説明

水性紫外線硬化型インキ組成物

【課題】 本発明は、特別な乾燥装置を設けることなく、インキ皮膜の強度が高く、耐摩擦性が良好な高膜厚の画線、ベタ、網点等を形成することができる水性紫外線硬化型インキ組成物に関する。
【解決手段】 本発明は、光輝性顔料、光重合性化合物、光重合開始剤及び水を少なくとも含んでなる水性紫外線硬化インキ組成物であって、光重合性化合物は、少なくとも一種類の5官能以上の光重合性オリゴマーと、少なくとも一種類の2官能のウレタン系光重合性オリゴマーを有することを特徴とする水性紫外線硬化型インキ組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝性顔料を含む高膜厚なインキ皮膜を形成する水性紫外線硬化型インキ組成物に関するものであり、特に、熱乾燥が不要で、インキ皮膜内における光輝性顔料のリーフィング効果(配向性)を再現し、かつ、インキ皮膜強度及び耐摩擦性に優れた水性紫外線硬化型インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水性紫外線硬化型インキは、一般的にインキの低粘度化を図る目的で、紫外線硬化性ワニスに水を添加したものであり、水溶性の紫外線硬化性樹脂を利用したものと、界面活性剤を用いてエマルション化したものがある。
【0003】
例えば、水溶性の紫外線硬化性樹脂を利用した一例としては、水溶性紫外線硬化樹脂と、水と水溶性溶剤を含有することを特徴とする印刷インキがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば、界面活性剤を用いてエマルション化とした一例としては、紫外線硬化型インキとHLB10以下の非イオン系界面活性剤とからなる油相中に、水相が微分散されてなる紫外線硬化型孔版印刷用エマルションインキがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−117469号公報
【特許文献2】特開平8−3501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、段ボール用印刷インキとして比較的低膜厚の印刷を行うことを目的としており、インキを紙に浸透させてインキ皮膜を形成するものであるため、高膜厚のインキ皮膜を形成した場合には、インキ皮膜の耐摩擦性が低くなるおそれがあるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術は、特定の界面活性剤を用いてエマルション化することで、インキ粘度の温度依存性を改善したものであり、かつ、インキに含まれる水が20重量%から85重量%の高い配合であることから、高膜厚の画線を印刷した場合には、紫外線によりインキを硬化する前に、熱風により水分を蒸発させる必要があるため、紫外線照射装置とは別の乾燥装置が必要となることから、設備が大型になるとともに、インキ皮膜の耐摩擦性が低くなるおそれがあるという問題があった。
【0008】
また、特許文献1及び2に記載の技術は、光輝性顔料を含む高膜厚なインキ皮膜を形成することを目的とする発明ではないため、光輝性顔料のリーフィング効果を得るために水を配合しているものではないため、本発明の目的である熱乾燥が不要で、インキ皮膜内における光輝性顔料のリーフィング効果を有し、かつ、インキ皮膜強度及び耐摩擦性に優れた水性紫外線硬化型インキ組成物得るものではない。
【0009】
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、特別な乾燥装置を設けることなく、光輝性顔料を含む高膜厚なインキ皮膜を形成しても皮膜の強度が高く、耐摩擦性が良好な高膜厚の画線、ベタ及び網点等(以下「画線等」という。)を形成することができる水性紫外線硬化型インキ組成物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物は、光輝性顔料、光重合性化合物、光重合開始剤及び水を少なくとも含んでなる水性紫外線硬化型インキ組成物であって、光重合性化合物は、少なくとも一種類の5官能以上の光重合性オリゴマーと、少なくとも一種類の2官能のウレタン系光重合性オリゴマーを有し、光重合性化合物が40重量%から68重量%、光重合開始剤が、2重量%から15重量%、水が、5重量%から18重量%、光輝性顔料が、5重量%から25重量%であることを特徴とする水性紫外線硬化型インキ組成物である。
【0011】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物は、5官能以上のオリゴマーがウレタン、エポキシ、エステル系光重合性オリゴマーであることを特徴とする水性紫外線硬化型インキ組成物である。
【0012】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物は、光重合性化合物の5官能以上の光重合性オリゴマーが、5重量%から40重量%、二官能のウレタン系光重合性オリゴマーが、20重量%から70重量%であることを特徴とする水性紫外線硬化型インキ組成物である。
