説明

水安定化組成物、これの生成方法、およびこれの使用

飲料水における活性成分の安定化剤および発泡性混合物を含んでいる水安定化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水安定化組成物、水安定化組成物の生成方法、および水安定化組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
獣医学において、とりわけブタおよび家禽類生産の分野において、生ワクチンが、ますます大きくなる規模において、飲料水を介して投与されている。この投与方法は、動物の安全かつ良好な免疫化につながるが、その理由は、これが、多くの感染の自然経路を模倣し、このようにして、これが免疫応答のすべての部分を刺激するからである。同時に、飲料水を介した生ワクチンの投与は、経済的観点から理に適い、かつ動物の福祉のために好まれるべきワクチン方法である。
【0003】
水はこのことにおいて特に重要であるが、その理由は、水が、生ワクチン培養のための溶媒であり、同時に輸送手段でもあるからである。水の品質は、ワクチンの動物への経路上で、ワクチンの生き残りについて最終的に決定する。しかしながら、水の品質は、非常に異なっていることがあり、特にこれは、生産工場、給水に応じて、および経時的に変動しうる。これは、それぞれ生ワクチンの効率を変化させるか、またはこれに影響を与えることがある。
【0004】
生ワクチンの安定化のために、スキムミルク粉末が頻繁に飲料水へ添加されている。しかしながらスキムミルク粉末は、飲料水中にほとんど溶解せず、したがって水飲み用容器(trough)系の閉塞が発生することがある。
【0005】
さらには、水安定化剤に加えて青い染料を含有するタブレットも公知である。この染料は、水飲み用容器系全体における水安定化剤およびワクチンの分配、および動物による摂取を使用者へ示す。しかしながら、これの使用は、タブレットの溶解性の悪さによって恐ろしいことになる。
【0006】
さらには、水の安定化剤および青い染料を含有する粉末も公知である。この粉末は、多くのダストを引起こし、水へ混合するのが非常に難しいことがある。これらの成分は、表面上で浮遊するかまたは沈殿する傾向があり、したがってこれは、強く撹拌されなければならない。未溶解粒子が、水飲み用容器系を閉塞させることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの事実から発生して、本発明は、より使用者に優しい水安定化組成物、この水安定化組成物の生成方法、およびこの水安定化組成物の使用を提供するための目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する水安定化組成物によって解決される。この組成物の有利な実施形態が、従属項2〜13に示されている。ボトルとこの組成物との組み合わせが、従属項14および15に示されている。
【0009】
本発明による水安定化組成物は、飲料水中の活性成分の安定化剤、および発泡性混合物を含有する。
【0010】
発泡性混合物は、これが水中に溶解された時にガスを発生させ、水中で強力に燃え上がる混合物である。含有された発泡性混合物によって、この水安定化組成物は、これが飲料水中に入れられた時に燃え上がり、これを通して、飲料水中の活性成分の安定化剤の溶解および分配が向上される。その結果、飲料水中への活性成分の安定化剤の特に急速かつ均一な混合がある。この組成物を飲料水中へ撹拌して入れる必要はない。またはそれぞれ、撹拌して入れる費用を、有意に減少させることができる。水飲み用容器系の汚染は、その機能に影響を与えるが、これが避けられる。このようにして、この組成物は、使用者に特に使い勝手が良い。
【0011】
1つの実施形態によれば、安定化剤は、次の成分:錯化剤、還元剤、緩衝剤、および染料のうちの少なくとも1つを含んでいる。
【0012】
錯化剤は、飲料水中に含有された重金属を不活性化することが可能であるが、これらはさもなければ、生ワクチンまたはほかの活性成分を不安定化するであろう。還元剤は、酸化剤を還元する。酸化剤は例えば、洗浄剤の残渣の形態で飲料水中に含有されることがあり、これもまた、生ワクチンまたはほかの活性成分を不安定化することがある。緩衝剤は、pH値を、生ワクチンまたはほかの活性成分に特に有利な値に緩衝する。染料は、活性成分を含有する水で容器系を満たすことに関して、容器系の視覚的監視を可能にする。さらに、染料は、活性成分を含有する水の摂取を、動物のくちばし、咽頭、および舌の非永久的着色によって、チェック可能にしうる。同時に、染料は、水安定化組成物および着色飲料水を視覚的に改良する。色彩は、例えば青色または緑色である。
【0013】
1つの実施形態によれば、錯化剤は、次の物質:クエン酸、スキムミルク、チオスルフェート、アジピン酸、安息香酸、およびほかの有機酸のうちの少なくとも1つから選択される。
【0014】
1つの実施形態によれば、還元剤は、次の物質:チオスルフェート、ラクトース、炭酸水素塩(重炭酸塩)、および炭酸塩のうちの少なくとも1つから選択される。
