説明

水性塗料からなる絵柄模様層の密着性が高いポリオレフィン系発泡壁紙

【課題】水性塗料からなる絵柄模様層の密着性をはじめとする諸特性において、従前の塩ビ樹脂壁紙の代替品となり得るポリオレフィン系発泡壁紙を提供する。
【解決手段】紙質基材上に、ポリオレフィン系樹脂を含む発泡樹脂層と、絵柄模様層とを少なくとも有する発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層の表面であって、紙質基材の存在する側とは逆面には、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂を含む非発泡樹脂層が形成されており、
(2)絵柄模様層は、水性塗料から形成されており、
(3)絵柄模様層は、前記非発泡樹脂層の表面に形成されている、
ことを特徴とする発泡壁紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料からなる絵柄模様層の密着性が高いポリオレフィン系発泡壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡壁紙としては、紙質基材(裏打紙)に塩化ビニル樹脂(塩ビ樹脂)からなる発泡樹脂層を形成したものが知られている。ところが、近年では、環境に配慮して発泡樹脂層に塩ビ樹脂を使用せず、例えば、ポリオレフィン系樹脂を用いた、いわゆる非塩ビ樹脂壁紙が提案されている(特許文献1〜3等)。
【0003】
非塩ビ樹脂壁紙としては、具体的には、アクリル樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とを含むエマルションにマイクロカプセル型発泡剤を配合した塗料を、紙質基材上に塗工・乾燥後、表面に絵柄模様層を印刷し、次いで樹脂層を発泡後、エンボス版により凹凸模様を賦型してなる発泡壁紙が知られている。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂と熱分解型発泡剤とを含有する組成物からなる未発泡樹脂層を、Tダイ押出し機により紙質基材上に押出し形成後、表面に絵柄模様層を印刷し、次いで未発泡樹脂層を発泡後、エンボス版により凹凸模様を賦型してなる発泡壁紙が知られている。
【0004】
ところが、非塩ビ樹脂壁紙は、絵柄模様層を水性塗料から形成する場合には、絵柄模様層と当該非塩ビ樹脂との密着性が低いという欠点がある。そして、この欠点を改善すべく、種々の方法が提案されている。
【0005】
例えば、絵柄模様層を積層する非塩ビ樹脂層表面をコロナ放電処理後、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂系水性エマルションからなるプライマー層を形成する方法が従来から利用されている。
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術は、絵柄模様層と非塩ビ樹脂との密着性改善とは別に、表面特性(特に耐スクラッチ性)、経済性(製造コスト)等のいずれかにおいて問題がある。このため、結果として、従前の塩ビ壁紙に匹敵する非塩ビ壁紙は未だ開発されていないのが実情である。
【0007】
従って、水性塗料からなる絵柄模様層の密着性をはじめとする諸特性において、従前の塩ビ樹脂壁紙の代替品となり得る非塩ビ樹脂壁紙(特にポリオレフィン系壁紙)の開発が望まれている。
【特許文献1】特開平6−47875号公報
【特許文献2】特開2000−255011号公報
【特許文献3】特開2001−347611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、水性塗料からなる絵柄模様層の密着性をはじめとする諸特性において、従前の塩ビ樹脂壁紙の代替品となり得るポリオレフィン系発泡壁紙を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、絵柄模様層を特定の樹脂層表面に形成する場合は、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の発泡壁紙及びその製造方法に関する。
【0011】
1.紙質基材上に、ポリオレフィン系樹脂を含む発泡樹脂層と、絵柄模様層とを少なくとも有する発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層の表面であって、紙質基材の存在する側とは逆面には、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂を含む非発泡樹脂層が形成されており、
