水圧転写装置及び水圧転写方法
【課題】膨潤後の転写フィルムにおける傾きや偏りを防止することができ、被転写体の表面に印刷模様層を正確に転写することができる水圧転写装置を提供すること。
【解決手段】水圧転写装置1は、一次水槽11と二次水槽12とフィルム支持かご15と電動スライダ16とを備えている。フィルム支持かご15は、転写フィルム100を各水槽11,12の水面13,14と対面するように支持する。電動スライダ16は、フィルム支持かご15を上下方向に移動させ、転写フィルム100を一次水槽11の水面13上に浮かべた後、二次水槽12の水面14上に移し替える。
【解決手段】水圧転写装置1は、一次水槽11と二次水槽12とフィルム支持かご15と電動スライダ16とを備えている。フィルム支持かご15は、転写フィルム100を各水槽11,12の水面13,14と対面するように支持する。電動スライダ16は、フィルム支持かご15を上下方向に移動させ、転写フィルム100を一次水槽11の水面13上に浮かべた後、二次水槽12の水面14上に移し替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水圧転写によって被転写体の表面に装飾を施す水圧転写装置及び水圧転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品などでは、デザイン性や品質を高めるために成形体の表面に水圧転写によって装飾を加えるようにした表面加飾品(例えば、コンソールボックス、インストルメントパネル、アームレストなど)が多く実用化されている。また、家電製品などの装飾パネルなどでも、部品表面に水圧転写によって装飾を加えるようにした製品が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
水圧転写では、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)などの水膨潤性フィルムからなる基材101上に印刷模様層102(木目模様層や幾何学模様層など)を形成してなる転写フィルム100(図11参照)が用いられる。そして、図12のように、転写フィルム100を転写槽110の水面111に浮かべて所定サイズに膨潤させた後、転写フィルム100の上方から被転写体200を押し付け、水圧によって被転写体200の表面に印刷模様層102を転写する。
【0004】
因みに、特許文献1の水圧転写装置では、開閉自在な防波壁によって膨潤水槽域と水圧転写水槽域とに水槽内の領域が区画されており、転写フィルムの膨潤と水圧転写とを別々の水槽域で行うように構成されている。また、防波壁を解放することで各水槽域が貯留水により連結され、浮遊枠を用いて転写フィルムが移動されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−62180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、転写フィルム100は、水温が高いほど水膨潤性フィルムの溶解性があがる。このため、水圧転写の作業時間短縮化の観点からは、水温が比較的高い温水を用いることが好ましい。しかしながら、常温よりも高い水温(例えば35℃程度)の水面111に転写フィルム100を浮かべると、水膨潤性フィルム101の伸び量に対して、活性化した印刷模様層102の伸び量が追従することができず、フィルム端部が丸まってしまう(図13参照)。この場合、図14に示されるように、水面111上において転写フィルム100の傾きや偏り(不均一な膨潤)が生じるため、被転写体200において絵柄の方向に合わせて正しく印刷模様層102を転写することができず、製品不良となってしまう。
【0007】
また、上記特許文献1の水圧転写装置においても、貯留水の温度を高めると、膨潤水槽域にて転写フィルムの端部が丸まるため、水圧転写水槽域にて転写フィルムの傾きや偏りが生じてしまう。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、膨潤後の転写フィルムにおける傾きや偏りを防止することができ、被転写体の表面に印刷模様層を確実に転写することができる水圧転写装置及び水圧転写方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、水膨潤性フィルムからなる基材上に印刷模様層を形成してなる転写フィルムを前記印刷模様層が上側となるように水面に浮かべた状態で、前記転写フィルムの上方から被転写体を押し付け、水圧によって前記被転写体の表面に前記印刷模様層を転写する水圧転写装置であって、上下方向に移動可能に設けられ、前記転写フィルムを前記水面と対面するよう支持するとともに、前記転写フィルムを水面に浮かべたときにそのフィルムの膨潤を規制する規制枠を有する支持体と、前記支持体の下方位置及びそこから水平方向にずらした退避位置の間を移動可能に設けられ、前記転写フィルムを膨潤させる第1の処理水を溜めておく一次水槽と、前記一次水槽の下方に配置され、前記一次水槽で膨潤させた転写フィルムを前記被転写体への転写に適した状態となるまで膨潤させる第2の処理水を溜めておく二次水槽と、前記転写フィルムを前記一次水槽から前記二次水槽に移し替えるべく、前記支持体を上下方向に移動させる上下移動手段とを備えたことを特徴とする水圧転写装置をその要旨とする。
【0010】
手段1に記載の発明によると、支持体の下方に一次水槽が配置され、さらに一次水槽の下方に二次水槽が配置されている。そして、一次水槽の水面と対向するよう転写フィルムを支持した支持体が上下移動手段により下方に移動される。これにより、転写フィルムが一次水槽における第1の処理水の水面に浮かべられ、転写フィルムがある程度のサイズとなるまで膨潤させられる。この後、上下移動手段によって支持体が上方に移動されることにより転写フィルムが一次水槽の水面から一旦上昇され、一次水槽が退避位置まで水平方向に移動される。さらに、上下移動手段によって支持体が下方に移動されることにより転写フィルムが二次水槽における第2の処理水の水面に浮かべられ、転写フィルムが被転写体への転写に適した状態となるまで膨潤させられる。その後、転写フィルムの上方から被転写体が押し付けられ、水圧によって被転写体の表面に印刷模様層が転写される。このように、一次水槽の第1の処理水に浮かべる処理、二次水槽の第2の処理水に浮かべる処理の2段階に分けて転写フィルムを膨潤させるようにしたので、転写フィルムを適正に膨潤させることができる。よって、従来技術のような転写フィルムの傾きや偏りを防止することができ、被転写体の表面に対して印刷模様層を高い位置精度で確実に転写することができる。また、本発明の水圧転写装置では、一次水槽の下方に二次水槽を配置しているので、装置の設置スペースを抑えることができる。さらに、転写フィルムを一次水槽から二次水槽に移し替える際には、支持体を上下方向に移動させればよいため、支持体の移動距離が短くなることに加え、移動のための制御を簡単に行うことができる。従って、転写フィルムの2段階の膨潤工程を比較的短い時間で行うことができる。
【0011】
手段2に記載の発明は、手段1において、前記第2の処理水は温水であり、前記第1の処理水は前記第2の処理水よりも水温が低くなるように設定されることをその要旨とする。
【0012】
従って、手段2に記載の発明によると、一次水槽の第1の処理水は低水温であるため、転写フィルムが比較的ゆっくりと膨潤させられる。一方、二次水槽の第2の処理水は温水であるため、被転写体への転写に適した状態となるまで転写フィルムが速やかに膨潤させられる。このようにすると、水膨潤性フィルムの伸びに対して印刷模様層の伸びを追従させることができ、フィルム端部が丸まることを確実に防止することができる。
【0013】
手段3に記載の発明は、手段2において、前記一次水槽には前記第1の処理水を冷やすための冷却手段が設けられ、前記二次水槽には前記第2の処理水を温めるための加熱手段が設けられていることをその要旨とする。
【0014】
一次水槽から二次水槽へ転写フィルムを移し替える際に、支持体や転写フィルムを介して熱が伝達されるため、一次水槽の第1の処理水の水温は高くなり、二次水槽の第2の処理水の水温は低くなってしまう。ここで、第1の処理水及び第2の処理水の水温が変化した場合、手段3に記載の発明のように、冷却手段により第1の処理水が冷却され、加熱手段により第2の処理水が温められる。この結果、転写フィルムの膨潤に適した温度に各処理水の水温を維持することができる。
【0015】
手段4に記載の発明は、手段1乃至3のいずれかにおいて、前記支持体の上部には、前記被転写体を固定する固定手段が設けられていることをその要旨とする。
【0016】
手段4に記載の発明によると、支持体の上部には、固定手段により被転写体が固定されているので、二次水槽にて転写フィルムを膨潤させた後、上下移動手段により支持体をさらに下方に移動させることで、転写フィルムの上方から被転写体を押し付けることができる。このように、1つの支持体に転写フィルムと被転写体とを支持するようにしたので、転写フィルムの支持体と被転写体の支持体とを別々に設ける場合と比較して、水圧転写装置の構成を簡素化することができる。
【0017】
手段5に記載の発明は、手段1乃至4のいずれかにおいて、前記支持体は前記転写フィルムを支持する底面を有し、その底面は前記水面に対して傾斜した傾斜面となっていることをその要旨とする。
【0018】
手段5に記載の発明によると、支持体において転写フィルムを支持する底面が傾斜面となっているので、転写フィルムは一方の端部側から他方の端部側へと着水することとなる。このようにすると、水面と転写フィルムとの間に空気が入り込むことが確実に防止される結果、転写フィルムが全体的に着水する。よって、転写フィルムの膨潤が不均一となることを回避することができる。
【0019】
