説明

水性ブロックポリイソシアネート組成物及びこれを含む水性塗料組成物

【課題】本発明は、樹脂固形分が高く、かつ、粘度の低い水性ブロックポリイソシアネート組成物、及び、それを含む水性塗料組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】下記条件をすべて満たすことを特徴とする水性ブロックポリイソシアネート組成物。
1)前駆体が脂肪族・脂環族ジイソシアネートモノマーの少なくとも1種から誘導されるポリイソシアネートである、親水基を有するブロックポリイソシアネートが50から95質量%
2)有機溶剤が1から49質量%。
3)水が1から49質量%。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性ブロックポリイソシアネート組成物、及び、これを硬化剤とした水性塗料組成物である。
【背景技術】
【0002】
本発明は水性ブロックポリイソシアネート組成物、及び、これを硬化剤とした水性塗料組成物に関する。
近年、地球環境、安全、衛生などの観点から水性塗料が注目されている。建築外装から産業製品、例えば食缶用、コイルコーティング用等の工業塗料に使用されるようになってきた。更に、耐候性、耐薬品性、耐衝撃性等の高度な品質が要求される自動車用1液性塗料に関する提案も多い(特許文献1,2,3)。ここで用いられている硬化剤の多くはアルキルエーテル化メラミン樹脂単独である。アルキルエーテル化メラミン樹脂などのメラミン系樹脂を硬化剤として形成される塗膜は硬度、密着性などの優れた物性を有するものの、耐衝撃性などの可とう性が不足していた。
【0003】
また、イソシアネート基と水酸基で形成されるウレタン結合で架橋するウレタン系塗料から得られる塗膜は非常に優れた耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性、耐汚染性を有している上に、イソシアネート成分として脂肪族・脂環族ジイソシアネートを原料とする無黄変ポリイソシアネートを用いることにより更に耐候性が優れ、その需要は増加している。
従って、ウレタン結合で架橋する水性ウレタン系塗料の開発が盛んに行われている。ライン用塗料等の1液性が必要とされる場合は、通常硬化剤であるポリイソシアネートのイソシアネート基はブロック剤で封鎖され、ブロックポリイソシアネートとして使用される。
【0004】
ブロックポリイソシアネートの水性化技術として例えば、ブロックポリイソシアネートを水性化するための界面活性剤を使用する技術(特許文献4)、炭素数7〜26の高級脂肪 酸を含むポリエチレンオキサイドを使用し、かつポリイソシアネートのイソシアネート基のブロック剤に重亜硫酸ソーダを使用する技術(特許文献5)、ポリイソシアネートに親水性基である特定のポリオキシエチレンを反応させ親水成分の溶出を防ぎ、高速攪拌基等を用いて水性化する技術(特許文献6)などが開示されている。
【0005】
耐熱性のあるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネートのブロック体を水性化する技術(特許文献7,8)、ポリイソシアネートの一部にポリオキシエチレン基を付加させ、更にポリエチレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体等の水溶性高分子化合物を混合する技術(特許文献9)、ヒドロキシカルボン酸により親水性を付与する技術(特許文献10)などが開示されている。
上記の水性ブロックポリイソシアネートの樹脂固形分は、いずれも低く、塗料のハイソリッド化という課題を考えた場合、塗料配合が制限されるばかりでなく、その輸送コストの負担も大きかった。
【0006】
【特許文献1】特開昭56−157358号報
【特許文献2】特開昭63−175079号報
【特許文献3】特開昭63−193968号報
【特許文献4】特開昭52−59657号公報 ゛
【特許文献5】特開昭56−151753号公報
【特許文献6】特開昭61 31422号公報
【特許文献7】特開昭62−151419号公報
【特許文献8】特開平2−3465号公報
【特許文献9】特開昭62−151419号公報
【特許文献10】特開平2−3465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、樹脂固形分が高く、かつ、粘度の低い水性ブロックポリイソシアネート組成物、及び、それを含む水性塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の水性ブロックポリイソシアネート組成物、及び、これを用いた水性塗料組成物で達成できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は下記の通りである。
1.下記条件を満たすことを特徴とする水性ブロックポリイソシアネート組成物。
1)前駆体が脂肪族・脂環族ジイソシアネートモノマーの少なくとも1種から誘導されるポリイソシアネートである、親水基を有するブロックポリイソシアネートが50から95質量%
2)有機溶剤が1から49質量%。
3)水が1から49質量%。
【0009】
2.脂肪族・脂環族ジイソシアネートモノマーがヘキサメチレンジイソシアネートである1の水性ブロックポリイソシアネート組成物。
3.脂肪族・脂環族ジイソシアネートモノマーの少なくとも1種から誘導されるポリイソシアネートのイソシアネート基平均数が4.0から20である1または2の水性ブロックポリイソシアネート組成物。
4.1から3のいずれかを含む水性塗料組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、樹脂固形分が高く、かつ、粘度の低い水性ブロックポリイソシアネート組成物、及び、それを含む水性塗料組成物であり、水性中塗り、特に自動車中塗りとして優れた性能を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明について、以下具体的に説明する。
尚、上記脂肪族・脂環族ジイソシアネートモノマーは、脂肪族ジイソシアネートモノマー、及び脂環族ジイソシアネートモノマーの意である。
