説明

水性ゲル芳香剤

【課題】香りの持続性に優れた水性ゲル芳香剤及び据え置き型芳香剤を提供する。
【解決手段】(a)アミンオキサイド、(b)香料、(c)アクリルアミド及びアクリル酸又はその塩を構成単量体とする共重合体を含む架橋型吸水性樹脂、及び水を含み、(a)と(b)の重量比が(a)/(b)=0.1/1〜4/1である水性ゲル芳香剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ゲル芳香剤及び据え置き型芳香剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ゲルを用いた芳香剤(以下、水性ゲル芳香剤ということもある)は、容器から液がこぼれる心配がないことや意匠性に優れるという点から据え置き型の芳香剤などに幅広く取り入れられている。特に、粉末状や球状にした吸水性樹脂に香料などの芳香成分を分散した溶液を吸収させて調製する水性ゲル芳香剤は、ゲルの表面積が大きいため、芳香成分の揮発が促進され、広い空間においても十分に強い香りを充満させることができるということで非常に優れた形態である。
【0003】
この時、香料などの芳香成分を分散した溶液を吸収する粉末状や球状の吸水性樹脂は、親水性ポリマーを架橋して調製された架橋型吸水性樹脂である。従来、水性ゲル芳香剤に使用される架橋型吸水性樹脂としては、ノニオン型ポリオキシアルキレンオキシドを含む架橋型吸水性樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体を含む架橋型吸水性樹脂、ポリアクリル酸(塩)を含む架橋型吸水性樹脂などがあり、これらの架橋型吸水性樹脂は非常に安価で汎用性に優れるため幅広く使用されている。しかしながら、これらの吸水性樹脂を使用して調製した水性ゲル芳香剤は、温度や熱に対する耐性が弱いためゲルが壊れたり、変色したり、異臭が発生したり、また、香料などの芳香成分を分散した溶液を十分に吸収することができない場合があるため、水性ゲルから液ダレが発生するなど、水性ゲル芳香剤の芳香剤としての機能や意匠性を十分発揮できず、満足できるものではなかった。
【0004】
そこで、上記架橋型吸水性樹脂に代えて、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体を含む架橋型吸水性樹脂を使用した水性ゲル芳香剤の検討が行われている。アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体を含む架橋型吸水性樹脂を使用した水性ゲル芳香剤は、それまで汎用的に使われていた架橋型吸水性樹脂に比べて温度や熱に対する耐性が優れることがわかっている。さらに、アクリルアミド−アクリル酸共重合体(塩)を含む架橋型吸水性樹脂を用いた水性ゲルの研究としては水性ゲルの意匠性や樹脂の吸収性などについての検討が進められている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−270100号公報
【特許文献2】特開2007−291145号公報
【特許文献3】特開2007−291146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
芳香剤の分野において最も重要な基本性能は香りである。近年、香りについては、質はもちろんのこと、香りの持続性についても高い性能が求められている。しかしながら、上記特許文献1〜3は、いずれもアクリルアミド−アクリル酸共重合体(塩)を含む架橋型吸水性樹脂を用いた水性ゲルの意匠性や吸水性樹脂の吸収性に関することであり、芳香剤において重要な基本性能の香りに関する検討については全く示されていない。特許文献1〜3に記載されているアクリルアミド−アクリル酸共重合体(塩)を含む架橋型吸水性樹脂は、熱や温度に耐性があることから、水性ゲル芳香剤に使用するのに好ましい樹脂であるが、香りの持続性は低く更なる検討が望まれる。
【0007】
本発明の課題は、香りの持続性に優れた水性ゲル芳香剤及び据え置き型芳香剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)アミンオキサイド〔以下、(a)成分という〕、(b)香料〔以下、(b)成分という〕、(c)アクリルアミド及びアクリル酸又はその塩を構成単量体とする共重合体を含む架橋型吸水性樹脂〔以下、(c)成分という〕、及び水を含み、(a)と(b)の重量比が(a)/(b)=0.1/1〜4/1である水性ゲル芳香剤に関する。
【0009】
また、本発明は、上記本発明の水性ゲル芳香剤を含んで構成される、据え置き型芳香剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、香りの持続性に優れた水性ゲル芳香剤及び据え置き型芳香剤が提供される。本発明の水性ゲル芳香剤及び据え置き型芳香剤は製造も容易である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水性ゲル芳香剤は、(a)成分、(b)成分及び水を含む液状混合物を(c)成分に吸収させて得ることができる。本発明により、(a)成分、(b)成分、及び水を含み、(a)成分と(b)成分の重量比が(a)/(b)=0.1/1〜4/1である液状混合物と、(c)成分とを含有する水性ゲル芳香剤が提供される。また、本発明により、(a)成分、(b)成分、及び水を含み、(a)成分と(b)成分の重量比が(a)/(b)=0.1/1〜4/1である液状混合物(以下、本発明に係る液状混合物という場合もある)を、(c)成分と混合してなる水性ゲル芳香剤が提供される。