手段6に記載の発明は、水膨潤性フィルムからなる基材上に印刷模様層を形成してなる転写フィルムを前記印刷模様層が上側となるように水面に浮かべた状態で、前記転写フィルムの上方から被転写体を押し付け、水圧によって前記被転写体の表面に前記印刷模様層を転写する水圧転写方法であって、前記転写フィルムを温度が相対的に低い第1の処理水の水面に浮かべて膨潤させる第1の膨潤工程と、前記第1の膨潤工程で膨潤させた前記転写フィルムを、前記第1の処理水よりも相対的に温度が高い第2の処理水の水面に浮かべて前記被転写体への転写に適した状態となるまで膨潤させる第2の膨潤工程とを含むことを特徴とする水圧転写方法をその要旨とする。
【0020】
手段6に記載の発明によると、第1の膨潤工程において、転写フィルムは、温度が相対的に低い第1の処理水の水面に浮かべられてある程度のサイズとなるまでゆっくりと膨潤させられる。その後、第2の膨潤工程では、第1の膨潤工程で膨潤させた転写フィルムが、第1の処理水よりも相対的に温度が高い第2の処理水の水面に浮かべられて被転写体への転写に適した状態となるまで速やかに膨潤させられる。このようにすると、水膨潤性フィルムの伸びに対して印刷模様層の伸びを追従させることができ、フィルム端部が丸まることを確実に防止することができる。よって、従来技術のような転写フィルムの傾きや偏りを防止することができ、被転写体の表面に対して印刷模様層を高い位置精度で確実に転写することができる。
【0021】
手段7に記載の発明は、手段6において、前記第2の膨潤工程で膨潤させた前記転写フィルムの上方から前記被転写体を押し付け、水圧によって前記被転写体の表面に前記印刷模様層を転写した後、前記第2の処理水の水面に残存する余剰フィルムを除去する余剰フィルム除去工程をさらに含むことをその要旨とする。
【0022】
手段7に記載の発明によると、水圧転写を行った後に余剰フィルム除去工程が実施され、第2の処理水の水面に残存する余剰フィルムが除去されるので、その第2の処理水の水面において、次の被転写体の水圧転写を繰り返し行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳述したように、請求項1乃至7に記載の発明によると、膨潤後の転写フィルムにおける傾きや偏りを防止することができ、被転写体の表面に印刷模様層を確実に転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は本実施の形態の水圧転写装置を示す正面図、(b)はその側面図。
【図2】フィルム支持かごの底部を示す斜視図。
【図3】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図4】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図5】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図6】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図7】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図8】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図9】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図10】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図11】転写フィルムを示す拡大断面図。
【図12】従来の水圧転写を行うための転写槽を示す断面図。
【図13】従来技術における膨潤後の転写フィルムを示す断面図。
【図14】(a)は膨潤後の転写フィルムの状態を示す転写槽の断面図、(b)はその転写槽の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1(a)は、本実施の形態における水圧転写装置1の概略構成を示す正面図であり、図1(b)は、その側面図である。
【0026】
図1に示されるように、水圧転写装置1は、膨潤性を有する転写フィルム100を用いて、被転写体200(例えば、自動車のアームレストに設けられる装飾パネル)に水圧転写印刷を行う装置である。水圧転写装置1は、低水温(例えば18℃〜20℃)の第1の処理水W1を溜めておく一次水槽11と、中水温(例えば、35℃)の第2の処理水W2を溜めておく二次水槽12と、各水槽11,12の水面13,14と対面するよう転写フィルム100を支持するフィルム支持かご15(支持体)と、フィルム支持かご15を上下方向に移動させる電動スライダ16(上下移動手段)とを備えている。本実施の形態の水圧転写装置1は、転写フィルム100を一次水槽11から二次水槽12に移し替えて、転写フィルム100の膨潤処理を2段階で行うように構成されている。また、二次水槽12は、被転写体200への水圧転写を行う転写槽である。
【0027】
一次水槽11は、二次水槽12よりも浅く容積が小さい水槽であり、二次水槽12よりも軽い材料を用いて形成されている。具体的には、一次水槽11は、プラスチック製の水槽であり、二次水槽12は、ステンレス製の水槽である。一次水槽11には、第1の処理水W1を冷却するための冷水を循環させる冷却パイプ21(冷却手段)が設けられている。冷却パイプ21は、一次水槽11の底部における内縁に沿って配置されている。また、一次水槽11には温度センサ(図示略)が設けられており、温度センサが検出した水温に基づいて、冷却パイプ21を流れる冷水の流量が調整され、第1の処理水W1が所定の水温(18℃〜20℃)で維持されるようになっている。
【0028】
二次水槽12には、第2の処理水W2を加熱するための温水を循環させる加熱パイプ22(加熱手段)が設けられている。加熱パイプ22は、二次水槽12の底部における内縁に沿って配置されている。また、二次水槽12にも温度センサ(図示略)が設けられており、温度センサが検出した水温に基づいて、加熱パイプ22を流れる温水の流量が調整され、第2の処理水W2が所定の水温(例えば、35℃)で維持されるようになっている。
【0029】
本実施の形態において、一次水槽11は転写フィルム100を最初に膨潤させる水槽であり、転写フィルム100を二次水槽12に移し替える際に、一次水槽11内の第1の処理水W1が徐々に減少していく。このため、水圧転写装置1では、一次水槽11に第1の処理水W1を補充するための給水ボトル24(給水手段)が設けられている。そして、この給水ボトル24によって、一次水槽11の水位が一定になるように調整される。
【0030】
水圧転写装置1において、二次水槽12は、四角ボックス形状のフレーム26内に配置されている。フレーム26の上部には、水平方向に沿ってレール27が設けられており、レール27上に一次水槽11が移動可能に設けられている。また、フレーム26の上部には、フィルム支持かご15の下方位置で一次水槽11を固定するためのロック機構28が設けられている。
【0031】
フレーム26上部において、レール27端部(図1(a)では左端部)となる位置にはワイヤ巻取り装置29(水平移動手段)が設けられている。ワイヤ巻取り装置29は、ロック機構28による固定が解除されたときに、レール27上の一次水槽11を水平方向に引っ張って退避位置(図1(a)では左側の位置)に移動させる。フィルム支持かご15の下方位置に一次水槽11を戻す際には、ワイヤ巻取り装置29の引っ張り力に抗して作業者が一次水槽11を移動させた後、ロック機構28によって一次水槽11を固定させる。また、レール27の各端部には、一次水槽11の移動時の振動を抑制するためのゴム部材などからなる制振機構(図示略)が設けられている。
【0032】
電動スライダ16は、可動部であるスライダ31の移動方向が上下方向となるようフレーム26に立設されている。電動スライダ16には、スライダ31から水平方向に延びるよう支持アーム32が設けられ、その支持アーム32にフィルム支持かご15の上端部が固定されている。本実施の形態の電動スライダ16は、図示しないコントローラによってスライダ31の位置及び移動スピードが制御可能に構成されている。
【0033】
転写フィルム100は、水膨潤性フィルムからなる基材101上に印刷模様層102(例えば、木目模様層)を形成してなる(図11参照)。水圧転写装置1において、転写フィルム100は、印刷模様層102を上側に向けた状態でフィルム支持かご15の底面35に支持される。フィルム支持かご15の底面35は、各水槽11,12の水面13,14に対して傾斜した傾斜面となっている。また、このフィルム支持かご15の底面35には、膨潤した転写フィルム100(水膨潤性フィルム)の付着を防止するためのウエス36(保水性シート材)が設けられおり、そのウエス36上に転写フィルム100が載置される。
【0034】
フィルム支持かご15は、四角形のボックス状に形成されたステンレス製の枠体であり、4隅にて上下方向に沿って立設された4本の支柱38を備える。図2に示されるように、フィルム支持かご15における底面35の近傍に、転写フィルム100の膨潤を規制するための規制枠40が配置されている。規制枠40は、水に浮く材料(例えば、発泡ポリプロピレン)からなり、転写フィルム100の形状に合わせた長方形の開口部41を有する板状部材である。なお、この規制枠40は、フィルム支持かご15における4本の支柱38に嵌め込まれた状態で上下方向に移動可能に固定されている。また、規制枠40における開口部41は、膨潤前の転写フィルム100に対して1.25倍のサイズを有している。
【0035】
図1に示されるように、フィルム支持かご15の上部には、被転写体200を固定する固定部材43(固定手段)が設けられている。本実施の形態では、被転写体200において装飾を加える被転写面を下方に向け、その被転写面を水面13,14に対して所定の角度だけ傾斜させた状態で被転写体200が固定部材43に固定される。
【0036】
二次水槽12内において、仕切り板45が立設されており、その仕切り板45によって転写フィルム100の膨潤や転写を行うための処理領域R1とフィルム残滓を回収するための回収領域R2とに区画されている。二次水槽12内において、処理領域R1と回収領域R2とで第2の処理水W2を循環させるために、回収領域にはポンプ46が設けられ、そのポンプ46と配管47を介して接続された複数の噴射ノズル48が処理領域R1に設けられている。
