いて断続的に混合した。
【0081】
ホスホプロテインは以下のように単離した:ウシ炭酸脱水酵素IIおよびニワトリ卵白アルブミン(約1:1の比率)の双方を結合緩衝液中に溶解した溶液(0.2μg/μl、全タンパク質)1mlを各カラムへ添加した。懸濁液をボルテックスミキサーを用いて1分間断続的に混合した。カラムの両端に栓をし、粒子懸濁液を水平にして1時間Nutatorミキサーを用いて撹拌しながらインキュベートした。カラムを垂直に立てて排液・充填を行い、水和金属酸化物粒子床を0.5ml結合緩衝液で3回すすいだ。次いでカラムを0.3ml溶離緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4)で3回洗浄した。最初の溶離洗浄は、カラム中で1時間平衡化させてから排液した。溶離液を合わせて15mlの遠心チューブに回収した。氷冷アセトンを添加して全量を12mlとし、ボルテックス混合後5分間遠心分離して溶離緩衝液中に存在するタンパク質を沈殿させた。アセトンを除去し、得られた白色固体を20μlの10mMトリスHCl、2%(v/v)SDS、pH7.6(脱イオン水中で調製)および30μlのサンプル希釈緩衝液へ溶解した。サンプル希釈緩衝液は、0.1mlの0.5Mジチオトレイトール(エタノール中)と、0.9mlの10mMトリスHCl、2%(v/v)SDS、pH7.6(脱イオン水中)と、1mlのNuPage LDSサンプルバッファー4×(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)とを組み合わせて調製した。1mlのウシ炭酸脱水酵素/ニワトリ卵白アルブミン対照タンパク質サンプル(約1:1)(0.2μg/μl全タンパク質、結合緩衝液中)も直接アセトン沈殿させ、非リン酸化タンパク質(炭酸脱水酵素)に対するリン酸化タンパク質(卵白アルブミン)の富化をモニターするための参照標準とした。
【0082】
タンパク質サンプルをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて標準的な手順に従い分析した。Bio−Rad製の広範囲分子量マーカーをゲル上の一部のレーンへ入れ、血清アルブミンと卵白アルブミンの分子量に基づく同定を容易にした。電気泳動後、ゲルを固定し、SYPRO Rubyタンパク質ゲル染色剤(Molecular Probes/lnvitrogen、Eugene、Oregon)で染色し、脱色後、ProXPRESS二次元プロテオミクス・イメージングシステム(PerkinElmer LAS、Boston、MA)を用いて蛍光シグナルを画像化した。
【0083】
酸化イットリウム、イットリウム鉄ガーネットまたは二酸化チタンで処理して得られたタンパク質サンプルから取得した代表的な線トレースを図5〜7にそれぞれ示す。参照出発物質のプロファイルを図中のAに示し、単離物質を図中のBに示す。図のX軸はタンパク質が電気泳動ゲル中を移動した距離を表し、Y軸は全タンパク質染色の蛍光強度に相当する。
【0084】
図5〜7中、(46)、(49)および(52)として同定されたピークは、蛍光染色された炭酸脱水酵素バンドに相当し、(47)、(48)、(50)、(51)、(53)および(54)は蛍光染色された卵白アルブミンバンドに相当する。これらのデータから、酸化イットリウム、イットリウム鉄ガーネットおよび二酸化チタンの粒子で調製したアフィニティカラムを用いることで、卵白アルブミン(リン酸化タンパク質)が炭酸脱水酵素(非リン酸化タンパク質)から分離されたことが明らかである。
【実施例2】
【0085】
本実施例では、二酸化チタンホスホアフィニティ物質を96穴濾過プレート形式で利用した際のホスホペプチドの単離について記載する。
96穴濾過プレート形式のホスホアフィニティ物質は、以下のように調製した:約0.2gの二酸化チタン粒子を10mlの1%ギ酸中で10分間室温にて活性化させ、遠心分離を利用して脱イオン水で数回洗浄してビーズを回収した。予備洗浄したビーズを10mlの脱イオン水に再懸濁し、得られた懸濁液を200μl/ウェルにて96穴のMULTISCREEN DV(Millipore Corporation、Bedford、MA)プレートへピペッティングした。得られた二酸化チタン負荷プレートを、500mM酢酸ナトリウムpH5.5+200mM NaCl緩衝液(結合緩衝液)中でウェルを洗浄することにより予備平衡化させた。
【0086】
ホスホペプチドの単離は以下のように行った:約200μl/ウェルの2.5μMリン酸化合成ペプチドおよび1μM非リン酸化合成ペプチドの溶液を二酸化チタン負荷プレートのウェルへ結合させるため、プレート振盪機上で15分間室温にて粒子をペプチドと共にインキュベートし、次いでペプチド溶液を真空を利用して二酸化チタン粒子中を通過させた。リン酸化ペプチドはイオン化し難いことが知られているため、リン酸化および非リン酸化ペプチドについて様々な出発濃度を使用し、これらのペプチドについてMSスペクトルにおけるピーク強度のバランスを図った。二酸化チタン粒子に結合しなかった物質を通過画分として回収し、ZipPlate上で製造業者の推奨に従い濃縮した。残りの未結合または非選択的に結合した物質を180μlの結合緩衝液で10回洗浄して二酸化チタン粒子から除去した。二酸化チタン粒子に結合したペプチドを180μlの1%水酸化アンモニウム溶液で溶離し、ZipPlate上で製造業者の推奨に従い濃縮した。濃縮したペプチドをZipPlateから直接MALDIChip上へ5mg/mlα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸+50%アセトニトリル+0.1%トリフルオロ酢酸の溶液で溶離し、prOTOF 2000質量分析計で分析した。
【0087】
上記実験に使用した物質としては、合成p60 c−srcペプチド(521−533)Thr−Ser−Thr−Glu−Pro−Gln−Tyr−Gln−Pro−Gly−Glu−Asn−Leu−COOH(カタログ番号8249)およびpp60 c−srcペプチド(521−533)Thr−Ser−Thr−Glu−Pro−Gln−Tyr(P)Gln−Pro−Gly−Glu−Asn−Leu−COOH(カタログ番号8250)が挙げられ、いずれもSynPep Corporation、Dublin、CAから入手した。カッコ内の「P」はチロシン残基のリン酸化を表す。メッシュ−325の二酸化チタン粒子(カタログ番号248576−100g)、アセトニトリル(カタログ番号270717−6×1L)、トリフルオロ酢酸(カタログ番号302031−100ML)、水酸化アンモニウム(カタログ番号338818−100ML)、ギ酸(カタログ番号PR15225KR)、酢酸ナトリウム(カタログ番号241245−500G)および塩化ナトリウム(カタログ番号22351−4)は、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)より購入した。ZipPlate(カタログ番号ZPC180010)、96穴MultiScreen−DVプレート(カタログ番号MADVN6510)および特注真空マニホールドは、Millipore Corporation(Billerica、MA)より入手した。ポリプロピレン96穴コレクションプレート(カタログ番号EK−21261)はE & K Scientific Products,Inc.(Los Gatos、CA)より購入した。α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(カタログ番号M001)およびペプチドキャリブレーションミックス1(カタログ番号C101)は、LaserBio Labs(Sophia−Antipolis Cedex、France)より購入した。質量分析(MS)スペクトルは、MALDIChip標的プレート(カタログ番号N7014021)およびprOTOF 2000 O−TOF質量分析計(PerkinElmer/SCIEX、Concord、ON、Canada)を用いて取得した。
【0088】