(2)絵柄模様層は、水性塗料から形成されており、
(3)絵柄模様層は、前記非発泡樹脂層の表面に形成されている、
ことを特徴とする発泡壁紙。
【0012】
2.ポリオレフィン系樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂である、上記項1に記載の発泡壁紙。
【0013】
3.エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が、架橋している、上記項2に記載の発泡壁紙。
【0014】
4.非発泡樹脂層が、さらにエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を含む、上記項1〜3のいずれかに記載の発泡壁紙。
【0015】
5.非発泡樹脂層の厚さが、5〜50μmである、上記項1〜4のいずれかに記載の発泡壁紙。

以下、本発明の発泡壁紙について詳細に説明する。
【0016】
1.発泡壁紙
本発明の発泡壁紙は、紙質基材上に、ポリオレフィン系樹脂を含む発泡樹脂層と、絵柄模様層とを少なくとも有する発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層の表面であって、紙質基材の存在する側とは逆面には、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)を含む非発泡樹脂層が形成されており、
(2)絵柄模様層は、水性塗料から形成されており、
(3)絵柄模様層は、前記非発泡樹脂層の表面に形成されている、
ことを特徴とする。
【0017】
前記「紙質基材の存在する側とは逆面」は、以下「おもて面」と称する。
【0018】
本発明の発泡壁紙は、発泡樹脂層のおもて面にEMAAを含む非発泡樹脂層(EMAA含有非発泡樹脂層)が形成されており、当該EMAA含有非発泡樹脂層のおもて面に水性塗料からなる絵柄模様層を形成しているため、絵柄模様層の密着性が良好である。
【0019】
EMAA含有非発泡樹脂層の形成により、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)系水性エマルションからなるプライマー層を形成しなくても絵柄模様層の良好な密着性が確保できる点で経済性(コスト削減)が高い。また、EMMA含有非発泡樹脂層の形成により、発泡壁紙の耐スクラッチ性が高まる。
【0020】
以下、各層について説明する。
【0021】
紙質基材
紙質基材は、壁紙基材として適した機械強度、耐熱性等を有する限り特に限定されず、繊維質シートが一般に使用できる。
【0022】
具体的には、繊維質シートの中でも、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
【0023】
紙質基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m程度が好ましく、50〜80g/m程度がより好ましい。
【0024】
発泡樹脂層
本発明の発泡壁紙は、紙質基材上に、ポリオレフィン系樹脂を含む発泡樹脂層を有する。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、EVA、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、発泡樹脂層においてマトリックス樹脂として含有されていればよい。これらの中でも、EVAが好ましい。EVAは電子線照射により架橋する特性を有し、架橋した場合には、発泡壁紙の耐スクラッチ性をさらに改善できる。
【0026】
EVAを用いる場合には、酢酸ビニル含有量が10〜30重量%のものが好ましい。かかる範囲内の酢酸ビニル含有量のEVAを用いる場合には、発泡壁紙の耐スクラッチ性をより向上できる。
【0027】
発泡樹脂層の発泡状態(例えば、発泡セルの大きさ、発泡セル密度等)は限定されず、発泡壁紙の種類に応じて適宜設定できる。
【0028】
発泡樹脂層は、無機充填剤、顔料、難燃剤、熱安定剤等の添加剤を含んでもよい。
【0029】
上記のうち、無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。無機充填剤の含有量は、発泡樹脂層を構成するEVA樹脂100重量部に対して、0〜100重量部程度が好ましく、20〜70重量部程度がより好ましい。
【0030】