【0037】
より詳しくは、二次水槽12の処理領域R1において、上部側であって回収領域R2の反対側に位置する側面の近傍に複数の噴射ノズル48が設けられている。各噴射ノズル48は、噴射口が回収領域R2側に向けて設置されており、第2の処理水W2を噴出することで処理領域R1の水位を増すとともに、水面14に浮いている転写フィルム100の残滓を回収領域R2に流す。また、回収領域R2において、上部側であって仕切り板45の上端よりも若干低い位置に回収網49が設置され、さらにその下部側にポンプ46が設けられている。
【0038】
次に、本実施の形態の水圧転写装置1を用いた水圧転写方法について図面を用いて説明する。
【0039】
先ず、水圧転写装置1の可動初期位置として、フィルム支持かご15を最上部の位置に配置させ、そのフィルム支持かご15の下方位置に一次水槽11を配置させる(図3参照)。そして、フィルム支持かご15の底面35上において、規制枠40の内側となる位置に印刷模様層102が上側となるよう転写フィルム100を配置する。なおここでは、図示しない塗布装置を用いて転写フィルム100における印刷模様層102の表面に活性剤を塗布した後にその転写フィルム100をフィルム支持かご15の底面35上に配置している。
【0040】
その後、第1の膨潤工程において、電動スライダ16によってフィルム支持かご15を下方に移動させて一次水槽11における第1の処理水W1の水面13に転写フィルム100を浮かべる(図4参照)。このとき、フィルム支持かご15の底面35が水面13に到達する着水前のスピードよりも着水時のスピードを遅くするように、電動スライダ16によってフィルム支持かご15の移動スピードを制御する。このように、フィルム支持かご15の着水時のスピードを遅くすることにより、ウエス36全体に第1の処理水W1が浸透し、その後で転写フィルム100が水面13に浮かべられる。また、フィルム支持かご15の底面35は傾斜面となっている。従って、第1の処理水W1の水面13と転写フィルム100との間に空気が入り込むことが防止される結果、転写フィルム100が全体的に着水する。このため、第1の処理水W1によって転写フィルム100が均一に膨潤させられる。
【0041】
一次水槽11において、第1の処理水W1の水面13に転写フィルム100を30秒間浮かべて所定のサイズとなるまで膨潤させた後、二次水槽12に転写フィルム100を移し替えるべく、電動スライダ16によってフィルム支持かご15を一旦上昇させる。このとき、ロック機構28による一次水槽11の固定が解除される。すると、ワイヤ巻取り装置29によって一次水槽11が水平方向に引っ張られ退避位置に移動される(図5参照)。
【0042】
そして、第2の膨潤工程において、電動スライダ16によってフィルム支持かご15を下方に移動させて、二次水槽12における第2の処理水W2の水面14に転写フィルム100を浮かべる(図6参照)。このとき、フィルム支持かご15の底面35が水面14に到達する着水前のスピードよりも着水時のスピードを遅くするように、電動スライダ16によってフィルム支持かご15の移動スピードを制御する。これにより、第2の処理水W2の水面14と転写フィルム100との間に空気が入り込むことが防止され、第2の処理水W2によって転写フィルム100が均一に膨潤される。なお、二次水槽12では、第2の処理水W2の水面14に転写フィルム100を60秒間浮かべることにより、被転写体200への転写に適した状態となるまで転写フィルム100が膨潤させられる。
【0043】
また、第2の処理水W2で転写フィルム100を膨潤させているときに、作業者は、フィルム支持かご15の上部の固定部材43に被転写体200を固定する(図7参照)。そして、転写フィルム100の膨潤後、水圧転写工程を行う。水圧転写工程では、電動スライダ16によってフィルム支持かご15をさらに下方に移動させることにより、転写フィルム100の上方から被転写体200を押し付け、水圧によって被転写体200の表面に印刷模様層102を転写させる(図8参照)。
【0044】
なお、水圧転写工程では、被転写体200を第2の処理水W2中に完全に沈める。ここで、被転写体200に転写されなかった余剰フィルムは、フィルム残滓105として第2の処理水W2の水面14に残る。この状態で被転写体200を水中から取り出すと、フィルム残滓105が被転写体200に付着してしまう。このため、本実施の形態では、被転写体200に対するフィルム残滓105の付着を回避するために、第2の処理水W2中に被転写体200を完全に沈めた状態で余剰フィルム除去工程を行う(図9参照)。
【0045】
この余剰フィルム除去工程では、二次水槽12において、ポンプ46の駆動により各噴射ノズル48から第2の処理水W2を噴出させる。これにより、二次水槽12における処理領域R1の水位を増すとともに、水面14に浮いているフィルム残滓105を回収領域R2側に流す。そして、処理領域R1の水位の上昇によって、第2の処理水W2が仕切り板45の上端を越えてオーバーフローされ、回収領域R2に流れ込む。このとき、転写されずに水面14に残されているフィルム残滓105も第2の処理水W2とともに回収領域R2に流れ込み、そのフィルム残滓105は回収網49で除去される。さらに、ポンプ46の駆動を継続させることで、フィルム残滓105が除去された第2の処理水W2が配管47を介して各噴射ノズル48から処理領域R1に戻される。そして、二次水槽12において、処理領域R1の水面14からフィルム残滓105が全て除去されたときにポンプ46の駆動が停止される。
【0046】
その後、電動スライダ16によってフィルム支持かご15を上方に移動させ、被転写体200を第2の処理水W2の水面14から引き上げる(図10参照)。さらに、印刷模様層102が転写された被転写体200をフィルム支持かご15の固定部材43から取り外して、その被転写体200を後工程の洗浄装置等に搬送する。
【0047】
以上の工程を経て被転写体200の1回分の水圧転写が完了する。また、新たな被転写体200の水圧転写を行う際には、退避位置からフィルム支持かご15の下方位置に一次水槽11を戻して、水圧転写装置1を図3の可動初期位置の状態にした後、上記の各工程を再度実施する。
【0048】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0049】
(1)本実施の形態の水圧転写装置1では、一次水槽11の第1の処理水W1と二次水槽12の第2の処理水W2とで2段階に分けて転写フィルム100が膨潤されるので、転写フィルム100を適正に膨潤させることができる。具体的には、一次水槽11の第1の処理水W1は低水温であるため、転写フィルム100が比較的ゆっくりと膨潤させられる。一方、二次水槽12の第2の処理水W2はそれよりも水温の高い温水であるため、被転写体200への転写に適した状態となるまで転写フィルム100が速やかに膨潤させられる。このようにすると、水膨潤性フィルム101の伸びに対して印刷模様層102の伸びを追従させることができ、フィルム端部が丸まることを確実に防止することができる。この結果、転写フィルム100の傾きや偏りを防止することができ、被転写体200の表面に対して印刷模様層102を高い位置精度で正確に転写することができる。
【0050】
(2)本実施の形態の水圧転写装置1では、一次水槽11の下方に二次水槽12を配置させているので、装置の設置スペースを抑えることができる。さらに、転写フィルム100を一次水槽11から二次水槽12に移し替える際には、フィルム支持かご15を上下方向に移動させればよいため、その移動距離が短くなることに加え、移動ための制御を簡単に行うことができる。従って、転写フィルム100の2段階の膨潤工程を比較的短い時間で行うことができる。さらに、フィルム支持かご15の下方に二次水槽12を配置させているので、転写フィルム100を一次水槽11から二次水槽12に移し替える際に、第1の処理水W1がフィルム支持かご15から垂れ落ちたとしても、その処理水W1は二次水槽12内に確実に落ちる。従って、処理水W1が装置外部に漏れるといったことを回避することができる。
【0051】
(3)本実施の形態の水圧転写装置1において、一次水槽11には第1の処理水W1を冷やすための冷却パイプ21が設けられ、二次水槽12には第2の処理水W2を温めるための加熱パイプ22が設けられている。このようにすると、転写フィルム100の膨潤に適した温度に各処理水W1,W2の水温を維持することができる。
【0052】
(4)本実施の形態の水圧転写装置1では、フィルム支持かご15の上部に被転写体200を固定する固定部材43が設けられている。そのため、二次水槽12にて転写フィルム100を膨潤させた後、電動スライダ16によりフィルム支持かご15をさらに下方に移動させることで、転写フィルム100の上方から被転写体200を押し付けることができる。この場合、転写フィルム100の支持体と被転写体200の支持体とを別々に設ける場合と比較して、水圧転写装置1の構成を簡素化することが可能となる。
【0053】
(5)本実施の形態の水圧転写装置1では、フィルム支持かご15において転写フィルム100を支持する底面35が水面13,14に対して傾斜した傾斜面となっている。このようにすると、転写フィルム100を水面13,14に浮かべる際に、水面13,14と転写フィルム100との間に空気が入り込むことが防止される結果、転写フィルム100が全体的に着水する。このため、転写フィルム100の膨潤が不均一となることを回避することができる。
【0054】
(6)本実施の形態では、水圧転写工程後において、第2の処理水W2中に被転写体200を完全に沈めた状態で余剰フィルム除去工程が実施され、第2の処理水W2の水面14に残存するフィルム残滓105が除去される。この場合、被転写体200を第2の処理水W2の水中から取り出す際に、フィルム残滓105が被転写体200に付着することがない。また、水圧転写工程後に二次水槽12における水面14のフィルム残滓105が除去されるので、二次水槽12にて次の被転写体200の水圧転写を繰り返し行うことができる。さらに、二次水槽12において、フィルム残滓105が除去された第2の処理水W2が回収領域R2から処理領域R1に戻されて再利用されるので、第2の処理水W2の使用量を最小限に抑えることができる。
