説明

水性シリカ分散液

【課題】安定な実質的に水性の分散液及びその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一種のシラン化合物及びコロイドシリカ粒子を混合してシラン処理コロイドシリカ粒子を形成し、前記シラン処理コロイドシリカ粒子を有機バインダーと混合して分散液を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシラン処理コロイドシリカ粒子及び有機バインダーを含む安定な実質的に水性の分散液、このような分散液の製造方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コロイドシリカ組成物は長年にわたって、例えば、種々の材料の接着性を改良するだけでなく、耐磨耗性及び耐水性を増大するための被覆材料として使用されていた。しかしながら、これらの組成物、特に高度に濃厚なコロイドシリカ組成物はゲル化又はシリカの沈殿を受け易く、これが貯蔵時間をかなり短くする。
【0003】
WO01/87788はセルロースをベースとするバインダー及びシリカゾルを含むシリカガラス被覆物を得る方法を開示している。しかしながら、このような被覆組成物は時間の長い期間にわたって安定に分散し得ず、これがしばしばその即時の使用を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
初期に沈殿しないで容易に貯蔵でき、輸送でき、しかも改良された接着性、耐磨耗性、及び/又は耐水性を必要とする用途に使用し得る安定かつ高度に濃厚なコロイドシリカ分散液を提供することは望ましいであろう。また、このような分散液の便利かつ安価な製造方法を提供することは望ましいであろう。本発明の目的は分散液の付与された効果を低下しないで環境上の影響を最小にするこのような安定な分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は少なくとも一種のシラン化合物及びコロイドシリカ粒子を混合してシラン処理コロイドシリカ粒子を形成し、前記シラン処理コロイドシリカ粒子を有機バインダーと混合して安定な実質的に水性の分散液を生成することを特徴とする安定な実質的に水性の分散液の製造方法に関する。
【0006】
この方法は環境上の有害な問題及び分散液の成分を取り扱うプロセス作業者の健康問題を生じないで行ない得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
シラン及びコロイドシリカ粒子の混合は、好ましくは約20℃から約95℃まで、更に好ましくは約50℃から約75℃まで、最も好ましくは約60℃から約70℃までの温度で連続的に行なわれることが好ましい。シランは約60℃の温度及び調節された速度(これはコロイドシリカ表面積(コロイドシリカ粒子について)1nm2かつ1時間当り好適には約0.01個から約100個まで、好ましくは約0.1個から約10個まで、更に好ましくは約0.5個から約5個まで、最も好ましくは約1個から約2個までのシラン分子である)で激しい撹拌下でシリカ粒子に徐々に添加されることが好ましい。シランの添加は添加速度、添加すべきシランの量、及び所望のシラン処理の程度に応じてあらゆる好適な時間にわたって続けられる。しかしながら、シランの添加は好適な量のシランが添加されるまで約5時間、更に好ましくは約2時間にわたって続けられることが好ましい。コロイドシリカ粒子に添加されるシランの量はコロイドシリカ粒子の表面積1nm2当り好適には約0.1個から約6個まで、好ましくは約0.3個から約3個まで、最も好ましくは約1個から約2個のシラン分子である。コロイド粒子へのシランの連続添加は約80重量%までのシリカ含量を有する高度に濃厚なシラン処理シリカゾルを調製する場合に特に重要であるかもしれない。しかしながら、シリカ含量は好適には約20重量%から約80重量%まで、好ましくは約25重量%から約70重量%まで、最も好ましくは約30重量%から約60重量%までである。
【0008】
コロイドシリカ粒子及びシランは好ましくは約0.01から約1.5まで、更に好ましくは約0.05から約1まで、最も好ましくは約0.10から約0.5までのシラン対シリカの重量比で混合される。
【0009】
このシラン化合物はそれをコロイドシリカ粒子と混合する前に、好ましくは水で希釈されて、好適には約1:8から約8:1まで、好ましくは約3:1から約1:3まで、最も好ましくは約1.5:1から約1:1.5までの重量比の、シラン及び水のプレミックスを生成することが好ましい。得られるシラン-水溶液は実質的に透明であり、安定であり、しかもコロイドシリカ粒子と混合するのに容易である。コロイドシリカ粒子へのシランの連続添加時に、混合はシランの添加が停止した後約1秒から約30分まで、好ましくは約1分から約10分まで続くことが好ましい。