【0012】
〔(a)成分〕
本発明の(a)成分は、アミンオキサイドであり、香料を分散させる成分として機能するものであれば特に限定されるものではなく単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
(a)成分の具体例としては、下記一般式(a1)〜(a4)で表させるアミンオキサイドが挙げられ、一般式(a1)で表されるアミンオキサイドが香りの持続性の観点からより好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R1は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルキル基又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルケニル基を示し、kは2〜5の整数を示す。)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルキル基又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルケニル基を示す。)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、R3は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルキル基又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルケニル基を示す。l、mは、l+m=2〜10を満たす整数である。)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、R4は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルキル基又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルケニル基を示す。nは1〜10の整数を表す。)
【0022】
本発明の水性ゲル芳香剤を本発明に係る液状混合物を用いて製造する場合、(a)成分の含有量は、本発明に係る液状混合物中、0.1〜10重量%が好ましく、0.3〜8重量%がより好ましく、0.5〜6重量%が更に好ましい。(a)成分の含有量がこの範囲であると、水性ゲル芳香剤の初期の香り立ちが強すぎずも弱すぎずもなく、適度となる。
【0023】
〔(b)成分〕
本発明の(b)成分は、香料である。使用できる香料は、特に限定されるものではないが、水への分散、水性ゲル芳香剤の美観や香り立ちの観点から、logP=1〜4の香料化合物が50重量%以上、更に55重量%以上、より更に60重量%以上含まれる香料が好ましい。
【0024】
ここで、「logP値」とは、化合物の1−オクタノール/水の分配係数の対数値であり、1−オクタノールと水の2液相の溶媒系に化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡において、それぞれの溶媒中での溶質の平衡濃度の比を意味し、底10に対する対数「logP」の形で一般的に示される。すなわち、logP値は親油性(疎水性)の指標であり、この値が大きいほど疎水的であり、値が小さいほど親水的である。
【0025】
logP値については、例えば、Daylight Chemical Information Systems, Inc.(Daylight CIS)等から入手し得るデータベースに掲載されているlogP値を実測値として参照することができる。また、実測値がない場合には、プログラム"CLOGP"(Daylight CIS)等で計算することができ、中でもプログラム"CLOGP"により計算することが、信頼性も高く好適である。
【0026】
プログラム"CLOGP"においては、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される「計算logP(ClogP)」の値が、logPの実測値がある場合にはそれと共に出力される。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(A.Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C.Hansch, P.G.Sammens, J.B.Taylor and C.A.Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogP値は現在最も一般的で信頼できる推定値であるため、化合物の選択に際してlogPの実測値がない場合に、ClogP値を代わりに用いることが好適である。本発明において