【0055】
(7)本実施の形態の水圧転写装置1では、フィルム支持かご15の下方位置に一次水槽11を固定するロック機構28と、一次水槽11をフィルム支持かご15の下方位置から退避位置に移動させるワイヤ巻取り装置29とを備えている。このように構成すると、一次水槽11において転写フィルム100を膨潤させた後、作業者が自らの力を加えなくても、フィルム支持かご15の下方位置から一次水槽11を速やかに退避させることができる。
【0056】
(8)本実施の形態の水圧転写装置1において、フィルム支持かご15の底面35にはウエス36が設けられており、フィルム支持かご15の底面35が水面13,14に到達する着水前よりも着水時のスピードを遅くするようにフィルム支持かご15の移動スピードが制御されている。このようにすると、ウエス36全体に処理水W1,W2が浸透して転写フィルム100との接触面となるウエス36上面まで確実に吸水される。このため、転写フィルム100がフィルム支持かご15に付着することを防止することができる。
【0057】
(9)本実施の形態の水圧転写装置1では、一次水槽11は、二次水槽12よりも浅く容積が小さい水槽であり、二次水槽12よりも軽い材料で形成されているので、一次水槽11の水平方向への移動を容易かつ迅速に行うことができる。
【0058】
(10)本実施の形態の水圧転写装置1では、電動スライダ16でフィルム支持かご15を上下動させ、転写フィルム100の膨潤や被転写体200への転写を行うようにしている。この場合、作業者の手でフィルム支持かご15を上下動させる場合と比較して、フィルム支持かご16を正確な位置に適切なスピードで移動させることができる。この結果、水圧転写を安定的に行うことができ、印刷模様層102を転写した被転写体200表面の品質を十分に確保することができる。
【0059】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0060】
・上記実施の形態の水圧転写装置1では、一次水槽11及び二次水槽12をフィルム支持かご15の下方に配置して、転写フィルム100を一次水槽11から二次水槽12に移し替える際に一次水槽11を水平方向に退避させるように構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、一次水槽11を二次水槽12の水平方向にずらした位置に配置し、フィルム支持かご15を水平方向及び上下方向に移動させて転写フィルム100の移し替えを行うように水圧転写装置1を構成してもよい。
【0061】
・上記実施の形態の水圧転写装置1において、低水温の第1の処理水W1を用いて第1の膨潤工程を行い、中水温の第2の処理水W2を用いて第2の膨潤工程を行うようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、水圧転写装置1において、一次水槽11の第1の処理水W1と二次水槽12の第2の処理水W2とを同じ水温とし、転写フィルム100の膨潤を促進させる薬剤を第2の処理水W2にのみ添加する。このようにしても、第1の膨潤工程にて一次水槽11の第1の処理水W1で転写フィルム100をゆっくり膨潤させた後、第2の膨潤工程にて二次水槽12の第2の処理水W2で転写フィルム100を速やかに膨潤させることができる。この場合も、水膨潤性フィルム101の伸びに対して印刷模様層102の伸びを追従させることができ、フィルム端部が丸まることを確実に防止することができる。
【0062】
・上記実施の形態では、冷却パイプ21に冷水を循環させることで第1の処理水W1を冷却していたが、冷水以外に他の冷却液や冷却ガスなどを冷却パイプ21に循環させるようにしてもよい。また、加熱パイプ22も同様に、温水以外の液体やガスを循環させるように構成してもよい。さらに、冷却パイプ21以外の冷却手段や加熱パイプ22以外の加熱手段を用いてもよい。具体的には、例えば加熱手段としての電気ヒータを二次水槽12に設け、その電気ヒータで第2の処理水W2を温めるように構成してもよい。
【0063】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0064】
(1)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記一次水槽の水面で前記転写フィルムを膨潤させた後、前記一次水槽を前記支持体の下方位置から退避位置に移動させる水平移動手段をさらに備えたことを特徴とする水圧転写装置。
【0065】
(2)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記一次水槽の水平方向への移動時に発生する振動を抑制する制振機構をさらに備えたことを特徴とする水圧転写装置。
【0066】
(3)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記支持体において前記転写フィルムを支持する底面には、前記水膨潤性フィルムの付着を防止するための保水性シート材が設けられていることを特徴とする水圧転写装置。
【0067】
(4)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記上下移動手段は、前記支持体の底面が水面に到達する着水前のスピードよりも着水時のスピードを遅くするよう、前記支持体の移動スピードを制御することを特徴とする水圧転写装置。
【0068】
(5)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記一次水槽に前記第1の処理水を注ぎ足す給水手段を備えたことを特徴とする水圧転写装置。
【0069】
(6)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記一次水槽は、前記第二水槽よりも浅く容積が小さい水槽であることを特徴とする水圧転写装置。
【0070】
(7)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記一次水槽は、前記二次水槽よりも軽い材料で形成されることを特徴とする水圧転写装置。
【0071】
(8)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記規制枠は、水に浮く部材で形成されることを特徴とする水圧転写装置。
【0072】
(9)手段7において、前記被転写体への水圧転写後において、前記被転写体を第2の処理水中に完全に沈めた状態で、前記フィルム除去工程を実施することを特徴とする水圧転写方法。
【符号の説明】
【0073】
1…水圧転写装置
11…一次水槽
12…二次水槽
13,14…水面
15…支持体としてのフィルム支持かご
16…上下移動手段としての電動スライダ
21…冷却手段としての冷却パイプ
22…加熱手段としての加熱パイプ
35…底面
100…転写フィルム
101…基材
102…印刷模様層
105…余剰フィルムとしてのフィルム残滓
200…被転写体
W1…第1の処理水
W2…第2の処理水
【技術分野】
【0001】
本発明は、水圧転写によって被転写体の表面に装飾を施す水圧転写装置及び水圧転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品などでは、デザイン性や品質を高めるために成形体の表面に水圧転写によって装飾を加えるようにした表面加飾品(例えば、コンソールボックス、インストルメントパネル、アームレストなど)が多く実用化されている。また、家電製品などの装飾パネルなどでも、部品表面に水圧転写によって装飾を加えるようにした製品が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
水圧転写では、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)などの水膨潤性フィルムからなる基材101上に印刷模様層102(木目模様層や幾何学模様層など)を形成してなる転写フィルム100(図11参照)が用いられる。そして、図12のように、転写フィルム100を転写槽110の水面111に浮かべて所定サイズに膨潤させた後、転写フィルム100の上方から被転写体200を押し付け、水圧によって被転写体200の表面に印刷模様層102を転写する。
【0004】
因みに、特許文献1の水圧転写装置では、開閉自在な防波壁によって膨潤水槽域と水圧転写水槽域とに水槽内の領域が区画されており、転写フィルムの膨潤と水圧転写とを別々の水槽域で行うように構成されている。また、防波壁を解放することで各水槽域が貯留水により連結され、浮遊枠を用いて転写フィルムが移動されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−62180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、転写フィルム100は、水温が高いほど水膨潤性フィルムの溶解性があがる。このため、水圧転写の作業時間短縮化の観点からは、水温が比較的高い温水を用いることが好ましい。しかしながら、常温よりも高い水温(例えば35℃程度)の水面111に転写フィルム100を浮かべると、水膨潤性フィルム101の伸び量に対して、活性化した印刷模様層102の伸び量が追従することができず、フィルム端部が丸まってしまう(図13参照)。この場合、図14に示されるように、水面111上において転写フィルム100の傾きや偏り(不均一な膨潤)が生じるため、被転写体200において絵柄の方向に合わせて正しく印刷模様層102を転写することができず、製品不良となってしまう。
【0007】