【0010】
本発明の混合は約1から約13まで、好ましくは約6から約12まで、更に好ましくは約7.5から約11まで、最も好ましくは約9から約10.5までのpHで行なわれてもよい。
【0011】
特に文脈“安定な分散液”中の、“安定な”という用語は、好ましくは少なくとも約2ヶ月、更に好ましくは少なくとも約4ヶ月、最も好ましくは少なくとも約5ヶ月の期間内で室温、即ち、約15℃から約35℃までの温度における通常の貯蔵で実質的にゲル化又は沈殿しない安定な化合物、混合物又は分散液を意味する。
【0012】
好ましくは、調製の2ヶ月後の分散液の粘度の相対的増加は約100%より低く、更に好ましくは約50%より低く、最も好ましくは約20%より低い。好ましくは、調製の4ヶ月後の分散液の粘度の相対的増加は約200%より低く、更に好ましくは約100%より低く、最も好ましくは約40%より低い。
【0013】
コロイドシリカ粒子(本明細書ではまたシリカゾルと称される)は、例えば、沈降シリカ、ミクロシリカ(シリカヒューム)、熱分解法シリカ(ヒュームドシリカ)又は充分な純度を有するシリカゲル、及びこれらの混合物から誘導し得る。
【0014】
本発明のコロイドシリカ粒子及びシリカゾルは変性されてもよく、その他の要素、例えば、アミン、アルミニウム及び/又はホウ素(これらは粒子及び/又は連続相中に存在し得る)を含み得る。ホウ素変性シリカゾルは、例えば、米国特許第2,630,410号に記載されている。前記アルミニウム変性シリカ粒子は好適には約0.05重量%から約3重量%まで、好ましくは約0.1重量%から約2重量%までのAl2O3含量を有する。アルミニウム変性シリカゾルの調製操作が、例えば、Iler, K. Ralph著“シリカの化学”, 407-409頁, John Wiley & Sons (1979)及び米国特許第5,368,833号に更に記載されている。
【0015】
前記コロイドシリカ粒子は好適には約2nmから約150nmまで、好ましくは約3nmから約50nmまで、最も好ましくは約5nmから約40nmまでの範囲の平均粒子直径を有する。好適には、コロイドシリカ粒子は約20m2/gから約1500m2/gまで、好ましくは約50m2/gから約900m2/gまで、最も好ましくは約70m2/gから約600m2/gまでの比表面積を有する。
【0016】
前記前記コロイドシリカ粒子は狭い粒子サイズ分布、即ち、粒子サイズの低い相対的標準偏差を有することが好ましい。この粒子サイズ分布の相対的標準偏差は粒子サイズ分布の標準偏差対平均粒子サイズ(数基準)の比である。この粒子サイズ分布の相対的標準偏差は好ましくは数基準で約60%より低く、更に好ましくは数基準で約30%より低く、最も好ましくは数基準で約15%より低い。
【0017】
前記コロイドシリカ粒子は、水性シリカゾルを生成するように好適には安定化陽イオン、例えば、K+、Na+、Li+、NH4+、有機陽イオン、一級アミン、二級アミン、三級アミン、及び四級アミン、又はこれらの混合物の存在下で、水性溶媒中に分散される。しかしながら、また有機溶媒、例えば、低級アルコール、アセトン又はこれらの混合物を含む分散液が、好適には全溶媒容積の約1容積%から約20容積%まで、好ましくは約1容積%から約10容積%まで、最も好ましくは約1容積%から約5容積%までの量で使用し得る。しかしながら、更なる溶媒を含まない水性シリカゾルが使用されることが好ましい。このコロイドシリカ粒子は負に荷電されることが好ましい。好適には、前記ゾル中のシリカ含量は約20重量%から約80重量%まで、好ましくは約25重量%から約70重量%まで、最も好ましくは約30重量%から約60重量%までである。このシリカ含量が高い程、得られるシラン処理コロイドシリカ分散液は一層濃厚である。前記シリカゾルのpHは好適には約1から約13まで、好ましくは約6から約12まで、最も好ましくは約7.5から約11までである。しかしながら、アルミニウム変性シリカゾルについて、そのpHは好適には約1から約12まで、好ましくは約3.5から約11までである。
【0018】
前記シリカゾルは好ましくは約20から約100まで、更に好ましくは約30から約90まで、最も好ましくは約60から約90までのS値を有する。
【0019】
これらの範囲内のS値を有する分散液は得られる分散液の安定性を改良し得ることがわかった。このS値はコロイドシリカ粒子の凝集の程度、即ち、凝集物又はミクロゲル形成の程度を特徴付ける。このS値はIler, R.K. & Dalton, R.L.著J. Phys. Chem. 60(1956), 955-957に示された式に従って測定され、計算された。