顔料については、次のものが挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムエロー、ニッケルチタンエロー、クロムチタンエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。
【0031】
添加剤としては、上記のものに限定されず、他の公知の添加剤も使用できる。添加量は、発泡壁紙の種類に応じて幅広い範囲から選択できる。
【0032】
発泡樹脂層の厚みは限定的ではないが、300〜1000μm程度が好ましく、400〜800μm程度がより好ましい。
【0033】
EMAA含有非発泡樹脂層
発泡樹脂層のおもて面には、EMAA含有非発泡樹脂層が形成されている。EMAAは限定的ではないが、MAA含有量が4〜15重量%程度のものが好ましい。このようなEMAAとしては、例えば、EMAA(製品名「ニュクレル N1035」、MFR:35g/10分、三井・デュポンポリケミカル製)が好適である。
【0034】
EMAA非発泡樹脂層のおもて面に、後記する絵柄模様層を積層するため、水性塗料からなる絵柄模様層の良好な密着性が得られる。
【0035】
当該非発泡樹脂層は、EMAAのみから構成されることが好ましいが、他の樹脂を含有してもよい。他の含み得る樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。具体的には、発泡樹脂層がEVAをマトリックス樹脂とする場合には、EMAA含有非発泡樹脂層は、さらにEVAを含むことが好ましい。これは、EMAAによる絵柄模様層の密着性改善作用を阻害しない範囲でEVAを含有する場合には、同種樹脂の相溶性により、EVAを含む下層の発泡樹脂層との密着性をより高められるためである。なお、EMAAと他の樹脂とを混合して用いる場合には、EMAAの含有量は、当該非発泡樹脂層に含まれる樹脂の50〜99重量%程度とすることが好ましい。
【0036】
EMAA含有非発泡樹脂層の厚みは限定的ではないが、5〜50μm程度が好ましく、10〜20μm程度がより好ましい。
【0037】
EMAA含有非発泡樹脂層のおもて面には、コロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理方法は、常法に従えばよい。
【0038】
絵柄模様層
本発明の発泡壁紙は、前記EMAA含有非発泡樹脂層のおもて面に水性塗料からなる絵柄模様層が形成されている。EMAA含有非発泡樹脂層のおもて面に絵柄模様層を形成するため、絵柄模様層が水性塗料から形成されるにも関わらず、良好な密着性が得られる。
【0039】
絵柄模様層は、発泡壁紙に意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
【0040】
絵柄模様層は、例えば、EMAA含有非発泡樹脂層のおもて面に絵柄模様を印刷することにより形成できる。印刷手法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキは、水性塗料であればよい。
【0041】
前記水性塗料としては、水性エマルション組成物を使用することが望ましい。水性エマルション組成物としては、具体的には着色剤及び水性エマルション樹脂(バインダー樹脂)を含むものを使用することができる。
【0042】
着色剤は特に限定されず、前記したものが使用できる。
【0043】
水性エマルション樹脂は、水又は水系溶媒に樹脂成分を分散させたものであり、バインダー樹脂として使用されているものを採用できる。
【0044】
溶媒に関し、水は、例えば公知の水系塗工剤等に使用されているグレードの工業用水が使用できる。また、水系溶媒としては、水と有機溶媒とからなる混合溶媒を使用することもできる。有機溶媒としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等の低級アルコールのほか、グリコール類、グリコールエステル類等の水溶性有機溶剤を好適に用いることができる。なお、水溶性有機溶剤は、水性エマルション樹脂の流動性改良、被塗工体である基材シートへの濡れ性の向上、乾燥性の調整等の目的で使用されるものであり、その目的に応じてその種類、使用量等が決定される。混合溶媒の場合、水及び有機溶媒の割合は一般に水:有機溶媒20:80〜100:0(重量比)の範囲内で適宜調整することができる。
【0045】
樹脂成分としては、公知の水系塗工剤、水性塗料等に使用されている樹脂が挙げられる。例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。これらの中でも、耐熱性、耐水性、耐候性等の点において、アクリルウレタン系樹脂を用いることが好ましい。アクリルウレタン系樹脂を使用する場合、その平均分子量は1万〜10万程度とすることが好ましい。