図8の上段および下段は、それぞれ、分画せずにMALDIChipプレート上へ直接スポットした非リン酸化c−srcペプチド(p60 c−srcペプチド)およびリン酸化c−srcペプチド(pp60 c−srcペプチド)のMALDI−TOF質量分析プロファイルを示す。予想されるペプチドの質量に該当するモノアイソトピックピークの質量を各MSスペクトルに示した。pp60 c−srcペプチドとp60 c−srcペプチドとのピーク強度比は1.1であった。図9は、二酸化チタン粒子に結合しなかったペプチド画分のMALDI−TOF質量分析プロファイルを示す。
【0089】
これらのデータから、pp60 c−srcペプチド(下段)が二酸化チタン粒子上に保持され、p60 c−srcペプチド(上段)が二酸化チタン粒子を通過したことが明らかである。pp60 c−srcペプチドとp60 c−srcペプチドとのピーク強度比は0.05である。図10は、二酸化チタン粒子から溶離したペプチド画分のMALDI−TOF質量分析プロファイルを示す。pp60 c−srcペプチドが選択的に保持され、二酸化チタンビーズから溶離した。殆ど検出できない量の非リン酸化ペプチドしか二酸化チタン粒子上には保持されていなかった。pp60 c−srcペプチドとp60 c−srcペプチドとのピーク強度比は20であった。
【0090】
4回の独立した分画と分析を各ペプチドについて行った。p60 c−srcペプチドとpp60 c−srcペプチドについて予想されるペプチドの質量は、それぞれ1463.0および1543.5ダルトンであり、該当するMSスペクトル上で容易に識別することができる(図8〜10)。二酸化チタン粒子から得られた未結合および結合ペプチド画分の分析からは、記載の実験条件下でリン酸化ペプチドが選択的に保持・回収されたことが明らかである。直接分析した未分画ペプチドの強度比は1に近く(図8)、ペプチドのイオン化の応答が実験条件下で均衡しており、互いに比較可能であることが判明した。これらのデータを併せて考えると、p60 c−srcペプチドの約20倍のpp60 c−srcペプチドが二酸化チタン粒子上で保持および溶離されたことが明らかである。
【実施例3】
【0091】
本実施例では、二酸化チタンホスホアフィニティ物質を使用したホスホプロテインの単離、さらには、ゲル電気泳動を利用した分画および質量分析を利用した検出について記載する。
【0092】
ホスホプロテインを富化したサンプルは、実施例1および2で上述したように、二酸化チタンホスホアフィニティ物質を用いることで調製可能である。次いでサンプルをSDS−ポリアクリルアミドゲル上で標準的な方法にて分離する。SYPRO Rubyタンパク質ゲル染色剤を用い、製造業者の指示に従ってゲルを染色し、ProXPRESS二次元プロテオミクス・イメージングシステムまたは類似のゲルイメージングデバイスを利用して蛍光シグナルを画像化する。ゲルを460/80nmの励起バンドパスフィルターおよび650/150nmの発光バンドパスフィルターでスキャンする。次いで、蛍光スポットをゲルから切り出す。脱色には、スポットを1.5mLの微量遠心チューブへ入れ、100μLの50%メタノール、5%酢酸で30分間、100μLの0.1%トリフルオロ酢酸で30分間、100μLの50%メタノール/5%酢酸で30分間脱色し、最終的に100μLの100%アセトニトリル中で10分間脱水する。ゲル片を自然乾燥させてから還元およびアルキル化を行う。二次元ゲル電気泳動を行う前にタンパク質が既に還元およびアルキル化されている場合には、以下のアルキル化および還元工程を省略できる。
【0093】
システイン残基のアルキル化および還元の場合には、十分な20mMジチオトレイトール(DTT)を0.1M NHHCO溶液へ添加して乾燥ゲル片を完全に覆う(約50μL)。ゲル片が再膨潤するに従って、さらに溶剤を添加する必要がある。ゲル片を56℃で1時間インキュベートする。DTT溶液を除去し、等量(50μL)の100mMヨードアセトアミド(50mM NHHCO中)を添加する。ゲル片を室温、暗所にて30分間インキュベートし、上清を捨て、ゲル片を100μLの0.1M NHHCOで15分間、時々ボルテックスしながら2回洗浄し、過剰の試薬を洗い流す。過剰の試薬を全て抽出するには、ゲル片を100μLの0.1M NHHCO/50%ACNで15分間、時々振盪しながら洗浄する。上清を捨て、ゲル片を100%アセトニトリルで洗浄する。上清を捨て、ゲル片を十分に自然乾燥させる。
【0094】
トリプシンでのゲル内消化には、0.05mg/mlの修飾トリプシンの新鮮な溶液(50mM NHHCO/10%アセトニトリル中)を調製する。試薬は、直ちに使用しない場合には氷上に維持する。10μLの新鮮なトリプシン溶液を添加し、ゲル片にトリプシン溶液を吸収させてから次の工程に進む。この操作には、典型的には約10分間のインキュベーションを要する。20μLの50mM NHHCO/10%アセトニトリル(最終液量はおよそ30μL)を添加してゲル片を十分に再膨潤させ、一晩37℃にてインキュベートする。
【0095】
ペプチドを抽出するには、1μLの10%トリフルオロ酢酸を10分間室温にて添加してタンパク分解消化を停止させる。サンプルをボルテックスミキサーを用いて混合後軽く遠心分離し、上清を吸引除去し、次いで0.5mlのマイクロチューブへ入れる。50μLの0.1%トリフルオロ酢酸をゲル片へ添加してインキュベーションをさらに30分間行う。この溶液を混合・遠心後、得られた上清を最初の上清と合わせる。50μLの60%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸をゲル片へ添加し、30分間インキュベートする。混合・遠心してチューブ内の最初の上清と合わせた後、合わせた上清混合物をSpeed−Vac真空濃縮機中で乾燥させ、10μLの10%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸に再度溶解する。次いでペプチドミックスを必要に応じて脱塩し、サンプルの濃度に応じて、C18 ZipTipカラム(Millipore製)で濃縮するか、または、MALDI−TOF標的プレート上へ直接スポットする。ペプチド混合物を濃縮した場合は、0.5μLのマトリックス(50%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸中、5mg/mlのα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸)と混合し、0.5μLのサンプルを標的プレート上へスポットする。スポットを自然乾燥させ、次いでprOTOF 2000 MALDI O−TOF質量分析計(PerkinElmer、Boston、MA)または類似の機器を用いて分析する。続いてタンパク質を、その特徴的なペプチド質量プロファイルに基づいて同定する。
【0096】
以上のことより、二酸化チタンホスホアフィニティ物質を利用して調製したホスホプロテイン富化サンプルは、ゲル電気泳動等によってさらに分画してから質量分析で分析することができる。
【実施例4】
【0097】
本実施例では、酸化チタンホスホアフィニティ物質の膜形式での調製について記載する。
酸化チタンを被覆/含浸させた膜を含むマルチウエルプレートを以下のように調製した:MULTISCREEN96穴(Millipore Corp.、Bedford、MA)プレートを、250μl/ウェルの無水エタノールで3回、次いで250μl/ウェルの脱イオン水(Milli−Q水、Millipore Corp.)で5回洗浄して清浄にした。プレートを60℃で30分間乾燥させた。
【0098】
二酸化チタンの被覆溶液(50mMフッ化チタン溶液)を脱イオン水中で調製し、pH約1.8に調整した。即ち、0.31gのフッ化チタン(IV)を清浄なポリカーボネート製のねじ込みキャップ式容器に計量し、20mlの水を加え、容器を密閉し、磁気ミキサーに60分間かけて完全にフッ化チタン(IV)を溶解させた。非常にゆっくりと(約1ml/分)26mlの0.1%NHOH水溶液を導入し、絶えず混合しながら二酸化チタンが局所的に沈殿するのを防ぎ、pH値がpH1.8近くの溶液を得た。必要であれば、さらに0.1%NHOHを添加して溶液のpHを調整することができる。フッ化チタン(IV)溶液の量は脱イオン水を添加して50mlの最終液量に調整した。
