説明

水密性能試験装置および水密性能試験方法

【課題】管体の端面間の間隔が大きくなっても作業性を低下させることなく鋼製継輪と管体との接合部の水密性能を試験する。
【解決手段】対向する管体P,Pの外周面側端縁部にわたって鋼製継輪Jが接合された状態で管体と鋼製継輪との水密性能を試験する装置において、環状フレーム2と、弧状の周面を有して環状フレーム2に対してそれぞれ半径方向に進退自在な複数の押さえ部材3と、複数の押さえ部材3にわたって装着された無端状のシール部材4と、一方の管体P1の端面から設定間隔をおいて鋼製継輪Jの内周面に配設された無端状のガスケット5とから試験装置1が構成される。そして、一方の管体P1の内周面側端縁部とガスケット5の内周面とにわたってシール部材4が押さえ部材3を介して押圧され、鋼製継輪J、一方の管体P1、ガスケット5およびシール部材4によって区画された環状の空間に加圧水を供給し、鋼製継輪Jと一方の管体P1との接合部の水密性能を試験する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼製継輪と管体との接合部の水密性能を試験する試験装置およびその試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、一端に受け口が設けられるとともに、他端に挿し口が設けられた管体、例えば、ガラス繊維強化プラスチックと骨材(モルタル)を順に積層した強化プラスチック複合管(FRPM管)の対向する受け口と挿し口を順に接合して下水道配管などを敷設することが行われている。このような下水道配管などの管路の施工に際して、ブロック毎に並行して配管接続すると、最終的に一方のブロックの先端の管体と、隣接する他方のブロックの対向する先端の管体とを接合する必要がある。このような場合には、隣接して対向する管体の外周面にわたって鋼製継輪を嵌め込み、接合するようにしている(例えば、特許文献1の図10参照)。
【0003】
このような鋼製継輪の内周面と各管体の外周面との間にはシール材が配設され、鋼製継輪と各管体との接合部が密封されている。したがって、鋼製継輪を介して管体を接合した場合、鋼製継輪と各管体との間のシール材による密封性能を確認する必要がある。具体的には、鋼製継輪を介して接合された対向する管体の内周面側端縁部間にわたって環状パッキンを備えたテストバンドを配設し、環状パッキンを各管体の内周面側端縁部に押さえ板を介してそれぞれ押圧することで対向する管体の内周面を密封し、環状パッキンを通して鋼製継輪の内周面側に加圧流体、例えば、水ポンプを介して加圧水を供給し、鋼製継輪と各管体とのシール材による接合部の密封性能を試験するものである(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−328804号公報
【特許文献2】特開2000−266630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鋼製継輪を利用して対向する管体を接合した場合、管体の管径が大きくなるにつれて、対向する管体の端面間の開き(間隔)も大きくなる。このため、前述したテストバンドを用いた試験装置においては、管体の管径に対応して、すなわち、対向する管体の端面間の間隔に対応して離間した端面間にわたる大きさのテストバンドが必要になる。例えば、管径1800mmの場合、対向する管体の端面間の間隔は450mmとなり、テストバンドの幅は610mm必要となる。一方、管体の端面間の大きな間隔に対応して大きな幅のテストバンドを製造すると、管路内を搬送する際、重量が大きくなって作業性が低下するとともに、管路の曲線部を通過することができないものとなる。また、鋼製継輪の内周面側に供給しなければならない水の量もより多く必要になる他、試験時間も長くなることが避けられない。