説明

水底トンネル

【課題】 海底や河川下の地盤において、被覆土の薄いトンネルを構築し、これにより、地上出口までの陸上部トンネルの距離を短縮することができる水底トンネルを提供すること。
【解決手段】 河川又は海等の水底下の土被りの浅い地盤中に構築するトンネルにおいて、予め該トンネルの底下にガイド管1を設置しておいて、該ガイド管1をガイドにしてトンネルを構築する。このように、予めガイド管1を設けておいたその上を函体2がスライドしてトンネルを構築していくので、シールドトンネルと同様に航路など阻害せずに施工でき、また、沈埋函と同様に土被りを薄くできるので、トンネル延長が短くてすみ工事費が安いという、航路阻害のないシールドトンネルと土被りの浅いトンネル延長の短い沈埋函の利点を併せ持った水底トンネルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川又は海等の水底下の地盤中に構築するトンネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、河川又は海等の水底下の地盤中に構築するトンネルでは、沈埋トンネルとシールドトンネルとが実施されている。
【0003】
例えば、臨海地域において海底にトンネルを構築する場合、地上の道路や鉄道にアクセスするために、陸上部にも所定長のトンネルを構築する必要がある。
また、道路や鉄道のトンネルには縦断勾配に制限があり、自動車用トンネルでは縦断勾配は概ね3.5%であり、鉄道用トンネルでは、この10分の1以下となっている。
したがって、海底トンネルでは、海底区間の被覆土の厚さが少ないほど、陸上部のトンネルの長さを短くすることができ、逆に、海底区間の被覆土の厚さが大きいほど、陸上部のトンネルの長さは長くなる。例えば、海底の自動車用トンネルの接岸地点の被覆土が10mとすれば、地上出口までの陸上部トンネルは285mとなる。
【0004】
また、臨海地域の都市では、海岸に接近して都市施設が設けられていることが多く、陸上部のトンネルが長くなれば、その地上出口も都市中心部に近づくことになって、都市機能上や土地の有効利用上において好ましくない。
したがって、海底トンネルでは、被覆土の厚さを薄くすることが望まれている。
【0005】
〔発明の背景〕
上記、沈埋トンネルは、地上のドライドックにて壁の厚さが数メートルの沈埋函を製作し、この沈埋函を海上に浮かべて船で曳航し、予め海底の所定位置に形成された溝に、沈埋函を一函づつ沈めて、海底で沈埋函どうしを連結し、更に沈埋函のうえに砂礫等を被覆して構築するトンネルである。かような沈埋トンネルにおいて、沈埋函の壁が数メートルの厚さであるため、沈埋函重量は浮力よりも若干下回る程度になり、海上に浮かべて曳航することが可能であるが、海底に沈設した後は、概ね2m程度の厚さの覆土を形成すれば、この覆土重量によって沈埋函の浮上は防止することができる。したがって、沈埋トンネルでは、被覆土の厚さを薄くするという上記要求が達成できる。
【0006】
しかしながら、従来の沈埋トンネルでは、海底に溝を掘削したり、この溝に沈設した沈埋函を被覆するために土砂を投入する際、海水を汚濁してしまい、漁業資源に悪影響を与えるという欠点が有る。また沈埋函を海上で曳航したり、沈設する際に、他の船舶の航行を阻害することもある。したがって、沈埋トンネルの施工に着手するまでに、漁業補償問題や、船舶航行安全確保のための航路切り替え等の諸問題を解決しなければならないという欠点が有る。
【0007】
一方、シールドトンネルでは、上述したような漁業補償問題や、航路切り替え問題等は生じないものの、陸上部に構築するトンネルの長さが長くなるという欠点が生じる。
すなわち、上記沈埋函では壁の厚さを数メートルに形成したのに対し、シールドトンネルを構成するセグメントでは搬入や組み立てなどのため可能な限り厚さを薄く形成している。例えば、直径14m程度の自動車用トンネルでは、概ね60cm程度の厚さのセグメントを使用し、この場合、トンネルには延長方向に単位メートル当たり150トンの浮力が作用するが、セグメントリングの単位メートル当たりの重量は、浮力の半分の75トン程度であるため、被覆土の荷重によって、シールドトンネルの浮上を防止する必要がある。この被覆土の厚さは、地質により異なるが、概ねセグメントリングの直径の2分の1以上に形成する必要がある。また、海底部では、被覆土がセグメントリングの直径の2分の1程度の厚さであっても、海底と陸上面とでは護岸などにより段差が有るため、海底トンネルの接岸地点では土被りが厚くなるため、地上出口までの陸上部トンネルは長距離になってしまうという欠点がある。
【0008】
〔従来の技術〕
これらを改良する目的で、航路を阻害しない沈埋トンネルが提案されている。
例えば特許文献1では、水底トンネルの滑り支承の支承台が提案され、また、特許文献2では、沈埋函の沈設装置が提案されている。
【0009】
【特許文献1】特開平11−336105号公報
【特許文献2】特開平10−82062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の水底トンネルの滑り支承の支承台では、予め水底に適宜な間隔をもって滑り支承台を構築しておき、その上に函体を押出していくので縦断線形など施工精度は高いが、滑り支承台の構築時は鋼矢板で二重締切りしてドライで施工するので航路を阻害する。
また、沈埋函の沈設装置では、沈埋函の両側面下面に取り付けた無限軌道の駆動装置で、沈埋函を沈降した後に駆動装置により自走して既設沈埋函にドッキングできる沈設装置であり航路を阻害しないが、水底が軟弱な地盤では縦断線形など施工精度に問題がある。
【0011】
そこで、本発明は前記問題点を解決しようとしたものであり、その目的は、海底や河川下の地盤において、被覆土の薄いトンネルを構築し、これにより、地上出口までの陸上部トンネルの距離を短縮することができる水底トンネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る水底トンネルは、河川又は海等の水底下の土被りの浅い地盤中に構築するトンネルにおいて、予め該トンネルの底下にガイド管を設置しておいて、該ガイド管をガイドにしてトンネルを構築することを特徴とする特徴としている。