【0099】
被覆溶液(250μl/ウェル)を予め洗浄・乾燥させておいたMULTISCREEN96穴プレートのウェルへ塗布した。プレートを粘着性のカバーで密封し、溶液の蒸発を防止した。プレートを60℃にて対流オーブン中2時間インキュベートした。ペーパータオル等の清浄な吸収性の表面上でプレートをひっくり返して静かに叩き、二酸化チタンの被覆溶液を除去した。次いでウェルを250μlの脱イオン水ですすいだ。清浄な吸収性の表面上でプレートをひっくり返して静かに叩き、水をウェルから除去した。洗浄工程をさらに3回繰り返した。次いでプレートを60℃にて対流オーブン中40分間乾燥させた。使える準備が整うまで、処理の終わったプレートは乾燥状態で保存した。上記調製に使用した材料としては、MULTISCREEN96穴プレート(カタログ番号MADVN 6510;Millipore Co.)、フッ化チタン(IV)(カタログ番号333239−100g;Sigma)、実験器具(カタログ番号353073;Becton Dickinson)およびその他の試薬が挙げられ、いずれもSigmaより購入した。
【実施例5】
【0100】
本実施例では、二酸化チタンホスホアフィニティ物質を膜形式で利用した際のホスホペプチドの単離について記載する。
ホスホペプチド(P2P)と非リン酸化ペプチド(P2)とを含有する混合物からホスホペプチドを富化した。ペプチドは、先のサンプルで記載した通り、p60 c−srcペプチド(P2)とpp60 c−srcペプチド(P2P)とした。これらの検討には、P2およびP2Pの100μM水溶液を約16μlずつ混合し、結合緩衝液(20%アセトニトリル+20%イソプロパノール+0.1%ギ酸)で1:25に希釈した。得られたペプチドミックス溶液の半量をコレクションプレートの2つのウェルへさらに分注し、非分画陽性対照として除けておいた。ペプチドミックスサンプルの残りの半量を、二酸化チタン被覆MULTISCREEN96穴プレート(実施例4で調製した通り)上で以下のように分画した。等量のサンプルを2つの別個のウェルへ負荷した。二酸化チタンプレートを真空マニホールド中のコレクションプレートの上に乗せ、減圧をかけ(25mmHg未満)、ペプチド溶液を二酸化チタン被覆膜中を通過させ、未結合物質をいずれもコレクションプレートへ回収して分析した。陽性対照サンプルおよび未結合物質サンプルを60℃にて約30分間真空オーブンへ入れ、アセトニトリルとイソプロパノールを蒸発させてから、サンプルをC18 ZipPlate(Millipore、Bedford、MA)上で濃縮した。有機溶剤の蒸発後、濃縮サンプルを0.1%ギ酸で元の液量まで希釈した。二酸化チタン被覆膜上のサンプルを、180μlの結合緩衝液を用いて洗浄した。洗浄工程を5回繰り返した。サンプルを300μlの100mMリン酸アンモニウムpH8.5で溶離し、上述の通り真空マニホールドを用いてコレクションプレートに回収した。これらの実験では、リン酸化および非リン酸化形態のp60 c−src(521−533)ペプチド(以下、それぞれP2およびP2Pと略記)はSynPep Corporation、Dublin、CAより入手した。P2およびP2Pに対して予想されるm/z値は、それぞれ1463Daおよび1543Daである。
【0101】
約30μlの10%ギ酸を添加して溶離サンプルを酸性化した。サンプルをZipPlate上で濃縮し、直接MALDI Chip(PerkinElmer)上へ2ウェルずつ溶離し、prOTOF MALDI−TOF質量分析計(PerkinElmer/SCIEX)で分析した。
【0102】
結果を、図11に示すように、P2およびP2Pを含有する非分画陽性対照、結合画分、非結合画分の質量スペクトルで表す。図11Aからは、出発混合物中のP2(1462.6m/z)およびP2P(1542.6m/z)の存在が明らかである。図11Bからは、P2P(1542.6m/z)が二酸化チタンホスホアフィニティ物質に結合し、P2が結合しなかったことが明らかである。図11Cからは、P2(1462.7)が未結合画分に存在したことが明らかである。非リン酸化ペプチドP2は未結合画分に限って検出され、リン酸化ペプチドP2Pは溶離画分で回収された。両ペプチドは、その各々の質量に基づいて非分画サンプル中で容易に識別可能である。
【0103】
以上のことより、濾過形式の二酸化チタン被覆膜上で処理することにより、ホスホペプチド含有サンプルのホスホペプチド含有量が高まった。
【実施例6】
【0104】
本実施例では、二酸化チタンホスホアフィニティ物質を粒子形式で利用した際の、血清を含有する複合混合物からのホスホペプチドの単離について記載する。
約400pmolのリン酸化(P2P)および非リン酸化(P2)合成ペプチドを20μlのヒト血清(Sigma)へ添加することにより、複合ホスホペプチド混合物を調製した。純粋な血清サンプルを陰性対照として使用した。2つのサンプルを本明細書中ではそれぞれ「スパイク(spiked)サンプル」および「非スパイク(non−spiked)サンプル」と呼ぶ。
【0105】
2倍容量のアセトニトリルを添加してタンパク質結合ペプチドを解離させ、血清タンパク質を沈殿させることにより、スパイクおよび非スパイク血清サンプルの双方を予め分画しておいた。液相中のペプチドを遠心分離により沈殿タンパク質から分離した。予め分画したサンプルを0.1%ギ酸で希釈し、実施例5に記載の結合緩衝液に対応する最終緩衝液組成物へイソプロパノールを添加した。メッシュ−325の二酸化チタン粒子をMultiscreen膜の上面に担持させて二酸化チタン被覆膜の代わりにクロマトグラフ媒体として使用した以外は、サンプルを実施例5と同様に処理・分析した。
【0106】
結果を図12に示す。図12Aは、スパイク前の血清とP2およびP2Pを含有する血清の分画前の質量スペクトルを示す。図12Bは、ホスホアフィニティ物質に結合した画分の質量スペクトルを示す。図12Cは、ホスホアフィニティ物質に結合しなかった画分の質量スペクトルを示す。二酸化チタン粒子で分画しなかった血清サンプルではスパイクペプチドは検出されなかった。スパイク血清サンプルのうち二酸化チタンに結合しなかった画分では、主として非リン酸化P2ペプチドが検出された。以上のことより、二酸化チタン粒子からの溶離画分でリン酸化P2Pペプチドの富化が認められた。
【実施例7】
【0107】
本実施例では、二酸化チタンホスホアフィニティ物質を膜形式で利用した際の、酵素消化物サンプルからのホスホペプチドの単離について記載する。
トリプシン消化ウシβ−カゼインより生成した複合ペプチド混合物からホスホペプチドを単離した。約100μgのウシβ−カゼイン(100mM炭酸アンモニウム緩衝液中、pH8.5)を5μgのトリプシン(Sigma)で16時間消化した。ギ酸を3%の最終濃度まで添加して酵素反応を停止させた。5μlの消化物サンプルを結合緩衝液(実施例5参照)で20倍に希釈し、3種類のカゼイン消化物サンプルを調製した。得られたサンプルを、実施例5に記載の手順に従って、二酸化チタン被覆MULTISCREEN膜プレート上で分画し、分析した。二酸化チタン分画を行わずにZipPlate上で濃縮したサンプルと、カゼイン消化物をMALDI Chip上に直接スポットしたものを対照として使用した。
【0108】
結果を図13に示す。図13Aは、二酸化チタンから溶離したペプチド、二酸化チタンに結合しなかったペプチド、β−カゼインのトリプシン消化物に存在するペプチドのMSスペクトルにおけるピーク分布を700〜5000のm/z値範囲で示したものである。図13Bは、トリプシン消化ウシβ−カゼインサンプルから富化されたリン酸化ペプチドの種類を詳しく示したものである。これらの結果から、一リン酸化、二リン酸化、三リン酸化および四リン酸化ペプチドのいずれもが二酸化チタン被覆膜を用いて単離されたことが明らかである。
【実施例8】
【0109】
