説明

水性液流からのプロピレングリコールおよびプロピレングリコールエーテルの除去

プロピレングリコールおよび/またはそのエーテルを含む水溶液流を、プロピレンおよび/またはプロパンとの向流液‐液抽出で処理して水溶液流からプロピレングリコールおよび/またはエーテルを分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレングリコールおよびプロピレングリコールエーテルを、これらを含む水溶液流から分離する改善された方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンオキシドの製造方法の改善に、これまで多大なる労力が傾けられてきた。このような方法には、プロピレン、酸素および水素を適切な触媒の存在下で反応させてプロピレンオキシドを形成する直接酸化法が含まれる。例えば、米国特許第6,710,192号公報、第6,063,942号公報、第6,281,369公報、第6,005,123号公報等を参照のこと。
【0003】
このような手段においては、プロピレングリコールおよびプロピレングリコールエーテル類を通常少量含む大量の廃水が発生する。プロピレングリコールとエーテル類を蒸留法により分離することは可能であるが、事実上すべての水を蒸発させることが求められるのでかなり経費がかかる。
【0004】
プロピレングリコール、およびそれと低級アルキルとのエーテルを分離する新たな改善された手段の開発は重要な目標である。
【0005】
[発明の要約]
プロピレングリコールおよびプロピレングリコールエーテル類を、これらを含む水溶液流から、プロパンおよび/またはプロピレンを抽出剤として用いて向流液‐液抽出を行うことで効率的に分離することができることが見出された。
【0006】
[図面の説明]
添付した図は本発明の実施について図解するものである。
【0007】
[詳細な説明]
本発明の方法は、特にプロピレンオキシドの製造における直接酸化プロセスの際に生じた水溶液流の処理に特に適している。このような水溶液流は主に水からなるが、かなりの量のプロピレングリコールおよびプロピレングリコールアルキルエーテル類をも含んでいる。通常これらの水溶液流中のプロピレングリコールの重量含有量は約1%ないし30%、特に5%ないし15%であり、プロピレングリコールアルキルエーテルの重量含有量は約0.5%ないし10%、特に1%ないし5%である。
【0008】
プロピレングリコールおよびプロピレングリコールエーテル類を、プロパンおよび/またはプロピレンを抽出剤として用いて液‐液抽出を行うことで効率的に分離することができることが見出された。プロパンおよびプロピレンは通常プロピレンオキシド製造プロセスにおいて存在しているものなので、本発明の分離方法は全プロセスにわたって用いる原料で実施することができ、本製造プロセスで使用しない異質で高価な追加原料は使用しない。
全プロセスにわたって用いられる原料を用いることにより成立している。
【0009】
本発明はおそらくは添付の図面を参照することにより最も良く説明されるであろう。図を参照すると、抽出装置1は、少なくとも5理論段、好ましくは少なくとも8理論段を有する従来型の多段液‐液抽出塔を示す。
【0010】
プロピレングリコールおよびグリコールエーテルを含む水溶液流は、配管2を通って抽出装置の上部に導入され、プロパンおよび/またはプロピレンの抽出剤液流は配管3を通って抽出装置1の下部に導入される。抽出装置1は、プロパンおよび/またはプロピレンの抽出剤液流が抽出装置中で向流抽出接触の間液相に保たれるような条件におかれる。抽出装置中で、プロパンおよび/またはプロピレンの抽出剤液流と、グリコールおよび/またはグリコールエーテルを含有する水溶液流とは、従来型の抽出法に従って完全に接触し混合する。抽出剤流は抽出装置を上へ向かって通過し、抽出されたプロピレングリコールおよびそのエーテルとともに配管4を通って取り出される。水溶液流は抽出装置1を下へ向かって通過し、実質的にプロピレングリコールおよびそのエーテルの量が低減されて配管5を通って取り出される。
【0011】
抽出剤流は配管4を通って蒸留塔6へと渡されることが可能であり、抽出剤のプロパンおよび/またはプロピレンは配管7を通って取り出され、抽出、またはこのプロセスにおける他の用途に再利用され、抽出されたグリコールおよびエーテルは配管8を通って分離され、例えば燃料に用いられる。
【0012】
有機抽出剤流はプロピレン、プロパンまたはこれらの任意の割合の混合物である。上で説明した通り、抽出の対象となる水溶液流には少量のプロピレングリコールおよび/またはそのエーテル、最も顕著にはメチルエーテルが含まれる。
【0013】
