説明

水性重合体分散組成物および撥水撥油剤

【課題】Rf含有モノマーの使用量を大幅に減少させても、高い撥水撥油性およびその耐久性を発揮し得る水分散型撥水撥油剤組成物を得る。
【解決手段】第1重合体と第2重合体の少なくとも2種の重合体を含む多層構造重合体粒子であり、かつ、第1重合体は主鎖にハロゲン原子を含有する重合体であり、第2重合体はフルオロアルキル基を含有する重合体である多層構造重合体粒子を含む水分散型撥水撥油剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型重合体組成物およびその製造方法に関する。本発明の水分散型重合体組成物は、撥水撥油剤として使用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、フルオロアルキルを含有する重合性モノマーの重合体や共重合体、あるいはフルオロアルキルを含有する化合物を、有機溶媒溶液または水系分散液として繊維製品等に処理し、それらの表面に撥水撥油性を付与する技術が知られている。
また従来、洗濯やドライクリーニング等に対する撥水撥油性の耐久性向上を目的として、フルオロアルキル含有重合性単量体とともに接着性基を有する単量体を共重合させたり、フルオロアルキルを含有する重合体と皮膜強度の高いポリマーとをブレンドする試みがなされている。
塗料(コーティング剤)の分野では多層構造を有する粒子重合体を用いることでフッ素の特性を維持し、加工性等の新たな特性を付与することに成功している(特許文献1〜3)。
撥水撥油剤においても耐久性、低温キュア等の特性を持たせる為に多層構造粒子重合体の組成物が提唱されている(特許文献4〜7)。
加えて、特許文献8にはフッ素化構造粒子の分散系で構成されるか、フッ素化構造粒子あるいはフッ素化ランダム粒子とフッ素を有しないランダム粒子のブレンドにより構成されるラテックスにより、フッ素化モノマーの含有率を減少させ、被膜の水湿潤性の減少および耐湿磨耗性を維持することができると記載されている。
さらに、各種重合方法によりコアシェル構造粒子を形成させ、より少量の含フッ素モノマーを含有しながらも優れた疎水性材料を製造する方法が開示されている(特許文献9〜10)。
【0003】
【特許文献1】特開平06−56944
【特許文献2】特開昭62−135531
【特許文献3】特開昭64−40510
【特許文献4】特開平02−001795
【特許文献5】特開平07−278422
【特許文献6】特開平11−172126
【特許文献7】特開2007−291373
【特許文献8】特開平08−208936
【特許文献9】特開平06−192352
【特許文献10】特開2003−171607
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の撥水撥油剤においては、洗濯やドライクリーニング等に対する撥水撥油性の耐久性向上を目的として、フルオロアルキル含有重合性単量体とともに接着性基を有する単量体を共重合させたり、フルオロアルキルを含有する重合体と皮膜強度の高いポリマーとをブレンドしたりする試みがなされている。しかし、フッ素化モノマーと接着性基を有する単量体の導入比率により、耐久性と撥水撥油性が相対的となる。つまり、フッ素化モノマーを多量に導入することで高い撥水撥油性は達成することができるが、耐久性が不足する結果を招くこととなる。逆に、接着性基を有する単量体を多量に導入することで十分な耐久性を付与でき得るが、撥水撥油性は乏しくなる。また、十分な撥水撥油性を発現するには多量のフッ素モノマーを導入する必要があり、フッ素モノマーが非常に高価なためコストが高かった。
フッ素モノマーの使用量を低減してもなお、高い撥水撥油性を発揮し、かつ撥水撥油性の耐久性にも優れる加工剤が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記問題点を解決するためフッ素モノマーの使用量を低減してもなお高い撥水撥油性を発揮し、かつ耐久性にも優れる撥水撥油剤組成物を提供することを目的として鋭意検討を行った。