また、上記特許文献1の水圧転写装置においても、貯留水の温度を高めると、膨潤水槽域にて転写フィルムの端部が丸まるため、水圧転写水槽域にて転写フィルムの傾きや偏りが生じてしまう。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、膨潤後の転写フィルムにおける傾きや偏りを防止することができ、被転写体の表面に印刷模様層を確実に転写することができる水圧転写装置及び水圧転写方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、水膨潤性フィルムからなる基材上に印刷模様層を形成してなる転写フィルムを前記印刷模様層が上側となるように水面に浮かべた状態で、前記転写フィルムの上方から被転写体を押し付け、水圧によって前記被転写体の表面に前記印刷模様層を転写する水圧転写装置であって、上下方向に移動可能に設けられ、前記転写フィルムを前記水面と対面するよう支持するとともに、前記転写フィルムを水面に浮かべたときにそのフィルムの膨潤を規制する規制枠を有する支持体と、前記支持体の下方位置及びそこから水平方向にずらした退避位置の間を移動可能に設けられ、前記転写フィルムを膨潤させる第1の処理水を溜めておく一次水槽と、前記一次水槽の下方に配置され、前記一次水槽で膨潤させた転写フィルムを前記被転写体への転写に適した状態となるまで膨潤させる第2の処理水を溜めておく二次水槽と、前記転写フィルムを前記一次水槽から前記二次水槽に移し替えるべく、前記支持体を上下方向に移動させる上下移動手段とを備えたことを特徴とする水圧転写装置をその要旨とする。
【0010】
手段1に記載の発明によると、支持体の下方に一次水槽が配置され、さらに一次水槽の下方に二次水槽が配置されている。そして、一次水槽の水面と対向するよう転写フィルムを支持した支持体が上下移動手段により下方に移動される。これにより、転写フィルムが一次水槽における第1の処理水の水面に浮かべられ、転写フィルムがある程度のサイズとなるまで膨潤させられる。この後、上下移動手段によって支持体が上方に移動されることにより転写フィルムが一次水槽の水面から一旦上昇され、一次水槽が退避位置まで水平方向に移動される。さらに、上下移動手段によって支持体が下方に移動されることにより転写フィルムが二次水槽における第2の処理水の水面に浮かべられ、転写フィルムが被転写体への転写に適した状態となるまで膨潤させられる。その後、転写フィルムの上方から被転写体が押し付けられ、水圧によって被転写体の表面に印刷模様層が転写される。このように、一次水槽の第1の処理水に浮かべる処理、二次水槽の第2の処理水に浮かべる処理の2段階に分けて転写フィルムを膨潤させるようにしたので、転写フィルムを適正に膨潤させることができる。よって、従来技術のような転写フィルムの傾きや偏りを防止することができ、被転写体の表面に対して印刷模様層を高い位置精度で確実に転写することができる。また、本発明の水圧転写装置では、一次水槽の下方に二次水槽を配置しているので、装置の設置スペースを抑えることができる。さらに、転写フィルムを一次水槽から二次水槽に移し替える際には、支持体を上下方向に移動させればよいため、支持体の移動距離が短くなることに加え、移動のための制御を簡単に行うことができる。従って、転写フィルムの2段階の膨潤工程を比較的短い時間で行うことができる。
【0011】
手段2に記載の発明は、手段1において、前記第2の処理水は温水であり、前記第1の処理水は前記第2の処理水よりも水温が低くなるように設定されることをその要旨とする。
【0012】
従って、手段2に記載の発明によると、一次水槽の第1の処理水は低水温であるため、転写フィルムが比較的ゆっくりと膨潤させられる。一方、二次水槽の第2の処理水は温水であるため、被転写体への転写に適した状態となるまで転写フィルムが速やかに膨潤させられる。このようにすると、水膨潤性フィルムの伸びに対して印刷模様層の伸びを追従させることができ、フィルム端部が丸まることを確実に防止することができる。
【0013】
手段3に記載の発明は、手段2において、前記一次水槽には前記第1の処理水を冷やすための冷却手段が設けられ、前記二次水槽には前記第2の処理水を温めるための加熱手段が設けられていることをその要旨とする。
【0014】
一次水槽から二次水槽へ転写フィルムを移し替える際に、支持体や転写フィルムを介して熱が伝達されるため、一次水槽の第1の処理水の水温は高くなり、二次水槽の第2の処理水の水温は低くなってしまう。ここで、第1の処理水及び第2の処理水の水温が変化した場合、手段3に記載の発明のように、冷却手段により第1の処理水が冷却され、加熱手段により第2の処理水が温められる。この結果、転写フィルムの膨潤に適した温度に各処理水の水温を維持することができる。
【0015】
手段4に記載の発明は、手段1乃至3のいずれかにおいて、前記支持体の上部には、前記被転写体を固定する固定手段が設けられていることをその要旨とする。
【0016】
手段4に記載の発明によると、支持体の上部には、固定手段により被転写体が固定されているので、二次水槽にて転写フィルムを膨潤させた後、上下移動手段により支持体をさらに下方に移動させることで、転写フィルムの上方から被転写体を押し付けることができる。このように、1つの支持体に転写フィルムと被転写体とを支持するようにしたので、転写フィルムの支持体と被転写体の支持体とを別々に設ける場合と比較して、水圧転写装置の構成を簡素化することができる。
【0017】
手段5に記載の発明は、手段1乃至4のいずれかにおいて、前記支持体は前記転写フィルムを支持する底面を有し、その底面は前記水面に対して傾斜した傾斜面となっていることをその要旨とする。
【0018】
手段5に記載の発明によると、支持体において転写フィルムを支持する底面が傾斜面となっているので、転写フィルムは一方の端部側から他方の端部側へと着水することとなる。このようにすると、水面と転写フィルムとの間に空気が入り込むことが確実に防止される結果、転写フィルムが全体的に着水する。よって、転写フィルムの膨潤が不均一となることを回避することができる。
【0019】
手段6に記載の発明は、水膨潤性フィルムからなる基材上に印刷模様層を形成してなる転写フィルムを前記印刷模様層が上側となるように水面に浮かべた状態で、前記転写フィルムの上方から被転写体を押し付け、水圧によって前記被転写体の表面に前記印刷模様層を転写する水圧転写方法であって、前記転写フィルムを温度が相対的に低い第1の処理水の水面に浮かべて膨潤させる第1の膨潤工程と、前記第1の膨潤工程で膨潤させた前記転写フィルムを、前記第1の処理水よりも相対的に温度が高い第2の処理水の水面に浮かべて前記被転写体への転写に適した状態となるまで膨潤させる第2の膨潤工程とを含むことを特徴とする水圧転写方法をその要旨とする。
【0020】
手段6に記載の発明によると、第1の膨潤工程において、転写フィルムは、温度が相対的に低い第1の処理水の水面に浮かべられてある程度のサイズとなるまでゆっくりと膨潤させられる。その後、第2の膨潤工程では、第1の膨潤工程で膨潤させた転写フィルムが、第1の処理水よりも相対的に温度が高い第2の処理水の水面に浮かべられて被転写体への転写に適した状態となるまで速やかに膨潤させられる。このようにすると、水膨潤性フィルムの伸びに対して印刷模様層の伸びを追従させることができ、フィルム端部が丸まることを確実に防止することができる。よって、従来技術のような転写フィルムの傾きや偏りを防止することができ、被転写体の表面に対して印刷模様層を高い位置精度で確実に転写することができる。
【0021】
手段7に記載の発明は、手段6において、前記第2の膨潤工程で膨潤させた前記転写フィルムの上方から前記被転写体を押し付け、水圧によって前記被転写体の表面に前記印刷模様層を転写した後、前記第2の処理水の水面に残存する余剰フィルムを除去する余剰フィルム除去工程をさらに含むことをその要旨とする。
【0022】
手段7に記載の発明によると、水圧転写を行った後に余剰フィルム除去工程が実施され、第2の処理水の水面に残存する余剰フィルムが除去されるので、その第2の処理水の水面において、次の被転写体の水圧転写を繰り返し行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳述したように、請求項1乃至7に記載の発明によると、膨潤後の転写フィルムにおける傾きや偏りを防止することができ、被転写体の表面に印刷模様層を確実に転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は本実施の形態の水圧転写装置を示す正面図、(b)はその側面図。
【図2】フィルム支持かごの底部を示す斜視図。
【図3】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図4】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図5】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図6】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図7】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図8】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図9】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図10】(a)は水圧転写方法を説明するための水圧転写装置の正面図、(b)はその側面図。
【図11】転写フィルムを示す拡大断面図。
【図12】従来の水圧転写を行うための転写槽を示す断面図。
【図13】従来技術における膨潤後の転写フィルムを示す断面図。
【図14】(a)は膨潤後の転写フィルムの状態を示す転写槽の断面図、(b)はその転写槽の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1(a)は、本実施の形態における水圧転写装置1の概略構成を示す正面図であり、図1(b)は、その側面図である。
【0026】