【0013】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物は、光重合性化合物が、少なくとも一種類の光重合性モノマーを更に有することを特徴とする水性紫外線硬化型インキ組成物である。
【0014】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物は、光重合性化合物の5官能以上の前記光重合性オリゴマーが、5重量%から40重量%、二官能のウレタン系光重合性オリゴマーが、20重量%から70重量%、光重合性モノマーが0重量%より多く、60重量%以下であることを特徴とする水性紫外線硬化型インキ組成物である。
【0015】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物は、30℃における粘度が、0.5Pa・sから10Pa・sであることを特徴とする水性紫外線硬化型インキ組成物である。
【0016】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物は、偽造防止印刷物を作製するために用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物は、高膜厚なインキ皮膜中に含まれる光輝性顔料のリーフィング効果に優れ、インキ皮膜の強度が高く、かつ、耐摩擦性が良好な高膜厚の画線等を形成することができる。
【0018】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物は、水分を蒸発させる乾燥装置を別段設ける必要がないため、設備を小型にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態について説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0020】
本発明は、光輝性顔料、光重合性化合物、光重合開始剤及び水を少なくとも含んで成る水性紫外線硬化インキ組成物であって、光重合性化合物が、5官能以上の光重合性オリゴマーと、2官能のウレタン系オリゴマーから成ることを特徴とする水性紫外線硬化型インキ組成物である。
【0021】
(光重合性化合物)
5官能以上の光重合性オリゴマーとしては、分子量が2000から15000であり、光重合成官能基が一分子中に5以上ある、ウレタン系オリゴマー、エポキシ系オリゴマー、エステル系オリゴマー等である。該オリゴマーを使用することによって、高い皮膜強度が得られる。
【0022】
なお、光重合性化合物に対する5官能以上の光重合性オリゴマーの配合割合は、5重量%から40重量%である。5重量%未満では、十分な皮膜強度が得られないからである。40重量%を超えた場合は、インキ皮膜の弾力性が低下し、脆くなるためである。
【0023】
2官能のウレタン系オリゴマーとしては、例えば、ポリオール(a)と有機ポリイソシアネート(b)を反応させてウレタンプレポリマーを作製し、ウレタンプレポリマーにヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(c)を反応させて得られるものがある。また、有機ポリイソシアネート(b)とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(c)を反応させて得られるもの等を挙げることができる。このような2官能ウレタン系オリゴマーを使用することによって、インキ皮膜の弾力性を向上し、インキ皮膜が脆くなることを防止するためである。
【0024】
ポリオール(a)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリマーポリオール、ポリシロキサンポリオール等を挙げることができる。
【0025】
有機ポリイソシアネート(b)としては、例えば、トリレンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネート;テトラメチルキシリレンジイソシアネートのような芳香脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのような脂肪族又は環状脂肪族ジイソシアネート等を挙げることができる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(c)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のアクリル基を1つ有する1官能性(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のアクリル基を2つ以上有する多官能性(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0026】
