説明

水性塗料組成物

【課題】生分解性且つバイオマス由来の材料を使用した上で、耐水性、耐アルカリ性、耐摩耗性、耐候性等の塗膜性能に優れた水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】(A)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などのカルボキシル基含有水性樹脂、(B)カルボキシル基含有変性澱粉、及び(C)カルボキシル基と硬化反応する官能基を有する、例えばカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物および金属キレート化合物である硬化剤を含有する水性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の観点から、有機溶剤型塗料から水性塗料への転換が進められている。また、塗料は、一般に、耐水性、耐アルカリ性、耐磨耗性、耐候性等の塗膜性能に優れることが必要である。
【0003】
一方、環境に対する負荷をより軽減する観点から、近年、塗料の原料として、生分解性の材料を用いることが行われている。また、脱石油化の観点から、バイオマス(特に植物)由来の原料は、ライフサイクルの中で二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロとなり、大気中の二酸化炭素を増加させない点から、注目されている。例えば、生分解性であり且つバイオマス由来材料である澱粉を塗料用樹脂成分として使用したものとして、澱粉と、澱粉分子に含まれる水酸基と硬化反応するイソシアネート基等の官能基を有する硬化剤とを含有する硬化型澱粉組成物が公知である(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、この硬化型澱粉組成物には、澱粉の水性化に際し、親水化のために導入されたカルボキシル基が塗膜中に残って、耐水性等の塗膜性能を低下させるという問題がある。
【特許文献1】特開2004−224887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、生分解性且つバイオマス由来の材料を使用した上で、耐水性、耐アルカリ性、耐摩耗性、耐候性等の塗膜性能に優れた水性塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意研究した。その結果、塗料用樹脂成分として、カルボキシル基含有水性樹脂とカルボキシル基含有変性澱粉とを併用し、これにカルボキシル基と硬化反応する硬化剤を組み合わせることにより、目的を達成し得ることを見出し、これに基づいて、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下の水性塗料組成物を提供するものである。
【0008】
1.(A)カルボキシル基含有水性樹脂、
(B)カルボキシル基含有変性澱粉、及び
(C)カルボキシル基と硬化反応する官能基を有する硬化剤
を含有する水性塗料組成物。
【0009】
2.水性樹脂(A)の酸価が、3〜200mgKOH/gである上記項1に記載の水性塗料組成物。
【0010】
3.水性樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が、−50〜+50℃である上記項1に記載の水性塗料組成物。
【0011】
4.水性樹脂(A)が、カルボキシル基含有水性アクリル樹脂、カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂、及びカルボキシル基含有水性ウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【0012】
5.変性澱粉(B)の重量平均分子量が、100万以下である上記項1に記載の水性塗料組成物。
【0013】
6.変性澱粉(B)の酸価が、3〜200mgKOH/gである上記項1に記載の水性塗料組成物。
【0014】
7.水性樹脂(A)と変性澱粉(B)との合計固形分重量に対する変性澱粉(B)の割合が、80重量%以下である上記項1に記載の水性塗料組成物。
【0015】
8.硬化剤(C)が、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物及び金属キレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である上記項1に記載の水性塗料組成物。
【0016】
9.硬化剤(C)の配合割合が、水性樹脂(A)と変性澱粉(B)との合計カルボキシル基1当量に対して、カルボキシル基と硬化反応する官能基が0.05〜1当量となる量である上記項1に記載の水性塗料組成物。
【0017】
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物は、カルボキシル基含有水性樹脂(A)、カルボキシル基含有変性澱粉(B)、及びカルボキシル基と硬化反応する官能基を有する硬化剤(C)を、必須成分として含有する。
【0018】
カルボキシル基含有水性樹脂(A)
カルボキシル基含有水性樹脂(A)は、カルボキシル基含有変性澱粉(B)と共に、カルボキシル基と硬化反応する硬化剤(C)と反応して、塗膜を形成する成分である。カルボキシル基含有水性樹脂の形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、水溶液樹脂、エマルション樹脂、ディスパージョン樹脂等の形態を挙げることができる。また、コア・シェル型のエマルション樹脂又はディスパージョン樹脂であってもよい。
【0019】