【0020】
前記S値はコロイドシリカ粒子のシリカ含量、粘度、及び密度に依存する。高いS値は低いミクロゲル含量を示す。このS値は、例えば、シリカゾルの分散相中に存在するSiO2の量(重量%)を表す。ミクロゲルの程度は、例えば、米国特許第5,368,833号に更に記載されたように製造方法中に調節し得る。
【0021】
前記シラン化合物はシラノール基と安定なシロキサン共有結合(Si-O-Si)を形成することができ、又は、例えば、コロイドシリカ粒子の表面で、水素結合によりシラノール基に結合し得る。こうして、この方法により、シリカ粒子が表面変性される。
【0022】
好適なシラン化合物として、トリス-(トリメトキシ)シラン、オクチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、イソシアネートシラン、例えば、トリス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕イソシアヌレート、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス-(3-〔トリエトキシシリル〕プロピル)ポリスルフィド、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、エポキシ基(エポキシシラン)、グリシドキシ及び/又はグリシドキシプロピル基を含むシラン、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ヘキシルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシラン、ビニル基を含むシラン、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス-(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、オクチルトリメチルオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシリルクロリド、ビニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、及びこれらの混合物が挙げられる。米国特許第4,927,749号は本発明に使用し得る更なる好適なシランを開示している。しかしながら、最も好ましいシランはエポキシシラン及びグリシドキシ基又はグリシドキシプロピル基を含むシラン化合物、特にγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び/又はγ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランである。
【0023】
有機バインダーが続いてシラン処理コロイドシリカ粒子の分散液と混合される。この“有機バインダー”という用語はラテックス、水溶性樹脂、ポリマー及びこれらの混合物を含む。水溶性樹脂及びポリマーは種々の型のもの、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、変性ポリ(ビニルアルコール)、ポリカルボキシレート、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリ(アクリル酸)、ポリアミドアミン、ポリアクリルアミド、ポリピロール、タンパク質、例えば、カゼイン、大豆タンパク質、合成タンパク質、多糖、例えば、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース、澱粉又は変性澱粉、キトサン、多糖ガム、例えば、グアーガム、アラビアガム、キサンタンガム及びマスチックガム並びにこれらの混合物又はハイブリッドであってもよい。前記“ラテックス”という用語は樹脂及び/又は種々の型のポリマー、例えば、スチレン-ブタジエンポリマー、ブタジエンポリマー、ポリイソプレンポリマー、ブチルポリマー、ニトリルポリマー、酢酸ビニルホモポリマー、アクリルポリマー、例えば、ビニルアクリルコポリマー又はスチレン-アクリルポリマー、ポリウレタンポリマー、エポキシポリマー、セルロースポリマー、例えば、ミクロセルロース、メラミン樹脂、ネオプレンポリマー、フェノールをベースとするポリマー、ポリアミドポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリビニルブチラールポリマー、シリコーン、例えば、シリコーンゴム及びシリコーンポリマー(例えば、シリコーン油)、尿素-ホルムアルデヒドポリマー、ビニルポリマー又はこれらの混合物もしくはハイブリッドのエマルションをベースとする合成ラテックス及び/又は天然ラテックスを含む。