図1に示されるように、水圧転写装置1は、膨潤性を有する転写フィルム100を用いて、被転写体200(例えば、自動車のアームレストに設けられる装飾パネル)に水圧転写印刷を行う装置である。水圧転写装置1は、低水温(例えば18℃〜20℃)の第1の処理水W1を溜めておく一次水槽11と、中水温(例えば、35℃)の第2の処理水W2を溜めておく二次水槽12と、各水槽11,12の水面13,14と対面するよう転写フィルム100を支持するフィルム支持かご15(支持体)と、フィルム支持かご15を上下方向に移動させる電動スライダ16(上下移動手段)とを備えている。本実施の形態の水圧転写装置1は、転写フィルム100を一次水槽11から二次水槽12に移し替えて、転写フィルム100の膨潤処理を2段階で行うように構成されている。また、二次水槽12は、被転写体200への水圧転写を行う転写槽である。
【0027】
一次水槽11は、二次水槽12よりも浅く容積が小さい水槽であり、二次水槽12よりも軽い材料を用いて形成されている。具体的には、一次水槽11は、プラスチック製の水槽であり、二次水槽12は、ステンレス製の水槽である。一次水槽11には、第1の処理水W1を冷却するための冷水を循環させる冷却パイプ21(冷却手段)が設けられている。冷却パイプ21は、一次水槽11の底部における内縁に沿って配置されている。また、一次水槽11には温度センサ(図示略)が設けられており、温度センサが検出した水温に基づいて、冷却パイプ21を流れる冷水の流量が調整され、第1の処理水W1が所定の水温(18℃〜20℃)で維持されるようになっている。
【0028】
二次水槽12には、第2の処理水W2を加熱するための温水を循環させる加熱パイプ22(加熱手段)が設けられている。加熱パイプ22は、二次水槽12の底部における内縁に沿って配置されている。また、二次水槽12にも温度センサ(図示略)が設けられており、温度センサが検出した水温に基づいて、加熱パイプ22を流れる温水の流量が調整され、第2の処理水W2が所定の水温(例えば、35℃)で維持されるようになっている。
【0029】
本実施の形態において、一次水槽11は転写フィルム100を最初に膨潤させる水槽であり、転写フィルム100を二次水槽12に移し替える際に、一次水槽11内の第1の処理水W1が徐々に減少していく。このため、水圧転写装置1では、一次水槽11に第1の処理水W1を補充するための給水ボトル24(給水手段)が設けられている。そして、この給水ボトル24によって、一次水槽11の水位が一定になるように調整される。
【0030】
水圧転写装置1において、二次水槽12は、四角ボックス形状のフレーム26内に配置されている。フレーム26の上部には、水平方向に沿ってレール27が設けられており、レール27上に一次水槽11が移動可能に設けられている。また、フレーム26の上部には、フィルム支持かご15の下方位置で一次水槽11を固定するためのロック機構28が設けられている。
【0031】
フレーム26上部において、レール27端部(図1(a)では左端部)となる位置にはワイヤ巻取り装置29(水平移動手段)が設けられている。ワイヤ巻取り装置29は、ロック機構28による固定が解除されたときに、レール27上の一次水槽11を水平方向に引っ張って退避位置(図1(a)では左側の位置)に移動させる。フィルム支持かご15の下方位置に一次水槽11を戻す際には、ワイヤ巻取り装置29の引っ張り力に抗して作業者が一次水槽11を移動させた後、ロック機構28によって一次水槽11を固定させる。また、レール27の各端部には、一次水槽11の移動時の振動を抑制するためのゴム部材などからなる制振機構(図示略)が設けられている。
【0032】
電動スライダ16は、可動部であるスライダ31の移動方向が上下方向となるようフレーム26に立設されている。電動スライダ16には、スライダ31から水平方向に延びるよう支持アーム32が設けられ、その支持アーム32にフィルム支持かご15の上端部が固定されている。本実施の形態の電動スライダ16は、図示しないコントローラによってスライダ31の位置及び移動スピードが制御可能に構成されている。
【0033】
転写フィルム100は、水膨潤性フィルムからなる基材101上に印刷模様層102(例えば、木目模様層)を形成してなる(図11参照)。水圧転写装置1において、転写フィルム100は、印刷模様層102を上側に向けた状態でフィルム支持かご15の底面35に支持される。フィルム支持かご15の底面35は、各水槽11,12の水面13,14に対して傾斜した傾斜面となっている。また、このフィルム支持かご15の底面35には、膨潤した転写フィルム100(水膨潤性フィルム)の付着を防止するためのウエス36(保水性シート材)が設けられおり、そのウエス36上に転写フィルム100が載置される。
【0034】
フィルム支持かご15は、四角形のボックス状に形成されたステンレス製の枠体であり、4隅にて上下方向に沿って立設された4本の支柱38を備える。図2に示されるように、フィルム支持かご15における底面35の近傍に、転写フィルム100の膨潤を規制するための規制枠40が配置されている。規制枠40は、水に浮く材料(例えば、発泡ポリプロピレン)からなり、転写フィルム100の形状に合わせた長方形の開口部41を有する板状部材である。なお、この規制枠40は、フィルム支持かご15における4本の支柱38に嵌め込まれた状態で上下方向に移動可能に固定されている。また、規制枠40における開口部41は、膨潤前の転写フィルム100に対して1.25倍のサイズを有している。
【0035】
図1に示されるように、フィルム支持かご15の上部には、被転写体200を固定する固定部材43(固定手段)が設けられている。本実施の形態では、被転写体200において装飾を加える被転写面を下方に向け、その被転写面を水面13,14に対して所定の角度だけ傾斜させた状態で被転写体200が固定部材43に固定される。
【0036】
二次水槽12内において、仕切り板45が立設されており、その仕切り板45によって転写フィルム100の膨潤や転写を行うための処理領域R1とフィルム残滓を回収するための回収領域R2とに区画されている。二次水槽12内において、処理領域R1と回収領域R2とで第2の処理水W2を循環させるために、回収領域にはポンプ46が設けられ、そのポンプ46と配管47を介して接続された複数の噴射ノズル48が処理領域R1に設けられている。
【0037】
より詳しくは、二次水槽12の処理領域R1において、上部側であって回収領域R2の反対側に位置する側面の近傍に複数の噴射ノズル48が設けられている。各噴射ノズル48は、噴射口が回収領域R2側に向けて設置されており、第2の処理水W2を噴出することで処理領域R1の水位を増すとともに、水面14に浮いている転写フィルム100の残滓を回収領域R2に流す。また、回収領域R2において、上部側であって仕切り板45の上端よりも若干低い位置に回収網49が設置され、さらにその下部側にポンプ46が設けられている。
【0038】
次に、本実施の形態の水圧転写装置1を用いた水圧転写方法について図面を用いて説明する。
【0039】
先ず、水圧転写装置1の可動初期位置として、フィルム支持かご15を最上部の位置に配置させ、そのフィルム支持かご15の下方位置に一次水槽11を配置させる(図3参照)。そして、フィルム支持かご15の底面35上において、規制枠40の内側となる位置に印刷模様層102が上側となるよう転写フィルム100を配置する。なおここでは、図示しない塗布装置を用いて転写フィルム100における印刷模様層102の表面に活性剤を塗布した後にその転写フィルム100をフィルム支持かご15の底面35上に配置している。
【0040】
その後、第1の膨潤工程において、電動スライダ16によってフィルム支持かご15を下方に移動させて一次水槽11における第1の処理水W1の水面13に転写フィルム100を浮かべる(図4参照)。このとき、フィルム支持かご15の底面35が水面13に到達する着水前のスピードよりも着水時のスピードを遅くするように、電動スライダ16によってフィルム支持かご15の移動スピードを制御する。このように、フィルム支持かご15の着水時のスピードを遅くすることにより、ウエス36全体に第1の処理水W1が浸透し、その後で転写フィルム100が水面13に浮かべられる。また、フィルム支持かご15の底面35は傾斜面となっている。従って、第1の処理水W1の水面13と転写フィルム100との間に空気が入り込むことが防止される結果、転写フィルム100が全体的に着水する。このため、第1の処理水W1によって転写フィルム100が均一に膨潤させられる。
【0041】
一次水槽11において、第1の処理水W1の水面13に転写フィルム100を30秒間浮かべて所定のサイズとなるまで膨潤させた後、二次水槽12に転写フィルム100を移し替えるべく、電動スライダ16によってフィルム支持かご15を一旦上昇させる。このとき、ロック機構28による一次水槽11の固定が解除される。すると、ワイヤ巻取り装置29によって一次水槽11が水平方向に引っ張られ退避位置に移動される(図5参照)。
【0042】
そして、第2の膨潤工程において、電動スライダ16によってフィルム支持かご15を下方に移動させて、二次水槽12における第2の処理水W2の水面14に転写フィルム100を浮かべる(図6参照)。このとき、フィルム支持かご15の底面35が水面14に到達する着水前のスピードよりも着水時のスピードを遅くするように、電動スライダ16によってフィルム支持かご15の移動スピードを制御する。これにより、第2の処理水W2の水面14と転写フィルム100との間に空気が入り込むことが防止され、第2の処理水W2によって転写フィルム100が均一に膨潤される。なお、二次水槽12では、第2の処理水W2の水面14に転写フィルム100を60秒間浮かべることにより、被転写体200への転写に適した状態となるまで転写フィルム100が膨潤させられる。
【0043】
また、第2の処理水W2で転写フィルム100を膨潤させているときに、作業者は、フィルム支持かご15の上部の固定部材43に被転写体200を固定する(図7参照)。そして、転写フィルム100の膨潤後、水圧転写工程を行う。水圧転写工程では、電動スライダ16によってフィルム支持かご15をさらに下方に移動させることにより、転写フィルム100の上方から被転写体200を押し付け、水圧によって被転写体200の表面に印刷模様層102を転写させる(図8参照)。