【0013】
このような水底トンネルによれば、土被りが浅い地盤中にトンネルを構築する技術手段として、水底が軟弱地盤でも、縦断線形など施工精度の高いトンネルの構築が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る水底トンネルによれば、予めガイド管を設けておいたその上を函体がスライドしてトンネルを構築していくので、シールドトンネルと同様に航路など阻害せずに施工でき、また、沈埋函と同様に土被りを薄くできるので、トンネル延長が短くてすみ工事費が安いという、航路阻害のないシールドトンネルと土被りの浅いトンネル延長の短い沈埋函の利点を併せ持った水底トンネルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、ここでは、水底トンネルの場合について説明するが、これに限られるものではなく、陸上下の軟弱地盤中にトンネルを構築する場合その他の場合でも、以下の説明が妥当する。
ここで、トンネルの構築断面は、函体を矩形としているが、栗の実型や円形など設計条件に応じて選択できる。
また、掘進機は牽引ロープで牽引しているが、ガイド管をレールとして掘進機を自走させてもよく、函体は掘進機とともに牽引してもよく、陸上部で推進装置により函体を推進してもよい。
また、ガイド管は、掘削機や函体の底下両側近傍に2箇所としているが設置箇所数は地質状況などを鑑みて任意に設定できる。更に、ガイド管は、シールド工法や推進工法などで構築するが、断面形状は円形や矩形など設計条件に応じて採用することができ、状況に応じて内部を空間として、電力や通信ケーブルなどライフラインとして利用してもよい。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態に係る水底トンネルを示す斜視図、図2は同横断面図、図3は同縦断面図である。
【0017】
本実施の形態において、水底トンネルは、河底乃至は海底にトンネルを構築する目的に用いられるものとして構成されている。
【0018】
そして、この水底トンネルは、図1、図2、図3に示すように、ガイド管1と、函体2と、掘削機3として主要構成されている。
【0019】
以下、これらの構成についてさらに詳細に説明する。
【0020】
(1)ガイド管1
ガイド管1は、函体2の底下両側に予め設置しておく。函体2より小断面のガイド管1は、シールド工法で築造して陸上部から水域を横断して陸上部に至る水底トンネルの延長直下に位置している。また、必要に応じてガイド管内に、PC鋼線とコンクリートで固めてガイド管の強度を増すこともできる。
【0021】
(2)函体2
函体2は、矩形の浮力に対抗できる重量を要した函体である。陸上部から掘進機3に後続して、函体を連続させてトンネルを構築する。
【0022】
(3)掘削機3
掘削機3は、函体2を後続しており、掘進機前面で切羽掘削しながら、牽引ロープ5で牽引されて掘進する。掘進して後方に函体挿入空間ができたなら函体2の最後尾の陸上部で函体2を挿入して掘進する。掘進機3の底部両側部には、跨座受具4があり、掘進機3がガイド管1上をスライドして掘進することにより、振れを止めるとともに、ガイド管1により、底質が軟弱地盤でも縦断線形を正確に保つことができる。
【0023】
本発明の実施の形態として、水底トンネルを築造するには以下のようにする。
(1)水底トンネルの縦断に、陸上部の立抗から(図示しない)シールドトンネルを2本築造して、ガイド管1と成し、必要に応じてシールドトンネル内部にPC鋼線とコンクリートとでガイド管1を補強する。
(2)陸上部の斜路から(図示しない)掘削機3を牽引ロープ5で掘進させつつ、函体2を掘削機3と同調させつつ、斜路に設けた(図示しない)推進装置で函体2を押し出す。
(3)掘進機3の下部両側部には跨座受具4がガイド管1に跨るように取り付けられているので、ガイド管1上を正確にスライドしていくことが可能となる。また、底質地質によってはガイド管1を補強することにより函体2の不等沈下など防ぎ縦断線形を正確にキープすることが可能となる。図2に示すように、跨座受具4を函体2の底部両側部に適宜間隔で取り付けることにより、函体2の横振れを防止する効果がある。
(4)図3に示すように、掘削機3の牽引と函体2の陸上部斜路からの推進とで掘進機3が対岸の陸上部斜路のトンネル終端(図示しない)に至ったところで掘進機3を撤去して函体2による連続したトンネルの構築が完了する。
また、陸上部両岸から夫々掘進機を設けてトンネルの縦断線形の中ほどで、掘削機どうしをドッキングさせてトンネルをつくるれば工期が短縮されることと、相互に牽引反力がとれる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る水底トンネルを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る水底トンネルの横断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る水底トンネルの縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ガイド管
2 函体
3 掘削機
4 跨座受具
5 牽引ロープ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川又は海等の水底下の土被りの浅い地盤中に構築するトンネルにおいて、
予め該トンネルの底下にガイド管を設置しておいて、
該ガイド管をガイドにしてトンネルを構築することを特徴とする
水底トンネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−138636(P2007−138636A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336410(P2005−336410)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(301037648)有限会社蜻蛉工房社 (3)
【出願人】(390008523)
【Fターム(参考)】