本実施例では、二酸化チタンホスホアフィニティ物質を膜形式で利用した際の、5種タンパク質混合物からのホスホプロテインの単離について記載する。
等重量のウシ血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン、炭酸脱水酵素、ミオグロビンおよびβ−ラクトグロブリンを組み合わせて5種タンパク質混合物(Pmix5)を調製した。Pmix5の原液を結合緩衝液(実施例5)で1:10に希釈した。サンプルの半量を同じく1%TRITON X100を含有する結合緩衝液で1:10に希釈し、タンパク質と二酸化チタンとの非特異的な相互作用を軽減した。
【0110】
タンパク質の二酸化チタン単離は、先の実施例に上述した通りに行ったが、200μlの50mMトリス−酢酸pH7.5+1%Triton X100による3種類のストリンジェンシー洗浄を追加してタンパク質と二酸化チタンとの非特異的な相互作用を軽減した。また、追加の溶離工程を導入し、初期溶離で使用したリン酸アンモニウム緩衝液に1%SDSを添加したものを2回目の溶離で使用した。SDSの添加により、より定量的にタンパク質が溶離した。タンパク質サンプルをアセトンで沈殿させ、12%ビストリスミニゲル(Invitrogen)で分析した。SyproRuby全タンパク質ゲル染色剤(Molecular Probes)を使用してゲルを染色した。タンパク質バンドを定量し、他の非リン酸化タンパク質に対する卵白アルブミンの富化率を算出した。
【0111】
図14にこれらの実験の結果を示す。Pmix5に含まれるタンパク質としては、リン酸化卵白アルブミン(OVA)と4種類の非リン酸化タンパク質(ウシ血清アルブミン(BSA)、炭酸脱水酵素(CAH)、ミオグロビン(Myo)、β−ラクトグロブリン)が挙げられ、図14Aとして示したSDS−PAGEゲル上で表示した通りである。2種類の溶離サンプル、即ち、1%TRITON X100の存在下(TE2)または不在下(E2)で二酸化チタン膜に結合したサンプルを図示する。非リン酸化タンパク質に対する卵白アルブミンの富化率を、ゲル上の該当するバンド強度の比率として算出した。BSA、CAHおよびmyoに対して標準化した卵白アルブミン富化率を図14Bに示す。これらの比率は、未分画サンプル(M5)中の該当する比率に対して標準化してある。M=分子量マーカー;M2=BSA+卵白アルブミン2成分タンパク質ミックス。これらのデータから、酸化チタン被覆膜を用いることで、リン酸化卵白アルブミンが少なくとも8倍富化したことが判明した。サンプルを界面活性剤の存在下で溶離した場合、約50倍までに増加した富化(BSA、CAHおよびmyoに対する平均)が認められた。
【実施例9】
【0112】
本実施例では、アレイ形式でのホスホ分子の富化について記載する。
マルチウエルマイクロプレートと自動液体ハンドリング機器とを組み合わせることにより、薬物発見およびリード化合物のスクリーニングにおけるハイスループットサンプル処理のための簡便かつ有力なテクノロジープラットフォームを提供する。マイクロプレート/液体ハンドラープラットフォームにより、多数のサンプルまたはアッセイを同時並行的に処理することが可能となる。ポリスチレン製マルチウエルプレートは、当該プラスチックが正確な成形が容易であり、自動システムによるハンドリングに対して良好な剛性を示し、かつ、プレートの読み取りに必要な光学的透明度をもたらすため、多くの用途にとって一般的である。ポリプロピレン製プレートは、タンパク質および核酸に対する結合能がポリスチレンよりも低いため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を伴う用途で一般に採用されている。また、熱伝達を良くするため薄く成形することができる。マルチウエルマイクロプレートは、各種の機能性被膜(例えば、ビオチニル化分子を捕捉するためのストレプトアビジン)を備えたもの、並びに、目的の各種分子の精製を容易にするため基体に各種フィルターを装備したものが入手可能である。
【0113】
マイクロプレートによるホスホプロテインの精製は、以下のように行うことができる。タンパク質サンプルを分析対象の標本から取得する。脱脂を行って、細胞溶解物等の複合標本からホスホプロテインを富化してもよい。このようなサンプルは、ホスホプロテイン以外にも、本発明の方法およびシステムによるホスホプロテインの回収に悪影響を及ぼす可能性のあるリン酸化分子(リン脂質等)を含有している。マルチウエルマイクロプレートによるホスホプロテインの富化に先立って行うタンパク質調製のための上首尾な浄化方法の一例は、クロロホルム−メタノール沈殿である。例えば、600μlのメタノールを150μl(150〜300μg)のタンパク質サンプルへ添加し、サンプルをボルテックスミキサーを用いて十分に混合する。次いで、150μlのクロロホルムを添加し、サンプルをもう一度十分に混合する。次に、450μlの脱イオン水を添加し、サンプルを十分に混合する。次いで卓上微量遠心分離機を用いて標本をおよそ12,000rpmにて遠心分離する。生じた二相分離から得られた上相を、2つの相の界面に形成した白色析出物を保持するよう注意しながら捨てる。次いで450μlのメタノールを添加し、サンプルを十分に混合してもう一度12,000rpmで5分間遠心分離し、チューブの底にペレットを生成させる。上清を全て捨て、後述するようなアフィニティ精製法に適した緩衝液にペレットを再懸濁する。適切なプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤のカクテルを利用すれば、サンプルの調製中、生物学的サンプルを損なうことなく維持することが可能である。記載したサンプルの浄化法は単なる一例であって、他の多くの方法を採用することができ(例えば、サンプルのイオン交換予備精製を利用して脱脂を効果的に行うことが可能)、どの方法を選ぶかは、調査対象の生物学的サンプルの性質にある程度依存する。生物学的液体、培養培地、懸濁細胞培養物、接着細胞培養物、細菌、植物組織および動物組織は、異なるサンプル調製法を必要とする場合がある。例えば、固体物質(動物の組織、器官または個体等)は脱脂の前に、ブレンダーを用いた機械的な離解、並びに/または、コラゲナーゼおよび/もしくはエラスターゼを用いた酵素的な離解といった追加の調製を必要とする場合がある。
【0114】
適切なサンプルを調製したら、アフィニティ分画を行うため、水和金属酸化物表面の等電点に留意しながら適当な緩衝液に物質を再懸濁させる。酸化チタン系分離デバイスの場合、pH値が6.0未満(例えばpH値が5.0〜5.5付近)の結合緩衝液が、意図した用途に適している。酸化チタン系マトリックスでの分画に先立って生物学的物質を再懸濁させるのに適した緩衝液の例は、0.5M酢酸ナトリウム、0.2M塩化ナトリウム、pH5.5である。より酸性のpH3〜4の緩衝液では、ある種のタンパク質が溶液から析出してしまい、これよりもさらに低いpH値の緩衝液では、ある種の酸化チタン担体(例えば、無晶形または微結晶性の層)が分解してしまう。ホスホペプチドの場合は、選択した結合条件下で水和金属酸化物マトリックスが安定である限り、ホスホプロテインに最適なものよりも酸性度の強い緩衝液を用い、ホスホアフィニティ物質により捕捉することができる。結合緩衝液は、通常、ホスフェートまたはピロホスフェートが存在しないような処方になっているが、その理由は、これらのイオンが、リン酸化分子のマトリックスへの結合を減らしたり、排除さえしてしまうためである。タンパク質の可溶化を容易にするため、他の添加剤を結合緩衝液へ配合してもよい。このような添加剤の例としては、Triton X−100、デオキシコール酸ナトリウム、尿素、チオ尿素およびドデシル硫酸ナトリウムが挙げられる。DNAse IまたはRNAse A等のヌクレアーゼによるサンプル処理は核酸を切断するのに有用であり、そうしないと、核酸の場合、最適な濾過を行うにはサンプルの粘度が上がりすぎてしまう。単離時の生物学的分子のリン酸化状態を維持するため、キナーゼおよび/またはホスファターゼ阻害剤の添加を採用することもできる。
【0115】