本発明に用いる脂肪族ジイソシアネートモノマーとしては、炭素数4から30のものが好ましく、例えば、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIと言う)2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどがある。
【0012】
本発明に用いる脂環族ジイソシアネートモノマーとしては炭素数8から30のものが好ましく、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIと言う)、1,3−ビス(イソシアナートメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどがある。
なかでも、耐候性、工業的入手の容易さから、HDIが好ましく、2種以上併用することもできる。
【0013】
上記ジイソシアネートモノマーを誘導して、本発明に用いる水性ブロックポリイソシアネートの前駆体であるポリイソシアネートが得られる。
このポリイソシアネートは、例えば、ビウレット結合、尿素結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレタン結合、アロファネート結合、オキサジアジントリオン結合などを含むことができる。2つ以上の結合を含むこともできる。
ビウレット結合を有するポリイソシアネートは、水、t−ブタノール、尿素などのいわゆるビウレット化剤とジイソシアネートモノマーをビウレット化剤/ジイソシアネートモノマーのイソシアネート基のモル比を約1/2から約1/100で反応させた後、ジイソシアネートモノマーを除去精製し得られる。これらの技術に関しては、例えば、特開昭53−106797号公報、特開昭55−11452号公報、特開昭59−95259号公報などが開示されている。
【0014】
イソシアヌレート結合を有するポリイソシアネートは、例えば触媒などにより環状3量化反応を行い、転化率が約5から約80質量%になった時に反応を停止し、ジイソシアネートモノマーを除去精製して得られる。この際に、1から6価のアルコール化合物を併用することができる。これらの技術に関しては、例えば、特開昭55−38380号公報、特開昭57−78460号公報、特開昭57−47321号公報、特開昭61−111371号公報、特開昭64−33115号公報、特開平2−250872号公報、特開平6−312969号公報などがある。
【0015】
ウレタン結合を有するポリイソシアネートは、例えばトリメチロールプロパンなどの2から6価のアルコール系化合物とジイソシアネートモノマーをアルコール系化合物の水酸基/ジイソシアネートモノマーのイソシアネート基のモル比を約1/2から約1/100で反応させた後、ジイソシアネートモノマーを除去精製し得られる。
得られたポリイソシアネート中のジイソシアネートモノマー濃度は3質量%以下、好ましくは1質量%以下である。3質量%を超えると、硬化性を低下させる場合がある。これらポリイソシアネートを2種以上、混合して使用することもできる。
ポリイソシアネートのイソシアネート基平均数は4.0から20が好ましく、4.0未満であると最終的に得られた水性ブロックポリイソシアネート組成物の硬化性、得られた塗膜の可とう性が低下する場合があり、20を超えると、得られた水性ブロックポリイソシアネート組成物の一部硬化後の反応性が低下する場合がある。
【0016】
本発明に用いることのできる親水基はアニオン性基、及び、ノニオン性基である。アニオン性基には、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基などがある。ノニオン性基には、例えば、ポリエチレングリコール型、多価アルコール型などがある。また、親水基を水性ブロックポリイソシアネートに導入するためには活性水素基を有する化合物を用いる。活性水素基とは、イソシアネート基と反応する官能基であり、例えば、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基などがある。アニオン性基と活性水素基をともに有する化合物としては、水酸基とカルボン酸基をともに有する、オキシ酸がある。例えば、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、オキシ酪酸、オキシ吉草酸、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、カルボン酸基を有するポリカプロラクトンなどが有り、水酸基とスルホン酸基をともに有する、例えばイセチオン酸などがある。活性水素基としメルカプト基とカルボン酸基を併せ持つ、メルカプトカルボン酸であるメルカプト酢酸などがある。ノニオン性基と活性水素基をともに有する化合物としては、ポリエチレンオキサイドがある。ポリエチレンオキサイドは、例えばメタノール、エタノール、ブタノール等のモノアルコールにエチレンオキサイドを付加して得られ、プロピレンオキサイドを含んでも良い。
【0017】
活性水素基としては水酸基が、親水基としてはカルボン酸基が好ましく、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、カルボン酸基を有するポリカプロラクトンが好ま
しい。
本発明に用いることができる、ブロック剤としては、活性水素基を分子内に1個有する化合物であり、例えば、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、活性メチレン、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ピラゾール系化合物等がある。より具体的なブロック化剤の例を下記に示す。
【0018】
(1)メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどのアルコール類。