カルボキシル基含有水性樹脂(A)は、その酸価が、3〜200mgKOH/g程度の範囲内であることが好ましい。酸価が3mgKOH/g未満の場合は、組成物の硬化性が低下して、塗膜の耐水性や耐摩耗性が低下する傾向にあり、一方200mgKOH/gを越える場合は、塗膜の耐水性が低下するおそれがある。カルボキシル基含有水性樹脂(A)の酸価は、5〜150mgKOH/g程度であることがより好ましく、10〜100mgKOH/g程度の範囲内であることが更に好ましい。
【0020】
また、カルボキシル基含有水性樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、−50〜+50℃程度であるのが好ましい。ガラス転移温度(Tg)が−50℃より低いと、塗膜の粘着感(タック感)が強くなる傾向にあり、一方+50℃より高いと、塗膜に割れ等の問題が生じる傾向にある。該ガラス転移温度(Tg)は、−30〜+30℃程度であることがより好ましい。
【0021】
尚、本発明におけるガラス転移温度(Tg)は、下式から算出される値である。
1/Tg=W/T+W/T+・・・W/T
式中、W、W・・・Wは各モノマーの重量%[(各モノマーの配合量/モノマー全重量)×100]であり、T、T・・・Tは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)である。
【0022】
カルボキシル基含有水性樹脂(A)としては、有機溶剤中で溶液重合して得られたカルボキシル基含有樹脂中のカルボキシル基を塩基性化合物で中和することによって水溶化又は水分散化したもの;有機溶剤中で溶液重合して得られたカルボキシル基含有樹脂を後乳化したもの;水性媒体中で乳化重合又は懸濁重合してエマルション又はディスパージョンとして得られたカルボキシル基含有樹脂等をあげることができる。
【0023】
カルボキシル基含有水性樹脂(A)としては、例えば、カルボキシル基含有水性アクリル樹脂、カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂、カルボキシル基含有水性ウレタン樹脂等を挙げることができる。
【0024】
上記カルボキシル基含有水性アクリル樹脂としては、特に限定されず、例えば、カルボキシル基を有する共重合性不飽和単量体及びその他の共重合性不飽和単量体からなる単量体混合物を共重合することによって得られるアクリル樹脂等を挙げることができる。
【0025】
上記カルボキシル基を有する共重合性不飽和単量体としては、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いる。上記その他の共重合性不飽和単量体としては、特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有共重合性不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有共重合性不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系共重合性不飽和単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系共重合性不飽和単量体;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサテック酸ビニル等のビニル系共重合性不飽和単量体等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いる。
【0026】
上記カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂は、アルコールと酸のエステル結合形成反応によって得られるものである。上記カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂は、多価アルコール、多価カルボン酸、ラクトン、ヒドロキシカルボン酸等を原料として得られるものである。本明細書において、ポリエステル樹脂には、いわゆるアルキド樹脂も含まれる。
【0027】
上記多価アルコールは、1分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物である。上記多価アルコールとしては、特に限定されず、例えば、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、カプロラクトンジオール及びビスヒドロキシエチルタウリン等のジオール;トリメチロールプロパン及びヘキサントリオール等のトリオール;ペンタエリトリトール等のテトラオール等を挙げることができる。上記アルコール成分は、1種又は2種以上を用いる。
【0028】
上記多価カルボン酸は、1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物である。上記多価カルボン酸としては特に限定されず、例えば、フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸及びテトラヒドロフタル酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリメリット酸等のトリカルボン酸等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いる。また、必要に応じて、ステアリン酸、ラウリル酸及びミリスチン酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸及びリノレイン酸等の不飽和脂肪酸;ひまし油、パーム油及び大豆油等の天然油脂及びそれらの変性物の長鎖脂肪酸等を併用することができる。
【0029】