ホスホプロテインまたはホスホペプチドの富化は、多孔質または半多孔質の水和金属酸化物表面または被膜を備えたスピンカラムまたはマルチウエルマイクロプレート等の濾過デバイスを用いて行う。まず、濾過デバイスを、典型的には少量(約100μl)の結合緩衝液を添加して予め湿らせておくが、他の媒体(例えば、水または70%エタノール)で予め湿らせておくのが適切な場合もある。約1分以上経った後、真空濾過、吸引、遠心分離または他の手段で緩衝液を除去すればよい。予め湿らせたら、再度湿らせなくてもよいように、濾過するまでプレートを湿潤な状態に維持しておいてもよい。次に、適当な結合緩衝液中に調製したサンプルを濾過デバイスへ添加し、水和金属酸化物アフィニティ担体と共に充分な時間インキュベートしてリン酸化分子と水和金属酸化物表面とを相互作用させる。真空濾過、吸引、遠心分離または他の手段でサンプルを除去する。次いでデバイスを、同一の基本的なアプローチを用いてさらに結合緩衝液で洗浄する。典型的には、数倍容量の結合緩衝液を繰り返し適用して非選択的に会合したサンプル成分を除去し、ホスホアフィニティ膜に会合したリン酸化分子を残す。
【0116】
洗浄緩衝液を適用して不要な物質を取り除いた後、適宜処方した溶離緩衝液でリン酸化ポリペプチドを溶離すればよい。結合緩衝液を用いた場合と同様に、溶離緩衝液の組成の選択は、アフィニティ担体に関する生物物理的な制約やホスホ分子の特性に左右される。強塩基性の溶離緩衝液では、ホスホアフィニティ物質(特に、表面が無晶形または微結晶性の場合)の安定性が低下し、かつ、ホスホセリンおよびホスホスレオニン残基からアルカリによってホスフェート基が除去されることでホスホ分子の脱リン酸化が引き起こされる場合がある。ホスホチロシン残基を含有するタンパク質を選択的に検出または単離するためには、場合によっては、濾過デバイスへかける前にこれらの残基を脱リン酸化するのが望ましい。水和金属酸化物の等電点よりも高いpH値での溶離は、マトリックスからリン酸化分子を回収する際の一つの選択肢であるが、ホスフェート含有緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4)を用いると、ホスホ分子も競合的にマトリックスから溶離してしまう。溶離したら、ホスホ分子をC−18逆相充填剤またはアニオン交換媒体等の脱塩デバイスへかけるか、あるいは、氷冷アセトン等の有機溶剤で沈殿させるか、あるいは、そのまま使用してもよい。
【実施例10】
【0117】
本実施例では、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲルにおけるリン酸化ポリペプチドの検出について記載する。
以下に記載するのは、ホスホプロテインまたはホスホペプチド等のリン酸化ポリペプチドを、ホスホアフィニティ物質を用いてSDS−PAGEゲルにて検出するための代表的な手順である。その際、ホスホアフィニティ物質は、粒子または結晶形状の酸化イットリウム、イットリウム・アルミニウム・ガーネットまたは二酸化チタン等の水和金属酸化物である。標準的な手順に従い、タンパク質サンプルをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離する。電気泳動後、酸とアルコールとを含有する溶液(例えば、50%メタノール、10%酢酸)中でゲルを固定し、次いで脱イオン水中で洗浄して固定剤溶液を除去する。次いでホスホアフィニティ粒子/結晶を含む溶液へゲルを添加し、2時間〜一晩室温で静かに振盪(即ち、オービタルシェーカーにて約50RPM)しながらインキュベートする。ホスホアフィニティ粒子を含む溶液には、ホスホアフィニティ粒子とホスホプロテインとの結合を容易にし、また、ゲルマトリックスまたはサンプル中の他のアニオン性巨大分子への非選択的結合を最小限に抑えるため、単純なアルコール、緩衝液、塩および/または酸が含まれていてもよい。結合時に使用したのと同様の組成の緩衝液でゲルを洗浄するが、溶液にはホスホアフィニティ粒子を配合しない。あるいは、ゲルを脱イオン水中でインキュベートする。次いで、ホスホアフィニティ粒子に選択的に結合する着色または蛍光色素を含有する溶液中でゲルをインキュベートする。選択した色素は、通常、タンパク質またはゲルマトリックスに対する結合力を殆ど持たないか、全く持たないものである。珪藻類に含まれるシリカに結合することが知られている蛍光色素の一つは、2−(4−ピリジル)−5−((4−(2−ジメチルアミノエチルアミノカルバモイル)メトキシ)フェニル)オキサゾール(PDMPO)であり、この化合物も他の金属酸化物と相互作用して蛍光レポーターとして機能し得る(Shimizuら、2001)。典型的には、スルホン化された色素はタンパク質に結合するため避けるが、低分子のスルホン化化合物を添加すれば、この非特異的相互作用を最小限に抑えることができる。次いでゲルを振盪しながら再度インキュベートし、過剰の色素を除去する。リン酸化ポリペプチドの検出は、目視観測で行うか、あるいは、UV式CCDカメラ検出システム、レーザー式ゲルスキャナー、キセノンアーク式CCDカメラ検出システム、UVトランスイルミネーターと組み合わせたポラロイドカメラ等のデバイス、または、着色もしくは蛍光部分の検出に使用される様々な他のデバイスを用いて行う。高分子膜(例えば、ニトロセルロース膜またはポリビニリデンジフルオリド膜)上に電気ブロットしたホスホプロテインを検出する際にも、同様のアプローチを採用する。一般に、ポリペプチドが検出試薬へ近づきやすくなるため、インキュベーション期間は転写膜の場合には短くなる。
【実施例11】
【0118】
本実施例では、予め誘導体化しておいたポリペプチドサンプルを用いた際の、マトリックスにおけるリン酸化ポリペプチドの検出について記載する。
ゲル中またはブロット上でのホスホプロテインまたはホスホペプチドの検出は、ホスホアフィニティ物質と、蛍光体で予め誘導体化しておいたサンプルとを併用することで実施可能である。その際、ホスホアフィニティ物質は、粒子または結晶形状の酸化イットリウム、イットリウム・アルミニウム・ガーネットまたは二酸化チタン等の水和金属酸化物である。タンパク質サンプルを標識する場合、シアニン色素であるCy2、Cy3およびCy5のスクシンイミジルエステルを用いて3種類もの異なる複合タンパク質集団を蛍光標識し、その後これらを混合し、ディファレンスゲル電気泳動(DIGE)(Unluら、1997)と呼ばれる方法を利用して同一の二次元ゲル上を同時に泳動させればよい。二次元ゲルの画像は、3種類もの異なる励起/発光フィルターを用いて取得し、それぞれ違った色を持つ蛍光シグナルの比率を利用してサンプル間のタンパク質の違いを見出す。DIGEにより、2〜3種類のサンプルを同一の電気泳動条件下で分離することが可能となり、ゲル画像の記録と整合の工程が簡略化される。このテクノロジーの応用の一つは、2種類のサンプル間(例えば、薬物処理細胞と対照細胞、または、患部組織と健常組織)の相違を調べることに利用されている。ゲルまたはブロットは、実施例10で上述したように、ホスホアフィニティ粒子中でインキュベート可能である。ある特定の粒子は、蛍光体で標識されたホスホプロテインからのシグナルを消すことができ、粒子とのインキュベーション前後でゲルから発生した蛍光プロファイルを比較することで、得られた2種類の画像の減法分析によりプロファイル中のどのタンパク質がリン酸化したかが判る。タンパク質に固有の蛍光(主にトリプトファンから生じる蛍光)を利用してタンパク質を可視化する場合(Roegenerら、2003)にも、同様のアプローチを使用することができる。
【実施例12】
【0119】
本実施例では、誘導結合プラズマ質量分析を利用したホスホアフィニティ物質またはホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の検出について記載する。
