説明

水性製剤およびその用途

水性製剤は、
(A)少なくとも一種のフィルム形成性付加(共)重合体と、
(B)コア(a)と、該コア(a)とは異なる少なくとも一種の外皮(b)とを含む粒子(B)と、さらに必要に応じて
(C)少なくとも一種の疎水化剤とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(A)少なくとも一種のフィルム形成性付加(共)重合体と、
(B)コア(a)と少なくとも一種の該コア(a)とは異なる外皮(b)とを含む粒子とを含み、
さらに必要に応じて(C)少なくとも一種の疎水化剤を含む水性製剤に関する。
【0002】
本発明はまた、本発明の水性製剤の利用に関する。本発明はさらに、本発明の水性製剤を用いる表面を被覆させる方法とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、撥汚性とするための、あるいは少なくとも汚れにくくするための表面処理に大きな興味が注がれてきた。多くの方法では、表面に、例えば高さが5〜100μmで間隔が5〜200μmの構造を与えている。蓮植物を真似た構造が表面に施されている(例えばWO96/04123やUS3,354,022を参照)。しかしながら、このような方法が常に好ましいわけではなく、織物表面の処理には不適当である。
【0004】
WO04/74568には、少なくとも一種の有機のポリマーと少なくとも一種の粒子状の有機または無機固体とを含む少なくとも一種の水性の液体(その少なくとも一種の有機または無機固体の該液体中の含量は、少なくとも5.5g/lである)を用いる繊維材料の加工プロセスが開示されている。シリカゲル、特にヒュームドシリカゲルが粒子状固体として推奨される。
【0005】
EP1283296には、50〜80重量%の例えばバレイショ澱粉や、シリカゲルやクオーツ粉、カオリンなどの酸化物系材料から選ばれる少なくとも一種の微細破砕材料で、直径が範囲0.5〜100μm(少なくとも80重量%が微粉砕材料)のものと、20〜50重量%のバインダーとフッ素系高分子と、適当ならさらに助剤を含むマトリックスとを塗布することにより得られる塗膜で織物シート状構造物を被覆させることが開示されている。
【0006】
しかしながらEP1283296に記載のように、バレイショ澱粉は水性液体に一定の溶解度を示すか浮きあがるため、塗布作業の際にバレイショ澱粉粒子の径を適度にコントロールすることができない。特にシリカゲルなどの無機固体の場合は、ある程度の凝固傾向が認められるが、これは塗布に不利であり、組織の変数の設定をより難しくする。
【0007】
さらに、上記の方法で被覆された織物が、時によっては十分な耐洗濯性を持たないこともある。例えば汗で濡れた織物を洗濯する場合、一回洗濯すると撥汚性が低下し、数回洗濯を繰り返すと撥汚性が実質的に消失する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、表面、特に織物表面に塗布可能で、塗布により撥汚性が付与する製剤を提供することである。本発明のもう一つの目的は、上述の欠点を、特に織物表面への塗布に関する欠点を避ける表面の被覆方法を提供することである。本発明のさらにもう一つの目的は、上述の欠点を持たず良好な撥汚性を有する被覆表面を供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、この目的が、冒頭に定義した水性製剤により達成されることを見出した。
【0010】
冒頭に定義された本水性製剤は、
(A)少なくとも一種のフィルム形成性付加(共)重合体と、
(B)コア(a)と、該コア(a)とは異なる少なくとも一種の外皮(envelope)(b)を含む粒子とを含み、さらに必要に応じて
(C)少なくとも一種の疎水化剤を含んでいる。
【0011】
本発明の水性製剤は、一種以上のフィルム形成性付加(共)重合体(A)を含んでいる。なお、フィルム形成性付加(共)重合体(A)は、分散状やエマルジョン状だけでなる有機ゾル状の(コ)ポリマーを、例えばポリアクリレート、ポリウレタン、またポリブタジエンやポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、およびこれらのコポリマーを意味し、これらのフィルム形成性付加(共)重合体は、熱的な後処理により、あるいは照射、特にIR照射による処理で、塗布支持体上に、支持体に大きな損傷を与えることなくフィルムを形成する。ポリアクリレートまたはポリウレタンの分散物や乳化物が好ましい。
【0012】
本発明の目的のフィルム形成性付加(共)重合体(A)として用いるに好適なポリアクリレートとしては、少なくとも一種のモノエチレン性不飽和カルボン酸またはジカルボン酸(例えば、マレイン酸やフマル酸、クロトン酸、イタコン酸、または好ましくは(メタ)アクリル酸)と、少なくとも一種のモノエチレン性不飽和カルボン酸またはジカルボン酸の少なくとも一種のC1−C10−アルキルエステル(特にメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、およびアクリル酸−2−エチルヘキシル)、及び/又はパラ−メチルスチレンやα−メチルスチレン、特にスチレンなどのビニル芳香族化学物や、(メタ)アクリルアミドや(メタ)アクリロニトリルなどの窒素系のコモノマーから選ばれる少なくとも一種の他のコモノマーの付加コポリマー、特に乳化付加コポリマーである。
【0013】
本発明のある実施様態においては、バインダーとして有用なポリアクリレートは、共重合の形で、グリシジル(メタ)アクリレート、アセトアセチル(メタ)アクリレート、およびN−メチロール(メタ)アクリルアミドから選ばれる少なくとも一種の反応性のコモノマーを含んでいる。
【0014】
本発明の目的のバインダーとして好ましい適当なポリウレタンは、少なくとも一種のポリエステルオール(例えばコハク酸、グルタル酸、特にアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸)の縮合生成物と、少なくとも一種の脂肪族のジオール(例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコールまたはジエチレングリコールなど)と、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートと、また適当なら他の反応成分との反応により得られるヒドロキシル末端を有するポリウレタンである。好適なジイソシアネートは、脂肪族、脂環式、および芳香族ジイソシアネート類であり、特にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトシクロヘキシルメタン(MDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、および、トリレンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ジイソシアネート類である。
【0015】
他の反応成分として、例えば、ジオール類、特に1,4−ブタンジオールや、酸官能性分子、特に酸官能性ジオールや酸官能性ジアミン、例えば3,3−ジヒドロキシメチロールプロピオン酸や
【0016】
【化1】