(2)アルキルフェノール系;炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノおよびジアルキルフェノール類であって、例えば1−プロピルフェノール、iso−プロピルフェノール、1−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、1−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、N−オクチルフェノール、ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ−1−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−1−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−1−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−1−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類。
【0019】
(3)フェノール系:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等。
(4)活性メチレン系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等。
(5)メルカプタン系;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等。
(6)酸アミド系;アセトアニリド、酢酸アミド、ε一カプロラクタム、∂−バレロラクタム、7−ブチロラクタム等。
【0020】
(7)酸イミド系;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等。
(8)イミダゾール系;イミダゾール、2−メチルイミダゾール等。
(9)尿素系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素等。
(10)オキシム系;ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等。
(11)アミン系;ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ−N−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等。
(12)イミン系;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等。
(13)ピラゾール系;ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等。
がある。
【0021】
好ましいブロック剤は、アルコール系、オキシム系、酸アミド系、活性メチレン系、ピラゾール系から選ばれる少なくとも1種である。
本発明に用いることのできる親水基であるアニオン性基を、有機アミンで中和することが好ましい。この中和はブロックポリイソシアネートに水分散性、水溶性を付与するものである。
【0022】
上記の具体的な有機アミン化合物の例としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ
イソプロピルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミンなどの炭素数1から20の直鎖状、分岐状の1,2または3級アミン、モルホリン、N−アルキルモルホリン、ピリジンなどの環状アミン、モノイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの水酸基含有アミンなどを挙げることができる。
【0023】
上記で詳述した原料を用いて、本発明に用いることのできる、水性ブロックポリイソシアネートを誘導することができる。その製造方法の1例を詳述する。まず、前記ポリイソシアネートとブロック剤を反応させる。この反応は有機溶剤の有無に関わらず行うことができる。有機溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤を用いる必要がある。その有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチルなどのエステル系溶剤などが挙げられる。
中間体であるイソシアネート基が部分的にブロック剤で封鎖されたブロックポリイソシアネートは粘度が高くなる場合が多く、この場合、有機溶剤を用いて、粘度を下げ、次の工程に進むことが好ましい。
【0024】
ブロック化反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、及び、3級アミン系化合物、ナトリウムなどのアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
反応は、一般に−20から150℃ で行うことが出来るが、好ましくは30から100℃である。150℃を越える温度では副反応を起こす可能性があり、−20℃未満になると反応速度が小さくなり不利である。
ポリイソシアネートのイソシアネート基の40から90%をブロック剤と反応させることが好ましい。40%未満になると、ブロックイソシアネート基濃度が低下し、塗料を配合する場合、多量に必要となる場合があり、好ましくない。90%を越えると、後述するカルボキシル基導入量が低下し、水性ブロックポリイソシアネートの水分散性、水溶性が低下し、好ましくない。
【0025】
このようにして得られた部分的にブロック化されたポリイソシアネートの残存イソシアネート基を活性水素基と親水基をともに有する化合物と反応させる。この反応の反応温度、触媒などの反応条件は前記、ブロック化反応と同様に行うことができる。反応後、イソシアネート基が残存する場合は、ブロック剤などを添加して、イソシアネート基を消失させることが好ましい。イソシアネート基が残存する場合は、後述する添加剤などの制限を受ける。
【0026】
前記ブロックポリイソシアネートに付加されたカルボキシル基は有機アミン化合物により中和される。これらの有機アミン化合物はカルボキシル基に対して0.5〜1.5当量の範囲で用いられる。 0.5未満の場合は、水性ブロックポリイソシアネートの水分散性、水溶性が低下する場合があり、1.5を越える場合は、水性ブロックポリイソシアネート溶液のpHが高くなり、これを用いた塗料の安定性が低下する場合がある。このようにして得られた水性ブロックポリイソシアネートの酸価は10から70mgKOH/gとなる。