上記ラクトンは、環状エステル結合を有する化合物である。上記ラクトンとしては特に限定されず、例えば、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。上記ラクトンは、1種又は2種以上を用いる。また、上記ラクトンは、上記多価アルコール及び多価カルボン酸と併用してもよい。
【0030】
上記ヒドロキシカルボン酸は、1分子中に水酸基とカルボキシル基とを有する化合物である。上記ヒドロキシカルボン酸としては、特に限定されず、例えば、ジメチロールプロピオン酸等のヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。上記ヒドロキシカルボン酸は、1種又は2種以上を用いる。また、上記ヒドロキシカルボン酸は、上記多価アルコール、上記多価カルボン酸及び上記ラクトンと併用してもよい。
【0031】
上記カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂は、上記原料によって得られたポリエステル樹脂が水酸基を有する場合、上記水酸基の一部又は全部を無水フタル酸、無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸等の酸無水物によってカルボキシル基に変性したものであってもよい。
【0032】
上記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂は、ジイソシアネート化合物とジオール成分との反応により得られる樹脂であり、ジオール成分としてカルボキシル基を有するジオールを使用したものである。上記カルボキシル基を有するジオールとしては特に限定されず、例えば、ジメチロールプロピオン酸等を挙げることができる。
【0033】
上記カルボキシル基含有樹脂を水に分散又は溶解するために使用する上記塩基性化合物としては、特に限定されず、例えば、アンモニア水;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジメチルエタノールアミン等の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等の無機塩基類等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を使用することができる。塩基性化合物の配合によって定まるカルボキシル基含有水性樹脂(A)のpHは、6〜10程度であるのが好ましい。pHが6未満であると、中和が十分ではなく、樹脂の貯蔵安定性が低下する傾向がある。他方、pHが10を超えると硬化剤(C)との硬化性が低下する傾向がある。
【0034】
カルボキシル基含有変性澱粉(B)
カルボキシル基含有変性澱粉(B)は、カルボキシル基含有水性樹脂(A)と共に、カルボキシル基と硬化反応する硬化剤(C)と反応して、塗膜を形成する成分である。カルボキシル基含有変性澱粉(B)は、澱粉を変性することにより、カルボキシル基を導入したものである。
【0035】
原料の澱粉としては、特に限定されるものではなく、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉等を使用することができるが、更にこれらの澱粉を、エステル化した化工澱粉、エーテル化した化工澱粉等も使用することができる。これらの原料澱粉は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0036】
澱粉へのカルボキシル基の導入は、澱粉が有する水酸基に、エステル化反応、エーテル化反応、酸化反応等の公知の反応を施すことによって、行うことができる。エステル化反応は、例えば、澱粉に無水コハク酸等の二塩基酸無水物を反応させて、コハク酸エステル化澱粉等を得る反応である。エーテル化反応は、例えば、澱粉にモノクロロ酢酸等のカルボン酸ハロゲン化物を反応させて、カルボキシメチル化澱粉等を得る反応である。また、酸化反応は、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤により澱粉を処理する方法である。酸化反応におけるカルボキシル基の生成量は、酸化剤添加量、反応pH、触媒種類などにより調節することが可能である。上記触媒としては、例えば、ニッケル、銅、コバルトなどの金属イオン;臭化物イオン;TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル)等を挙げることができる。
【0037】
カルボキシル基含有変性澱粉(B)は、その重量平均分子量が100万以下程度であるのが好ましい。重量平均分子量が、100万を超えると糊化の際、粘度が高くなりすぎて、澱粉固形分を大きくできず、その結果塗料の固形分も低くなり、塗膜外観が低下する傾向にある。上記重量平均分子量は、5000〜100万程度であるのがより好ましく、1〜80万程度であるのが更に好ましい。尚、本明細書において、澱粉の重量平均分子量は、標準サンプルとしてプルランを用いたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により測定したものである。分子量の調節方法は、特に限定されず、原料澱粉またはカルボキシル基が導入された変性澱粉を、酸分解、酸化分解、酵素分解など既知の方法で低分子化することで行うことができる。
【0038】
カルボキシル基含有変性澱粉(B)は、その酸価が、3〜200mgKOH/g程度の範囲内であることが好ましい。酸価が3mgKOH/g未満の場合は、組成物の硬化性が低下して、塗膜の耐水性、耐洗浄性、耐磨耗性が低下する傾向にあり、一方200mgKOH/gを越える場合は、塗膜の耐水性が低下するおそれがある。カルボキシル基含有水性樹脂(A)の酸価は、5〜150mgKOH/g程度であることがより好ましく、10〜100mgKOH/g程度の範囲内であることが更に好ましい。
【0039】