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、管体の端面間の間隔が大きくなっても作業性を低下させることなく鋼製継輪と管体との接合部の水密性能を試験することのできる水密性能試験装置およびその試験方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水密性能試験装置は、対向する管体の外周面側端縁部にわたって鋼製継輪が接合された状態で管体と鋼製継輪との水密性能を試験する装置において、環状フレームと、弧状の周面を有して環状フレームに対してそれぞれ半径方向に進退自在な複数の押さえ部材と、複数の押さえ部材にわたって装着された無端状のシール部材と、一方の管体の端面から設定間隔をおいて鋼製継輪の内周面に配設された無端状のガスケットとからなり、一方の管体の内周面側端縁部とガスケットの内周面とにわたってシール部材が押さえ部材を介して押圧され、鋼製継輪、一方の管体、ガスケットおよびシール部材によって区画された環状の空間に加圧流体を供給して鋼製継輪と一方の管体との接合部の水密性能を試験することを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、試験対象の鋼製継輪と管体との接合部において、管体の端面から設定間隔をおいてガスケットを鋼製継輪の内周面に配設した後、押さえ部材を拡径方向に押し出して、管体の内周面側端縁部とガスケットの内周面とにわたってシール部材を接触させて密封する。次いで、鋼製継輪、管体、ガスケットおよびシール部材によって区画された環状の空間に加圧流体を供給し、試験対象の鋼製継輪と管体との接合部の水密性能を試験する。
【0009】
この結果、管体の管径に対応して管体の端面間の間隔が大きくなっても、ガスケットを管体の端面から設定間隔をおいて鋼製継輪の内周面に配設することにより、試験装置を大きくすることなく常に一定間隔で接合部の水密性能を試験することができる。したがって、管路内において、試験装置をこれまでと同様に管路の曲線部を経て試験位置まで搬送することができ、作業性を低下させることはない。また、加圧流体に加圧水を使用する場合は、試験位置まで管体間の間隔に見合ったより多くの水を運ぶ必要がなく、試験時間が長くなることもない。
【0010】
本発明において、前記ガスケットと他方の管体の端面との間に支持部材が配設されることが好ましい。これにより、一方の管体の端面から設定間隔をおいて配設したガスケットを他方の管体の端面との間に配設した支持部材を介して軸心方向に移動しないように支持することができる。よって、ガスケットが不意に軸方向にずれて外れてしまうおそれがなく、確実に水密性能試験を行うことができる。支持部材は、一方の管体の端面とガスケットの隙間と同じ、軸方向の幅寸法を有する。
【0011】
本発明において、前記ガスケットが内外二層から形成され、外層の硬度が内層の硬度よりも小さいことが好ましい。これにより、仮に、鋼製継輪の内周面に溶接ビード等が膨出している場合や凹凸がある場合であっても、これらを外層が吸収することができ、ガスケットと鋼製継輪の内周面間の密封性を確保することができる。また、押さえ部材を介してシール部材をガスケットに押圧した際、内層の硬度によって一定の反力を得ることができ、過剰に圧縮変形させることを防止できる。
【0012】
本発明において、前記ガスケットが中間層を内外の挾持層が挟む三層から形成され、両挾持層の硬度が中間層の硬度よりも小さいことが好ましい。これにより、仮に、鋼製継輪の内周面に溶接ビード等が膨出している場合や凹凸がある場合であっても、これらを外側の挾持層が吸収することができ、ガスケットと鋼製継輪の内周面間の密封性を確保することができる。また、押さえ部材を介してシール部材をガスケットに押圧した際、内側の挾持層を経て中間層の硬度によって一定の反力を得ることができ、過剰に圧縮変形させることを防止できる。
【0013】