【0027】
必要に応じて、ポリエチレングリコールなどの非イオン性親水基を導入することもできる。更に水分散性の向上などの目的に応じて、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性界面活性剤を添加することができる。具体的な前記界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコール、多価アルコール脂肪酸エステル等のノニオン系、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系、アルキルアミン塩、アルキルベタイン等のカチオン系、カルボン酸アミン塩、スルホン酸アミン塩、硫酸エステル塩等の界面活性剤がある。
その後、水を添加する。水を添加した後、場合によっては、反応に使用した有機溶剤を除去することができる。有機溶剤の除去は通常、減圧下で行う。反応に使用した有機溶剤を除去した場合、除去後に有機溶剤を添加する。
【0028】
上記のように製造された水性ブロックポリイソシアネートは媒体として有機溶剤、水を含む。有機溶剤は好ましくは、1から49質量%、水は1から49質量%であり、より好ましくは、有機溶剤は5から35質量%、水は15から45質量%であり、更に好ましくは、有機溶剤は5から25質量%、水は25から45質量%である。水性ブロックポリイソシアネート組成物中の水性ブロックポリイソシアネート樹脂固形分は50から95質量%とすることが好ましく、更に好ましくは60から90質量%である。50質量%以下であると、これを用いた水性塗料組成物の固形分が低下し、塗装作業性が低下する場合があり、95質量%を越えると、その粘度が増加し、塗料製造などの作業性が低下する場合がある。
水性ブロックポリイソシアネート組成物が特定濃度の有機溶剤を含むことにより、水性ブロックポリイソシアネートが高濃度でありながら、低粘度を達成できたことは驚くべきことであった。
【0029】
上記の具体的な有機溶剤の例としては、例えば、1−メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso−プロパノール、1−プロパノール、iso−ブタノール、1−ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso−ペンタン、ヘキサン、iso−ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリットなどを挙げることができ、2種以上を併用できる。好ましい有機溶剤としては、水への溶解度が5質量%以上のものが好ましく、水への溶解度が5質量%未満の有機溶剤を用いると、水性ブロックポリイソシアネート組成物の粘度が高くなり、作業性が低下する場合がある。また、沸点が100℃以上のものが好ましく、沸点が100℃未満の有機溶剤を用いると、塗膜形成時に有機溶剤の揮発が速くなり、塗膜表面外観に影響を及ぼす場合がある。
【0030】
このようにして得られた水性ブロックポリイソシアネート組成物のpHは7.0から8.5が好ましく、更に好ましくは7.0から8.0である。
このようにして得られた水性ブロックポリイソシアネート組成物とポリオールを主成分として、本発明の水性塗料組成物を形成する。
これらのポリオールとしては例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、脂肪族炭化水素ポリオール、エポキシポリオール、フッ素ポリオールなどが挙げられる。
【0031】
アクリルポリオールとしては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル、またはグリセリンのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステルの群から選ばれた単独または混合物とアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−1−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒ
ドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル、またはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−1−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−1−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステルの群から選ばれた単独または混合物を用い、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド、及び、メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等のその他の重合性モノマーの群から選ばれた単独または混合物の存在下、あるいは非存在下において重合させて得られるアクリルポリオールが挙げられる。その重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、分散重合、溶液重合で製造できる。乳化重合では段階的に重合することもできる。
【0032】
ポリエステルポリオールとしては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のカルボン酸の群から選ばれた単独または混合物と、低分子量ポリオール、ジオール類としては例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2−エチルヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2、2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなどがあり、トリオール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどがあり、テトラオール類としては、例えば、ジグリセリン、ジメチロールプロパン、ペンタエリトリトールなどの群から選ばれた多価アルコールの単独または混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール、及び、例えば低分子量ポリオールの水酸基にε−カプロラクトンを開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。