があげられる。
【0017】
本発明の水性製剤は、さらにコア(a)と、コア(a)とは異なる少なくとも一種の外皮(b)とを含み、後に熱処理される粒子(B)を有している。
【0018】
本発明のある実施様態においては、粒子(B)の数平均粒径は20〜1000nmの範囲であり、好ましくは範囲25〜475nmの範囲、より好ましくは50〜300nmの範囲である。粒子径は、通常の測定方法で、例えば透過電子顕微鏡で測定できる。
【0019】
本発明のある実施様態においては、粒子(B)のコア(a)の平均直径は、10〜950nmの範囲であり、好ましくは最大450nm、15〜250nmの範囲である。
【0020】
コア(a)の数平均粒径とシェル(b)の厚みは、コア(a)とシェル(b)の平均直径を測定し、粒子(B)の製造過程で適度に、特に完全に変換が進むと仮定して、他成分、外皮(b)またはコア(a)の非存在下で製造されたコア(a)と外皮(b)の密度を、いずれの場合も密度として用いて計算することにより、好適に決定することができる。
【0021】
本発明のある実施様態においては、粒子(B)は、一峰性の直径分布を有している。本発明のもう一つの実施様態においては、粒子(B)が、二峰性の直径分布を有していてもよい。
【0022】
本発明のある実施様態では、粒子(B)が凝集体の形ででも凝集塊の形ででも存在しない。
【0023】
本発明のある実施様態では、粒子(B)が不規則な形状を有している。好ましくは、粒子(B)が規則的な形状を有し、例えば楕円状のまたは、特に、球状の形状を有している。
【0024】
コア(a)と外皮(b)はそれぞれ好ましくは有機のコポリマーを含んでいる。
【0025】
コア(a)と外皮(b)は相互に異なる。本発明のある実施様態においては、コア(a)と外皮(b)は、異なる有機コポリマーを、すなわち番号または化学構造で異なるコポリマーを含んでおり、本発明のもう一つの実施様態においては、コア(a)と外皮(b)は、同一であるもののコモノマー比率の異なるコモノマーから合成した異なった有機コポリマーを含んでいる。
【0026】
本発明のある実施様態においては、コア(a)と外皮(b)は、相互に共有的に結合している。
【0027】
本発明のある具体的な実施様態においては、粒子(B)が、コア−シェルポリマーを含んでおり、このシェルが外皮(b)に相当する。
【0028】
本発明のある実施様態においては、コア(a)は、少なくとも一種のエチレン性不飽和化合物の架橋コポリマーを、例えばビニル芳香族化合物または(メタ)アクリル酸のC1−C10−アルキルエステルのコポリマーを含んでいる。例えば、コモノマーとして一種以上の架橋剤を用いてもよい。適当ならコア(a)の製造に有用な他のコモノマーとしては、エチレン性不飽和化合物とフリーラジカル的に共重合可能な一種以上の化合物があげられ、その例としては、C1−C10−アルキル(メタ)アクリレート類、ω−ヒドロキシ−C2−C4−アルキレン(メタ)アクリレート類、単一エチレン性不飽和カルボン酸類、(メタ)アクリルアミド、無置換のまたはC1−C10−アルキルまたはジ−C1−C10−n−アルキル−C2−C4−アルキレンで一置換または二置換されたもの、特にN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMAM)があげられる。
【0029】
好適なビニル芳香族化合物としては、α−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、特にスチレンがあげられる。
【0030】
特に好適な(メタ)アクリル酸のC1−C20−アルキルエステルの例としては、n−ブチル(メタ)アクリレートとメチルメタクリレートがあげられる。
【0031】
有用な架橋剤としては、例えば、オルト−ジビニルベンゼンや、メタ−ジビニルベンゼン、パラ−ジビニルベンゼンなどのジ−およびトリ−ビニル芳香族化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,1、1−トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、などの(メタ)アクリレート類の二価−または三価のアルコールエステルがあげられる。
【0032】
好適なC1−C10アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレートがあげられる。
【0033】
好適なω−ヒドロキシ−C2−C4−アルキレン(メタ)アクリレートの例としては、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがあげられる。
【0034】
特に好適な単一エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、E−およびZ−クロトン酸、イタコン酸、特にアクリル酸やメタクリル酸があげられる。
【0035】
1−C10−アルキル−またはジ−C1−C10−アミノ−n−アルキル−C2−C4−アルキレンの一置換または二置換(メタ)アクリルアミドの例としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、およびN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドがあげられる。
【0036】
コア(a)用の有機架橋コポリマーは、例えば、最大25モル%の、好ましくは最大20モル%、少なくとも1モル%の架橋剤と、少なくとも75モル%の、好ましくは少なくとも80モル%、より好ましくは最大99モル%の一種以上の上記の単一エチレン性不飽和コモノマーとを用いて製造することができる。
【0037】
本発明のある実施様態においては、粒子(B)は、例えば、少なくとも一種のエチレン性不飽和カルボン酸または少なくとも一種のエチレン性不飽和カルボン酸のエステルまたはアミドの、架橋コポリマーまたは架橋可能なコポリマーを含む外皮(b)を含んでいてもよい。
【0038】
本発明のある実施様態においては、粒子(B)は、例えば少なくとも一種のエチレン性不飽和カルボン酸または少なくとも一種のエチレン性不飽和カルボン酸のエステルまたはアミドの架橋ポリマーまたはさらに架橋可能なコポリマーを含む外皮(b)を、すなわちいわゆる初期架橋コポリマーを含む外皮を含んでいる。
【0039】
外皮(b)の架橋を行うために、例えば粒子(B)の全重量に対して最大7重量%、好ましくは0.1〜5重量%の量で一種以上の上記の架橋剤を共重合して目的のコポリマーとしてもよい。
【0040】
架橋可能なコポリマーとは、例えば、本発明の方法の他の工程中の熱処理条件下で、これらのコポリマーが反応して、結果として架橋することを意味するものとする。例えば、エポキシ基、NH−CH2OH基またはアセトアセチル基を有する一種以上のコモノマーをコポリマーが好適である。
【0041】
特に適当なエポキシ基含有コモノマーとしては、例えばイタコン酸やマレイン酸、フマル酸のモノ−またはジグリシジルエステル、E−およびZ−クロトン酸のグリシジルエステル、および特にアクリル酸やメタクリル酸のグリシジルエステルがあげられる。
【0042】
特に好適にNH−CH2OH基含有コモノマーとしては、例えばホルムアルデヒドと単一エチレン性不飽和カルボキサミドとの反応生成物、特にN−メチロールアクリルアミドやN−メチロールメタクリルアミドがあげられる。
【0043】
特に好適なアセトアセチル基含有コモノマーとしては、例えば一般式Iのアルコールの(メタ)アクリレート類があげられる。
【0044】
【化2】