本発明の水密性能試験方法は、対向する管体の外周面側端縁部にわたって鋼製継輪が接合された状態で管体と鋼製継輪との水密性能を試験する方法において、一方の管体の端面から設定間隔をおいてガスケットを鋼製継輪の内周面に配設するとともに、一方の管体の内周面側端縁部とガスケットの内周面との間をシール部材を介して密封し、鋼製継輪、一方の管体、ガスケットおよびシール部材によって区画された環状の空間にシール部材を通して加圧流体を供給し、鋼製継輪と一方の管体との接合部の水密性能を試験することを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、試験対象の鋼製継輪と管体との接合部において、一方の管体の端面から設定間隔をおいてガスケットを鋼製継輪の内周面に配設した後、一方の管体の内周面側端縁部とガスケットの内周面との間をシール部材を介して密封する。次いで、鋼製継輪、一方の管体、ガスケットおよびシール部材によって区画された環状の空間にシール部材を通して加圧流体を供給し、鋼製継輪と一方の管体との接合部の水密性能を試験する。
【0015】
この結果、管体の管径に対応して管体の端面間の間隔が大きくなっても、ガスケットを管体の端面から設定間隔をおいて鋼製継輪の内周面に配設することにより、常に一定間隔で接合部の水密性能を試験することができる。したがって、シール部材などを管体の端面間の間隔に合わせて大きくする必要がなく、これまでとほぼ同じ要領で試験を行うことができ、作業性を低下させることがない。
【0016】
本発明の水密性能試験方法は、対向する管体の外周面側端縁部にわたって鋼製継輪が接合された状態で管体と鋼製継輪との水密性能を試験する方法において、一方の管体の端面から設定間隔をおいてガスケットを鋼製継輪の内周面に配設するとともに、一方の管体の内周面側端縁部とガスケットの内周面との間をシール部材を介して密封し、鋼製継輪、一方の管体、ガスケットおよびシール部材によって区画された環状の空間にシール部材を通して加圧流体を供給し、鋼製継輪と一方の管体との接合部の水密性能を試験し、その後、ガスケットを他方の管体の端面から設定間隔をおいて鋼製継輪の内周面に配設するとともに、他方の管体の内周面側端縁部とガスケットの内周面との間をシール部材を介して密封し、鋼製継輪、他方の管体、ガスケットおよびシール部材によって区画された環状の空間にシール部材を通して加圧流体を供給し、鋼製継輪と他方の管体との接合部の水密性能を試験することを特徴とするものである。
【0017】
本発明によれば、試験対象の鋼製継輪と管体との接合部において、一方の管体の端面から設定間隔をおいてガスケットを鋼製継輪の内周面に配設した後、一方の管体の内周面側端縁部とガスケットの内周面との間をシール部材を介して密封する。次いで、鋼製継輪、一方の管体、ガスケットおよびシール部材によって区画された環状の空間にシール部材を通して加圧流体を供給し、鋼製継輪と一方の管体との接合部の水密性能を試験する。そして、鋼製継輪と一方の管体との接合部の水密性能の試験が終了したならば、ガスケットを他方の管体の端面から設定間隔をおいて鋼製継輪の内周面に配設した後、他方の管体の内周面側端縁部とガスケットの内周面との間をシール部材を介して密封する。次いで、鋼製継輪、他方の管体、ガスケットおよびシール部材によって区画された環状の空間にシール部材を通して加圧流体を供給し、鋼製継輪と他方の管体との接合部の水密性能を試験する。
【0018】
この結果、管体の管径に対応して管体の端面間の間隔が大きくなっても、ガスケットを管体の端面から設定間隔をおいて鋼製継輪の内周面に配設することにより、常に一定間隔で接合部の水密性能を試験することができる。したがって、シール部材などを管体の端面間の間隔に合わせて大きくする必要がなく、これまでとほぼ同じ要領で試験を行うことができ、作業性を低下させることがない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、管体の端面間の間隔が大きくなっても作業性を低下させることなく鋼製継輪と管体との接合部の水密性能を試験することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の水密性能試験装置の一実施形態を管体とともに示す正面図である。
【図2】図1の試験装置を一部破断して示す側面図である。
【図3】鋼製継輪と一方の管体との接合部の水密性能の試験状態を一部省略して示す要部の拡大断面図である。
【図4】図3の縦断面図である。
【図5】図4に示した試験状態を一部省略して示す斜視図である。