その結果、特定の化学構造を有する重合単位を持った重合体とフルオロアルキル基を含むモノマーの重合単位を有する多層構造重合体粒子が顕著な撥水撥油性および耐久性を有し、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、第1重合体と第2重合体の少なくとも2種の重合体を含む重合体粒子であり、かつ、第1重合体は主鎖にハロゲン原子を含有する重合体であり、第2重合体はフルオロアルキル基を含むモノマーの重合単位を含む重合体である多層構造重合体粒子を含む水分散型撥水撥油剤組成物およびその製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の化学構造を有する重合単位を持った重合体とフルオロアルキルを含むモノマーの重合単位を有する多層構造重合体粒子が顕著な撥水撥油性および耐久性を有する。このため本発明は、フッ素モノマーの使用量を低減することによってコストを削減し、高い撥水撥油性を発揮し、かつ耐久性にも優れる撥水撥油剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の撥水撥油剤組成物は、少なくとも2種の重合体、すなわち、(A)第1重合体および(B)第2重合体を含んでなる多層構造重合体粒子を有する。
多層構造重合体粒子は、第1重合体(A)の内層および第2重合体(B)の外層を有することが好ましい。多層構造重合体粒子は、海-島構造のように層の分離が不明確であってよいが、一般に、層の分離が明確なコア/シェル構造であることが好ましい。
一般に、多層構造重合体粒子において、第1重合体が粒子のコアを形成し、第2重合体が粒子のシェルを形成する。
第1重合体および第2重合体以外の他の重合体が存在してよく、例えば、第3重合体(中間層)が第1重合体(コア)と第2重合体(シェル)との間に存在してもよい。第3重合体は、1つまたは2つ以上の重合体層であってよく、第1重合体または第2重合体の範囲に含まれる重合体であってよく、第1重合体または第2重合体の範囲に含まれない重合体であってもよい。
【0009】
(A)第1重合体
第1重合体は、一般に、多層構造重合体粒子における内層(特に、コア)を形成する。
第1重合体は、主鎖にハロゲン原子を含有する。「主鎖にハロゲン原子を含有する」とは、主鎖を構成する炭素原子にハロゲン原子が直接に結合していることを意味している。第1重合体を構成するモノマーは、ホモポリマーのガラス転移点が−80〜120℃、例えば−20〜100℃であることが好ましい。第1重合体において、主鎖を構成する炭素原子にハロゲン原子が直接に結合している繰り返し単位が存在する。このような繰り返し単位は、炭素-炭素二重結合を形成する炭素原子に直接にハロゲン原子が結合しているモノマー(以下において、「ハロゲン原子を有する主鎖モノマー」と呼ぶ。)から誘導できる。ハロゲン原子の例は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素である。
ハロゲン原子を有する主鎖モノマーの例としては、塩化ビニルおよびフッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、炭化水素基を有するα―クロロ(メタ)アクリレート等が挙げられる。塩化ビニル、塩化ビニリデンが好ましい。ハロゲン原子を有する主鎖モノマーは、1種または2種以上の組み合わせであってよい。
第1重合体は、ハロゲン原子を有する主鎖モノマーに加えて、共重合可能である他の重合性モノマーを含んでよい。
他の重合性モノマーの例は、ホモポリマーのガラス転移点が−80℃以上であるモノマーである。他の重合性モノマーの別の例は、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、フマレート類、マレエート類等である。これらの共重合性モノマーは、炭化水素基やベンゼン環や反応性基を有することが好ましく、特に炭化水素基あるいは反応性基を有することが好ましい。他の重合性モノマーのさらに別の例は、エチレン、スチレン類等であってもよい。
他の重合性モノマーは、(メタ)アクリロキシ基等の反応性基を有するシリコーン類であっても良い。さらに、第2重合体(B)において詳細に説明するフルオロアルキル(Rf)を有するモノマーであってもよいが、フルオロアルキルを有しないモノマーであることが好ましい。第1重合体は、フッ素原子を有しないことが好ましい。第1重合体における他の重合性モノマーとしてRf基を含有するモノマーを採用する場合には、第1重合体におけるRf基の総量(重量)が、第2重合体におけるRf基の総量(重量)に比較して、少ない量であることが好ましい。