は、logPの実測値、又はプログラム"CLOGP"により計算したClogP値のいずれを用いてもよいが、実測値がある場合には実測値を用いることが好ましい。
【0027】
特に限定されるものではないが、ClogPが1〜4の香料の具体例としては、シス−3−ヘキセノール、リナロールオキサイド、酢酸ベンジル、酢酸シス−3−ヘキセニル、リナロール、ネロール、ゲラニオール、酢酸ヘキシル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、クマリン、ヘリオトロピン、フェニルエチルアルコール、バニリン、シンナミックアルコール、アニスアルコール、シンナミックアルデヒド、l−カルボン、アンスラニル酸メチル、安息香酸メチル、ベンゾフェノン、オイゲノール、プロピオン酸ベンジル、2−ベンチロキシグリコール酸アリル、ボルネオール、4-ターピネオール、1,8−シネオール、メチルイソオイゲノール、シトラール、エストラゴール、l−メントール、シトロネロール、シトロネラール、アネトール、カルバクロール、チモール、シクラメンアルデヒド、テトラヒドロリナロール、繃−ウンデカラクトン等が挙げられる。
【0028】
本発明の水性ゲル芳香剤を本発明に係る液状混合物を用いて製造する場合、(b)成分の含有量は、本発明に係る液状混合物中、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜8重量%がより好ましく、1.0〜5重量%が更に好ましい。
【0029】
(a)成分と(b)成分の重量比は、(a)成分/(b)成分=0.1/1〜4/1であり、0.3/1〜3.5/1が好ましく、0.5/1〜3/1が更に好ましい。0.1/1以上であると香りの持続性が良好であり、4/1以下であると初期の香りが適切となる。
【0030】
〔(c)成分〕
本発明の(c)成分は、アクリルアミド及びアクリル酸又はその塩を構成単量体とする共重合体〔以下、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体と表記する〕を含む架橋型吸水性樹脂であり、単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。(c)成分は、(a)成分、(b)成分及び水を含む液状混合物を吸収する吸収性担体である。
【0031】
アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体は、ブロック共重合体であっても、ランダム重合体でもよい。また、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体のアクリルアミドとアクリル酸(塩)の構成比率は特に制限されるものではないが、アクリルアミドとアクリル酸(塩)の重量比が、アクリルアミド/アクリル酸(塩)=0.1/1〜50/1であることが好ましく、0.5/1〜25/1がより好ましく、1/1〜15/1が更に好ましい。
【0032】
ここで、アクリル酸(塩)はアクリル酸及び/又はアクリル酸塩を意味する。アクリル酸塩としては、特に制限されるものではないが、アクリル酸金属塩が好ましく、アクリル酸ナトリウムが更に好ましい。
【0033】
なお、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体は、アクリルアミドとアクリル酸(塩)以外の単量体を構成単量体として含んでいてもよいが、構成単量体中、アクリルアミドとアクリル酸(塩)の合計は、50〜100モル%が好ましく、75〜100モル%が更に好ましい。
【0034】
アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体を含む(c)成分の製造方法は公知であり、特に制限されるものではないが、最終的に調製される水性ゲル芳香剤の意匠性の観点から逆相懸濁重合法によって得られる架橋型吸水性樹脂が好ましい。実質的に(c)成分は、アクリルアミド−アクリル酸共重合体からなるものであってもよい。
【0035】
(c)成分の吸水性は特に制限するものではないが、(c)成分1gに対して、イオン交換水の吸水量が50g〜300gが好ましく、75g〜250gがより好ましく、100g〜200gが更に好ましい。(c)成分のイオン交換水の吸水性が50g以上であれば水性ゲル芳香剤の意匠性が良好となり、また、300g以下であれば水性ゲル芳香剤の強度が十分になる。
【0036】
(c)成分としては、例えば、愛敬精密化学製のHisobead、ライオンケミカル製のAIRBZなどが挙げられる。
【0037】
〔(d)成分〕
本発明の水性ゲル芳香剤は、(d)成分として非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。(d)成分は、(b)成分を分散させる補助剤として機能するものであれば特に限定されるものではなく単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。(d)成分は、本発明に係る液状混合物中に配合して(c)成分と混合することができる。