【0045】
式中、
1は、技分かれしていてもよいC1−C10−アルキル、例えばメチルやエチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、iso−アミル、n−ヘキシル、iso−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルから選ばれ、より好ましくは非分岐のC1−C4−アルキル、例えばメチルやエチル、n−プロピル、n−ブチルから選ばれる。
【0046】
外皮(b)を合成するのに好適な他のコモノマーとしては、例えば、ビニル芳香族化合物、C1−C10−アルキル(メタ)アクリレート、ω−ヒドロキシ−C2−C4−アルキレン(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリル酸があげられる。
【0047】
本発明のある実施様態においては、コア(a)、外皮(b)、またはコア(a)と外皮(b)は、一種のアニオン性コポリマーまたは異なる複数のアニオン性コポリマーを含んでいる。本発明においては、アニオン性コポリマーは、フリーラジカル重合可能なエチレン性不飽和化合物から合成されるコポリマー類であり、そのうち一つが、水性製剤中でプロトンの解離可能な基を、例えばメタクリル酸またはビニルホスホン酸を分子中に少なくとも一つ有しているもの(いわゆるアニオン性のコモノマー)である。
【0048】
本発明のもう一つの実施様態においては、コア(a)、外皮(b)、またはコア(a)と外皮(b)は、一種のカチオン性コポリマーまたは異なる複数のカチオン性コポリマーを有している。本発明において、カチオン性コポリマーとは、フリーラジカル重合可能なエチレン性不飽和化合物類から合成可能なコポリマーであって、うち一つ(いわゆるカチオン性コモノマー)が、分子中に少なくとも一種の水性製剤中でプロトン化可能な基を、例えば自由電子対を有する一種以上の窒素原子がまたは第四級の窒素原子がポリマー鎖中に形成されているカチオン性基を有しているものを意味する。
【0049】
カチオン性コポリマーは、例えばフリーのアミノ基を有する、例えばNH2基、NH(C1−C4−アルキル)基、N(C1−C4−アルキル)2基または(C1−C4−アルキル)2N−C2−C10−アルキレン基、特に(CH32N−C2−C4−アルキレン基を有するコポリマーをいうものと考えてよい。
【0050】
本発明のある実施様態においては、カチオン性コポリマーは、酸性条件下では、例えばpHが6以下では、少なくとも部分的にプロトン化された形で存在する。
【0051】
本発明のある実施様態においては、カチオン性コポリマーは、少なくとも一種のエチレン性不飽和カルボン酸の一種以上のアミドを、例えば(メタ)アクリルアミドを、共重合の形でコモノマーの一つとして含むコポリマーを意味すると考えてもよい。
【0052】
本発明のある実施様態においては、カチオン性コポリマーは、少なくとも一種のノニオン性のコモノマー、例えばスチレンなどのビニル芳香族化合物または少なくとも一種のエチレン性不飽和カルボン酸の少なくとも一種のC1−C20−アルキルエステルと、分子中に少なくとも一種のプロトン化可能なまたは四級化窒素原子を有する少なくとも一種のコモノマーからなるコポリマーである。
【0053】
本発明の意味において、カチオン性コポリマーは、共重合の形で、一種以上のアニオン性のコモノマーを、例えば(メタ)アクリル酸またはクロトン酸を含んでいてもよい。カチオン性コポリマーが共重合の形で少なくとも一種のアニオン性モノマーを含む場合、カチオン性コモノマーのモル分率は、アニオン性コモノマーのモル分率より常に高く、例えば合計カチオン性コポリマーに対して0.5モル%高く、好ましくは少なくとも1モル%、より好ましくは1.5〜20モル%高い。
【0054】
本発明のある実施様態においては、外皮(b)、または外皮(b)中に存在する架橋コポリマーまたは架橋可能なコポリマーは、−50〜+30℃の範囲のガラス転移温度Tgを有し、好ましくは−20〜+30℃の範囲のガラス転位温度Tgを有する。
【0055】
コア(a)と、コア(a)とは異なる少なくとも一種の外皮(b)とを含む粒子(B)はいろいろな方法で製造可能であり、例えば一種以上の乳化剤の存在下で一種以上のフリーラジカル開始剤を用いる多段乳化重合、あるいは傾斜型での乳化重合により製造できる。コア(a)は、コモノマーの荷電成分を用いて外皮(b)の形成に先立って合成される。好ましくは、コア(a)は、シード型での乳化重合により合成される。すなわち、最初に一種以上の水不溶性ポリマー、例えばポリスチレンを、非常に小さな粒子で、例えば数平均粒径が10〜30nmの範囲にある粒子で添加し、共重合中に液滴を形成して合成される。
【0056】
本発明の水性製剤は、少なくとも一種の疎水化剤(C)をさらに含んでいてもよい。
【0057】
本発明のある実施様態においては、疎水化剤(C)は以下のものからから選ばれる。
(C1)ハロゲン化(halous)有機(コ)ポリマー、
(C2)パラフィン、
(C3)分子内に少なくとも一種のC10−C60−アルキル基を有する化合物、および
(C4)シリコーン。
【0058】
有用なハロゲン化(コ)ポリマー(C1)としては、例えば、一種以上の単一または多重にハロゲン化された、好ましくは塩素化された、より好ましくはフッ素化された(コ)モノマーのフリーラジカル(共)重合に合成される塩素化(コ)ポリマー、特にフッ素化(コ)ポリマーがあげられる。
【0059】
極めて好ましいハロゲン化(コ)モノマーとしては、フッ化ビニリデン、三フッ化塩化エチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどのフッ素化オレフィン類、部分または完全フッ素化C3−C11−カルボン酸のビニルエステル類、例えばUS2,592,069やUS2,732,370に記載のもの、部分または完全フッ素化アルコールの、例えば部分または完全フッ素化C3−C14−アルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、具体的にはHO−CH2−CH2−CF3や、HO−CH2−CH2−C25、HO−CH2−CH2−n−C37、HO−CH2−CH2−iso−C37、HO−CH2−CH2−n−C49、HO−CH2−CH2−n−C613、HO−CH2−CH2−n−C817、HO−CH2−CH2−O−n−C613、HO−CH2−CH2−O−n−C817、HO−CH2−CH2−n−C1021、HO−CH2−CH2−n−C1225の(メタ)アクリル酸エステル類、例えばUS2,642,416やUS3,239,557、US3,462,296に記載のものがあげられる。
【0060】
他の有用なコポリマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸のC1−C20−アルキルエステル、またはグリシジル(メタ)アクリレートと式II
【0061】
【化3】

【0062】
(式中、
2は、CH3またはC25であり、
3は、水素、CH3、またはC25であり、
xは、4〜12の範囲の、好ましくは6〜8の範囲の整数であり、
yは、1〜11の範囲の、好ましくは1〜6の範囲の整数である。)
のエステル類とのコポリマー、
またはグリシジル(メタ)アクリレートとフッ素化されたカルボン酸ビニルエステルのコポリマーが、ハロゲン化ポリマー(C)として有用である。
【0063】
他の有用な疎水化剤(C)としては、部分フッ素化された、特に完全フッ素化されたC3−C12−アルキルアルコール、例えばHO−CH2−CH2−CF3、HO−CH2−CH2−C25、HO−CH2−CH2−n−C37、HO−CH2−CH2−iso−C37、HO−CH2−CH2−n−C49、HO−CH2−CH2−n−C613、HO−CH2−CH2−n−C817、HO−CH2−CH2−O−n−C613、HO−CH2−CH2−O−n−C817、HO−CH2−CH2−n−C1021、HO−CH2−CH2−n−C1225の(メタ)アクリル酸エステルと、
非ハロゲン化C1−C20−アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−エイコシル(メタ)アクリレートとのコポリマーがあげられる。
【0064】
ハロゲン化有機(コ)ポリマー(C1)として有用な他のフッ素系高分子やコポリマーの概略が、例えば、M.Lewin et al., 繊維や織物の化学加工、B部、第二巻、Marcel Dekker, New York (1984), 172頁、178〜182頁に記載されている。
【0065】
ハロゲン化有機(コ)ポリマー(C1)として有用な他のフッ素化(コ)ポリマーが、例えばDE199120810に記載されている。
【0066】
本発明の方法は、単一のハロゲン化(コ)ポリマー(C1)を用いて実施してもよいし、複数の異なるハロゲン化(コ)ポリマー類(C1)を用いて実施してもよい。
【0067】
本発明の方法の実施に当たり、ハロゲン化(コ)ポリマー(C1)は未架橋の形で使用することが好ましいが、乾燥時に架橋してもよい。
【0068】
他の適当な疎水化剤(C)はパラフィン(C2)である。パラフィン(C2)は、室温で例えば液体または固体であり、天然品でも合成品でもよい。好ましいパラフィン(C2)は、例えばチーグラー−ナッタ触媒やメタロセン触媒を用いて製造されたフィッシャートロプシュワックスや高密度ポリエチレンワックスなどの合成パラフィン類や、DIN53402の方法で測定した酸価が1〜150mg−KOH/g−パラフィンの範囲にある部分酸化高密度ポリエチレンワックス類、エチレンのホモポリマーワックスだけでなく、合計で最高20重量%のコモノマー、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンまたは1−ドデセンを含むポリエチレンのコポリマーを含む高密度ポリエチレンワックス類、特にいわゆるパラフィンワックスやイソパラフィンワックス類(例えば、粗製パラフィン(粗製パラフィンワックス)、スラックワックスラフィネート、脱油粗製パラフィン(脱油粗製パラフィンワックス)、半精製または完全精製パラフィン(半精製または完全精製パラフィンワックス)、漂白パラフィン(漂白パラフィンワックス))である。なお、パラフィンワックスは、特に40〜80℃の範囲で、好ましくは50〜75℃の範囲で溶融する室温で固体のパラフィンを、すなわち技分かれしていてもよい、環状または好ましくは非環状の、単一の好ましくは複数混合物の飽和炭化水素を意味する。本発明において、パラフィンワックスは、好ましくは18〜45個の炭素原子を有する複数の飽和炭化水素からなる。本発明において、イソパラフィンは、好ましくは分子中に20〜60個の炭素原子を有する飽和炭化水素からなる。
【0069】
他の有用な疎水化剤(C)としては、分子(C3)中に少なくとも一種のC10−C60−アルキル基を有する、好ましくは一個のC12−C40−アルキル基を有する線状のまたは複素環式、好ましくは複素芳香族の化合物(以後、化合物(B3)と短縮する)があげられる。なお、C12−C40−アルキル基は、異なっているか好ましくは同一である、分岐状のまたは好ましくは非分岐状の基である。120〜200℃の範囲の温度に加熱すると少なくとも一種の脂肪族アミンまたは少なくとも一種の脂肪族アルコールを放出することのできる化合物(C3)、すなわちC10−C60−アルキル基を一つ有するアミンまたはアルコールが好ましい。
【0070】
一般式IIIの化合物が極めて好ましい。
【0071】
【化4】