【図6】鋼製継輪と他方の管体との接合部の水密性能の試験状態を図4に対応して示す縦断面図である。
【図7】単位スペーサの連結治具による連結状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1乃至図5には、本発明の水密性能試験装置1の一実施形態が示されている。
【0023】
この水密性能試験装置1は、環状フレーム2と、弧状の周面を有して環状フレーム2に対してそれぞれ半径方向に進退自在な複数の押さえ部材3と、複数の押さえ部材3にわたって装着された無端状のシール部材4と、鋼製継輪Jの内周面に配設された無端状のガスケット5と、ガスケット5と管体Pの端面との間に配設されてガスケット5の軸方向の移動を防止する支持部材6とから構成されている。そして、環状フレーム2には、前後にそれぞれ車輪7aを回転自在に支持した左右の車輪ベース7が図示しないボルトナットを介して着脱自在に連結されるとともに、左右の車輪ベース7の前後に連結アーム71が図示しないボルトナットを介して着脱自在に連結されている。
【0024】
環状フレーム2は、弧状に湾曲させた外面板21の内周面側周縁に周壁を立設して形成された浅い箱状の複数(実施例においては、120度の間隔をおいて3個)のセグメント2Aを周方向にボルトナットを介して順に接続して形成されている。そして、環状フレーム2には、複数の押さえ部材3にそれぞれ対応して、周方向に設定間隔をおいて複数個のナット22がセグメント2Aの外面板21を貫通して溶着されるとともに、ナット22にボルト23が螺合されている。また、環状フレーム2におけるセグメント2Aの外面板21には、後述するように、各押さえ部材3に設けられた一対のガイドロッド35をそれぞれ挿通可能なガイド穴21aがナット22の中心に関して点対称の位置に形成されている。
【0025】
各押さえ部材3は、弧状の押さえ板31の外周面側に断面コ字状のシール保持材32を連結するとともに、押さえ板31の内周面側に軸心方向に間隔をおいて一対の補強リブ33を立設して形成されている。そして、押さえ板31の中心部に前述した環状フレーム2に設けたボルト23の先端が突き当てられる押圧部34を設ける一方、各補強リブ33には、それぞれ環状フレーム2におけるセグメント2Aの外面板21に形成したガイド穴21aに対応して一対のガイドロッド35が押圧部34の中心に関して点対称の位置に溶着されて内方に向かって突出されている。
【0026】
シール部材4は、図4に示すように、左右に隔てた位置に接触部4aを突出させた断面略偏平なC字状に形成され、押さえ部材3のシール保持材32にわたって装着されている。このシール部材4は、後述するように、管体Pの内周面側端縁部と、管体Pの端面近傍に位置して鋼製継輪Jの内周面に配設されるガスケット5にわたって左右の接触部4aがそれぞれ接触することができる幅を有している。
【0027】
ガスケット5は、鋼製継輪Jの内周面に全周にわたって配設され、鋼製継輪Jの内周面と管体Pの内周面との段差を埋めるように、該段差に相当する厚みを有して断面方形状に形成されている。
【0028】
ここで、ガスケット5は、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴムなどからなり、内層5Aと外層5Bの二層構造で形成されている。そして、内層5Aは、JIS K
6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方」に準拠して測定された硬度が65〜75、好ましくは70であり、外層5Bの同硬度が40〜50、好ましくは45であって、内層5Aの厚みが外層5Bの厚みよりも大きく設定されている。これにより、鋼製継輪Jの内周面に溶接ビードが膨出している場合であっても、外層5Bの硬度が小さい(柔らかい)ことにより、溶接ビードの膨らみを吸収することができる。また、内層5Aの硬度が大きい(硬い)ことにより、後述するように、シール部材4を介して押さえ部材3で押圧した際に一定の反力が得られ、押圧による過剰な変形を防止することができる。
【0029】