カルボキシル基含有変性澱粉(B)の使用割合は、カルボキシル基含有水性樹脂(A)と当該変性澱粉(B)との合計固形分重量に対して、当該変性澱粉(B)の割合が、80重量%以下程度であるのが好ましい。変性澱粉(B)の割合が、80重量%を越える場合は、耐水性、耐摩耗性等の塗膜性能が低下する傾向にある。変性澱粉(B)の使用割合は、環境への負荷軽減の観点から、80重量%までの範囲でできるだけ多くすることが好ましく、通常、水性樹脂(A)と変性澱粉(B)との合計固形分重量に対して、当該変性澱粉(B)を、少なくとも5重量%以上程度とするのが良い。
【0040】
カルボキシル基と硬化反応する官能基を有する硬化剤(C)
硬化剤(C)が有するカルボキシル基と硬化反応する官能基としては、カルボジイミド基、オキサゾリン基、エポキシ基、金属イオン等を挙げることができる。従って、硬化剤(C)としては、これらの官能基を有する化合物である、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物等から選ばれる1種を用いるか、又は2種以上を適宜組み合わせて用いるのが、好ましい。
【0041】
硬化剤(C)の配合割合は、水性樹脂(A)と変性澱粉(B)との合計カルボキシル基1当量に対して、カルボキシル基と硬化反応する官能基が0.05〜1当量程度となる量であるのが好ましい。配合する硬化剤(C)が有する該官能基が0.05当量未満となると水性樹脂(A)及び変性澱粉(B)のカルボキシル基との反応点が乏しく、残存するカルボキシル基により、塗膜の耐水性、耐候性が低下する傾向にあり、一方、1当量を超えると、残存する硬化剤(C)の親水性基の影響により耐水性の低下の恐れもあるので好ましくない。硬化剤(C)の配合割合は、水性樹脂(A)と変性澱粉(B)との合計カルボキシル基1当量に対して、硬化剤(C)の該官能基が0.5〜1当量程度となる量であるのがより好ましい。
【0042】
カルボジイミド化合物としては、市販品を用いることができ、その商品名として、例えば、「カルボジライトV−02」(有効成分40%、水溶性タイプ、日清紡(株)製)、「カルボジライトV−02−L2」(有効成分40%、水溶性タイプ、日清紡(株)製)、「カルボジライトE−01」(有効成分40%、水分散性タイプ、日清紡(株)製)、「カルボジライトE−02」(有効成分40%、水分散性タイプ、日清紡(株)製)等を挙げることができる。
【0043】
オキサゾリン化合物としては、市販品を用いることができ、その商品名として、例えば、「エポクロスWS−700」(有効成分25%、水溶性タイプ、オキサゾリン基含有アクリル樹脂、日本触媒(株)製)、「エポクロスK−2010E」(有効成分40%、水分散性タイプ、オキサゾリン基含有スチレン−アクリル樹脂、日本触媒(株)製)、「エポクロスK−2020E」(有効成分40%、水分散性タイプ、オキサゾリン基含有スチレン−アクリル樹脂、日本触媒(株)製)等を挙げることができる。
【0044】
エポキシ化合物としては、市販品を用いることができ、その商品名として、例えば、「デナコールEX−512」(有効成分100%、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製)、「デナコールEX−614B」(有効成分100%、水溶性タイプ、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製)等を挙げることができる。
【0045】
金属キレート化合物としては、市販品を用いることができ、その商品名として、例えば、「ジルコゾールAC−7」(有効成分28%(溶媒は水)、水溶性タイプ、炭酸ジルコニールアンモニウム[(NH)ZrO(CO)]、第一稀元素工業(株)製)、「アルミキレートM」(有効成分100%、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート,川研ファインケミカル(株)製)等を挙げることができる。
【0046】
任意成分
本発明の水性塗料組成物には、水性樹脂(A)、変性澱粉(B)及び硬化剤(C)の必須成分に加えて、必要に応じて、着色顔料、体質顔料、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、凍結防止剤、造膜助剤、防かび剤、抗菌剤、防腐剤、表面調整剤等の任意成分を配合することができる。
【0047】
上記着色顔料としては、特に限定されず、例えば、黄色酸化鉄、酸化鉄、カーボンブラック、二酸化チタン等の無機顔料;アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等の有機顔料等を挙げることができる。また、上記体質顔料としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、クレー、タルク、珪藻土等を挙げることができる。
【0048】
本発明の水性塗料組成物の顔料体積濃度は、10〜90%程度であることが好ましい。10%未満であると塗膜の隠蔽性が低下する恐れがあり、90%を越えると造膜性及び膜強度が低下する恐れがある。
【0049】
水性塗料組成物の調製及び適用
本発明の水性塗料組成物は、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基含有水性樹脂(A)、糊化したカルボキシル基含有変性澱粉(B)及び各種任意成分を、水媒体中で混合攪拌した後、硬化剤(C)を加えることにより、容易に調製することができる。水媒体としては、各成分製造時に含まれるものであってもよいし、必要なら適宜イオン交換水等を加えてもよい。混合機としては、例えば、ディスパー、SG分散機、ロール型混練機、ボールミル、加圧ニーダー等の塗料分野において公知のものを使用することができる。
【0050】
