説明

水性接着剤分散液

【課題】被接着支持体に塗布して接合した後で、特に湿潤状態において高い初期強度(湿潤強度)をもたらす水性接着剤組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(a)および(b)を含有する水性ポリマー分散液:(a)60〜220nmの平均粒径を有するポリクロロプレンの分散液および(b)1〜400nmの粒径を有するSiO粒子を含有する水性二酸化ケイ素分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリクロロプレンを基材とする水性ポリマー分散液、該分散液の製造方法および該分散液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリクロロプレンを基材とする触圧接着剤は主として溶剤含有接着剤であり、該接着剤は被結合支持体の両方に塗布した後、乾燥させる。両方の支持体を加圧下で接合させることによって、高い初期強度を有する結合構造体が、該支持体の接合過程直後に得られる。その後の架橋によって最終的な硬化がもたらされる。
【0003】
環境的な理由から、適切な水性接着剤配合物に加工できる適当な水性接着剤分散液に対する需要がますます高まってきている。この種の分散液系の問題点は、水を蒸発させた後の接合過程直後の初期強度が、溶剤含有接着剤に比べて、明らかに低いことである。このため、被接着支持体の十分な密着性は、乾燥させた接着剤膜をあらかじめ熱的活性化処理に付した後でのみ得られる。さらに、接着剤を「スプレーミックス(Spray-mix)法」で塗布することによって、十分な耐湿性が直ちに達成される可能性がある。この方法においては、接着剤と凝固剤はスプレーガン内へ別々に送給され、噴霧流内で混合されて凝固する。この方法は時間とコストのかかる方法であって、経済的観点からは満足すべき方法ではない。この方法は、例えば下記の非特許文献1〜3に概説されている。
【0004】
従来技術によれば、ケイ酸製品を種々の用途に利用することが知られている。固体状のSiO製品は、流動特性を多様に調整するために、充填剤または吸着剤として使用されているが、シリカゾルの主要な用途は、種々の無機材料の結合剤、半導体の研磨剤およびコロイド化学反応における凝集相手成分である。特許文献1には、難燃性エレメントの製造に際して、シリカゾルの存在下において、浸透層としてポリクロロプレンラテックスを使用することが開示されている。特許文献2および3には、難燃性発泡材の製造またはビツメンの調整のために、熱分解法シリカをポリクロロプレンラテックスと併用することが記載されており、また、特許文献4には熱分解法シリカをクロロプレン−アクリル酸−コポリマーと併用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ヨーロッパ特許公報EP−A 0332928
【特許文献2】仏国特許公報FR−2341537
【特許文献3】仏国特許公報FR−2210699
【特許文献4】日本国特許公報JP−A06256738
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「接着剤ハンドブック」、イルヴィング・スカイスト、チャップマン、ホール(ニューヨーク)、第3版、1990年、15部、第301頁
【非特許文献2】R.ムッシュら、アドヘッシブズ・エイジ、2001年(1月)、第17頁
【非特許文献3】「フォームプラスチックの接着のためのDispercoll(登録商標)Cを基剤とする噴霧混合接着剤」、バイエルAG社の技術情報、Nr. KA-KR-0001d/01/05.96
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、被接着支持体に塗布して接合した後で、特に湿潤状態において高い初期強度(湿潤強度)をもたらす水性接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ポリクロロプレン分散液と二酸化ケイ素の水性分散液を組合せることによって、接着後に高い初期強度、湿潤強度および熱安定性をもたらす接着剤が調製できることが判明した。
【0009】
本発明の対象は、下記の成分(a)および(b)を含有する水性ポリマー分散液である:
(a)60〜220nm(好ましくは70〜160nm)の平均粒径を有するポリクロロプレンの分散液、および