【0044】
なお、水圧転写工程では、被転写体200を第2の処理水W2中に完全に沈める。ここで、被転写体200に転写されなかった余剰フィルムは、フィルム残滓105として第2の処理水W2の水面14に残る。この状態で被転写体200を水中から取り出すと、フィルム残滓105が被転写体200に付着してしまう。このため、本実施の形態では、被転写体200に対するフィルム残滓105の付着を回避するために、第2の処理水W2中に被転写体200を完全に沈めた状態で余剰フィルム除去工程を行う(図9参照)。
【0045】
この余剰フィルム除去工程では、二次水槽12において、ポンプ46の駆動により各噴射ノズル48から第2の処理水W2を噴出させる。これにより、二次水槽12における処理領域R1の水位を増すとともに、水面14に浮いているフィルム残滓105を回収領域R2側に流す。そして、処理領域R1の水位の上昇によって、第2の処理水W2が仕切り板45の上端を越えてオーバーフローされ、回収領域R2に流れ込む。このとき、転写されずに水面14に残されているフィルム残滓105も第2の処理水W2とともに回収領域R2に流れ込み、そのフィルム残滓105は回収網49で除去される。さらに、ポンプ46の駆動を継続させることで、フィルム残滓105が除去された第2の処理水W2が配管47を介して各噴射ノズル48から処理領域R1に戻される。そして、二次水槽12において、処理領域R1の水面14からフィルム残滓105が全て除去されたときにポンプ46の駆動が停止される。
【0046】
その後、電動スライダ16によってフィルム支持かご15を上方に移動させ、被転写体200を第2の処理水W2の水面14から引き上げる(図10参照)。さらに、印刷模様層102が転写された被転写体200をフィルム支持かご15の固定部材43から取り外して、その被転写体200を後工程の洗浄装置等に搬送する。
【0047】
以上の工程を経て被転写体200の1回分の水圧転写が完了する。また、新たな被転写体200の水圧転写を行う際には、退避位置からフィルム支持かご15の下方位置に一次水槽11を戻して、水圧転写装置1を図3の可動初期位置の状態にした後、上記の各工程を再度実施する。
【0048】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0049】
(1)本実施の形態の水圧転写装置1では、一次水槽11の第1の処理水W1と二次水槽12の第2の処理水W2とで2段階に分けて転写フィルム100が膨潤されるので、転写フィルム100を適正に膨潤させることができる。具体的には、一次水槽11の第1の処理水W1は低水温であるため、転写フィルム100が比較的ゆっくりと膨潤させられる。一方、二次水槽12の第2の処理水W2はそれよりも水温の高い温水であるため、被転写体200への転写に適した状態となるまで転写フィルム100が速やかに膨潤させられる。このようにすると、水膨潤性フィルム101の伸びに対して印刷模様層102の伸びを追従させることができ、フィルム端部が丸まることを確実に防止することができる。この結果、転写フィルム100の傾きや偏りを防止することができ、被転写体200の表面に対して印刷模様層102を高い位置精度で正確に転写することができる。
【0050】
(2)本実施の形態の水圧転写装置1では、一次水槽11の下方に二次水槽12を配置させているので、装置の設置スペースを抑えることができる。さらに、転写フィルム100を一次水槽11から二次水槽12に移し替える際には、フィルム支持かご15を上下方向に移動させればよいため、その移動距離が短くなることに加え、移動ための制御を簡単に行うことができる。従って、転写フィルム100の2段階の膨潤工程を比較的短い時間で行うことができる。さらに、フィルム支持かご15の下方に二次水槽12を配置させているので、転写フィルム100を一次水槽11から二次水槽12に移し替える際に、第1の処理水W1がフィルム支持かご15から垂れ落ちたとしても、その処理水W1は二次水槽12内に確実に落ちる。従って、処理水W1が装置外部に漏れるといったことを回避することができる。
【0051】
(3)本実施の形態の水圧転写装置1において、一次水槽11には第1の処理水W1を冷やすための冷却パイプ21が設けられ、二次水槽12には第2の処理水W2を温めるための加熱パイプ22が設けられている。このようにすると、転写フィルム100の膨潤に適した温度に各処理水W1,W2の水温を維持することができる。
【0052】
(4)本実施の形態の水圧転写装置1では、フィルム支持かご15の上部に被転写体200を固定する固定部材43が設けられている。そのため、二次水槽12にて転写フィルム100を膨潤させた後、電動スライダ16によりフィルム支持かご15をさらに下方に移動させることで、転写フィルム100の上方から被転写体200を押し付けることができる。この場合、転写フィルム100の支持体と被転写体200の支持体とを別々に設ける場合と比較して、水圧転写装置1の構成を簡素化することが可能となる。
【0053】
(5)本実施の形態の水圧転写装置1では、フィルム支持かご15において転写フィルム100を支持する底面35が水面13,14に対して傾斜した傾斜面となっている。このようにすると、転写フィルム100を水面13,14に浮かべる際に、水面13,14と転写フィルム100との間に空気が入り込むことが防止される結果、転写フィルム100が全体的に着水する。このため、転写フィルム100の膨潤が不均一となることを回避することができる。
【0054】
(6)本実施の形態では、水圧転写工程後において、第2の処理水W2中に被転写体200を完全に沈めた状態で余剰フィルム除去工程が実施され、第2の処理水W2の水面14に残存するフィルム残滓105が除去される。この場合、被転写体200を第2の処理水W2の水中から取り出す際に、フィルム残滓105が被転写体200に付着することがない。また、水圧転写工程後に二次水槽12における水面14のフィルム残滓105が除去されるので、二次水槽12にて次の被転写体200の水圧転写を繰り返し行うことができる。さらに、二次水槽12において、フィルム残滓105が除去された第2の処理水W2が回収領域R2から処理領域R1に戻されて再利用されるので、第2の処理水W2の使用量を最小限に抑えることができる。
【0055】
(7)本実施の形態の水圧転写装置1では、フィルム支持かご15の下方位置に一次水槽11を固定するロック機構28と、一次水槽11をフィルム支持かご15の下方位置から退避位置に移動させるワイヤ巻取り装置29とを備えている。このように構成すると、一次水槽11において転写フィルム100を膨潤させた後、作業者が自らの力を加えなくても、フィルム支持かご15の下方位置から一次水槽11を速やかに退避させることができる。
【0056】
(8)本実施の形態の水圧転写装置1において、フィルム支持かご15の底面35にはウエス36が設けられており、フィルム支持かご15の底面35が水面13,14に到達する着水前よりも着水時のスピードを遅くするようにフィルム支持かご15の移動スピードが制御されている。このようにすると、ウエス36全体に処理水W1,W2が浸透して転写フィルム100との接触面となるウエス36上面まで確実に吸水される。このため、転写フィルム100がフィルム支持かご15に付着することを防止することができる。
【0057】
(9)本実施の形態の水圧転写装置1では、一次水槽11は、二次水槽12よりも浅く容積が小さい水槽であり、二次水槽12よりも軽い材料で形成されているので、一次水槽11の水平方向への移動を容易かつ迅速に行うことができる。
【0058】
(10)本実施の形態の水圧転写装置1では、電動スライダ16でフィルム支持かご15を上下動させ、転写フィルム100の膨潤や被転写体200への転写を行うようにしている。この場合、作業者の手でフィルム支持かご15を上下動させる場合と比較して、フィルム支持かご16を正確な位置に適切なスピードで移動させることができる。この結果、水圧転写を安定的に行うことができ、印刷模様層102を転写した被転写体200表面の品質を十分に確保することができる。
【0059】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0060】
・上記実施の形態の水圧転写装置1では、一次水槽11及び二次水槽12をフィルム支持かご15の下方に配置して、転写フィルム100を一次水槽11から二次水槽12に移し替える際に一次水槽11を水平方向に退避させるように構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、一次水槽11を二次水槽12の水平方向にずらした位置に配置し、フィルム支持かご15を水平方向及び上下方向に移動させて転写フィルム100の移し替えを行うように水圧転写装置1を構成してもよい。
【0061】
・上記実施の形態の水圧転写装置1において、低水温の第1の処理水W1を用いて第1の膨潤工程を行い、中水温の第2の処理水W2を用いて第2の膨潤工程を行うようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、水圧転写装置1において、一次水槽11の第1の処理水W1と二次水槽12の第2の処理水W2とを同じ水温とし、転写フィルム100の膨潤を促進させる薬剤を第2の処理水W2にのみ添加する。このようにしても、第1の膨潤工程にて一次水槽11の第1の処理水W1で転写フィルム100をゆっくり膨潤させた後、第2の膨潤工程にて二次水槽12の第2の処理水W2で転写フィルム100を速やかに膨潤させることができる。この場合も、水膨潤性フィルム101の伸びに対して印刷模様層102の伸びを追従させることができ、フィルム端部が丸まることを確実に防止することができる。
【0062】
・上記実施の形態では、冷却パイプ21に冷水を循環させることで第1の処理水W1を冷却していたが、冷水以外に他の冷却液や冷却ガスなどを冷却パイプ21に循環させるようにしてもよい。また、加熱パイプ22も同様に、温水以外の液体やガスを循環させるように構成してもよい。さらに、冷却パイプ21以外の冷却手段や加熱パイプ22以外の加熱手段を用いてもよい。具体的には、例えば加熱手段としての電気ヒータを二次水槽12に設け、その電気ヒータで第2の処理水W2を温めるように構成してもよい。