【0024】
好ましくは、前記シラン処理コロイドシリカ粒子の分散液は約0.01から約4まで、好ましくは約0.1から約2まで、最も好ましくは約0.2から約1までの乾燥基準でのシリカ対有機バインダーの重量比で有機バインダーに添加される。好ましくは、これらの成分は、好適には約15℃から約35℃まで、好ましくは約20℃から約30℃までの適度の温度で混合される。好ましくは、各成分は約10秒から約1時間まで、更に好ましくは約1分から約10分まで混合される。
【0025】
また、本発明はその方法により得られるシラン処理コロイドシリカ粒子及び有機バインダーを含む安定な実質的に水性の分散液に関する。
【0026】
更に、本発明はシラン処理コロイドシリカ粒子及び有機バインダーを含む安定な実質的
に水性の分散液に関する。
【0027】
この分散液は種々の種類の基材上に被覆フィルムを形成することができる。
【0028】
好ましくは、この分散液は分散液中の乾燥材料を基準として約1重量%から約80重量%まで、更に好ましくは約10重量%から約70重量%まで、最も好ましくは約20重量%から約50重量%までのシリカ含量を有する。この分散液は、安定性に関して一層有効であることの他に、被覆される材料への適用後に乾燥の一層短い時間を有する。
【0029】
こうして、乾燥に使用されるエネルギーがかなり減少し得る。分散液中の高いシリカ含量は、シラン処理コロイドシリカ粒子が実質的な凝集、沈殿及び/又はゲル化を生じないで安定に分散されて留まる限り、好ましい。これはまたその低減された輸送コストに鑑みて有益である。
【0030】
好ましくは、前記分散液中の全シラン含量対全シリカ含量の重量比は約0.01から約1.5まで、更に好ましくは約0.05から約1まで、最も好ましくは約0.1から約0.5までである。このシリカの全含量は変性されたシラン処理シリカ粒子及び変性されなかったシリカ粒子(これらはまた調製された分散液中に存在してもよい)中のシリカを含む。このシランの全含量は全ての自由に分散されたシリカ及び全ての結合されたシラン基もしくは誘導体に基づく。
【0031】
前記有機バインダーは、本明細書に更に記載された、ラテックスであることが好ましい。この有機バインダー及びシラン処理コロイドシリカ粒子を含む分散液の全固形分は好適には約15重量%から約80重量%まで、好ましくは約25重量%から約65重量%まで、最も好ましくは約30重量%から約50重量%までである。乾燥基準のシリカ対有機バインダーの重量比は約0.01から約4まで、好ましくは約0.1から約2まで、最も好ましくは約0.2から約1までの範囲である。
【0032】
好ましい実施態様によれば、前記シラン処理コロイドシリカ粒子及び有機バインダーは分散液中に不連続粒子として存在する。
【0033】
前記分散液の安定性はあらゆる使用におけるその取扱及び適用を促進する。何とならば、それが貯蔵を可能にし、使用直前に現場で調製される必要がないからである。こうして、既に調製された分散液は容易に直接使用し得る。また、この分散液はそれが有害な量の毒性成分を含まないという意味で有益である。“実質的に水性の分散液”は溶媒が実質的に水を含む分散液を意味する。この分散液は有機溶媒を含まないことが好ましい。しかしながら、一実施態様によれば、水と混和性の好適な有機溶媒が全容積の約1容量%から約20容量%まで、好ましくは約1容量%から約10容量%まで、最も好ましくは約1容量%から約5容量%までの量で実質的に水性の分散液中に含まれてもよい。これは、或る用途について、或る量の有機溶媒が有害な環境上の効果を生じないで存在してもよいという事実のためである。
【0034】
前記分散液はまたシラン処理コロイドシリカ粒子の他に、少なくとも或る程度まで、シリカ粒子のサイズ、シラン対シリカの重量比、シラン化合物の型、反応条件等に応じてシラン処理されなかったコロイドシリカ粒子を含んでもよい。好適には、コロイドシリカ粒子の少なくとも約40重量%、好ましくは少なくとも約65重量%、更に好ましくは少なくとも約90重量%、最も好ましくは少なくとも約99重量%がシラン処理(シラン変性)される。この分散液はシラン基又はシリカ粒子の表面に結合されたシラン誘導体の形態のシランの他にまた少なくとも或る程度まで自由に分散された未結合シラン化合物を含んでもよい。好適には、シラン化合物の少なくとも約40重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、更に好ましくは少なくとも約75重量%、更に好ましくは少なくとも約90重量%、最も好ましくは少なくとも約95重量%がシリカ粒子の表面に結合される。こうして、この方法により、シリカ粒子が表面変性される。