(b)1〜400nm(好ましくは5〜100nm、特に好ましくは8〜50nm)の粒径を有するSiO粒子を含有する水性二酸化ケイ素分散液。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によれば、適当なポリクロロプレン分散液は、例えば、次の文献に開示される方法により、クロロプレンおよびクロロプレンと共重合し得るエチレン性不飽和モノマーをアルカリ性媒体中において乳化重合させることによって調製される:国際公開公報WO−A 02/24825(第3頁、第26行〜第7頁、第4行)、独国特許公報DE−A3002734(第8頁、第23行〜第12頁、第9行)および米国特許公報US−A5773544(第2欄、第9行〜第4欄、第45行)。特に好ましいポリクロロプレン分散液は、例えば、次の文献に記載されているような連続重合法によって調製されるものである:WO−A 02/24825(実施例2)、DE−A 3002734(実施例6;この場合、調節剤の量は0.01〜0.3%の範囲で変化させることができる)。
【0011】
二酸化ケイ素の水性分散液は古くから知られており、二酸化ケイ素は、製造方法に応じて種々の構造で存在する。
本発明によれば、適当な二酸化ケイ素分散液は、シリカゾル、シリカゲル、熱分解法シリカ、沈降シリカまたはこれらの任意の混合物を基材として調製することができる。
【0012】
シリカゾルは、無定形二酸化ケイ素の水性コロイド溶液であり、該溶液は二酸化ケイ素ゾルと呼ばれる場合が多いが、シリカゾルと略称されることもある。この場合、二酸化ケイ素は、表面がヒドロキシル化された球状粒子形態で存在する。コロイド粒子の粒径は、通常1〜200nmである。この場合、粒径と関連づけられる比BET表面積は15〜2000m/gである。この比BET表面積は、次の文献に記載された方法によって測定した値である:G.N.シアーズ、Analytical Chemistry、第28巻、No.12、第1981頁〜第1983頁、1956年12月。SiO粒子の表面は、コロイド溶液の安定化をもたらす対応する対イオンによって調整される荷電を有する。アルカリ性の安定化シリカゾルは7〜11.5のpH値を有しており、また、アルカリ化剤として、例えば少量のNaO、KO、LiO、アンモニア、有機塩基、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、アルカリアルミネートまたはアンモニウムアルミネートを含有する。シリカゾルは準安定なコロイド溶液として弱酸性の状態で存在することもできる。さらに、表面をAl(OH)Clで被覆することによってカチオン性に調整されたシリカゾルを調製することも可能である。シリカゾルの固形分濃度は5〜60重量%(SiO)である。
【0013】
シリカゾルの製造プロセスは、実質的には次の製造過程を経ておこなわれる:イオン交換による水ガラスの脱アルカリ化、SiO粒子を所望の粒径(分布)にするための調整と安定化、所望のSiO濃度への調整、および所望によるSiO粒子の、例えばAl(OH)Clを用いる表面改質。これらのいずれかの過程においても、SiO粒子がコロイド溶解状態から離脱することはない。これによって、例えば高いバインダー効率を有する離散一次粒子の存在が説明される。
【0014】
シリカゲルは、コロイド状態に形成されるか、または形成されないシリカであって、弾性〜硬質性の稠度および弛緩状〜緻密状の細孔構造を有するシリカを意味する。このシリカは、高縮合状ポリケイ酸の形態で存在する。表面上にはシロキサンおよび/またはシラノール基が存在する。シリカゲルの調製は、水ガラスと鉱酸との反応によっておこなわれる。一次粒子の粒径は一般に3〜20nmであり、また、比表面積は250〜1000m/g(DIN 66131に従って測定した値)である。
【0015】
さらに、熱分解法シリカと沈降シリカは区別される。沈降法の場合には、先ず水を準備し、次いで水ガラスと酸(例えばHSO)を同時に添加する。この場合、コロイド状の一次粒子が生成し、該一次粒子はさらなる反応に伴って凝集し、次いで凝集塊へ合体する。比表面積は30〜800m/g(DIN 66131)であり、一次粒子の粒径は5〜100nmである。これらの固体状シリカの一次粒子は確実に架橋して二次凝集塊を形成する。
【0016】