【0038】
(d)成分としては、水性ゲル芳香剤の安定性の観点から、下記一般式(d1)〜(d3)で表される非イオン界面活性剤から成る群より選択される少なくとも1種の非イオン界面活性剤が好ましい。なかでも一般式(d1)で表される非イオン界面活性剤が、香料の分散性の観点から好ましく、一般式(d2)で表される非イオン界面活性剤が、香りの質の維持の観点から好ましい。
【0039】
【化5】

【0040】
(式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルキル基又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルケニル基を示し、pは3〜50の整数であり、qは0〜10の整数であり、p+q=3〜50を満たす。)
【0041】
【化6】

【0042】
(式中、R’は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルキル基又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルケニル基を示し、a1、b1、c1は、a1+b1+c1=1〜50を満たす整数である。)
【0043】
【化7】

【0044】
(式中、R’’は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルキル基又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルケニル基を示し、a2、b2、c2は、a2+b2+c2=1〜50を満たす整数である。)
【0045】
(d)成分のうち、一般式(d1)で表される非イオン性界面活性剤のRの炭素数は8〜22であり、(b)成分の分散のしやすさの観点から炭素数10〜20が好ましく、炭素数12〜18が更に好ましい。またpは3〜50の整数であり、架橋型吸水性樹脂の吸収性の観点から3〜40が好ましく、3〜30が更に好ましく、qは0〜10の整数であり、0〜8が好ましく、0〜5が更に好ましく、p+qは3〜50であり、3〜40が好ましく、3〜30が更に好ましい。なお、一般式(d1)中のエチレンオキシ基〔CH2CH2O〕とプロピレンオキシ基〔CH(CH3)CH2O〕はランダム付加でも、ブロック付加でも何れでもよい。
【0046】
(d)成分のうち、一般式(d2)及び(d3)で表される非イオン界面活性剤のR’及びR’’の炭素数はそれぞれ8〜22であり、(b)成分の分散のしやすさの観点から炭素数10〜20が好ましく、炭素数12〜18が更に好ましい。また、a1+b1+c1及びa2+b2+c2はそれぞれ1〜50であり、吸収性の観点から、3〜40が好ましく、3〜30が更に好ましい。
【0047】
本発明の水性ゲル芳香剤を本発明に係る液状混合物を用いて製造する場合、(d)成分の含有量は、吸水性樹脂の吸収性の観点から、本発明に係る液状混合物中、0.05〜10重量%、更に0.1〜8重量%、より更に0.3〜6重量%が好ましい。
【0048】
(a)成分と(d)成分の重量比は、(a)/(d)=0.1/1〜20/1が好ましく、0.5/1〜20/1がより好ましく、0.5/1〜15/1がより好ましく、0.5/1〜10/1がより好ましく、1/1〜10/1が更に好ましい。0.1/1以上であると香りの持続性が良好であり、20/1以下であると初期の香り立ちが適切となる。
【0049】
さらに、(d)成分のうち(d1)と(a)成分の重量比は、香料の分散性の観点から、(a)/(d1)=0.1/1〜20/1が好ましく、0.3/1〜15/1がより好ましく、0.5/1〜10/1が更に好ましい。
【0050】
また、(d)成分のうち(d2)と(a)成分の重量比は、香りの質の維持の観点から、(a)/(d2)=0.1/1〜10/1が好ましく、0.2/1〜9/1がより好ましく、0.3/1〜8/1が更に好ましい。
【0051】
〔その他の成分〕
本発明に係る液状混合物には、その他の成分として、据え置き型水性ゲル芳香剤等に一般的に添加される溶剤、油剤、硫酸ナトリウムやN,N,N−トリメチルグリシン等の塩、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤・抗菌剤、色素、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0052】
〔水性ゲル芳香剤及び据え置き型芳香剤〕
本発明の水性ゲル芳香剤は、上記本発明に係る液状混合物と、(c)成分とを混合してなるものが好ましい。液状混合物と(c)成分の混合比率は、(c)成分の吸水能にもよるが、液状混合物/(c)成分=100/1〜100/20、更に100/2〜100/10が好ましい。
【0053】
本発明の水性ゲル芳香剤は、上記本発明に係る液状混合物と、(c)成分とを混合して、(c)成分に液状混合物を吸収させることで得られる。
【0054】