【0010】
炭化水素基を有する共重合性モノマーとしては、直鎖の炭化水素基(特に、(例えば、炭素数1〜30の)アルキル基)を有する(メタ)アクリレート類が好ましい。炭化水素基は酸素原子によって中断されていてもよい。炭化水素基を有する共重合性モノマーの具体例は、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0011】
ベンゼン環を有する共重合性モノマーとしては、ベンゼン環を有する(メタ)アクリレート類が好ましい。ベンゼン環は置換基(例えば、炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルコキシ基、またはハロゲン原子)を有していてもよい。ベンゼン環を有する(メタ)アクリレート類としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、あるいはこれらのベンゼン環にメチル基、メトキシ基、塩素原子等が結合した化合物が好ましい。
【0012】
共重合性モノマーは、エポキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミド基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、N−メチロール基、N−アルキルオキシアルキル基、ブロック化されたイソシアナート基等の重合性不飽和結合以外の反応性基を含有していてもよい(以下、「反応性基含有モノマー」と呼ぶ。)。反応性基含有モノマーとしては、例えば、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、γ−トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0013】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)グリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0014】
ブロック化されたイソシアナート基を有する共重合性モノマーとしては、水酸基含有(メタ)アクリレートとポリイソシアネートとを少なくとも1個のイソシアネート基が残る割合で反応させて得られた反応生成物のブロック化物、水酸基含有(メタ)アクリレートおよび少なくとも1個のブロック化イソシアネート基と少なくとも1個のフリーのイソシアネート基とを有するポリイソシアネート誘導体を反応させて得られる反応生成物等が好ましい。
【0015】
ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、またはイソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ポリイソシアネート、およびそれらのヌレート変性体、プレポリマー変性体、ビュレット変性体等が挙げられ、脂肪族ジイソシアネート、または脂環族ジイソシアネートが好ましい。
【0016】
ブロック化されたイソシアナート基を得るためのブロック化剤としては、オキシム類、アルキルケトオキシム類、フェノール類、β−ジケトン類、マロン酸エステル類、ラクタム類、アルカノール類等が挙げられる。ブロック化剤の具体例には、シクロヘキサンオキシム、メチルエチルケトオキシム、フェノール、クレゾール、アセチルアセトン、マロン酸ジエチル、イソプロパノール、t−ブタノール、ε−カプロラクタム、マレイン酸イミド、重亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。シクロヘキサンオキシム、メチルエチルケトオキム等が好ましい。
(メタ)アクリロキシ基等の反応性基を有するシリコーン類としては(メタ)アクリロキシ基にて変性されたシリコーン類を好適に用いることができる。
【0017】
第1重合体において、ハロゲン原子を有する主鎖モノマーの割合は、第1重合体中に10〜100重量%である。例えば、15〜90重量%、特に20〜85重量%、特別に30〜80重量%であってよい。ハロゲン原子を有する主鎖モノマーの割合は、好ましくは少なくとも20重量%、特に少なくとも30重量%である。