熱分解法シリカは火炎加水分解法またはアーク放電法によって調製することができる。熱分解法シリカの主要な合成法は、テトラクロロシランを爆燃ガス中で分解させる火炎加水分解法である。この方法で生成するシリカはX線回折分析によれば無定形である。熱分解法シリカは、沈降シリカに比べて、ほとんど細孔がないその表面上に、非常にわずかのOH基を有するに過ぎない。火炎加水分解法によって調製される熱分解法シリカは、50〜600m/g(DIN 66131)の比表面積と5〜50nmの一次粒子径を有し、また、アーク放電法によって調製されるシリカは、25〜300m/g(DIN 66131)の比表面積と5〜500nmの一次粒子径を有する。
【0017】
固体状態のシリカの合成と特性に関するその他の情報は、例えば、次の文献に記載されている:K.H.ブュヒェル、H.H.モレット、P.ボディッチュ、「工業無機化学」、ウィリーVCHフェアラーク、1999年、5.8章。
【0018】
本発明によるポリマー分散液に対して、単離された固体として存在するSiO原料(例えば、熱分解法シリカまたは沈降シリカ)を用いるときには、該原料は、水に分散させることによって水性SiO分散液に変換される。
【0019】
二酸化ケイ素分散液を調製するためには、当該技術分野の分散機が使用される。好ましい分散機は、高剪断速度を発生させるのに適したもの、例えば、ウルトラトゥラックス(Ultraturrax)またはディスク状溶解機等である。
【0020】
SiO粒子が1〜400nm(好ましくは5〜100nm、特に好ましくは8〜50nm)の一次粒子径を有する二酸化ケイ素の水性分散を使用するのが好ましい。沈降シリカを使用する場合には、粒径を小さくするために、該ケイ酸は粉砕処理に付される。
【0021】
本発明による好ましいポリマー分散液は、該分散液中に、二酸化ケイ素分散液(b)のSiO粒子が離散状の非架橋一次粒子として存在するものである。
【0022】
SiO粒子は、その粒子表面上にヒドロキシル基を有していることも好ましい。
【0023】
二酸化ケイ素の水性分散液(b)としては、水性シリカゾルを使用するのが好ましい。
【0024】
本発明によるシリカの重要な特性は、ポリクロロプレン分散液との配合において濃化作用を発揮することである。この作用により、調製される接着剤は、微細に分散されて沈降安定性を示す分散液を形成するので、良好な加工が可能となり、また、多孔質の被接着支持体に高い固定強度がもたらされる。
【0025】
本発明によるポリマー分散液を調製するための各成分の量比は、得られる分散液が30〜60重量%の分散ポリマーを含有するように選定される。この場合、ポリクロロプレン分散液(a)の含有量は60〜99重量%であり、二酸化ケイ素分散液(b)の含有量は1〜40重量%である。これらの百分率の値は不揮発性成分の重量に基づく値であり、添加量は100重量%までである。
【0026】
本発明によるポリマー分散液、70〜98重量%のポリクロロプレン分散液(a)と2〜30重量%のシリカゾル分散液を含有するのが好ましく、特に好ましくは、該ポリマー分散液は、80〜93重量%の分散液(a)と20〜7重量%の分散液(b)との混合物を含有する。これらの百分率の値は、不揮発性成分の重量に基づく値であり、添加量は100重量%までである。
【0027】
適当な場合には、ポリクロロプレン分散液は他の分散液、例えば、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニルまたはスチレン−ブタジエンの分散液を30重量%まで含有することが可能である。
【0028】
本発明によるポリマー分散液は別の接着剤または助剤および添加剤を含有していてもよい。例えば、石英粉末、石英砂、重晶石、炭酸カルシウム、チョーク、ドロマイトまたはタルクのようなフィラー並びに適当な場合には、湿潤剤、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウムのようなポリホスフェート、ナフタレンスルホン酸またはポリアクリル酸のアンモニウム塩もしくはナトリウム塩等を添加することができる。フィラーの添加量は10〜60重量%(好ましくは20〜50重量%)であり、湿潤剤の添加量は0.2〜0.6重量%である。これらの添加量の値は不揮発成分の重量に基づくものである。
【0029】
適当な助剤として、例えば、不揮発性成分に基づいて0.01〜1重量%の有機増粘剤(例えば、セルロース誘導体、アルギネート、デンプン、デンプン誘導体、ポリウレタン増粘剤またはポリアクリル酸等)、または不揮発性成分に基づいて0.05〜5重量%の無機増粘剤(例えば、ベントナイト等)を用いてもよい。