水性ゲル芳香剤はそのまま芳香剤として使用することもできるが、水性ゲル芳香剤を含んで構成される据え置き型芳香剤とすることができる。例えば、自立可能な容器等に収容して据え置き型芳香剤とすることもできる。
【0055】
本発明において、上記水性ゲル芳香剤が収容される容器は、水性ゲル芳香剤を収容可能であって、開放部を有し、この開放部から水性ゲル芳香剤中の芳香・消臭成分〔(b)成分〕を揮散させ得るものであれば、その形状や構造に特に制限はなく、開放部が上部にあるものの他、側部など他部にあるものも使用可能である。
【0056】
上記容器としては、プラスチック、ガラス、金属などを用いることができるが、ゲル状成型物の収縮を目視できる、透明又は半透明な材質や、スリットや開口部から内部を視認できるものが好ましい。更には、従来から芳香・消臭剤に用いられているプラスチック容器、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの容器が好ましく使用される。
【0057】
更に、上記容器は、必要に応じて水性ゲル芳香剤の収縮(減り具合)をより明確に目視できるように容器内壁と水性ゲル芳香剤に対照的な色彩を施すこともできる。
【0058】
また、本発明では、上記水性ゲル芳香剤を詰め替え用簡易容器内に収容してもよい。この簡易容器内に収容された水性ゲル芳香剤においては、密閉状態で簡易容器内に収容され、例えば設置使用されている水性ゲル芳香剤が使用終点となった時点で、この簡易容器を開封し、簡易容器内に収容された水性ゲル芳香剤を設置用の別容器に移し替えて使用する
ことができる。
【0059】
この場合、水性ゲル芳香剤を収容する容器は、薄肉ボトルやパウチなどの詰め替え用簡易容器でもよい。薄肉ボトルには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの材質が好ましく、パウチには、PET、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなどや、これらプラスチックのアルミ積層、アルミ蒸着、シリカ蒸着などのフィルムが好ましい。
【0060】
上記水性ゲル芳香剤を容器内に収容、設置する際、組成物の設置量は特に限定されず、使用する場所や使用期間、容器形状などの特性に応じてその使用量を適宜選定することができ、また、同一容器に互いに異なる色調及び/又は香調を有する水性ゲル芳香剤を収容、設置してもよい。
【0061】
本発明の水性ゲル芳香剤は、使用により経時で水性ゲル芳香剤から水分や各種成分が揮散することでゲル状物が収縮し、この収縮が臨界に達した時の残査が初期重量(使用開始時の容器内の重量)の20%以下と少なく、従って、例えば容器外部から経時による組成物の収縮の状態を視認することによって、芳香消臭組成物の使用終点、交換時期を容易に判断することができる。
【0062】
本発明の水性ゲル芳香剤における香りの持続性が優れることに対する発現機構は全て解明されている訳ではないが、アミンオキサイドよって分散された香料を含む液状混合物をアクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体を含む吸水性樹脂に吸収させると、吸収される過程において、アミンオキサイドとアクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体が相互作用し、アミンオキサイドがアクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体に保持され、それにともなってアミンオキサイドによって分散された香料がアクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体に同時に保持されることによって、香料が水性ゲルの中心部から表層部まで比較的均一に分散された状態で保持されるものと考えられる。香料が水性ゲルの内部に比較的均一に分散された状態で保持されることで、香料は表層部から徐々に揮散され香料の揮散速度は比較的一定となり香りの持続性が優れていると推測される。アミンオキサイド以外で香料を分散させた液状混合物をアクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体を含む架橋型吸水性樹脂に吸収させてもこのような状態にはならないので、香りの持続性を満足する水性ゲル組成物は得ることはできないものと推測される。
【実施例】
【0063】
<水性ゲル芳香剤の調製方法>
表1、2の配合成分を用いて調製した表1、2の液状混合物3.0gと吸水性樹脂0.15gとを、広口規格ビン(PS−No.6)に入れフタを閉め、25℃で24時間静置し、液状混合物を吸水性樹脂に吸収させる。同様に、表3の配合成分を用いて調製した表3の液状混合物と吸水性樹脂により、基準サンプル1〜4を調製する。各基準サンプルのフタを開けた直後の香りを判定し、基準サンプル1を評価点1点、基準サンプル2を評価点2点、基準サンプル3を評価点3点、基準サンプル4を評価点4点とする。
【0064】
<香りの持続性評価方法>