【0072】
4は、分岐状または好ましくは非分岐状のC10−C60−アルキル、例えばn−C1021、n−C1225、n−C1429、n−C1633、n−C1837、n−C2041、n−C3061、n−C4081、n−C50101、n−C6121、および
CH2OR10、(式中、R10は、分岐状または好ましくは非分岐状のC10−C60−アルキル、例えばn−C1021、n−C1225、n−C1429、n−C1633、n−C1837、n−C2041、n−C3061、n−C4081、n−C50101、n−C60121から選択される)から選ばれる。炭素数と対応する水素数は、平均値と考えるべきである。
【0073】
5〜R9は、異なっているか好ましくは同一であり、水素、R4、CH2−OH、CH2−O−C1−C10−アルキルから選ばれ、特にCH2−OCH3、CH2−OC25、CH2−O−n−C49、CH2−OCH2CH2OH、CH2−OCH2CH2O−C1−C10−アルキル、特にCH2−OCH2CH2OCH3、CH2−OCH2CH2OC25、CH2−OCH2CH2O−n−C49、CH2−(OCH2CH22OH、CH2−(OCH2CH22O−C1−C10−アルキルから選ばれ、特にCH2−(OCH2CH22OCH3、CH2−(OCH2CH22OC25、およびCH2−(OCH2CH22O−n−C49から選ばれる。
【0074】
他の特に好ましい化合物類(C3)の例は、一般式IVの化合物類である。
【0075】
【化5】

【0076】
式中、その変数はそれぞれ上述の定義どおりである。
【0077】
シリコーン(C4)の例としては、一般式Vの化合物があげられる。
【0078】
【化6】

【0079】
式中、
14は、Si(CH33と水素から選ばれ、
Xは、C1−C4−アルキル(特にメチル)、
水素、
エポキシ基、特に次式のもの、
【0080】
【化7】

【0081】
NH2、アミノアルキレン、好ましくはω−アミノアルキレン、特に(CH2w−NH2(式中、wは1〜20、好ましくは2〜10で、隣接するCH2基の一個またはより好ましくはゼロ個が酸素またはNHで置換されていてもよい)から選ばれる。Xの例としては、CH2−NH2、CH2CH2−NH2や、(CH2)−NH2、(CH24−NH2、(CH26−NH2、(CH23−NH−(CH22−NH2、(CH22−NH−(CH23−NH2があげられる。
【0082】
[Si(CH32−O]単位および[SiX(CH3)−O]単位は、例えばブロック的であってもランダムであってもよい。
【0083】
mとnはそれぞれ整数である。nとmの合計は、30〜2000でよく、好ましくは50〜1500である。
【0084】
好ましくは、mは、nより大きい。より好ましくは、特にXがCH3でない場合は、nは1〜10であり、mはそれに応じて選ばれる。
【0085】
本発明のある実施様態においては、シリコーン(C4)の23℃で測定した動粘度は、特にX=CH3でR14=Si(CH33の場合は、100mPa・s〜50000mPa・sの範囲である。
【0086】
本発明のある実施様態では、少なくとも一種のパラフィン(C2)と少なくとも一種の化合物(C3)とを組み合わせて含む疎水化剤(C)が用いられる。
【0087】
本発明の水性製剤は、水性懸濁液の形で存在しても、乳化物や分散物の形で存在してもよいが、水性の液体が好ましい。
【0088】
本水性製剤の、特に水性の液体の固体含量は、10〜70重量%の範囲であり、好ましくは30〜50重量%の範囲である。
【0089】
本発明のある実施様態においては、水性製剤、好ましくは水性の液体のpHは、2〜9の範囲であり、好ましくは3.5〜7.5の範囲である。
【0090】
本発明はまた、本発明の水性製剤の表面塗装への利用を提供する。本発明はまた、本発明の水性製剤を用いて表面を被覆させる方法を提供し、これを以降、本発明の被覆方法と称す。
【0091】
本発明の被覆方法は、表面を本発明の水性製剤に接触させ、その作用を起こさせ、その後乾燥することで実施してもよい。
【0092】
本発明の目的において、表面がいかなる材料からできていてもよいし、いかなる物体に属していてもよい。柔軟性を持つ支持体の表面が好ましい。繊維状の材料、例えば紙、板、皮革、人工皮革、アルカンターラ(日本では、エクセーヌ)からなる表面が特に好ましく、表面が、織物の表面であることが、つまり織物表面であることがさらに好ましい。
【0093】
本発明の目的において、織物とは、織物繊維、織物中間体や最終製品、またこれらから製造させる衣料産業用の織物や、例えばカーペット等の家庭用織物や、工業用途の織物構造物などの加工製品である。これらの織物には、ステープルのような不定形構造物や、撚り糸やフィラメント、ヤーン、ライン、紐、レース、組紐、コードなどの線状構造物や、フェルトや織布、不織布、詰綿などの三次元構造物も含まれる。本発明の目的の織物は、綿や羊毛、亜麻などの天然物であっても、ポリアミドや、ポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステルブレンド布、ポリアミドブレンド布、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルマクロファイバー、ガラス繊維布などの合成物であってもよい。綿製の織物が特に好ましい。
【0094】
本発明の被覆方法により、一方の表面(辺、面)を被覆して、他方を被覆しなくてもよいし、あるいは両方の表面(辺、面)を本発明の方法で塗装してもよい。例えば、本発明の方法により外表面を被覆し内側(身体に面する)表面を塗装しないことが好ましい衣料、例えば作業着もあれば、両側(前後)を本発明の方法で塗装することが好ましいオーニング(幌)などの工業用織物もある。
【0095】
被覆を行う温度自体は、重要ではない。この温度は10〜60℃の範囲でよく、好ましくは15〜30℃の範囲である。
【0096】
本発明のある実施様態においては、本発明の被覆方法が、例えば吹き付け、噴霧、流延、捺染、プラズマ成膜または浸漬圧搾を一回ないし数回繰り返して行われる。
【0097】
水性の液体またはフロートを用いて表面に接触させて本発明の被覆方法を実施するには、本発明の方法の結果として湿式ピックアップが25重量%〜95重量%の範囲、好ましくは60重量%〜90重量%の範囲となるように、湿式ピックアップを選ぶことができる。
【0098】
本発明のある好ましい実施様態においては、本発明の被覆方法は、パッドマングルなどの通常織物加工に使用される機械を用いて実施される。圧力下で相互に接触している二本のローラーを有し、この間を織物が通過する縦供給型のパッドマングルが好ましい。水性製剤はローラーの上部で供給されて織物を濡らすことが好ましい。この圧力により織物が絞られて一定の塗布量が確保される。他の好ましいパッドマングルでは、織物をまず浸漬浴に通過させ、次いで圧力下で相互に接触している2本のロール間を上向きに通過させる。後者の場合は、このパッド−マングルは、縦型織物上向供給とも言われる。パッド−マングルは、例えばHans−Karl Rouette, 「織物加工ハンドブック」、Deutscher Fachverlag、2003、618〜620頁に記載されている。
【0099】
本発明のある実施様態においては、本発明の被覆方法を、表面を少なくとも一種の本発明の水性製剤に接触させ、次いで熱的に処理することで実施することもできる。
【0100】
塗装後に表面が熱処理される。熱処理で乾燥を行ってもよい。この熱処理でさらに架橋反応を行ってもよい。好ましくは、この熱処理が、コア(a)の融点未満の温度で行われる。
【0101】
本発明のある実施様態においては、この熱処理を、例えば20〜200℃の範囲の温度で行ってもよい。
【0102】
熱処理はたとえば大気圧で行うこともできる。減圧で、例えば1〜850mbarの範囲の圧力で行ってもよい。
【0103】
この熱処理に、加熱または非加熱のガス流、特に加熱または非加熱の窒素などの不活性ガスのガス流を用いてもよい。加熱ガス流を用いる場合、好適な温度範囲は、例えば30〜200℃であり、好ましくは120〜180℃、より好ましくは150〜170℃である。
【0104】
熱処理は連続的に行っても、回分的に行ってもよい。熱処理時間は広い範囲から選ぶことができる。熱処理は、通常約1秒から約30分の範囲、特に10秒〜3分の範囲の時間で行われる。
【0105】
本発明のある実施様態においては、熱処理を二段以上の工程で実施可能であり、その場合、第一の工程では、第二の工程や適当なら続く工程より低い処理温度が選ばれる。
【0106】
熱処理の好適な具体的な方法の一例が熱風乾燥である。
【0107】
本発明のある実施様態では、一種以上の助剤(D)を、好ましい水性製剤全体に対して例えば最高10重量%の量で含む水性製剤を使用して、本発明の方法を実施する。特に一種以上の織物の表面が処理される場合は、本発明の目的で用いられる好ましくは水性である製剤中に、一種以上の助剤(D)を含むことが好ましい。その場合、助剤(D)は、殺菌剤、増粘剤、発泡阻害剤、界面活性剤、可塑剤、手触り改良剤(手触り改良用試薬)、充填材、架橋剤(硬化剤)、フィルム形成剤から選ばれる。
【0108】
助剤(D)として有用な殺菌剤の一例は、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)(プロキセル(R)名でアベジア社より市販)やそのアルカリ金属塩であり、他の適当な殺菌剤は、2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン(MIT)と5−クロロ−2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン(CIT)である。一般に、好ましくは水性の製剤に対して10〜150ppmの量の殺菌剤で十分であろう。
【0109】
他の有用な助剤(D)としては、一種以上の増粘剤があげられ、天然品であっても合成であってもよい。好適な合成増粘剤としては、ポリ(メタ)アクリル系の化合物や、ポリカルボン酸、ポリエーテル、ポリイミン、ポリアミド、ポリウレタンがあげられ、具体的には、85〜95重量%のアクリル酸、4〜15重量%のアクリルアミド、および約0.01〜1重量%の式VI
【0110】
【化8】