【0046】
水性エマルション組成物には、さらに耐ブロッキング性、エンボス加工時の耐熱性の向上、アンカー効果による接着力の向上等の少なくとも1つを目的として、必要に応じて体質顔料を添加することができる。
【0047】
体質顔料としては、公知又は市販のものを使用でき、特に限定はない。例えば、白土、タルク、クレー、ケイソウ土、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナホワイト、シリカ、カオリン、マイカ、水酸化アルミニウム等の無機系顔料、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリシロキサン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機系顔料、あるいはこれらの共重合体からなる有機系顔料が利用できる。これらは、通常は粒子の形態で使用することが望ましい。
【0048】
水性エマルション組成物における水又は水系溶媒の使用量は、水性エマルション組成物中の固形分含有量が20〜80重量%となるような範囲内から適宜決定すれば良い。
【0049】
絵柄模様層の厚みは絵柄模様の種類より異なるが、0.1〜10μm程度が好ましい。
【0050】
表面保護層
本発明の発泡壁紙は、最表面層として表面保護層を有してもよい。表面保護層は、発泡壁紙に耐スクラッチ性、耐摩耗性、耐汚染性等の表面物性を付与できる。
【0051】
表面保護層を形成する樹脂は限定的でないが、特に耐スクラッチ性、耐摩耗性、耐汚染性等に優れるという点でナイロン樹脂が好ましい。ナイロン樹脂とは、主鎖にアミド結合を持つ重合体で、ジアミンと二塩基酸の重縮合、ラクタムの開環重合、アミノカルボンの重縮合などによって得られるポリアミド樹脂のうち線状のものをナイロン樹脂という。ナイロン樹脂にはナイロンmn(mはジアミン、nは二塩基酸のそれぞれの炭素原子数)とナイロンn(nはω−アミノ酸又はラクタムの炭素原子数)の二つのタイプがある。これら高機能性プラスチックの一つであるナイロン樹脂は、結晶性の線状高分子であり、分子鎖中に特異なアミド結合−CONH−が存在するため、種々の優れた性質(耐衝撃性、耐摩耗性、自己消火性)を有する。
【0052】
表面保護層の厚みは限定的でないが、表面物性、加工性、コスト対効果等の観点から5〜30μmの範囲とすることが好ましい。
【0053】
エンボス模様
本発明の発泡壁紙は、おもて面に任意のエンボス模様をさらに有してもよい。
【0054】
エンボス模様は、例えば、公知のエンボス版により付与できる。例えば、前記絵柄模様層又は表面保護層のおもて面から加熱しながらエンボス版を押圧することにより、発泡壁紙に任意のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
【0055】
2.発泡壁紙の製造方法
本発明の発泡壁紙の製造方法は特に限定されない。一般に、紙質基材上に熱分解型発泡剤を含む未発泡樹脂層とEMAA含有非発泡樹脂層とを順に形成後、非発泡樹脂層上に水性塗料により絵柄模様層を形成し、次いで発泡剤を加熱することにより未発泡樹脂層を発泡樹脂層とする製造方法が好適である。
【0056】
未発泡樹脂層は、未発泡樹脂層形成用組成物(未発泡樹脂層を構成する樹脂と熱分解型発泡剤を含む組成物)から形成される。形成方法は限定的ではなく、カレンダー方式、溶融押出し方式のいずれも使用できる。溶融押出し方式を採用する場合には、押出し性が良好なメルトフローレートのものを選択することが望ましい。
【0057】
熱分解型発泡剤は、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡剤の含有量は、組成物中の樹脂100重量部に対して、1〜20重量部程度が好ましい。
【0058】
未発泡樹脂層形成用組成物は、無機充填剤を含有してもよい。無機充填剤については前記の通りである。その他、発泡セル調整剤、熱安定剤、難燃剤等を配合できる。これらの配合量については、発泡壁紙の種類に応じて適宜設定できる。
【0059】
EMAA含有非発泡樹脂層は、EMAA含有非発泡樹脂層形成用組成物(少なくともEMAAを含む組成物)から形成される。形成方法は限定的ではなく、上記カレンダー方式又は溶融押出し方式のいずれも使用できる。
【0060】