カルボキシル基含有変性澱粉(B)は、予め糊化して用いられる。糊化の方法は特に限定されず、連続糊化装置により澱粉スラリーに蒸気を連続的に加えて糊化させる方法、澱粉スラリーを攪拌しながら加温し糊化させる方法等がある。温度、時間等の糊化条件は使用する澱粉の物性に合わせて適宜調節することができる。
【0051】
本発明の水性塗料組成物は、前記の様に一液型組成物とする以外に、例えば、カルボキシル基含有水性樹脂(A)、糊化したカルボキシル基含有変性澱粉(B)及び各種任意成分を含有する成分と、硬化剤(C)を含有する硬化剤成分とを別々に保存しておき、使用時にこれらを混合する、いわゆる二液型組成物としてもよい。長期の貯蔵安定性を確保したい場合には、二液型組成物とすることが好ましい。
【0052】
本発明水性塗料組成物を適用する被塗物としては、特に限定されず、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム等およびその表面処理物等の金属基材;セメント類、石灰類、石膏類等のセメント系基材;ポリ塩化ビニル類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、アクリル類等のプラスチック系基材等を挙げることができる。また、これらの各種基材からなる、建材、建築物、構造物等の建築・建材分野の各種被塗物;自動車車体、自動車部品、自動車内装品、自動車外装品等の自動車工業分野の各種被塗物;電化製品、電気部品、電子部品等の電気・電子工業分野の各種被塗物;家庭用品等のその他の分野の各種被塗物等を挙げることができる。
【0053】
また、本発明塗料組成物の塗装方法としては、特に限定されず、例えば、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装等を挙げることができる。塗装後、通常、常温乾燥又は加熱乾燥させることにより硬化塗膜を得ることができる。なお、塗布量;下塗り、中塗り、上塗り等の塗装順;塗装膜厚;乾燥時間等は、塗料の種類や適用する被塗物に応じて任意に設定することができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明の水性塗料組成物によれば、塗料用樹脂成分として、カルボキシル基含有水性樹脂(A)とカルボキシル基含有変性澱粉(B)とを併用し、これにカルボキシル基と硬化反応する硬化剤(C)を組み合わせたことにより、次のような格別顕著な効果が奏される。
【0055】
(1)耐水性、耐アルカリ性、耐磨耗性、耐候性等の塗膜性能に優れた塗膜が得られる。特に、カルボキシル基を硬化反応に用いるため、塗膜中にカルボキシル基が残存し難いことにより、良好な耐水性が発揮される。
【0056】
(2)水性塗料組成物であり、しかも生分解性且つバイオマス由来であるカルボキシル基含有変性澱粉(B)を使用していることにより、脱石油化、二酸化炭素削減等の観点から、環境への負荷が大幅に軽減されている。
【0057】
(3)従って、建築・建材分野、自動車工業分野、電気・電子工業分野、その他の分野において用いられる水性塗料組成物として、好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、各例において、部及び%は、原則として、重量基準である。
【0059】
カルボキシル基含有水性アクリル樹脂(A)の調製
製造例1
滴下漏斗、温度計、窒素導入管、還流冷却器および攪拌機を備えたセパラプルフラスコに、イオン交換水34.5部、乳化剤(商品名「ペレックスSS−H」、花王社製、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム)0.3部を仕込み、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。スチレン15部、2−エチルヘキシルアクリレート41.1部、メチルメタクリレート42.0部及びアクリル酸1.9部からなるモノマー混合液に、ドデシルメルカプタン0.6部を加えた後、これを、「ペレックスSS−H」1.2部をイオン交換水50部に溶解させた乳化剤水溶液中に加え、ミキサーを用いて乳化させて得たプレエマルションと、過硫酸アンモニウム0.3部をイオン交換水13部に溶解させた開始剤水溶液とを、上記フラスコ中へ、別個の滴下漏斗から同時に滴下した。前者は120分間、後者は150分間に渡って均等に滴下した。滴下終了後、同温度でさらに120分間反応を継続した。冷却後、用いたアクリル酸の10モル%に相当するアンモニア水で中和した。中和物を200メッシュ金網で濾過して、酸価15mgKOH/g、ガラス転移温度5℃、固形分50%のカルボキシル基含有水性アクリル樹脂エマルション(A−1)を得た。
【0060】
製造例2
製造例1において、スチレン15部、2−エチルヘキシルアクリレート41.1部、メチルメタクリレート33.6部及びアクリル酸10.3部からなるモノマー混合液を用いた以外は、製造例1と同様にして、酸価80mgKOH/g、ガラス転移温度5℃、固形分50%のカルボキシル基含有水性アクリル樹脂エマルション(A−2)を得た。
【0061】
カルボキシル基含有変性澱粉(B)の調製
澱粉分子量の調整
変性澱粉の合成に使用する原料澱粉は、必要に応じて、以下の方法に準じて酸処理を行うことで分子量の調整を行った。原料澱粉を水に懸濁し40%濃度のスラリーを調製した。これを約50℃に保持して撹拝しながら所定量の塩酸を前記スラリーに添加した。前記塩酸の添加開始から所定時間上記温度で撹拝しながら保持し、酸処理を実施した。その後、前記スラリーを水酸化ナトリウム溶液でpH6.5〜7に中和し、脱水、洗浄、乾燥させることで目的分子量の酸処理澱粉を得た。酸処理澱粉の分子量はGPC法にて測定した。
【0062】
製造例3