抽出装置の条件は、液相でプロピレンおよび/またはプロパンである抽出剤を供給するように設定される。条件の実例としては、50°F以下、200Psia以上が挙げられる。適切な液相条件は、あらかじめ、当業者にとって既知で利用可能な様々なコンピュータプログラム、例えばアスペン・プラス(ASPEN PLUS)などによって決定される。水溶液流と炭化水素系抽出剤流の相対流速は、十分な接触とプロピレングリコールおよび/またはエーテルの抽出を可能にするように設定される。一般的に、浄化する水溶液流1ポンドに対し約1ないし5ポンドの炭化水素系抽出剤とするのが適切であるが、これ以外の割合で用いることも可能である。
【実施例】
【0014】
下記の例は本発明を説明するためのものである。
【0015】
直接酸化によるプロピレンオキシドプロセスからの水溶液プロセス流は、50°F、200Psiaで74764ポンド/時の流速で配管2を通って抽出装置に導入される。水溶液流には約2重量%のプロピレングリコールと、約10重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルが含まれている。
【0016】
配管3を通って抽出装置1に導入されるのは、210406ポンド/時の流速で供給される液体プロピレンからなる抽出剤流であり、導入されるプロピレン流の温度は50°F、圧力は250psiaである。
【0017】
抽出装置1は従来型の塔型液‐液抽出装置であり、8理論段を有している。これら非混和性の液体は抽出装置1中で完全に抽出接触させられ、抽出したプロピレン流は219019ポンド/時の流速で配管4を通って取り出される。抽出したプロピレン流は、水溶液フィード流から抽出された、重量基準で0.7%のプロピレングリコールと、3.2%のプロピレングリコールモノメチルエーテルを含む。抽出流は様々な要素に分離するために蒸留塔6へと進む。
【0018】
ラフィネート水溶液流は約66150ポンド/時の流速で抽出装置1から取り出される。取り出された水溶液流はグリコールおよびエーテルの含有量が大幅に低減されており、プロピレングリコールが約0.1重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルが0.3重量%となっている。この液流は必要に応じてさらに処理してもよい。
【0019】
プロパンまたはプロパン/プロピレン混合物を抽出剤として用いた場合も同様の結果が得られる。
【0020】
上記より、本発明の抽出方法においてはプロピレングリコールおよびそのエーテルのプロセス水溶液流からの分離において、他の手段例えば蒸留法によるよりもはるかに費用が少なく、他の用途、例えばプロピレンオキシドの製造に用いられる原料を流用できる手段を用いることが非常に効果的であることが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施についての図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレングリコールおよび/またはプロピレングリコールのアルキルエーテルを、これらの物質を少量含む水溶液流から分離する方法であって、
前記水溶液流を向流中で液体プロパンおよび/またはプロピレンである抽出剤と接触させて液‐液抽出を行う工程と、
プロピレングリコールおよび/またはその低級アルキルとのエーテルが低減された水溶液流を、抽出されたプロピレングリコールおよび/またはその低級アルキルとのエーテルを含む液体プロパンおよび/またはプロピレン流から分離する工程と、からなる分離方法。
【請求項2】
前記抽出剤がプロパンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出剤がプロピレンである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出剤がプロパンとプロピレンの混合物である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プロピレングリコールアルキルエーテルがモノメチルエーテルである請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−503344(P2008−503344A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518035(P2007−518035)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/012124
【国際公開番号】WO2006/006981
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(505341095)ライオンデル ケミカル テクノロジー、 エル.ピー. (61)
【氏名又は名称原語表記】LYONDELL CHEMICAL TECHNOLOGY, L.P.
【Fターム(参考)】