【0035】
好適には、前記コロイドシリカ粒子のシラノール表面基の少なくとも約1%(数基準)がシラン化合物のシラン基に結合することができ、好ましくは少なくとも約5%、更に好ましくは少なくとも約10%、更に好ましくは少なくとも約30%、最も好ましくは少なくとも約50%がシラン基を結合する。
【0036】
本発明はまた被覆適用における、また増大された接着性、改良された耐磨耗性、及び/又は耐水性をコンクリートの如きセメント材料に付与するための添加剤としての分散液の使用に関する。この分散液は、被覆物として使用される場合に改良された硬度、研磨性及び流動性を有する。この種の分散液はまた着色系、例えば、塗料において一層良好なフィルム特性を与え得る。
【0037】
また、この分散液は織物及び不織布、レンガ、写真紙、木材、金属表面、例えば、鋼又はアルミニウム、プラスチックフィルム、例えば、ポリエステル、PET、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、又はポリスチレン、布、レザー、紙及び紙のような材料、セラミック、石、セメント質材料、ビチュメン、硬質繊維、わら、ガラス、磁器、異なる種類のプラスチック、例えば、帯電防止仕上げ及び耐グリース仕上げのためのガラス繊維を被覆し、また含浸するのに、また不織布、接着剤、接着促進剤、積層剤、シーラント、疎水化剤のためのバインダーとして、例えば、コルク粉末もしくはのこぎりくず、アスベスト、及びゴム廃棄物のためのバインダーとして、織物印刷及び製紙工業における助剤として、例えば、ガラス繊維用のサイジング剤としてのポリマーへの添加剤として、またレザーを仕上げるのに適している。
【0038】
本発明がこうして記載されたので、本発明が多くの方法で変化し得ることが自明であろう。このような変化は本発明の骨子及び範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、当業者に自明であるような全てのこのような改良は特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。以下の実施例は反応の更に特別な詳細を示すが、下記の一般原理がここに開示されるかもしれない。以下の実施例は記載された発明がその範囲を限定しないで実施し得る方法を更に説明するであろう。
【0039】
全ての部数及び%は、特にことわらない限り、重量部及び重量%を表す。
【実施例】
【0040】
以下に使用されるシランA及びBはスイスのクロンプトンS.A.から入手し得る。
A:シルクエスト・ウェトリンク78(グリシドキシ含有エポキシ-シラン)、
B:シルクエストA-187(グリシドキシ含有エポキシ-シラン)
スウェーデンのエカ・ケミカルズABから入手し得る以下に使用されるシリカゾルを下記の表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
シラン処理コロイドシリカ分散液の調製
シランサンプルA及びBを適度の撹拌で約5分間にわたって表2に従ってシリカゾルに滴下して添加した。撹拌を約2時間続けた。水及びシランを等しい量で混合することにより、水で希釈したシランのプレミックスしたサンプルを調製した(表3を参照のこと)。透明な溶液が得られるまで、混合物を徐々に撹拌した。次いでそのシラン希釈液を適度の撹拌下でシリカゾルと混合した。特にことわらない限り、全てのサンプルを室温で調製した。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
耐水性
シラン処理シリカゾル10gをセラニーズから入手し得るモウィリスLDM7602Sである“ソフトラテックス”20gと混合することにより、本発明の分散液の耐水性を評価した(フィルム7-11、13を参照のこと)。フィルム1-4はシラン処理シリカ粒子を含まず、またフィルム5及び6は最初にシラン:水溶液(1:1) 0.5gを同“ソフトラテックス”20gと混合し、次いでシラン-ラテックス混合物をシリカゾルA5 9.5gと混合することにより調製された。先に調製したラテックス混合物2gを使用してフィルムをキャストした。フィルムを16時間にわたって室温でエージングした。次いで水2滴をエージングされたフィルムの上に加えることにより耐水性を評価した。水を加えた10分後に、水の影響を分析し、下記の尺度に従ってカテゴリー化し、表4にリストした。
0:“溶解された”フィルム、
1:フィルムへのひどい影響、
2:フィルムへの若干の影響、
3:影響なし。
【0046】
【表4】