の(メタ)アクリルアミド誘導体からなるコポリマーで、分子量Mwが100000〜200000g/molの範囲にあり、式中のR11がチルまたは好ましくは水素であるものがあげられる。天然由来の増粘剤の例としては、寒天や、カラギーナン、変性でんぷん、変性セルロースがあげられる。
【0111】
増粘剤の配合量は、本発明の方法に用いられる水性製剤に対して、例えば0〜10重量%の範囲であり、好ましくは0.05〜5重量%の範囲、より好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。
【0112】
助剤(D)として有用な発泡阻害剤の例としては、室温で液体のシリコーン類があげられ、これらは、非エトキシ化のものでも、一個ないし数個エトキシ化されているものであってもよい。
【0113】
助剤(D)として有用な界面活性剤の例としては、アルキルポリグリコシド類、アルキルホスホネート類、アルキルフェニルホスホネート類、アルキルホスフェート類、アルキルフェニルホスフェート類があげられる。
【0114】
助剤(D)として有用な可塑剤の例としては、アルカノールで完全にエステル化された脂肪族または芳香族ジ−またはポリカルボン酸と、少なくとも一個アルカノール−エステル化されたリン酸からなる群から選ばれるエステル化合物があげられる。
【0115】
本発明のある実施様態においては、アルカノールは、C1−C10−アルカノールである。
【0116】
好ましい完全にアルカノールでエステル化された芳香族ジ−またはポリカルボン酸の例としては、完全にアルカノール−エステル化されたフタル酸や、イソフタル酸、メリット酸があげられ、具体例としては、ジ−n−オクチルフタレートや、ジ−n−ノニルフタレート、ジ−n−デシルフタレート、ジ−n−オクチルイソフタレート、ジ−n−ノニルイソフタレート、ジ−n−デシルイソフタレートがあげられる。
【0117】
好ましい完全にアルカノールでエステル化された脂肪族のジ−またはポリカルボン酸の例としては、ジメチルアジペートや、ジエチルアジペート、ジ−n−ブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジメチルグルタレート、ジエチルグルタレート、ジ−n−ブチルグルタレート、ジイソブチルグルタレート、ジメチルサクシネート、ジエチルサクシネート、ジ−n−ブチルサクシネート、ジイソブチルサクシネート、およびこれらの混合物があげられる。
【0118】
少なくとも一個アルカノール−エステル化されたリン酸の好ましい例としては、イソデシルジフェニルホスフェートなどのC1−C10−アルキルジ−C6−C14−アリールホスフェート類があげられる。
【0119】
可塑剤の他の好適な例としては、C1−C10−アルキルカルボン酸で少なくとも一個エステル化された脂肪族または芳香族ジ−またはポリオールがあげられる。
【0120】
少なくともC1−C10−アルキルカルボン酸で一個エステル化された脂肪族または芳香族ジ−またはポリオールの好ましい例としては、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールモノイソブチレートがあげられる。
【0121】
他の好適な可塑剤としては、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールの、例えばアジピン酸またはコハク酸と1,2−プロパンジオールの重縮合で得られるポリエステルで、好ましくはMwが200g/molであるものや、ポリプロピレングリコールアルキルフェニルエーテルで、好ましくはMwが450g/molであるものがあげられる。
【0122】
他の好適な可塑剤は、二個の異なるアルコール類でエーテル化されたポリプロピレングリコールで、分子量Mwが400〜800g/molの範囲にあるもので、好ましくはそのアルコールのうち一つがアルカノールであってよく、特にC1−C10−アルカノールであってもよく、他のアルコールが好ましくは芳香族アルコール、例えばオルトクレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、あるいは特にフェノールであるものがあげられる。
【0123】
助剤(D)として有用な充填材は、メラミンと粒子状の顔料である。
【0124】
助剤(D)として有用な手触り改善剤の例としては、シリコーン乳化物、すなわちシリコーン類の水性エマルジョンで、好ましくはOH基またはアルコキシレート基などの親水基を有していてもよいものがあげられる。
【0125】
助剤(D)として有用な架橋剤(硬化剤)の例としては、尿素とグリオキサールとホルムアルデヒドの縮合生成物で、好ましくは線状のC1−C4−アルカノールでエーテル化されたもの、好ましくは、二重、三重、または四重にメタノールまたはエタノールでエーテル化されたものがあげられる。
【0126】
【化9】