【0030】
保存のために、殺真菌剤を本発明による接着剤組成物に添加することも可能である。殺真菌剤は、不揮発性成分に基づいて0.02〜1重量%の量で使用される。適当な殺真菌剤としては、フェノール誘導体、クレゾール誘導体および有機錫化合物が例示される。
【0031】
適当な場合には、粘着性付与樹脂、例えば、未変性もしくは変性天然樹脂(例えば、ロジンエステル、炭化水素樹脂)または合成樹脂(例えば、フタレート樹脂)を分散形態で本発明によるポリマー分散液に添加することも可能である。これに関しては、例えば、次の文献を参照されたい:「粘着樹脂」、R.ジョーダン、R.ヒンターバルドナー、第75頁〜第115頁、ヒンターバルドナー・フェアラーク、ミュンヘン、1994年。好ましい粘着性付与樹脂の分散液は、70℃よりも高い軟化点(特に好ましくは110℃よりも高い軟化点)を有するアルキル−フェノール樹脂およびテルペン−フェノール樹脂の分散液である。
【0032】
さらにまた、有機溶剤(例えば、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジオキサンまたはこれらの任意の混合物)または可塑剤(例えば、アジペート、フタレートまたはホスフェートに基づく可塑剤)を、不揮発性成分に基づいて0.5〜10重量部の量比で使用することも可能である。
【0033】
本発明は、本発明によるポリマー分散液の製造法であって、ポリクロロプレン分散液(a)を二酸化ケイ素分散液(b)と混合し、さらに適当な場合には、該混合物に常套の接着剤、助剤および添加剤を添加することを含む該製造法も提供する。
【0034】
本発明によるポリマー分散液の1つの好ましい製造法は、最初にポリクロロプレン分散液(a)を常套の接着剤、助剤および添加剤と混合し、シリカゾル(b)をこの混合過程中もしくはこの混合過程後に添加することを特徴とする製造法である。
【0035】
添加剤としては、クロロプレンポリマーから放出されることがある少量の塩化水素の受容体としての酸化亜鉛もしくは酸化マグネシウムを使用するのが好ましい。この種の添加剤は、不揮発性成分に基づいて0.1〜10重量%(好ましくは1〜5重量%)の量比で添加され、また、該添加剤は、ポリクロロプレン分散液(a)の存在下において部分的な加水分解を受けてもよく、あるいは加水分解可能な成分を含有していてもよい。このようにして、ポリマー分散液の粘度を増大させて所望のレベルに調整することが可能となる。
【0036】
ZnOの場合の加水分解は、例えば次の文献に記載されている:「グメリンの無機化学ハンドブック」、第8版、1924年、フェアラーク・ヘミー、ライプツィヒ、第32巻、第134〜135頁;増補巻33、フェアラーク・ヘミー、1956年、第1001〜1003頁。また、MgOの場合の加水分解は、例えば次の文献に記載されている:「グメリンの無機化学ハンドブック」、第8版、1939年、フェアラーク・ヘミー、ベルリン、第27巻、第12〜13頁、第47〜50頁、第62〜64頁。
【0037】
他の安定剤、例えば、一酸化鉛またはアルカリ性のポリクロロプレン分散液の存在下で加水分解する添加剤を添加することも可能である。
【0038】
本発明によるポリマー分散液に比較的高い粘性を付与することが不要な場合には、ZnOまたはMgOを添加を省略することができるが、これによって製品の貯蔵安定性が不都合な影響を受けることはない。
【0039】
接着剤組成物は、例えば、はけ塗、流し込み、ナイフ塗布、噴霧、ロール塗または浸漬等によって塗布するのが簡便である。接着剤膜は室温または220℃までの昇温下で乾燥させることができる。
【0040】
本発明によるポリマー分散液は、例えば、次に例示するような同種もしくは異種のいずれかの支持体を結合させるための接着剤として使用することができる:木材、紙、プラスチック、織物、革、ゴム、無機材料(例えばセラミック、石器、ガラスファイバー、セメント)。
【実施例】
【0041】
A.使用した物質
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
B.測定方法
1.剥離強さの測定
この試験はEN−1392に従っておこなった。ノラ(Nora)ゴム(スチレン−ブタジエンゴム)または可塑化PVC(30%ジオクチルフタレート;DOP)を材質とする2つの試験片(100×30mm)の表面をサンドペーパー(粒度:80)を用いる粗面化処理に付し、次いで該表面上に分散液の湿潤膜(膜厚:100μm)を形成させ、該湿潤膜を空気中で乾燥させた。