【0033】
ポリエーテルポリオールとしては、多価ヒドロキシ化合物の単独または混合物に、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物、アルコラート、アルキルアミンなどの強塩基性触媒を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの単独または混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、更にエチレンジアミン類等の多官能化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類、及び、これらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等が含まれる。
【0034】
前記多価ヒドロキシ化合物としては
(1)例えばジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなど。
(2)例えばエリトリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等糖アルコール系化合物。
(3)例えばアラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類。
(4)例えばトレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラ
クトース、メリビオースなどの二糖類。
(5)例えばラフィノース、ゲンチアノース、メレチトースなどの三糖類。
(6)たとえはスタキオースなどの四糖類。
などがある。
【0035】
脂肪族炭化水素ポリオールとしては、例えば末端水酸基化ポリブタジエンやその水素添加物が挙げられる。
エポキシポリオールとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂をアミン変性、または、アミノアルコール変性したものが挙げられる。
フッ素ポリオールとしては、フッ素化エチレンと共重合可能なモノマーからなる樹脂が挙げられる。
前記のポリオールは水に乳化、分散あるいは溶解することが必須となる。そのために、ポリオールに含まれるカルボキシル基、スルホン基などを中和する事ができる。
【0036】
カルボキシル基、スルホン基などを中和するための中和剤としては、例えばアンモニア、水溶性アミノ化合物である例えばモノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリンなどから選択される1種以上を用いることができる。好ましくは、第3級アミンであるトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンなどが好ましい。
【0037】
前記ポリオールの樹脂分当たりの水酸基は30から300mgKOH/gが好ましく、酸価20から100mgKOH/gが好ましい。
好ましいポリオールはアクリルポリオール、ポリエステルポリオールである。
本発明の水性ブロックポリイソシアネート組成物と上記ポリオールの配合比率は、水性ブロックポリイソシアネートのブロックされたイソシアネート基とポリオールの水酸基の当量比が0.3から1.5の範囲で、必要に応じて選択される。
必要に応じて、本発明の塗料組成物にメラミン系硬化剤、ウレタンディスパージョンなどの樹脂を併用することができる。
【0038】
上記のメラミン系硬化剤としては、例えばアルキルエーテル化メラミン樹脂である。その製法としては、例えば尿素、メラミン、ベンゾグアナミン、グリコールウリルなどをアルカリ条件下アルコール中でホルムアルデヒドを付加し、メチロール化を行い、その後メチロール基の少なくとも1部はアルキルエーテル化される。アルキル基の種類としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどあり、2種以上を用いても良い。好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチルである。イミノ基を有しても良い。
【0039】
メラミン系硬化剤を用いる場合、本発明の水系ブロックポリイソシアネート組成物とメラミン系硬化剤の混合質量比率は10/1から1/10であり、好ましくは5/1から1/5である。前記比率が1/10未満であると塗膜のかとう性が低下する場合がある。10/1を越えると、メラミン系硬化剤を添加する目的である、例えば塗膜硬度向上を達成することが難しい。
本発明は硬化促進剤として酸性化合物、塩基性化合物を含む事ができる。特にメラミン系硬化剤を併用する場合は酸性化合物の添加が有効である。
【0040】
前記酸性化合物の具体例としては、例えば、カルボン酸類として例えば、酢酸、乳酸、コハク酸、シュウ酸、マレイン酸、デカンジカルボン酸などがあり、スルホン酸類として
は、例えばパラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などがあり、リン酸エステル類としては、例えばジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジラウリルホスフェート、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェートなどの酸性リン酸エステル、例えばジエチルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジラウリルホスファイト、モノエチルホスファイト、モノブチルホスファイト、モノオクチルホスファイト、モノラウリルホスファイトなどがある。