なお、光重合性化合物に対する2官能のウレタン系光重合性オリゴマーの配合割合は、20重量%から70重量%である。20重量%未満では、高膜厚の画線等を形成した場合、柔軟性のない脆いインキ皮膜となるからであり、70重量%を超えた場合は、低粘度光重合性化合物や、5官能オリゴマーでの物性調整幅がなくなるからである。
【0027】
また、光重合性化合物には、光重合性モノマーを更に配合し、インキ流動特性、皮膜物性を向上させることによって、更にインキ皮膜を強くすることができる。光重合性モノマーは、公知の単官能又は多官能光重合性モノマーを単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
単官能光重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
2官能光重合性モノマーとしては、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキシド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキシド)付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0030】
3官能光重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等の3価以上の多価アルコールのトリアクリレート又はトリメタクリレート類が挙げられる。
【0031】
4官能以上の光重合性モノマーとしては、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレート混合物、ジペンタエリスリトールポリエトキシヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリプロポキシヘキサ(メタ)アクリレート等があげられる。このようなアクリル系モノマーを使用することによって、インキ皮膜の強度を向上し、インキ皮膜が脆くなることを防止するためである。
【0032】
なお、光重合性化合物に対する光重合性モノマーの配合割合は、0重量%から60重量%である。60重量%を超えた場合は、インキ皮膜が脆くなるため、高膜厚な画線等の形成に不向きとなるからである。
【0033】
(水性紫外線硬化型インキ組成物)
水性紫外線硬化型インキ組成物は、前述した光重合性化合物と、光重合開始剤及び水を少なくとも含んで成る。
【0034】
水性紫外線硬化型インキ組成物に対する光重合性化合物の配合割合は、40重量%から68重量%である。40重量%未満では、硬化不良を起こす恐れがある。また、68重量%を超えた場合は、水、その他材料の配合が不十分であり、水性紫外線硬化型インキとして機能しないことがある。
【0035】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。水性紫外線硬化型インキ組成物に対する光重合開始剤の配合割合は、2重量%から15重量%である。2重量%以下では、硬化不良が発生し、顔料の種類や添加量、インキ膜厚等に制限がかかる。15重量%を超えた場合は、添加しても硬化性に大きな変化がないからである。
【0036】
水は、水道水、蒸留水、イオン交換水等を使用することができ、含有不純物が重合性化合物顔料の硬化性や、インキの流動特性等に悪影響を及さなければ特に制限はない。光輝性顔料のリーフィング効果を得るための水の配合割合としては、5重量%から18重量%の範囲内とする必要がある。5重量%未満では、インキ粘度の低粘度化が図れず、かつ、パール顔料等のリーフィング効果が得られ難いからである。また、18重量%を超えた場合は、インキ粘度が過度に低粘度化し、0.5Pa・s以下となることから、十分な膜厚が得られにくくなるとともに、UV照射単独による皮膜の硬化が難しくなるからである。ただし、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム等の吸水性のある顔料がある場合等、インキ系中に均一な水分が存在しない場合においては、吸水された分の水を配合することが望ましい。
【0037】
光輝性顔料は、水や光重合性化合物に可溶でなければ特に限定されず、パール顔料、鱗片状顔料、鱗片状マイカ、鱗片状金属顔料、ガラスフレーク顔料、コレステリック液晶顔料等、公知の光輝性顔料を使用することができる。更に、光輝性顔料の粒径は、例えば、大きさが平均500μm以下、好ましくは、平均200μm以下である。光輝性顔料の厚さは、平均5μm以下、好ましくは、平均1μm以下である。各上限値を超える場合は、配向性が低下するからである。なお、光輝性顔料の配合割合は、5重量%から25重量%である。5重量%以下では、インキ化後における干渉光を観察した際に、十分な彩度が得られない。25重量%以上では、配合率に見合った効果向上が得られず、彩度がそれ以上向上しないからである。