上記方法で調製した実施例又は比較例の水性ゲル芳香剤のフタを開け、フタを開けた直後、水性ゲル芳香剤が40重量%減少したとき、80重量%減少したときの香りの強さを、それぞれ、基準サンプルの香りの強さと比較し、点数をつける。点数が高いほど香りが強いことを表す。表1、2に4人のパネラーが付けた香りの強さの点数の平均値を示す。フタを開けた直後、水性ゲル芳香剤が40重量%減少したとき、80重量%減少したときの各サンプルの点数が2点〜4点の間にあれば好まれる香りの強さにあると言える。さらに、フタを開けた直後と80重量%減少したときのサンプルの香りの強さの点数の差(フタを空けた初期のサンプルの点数−80重量%減少したときのサンプルの点数)が、1未満だと香りの持続性が優れており、0.75未満だと更に香りの持続性が優れているといえる。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
表中の成分は以下のものである。また、表中の%は重量%である。
・b−1:ClogP=1〜4の香料化合物を80重量%含有する香料(ClogP=1〜2未満の香料化合物が1重量%、ClogP=2〜3未満の香料化合物が67重量%、ClogP=3〜4の香料化合物が12重量%)
・c−1:愛敬精密化学製の「Hisobead」、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体の架橋型吸水性樹脂〔アクリルアミド/アクリル酸ナトリウムの重量比=4/1〕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アミンオキサイド、(b)香料、(c)アクリルアミド及びアクリル酸又はその塩を構成単量体とする共重合体を含む架橋型吸水性樹脂、及び水を含み、(a)と(b)の重量比が(a)/(b)=0.1/1〜4/1である水性ゲル芳香剤。
【請求項2】
(a)、(b)、及び水を含み、(a)と(b)の重量比が(a)/(b)=0.1/1〜4/1である液状混合物と、(c)とを混合してなる、請求項1記載の水性ゲル芳香剤。
【請求項3】
(a)が、下記一般式(a1)で表されるアミンオキサイドである請求項1又は2記載の水性ゲル芳香剤。
【化1】


(式中、R1は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルキル基又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルケニル基を示し、kは2〜5の整数を示す。)
【請求項4】
更に(d)非イオン界面活性剤を含有する請求項1〜3の何れか1項記載の水性ゲル芳香剤。
【請求項5】
(d)が、下記一般式(d1)〜(d3)で表される非イオン界面活性剤から成る群より選択される少なくとも1種の非イオン界面活性剤である請求項4記載の水性ゲル芳香剤。
【化2】


(式中、Rは直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルキル基又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルケニル基を示し、pは3〜50の整数であり、qは0〜10の整数であり、p+q=3〜50を満たす。)
【化3】


(式中、R’は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルキル基又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルケニル基を示し、a1、b1、c1は、a1+b1+c1=1〜50を満たす整数である。)
【化4】


(式中、R’’は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルキル基又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜22のアルケニル基を示し、a2、b2、c2は、a2+b2+c2=1〜50を満たす整数である。)
【請求項6】
(a)と(d)の重量比が(a)/(d)=0.1/1〜20/1である請求項4又は5記載の水性ゲル芳香剤。
【請求項7】
(a)と(d1)の重量比が(a)/(d1)=0.1/1〜20/1である請求項4又は5記載の水性ゲル芳香剤。
【請求項8】
(a)と(d2)の重量比が(a)/(d2)=0.1/1〜10/1である請求項4又は5記載の水性ゲル芳香剤。
【請求項9】
(a)と(d)の重量比が(a)/(d)=0.5/1〜20/1である請求項4又は5記載の水性ゲル芳香剤。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の水性ゲル芳香剤を含んで構成される、据え置き型芳香剤。

【公開番号】特開2010−162327(P2010−162327A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216600(P2009−216600)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】