【0127】
助剤(D)として有用な他の架橋剤(硬化剤)としては、イソシアヌレート類、特に親水化されたイソシアヌレート類、さらには、親水化されたジイソシアネート/イソシアヌレートの混合物、例えばC1−C4−アルキルポリエチレングリコールと、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレートとの反応生成物があげられる。この種の好適な架橋剤の例は、例えばEP−A0486881から公知である。
【0128】
ジエチレングリコールは、助剤(D)として有用なフィルム形成剤(フィルム形成助剤)の一例である。
【0129】
本発明の他の実施様態においては、少なくとも一種の本発明の水性製剤で実際の塗布する前に、塗布表面にプライマー(E)が与えられる。本発明により、プライマー(E)は、好ましくは塗布表面に粒子(B)の電荷(下を参照)とは反対の、特にその外皮(b)の電荷と反対の電荷を与える。例えばカチオン性の外皮(b)を有する粒子(B)が使用される場合、
アニオン性のプライマー(E)を使用することが有利である。しかしながら、アニオン性の外皮(b)を有する粒子(B)が使用される場合は、カチオン性のプライマー(E)を使用することが有利である。
【0130】
適当なプライマー(E)は、例えば高分子であっても、非高分子であってもよい。好適な高分子性プライマーの数平均分子量は、例えば5000〜500000g/molの範囲である。
【0131】
有用なカチオン性のプライマー(E)としては、例えば、ポリエチレンイミン、特にアミノシロキサン、具体的には少なくとも一種の(CH2wNH−R12基を有するシロキサン(式中、wは1〜10の範囲、特に2〜7の範囲の整数であり、R12は、水素、好ましくは線状のC1−C4−アルキルから選ばれる)および(CH2wNH−R13基を有するシロキサン(式中、R13は、水素および好ましくは線状のC1−C4−アルキルから選ばれる)、およびポリビニル−イミダゾールがあげられる。
【0132】
他の好適なカチオン性のプライマー(E)は、ジアリルジ−C1−C4−アルキル−アンモニウムハライドのポリマーがあげられる。なお、式中、C1−C4−アルキルは好ましくは線状である。他の好適なカチオン性プライマー(E)は、好ましくは環状ジアミンと、エピクロロヒドリンと、ジメチルスルフェートやC1−C10−ハロゲン化アルキル、特にメチルアイオダイドまたはベンジルハライド、特にベンジルクロライドなどのアルキル化剤との等モル量の反応性生物である。このような反応生成物の分子量Mwは、1000〜1000000g/molの範囲であってよく、ピペラジンとエピクロロヒドリンと塩化ベンジルの等モル量反応生成物の例に見られるように、次のような構造を持つ。
【0133】
【化10】

【0134】
好適なアニオン性プライマー(E)は、例えばアニオン性モノマーのホモ−またはコポリマー、特にエチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和アミンオキシドまたは(メタ)アクリル酸のホモ−またはコポリマーであり、適当なら一種以上の(メタ)アクリル酸のC1−C10−アルキルエステルとのコポリマーである。他の好適なアニオン性のプライマーとしては、例えばアニオン性のポリウレタン類、すなわち分子内に少なくとも一種のスルホン酸基またはカルボン酸基を有するポリウレタンで、例えば1,1−ジメチロールプロピオン酸で製造可能なものがあげられる。
【0135】
一種以上のプライマー(E)を使用する場合、水性製剤中で使用すること好ましく、粒子(B)で被覆される前に塗布されることが好ましい。好適な作業方法としては、例えば吹き付け、噴霧、特に浸漬圧搾があげられる。
【0136】
プライマー(E)の塗布後に、またフィルム形成性付加(共)重合体(A)と粒子(B)の塗布後にそれぞれ熱処理してもよいが、そのような場合にその熱処理条件は、上述の条件に相当する。
【0137】
本発明のある実施様態においては、カチオン性のプライマー(E)を綿の表面に塗布し、適当なら熱処理した上で、本発明の水性製剤を塗布する。本発明のもう一つの実施様態においては、プイマー(E)を綿の表面に塗布せず、直ちに本発明の水性製剤を塗布する。その後、いずれの場合も熱処理する。
【0138】
本発明のもう一つの実施様態においては、アニオン性のプライマー(E)をポリエステルの表面に塗布し、適当なら熱処理した上で、本発明の水性製剤を塗装する。その後、熱処理をする。
【0139】
本発明はさらに、本発明の方法で生産されたと譜面を提供する。
【0140】
本発明はさらに、フィルム状(コ)ポリマー(A)、コア(a)と、該コア(a)とは異なる少なくとも一種の外皮(b)を含む粒子(B)と、さらに必要に応じて少なくとも一種の疎水化剤(C)で被覆された表面を提供する。
【0141】
本発明の表面は、上記の本発明の方法で有利に形成できる。本発明の表面は、水をはじくような組織となっており、汚れにくい。
【0142】
本発明のある実施様態においては、用いるいずれの助剤(D)や助剤(D)が、もし本発明の表面上に塗布されるとしてもごく少量であり、本発明の被覆表面上には実質的に存在しない。
【0143】
本発明のある実施様態においては、本発明の表面は、処理の結果、被覆表面が不均一でなるか、好ましくは均一となるという特徴を有している。均一とは組織が規則的であることを意味し、不均一とは組織が不規則的である、すなわち表面上に規則的な組織と不規則的な組織が存在することを意味する。
【0144】
本発明のある実施様態においては、本発明の表面は、平均厚みが50nm〜5μmの範囲である塗膜を、好ましくは100nm〜1μm、より好ましくは最高500nmである塗膜を有している。
【0145】
本発明のある実施様態においては、本発明により形成される塗膜の塗布量は、0.2〜10g/m2の範囲であり、好ましくは1〜2g/m2の範囲である。
【0146】
本発明のある実施様態においては、本発明の表面は、織物の表面である。本発明の織物表面は、疎水性を示し撥汚性であるばかりか、耐久性がよく、特に水洗あるいは洗濯に対する耐久性がよい。
【0147】
本発明はさらに、本発明の水性製剤の製造方法を提供する。以降、これを本発明の製造方法と称す。本発明の製造方法は、
(A)少なくとも一種のフィルム形成性付加(共)重合体と、
(B)コア(a)と、該コア(a)とは異なる少なくとも一種の外皮(b)を含む粒子と、
(C)必要に応じて少なくとも一種の疎水化剤と、
(D)必要に応じて少なくとも一種の助剤と
水とをともに、いずれかの順序で混合することにより実施することができる。
【0148】
フィルム形成性付加(共)重合体の製造は、それ自体公知である。疎水化剤(C)と助剤(D)とについては既に述べた。
【0149】
粒子(B)は、例えば乳化重合により、例えば段階的乳化重合または傾斜型の乳化重合により製造できる。
【0150】
粒子(B)のコア(a)と外皮(b)の製造用に好適なコモノマーは上述の通りである。
【0151】
粒子(B)製造のための乳化重合は、好ましくは少なくとも一種の開始剤を使用して行われる。少なくとも一種の開始剤は、過酸化物であってもよい。好適な過酸化物の例としては、ペルオキソ二硫酸ナトリウムなどのペルオキソ二硫酸アルカリ金属塩やペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、ジアセチルペルオキシドやジ−過酸化tert−ブチルパーオキシド、ジアミルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(o−トリル)ペルオキシド、スクシニルペルオキシド、過酢酸tert−ブチル、過マレイン酸tert−ブチル、過イソ酪酸tert−ブチル、過ピバル酸tert−ブチル、過オクタン酸tert−ブチル、過ネイドデカン酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルペルオキシ−2−エチル−ヘキサノエート、およびジイソプロピルペルオキシジカルバメートなどの有機過酸化物があげられる。また、アゾビスイソブチロニトリルやアゾビス(2−アミドプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物も好適である。
【0152】
レドックス系開始剤、例えば過酸化物と酸化可能な硫黄化合物とからなるレドックス系開始剤もまた、本発明の製造方法を実施するのに好適である。アセトン重亜硫酸とtert−C49−OOHなどの有機過酸化物からなる系、Na225(重亜硫酸ナトリウム)とtert−C49−OOHなどの有機過酸化物とからなる系、またはNaO−CH2SO2Hとtert−C49−OOHなどの有機過酸化物とからなる系が極めて好ましい。同様に、例えばアスコルビン酸/H22の系が特に好ましい。本発明の製造方法を実施する際の温度は、20〜105℃の範囲でよく、好ましくは50〜85℃の範囲である。好適な選択温度は、用いる一種以上の開始剤の分解性により変動する。
【0153】
本発明の製造方法を実施する際の圧力条件は、通常重要ではないが、例えば大気圧〜10barの範囲の圧力が好適である。
【0154】
本発明の製造方法は、アニオン性、カチオン性またはノニオン性であって、乳化剤(C)として先に述べたものから選ばれる少なくとも一種の乳化剤を用いて実施することができる。
【0155】
本発明の製造方法を実施するための時間は、30分〜12時間の範囲であり、2〜6時間の範囲が好ましい。
【0156】
本発明の製造方法を実施するには、いろいろな手法が可能であり、例えば、バッチ(不連続)運転、半連続、または完全に連続的な方法、例えばフィード流添加プロセスが可能であり、この方法はまた、段階的な運転も可能である。
【0157】
例えばEP0810831に記載のシード法を用いてもよい。シード法は、極めて再現性の高い粒度分布をもつ粒子(B)の製造に特に効果的である。
【0158】
まず乳化重合により、コア(a)を作ることが極めて好ましい。反応混合物中にコア(a)が粒子状で生成する。しかしながら、コア(a)を精製することなく、反応混合物を、コモノマーと、適当ならさらに開始剤または開始剤と、また適当なら乳化剤とも混合して、コア(a)上に直接重合した外皮(b)を形成する。
【0159】
いずれかの特定理論にこだわるわけではないが、外皮(b)とコア(a)とは、多くの場合、物理的に相互に付着しているだけでなく、共有的に結合しているようである。
【0160】
本発明のある実施様態においては、粒子(B)の製造後に脱臭を行う。例えばコモノマー添加終了後に、他の開始剤を添加して化学的脱臭を行う。
【0161】
本発明を実施例を参照しながら説明する。
【0162】
ガラス転移温度Tgは、TSO801RO試料採取ロボット付きのメトラートレドTA8200シリーズのDSC822示差走査型熱量計を用いて求めた。この示差走査型熱量計は、FSR5の温度センサーを備えていた。DIN53765の方法を使用した。
【0163】
いずれの場合も、二回目の加熱曲線で評価を行った。いずれの場合も、−110℃間で冷却、加熱速度:20℃/min、150℃まで加熱、150℃で5分間維持、次いで−110℃に冷却、加熱速度:20℃/min、150℃まで加熱の条件を用いた。
【0164】
いずれの場合も、粒子(B)の粒子径分布は、ISO13321に準じて、マルバーンコールターカウンターを用いて測定した。
【0165】
I.フィルム形成性付加(共)重合体(A)、粒子(B)、および本発明の製剤の調整
【0166】
I.1.フィルム形成性付加(共)重合体(A.1)の調整
以下の混合物を調整した:
【0167】
混合物I.1.1:
20gの式VIIの化合物(40重量%水溶液)
【0168】
【化11】