支持部材6は、図5に詳細に示すように、弧状の外面板の内面側周縁に周壁を立設して形成された浅い箱状の複数の単位スペーサ6Aを周方向にボルトナットを介して順に連結して環状に形成されている。そして、単位スペーサ6Aには、その軸心方向の一方の周壁に対してボルトナットを介して進退自在な支持板61が設けられている。これにより、支持部材6は、鋼製継輪Jの内周面に配設されたガスケット5と、試験対象の管体Pに対向する管体Pの端面との間において、鋼製継輪Jの内周面に環状に配設され、ガスケット5の側面を支持して軸心方向の移動を防止する。
【0030】
この場合、支持部材6の単位スペーサ6Aのうち、鋼製継輪Jの管底部に配設される単位スペーサ6Aには、図5に示すように、環状フレーム2に設けた左右の車輪ベース7の各車輪7aに対応するよう間隔をあけて一対の渡し板62が配置されている。車輪ベース7の左右車輪7a,7aが渡し板62,62上を渡るので、試験装置1を対向する管体P,P間にわたって渡し板62を経て円滑に移動させることができる。
【0031】
次に、このように構成された試験装置1を用いて鋼製継輪Jと管体Pとの接合部の水密性能を試験する場合について説明する。
【0032】
ここで、対向する管体P,Pは、それらの外周面にわたって鋼製継輪Jを嵌め込んで接合するとともに、鋼製継輪Jの内周面と各管体P,Pの外周面との間にはシール材Sが配設され、鋼製継輪Jと各管体P,Pとの間が密封されている(図4参照)。
【0033】
試験対象の鋼製継輪Jと管体Pとの接合部に近接するマンホールを通して、環状フレーム2のセグメント2A、複数の押さえ部材3、車輪ベース7、連結アーム71、シール部材4、ガスケット5、支持部材6の単位スペーサ6Aなどを管路内に運び込む。そして、管路内において、環状フレーム2のうちの下方に配置されるセグメント2Aに車輪ベース7をボルトナットを介して連結するとともに、左右の車輪ベース7にわたって前後の連結アーム71をボルトナットを介して連結し、管路内を走行できるように組み立てる。
【0034】
この状態で、管路内を走行して下方のセグメント2Aを鋼製継輪Jと管体Pとの接合部の水密性能を試験する位置近傍まで搬送する。合わせて、他のセグメント2Aや複数の押さえ部材3などを図示しない台車を利用して試験位置近傍まで搬送するとともに、詳細には図示しないが、タンクおよびハンドポンプを配置したポンプ台車および試験に必要な水も複数個のプラスチック製タンクを利用して試験位置近傍まで搬送する。
【0035】
試験位置近傍に到達したならば、下方のセグメント2Aに順次セグメント2Aをボルトナットを介して連結し、環状フレーム2を形成する。次いで、環状フレーム2における各セグメント2Aの外面板21に形成されたガイド穴21aに押さえ部材3の一対のガイドロッド35を挿通し、複数の押さえ部材3を環状フレーム2の周方向に順に取り付ける。次いで、複数の押さえ部材3のシール保持材32にわたってシール部材4を巻き回して装着する。
【0036】
この場合、環状フレーム2にねじ結合されたボルト23は、その外面板21からの突出量は小さく設定され、その先端に押圧部34が突き当てられる押さえ部材3は、縮径位置に支持されることから、シール部材4を押さえ部材3のシール保持材32にわたって容易に巻き回すことができる。
【0037】
一方、試験対象となる鋼製継輪Jと一方の管体P1との接合部に対応して、一方の管体P1の端面近傍の鋼製継輪Jの内周面にガスケット5を配設する。次いで、ガスケット5と他方の管体P2の端面間において、支持部材6の単位スペーサ6Aを鋼製継輪Jの管底部に配置し、この単位スペーサ6Aを基準として順に周方向に単位スペーサ6Aをボルトナットを介して連結し、環状に形成して支持部材6を組み立てる。この際、単位スペーサ6Aを順に連結して支持部材6を形成する過程において、単位スペーサ6Aの周壁からボルトナットを介して支持板61を突出させ、他方の管体P2の端面に突き当て、支持板61の突出長さを調整することにより、ガスケット5と一方の管体P1の端面間の間隔が設定された間隔となるようにガスケット5の側面を支持する。
【0038】