【0047】
表4はシラン処理しなかったシリカゾル及びソフトラテックスの混合物の参考フィルム(フィルム1-4)(これらは非常に不十分な耐水性を有する)を示す。フィルム5-6(これらはシリカゾルを既に調製されたラテックス-シラン混合物に添加することにより調製された)はまた非常に不十分な耐水性を示した。しかしながら、フィルム7-11及び13(全て本発明による)は、良好又は優れた耐水性を示す。
【0048】
分散液の安定性
2種の異なる有機バインダー、即ち、U-801TM(アルバーディンク・ボレイからのポリウレタン樹脂エマルション)及びモウィリスTM LDM 7602-S(セラニーズからのアクリル樹脂エマルション)を使用して、本発明の分散液及びシラン処理しなかったシリカ分散液の安定性を以下に比較した。樹脂の用量はU-801について80gであり、モウィリスTMLDM 7602-Sについて100gであった。シリカ対有機バインダーの重量比はU-801TM及びモウィリスTMLDM 7602-Sについて夫々0.20及び0.40であった。サンプルを40℃で貯蔵して20℃で得られるよりも4倍の促進時間を得た。粘度(mPas、20℃)をブルックフィールド粘度計で初期、1ヶ月後及び4.5ヶ月後に測定した。水中のシランのプレミックス(シルクエストA-187:H2O(1:1))をシリカゾルに段階的に添加することによりシラン処理シリカ粒子を調製した。
【0049】
【表5】

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【0050】
【表6】

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【0051】
表6に見られるように、本発明の分散液の貯蔵安定性は優れており、一方、比較分散液A5、A7、及びA8(シラン処理しなかったシリカ粒子を含む)は不安定になり、時間のほんの短い期間後に固体にゲル化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種のシラン化合物及びコロイドシリカ粒子を混合してシラン処理コロイドシリカ粒子を形成し、前記シラン処理コロイドシリカ粒子を有機バインダーと混合して安定な実質的に水性の分散液を生成することを特徴とする安定な実質的に水性の分散液の製造方法。
【請求項2】
前記シラン化合物がエポキシシランである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記シラン化合物がグリシドキシ基を有するエポキシシランである、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
その方法を約50℃から約75℃までの温度で行なう、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
シラン対シリカの重量比が約0.01から約1.5までである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記有機バインダーがラテックスである、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
シラン対シリカの重量比が約0.05から約1までである、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
シリカ対有機バインダーの重量比が約0.01から約4までである、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の方法により得られる安定な実質的に水性の分散液。
【請求項10】
シラン処理コロイドシリカ粒子及び有機バインダーを含むことを特徴とする安定な実質的に水性の分散液。
【請求項11】
前記有機バインダーがラテックスである、請求項9又は10記載の分散液。
【請求項12】
被覆適用のための請求項9から11のいずれかに記載の分散液の使用。
【請求項13】
セメント質材料への添加剤としての請求項9から11のいずれかに記載の分散液の使用。



【公開番号】特開2011−57995(P2011−57995A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248413(P2010−248413)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【分割の表示】特願2004−545122(P2004−545122)の分割
【原出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】