【0038】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物は、必要に応じて、公知の有機顔料や無機顔料を添加することができる。また、インキの安定性及びインキ皮膜の耐磨耗性等を向上させるため、消泡剤、レベリング剤、乳化剤、重合禁止剤及びワックス等を加えることができる。なお、インキ粘度は、0.5Pa・sから10Pa・s(30℃)であることが好ましい。0.5Pa・s未満では、十分な膜厚が得られにくくなり、10Pa・sを超えた場合は、印刷適性が劣り、画線等の再現性にかけるからである。
【0039】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物は、印刷する基材を特に限定せず、紙、プラスチック、フィルム及び金属板等に印刷することができる。なお、特に好ましいのは、コート紙等の平滑性が高く、かつ、インキ受理層を有する用紙である。インキと用紙との接地面積が広いと密着性が向上するからである。
【0040】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物を用いて紙等の基材への印刷方式は、特に限定されるものではなく、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、フレキソ印刷方式及び凹版印刷方式等の公知の印刷方式を使用することができる。なお、偽造防止効果、印刷適性及び高膜厚画線等を考慮した場合には、凹版印刷、スクリーン印刷及びフレキソ印刷が好ましい。
【0041】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物は、高膜厚の印刷画線を形成することができるため、当該インキ組成物を使用して第1の画線と第2の画線をそれぞれ異なる角度で配置して背景部と潜像部を形成し、当該印刷物を傾けることにより潜像画像を視認することができる印刷物(例えば、特許第4374446号公報等)等に使用し、水性インキを用いても油性インキと同等の偽造防止効果の高い印刷物を作製することができるため、環境上及び労働衛生上良好である。
【0042】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物は、光輝性顔料がリーフィングする高膜厚の印刷画線を形成するため、印刷物をわずかに傾ければ光輝性顔料の特有な効果である干渉光(虹彩色)を生じさせることができる。そのため、当該インキを使用して第1の画線と第2の画線をそれぞれ異なる角度で配置して背景部と潜像部を形成し、当該印刷物を傾けることにより任意の階調の潜像画像を視認することができる印刷物(例えば、WO2003/013871号公報等)等に使用し、水性インキを用いても油性インキと同等の偽造防止効果の高い印刷物を作製することができるため、環境上及び労働衛生上良好である。
【0043】
(水性紫外線硬化型インキ組成物の作製方法)
本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物の作製方法は、光重合性化合物作製工程と、混合攪拌工程から成る。
【0044】
光重合性化合物作製工程は、少なくとも一種類の5官能以上のオリゴマーと、少なくとも一種類の2官能のウレタン系オリゴマーと、低粘度光重合性化合物を混合して加熱攪拌する。なお、攪拌は、プロペラ攪拌機、ヘンシェルミキサー等の公知の攪拌装置を使用することができる。水性紫外線硬化型インキ組成物作製工程は、作製した光重合性化合物に光重合開始剤を配合し、加熱攪拌する。光重合開始剤を配合した後、顔料と、蒸留水、ワックス等の添加材を配合し、室温において、プロペラ攪拌機やボールミル等のインキ製造装置で混練され作製される。
【0045】
例えば、混合攪拌工程において、光重合性化合物が親水性の場合、該光重合性化合物に光重合開始剤を加熱攪拌又は練肉等により十分に分散させる。次に、必要量の水、助剤及び顔料等を添加して十分に攪拌し、一層系に仕上げる。さらに、顔料や助剤を配合する際には、インキのゲル化が起こらない程度に配合し、攪拌等を行う。なお、親水性の高い水性の光重合性化合物としては、カルボキシル基又はスルホニル基が導入されたアニオンタイプ、アミノ基を酸で中和又は四級化試薬により四級アンモニウム塩としたカチオンタイプ、ポリエーテル骨格又は水酸基を有するノニオンタイプ等の材料が挙げられる。水性材料を使用しない場合は、光重合性化合物に界面活性剤と光重合開始剤を配合して、水性材料を添加した場合と同様な攪拌を行い、更に、顔料、助剤を配合する。
【実施例1】
【0046】
以下、上記の本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物について具体的な実施例を挙げ、詳細に説明する。なお、例中の%は、すべて重量%を示す。
【0047】
(光重合性化合物A)
5官能ウレタン系オリゴマー(日本化薬株式会社製)と、2官能ウレタン系オリゴマー(共栄社化学株式会社製)と、単官能アクリル系モノマー(荒川化学工業製)を、表1の配合によりプロペラ式攪拌機にて、温度70℃で、40分間加熱攪拌して光重合性化合物Aを作製した。
【0048】
【表1】