次いで、試験装置1を試験位置まで若干移動させて車輪7aを車止めした後、環状フレーム2に設けられたボルト23をねじ込んで外面板21から突出させ、対応する各押さえ部材3の押圧部34に押し当てて、シール部材4の接触部4aが一方の管体P1の内周面側端縁部とガスケット5の内周面とに接触するように、外方に向けて押し出す。同様に、複数の押さえ部材3について、180度対向する押さえ部材3毎にほぼ均等に順に押し出し、全ての押さえ部材3を押し出すことにより、シール部材4の接触部4aを一方の管体P1の内周面側端縁部とガスケット5の内周面にほぼ均等に接触させて圧縮変形させ、一方の管体P1の内周面とガスケット5の内周面とを密閉する。
【0039】
この後、下方の押さえ部材3に設けられた図示しない注水口とハンドポンプの吐出口を配管接続し、ハンドポンプを操作してタンク内の水を加圧して、鋼製継輪J、一方の管体P1、ガスケット5およびシール部材4によって区画された環状の空間に供給する。加圧水を供給することで環状の空間に加圧水が充満すれば、上方の押さえ部材3に設けられた図示しない空気抜き穴から加圧水が漏出し、加圧水が全周にわたって満たされたことを確認できる。この後、空気抜き穴を閉鎖してさらにハンドポンプを操作し、設定圧力に達するまで加圧水を供給する。加圧水の圧力は、ハンドポンプの吐出口に接続された配管に設けた圧力計によって把握することができる。
【0040】
鋼製継輪Jと一方の管体P1との接合部の水密性能の良否は、設定圧力まで加圧水を供給した後、設定時間経過しても圧力降下が生じなければ十分な水密性能を有していると判断できる。また、接合部を外部観察することができるならば、一方の管体P1の外周面へへの漏水の有無によっても確認することができる。
【0041】
このようにして、鋼製継輪Jと一方の管体P1との接合部の水密性能を試験したならば、注水口を通して水をタンク内に回収した後、ボルト23を緩めて、押さえ部材3によるシール部材4の一方の管体P1の内周面およびガスケット5の内周面に対する押圧を解除するとともに、押さえ部材3を縮径位置に移動させた後、試験装置1を試験位置から若干移動させる。次いで、隣接する単位スペーサ6Aの間隔を狭めて全体を管体Pの内径よりも縮径させた後、ガスケット5を他方の管体P2の端面に接近するように移動させる。そして、支持部材6を管路内において、前後を入れ換えるように180度回転させた後、隣接する単位スペーサ6Aの間隔を広げて拡径させ、全体を鋼製継輪Jの内周面に接触させる。さらに、ガスケット5を支持部材6の支持板61が設けられた周壁と対向する側の周壁に沿わせて、他方の管体P1の端面との間隔を設定間隔に調整する。
【0042】
この後、ボルト23を締め付けて、押さえ部材3を介してシール部材4の接触部4aを他方の管体P2の内周面側端縁部およびガスケット5の内周面に押し当てたならば、前述したように、注水口を通して加圧水を鋼製継輪J、他方の管体P2、ガスケット5およびシール部材4によって区画された環状の空間に供給し、鋼製継輪Jと他方の管体P2との接合部の水密性能を試験する。
【0043】
このようにして、管体Pと鋼製継輪Jとの接合部の水密性能の試験を終了したならば、次の試験位置まで搬送し、再度試験を実行すればよい。
【0044】
この結果、管体Pの管径が大きくなり、管体Pの端面間の間隔が大きくなっても、ガスケット5を試験対象の管体Pの端面に設定間隔をおいて鋼製継輪Jの内周面に配設することで、試験装置1を大きくすることなく常に一定間隔で試験することが可能となることから、管路内において、試験装置1を搬送する際、これまでと同様に管路の曲線部を経て搬送することができる。また、試験に要する水量も管体の端面間の間隔に関係なく一定となり、試験位置まで大量の水を運ぶ必要もなく、試験時間が長くなることもない。
【0045】
なお、前述した実施形態においては、複数の単位スペーサ6Aを連結して形成された環状の支持部材6を利用してガスケット5の軸方向の移動を防止したが、対向する管体Pの端面間の間隔によっては必ずしも支持部材は必要ではない他、管体Pの端面とガスケット5との間に板材や棒材などを周方向に間隔をおいて配設して支持部材としてもよい。
