説明

水性オルト−フタルアルデヒド溶液の製造方法

【課題】 水性オルト−フタルアルデヒド溶液の製造方法を提供する。
【解決手段】 o−フタルアルデヒドのアセタールを水に入れ、次いで酸の添加によってpH値を7未満にし、その後10℃〜90℃の温度下で前記アセタールを適切なアルコールの分離によってo−フタルアルデヒドに変える水性オルト−フタルアルデヒド溶液の製造方法、およびこの溶液を製造するためのOPAアセタールの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、o−フタルアルデヒド−アセタールからの水性オルト−フタルアルデヒド溶液の製造方法に関する。
【0002】
オルト−フタルアルデヒド(OPA)の水溶液は、殺菌剤分野で使用されている。特に本溶液は、内視鏡の効果の高い殺菌分野におけるほか、医療機器の殺菌に使用される。
【背景技術】
【0003】
従来、OPAの水溶液は、OPAの適切な量を水に溶解することによって製造された。
【0004】
OPAは固体であり、結晶状で存在し、この形状においては、有毒であり皮膚刺激が生じるためいくつかの欠点がある。その結果として、OPAの取扱いは困難になり、水性OPA溶液の調製に際して多大な安全対策が必要とされている。さらに、OPAはロックする傾向があり、それによって第一に装填に際して問題が生じ、第二に手間のかかる溶解過程が必要である。
【0005】
OPAそのものは、例えば、特許文献1に記載されており、OPA用の貯蔵化合物として使用される液体OPAアセタールの鹸化によって製造される。鹸化は上記文献により、HCl、HSO、HPOなど無機酸、または酢酸、ギ酸、p−トルオールスルホン酸、もしくはメタンスルホン酸などの有機酸によってpH値0〜7での加水分解によって行われる。
【0006】
同じく殺菌剤分野で使用される水性OPAグルタールアルデヒド溶液を製造するためのOPA、もしくはOPA−アセタールの使用が、例えば、特許文献2により周知であり、それによれば、水性OPAグルタールアルデヒド溶液は、水性グルタールアルデヒド溶液中OPAアセタールの分解、および分離アルコールの除去によって得られる。
【特許文献1】欧州特許第0 839 789号明細書
【特許文献2】欧州特許第0 843 966号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、結晶性OPAの使用の欠点を回避する水性OPA溶液を製造することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の対象は、o−フタルアルデヒドのアセタールを水に入れ、次いで酸の添加によってpH値を7未満にし、その後10℃〜90℃の温度下で前記アセタールを適切なアルコールの分離によってo−フタルアルデヒドに変えることを特徴とする、水性オルト−フタルアルデヒド溶液の製造である。
【0009】
本発明による方法においては、OPAアセタールを水に入れ、もしくは乳化し、かつ加水分解によってこれを溶解する。OPAアセタールとしては、アルキル部に1〜6個の炭素原子を有するジアルキルアセタール(開環アセタール)またはジアルコキシフタラン(OPAの環状アセタール)が考慮の対象になる。好ましくは、ジアルコキシフタランまたはジアルキルアセタールはアルキル部に1〜4個の炭素原子を有し、特に好ましくは、アルキル部に1〜2個の炭素原子を有する。
【0010】
本発明によれば、酸性化後に0.025〜9重量%の水性OPA溶液が保持されるほどの量のアセタールを水に入れて溶解する。好ましくは、0.05〜5重量%の溶液、特に好ましくは、0.5〜2重量%の溶液である。
【0011】
その際に、1H−NMRによる水溶液中の平衡は、OPAでは25%、OPA半アセタールでは75%であることに注意すべきである。
【0012】
より高い濃度の溶液を得るためには、例えば、ポリエチレングリコールなどの
可溶化剤、または例えば、N−メチルピロリドン、アセトンなどのケトン類、グルタールアルデヒドなどのアルデヒドからなる群からの水と混合可能な溶媒を本溶液に添加し、それによって50重量%までのOPA濃度を得ることができる。
【0013】
アセタールをOPAに変えるためには、本水溶液に酸を添加し、結果としてpH値を7未満に調節する。
【0014】
この場合、酸としては、例えば、硫酸、HClなどの無機酸、または例えば、ギ酸、酢酸、グリオキシル酸などの有機酸が考慮の対象となる。好ましくは、硫酸、グリオキシル酸、またはギ酸が使用される。
【0015】
pH値は7未満であること、好ましくは、5まで、特に好ましくは、3までのpH値である。
【0016】