【0063】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0064】
(1)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記一次水槽の水面で前記転写フィルムを膨潤させた後、前記一次水槽を前記支持体の下方位置から退避位置に移動させる水平移動手段をさらに備えたことを特徴とする水圧転写装置。
【0065】
(2)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記一次水槽の水平方向への移動時に発生する振動を抑制する制振機構をさらに備えたことを特徴とする水圧転写装置。
【0066】
(3)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記支持体において前記転写フィルムを支持する底面には、前記水膨潤性フィルムの付着を防止するための保水性シート材が設けられていることを特徴とする水圧転写装置。
【0067】
(4)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記上下移動手段は、前記支持体の底面が水面に到達する着水前のスピードよりも着水時のスピードを遅くするよう、前記支持体の移動スピードを制御することを特徴とする水圧転写装置。
【0068】
(5)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記一次水槽に前記第1の処理水を注ぎ足す給水手段を備えたことを特徴とする水圧転写装置。
【0069】
(6)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記一次水槽は、前記第二水槽よりも浅く容積が小さい水槽であることを特徴とする水圧転写装置。
【0070】
(7)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記一次水槽は、前記二次水槽よりも軽い材料で形成されることを特徴とする水圧転写装置。
【0071】
(8)手段1乃至5のいずれかにおいて、前記規制枠は、水に浮く部材で形成されることを特徴とする水圧転写装置。
【0072】
(9)手段7において、前記被転写体への水圧転写後において、前記被転写体を第2の処理水中に完全に沈めた状態で、前記フィルム除去工程を実施することを特徴とする水圧転写方法。
【符号の説明】
【0073】
1…水圧転写装置
11…一次水槽
12…二次水槽
13,14…水面
15…支持体としてのフィルム支持かご
16…上下移動手段としての電動スライダ
21…冷却手段としての冷却パイプ
22…加熱手段としての加熱パイプ
35…底面
100…転写フィルム
101…基材
102…印刷模様層
105…余剰フィルムとしてのフィルム残滓
200…被転写体
W1…第1の処理水
W2…第2の処理水
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水膨潤性フィルムからなる基材上に印刷模様層を形成してなる転写フィルムを前記印刷模様層が上側となるように水面に浮かべた状態で、前記転写フィルムの上方から被転写体を押し付け、水圧によって前記被転写体の表面に前記印刷模様層を転写する水圧転写装置であって、
上下方向に移動可能に設けられ、前記転写フィルムを前記水面と対面するよう支持するとともに、前記転写フィルムを水面に浮かべたときにそのフィルムの膨潤を規制する規制枠を有する支持体と、
前記支持体の下方位置及びそこから水平方向にずらした退避位置の間を移動可能に設けられ、前記転写フィルムを膨潤させる第1の処理水を溜めておく一次水槽と、
前記一次水槽の下方に配置され、前記一次水槽で膨潤させた転写フィルムを前記被転写体への転写に適した状態となるまで膨潤させる第2の処理水を溜めておく二次水槽と、
前記転写フィルムを前記一次水槽から前記二次水槽に移し替えるべく、前記支持体を上下方向に移動させる上下移動手段と
を備えたことを特徴とする水圧転写装置。
【請求項2】
前記第2の処理水は温水であり、前記第1の処理水は前記第2の処理水よりも水温が低くなるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の水圧転写装置。
【請求項3】
前記一次水槽には前記第1の処理水を冷やすための冷却手段が設けられ、
前記二次水槽には前記第2の処理水を温めるための加熱手段が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の水圧転写装置。
【請求項4】
前記支持体の上部には、前記被転写体を固定する固定手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水圧転写装置。
【請求項5】
前記支持体は前記転写フィルムを支持する底面を有し、その底面は前記水面に対して傾斜した傾斜面となっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水圧転写装置。
【請求項6】
水膨潤性フィルムからなる基材上に印刷模様層を形成してなる転写フィルムを前記印刷模様層が上側となるように水面に浮かべた状態で、前記転写フィルムの上方から被転写体を押し付け、水圧によって前記被転写体の表面に前記印刷模様層を転写する水圧転写方法であって、
前記転写フィルムを温度が相対的に低い第1の処理水の水面に浮かべて膨潤させる第1の膨潤工程と、
前記第1の膨潤工程で膨潤させた前記転写フィルムを、前記第1の処理水よりも相対的に温度が高い第2の処理水の水面に浮かべて前記被転写体への転写に適した状態となるまで膨潤させる第2の膨潤工程と
を含むことを特徴とする水圧転写方法。
【請求項7】
前記第2の膨潤工程で膨潤させた前記転写フィルムの上方から前記被転写体を押し付け、水圧によって前記被転写体の表面に前記印刷模様層を転写した後、前記第2の処理水の水面に残存する余剰フィルムを除去する余剰フィルム除去工程をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の水圧転写方法。
【請求項1】
水膨潤性フィルムからなる基材上に印刷模様層を形成してなる転写フィルムを前記印刷模様層が上側となるように水面に浮かべた状態で、前記転写フィルムの上方から被転写体を押し付け、水圧によって前記被転写体の表面に前記印刷模様層を転写する水圧転写装置であって、
上下方向に移動可能に設けられ、前記転写フィルムを前記水面と対面するよう支持するとともに、前記転写フィルムを水面に浮かべたときにそのフィルムの膨潤を規制する規制枠を有する支持体と、
前記支持体の下方位置及びそこから水平方向にずらした退避位置の間を移動可能に設けられ、前記転写フィルムを膨潤させる第1の処理水を溜めておく一次水槽と、
前記一次水槽の下方に配置され、前記一次水槽で膨潤させた転写フィルムを前記被転写体への転写に適した状態となるまで膨潤させる第2の処理水を溜めておく二次水槽と、
前記転写フィルムを前記一次水槽から前記二次水槽に移し替えるべく、前記支持体を上下方向に移動させる上下移動手段と
を備えたことを特徴とする水圧転写装置。
【請求項2】
前記第2の処理水は温水であり、前記第1の処理水は前記第2の処理水よりも水温が低くなるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の水圧転写装置。
【請求項3】
前記一次水槽には前記第1の処理水を冷やすための冷却手段が設けられ、
前記二次水槽には前記第2の処理水を温めるための加熱手段が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の水圧転写装置。
【請求項4】
前記支持体の上部には、前記被転写体を固定する固定手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水圧転写装置。
【請求項5】
前記支持体は前記転写フィルムを支持する底面を有し、その底面は前記水面に対して傾斜した傾斜面となっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水圧転写装置。
【請求項6】
水膨潤性フィルムからなる基材上に印刷模様層を形成してなる転写フィルムを前記印刷模様層が上側となるように水面に浮かべた状態で、前記転写フィルムの上方から被転写体を押し付け、水圧によって前記被転写体の表面に前記印刷模様層を転写する水圧転写方法であって、
前記転写フィルムを温度が相対的に低い第1の処理水の水面に浮かべて膨潤させる第1の膨潤工程と、
前記第1の膨潤工程で膨潤させた前記転写フィルムを、前記第1の処理水よりも相対的に温度が高い第2の処理水の水面に浮かべて前記被転写体への転写に適した状態となるまで膨潤させる第2の膨潤工程と
を含むことを特徴とする水圧転写方法。
【請求項7】
前記第2の膨潤工程で膨潤させた前記転写フィルムの上方から前記被転写体を押し付け、水圧によって前記被転写体の表面に前記印刷模様層を転写した後、前記第2の処理水の水面に残存する余剰フィルムを除去する余剰フィルム除去工程をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の水圧転写方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−98468(P2011−98468A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253547(P2009−253547)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】
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