本実施例では、元素分析の分析アプローチのうちの一つである誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)について記載する。ICP−MSを利用すると、1ppbもの低濃度金属イオンを検出することが可能である。第一イオン化電位が5.986電子ボルトであるアルミニウムのイオン化転化率は、WilburおよびMcCurdy、2001にリンについて記載されたのと同一の実施条件下では99%である。従って、リンの代わりにAl(III)を検出するのにWilburおよびMcCurdy、2001に概説された手順に従うと、検出は16倍向上する。また、金属を特異的に検出することによって、検出ウィンドウをサンプルのバックグラウンドシグナルから隔てることができる。
【0120】
バックグラウンド情報のため、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)は環境サンプル、生物学的サンプル、薬学的サンプルの微量元素分析に有用である。レーザーアブレーションICP−MSでは、紫外線レーザービームの空間分解能と最新ICP−MSの質量分解能および元素感度を組み合わせることで微量元素分析が可能となる。通常193〜266nmの波長で生じるUVレーザー光をサンプル表面に当てると、サンプルのアブレーションが引き起こされる。15〜20ミクロンのアブレーションクレーターを当該機器によって機械的に生成する。当該方法には、特別なサンプル調製は不要である。アブレートした物質をアルゴンキャリアーガス中で高温誘導結合プラズマへ直接送り、次いで得られたイオンを質量分析計へ送って検出および計数する。質量フィルターでは荷電/質量比に基づいて粒子を選択し、特定の同位元素のみフィルターを通過させて質量分析計(四極子、磁気セクター型または飛行時間型)の末端に搭載した電子増倍管検出器に送ることができる。個々の同位元素の検出シグナルは、同位体の存在比へ変換するか、または、標準を未知のものと併せて測定する場合には実際の元素濃度へ変換することができる。
【0121】
ホスホアフィニティ物質またはホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体のICP−MSによる検出は、以下に例示する手順に従って実施できる。まず、リン酸化分子を、マイクロアレイ上に固定化された結合パートナー(例えば、当該分子に対して選択的な抗体、アプタマーまたは他の任意のアフィニティ分子)のスポットへ結合させる。次いで、1種以上のホスホアフィニティ物質と共にアレイをインキュベートする。次に、緩衝液(例えば、50mM酢酸ナトリウム、pH6.0、50mM塩化マグネシウム)中でアレイを洗浄し、過剰のホスホアフィニティ物質を除去する。アレイ上の個々のスポットを、例えば、Marshallら、2002およびWindら、2003に記載のものと類似の方法でレーザーアブレーションICP−MSにかける(但し、リンシグナルではなく該当する金属シグナルを定量)。レーザーアブレーションICP−質量分析機器を用いた検出を行うには、一般に、紫外線レーザーアブレーションビームを通常平行ビームの形態で集光レンズに入射させる。レンズによって特定のマイクロアレイスポット上で高い束密度になるようビームを集束させることができ、これにより局所アブレーションを引き起こす。アブレートされた分子はICPサンプリングチューブに捕捉されるが、キャリアーガスの流れによってマイクロアレイから離れてチューブへと運ばれる。キャリアーガスは、通常、アブレーションを受けた領域の近くに集中するよう供給する。キャリアーガスとアブレートされた分子とをICP−質量分析機器へ送り、分子をプラズマでイオン化した後スペクトロメータで質量同定を行う。
【0122】
ICP−MSによる検出方法の代表的なものは、以下の工程を伴うものであればよい。まず、目的の分子に対して選択的な抗体、アプタマーまたは他のアフィニティ分子を含有するマイクロアレイ上にホスホ分子を捕捉する。次に、水和金属酸化物粒子のコロイド状溶液と共にアレイをインキュベートする。次に、緩衝液(例えば、50mM酢酸ナトリウム、pH6.0、50mM塩化マグネシウム)中でアレイを繰り返し洗浄し、過剰のコロイド状金属粒子を除去する。アレイ上の個々のスポットを、Marshallら、2002およびWindら、2003に記載のものと類似の方法でレーザーアブレーションICP−MSにかける(但し、リンシグナルではなく該当する金属シグナルを定量)。サンプリングは、単一または多重スポット分析、直線スキャンまたはラスタリングによって行うことができる。
【実施例13】
【0123】
本実施例では、粒子形状の水和金属酸化物を検出剤として配合したホスホアフィニティ物質を用いて行われる代表的な固相担体アッセイについて記載する。
当該アッセイは、以下のように行う。リン酸化分子の結合パートナーをスポットとして固相担体の表面上に固定化する。結合パートナーは、例えば、抗体、ペプチド、アプタマー等であってよい。スポットは、異なる結合パートナーを含むものでもよく、同一スポットの繰り返しであってもよい。結合パートナーに結合可能なリン酸化分子を含有すると思われるサンプルを固相担体表面へ適用し、固相担体をインキュベートする。従来のマイクロアレイ型の担体と同様、インキュベーションは開放系でも、カバーガラス下でも、または、インキュベーション器具中でも行うことができる。インキュベーション後、サンプルを洗浄して固相担体から過剰の非選択的に結合したホスホアフィニティ粒子や他の分子を除去する。リン酸緩衝生理食塩水等の無機リン酸を含有する緩衝液は、通常避けるが、これは、ホスフェートがホスホアフィニティ粒子の結合と競合する結果、リン酸化分子に結合したホスホアフィニティ粒子の量が減ってしまうからである。
【0124】
スポットには、今のところ結合パートナーの他に、サンプルとのインキュベーション時に結合パートナーに結合した相補的なタンパク質が全て含まれる。次いで、二酸化チタン粒子等の金属酸化物ナノ粒子の懸濁液を固相担体へ適用し、インキュベートした後、過剰分を洗浄して除去する。ホスホアフィニティ粒子は、固相担体のスポット上に捕捉されたタンパク質中のリン酸化残基に選択的に結合する。
【0125】
この段階では、スポットには結合パートナーの他に、金属酸化物ナノ粒子で標識されたリン酸化残基を有する相補的なタンパク質が捕捉されている。ナノ粒子の蛍光検出を可能にするには、金属酸化物に特異的な色素(ローダミンBまたはローダミン6G等)を含有する色素溶液を、例えば、固相担体へ適用してインキュベートする。インキュベーション後、過剰の未結合色素を洗浄して除去する。
【0126】
次いで色素の蛍光検出を従来の方法を利用して行う。例えば、色素の吸光バンドと重なる波長を含む励起光ビームをビームスプリッター素子に照射し、そこから励起ビームを対物レンズへ誘導する。ビームはレンズによって固相担体表面の狭い領域へ集束する。焦点に色素が存在すれば、長波長の蛍光が発生する。発生した蛍光の一部をレンズによって捕捉し、ビームの形状にする。蛍光はビームスプリッターを通過して光電子増倍管またはCCDアレイ等の検出器へ送られる。典型的には、エミッションフィルターを検出器の前に設置して、色素の蛍光からは生じない波長をいずれも遮断する。蛍光シグナルは、色素の局所濃度に比例するためリン酸化残基の局所濃度に比例する。蛍光検出では、例示のエピ蛍光の代わりに様々な光学的検出装置を利用してもよい。励起は、例えば、エバネッセントまたは軸外(off−axis)暗視野照明であってもよい。発光は、基体の線または面から線または面状アレイ検出器へ画像化してもよく、あるいは、走査システムと単一素子検出器で逐一回収してもよい。
【0127】
以上、本発明を開示の実施態様について記載してきたが、当業者であれば、詳述した具体的な実験が発明の例示に過ぎないことは容易に分かるであろう。発明の概念を逸脱することなく各種改変が可能であることは明らかである。
【0128】
下記文献は、それらの全体で、本明細書に援用される。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、マルチウェル・マイクロプレート濾過フォーマットに水和金属酸化物を用いて、リン酸化分子を単離するための典型的なプロセスを示す。
【図2】図2は、マルチウェル・マイクロプレート濾過フォーマットに水和金属酸化物/セルロース複合膜を用いて、リン酸化分子を単離するための典型的なプロセスを示す。