分解は、10〜90℃、好ましくは、20〜50℃の温度下で行われる。好ましくは、本溶液を同時に攪拌する。
【0017】
アセタールを水に入れると、最初は2相の乳濁液が存在し、pH値を7未満に調節した後に、この乳濁液を均質溶液に変換する。
【0018】
本発明による方法の利点は、酸性化によって分離するアルコールが形成されたOPAの溶解を促進するため、OPA自体の使用と比べ、より高い濃度の溶液(5%に対して9%)が製造されうることである。
【0019】
場合により分解後、得られた水性OPA溶液を中和し、もしくはpH値を4〜10、好ましくは、8までに、例えば、NaHCO、NaOH、KOHなどの無機塩基の添加によって調節することができる。
【0020】
さらに、必要に応じて、分離するアルコールを留去によって溶液から除去することができるが、それによって溶解度は再び5%に低下する。
【0021】
さらに、本発明により製造された溶液には、すでに言及した溶媒のほかにも通常の補助剤、例えば、安定剤、抗酸化剤、香料、色素等を添加することができる。
【0022】
本発明により製造された水性OPA溶液は、特に殺菌剤分野の使用に適しており、第一にOPA用の最終の製造ステップがアセタールの直接添加によって省略され、それによって費用が節約されること、そして第二に実質的な取扱い上の利点がOPAアセタールの使用によって得られることを特に特徴とする。
【0023】
本発明による水性OPA溶液の製造は、自動化滅菌装置でも実行されうる。
【0024】
本発明の別の対象は、殺菌剤分野で使用される水性OPA溶液の製造用の抽出物としてのOPAアセタールの使用である。
【実施例】
【0025】
実施例1
異なる濃度のOPA溶液をOPAジメチルアセタール−水−酸−混合物から製造した。
【0026】
反応条件(使用した酸、pH値、温度、重量%)および澄んだ均質の溶液が得られる(完全分解)までの時間は、以下の表から明らかである。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性オルト−フタルアルデヒド溶液の製造方法において、o−フタルアルデヒドのアセタールを水に入れ、次いで酸の添加によってpH値を7未満にし、その後10℃〜90℃の温度下で前記アセタールを適切なアルコールの分離によってo−フタルアルデヒドに変えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記o−フタルアルデヒドのアセタールとして、アルキル部に炭素原子1〜6個を有するジアルキルアセタールまたはジアルコキシフタランを使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸として硫酸もしくはHClからなる群からの無機酸、またはギ酸、酢酸、もしくはグリオキシル酸からなる群からの有機酸を使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記pH値を3までの値に調節することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
0.025〜9重量%のo−フタルアルデヒド溶液を製造することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
場合により、ポリエチレングリコール、N−メチルピロリドン、アセトン、またはグルタールアルデヒドからなる群からの溶媒を前記溶液に添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
場合により、別の補助剤を前記溶液に添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
場合により、塩基の添加による分解後に前記溶液のpH値を4〜10に設定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記製造が自動化滅菌装置で行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
殺菌剤分野で使用される水性OPA溶液の製造用の抽出物としてのOPAアセタールの使用。

【公開番号】特開2006−241160(P2006−241160A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−56864(P2006−56864)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(505326209)ディーエスエム ファイン ケミカルズ オーストリア エヌエフジー ゲーエムベーハー アンド コーポレイション カーゲー (13)
【Fターム(参考)】