第1重合体の分子量は、1000〜100000の範囲が好ましく、特に5000〜100000程度が好ましい。この範囲にあると、撥水撥油性の耐久性、あるいは初期性能が高く、熱処理を低温で実施した場合にも高い撥水性の維持ができるという効果が得られる。
【0018】
第1重合体の合成方法としては、特に限定されず、上記の、ハロゲン原子を有する主鎖モノマーを含む重合性モノマーを公知ないしは周知の重合方法によって重合する方法が挙げられる。乳化重合法または分散(懸濁)重合法により重合するのが好ましい。
乳化重合法または分散重合法により重合する場合、上記の重合性モノマーを、乳化剤および重合媒体の存在下に、重合開始剤を加えて重合する方法が例示され得る。乳化剤としては特に限定されず、ノニオン型、カチオン型、アニオン型、両性型の公知ないしは周知の乳化剤の1種以上が採用され得る。乳化剤の量は、重合性モノマーの100重量部に対して、0.5〜20重量部が好ましく、特に、撥水撥油性および分散液の安定性の点から1〜10重量部程度が好ましい。
【0019】
重合媒体としては、水を含む媒体であり、所望により有機溶剤を含ませてもよい。有機溶剤としては水溶性の有機溶剤が好ましく、エステル系、ケトン系、エーテル系(アルコール系)等の有機溶剤が好ましい。エステル系の有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジエチル等が好ましく、ケトン系の有機溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等が好ましく、エーテル系(アルコール系)の有機溶剤としては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリコール、およびこれらのモノメチルエーテルまたはジメチルエーテル、ジエチルエーテル等が好ましい。これらのうち、有機溶剤としては、引火性が低い等の点からエーテル系(アルコール系)の有機溶剤が好ましい。水と有機溶剤の比率は特に限定されず、いずれの割合であってもよい。有機溶剤の量は、水100重量部に対して、100重量部以下、例えば、1〜10重量部であってよい。重合媒体の量は、重合性モノマー1重量部に対して、0.5〜100重量部、例えば、1〜20重量部であってよい。
【0020】
重合開始剤としては、水溶性または油溶性の重合開始剤が好ましく、過硫酸塩系、アゾ系、過酸化物系、レドックス系等の汎用の開始剤が重合温度に応じて使用できる。重合温度は特に限定されないが、20℃〜150℃が好ましい。
また、第1重合体の重合反応においては、分子量を制御する目的で、連鎖移動剤を含ませてもよい。連鎖移動剤としてはメルカプタン類が好ましく、シリコーンを含有した連鎖移動剤も使用することができ、メルカプト基変性アルキルシリコーン、メルカプト基変性アミノアルキルシリコーン等を好ましく用いることができる。
【0021】
重合反応においては重合を開始する前段階として重合性モノマー、水、および乳化剤からなる混合物を、ホモミキサーまたは高圧乳化機等で処理し、あらかじめ前分散させてもよい。
上記の方法で合成された第1重合体は、媒体中で微粒子として存在するのが好ましい。第1重合体の微粒子の粒子径は、0.001〜1μm、例えば0.01〜0.5μmであることが好ましい。この範囲であると、安定な分散液を得るために乳化剤の量は少なくてよく、撥水撥油性能が高く、媒体中で重合体微粒子が安定に存在する。該粒子径は、動的光散乱装置、電子顕微鏡等により測定することができる。通常の乳化重合の方法で、乳化剤の存在下に重合を実施した場合、平均粒子径は、通常上記の好ましい範囲に含まれる。
【0022】
(B)第2重合体
第2重合体は、一般に、多層構造重合体粒子における外層(特に、シェル)を形成する。
第2重合体は、フルオロアルキル基(Rf基)を有する重合体である。第2重合体は、フルオロアルキル基(Rf基)を有するモノマーから誘導された重合単位を含む。第2重合体は、粒子表面に存在するので、容易に繊維表面に配向し、撥水撥油性を発現する。
第2重合体を構成するモノマー(以下、「第2モノマー」と呼ぶ。)は、Rf基含有モノマー、および必要により存在する他のモノマーを含んでなる。
【0023】