この試験片を次のいずれかの方法によって処理した:
方法A:衝撃活性化処理に付した後、2つの試験片を4barの圧力下で10秒間接合させる。
方法B:2つの試験片を活性化処理に付すことなく、4barの圧力下で10秒間接合させる。
引張試験は、市販の標準的引張試験機を用いて室温でおこなった。測定は接合直後と1日経過後におこなった。
【0045】
1.1 衝撃活性化
被接合領域を、フンク社製のIRエミッター(衝撃活性機2000)を用いる照射処理に4秒間付した。活性化時間に応じて、ノラゴム上に形成された接着剤膜は49℃、65℃または115℃まで熱せられた。可塑化PVC試験片上に形成された接着剤膜を10秒間の活性化処理に付したところ、表面温度は92℃まで上昇した。接着剤で被覆されて熱活性化処理に付された試験片上の接着剤層を相互に接触させた後、プレス内での押圧処理に付したところ、接合は直ちにおこなわれた。得られた被験体は相対湿度が50%の条件下において23℃で貯蔵した。
【0046】
2.加熱試験
被験体を40℃に調温された加熱室内において、4kgの荷重を加えた条件下で30分間保存した。次いで、被験体を等昇温速度(0.5℃/min)で150℃まで加熱した。軟化温度、即ち、4kgの荷重を加えた条件下で接着が失われる温度(℃)を記録した。いずれの場合も測定は5回おこなった。
【0047】
3.ポリエステル/厚紙についての接触接着時間(オープンタイム)の測定
ポリエステルフィルムと白色厚紙を準備し、0.2mmの開口部を有する塗布バーを備えたフィルムアプリケーターを用いて分散液を5mm幅で塗布した。接着剤分散液が付与されたポリエステルストリップを制御気候領域(温度:23℃、相対湿度:50%)内において貯蔵した。12時間の間隔で、厚紙ストリップ対を相互に横方向に接触させた後、50gの荷重を10秒間印加した。接着体を手で分離させようとしたときに、ポリエステルフィルムまたは厚紙のストリップがもはや接触できなくなる時点において、接触接着時間の最後は経過したこととした。
ポリエステルフィルム:ホスタファン(Hostaphan)RN75/0(厚さ:0.075mm)
厚紙:白色の上質厚紙(厚さ:0.32mm、重さ:250g/m
【0048】
4.ブナ材と非可塑化PVCを熱圧法によって接着させた後の剥離強さ
4.1 被験体の作成
DIN 53−254に従ってかんながけしたブナ材ボード(50×140×4mm)へ本発明による接着剤をはけ塗法によって塗布した。接着剤はブナ材ボードの一方の面のみに塗布した。接着領域は50×110mmとした。周囲温度において30分間乾燥させた後、第2の接着剤層を第1接着剤層上に塗布し、この接着剤系を周囲温度で60分間乾燥させた。乾燥後、該系を、膜プレス内において、非可塑化PVCラミネート箔[タイプ:ベネリット社製のRTF箔、寸法50×210×0.4mm]の非組織状面側へ10秒間押圧した。この場合の接合温度は90℃であり、有効圧は4barとした。
【0049】
4.2 熱安定性の測定
接合させた被験体を室温で3日間貯蔵した。熱安定性は、自動調温器を備えた万能加熱室内において測定した。ブナ材ボードの非接合端部を、蝶ボルトを用いて取付台の上部に固定した。PVC試験ストリップの突出端部に、垂直下方へ作用する500gの荷重を180°の角度で印加した。初期温度は50℃とした。1時間の間隔をおいて、10℃ずつ自動的に昇温した。この昇温は、ブナ材ボードからPVCストリップが完全に脱離するか、もしくは引裂かれるまでおこなった。
【0050】
5.熱安定性(HCl安定性)の測定
DIN 53381に従って、接着剤の乾燥試料について試験をおこなった。測定手順は次の通りである。
試料(厚さ:0.1〜1mm)を、エッジの長さが約2〜3mmになるように切断した後、試験管(長さ:15cm、壁厚:約0.4cm、直径:1.8cm)内へ5cmの高さまで導入した。コルク栓をガラス管(長さ:10cm、内径:3mm)内へ試験紙(コンゴレッド紙;長さ:3cm、幅:1cm)を導入し、コルク栓を装着した。試験紙は試料から2.5cm離すべきである。測定は180℃のオイル浴中において2回おこなった。測定は、試験紙が赤から青へ変色したときに終了した。
【0051】
D.ポリクロロプレン分散液に基づく接着剤組成物の調製
【表4】