なお、未発泡樹脂層とEMAA含有非発泡樹脂層は隣接2層の関係であるため、押出し機を用いて2種2層同時押出しすることにより容易に2層を形成できる。押出し機は、例えば、2種2層同時押出しが可能なマルチマニホールドタイプのものが好適に使用できる。溶融温度(シリンダー温度・ダイス温度)は、樹脂の種類に応じて適宜調整する。
【0061】
前記押出し成形により形成した積層体は、直接に紙質基材上に押出ししてもよく、紙質基材上とは別に形成してもよい。前者の場合には、積層体は溶融熱により良好な接着性を有するため、紙質基材と密着する。後者の場合には、紙質基材上に積層体を載せて、熱ラミネートすることにより接着できる。
【0062】
次いで、EMAA含有非発泡樹脂層のおもて面に水性塗料により絵柄模様層を形成する。絵柄模様層の説明は、前記の通りである。
【0063】
当該絵柄模様層の形成前に、積層体に電子線照射を行ってもよい。例えば、発泡樹脂層構成樹脂がEVAの場合には、電子線照射によりEVAが架橋するため、発泡工程での発泡程度を調整することができる。また、架橋により強度が増すため、発泡壁紙の耐スクラッチ性の向上にもつながる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、1〜7Mrad程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
【0064】
電子線照射を行う場合には、前記組成物中に架橋助剤を含有してもよい。
【0065】
架橋助剤としては、電子線照射による架橋を促進するものであればよく、例えば、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマー、オリゴマーなどが挙げられる。架橋助剤は、EVA100重量部に対して、0〜10重量部程度が好ましく、1〜4重量部がより好ましい。
【0066】
絵柄模様層の形成前に、常法によりEMAA含有非発泡樹脂層のおもて面にコロナ放電処理を行ってもよい。
【0067】
絵柄模様層の形成後、発泡剤を加熱することにより未発泡樹脂層を発泡樹脂層とする。
【0068】
加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される限り限定されない。加熱温度は、180〜240℃程度が好ましく、210〜230℃程度がより好ましい。加熱時間は、20〜60秒程度が好ましく、25〜40秒程度がより好ましい。
【0069】
絵柄模様層の形成後、発泡前に、必要に応じて、表面保護層を形成してもよい。表面保護層の形成方法は、前記発泡樹脂層の形成方法等に準ずる。
【0070】
エンボス模様を賦型する場合には、発泡壁紙のおもて面から公知のエンボス版を押圧することにより賦型すればよい。
【発明の効果】
【0071】
本発明の発泡壁紙は、発泡樹脂層のおもて面にEMAAを含む非発泡樹脂層(EMAA含有非発泡樹脂層)が形成されており、当該EMAA含有非発泡樹脂層のおもて面に水性塗料からなる絵柄模様層を形成しているため、絵柄模様層の密着性が良好である。EMAA含有非発泡樹脂層の形成により、EVA系水性エマルションからなるプライマー層を形成しなくても絵柄模様層の良好な密着性が確保できる点で経済性(コスト削減)が高い。また、EMMA含有非発泡樹脂層の形成により、発泡壁紙の耐スクラッチ性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0073】
実施例1
非発泡樹脂層を形成するために、EMAA(製品名「ニュクレル N1035」、MFR:35g/10分、三井・デュポンポリケミカル製)を用意した。
【0074】
未発泡樹脂層を形成するために、下記表1に記載の成分を含む組成物を用意した。
【0075】
【表1】

【0076】
上記樹脂及び樹脂含有組成物を溶融し、2種2層マルチマニホールドTダイ押出し機を用いて厚み110μmの紙質基材(坪量70g)上に2層同時押出し積層した。Tダイ押出し機の温度条件は、EMAAを含むシリンダーの温度:160℃、EVAを含むシリンダーの温度:120℃、ダイス温度:ともに120℃とした。
【0077】
同時押出し積層は、紙質基材と未発泡樹脂層とが接するように、未発泡樹脂層/非発泡樹脂層の順に積層した。各層の厚みは、前記の順に15μm/100μmとした。
【0078】
積層後、非発泡樹脂層の上から電子線(175kV、5Mrad)を照射してEVAを架橋後、非発泡樹脂層のおもて面にコロナ放電処理を施した。
【0079】