【0049】
(光重合性化合物B)
5官能ウレタン系オリゴマー(日本化薬株式会社製)と、2官能ウレタン系オリゴマー(共栄社化学株式会社製)、単官能アクリル系モノマー(荒川化学工業株式会社製)、6官能アクリル系モノマー(日本化薬株式会社製)を使用し、表2の配合によりプロペラ式攪拌機にて、温度70℃で、40分間加熱攪拌して光重合性化合物Bを作製した。
【0050】
【表2】

【0051】
(水性紫外線硬化型インキ組成物)
作製した光重合性化合物AとBに光重合開始剤を添加し、温度70℃で、15分間加熱攪拌した。加熱停止後、顔料(メルク株式会社製)と、蒸留水を使用し、表3の配合により室温において、プロペラ攪拌機で攪拌して水性紫外線硬化型インキ組成物VとVを作製した。
【0052】
【表3】

【0053】
(比較光重合性組成物)
2官能ウレタン系オリゴマー(共栄社化学株式会社製)、単官能アクリル系モノマー(荒川化学工業株式会社製)を使用し、表4の配合によりプロペラ式攪拌機にて、温度70℃で、40分間加熱攪拌して比較光重合性化合物Cを作製した。
【0054】
【表4】

【0055】
(比較水性紫外線硬化型インキ組成物)
作製した比較光重合性化合物Cに光重合開始剤を添加し、温度70℃で、15分間加熱攪拌した。加熱停止後、顔料(メルク株式会社製)と、蒸留水を使用し、表5の配合により室温において、プロペラ攪拌機で攪拌して比較水性紫外線硬化型インキ組成物Vを作製した。
【0056】
【表5】

【0057】
本発明の水性紫外線硬化型インキ組成物の評価は、以下のように行った。
【0058】
印刷適性は、実際のスクリーン印刷機を用い、スクリーン印刷後、紫外線を照射してインキ皮膜を硬化し、インキ皮膜の耐摩擦性を評価した。インキ皮膜は、10μmとした。紫外線照射は、120W/cmのメタルハライドランプ1灯の出力を3.6kw、印刷物からの照射距離を14cmに調整し、印刷物の搬送速度を22m/minとした。
【0059】
インキ皮膜の強度評価は、印刷物に対して、学振型摩擦試験機を用い、荷重500gでカナキン100回往復の条件により、印刷物表面のインキ皮膜の擦れ落ち度合いを三段階評価した(擦れ落ちがないものを良好◎、擦れ落ちがほとんどないものを良○、擦れ落ちが激しいものを不良×)。評価結果を表6に示す。
×:不良
○:良
◎:良好
【0060】
【表6】

【0061】
表6に示すように、本発明の実施例によれば、紫外線硬化性に優れ、耐久性に優れるインキを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性顔料、光重合性化合物、光重合開始剤及び水を少なくとも含んでなる水性紫外線硬化型インキ組成物であって、
前記光重合性化合物は、少なくとも一種類の5官能以上の光重合性オリゴマーと、少なくとも一種類の2官能のウレタン系光重合性オリゴマーを有し、
前記光重合性化合物が40重量%から68重量%、前記光重合開始剤が、2重量%から15重量%、前記水が、5重量%から18重量%、前記光輝性顔料が、5重量%から25重量%であることを特徴とする水性紫外線硬化型インキ組成物。
【請求項2】
5官能以上の前記光重合性オリゴマーは、ウレタン系、エポキシ系、エステル系光重合性オリゴマーであることを特徴とする請求項1記載の水性紫外線硬化型インキ組成物。
【請求項3】
前記光重合性化合物は、5官能以上の前記光重合性オリゴマーが、5重量%から40重量%、2官能の前記ウレタン系光重合性オリゴマーが、20重量%から70重量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の水性紫外線硬化型インキ組成物。
【請求項4】
前記光重合性化合物は、少なくとも一種類の光重合性モノマーを更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の水性紫外線硬化型インキ組成物。
【請求項5】
前記光重合性化合物は、5官能以上の前記光重合性オリゴマーが、5重量%から40重量%、2官能の前記ウレタン系光重合性オリゴマーが、20重量%から70重量%、前記光重合性モノマーが0重量%より多く、60重量%以下であることを特徴とする請求項4項記載の水性紫外線硬化型インキ組成物。
【請求項6】
30℃における粘度が、0.5Pa・sから10Pa・sであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の水性紫外線硬化型インキ組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6記載の水性紫外線硬化型インキ組成物の偽造防止印刷物への使用。

【公開番号】特開2012−92210(P2012−92210A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240044(P2010−240044)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】