【0015】
1つの実施形態によれば、緩衝剤は、次の物質:クエン酸、炭酸水素塩(重炭酸塩)、および炭酸塩のうちの少なくとも1つから選択される。
【0016】
1つの実施形態によれば、染料は、食用色素である。動物による食用色素の摂取は、反対すべきものではない。
【0017】
1つの実施形態によれば、発泡性混合物は、炭酸水素塩および有機酸を含んでいる。有機酸は、水中に溶解された時、炭酸水素塩または炭酸塩から二酸化炭素を発生させる。炭酸水素塩は、例えば炭酸水素ナトリウムである。有機酸は、例えばクエン酸、安息香酸、アジピン酸、または酒石酸である。炭酸水素塩は、還元剤として、および同時に緩衝剤として機能しうるし、有機酸は、錯化剤として、および同時に緩衝剤として機能しうる。
【0018】
原則として、水安定化組成物は、液体または固体形態で存在し得る。
【0019】
1つの実施形態によれば、水安定化組成物は固体である。これは例えば、タブレット形状、または粉末形状、または顆粒化物形状であってもよい。どの場合も、水安定化組成物の溶解および混合は、発泡性混合物によって改良される。1つの実施形態によれば、水安定化組成物は、顆粒化物形態を有する。顆粒化物は、タブレットまたは粉末と比較して、取扱いにおいて利点を有する。これらは、より容易に搬送および計量供給をすることができる。さらには、顆粒化物は、基本的にダストを引起こさずに生成することができる。
【0020】
さらに1つの実施形態によれば、顆粒化物は、それぞれ、安定化剤ならびに発泡性混合物を含有する粒子または顆粒化物を含んでいる。顆粒化物が水中に溶解された時、発泡性混合物によって放出されたガスは、顆粒化物構造を崩壊させ、小さい顆粒化物粒へ付着する気泡は、それぞれ粒子または顆粒化物の上方への浮遊を引起こす。この効果は、活性成分の安定剤と飲料水とのより急速で完全な混合を保証する。
【0021】
1つの実施形態によれば、顆粒化物は、加圧下に固化された粉末の粒子を含んでいる。粉末形状の安定化剤もしくはその粉末形状の成分、および粉末形状の発泡性混合物もしくはその粉末形状の成分からのこれらの粒子は、加圧下に混合することができ、したがってこれらは、安定化剤および発泡性混合物を含んでいる。
【0022】
1つの実施形態によれば、この組成物は、最大約100μmの粉末の粒子サイズを有する、加圧下に固化された粉末の粒子を含んでいる。さらに1つの実施形態によれば、この組成物の粒子は、少なくとも約300μmおよび最大約3mmの寸法を有する。粒子サイ
ズの記載された範囲は、顆粒化物の使用にとって特に有利である。
【0023】
1つの実施形態によれば、ボトルと、その中に配置された、上で説明された種類の水安定化組成物との組み合わせは、ボトルのところで規定された定格容積を有する閉鎖キャップを特徴とする。この閉鎖キャップは、水飲み用容器系中へ水安定化組成物を計量供給するために用いることができる。これに加えて、これは、ボトルのぴったりとした閉鎖のための機能を果たしうる。この目的のために、1つの実施形態によれば、この閉鎖キャップは、ボトルとともにネジ留めされたネジ蓋である。
【0024】
さらには、この目的は、請求項16の特徴を有する生成方法によって解決される。この方法の有利な実施形態は、従属項17〜19に示されている。
【0025】
前記の種類の水安定化組成物の生成のための本発明の方法において、活性成分の安定化剤と発泡性混合物とは、粉末形態で混合され、この混合物は、それぞれ緻密化または顆粒化される。
【0026】
この方法によれば、粉末は、使用中の前記利点を有する顆粒化物として加工処理される。安定化剤および発泡性混合物のすべての成分は、粉末形態で添加され、混合され、緻密化されてもよい。しかしながら、粉末形態における活性成分の予め製造された安定化剤と、粉末形態における予め製造された発泡性混合物とを混合すること、ついでこの混合物をそれぞれ緻密化または顆粒化することも可能である。
【0027】
これらの粉末を混合するために、複数の通常の撹拌器またはほかの型のミキサーが用いられてもよく、これらは、粉末を混合する時に用いられる。同様に、それぞれ緻密化または顆粒化のための任意装置を、それぞれ粉末を緻密化または顆粒化するために用いることができる(例えばタブレットプレス、パンクラッシャー、および強力ミキサーなど)。1つの実施形態によれば、これは、二本ローラー圧縮機を用いて緻密化される。押出し機もまた、緻密化のために用いることができる。
【0028】
さらに1つの実施形態によれば、緻密化物は、所望の粒子サイズ分布を生じるために粉砕される(例えばパンクラッシャーを用いて)。さらに1つの実施形態によれば、粉砕された緻密化物は篩われ、好ましくないサイズは、粉末の混合物へ再循環される。篩うことによって、および粉砕された緻密化物の細かい部分を緻密化プロセスへ再循環することによって、顆粒化物の細粒成分は回避される。その結果生じた顆粒化物は、基本的にダストを含まない。
【0029】
最後に、この目的は、請求項22による使用によって解決される。この使用の有利な実施形態は、従属項23および24に示されている。