【図3】図3は、マルチウェル・マイクロプレート濾過フォーマットのウェルに水和金属酸化物表面を用いて、リン酸化分子を単離するための典型的なプロセスを示す。
【図4】図4は、マルチウェル・マイクロプレート濾過フォーマットに水和金属酸化物で被覆された磁気粒子を用いて、リン酸化分子を単離するための典型的なプロセスを示す。
【図5】図5は、酸化イットリウム・ホスホアフィニティ物質を用いる、リン酸化タンパク質の選択的単離を示す。図5Aは、ホスホペプチドを含有する出発物質に対応するタンパク質プロフィルを示す;図5Bは、単離されたリン酸化ペプチドに対応するタンパク質プロフィルを示す。
【図6】図6は、イットリウム鉄ガーネット・ホスホアフィニティ物質を用いる、リン酸化ペプチドの選択的単離を示す。図6Aは、ホスホペプチドを含有する出発物質に対応するタンパク質プロフィルを示す;図6Bは、単離されたリン酸化ペプチドに対応するタンパク質プロフィルを示す。
【図7】図7は、二酸化チタン・ホスホアフィニティ物質を用いる、リン酸化ペプチドの選択的単離を示す。図7Aは、ホスホペプチドを含有する出発物質に対応するタンパク質プロフィルを示す;図7Bは、単離されたリン酸化ペプチドに対応するタンパク質プロフィルを示す。
【図8】図8は、MALDIチッププレート上に直接スポットされたp60c−srcペプチドを含有する出発サンプル(頂部)とリン酸化p60c−srcペプチド(pp60c−srcペプチド)(底部)のポジティブ・コントロールMALDI−TOF質量スペクトルを示す。
【図9】図9は、二酸化チタン粒子に結合しなかった非リン酸化ペプチド画分(通過画分)のMALDI−TOF質量スペクトルを示す。
【図10】図10は、二酸化チタン粒子から溶離したリン酸化ペプチド画分のMALDI−TOF質量スペクトルを示す。
【図11A】図11は、二酸化チタン・ホスホアフィニティ膜を用いる、リン酸化ペプチドと非リン酸化ペプチドを含有するサンプルからのリン酸化ペプチドの選択的単離を示す。図11Aは、出発物質リン酸化(P2P)と非リン酸化(P2)ペプチドの質量スペクトルを示す。
【図11B】図11は、二酸化チタン・ホスホアフィニティ膜を用いる、リン酸化ペプチドと非リン酸化ペプチドを含有するサンプルからのリン酸化ペプチドの選択的単離を示す。図11Bは、酸化チタン被覆膜に結合したペプチドの質量スペクトルを示す。
【図11C】図11は、二酸化チタン・ホスホアフィニティ膜を用いる、リン酸化ペプチドと非リン酸化ペプチドを含有するサンプルからのリン酸化ペプチドの選択的単離を示す。図11Cは、該膜に感知できるほどに結合しなかったペプチド(通過画分)の質量スペクトルを示す。
【図12A】図12は、二酸化チタン・ホスホアフィニティ膜を用いる、血清含有サンプルからのリン酸化ペプチドの選択的単離を示す。図12Aは、血清と、リン酸化(P2P)及び非リン酸化(P2)ペプチドでスパイクされた血清との質量スペクトルを示す。
【図12B】図12は、二酸化チタン・ホスホアフィニティ膜を用いる、血清含有サンプルからのリン酸化ペプチドの選択的単離を示す。図12Bは、酸化チタン被覆膜に結合したペプチドの質量スペクトルを示す。
【図12C】図12は、二酸化チタン・ホスホアフィニティ膜を用いる、血清含有サンプルからのリン酸化ペプチドの選択的単離を示す。図12Cは、該膜に感知できるほどに結合しなかったペプチド(通過画分)の質量スペクトルを示す。
【図13】図13は、二酸化チタン・ホスホアフィニティ膜を用いる、トリプシン消化βカゼインからのホスホペプチドの選択的単離を示す。図13Aは、ホスホアフィニティ物質から溶離したペプチド、結合しなかったペプチド(通過)及び出発物質の質量スペクトルを示す;図13Bは、単離され、検出されたリン酸化ペプチドの多重形に対応する質量スペクトルを示す。
【図14】図14は、二酸化チタン・ホスホアフィニティ物質を用いる、5タンパク質混合物からのリン酸化卵白アルブミンの選択的単離を示す。図14Aは、溶離画分と通過画分のSDS−PAGEゲルの画像を示す;図14Bは、標準化したホスホプロテイン富化率を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルからホスホ分子を単離する方法であって、
(a)サンプルを、水和金属酸化物を含むホスホアフィニティ物質と、ホスホ分子がホスホアフィニティ物質に結合してホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で、接触させる工程、この場合該水和金属酸化物はイットリウムを含む;及び
(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を該サンプルから分離し、それによって、該ホスホ分子を該サンプルから単離する工程
を含む方法。
【請求項2】
サンプルからホスホ分子を単離する方法であって、
(a)サンプルを、水和金属酸化物と担体を含むホスホアフィニティ物質と、ホスホ分子がホスホアフィニティ物質に結合してホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で、接触させる工程、この場合該水和金属酸化物はイットリウムを含む;及び
(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体からホスホ分子を溶離して、それによって、該ホスホ分子を該サンプルから単離する工程
を含む方法。
【請求項3】
該ホスホ分子を該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体から分離することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
溶離の前に、該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体から未結合サンプル要素を除去することをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
サンプルからリン酸化ポリペプチドを単離する方法であって、
(a)サンプルを、水和金属酸化物と担体を含むホスホアフィニティ物質と、ホスホ分子がホスホアフィニティ物質に結合してホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下及び有機溶媒を含む液体媒質中で接触させる工程;
(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体からホスホ分子を溶離して、それによって、該ホスホ分子を該サンプルから単離する工程
を含む方法。
【請求項6】
該液体媒質がイソプロパノールを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
該液体媒質がアセトニトリルを含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
該溶離が界面活性剤の存在下で行なわれる、請求項5記載の方法。
【請求項9】
該界面活性剤がイオン性界面活性剤である、請求項5記載の方法。
【請求項10】
サンプル中のホスホ分子を検出する方法であって、
(a)サンプルを、水和金属酸化物を含むホスホアフィニティ物質と、ホスホ分子がホスホアフィニティ物質に結合してホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体を形成することができる条件下で接触させる工程;及び
(b)該ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体の形成を検出して、それによって、該サンプル中のホスホ分子を検出する工程
を含む方法。
【請求項11】
該検出が、ホスホ分子とホスホアフィニティ物質との間の結合を測定することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