【0052】
接着剤組成物を調製するために、ポリクロロプレン分散液をガラスビーカー内へ入れ、撹拌下で安定剤、老化防止剤、酸化亜鉛(ZnO)、樹脂および二酸化ケイ素を添加した。以下の実施例においては、使用した二酸化ケイ素の種類について説明する。
【0053】
E.樹脂
1.接触接着時間の測定
1.1 ポリエステルフィルムの場合
二酸化ケイ素:レバシル(Levasil)(登録商標)300
【表5】

【0054】
1.2 厚紙の場合
二酸化ケイ素:レバシル300
【表6】

【0055】
表5および表6から明らかなように、組成物1および5中の樹脂を、組成物2〜4および6〜8における本発明によるシリカゾルによって置き換えることによって、著しく長い接触接着時間がもたらされる。
【0056】
2.部分加水分解可能な添加剤による組成物の粘度の調整
2.1 ZnOの添加
組成物10
【表7】

【0057】
2.2 異なる種類のレバシルの添加
組成物10
ポリクロロプレン分散液AまたはBの使用
【表8】

【0058】
表7および表8は、組成物の粘度を、付加的な増粘剤を添加することなく、シリカゾルの種類と部分加水分解性の酸化亜鉛の選択によって増加させることができると共にその粘度レベルも調整できることを示す。
【0059】
3.剥離強さ
3.1 ノラ/ノラ接合における初期強度の測定
SiO:レバシル300
接合法A(衝撃活性化後の接合)
【表9】

【0060】
接合法B(衝撃活性処理のない接合)
【表10】

【0061】
表9および表10から明らかなように、本発明による分散液を使用することにより、長いオープンタイムと高い初期強度を有する組成物(組成物10)を調製することが可能である。この効果は、接着剤膜を予め熱的活性化処理に付さないときでも達成される(接合法B)。
【0062】
3.2 湿潤強度の測定
実施例:革/革接着
SiO:レバシル300
【表11】