【0030】
前記の種類の水安定化組成物の本発明による使用は、飲料水を介した活性成分の投与を安定化するために行なわれる。
【0031】
1つの実施形態によれば、水安定化組成物と活性成分とは、同じ供給位置において、水飲み用容器系中へ混合される。供給位置は、例えばヘッドタンクまたは貯水槽であり、この中で、水安定化組成物および活性成分と飲料水との混合が行なわれる。しかしながら供給位置はまた、ライン系におけるパイプピースであってもよい。
【0032】
水安定化組成物は、様々な活性成分とともに用いることができる。1つの実施形態によれば、活性成分は、死ワクチンもしくは生ワクチン、またはプロバイオティック剤である。生ワクチンは、例えばサルモネラ菌、インフルエンザ、貧血症、または鳥インフルエンザに対するワクチンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次において、本発明は、添付図面が参照されるその実施例を用いて、より詳細に説明される。図面において、次のものが示されている。図1は大雑把な概略図における水安定化組成物の生成プラント、図2は側面図における水安定化組成物の貯蔵および計量供給のための閉鎖キャップを有するボトル、図3は活性成分とともに水安定化組成物の投与のための水飲み用容器系である。
【0034】
次の表1において、水安定化組成物の実施例(2の代替例)について、これらの成分および重量比は、次のとおりである:
【表1】

【0035】
上の成分は、粉末形態で用いられる。
代替例1は、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを含有する。
代替例2は、炭酸水素ナトリウムを含有し、炭酸ナトリウムを含有しない。
【0036】
加工処理は、図1によるプラントにおいて実施することができる。粉末は、撹拌機1を有するミキサーに供給される。これは、底部側の方へ向かって円錐形に先細りになっている。撹拌機1を有するミキサーの底部側における出口を介して、予め混合された粉末は、二本ローラー圧縮機2に達する。圧縮機2は、原則として、ローラーブリケッティング(bricketting)プレスのように構成されている。
【0037】
混合物の成分は、圧縮物のすべての粒子の周りに基本的に均一に分配されている。
【0038】
底部側において、圧縮物は、二本ローラー圧縮機2から粉砕機3の中へ排出される。ここで圧縮物は、より小さい粒子に粉砕される。
【0039】
粉砕機3から、圧縮物は篩装置4に達する。好ましくないサイズの細かいフラクションは、篩装置4からミキサー1へ、再循環物として再循環される。篩残渣が、最終製品を形成する。
【0040】
図2によれば、生成物がボトル5に充填される。ボトル5は、ボトル本体の頂部において開口部6の周りにネジ山7を有する。ボトル本体に対して、ネジ蓋8がネジ留めされている。ネジ蓋8は、基本的にポット形状である。その空洞部は、ある定格容積を有し、顆粒化物を計量供給するために用いることができる。
【0041】
図3によれば、水飲み用容器系は、飲料水用のヘッドコンテナ9を含み、これへ、飲料水のための供給装置10が組み合わされる。ヘッドコンテナ9は、その底部側においてライン系11へ連結されている。この系は、水容器の形態にある、異なった送り出しステーション12の方へ枝分かれしている。送り出しステーション12のところで、例えば雌鳥またはほかの家禽類は水を飲むことができる。
【0042】
水安定化組成物およびワクチンは、ヘッドコンテナ9において飲料水へ混合される。発泡性混合物の作用を通して、この組成物およびワクチンの均一な分配が、ヘッドコンテナ9において実施され、したがって送り出しステーション12は、組成物およびワクチンが均一に供給される。このようにして、ワクチンの摂取は、動物のくちばしの青色着色によって認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】大雑把な概略図における水安定化組成物の生成プラント
【図2】側面図における水安定化組成物の貯蔵および計量供給のための閉鎖キャップを有するボトル
【図3】活性成分とともに水安定化組成物の投与のための水飲み用容器系
【符号の説明】
【0044】
1 ミキサー
2 二本ローラー圧縮機
5 ボトル
8 ネジ蓋(閉鎖キャップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料水中の活性成分の安定化剤および発泡性混合物を含んでなる水安定化組成物。
【請求項2】
安定化剤が、次の成分:
・錯化剤
・還元剤
・緩衝剤
・染料
のうちの少なくとも1つを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
錯化剤が、次の物質:クエン酸、スキムミルク、チオスルフェート、アジピン酸、安息香酸、およびほかの有機酸のうちの少なくとも1つから選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