【0041】
これらの酸性化合物はアミン化合物と反応させ、貯蔵安定性を向上させることができる。そのアミン化合物としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、1−ブチルアミン、ジ−1−ブチルアミンなどのアルキルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンなどがある。
塩基性化合物の具体例としては、例えばトリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロオクタンなどのアミン化合物、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸亜鉛金属カルボン酸塩などがある。
【0042】
硬化促進剤の添加量は配合される塗料樹脂分に対して、0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
また、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、例えば、アルミ等の金属粉顔料、酸化チタン、カーボンブラックなどの無機顔料、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、溶剤等を添加してもよい。
このように調製した水性塗料組成物の被塗装基材としては、金属、プラスチック、無機基材等が挙げられる。
【0043】
また、用途としては、上中塗り、下塗り用として、新車外板用塗料、建築外装塗料、バンパー等のプラスチック部品用塗料、自動車補修用塗料、プレコートメタル等の有機被覆用塗料等として有用である。
塗装方法としては、ベル塗装、スプレー塗装、ロール塗装、シャワー塗装、浸漬塗装等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
尚、%はすべて質量%で示した。評価は下記に従って行った。
(数平均分子量の測定)
数平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPCという)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
装置:東ソー(株)社製:HLC−8120(商品名)
カラム:東ソー(株)社製:TSK GEL SuperH1000(商品名)×1本
TSK GEL SuperH2000(商品名)×1本
TSK GEL SuperH3000(商品名)×1本
キャリアー:テトラハイドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0045】
(イソシアネート基平均数の算出)
下記式によりイソシアネート基平均数を求めた。
(ポリイソシアネート数平均分子量×イソシアネート基濃度×0.01)/42
イソシアネート基濃度は質量%
(粘度測定)
粘度は下記の装置を用いて測定した。
装置:Thermo Haake社 レオストレスRS1
センサー:コーン&プレート C20/2 Ti
条件:6rpm/25℃
測定粘度が250Pa・s未満を〇、250から350Pa・sを△、350Pa・s以上を×で表した。
【0046】
(耐衝撃性試験)
デュポン式耐衝撃性試験機を用いて、20℃で評価した。150℃、30分で硬化された、膜厚50μmの塗膜が形成された鋼板を受け台に置き、撃心(半径6.35mm)を設置し、500gの荷重を高さ20cm、10cmから落下させ、塗膜の状態を観察した。10cmからの落下により塗膜に、割れ、ひびなどの異常が認められた場合を×、20cmからの落下により塗膜に、割れ、ひびなどの異常が認められた場合を○、いずれの高さからの落下によっても塗膜に、割れ、ひびなどの異常が認められない場合を◎とした。
【0047】
〔製造例1〕(ポリイソシアネートの製造)
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹込管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI 600部、3価アルコールであるポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール「プラクセル303」(ダイセル化学の商品名 数平均分子量300)30部を仕込み、攪拌下で反応器内温度を90℃、1時間保持し、ウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を60℃にし、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が48%になった時点でリン酸を添加し、反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶でジイソシアネートモノマーを除去した。
得られたポリイソシアネートの25℃における粘度は9500mPa・s、イソシアネート基濃度は19.2質量%、ジイソシアネートモノマー濃度0.1質量%、数平均分子量は1100、イソシアネート基平均数は5.1であった。
【0048】
〔製造例2〕(ポリイソシアネートの製造)
攪拌器、温度計、環流冷却管、窒素吹込管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI 100部を仕込み、撹拌下反応器内温度を60℃に保持した。その後、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムアセテート(2−ブタノール 5.0質量%溶液) 0.1部添加し、収率が24質量%になった時点で、リン酸(85質量%水溶液) 0.14部添加し反応を停止した。その後、さらに100℃にて1時間加熱し、室温まで冷却し、反応液をろ過して不溶物を除去した後、薄膜蒸留器で単量体ジイソシアネートを除去した。
得られたポリイソシアネートの25℃における粘度は1600mPa・s、イソシアネート基濃度は23.0質量%、ジイソシアネートモノマー濃度0.1質量%、数平均分子量は585、イソシアネート基平均数は3.2であった。