【0169】
式中、R15は、−(CH28−CH=CH−(CH27CH3である。
【0170】
2.8gのアクリル酸、128gのスチレン、245.2gのn−ブチルアクリレート、
68gの水に溶解した12gのN−メチロールメタクリルアミド、
12gのN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(“DMAPMAM”)、
【0171】
【化12】

【0172】
172gの蒸留水と5gの濃ギ酸。
【0173】
混合物I.1.2:
100mlの完全脱イオン水に溶解した2gの2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩。
【0174】
いかり型攪拌器、窒素接続部、三種の測定装置を備えた5lのタンクに、250mlの完全脱イオン化水、4gの式VIIの化合物(6mlの水に溶解したもの)と1gのギ酸とを含む乳化物を投入した。その後、得られた乳化物中に、窒素を合計15分間、通した。この乳化物を次いで75℃に加熱した。
【0175】
次で、66gの混合物I.1.1と10gの混合物I.1.2とを添加し、得られた混合物の重合を開始した。重合が始まると直ちに、残りの混合物I.1.1と混合物I.1.2の同時添加を開始した。混合物I.1.1は2時間かけて、混合物1.1.2は2時間15分かけて添加した。添加の間、温度は75℃に維持した。
【0176】
添加終了後、75℃で30分間攪拌し、次いで、脱臭のために、30mlの蒸留水で希釈した1.7gのtert−ブチルハイドロパーオキシド(水中70重量%)の溶液と30mlの蒸留水で希釈した9.2gのアセトン重亜硫酸(水中13重量%)の溶液とを、同時に90分間かけて計量添加した。
【0177】
その後、室温にまで冷却した。このように得られた分散物を、次いで孔径125μmのフィルターで濾過した。濾過には4分かかった。約1gの凝塊が分離された。
【0178】
この結果、pHが3.6の水分散液(A.1)が得られた。固体含量は37.6重量%であり、動粘度は245mPa・sであった。粒子径分布は、最大100nmであった。ガラス転移温度Tgは、−1℃であった。
【0179】
I.2.粒子の調整
I.2.1.粒子(B.1)の調整
以下の混合物を調整した。
【0180】
混合物I.2.1:
200gの完全脱イオン化水
252gのスチレン(42重量%)、9g(1.5重量%)のアクリル酸、30g(5重量%)のアリルメタクリレート、9g(1.5重量%)のN,N−ジメチルアミノプロピル−メタクリルアミド(“DMAPMAM”)、
【0181】
【化13】

【0182】
1.5gの濃ギ酸、6gの式VIIの化合物(水中40重量%溶液)、
【0183】
【化14】

【0184】
式中、R15は、cis−(CH28−CH=CH−(CH27CH3である。
【0185】
混合物I.2.2:1.8gの2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(50mlの完全脱イオン化水中)
【0186】
混合物1.2.3:
265gの完全脱イオン化水
6gの式VIIの化合物(水中40重量%溶液)、
【0187】
【化15】