該測定が、吸光度、透過、質量測定、蛍光強度、蛍光偏光、蛍光共鳴エネルギー転移、時間分解蛍光、共鳴光散乱、表面増強ラマン散乱、誘導結合プラズマ質量分光分析、電子常磁性共鳴、屈折率吸光度、核磁気共鳴、マイクロ熱量測定、フーリエ変換赤外分光分析、原子分光分析、表面プラズモン共鳴、屈折率変化、分光偏光測定及び偏光解析法の群から選択されるモードを含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
該検出が、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体のホスホアフィニティ物質部分を検出することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
ホスホアフィニティ物質部分の金属を検出する、請求項10記載の方法。
【請求項15】
質量分光分析モードを用いて、該金属を検出する、請求項10記載の方法。
【請求項16】
質量分光分析モードが誘導結合プラズマ質量分光分析である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
該検出前に、該ホスホアフィニティ物質を検出可能なタグで標識することをさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項18】
該検出可能なタグが蛍光部分である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
該水和金属酸化物が、蛍光部分によって標識されている、請求項10記載の方法。
【請求項20】
該検出が、ホスホ分子−ホスホアフィニティ物質複合体のホスホ分子部分を検出することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項21】
質量分光分析モードが、誘導結合プラズマ質量分光分析である、請求項10記載の方法。
【請求項22】
該検出が、蛍光共鳴エネルギー転移を検出することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項23】
蛍光共鳴エネルギー転移が、ホスホ分子上の蛍光タグと、ホスホアフィニティ物質上の蛍光タグとの間で生ずる、請求項10記載の方法。
【請求項24】
該水和金属酸化物が、酸化アルミニウム、酸化チタン、イットリウム鉄ガーネット、イットリウム・アルミニウム・ガーネット、イットリウム・ガリウム・ガーネット、酸化第二鉄、酸化ガリウム、酸化イットリウム、酸化バナジウム、酸化ジルコニウム、チタン酸鉄、アルミン酸鉄、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、アルミン酸ジルコニウム、針鉄鉱、ギブス石、バイヤライト、ベーマイト、イルメナイト、イルメノルチル、シュードルチル、ルチル、ブロカイト、シュードブロカイト、ゲルキーライト、パイロファン石、エカンドリュウサイト、メラノスチバイト、アルマルコライト、スリランカイト及びアナターゼの群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項25】
該水和金属酸化物が、酸化イットリウム、イットリウム鉄ガーネット及び二酸化チタンから成る群から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
該水和金属酸化物が、酸化イットリウムである、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
該水和金属酸化物が、イットリウム鉄ガーネットである、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
該水和金属酸化物が、粒子形状である、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
ホスホアフィニティ物質がさらに担体を含む、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
該担体が、粒子、ビーズ、ゲル、マトリックス、膜、フィルター、ファイバー、シート、メッシュ、フリット、樹脂、サンプル容器、カラム、ピペット先端、スライドチャンネル及びMALDI−TOFプレートの群から選択される、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
該担体が無機物質を含む、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
該担体が粒子である、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
該粒子がコロイド状金属を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
該担体が有機物質を含む、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
該担体がシートである、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
該シートがセルロースを含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
該担体が検出可能なタグを含む、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
該ホスホ分子がマクロ分子である、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
該ホスホ分子がリン酸化ポリペプチドである、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
サンプルが担体を含む、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
サンプルが検出可能なタグを含む、請求項1、2、5又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
ホスホアフィニティ・ユニットを含む商業的パッケージであって、該ユニットが、水和金属酸化物で被覆された複数の担体シートを含むパッケージ。
【請求項43】
該水和金属酸化物が酸化チタンである、請求項42記載の商業的パッケージ。
【請求項44】
該担体シートが膜である、請求項43記載の商業的パッケージ。
【請求項45】
該担体シートがセルロースを含む、請求項44記載の商業的パッケージ。
【請求項46】
担体に付着した水和金属酸化物を含む商業的パッケージであって、該水和金属酸化物がイットリウムを含むパッケージ。
【請求項47】
該水和金属酸化物が酸化イットリウムである、請求項46記載の商業的パッケージ。
【請求項48】
該水和金属酸化物がイットリウム鉄酸化物である、請求項47記載の商業的パッケージ。
【請求項49】
本明細書に記載するとおりの、サンプルからリン酸化分子を単離する方法。
【請求項50】
本明細書に記載するとおりの、サンプルからリン酸化分子を検出する方法。
【請求項51】
本明細書に記載するとおりの、リン酸化分子を単離する又は検出する方法を実施するための商業的パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−506929(P2008−506929A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520439(P2007−520439)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/023810
【国際公開番号】WO2006/014424
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(505028129)パーキンエルマー・エルエイエス・インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】PerkinElmer LAS, Inc.
【Fターム(参考)】