重量平均分子量約80万の酸処理コーンスターチを、水に懸濁して35%のスラリーを調製した。これを30℃にセットした恒温槽中で撹拝しながら加温し、水酸化ナトリウムでpHを8.5に調整した。pHを8.0〜8.5に維持しながら、前記コーンスターチに対して、6%の無水コハク酸を約30分間かけて添加し、添加終了後さらに5分間反応させた。その後、塩酸を用いて反応液を中和し、これを50%濃度のエタノール溶液に懸濁して脱水、洗浄し、乾燥させることで酸価21.2mgKOH/gのカルボキシル基含有変性澱粉(B−1)を得た。
【0063】
製造例4
重量平均分子量約10万の酸処理コーンスターチを原料とし、無水コハク酸の添加率をコーンスターチに対して10%とした以外は製造例3と同様にして、酸価32.9mgKOH/gのカルボキシル基含有変性澱粉(B−2)を得た。
【0064】
製造例5
重量平均分子量約5万の酸処理コーンスターチを原料とし、無水コハク酸の添加率をコーンスターチに対して10%とした以外は製造例3と同様にして、酸価34.3mgKOH/gのカルボキシル基含有変性澱粉(B−3)を得た。
【0065】
製造例6
重量平均分子量約1万の酸処理コーンスターチを原料とし、無水コハク酸の添加率をコーンスターチに対して10%とした以外は製造例3と同様にして、酸価35.6mgKOH/gのカルボキシル基含有変性澱粉(B−4)を得た。
【0066】
製造例7
重量平均分子量約10万の酸処理コーンスターチを原料とし、無水コハク酸の添加率をコーンスターチに対して28%とした以外は製造例3と同様にして、酸価71.5mgKOH/gのカルボキシル基含有変性澱粉(B−5)を得た。
【0067】
製造例8
重量平均分子量約10万の酸処理ハイアミロースコーンスターチを原料とし、無水コハク酸の添加率をハイアミロースコーンスターチに対して14%とした以外は製造例3と同様にして、酸価47.4mgKOH/gのカルボキシル基含有変性澱粉(B−6)を得た。
【0068】
製造例9
重量平均分子量約5万の酸処理タピオカ澱粉を原料とし、無水コハク酸の添加率をタピオカ澱粉に対して13%とした以外は製造例3と同様にして、酸価43.2mgKOH/gのカルボキシル基含有変性澱粉(B−7)を得た。
【0069】
製造例10
重量平均分子量約10万の酸処理コーンスターチを水に懸濁して35%濃度のスラリーを調製した。これを50℃にセットした恒温槽中で撹拝しながら加温し、水酸化ナトリウムを前記コーンスターチに対して16.8%添加し、澱粉を完全に糊化した。ここにモノクロロ酢酸ナトリウムを前記コーンスターチに対して40%添加し、5時間反応させた。その後、塩酸で反応液を中和し、これを99%濃度のエタノールに激しく撹拝しながら流し込み澱粉を沈澱させた。これを吸引ろ過して乾燥させることで、酸価62.1mgKOH/gのカルボキシル基含有変性澱粉(B−8)を得た。
【0070】
製造例11
未処理コーンスターチを水に懸濁し40%濃度のスラリーを調製した。これを40℃にセットした恒温槽中で撹拝しながら加温し、水酸化ナトリウムを添加してpHを9.0に調整した。pHを9.0に維持しながら前記コーンスターチに対して4.8%の次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素:12.36%、水酸化ナトリウム:0.42%)を約90分間かけて添加し、その後150分間反応させた。その後、残留する塩素を亜硫酸水素ナトリウムで消塩し、塩酸で中和した後、脱水、洗浄し、乾燥させることで、重量平均分子量30万、酸価12.5mgKOH/gのカルボキシル基含有変性澱粉(B−9)を得た。
【0071】
表1に、製造例3〜11で得られたカルボキシル基含有変性澱粉(B−1)〜(B−9)の原料、原料調製時の酸処理HCl添加率、重量平均分子量、変性方法、及び酸価を示す。
【0072】
【表1】

【0073】
カルボキシル基含有変性澱粉(B−1)〜(B―7)、(B−9)の糊化
温度25℃のイオン交換水70部に、各変性澱粉30部を混合・撹拝させスラリー化した後、温度95℃に昇温させ、この温度を保ったまま30分間攪拌した。その後、30℃まで冷却後、アンモニア水を用いてpH7〜8に調整し、固形分30%の糊化した各変性澱粉(B−1)〜(B−7)、(B−9)を得た。これらを用いて塗料化を行った。
【0074】
カルボキシル基含有変性澱粉(B−8)の糊化
温度25℃のイオン交換水70部を準備し、これを激しく攪拌しながらカルボキシル基含有変性澱粉(B−8)30部を少しずつ添加していき、30分間攪拌を続けることで完全に溶解させた。その後、アンモニア水を用いてpH7〜8に調整し、固形分30%の糊化した変性澱粉(B−8)を得た。これを用いて塗料化を行った。
【0075】
顔料ペーストの調製
製造例12
イオン交換水6部、増粘剤(商品名「SP−600N」、ダイセル化学工業社製、ヒドロキシエチルセルロース系増粘剤)0.1部、顔料分散剤(商品名「Disperbyk−190」、ビッグケミー社製)1.5部、二酸化チタン(商品名「TI−PURE R−706」、デュポン社製)22.2部、工業用防腐剤(商品名「ベストサイド201」、日本曹達社製)0.1部、及び消泡剤(商品名「BYK−018」、ビッグケミー社製)0.1部を、ステンレス容器に入れて混合後、ガラスビーズを投入し、ディスパーにて30分間攪拌・分散させて、顔料ペーストIを得た。
【0076】
実施例1〜15
後記の表2及び表3に示す配合組成で、本発明の水性塗料組成物を調製した。即ち、まず、硬化剤(C)以外の各成分をディスパーにて30分間混合・攪拌した後、硬化剤(C)を添加し、更に10分間攪拌を行うことにより、水性塗料組成物を調製した。
【0077】