還元剤が、次の物質:チオスルフェート、ラクトースのうちの少なくとも1つから選択される、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
緩衝剤が、次の物質:クエン酸、炭酸水素塩(重炭酸塩)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸塩のうちの少なくとも1つから選択される、請求項2〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
染料が、食用色素である、請求項2〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
発泡性混合物が、炭酸水素塩もしくは炭酸塩、および有機酸を含んでなる、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
固体である、請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
顆粒化物の形態にある、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
顆粒化物が、安定化剤ならびに発泡性混合物を含有する粒子を含んでなる、請求項1〜9のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
顆粒化物が、加圧下に固化された粉末の粒子を含んでなる、請求項1〜10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
最大約100μmの粉末の粒子サイズを有する、加圧下に固化された粉末の粒子を含んでなる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
この組成物の粒子は、少なくとも約300μm〜最大約3mmの寸法を有する、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
ボトルと、その中に配置された請求項1〜13のいずれか1項記載の水安定化組成物との組み合わせであって、ボトルが、規定された定格容積の閉鎖キャップを有する組み合わせ。
【請求項15】
閉鎖キャップが、ボトルとともにネジ留めされたネジ蓋である、請求項14に記載の組み合わせ。
【請求項16】
・活性成分の安定化剤および発泡性混合物が粉末形態で混合され、かつ
・混合物が緻密化される、
請求項1〜13のいずれか1項記載の水安定化組成物の生成方法。
【請求項17】
混合物が、二本ローラー圧縮機を用いて緻密化される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
混合物が、押出し機を用いて緻密化される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
混合物が、タブレットプレスを用いて緻密化される、請求項16〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
緻密化物が粉砕される、請求項16〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
緻密化物が、パンクラッシャーを用いて粉砕される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
粉砕された緻密化物が篩われ、好ましくないサイズが粉末の混合物へ再循環される、請求項16〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
飲料水を介した活性成分の投与を安定化するための、請求項1〜13のいずれか1項記載の水安定化組成物の使用。
【請求項24】
水安定化組成物と活性成分とが、同じ供給位置において、水飲み用容器系の中に混合されて入れられる、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
活性成分が、死ワクチンもしくは生ワクチン、またはプロバイオティック剤である、請求項23または24に記載の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−528311(P2009−528311A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556706(P2008−556706)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001679
【国際公開番号】WO2007/098924
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(508258806)ローマン・アニマル・ヘルス・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー (1)
【Fターム(参考)】