【0063】
革の接着剤を示す表11から明らかなように、シリカゾルを添加することにより、接着剤組成物(組成物11)の湿潤強度を、従来品(組成物12)の場合に比べて、著しく増加させることが可能である。
【0064】
3.3 ノラ/ノラ試験体の剥離強さの測定
条件
接着前のオープンタイム:60分間
接合法:A
【表12】

【0065】
4.ノラ試験片の熱安定性の測定
【表13】

【0066】
表12および表13から明らかなように、シリカゾルの添加により、接着の強度と接着の熱安定性は、従来品(組成物9)の場合に比べて、著しく増加する。
【0067】
5.木材/PVCの剥離強さと熱安定性の測定
条件
活性化温度:110℃
【表14】

【0068】
表12および表13に示す結果(SBRゴムの接着)の場合と同様に、他の支持体の接着(例えば、木材/PVC)の場合にも、組成物10におけるシリカゾルの明らかに有効な効果を示す証拠が得られた。
【0069】
6.ポリクロロプレン分散液に基づく接着剤組成物における異なる二酸化ケイ素の特性の比較
条件
組成物:10
試験材料:ノラ
オープンタイム:15分間
接合法:B(衝撃活性化処理のない接合法)
組成物10においては、異なるタイプの二酸化ケイ素の不揮発性成分の重量は、レバシルを30重量部使用したときの不揮発性成分の重量に相当するように選定した。
【0070】
【表15】

【0071】
異なるタイプのシリケート分散液の活性の比較から明らかなように、ポリクロロプレン分散液を含む異なる製品は安定な分散液を生成せずに凝固するか、または短期間の貯蔵後に沈殿する。このことは合成シリカおよびNaAlシリケートと関係する。沈降シリカおよびケイ酸ナトリウムは安定な分散液を形成するが、増粘効果をもたらさない。熱分解法シリカはわずかの増粘効果をもたらすが、冷間接着したときに良好な剥離強さを発揮しない。これに対して、シリカゾルは接着剤組成物において増粘効果をもたらすと共に、接着強度を増大させる。
【0072】
7.ポリクロロプレン接着剤組成物のHCl安定性に対するシリカゾルの効果
以下の表16から明らかなように、シリカゾルの添加によって、接着層に付加的な熱安定性がもたらされる。
【表16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(a)および(b)を含有する水性ポリマー分散液:
(a)60〜220nmの平均粒径を有するポリクロロプレンの分散液、および
(b)SiO粒子の粒径が1〜400nmである水性二酸化ケイ素分散液。
【請求項2】
SiO粒子の粒径が5〜100nmである請求項1記載の水性ポリマー分散液。
【請求項3】
SiO粒子の粒径が8〜50nmである請求項1記載の水性ポリマー分散液。
【請求項4】
SiO粒子が離散状の非架橋一次粒子として存在する請求項1から3いずれかに記載の水性ポリマー分散液。
【請求項5】
SiO粒子が粒子表面上にヒドロキシル基を有する請求項1から4いずれかに記載の水性ポリマー分散液。
【請求項6】
水性二酸化ケイ素分散液(b)がケイ酸ゾルである請求項1から5いずれかに記載の水性ポリマー分散液。
【請求項7】
ポリクロロプレン分散液(a)を二酸化ケイ素分散液(b)と混合し、次いで、得られた混合物に、所望により、常套の接着剤助剤と添加剤を添加することを含む請求項1記載のポリマー分散液の製造方法。
【請求項8】
添加剤として、酸化亜鉛または酸化マグネシウムを使用する請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1記載のポリマー分散液の接着剤としての使用。

【公開番号】特開2010−43274(P2010−43274A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230436(P2009−230436)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【分割の表示】特願2004−510314(P2004−510314)の分割
【原出願日】平成15年5月23日(2003.5.23)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】