【0188】
9g(15重量%)のN−メチロールメタクリルアミド(水中15重量%溶液)、
9g(1.5重量%)のN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(“DMAPMAM”)、
2.4g(0.4重量%)のアクリル酸、
96g(16重量%)のスチレン、
183.4g(30.6重量%)のn−ブチルアクリレート、
4gのギ酸。
【0189】
混合物I.2.4:1.8gの2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(50mlの完全脱イオン化水溶液)
【0190】
攪拌器、窒素接続部と三種の測定計量装置を備えた5lタンクに、300mlの完全脱イオン化水と、1gのギ酸と、51.5gの混合物I.2.1と、15gの式VIIの化合物(水中40重量%溶液、上を参照)とを混合して得られ懸濁液を投入した。このようにして得られた乳化物に、窒素を一時間、通過させた。この乳化物を次いで75℃に加熱した。10mlの混合物I.2.2を添加すると、重合の開始が観察された。その後、残りの混合物I.2.1と混合物I.2.2の同時添加を開始した。混合物l.2.1は2時間かけて、混合物I.2.2は2時間45分かけて添加した。添加の間、温度は75℃に維持した。混合物I.2.2の添加の終了後、75℃で15分間攪拌してコア(a.1)を得た。
【0191】
その後、混合物I.2.3と混合物I.2.4の同時添加を開始した。混合物I.2.3は2時間かけて、混合物I.2.4は2時間15分かけて添加した。添加の間、温度は75℃に維持した。外皮(b.1)が得られた。
【0192】
添加終了後、75℃で15分間攪拌し、次いで、脱臭のために、30mlの蒸留水で希釈した2.6gのtert−ブチルハイドロパーオキシド(水中70重量%)の溶液と30mlの蒸留水で希釈した13.8gのアセトン重亜硫酸(水中13重量%)の溶液とを、60分かけて同時に計量添加した。
【0193】
その後、室温まで冷却した。このように得られた分散物を、次いで孔径125μmのフィルターで濾過した。濾過には4分間かかった。約2gの凝塊が除かれた。
【0194】
この結果、pHが3.8で粒子(B.1)を含む分散物WD.1が得られた。固体含量は37.3重量%であり、動粘度は65mPa・sであった。粒子径分布は80nmで最大であった。
【0195】
I.2.2.粒子(B.2)の調整
以下の混合物を調整した:
【0196】
混合物I.3.1:
192gの完全脱イオン化水
258.9gのスチレン、2.1gのアクリル酸、30gのアリルメタクリレート、9gのDMAPMAM、1.6gの式VIIの化合物(水中40重量%溶液、上を参照)。
混合物I.3.1のpHを濃ギ酸で4.0に合わせた。
【0197】
混合物I.3.2:0.5gの2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩の100mlの完全脱イオン化水溶液
【0198】
混合物I.3.3:
286gの完全脱イオン化水、
6gの式VIIの化合物(水中40重量%溶液、上を参照)、
9gのN−メチロールメタクリルアミド(水中15重量%溶液)、
9gのN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(“DMAPMAM”)、
2.1gのアクリル酸、96gのスチレン、183.9gのn−ブチルアクリレート、
4gのギ酸。
【0199】
混合物I.3.4:1.5gの2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩の100mlの完全脱イオン化水溶液
【0200】
攪拌器、窒素接続部と三種の測定計量装置を備えた5lタンクに、200mlの完全脱イオン化水と十分な量の濃ギ酸を投入して、pHを4とした。このようにして得られた溶液に窒素を一時間、通過させた。この乳化物を次いで75℃に加熱した。その後、混合物I.3.1と混合物I.3.2の同時添加を開始した。混合物I.3.1は2時間かけて、混合物I.3.2は2時間15分かけて添加した。添加の間、温度は75℃に維持した。混合物I.3.2の添加の終了後、75℃で30分間攪拌して、コア(a.2)を得た。
【0201】
その後、混合物I.2.3と混合物I.2.4の同時添加を開始した。混合物I.3.3は2時間かけて、混合物I.3.4は2時間15分かけて添加した。添加の間、温度は75℃に維持した。外皮(b.2)が得られた。
【0202】
添加終了後、75℃で15分間攪拌し、次いで、脱臭のために、30mlの蒸留水で希釈した2.1gのtert−ブチルハイドロパーオキシド(水中70重量%)の溶液と30mlの蒸留水で希釈した1.5gのHO−CH2SC2Naの溶液とを60分かけて計量添加した。この後、さらに30分間、75℃で攪拌した。
【0203】
その後、室温まで冷却した。このように得られた分散物を、次いで孔径125μmのフィルターで濾過した。濾過には4分間かかった。約2gの凝塊が除かれた。
【0204】
この結果、pHが3.4で、粒子(B.2)を含む分散物WD.2が得られた。固体含量は37.9重量%であり、動粘度は30mPa・sであった。粒子径分布は、最大で334nmであった。
【0205】
粒子(B.1)と(B.2)は、それぞれカチオン性粒子を含む。
【0206】
II.本発明の製剤F.1〜F.4と比較用製剤V−F.5〜V−F.7の調整
製剤は、それぞれある攪拌容器中で表中に示す各成分を共に攪拌し、水を追加して1リットルに調整した。
【0207】
【表1】

【0208】
(C1.1):10重量%のメタクリル酸と90重量%のCH2=CHCOO−CH2−CH2−O−n−C613のランダムコポリマー(Mn:30000g/mol(GPC))の水分散液(20重量%固体含量)
【0209】
III.織物の処理
以下の織物を使用した。
綿:1m×30cm、100%綿織布、漂白済、非シクケット加工、綾織り構造、目付:196g/m2(「Co」)。
【0210】
いずれの場合も以下の装置を使用した。
パッド−マングル:マティス社製、HVF12085型、接触圧力:1.6bar。
すべての場合において、液体ピックアップ(繊維重量に対する)が81%となるように接触圧力を設定した。この液体は、特に断らない限り室温である。
乾燥機:マティス社製連続乾燥機THN12589
試験法:
噴霧試験:AATCC22−2001、
撥油性:AATCC118−2002、
疎水化度:AATCC193−2004、
平滑性:AATCC124−2001
洗濯条件:30℃で弱周期、15g/lの低刺激性洗剤、
洗濯機:ミーレノボトロニックT440C、
設定:タンブル乾燥、手による蒸気アイロン
【0211】
表1(工程1)に示すように、Coには水性液体を塗布した。その後、110℃で2分間、テンター乾燥し、その後160℃のオーブン中で2分間処理し、表2に示す本発明の織物Co.1〜Co.4、または比較用織物V−Co.5〜V−Co.7を得た。
【0212】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも一種のフィルム形成性付加(共)重合体と、
(B)コア(a)と、該コア(a)とは異なる少なくとも一種の外皮(b)とを含む粒子と、さらに必要に応じて、
(C)少なくとも一種の疎水化剤とを含むことを特徴とする
水性製剤。
【請求項2】
前記フィルム形成性付加(共)重合体(A)がポリアクリレート類とポリウレタン類から選ばれる請求項1に記載の水性製剤。
【請求項3】
前記疎水化剤(C)が、ハロゲン化ポリマー類(C1)、パラフィン類(C2)、分子内に少なくとも一種のC10−C60−アルキル基を有する化合物類(C3)、およびシリコーン類(C4)から選ばれる請求項1または2に記載の水性製剤。
【請求項4】
前記粒子(B)の数平均粒径が20〜1000nmの範囲にある請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性製剤。
【請求項5】
前記粒子(B)が、少なくとも一種のエチレン性不飽和カルボン酸または少なくとも一種のエチレン性不飽和カルボン酸のエステルまたはアミドの架橋コポリマーまたは架橋可能なコポリマーを含有する外皮(b)を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性製剤。
【請求項6】
前記コア(a)または前記外皮(b)がカチオン性コポリマーを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性製剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の少なくとも一種の水性製剤を表面の被覆に使用する方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の少なくとも一種の水性製剤を用いて表面を被覆することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記表面を、請求項1〜6のいずれか一項に記載の少なくとも一種の水性製剤と接触させ、その後熱処理する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記表面をプライマー(E)で処理し、その後請求項1〜6のいずれか一項に記載の少なくとも一種の水性製剤と接触させ、さらにその後熱処理する請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
プロセス請求項8に記載の方法で得られる被覆表面。
【請求項12】
(A)少なくとも一種のフィルム形成性付加(共)重合体と、
(B)コア(a)と、該コア(a)とは異なる少なくとも一種の外皮(b)とを含む粒子と、
(C)さらに必要に応じて少なくとも一種の疎水化剤と、
(D)必要に応じて少なくとも一種の助剤と、
水とを共に混合する工程を含むことを特徴とする
請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性製剤の製造方法。

【公表番号】特表2010−510395(P2010−510395A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536733(P2009−536733)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062363
【国際公開番号】WO2008/059007
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】