【0049】
〔実施例1〕(水性ブロックポリイソシアネート組成物の製造)
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹込管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、製造例1で得られたポリイソシアネート100部、メチルエチルケトン70部を仕込み混合する。反応液温度が60℃を越えないようにメチルエチルケトオキシム28部を滴下し、滴下終了後30分攪拌する。その後、ジブチルスズジラウレート0.0049部を添加後、カルボキシル基を1つ有するジオール「プラクセル205BA」(ダイセル化学の商品名 数平均分子量510)35部を添加し、イソシアネート基が赤外分光測定により検出されなくなるまで80℃、120分攪拌反応させる。次いで、N,N−ジメチルエタノールアミン6部を添加し中和させ、さらに、イオン交換水60部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル12部を添加する。その後、60℃、減圧下、メチルエチルケトンを留去することにより、樹脂固形分70質量%、ジプロピレングリコ
ールモノメチルエーテル5質量%、水25質量%、pH8.0、樹脂あたりのブロックされたイソシアネート基濃度8.0%の水性ブロックポリイソシアネート組成物を得た。この水性ブロックポリイソシアネート組成物の粘度は〇であった。
【0050】
〔実施例2〜5〕(水性ブロックポリイソシアネート組成物の製造)
表1に示す各成分を用いる以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
〔比較例1〕(水性ブロックポリイソシアネート及びその組成物の製造)
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹込管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、製造例1で得られたポリイソシアネート100部、メチルエチルケトン70部を仕込み混合する。反応液温度が60℃を越えないようにメチルエチルケトオキシム28部を滴下し、滴下終了後30分攪拌する。その後、ジブチルスズジラウレート0.0049部を添加後、カルボキシル基を1つ有するジオール「プラクセル205BA」(ダイセル化学の商品名 数平均分子量510)35部を添加し、イソシアネート基が赤外分光測定により検出されなくなるまで80℃、120分攪拌反応させる。次いで、N,N−ジメチルエタノールアミン6部を添加し中和させ、さらに、イオン交換水72部を添加する。その後、60℃、減圧下、メチルエチルケトンを留去することにより、樹脂固形分70質量%、水30質量%、pH8.0、樹脂あたりのブロックされたイソシアネート基濃度8.0%の水性ブロックポリイソシアネート組成物を得た。この水性ブロックポリイソシアネート組成物の粘度は×であった。
【0051】
〔比較例2〕(水性ブロックポリイソシアネート組成物の製造)
表1に示す各成分を用いる以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
〔実施例6〕(水性塗料組成物の調製と評価)
水性ポリエステルポリオール「SETAL6306 SS−60」(AKZO社の商品名 樹脂水酸基濃度2.7質量%、樹脂酸価43mgKOH/g)100部のジメチルアミノエタノール中和物、実施例1の水性ブロックポリイソシアネート組成物100部を混合し、イオン交換水を添加し、固形分20質量%に調製した。この塗液をアプリケーター塗装し、150℃、30分で焼き付けた。耐衝撃性試験は◎、であった。
【0052】
〔実施例7〜10〕(水性塗料組成物の調製と評価)
表2に示す水性ブロックポリイソシアネート組成物を用いる以外は実施例6と同様に行った。結果を表2に示す。
〔比較例3〕(水性塗料組成物の調製と評価)
水性ポリエステルポリオール「SETAL6306 SS−60」(AKZO社の商品名 樹脂水酸基濃度2.7質量%、樹脂酸価43mgKOH/g)100部のジメチルアミノエタノール中和物、 メラミン「サイメル327」(三井サイテック社の商品名)100部を混合し、イオン交換水を添加し、固形分20質量%に調製した。この塗液をアプリケーター塗装し、150℃、30分で焼き付けた。耐衝撃性試験は×、であった。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の水性ブロックポリイソシアネート組成物を含む水性塗料組成物は、上中塗り、下塗り用として、新車外板用塗料、建築外装塗料、バンパー等のプラスチック部品用塗料、自動車補修用塗料、プレコートメタル等の有機被覆用塗料等の分野で好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件をすべて満たすことを特徴とする水性ブロックポリイソシアネート組成物。
1)前駆体が脂肪族・脂環族ジイソシアネートモノマーの少なくとも1種から誘導されるポリイソシアネートである、親水基を有するブロックポリイソシアネートが50から95質量%
2)有機溶剤が1から49質量%。
3)水が1から49質量%。
【請求項2】
脂肪族・脂環族ジイソシアネートモノマーがヘキサメチレンジイソシアネートである請求項1記載の水性ブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
脂肪族・脂環族ジイソシアネートモノマーの少なくとも1種から誘導されるポリイソシアネートのイソシアネート基平均数が4.0から20である請求項1または2記載の水性ブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかを含む水性塗料組成物。

【公開番号】特開2007−119604(P2007−119604A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313912(P2005−313912)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】