次いで、非発泡樹脂層のおもて面にグラビア印刷により布目絵柄の絵柄模様層を形成した。印刷インクは、水性塗料(製品名「ハイドリック」大日精化工業製)を用いた。
【0080】
次いで、当該積層体をギアオーブン中、220℃で30秒間加熱した。これにより、熱分解型発泡剤が分解し、未発泡樹脂層を発泡樹脂層とした。
【0081】
次いで、絵柄模様層のおもて面から、発泡体に対してエンボス加工を施して、布目模様パターンを賦型した。
【0082】
以上の過程を経て、発泡壁紙を作製した。
【0083】
比較例1
非発泡樹脂層を構成する樹脂を、EVA(製品名「エバテートD4010」、MFR:10、住友化学製)とした以外は、実施例1と同様にして発泡壁紙を作製した。
【0084】
比較例2
非発泡樹脂層を構成する樹脂を、EVA(製品名「エバテートD4010」、MFR:10、住友化学製)とし、コロナ放電処理後、グラビア印刷機によりEVA系水性エマルションからなるプライマー層を2g/m塗工した以外は、実施例1と同様にして発泡壁紙を作製した。
【0085】
試験例1(絵柄模様層の密着性)
実施例及び比較例で作製した発泡壁紙について、絵柄模様層の密着性を評価した。
【0086】
具体的には、絵柄模様層にセロテープ(登録商標)(ニチバン製)を貼り付けて剥がし、テープ側へのインキの取られの程度から密着性を評価した。テープへのインキ取られが実質的に認められないものを○と評価した。また、テープへのインキ取られが明らかに認められるものを×と評価した。
【0087】
試験例2(耐スクラッチ性)
実施例及び比較例で作製した発泡壁紙の耐スクラッチ性を評価した。
【0088】
試験・評価は、日本ビニル工業会ビニル建装部会制定の「表面強化壁紙性能規定」に準拠して行った。具体的には、次の手順に従って試験・評価を行った。
【0089】
学振摩耗試験機(JIS L0849 摩耗試験機II型)に試験片(発泡壁紙)を取り付けた。試験機の摩擦子として同部会指定の金属製爪を用いて、金属爪先端に200g荷重をかけて試験片上を5往復させた。試験片の試験後の表面状態を肉眼観察した。
【0090】
前記規定における耐スクラッチ性の評価は、5級:変化なし、4級:表面に少し変化あり、3級:表面が破けて見える、2級:表面が破けて紙等の裏打材が見える(長さ1cm未満)、1級:表面が破けて紙等の裏打材が見える(長さ1cm以上)の5段階である。
【0091】
試験例3では、上記5〜4級に該当するものを○と評価し、3級に該当するものを△と評価し、2〜1級に該当するものを×と評価した。
【0092】
試験例3(経済性)
実施例及び比較例において、発泡壁紙の製造コストを対比評価した。
【0093】
コストが相対的に低いものを○と評価した。コストが相対的に高いものを×と評価した。
【0094】
上記試験の結果を下記表2に示す。
【0095】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙質基材上に、ポリオレフィン系樹脂を含む発泡樹脂層と、絵柄模様層とを少なくとも有する発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層の表面であって、紙質基材の存在する側とは逆面には、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂を含む非発泡樹脂層が形成されており、
(2)絵柄模様層は、水性塗料から形成されており、
(3)絵柄模様層は、前記非発泡樹脂層の表面に形成されている、
ことを特徴とする発泡壁紙。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂である、請求項1に記載の発泡壁紙。
【請求項3】
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が、架橋している、請求項2に記載の発泡壁紙。
【請求項4】
非発泡樹脂層が、さらにエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡壁紙。
【請求項5】
非発泡樹脂層の厚さが、5〜50μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡壁紙。

【公開番号】特開2006−272848(P2006−272848A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98107(P2005−98107)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】