【0046】
また、前述した実施形態においては、ガスケット5を内層5A、外層5Bからなる二層構造を例示したが、硬度の大きな中間層をそれよりも硬度が小さな同一硬度の内外挾持層で挟み込む三層構造であってもかまわない。
【0047】
さらに、支持部材6を構成する単位スペーサ6A,6Aをボルトナットを介して連結する場合を例示したが、図7に示すような連結治具を採用することもできる。
【0048】
さらにまた、加圧水を供給して接合部の水密性能を試験する場合を説明したが、加圧流体として圧縮空気を利用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 試験装置
2 環状フレーム
2A セグメント
3 押さえ部材
4 シール部材
4a 接触部
5 ガスケット
5A 内層
5B 外層
6 支持部材
6A 単位スペーサ
7 車輪ベース
P 管体
J 鋼製継輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する管体の外周面側端縁部にわたって鋼製継輪が接合された状態で管体と鋼製継輪との水密性能を試験する装置において、環状フレームと、弧状の周面を有して環状フレームに対してそれぞれ半径方向に進退自在な複数の押さえ部材と、複数の押さえ部材にわたって装着された無端状のシール部材と、一方の管体の端面から設定間隔をおいて鋼製継輪の内周面に配設された無端状のガスケットとからなり、一方の管体の内周面側端縁部とガスケットの内周面とにわたってシール部材が押さえ部材を介して押圧され、鋼製継輪、一方の管体、ガスケットおよびシール部材によって区画された環状の空間に加圧流体を供給して鋼製継輪と一方の管体との接合部の水密性能を試験することを特徴とする水密性能試験装置。
【請求項2】
請求項1記載の水密性能試験装置において、前記ガスケットと他方の管体の端面との間に支持部材が配設されることを特徴とする水密性能試験装置。
【請求項3】
請求項1記載の水密性能試験装置において、前記ガスケットが内外二層から形成され、外層の硬度が内層の硬度よりも小さいことを特徴とする水密性能試験装置。
【請求項4】
請求項1記載の水密性能試験装置において、前記ガスケットが中間層を内外の挾持層が挟む三層から形成され、両挾持層の硬度が中間層の硬度よりも小さいことを特徴とする水密性能試験装置。
【請求項5】
対向する管体の外周面側端縁部にわたって鋼製継輪が接合された状態で管体と鋼製継輪との水密性能を試験する方法において、一方の管体の端面から設定間隔をおいてガスケットを鋼製継輪の内周面に配設するとともに、一方の管体の内周面側端縁部とガスケットの内周面との間をシール部材を介して密封し、鋼製継輪、一方の管体、ガスケットおよびシール部材によって区画された環状の空間にシール部材を通して加圧流体を供給し、鋼製継輪と一方の管体との接合部の水密性能を試験することを特徴とする水密性能試験方法。
【請求項6】
対向する管体の外周面側端縁部にわたって鋼製継輪が接合された状態で管体と鋼製継輪との水密性能を試験する方法において、一方の管体の端面から設定間隔をおいてガスケットを鋼製継輪の内周面に配設するとともに、一方の管体の内周面側端縁部とガスケットの内周面との間をシール部材を介して密封し、鋼製継輪、一方の管体、ガスケットおよびシール部材によって区画された環状の空間にシール部材を通して加圧流体を供給し、鋼製継輪と一方の管体との接合部の水密性能を試験し、その後、ガスケットを他方の管体の端面から設定間隔をおいて鋼製継輪の内周面に配設するとともに、他方の管体の内周面側端縁部とガスケットの内周面との間をシール部材を介して密封し、鋼製継輪、他方の管体、ガスケットおよびシール部材によって区画された環状の空間にシール部材を通して加圧流体を供給し、鋼製継輪と他方の管体との接合部の水密性能を試験することを特徴とする水密性能試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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