実施例1〜11及び13〜15の硬化剤(C)としては、カルボジイミド化合物である「カルボジライトV−02−L2」(商品名、日清紡(株)製、カルボジイミド基含有化合物水溶液、固形分40%、カルボジイミド当量385)(C−1)を、(A)成分及び(B)成分の合計カルボキシル基1当量に対して、実施例1〜11及び13ではカルボジイミド基が1当量になる量、実施例14及び15ではカルボジイミド基が0.1当量になる量、それぞれ配合した。
【0078】
また、実施例12の硬化剤(C)としては、オキサゾリン化合物である「エポクロスWS−700」(商品名、日本触媒(株)製、オキサゾリン基含有アクリル樹脂水溶液、固形分25%、オキサゾリン価220)(C−2)を、(A)成分及び(B)成分の合計カルボキシル基1当量に対して、オキサゾリン基が1当量になる量配合した。
【0079】
表2及び表3に、実施例1〜15の水性塗料組成物の配合組成、(A)成分及び(B)成分の固形分比を示す。
【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
表2及び表3において、配合組成の数値は、部を示す。また、注は、以下のものを示す。
【0083】
(注1)造膜助剤:商品名「CS−12」、チッソ社製、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
【0084】
(注2)pH調整剤:25%アンモニア水、和光純薬社製
【0085】
(注3)消泡剤:商品名「BYK−024」、ビッグケミー社製
【0086】
(注4)増粘剤1:商品名「アデカノールUH−420」、旭電化社製、ウレタン会合型増粘剤
【0087】
(注5)増粘剤2:商品名「プライマルTT−615」、ローム・アンド・ハース社製、アルカリ膨潤型増粘剤
【0088】
比較例1
カルボキシル基含有水性樹脂(A)を配合せず、カルボキシル基含有変性澱粉(B−1)の配合量を82.4部とし、「カルボジライトV−02−L2」(C−1)の配合量を9.0部(カルボキシル基1当量に対しカルボジイミド基1当量)とした以外は、実施例1と同様にして、比較用の水性塗料組成物を調製した。
【0089】
比較例2
硬化剤を、カルボジイミド化合物からイソシアネート化合物に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較用の水性塗料組成物を調製した。硬化剤のイソシアネート化合物としては、「バーノックDNW−5000」(商品名、大日本インキ化学工業(株)製、水分散型ポリイソシアネート架橋剤)を、変性澱粉(B−1)が有する水酸基に基づく水酸基価978mgKOH/gから計算して、(B−1)の水酸基1当量に対しイソシアネート基が1当量になる量である67.0部配合した。
【0090】
次に、実施例及び比較例で得られた各水性塗料組成物について、塗膜性能(塗膜外観、耐水性、耐アルカリ性、耐洗浄性及び促進耐候性)を調べた。尚、耐洗浄性は、耐摩耗性の指標として調べた。試験方法は、以下の通りである。
【0091】
塗膜外観:フレキシブル板(JIS A 5430準拠)に、「ニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント(株)製、カルボキシル基含有スチレン−アクリル樹脂系シーラー)を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装し、16時間放置(温度23℃湿度50%)後、評価塗料を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装間隔時間3時間で、2回塗り重ね塗布した(塗付け量合計200g/m)。その後、24時間放置して、塗膜表面の状態を観察し、下記基準により、目視で評価した。
○:塗膜に異常が認められない。
×:割れ、ちぢみ、ピンホールなどの異常が認められる。
【0092】
耐水性:フレキシブル板(JIS A 5430準拠)に、「ニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント(株)製、カルボキシル基含有スチレン−アクリル樹脂系シーラー)を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装し、16時間放置(温度23℃湿度50%)後、評価塗料を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装間隔時間3時間で、2回塗り重ね塗布した(塗付け量合計200g/m)。その後、7日間乾燥養生して耐水性試験板を作成し、20℃の水に7日間没水した。取り出して水洗後30分以内に、塗膜表面の状態を観察し、下記基準により、目視で評価した。
◎:水に浸した塗膜に膨れ、割れ、剥がれ等がない。
○:水に浸した塗膜面積3%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある。
△:水に浸した塗膜面積3%以上10%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある。
×:水に浸した塗膜面積10%以上30%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある。
××:水に浸した塗膜面積30%以上に膨れ、割れ、剥がれ等がある。
【0093】
耐アルカリ性:フレキシブル板(JIS A 5430準拠)に、「ニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント(株)製、カルボキシル基含有スチレン−アクリル樹脂系シーラー)を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装し、16時間放置(温度23℃湿度50%)後、評価塗料を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装間隔時間3時間で、2回塗り重ね塗布した(塗付け量合計200g/m)。その後、7日間乾燥養生して耐アルカリ性試験板を作成し、20℃の水酸化ナトリウム3%水溶液に7日間没水した。取り出して水洗後30分以内に、塗膜表面の状態を観察し、下記基準により、目視で評価した。
◎:塗膜に膨れ、割れ、剥がれ等がない。
○:塗膜面積3%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある。
△:塗膜面積3%以上10%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある。
×:塗膜面積10%以上30%未満に膨れ、割れ、剥がれ等がある。
××:塗膜面積30%以上に膨れ、割れ、剥がれ等がある。
【0094】
耐洗浄性:JIS K 5660に規定されるつや合成樹脂エマルションペイント規格に従って、調べた。装置としては、JIS K 5600−5−11の6.3の湿潤磨耗試験装置の機能をもち、試験槽、石けん液槽、ブラシなどから構成され、試験片の塗膜上をブラシが往復するものを用いた。試験片は、硬質塩化ビニルシート(JIS K 6734に規定)に、評価塗料を6milアプリケーターを用いて塗布し、7日間乾燥養生して耐洗浄性試験板を作成した。
【0095】
耐洗浄性試験は、JIS K 5660の6.13の規定に沿って、次のようにして、行った。即ち、試験片を、洗浄性試験装置の試験槽の試験台に、塗面を上向きにして水平に固定する。0.5%石けん水溶液を十分に浸み込ませたブラシを試験片の塗面に載せ、こする面に0.5%石けん水溶液を滴下し、常にぬれた状態に保ちながら、塗面をブラシで1000回往復させ、こする。その後、試験片を取り出し水で洗い、乾燥させた後、塗膜表面の状態を観察し、下記基準により、目視で評価した。
○:ブラシの往復回数1000回で、こすった箇所に塗膜の破れ、磨耗による素地の露出が認められない。
×:ブラシの往復回数1000回で、こすった箇所に塗膜の破れ、磨耗による素地の露出が認められる。
【0096】
促進耐候性:フレキシブル板(JIS A 5430準拠)に、「ニッペウルトラシーラーIII(日本ペイント(株)製、カルボキシル基含有スチレン−アクリル樹脂系シーラー)を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装し、16時間放置(温度23℃湿度50%)後、評価塗料を塗付け量100g/mで刷毛を用いて塗装間隔時間3時間で、2回塗り重ね塗布した(塗付け量合計200g/m)。その後、7日間乾燥養生して促進耐候性試験板を作成し、JIS K 5600−7−7に規定されるキセノンランプ法により、照射480時間経過後に試験体を取り出し室内に1時間放置した後、塗膜表面の状態を観察し、下記基準により、目視で評価した。下記基準において、白亜化等級は、JIS K 5600−8−6の規定による。
○:白亜化等級が1以下で、膨れ、はがれ、割れ等がなく、色の変化が見本板と比較して大きな変化がない。
×:白亜化等級が2以上であるか、又は、はがれ、割れが発生し、又は、色の変化が大きい。
【0097】
試験結果を表4及び表5に示した。
【0098】
【表4】

【0099】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有水性樹脂、
(B)カルボキシル基含有変性澱粉、及び
(C)カルボキシル基と硬化反応する官能基を有する硬化剤
を含有する水性塗料組成物。
【請求項2】
水性樹脂(A)の酸価が、3〜200mgKOH/gである請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
水性樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が、−50〜+50℃である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
水性樹脂(A)が、カルボキシル基含有水性アクリル樹脂、カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂、及びカルボキシル基含有水性ウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
変性澱粉(B)の重量平均分子量が、100万以下である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
変性澱粉(B)の酸価が、3〜200mgKOH/gである請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
水性樹脂(A)と変性澱粉(B)との合計固形分重量に対する変性澱粉(B)の割合が、80重量%以下である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
硬化剤(C)が、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物及び金属キレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項9】
硬化剤(C)の配合割合が、水性樹脂(A)と変性澱粉(B)との合計カルボキシル基1当量に対して、カルボキシル基と硬化反応する官能基が0.05〜1当量となる量である請求項1に記載の水性塗料組成物。



【公開番号】特開2010−53281(P2010−53281A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221201(P2008−221201)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(000231453)日本食品化工株式会社 (68)
【Fターム(参考)】