Rf基は、飽和アルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換された基である。Rf基中のフッ素原子の割合は、(Rf基中のフッ素原子の数)/(Rf基中のフッ素原子の数+Rf基中の水素素原子の数)が40%以上である場合が好ましく、特に60%以上である場合が好ましい。また、Rf基は水素原子の1部ないしは全部が塩素原子に置換されていてもよい。
Rf基は、直鎖または分岐の構造が好ましく、特に直鎖の構造が好ましい。分岐の構造である場合には、分岐部分がRf基の末端付近に存在することが好ましい。また、分岐部分は炭素数が1〜4程度の短鎖である場合が好ましい。また、Rf基の好ましい炭素数は1〜12、特に4または6である。
Rf基として特に好ましいのは、上記のフッ素原子の割合が実質的に100%である場合のペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルキル基部分を含有するRf基である。ペルフルオロアルキル基も直鎖の構造が好ましい。直鎖のペルフルオロアルキル基としては、Cm2m+1−[ただし、mは2〜20の整数である。]で表される場合が好ましい。
【0024】
Rf基を含有するモノマーは、Rf基と重合性不飽和基(特に、炭素−炭素二重結合)を有する化合物を意味する。Rf基含有モノマーのRf基は、上記のRf基と同様の意味を示し、好ましい態様も同じである。さらに、Rf基含有モノマーは、Rf基の炭素数の異なる化合物の2種以上の混合物であってもよく、その場合、Rf基の平均炭素数は4以上(例えば、4または6)が好ましい。
Rf基含有モノマーとしては、前記のCm2m+1−[ただし、mは2〜20の整数である。]で表されるペルフルオロアルキル基と重合性不飽和基を有する化合物が好ましい。ペルフルオロアルキル基含有モノマーは、mの数の異なる化合物の2種以上の混合物であってもよいが、mの平均が4以上である場合が好ましい。
【0025】
Rf基含有モノマーにおいてRf基と重合性不飽和基とは、直接あるいは結合基を介して間接的に結合しており、間接的に結合している場合が好ましい。結合基としては、2価以上の結合基であり、アルキレン基、エステル基、アミド基、アミノ基、ウレタン基、エーテル基、フェニレンオキシ基、スルホニル基、あるいはこれらの構造を含む結合基が好ましい。これらのRf基含有モノマーは、公知ないしは周知の化合物が採用され、Rf基含有アルコール、Rf基含有カルボン酸、あるいはRf基含有スルホン酸等から容易に合成され得る。
【0026】
これらのうち、本発明におけるRf基含有モノマーとしては、Rf基の1個が、重合性の不飽和基と2価の結合基を介して連結している構造の化合物が好ましい。例えば、Rf基含有アクリレート、Rf基含有メタクリレート、Rf基含有スチレン、Rf基含有ビニルエステル、およびRf基含有フマレート等が好ましい。
【0027】
さらに、本発明におけるRf基含有モノマーとしては、汎用性の点から、特に、Rf基を含有するアクリレートまたはメタクリレートが好ましい。なお、以下においてアクリレートとメタクリレートとをまとめて(メタ)アクリレートと記し、両者を意味する。他の化合物についても同様である。
【0028】
好ましいRf基含有モノマーは、一般式:
Rf−Q1 −X
[式中、Rfはフルオロアルキル基を、Q1 は2価の有機基を、X1は重合性不飽和基を含有する1価の有機基を示す。]
で表すことができる。
【0029】
1 は、2価の有機基を示し、−(CH2n+p−、−(CH2nC(O)ONH(CH2p−、−(CH2nCONH(CH2p−、−(CH2nSO2NH(CH2p−、−(CH2nNHC(O)NH(CH2p−等が好ましい。ただし、nおよびpは0または1以上の整数を示し、n+pは2〜22の整数である。これらのうち、Q1としては、−(CH2n+p−、−(CH2nC(O)ONH(CH2p−、−(CH2nSO2NH(CH2p−であり、かつ、pが2以上の整数であり、n+pが2〜6である場合が好ましく、特にn+pが2〜6である場合の−(CH2n+p−、すなわち、ジメチレン基〜ヘキサメチレン基が好ましい。
【0030】
1は、重合性不飽和基を含有する1価の有機基を示し、オレフィン類の残基、ビニルエーテル類の残基、ビニルエステル類の残基、(メタ)アクリレート類の残基、スチレン類の残基等が好ましい。オレフィン類の残基としては−CR1 =CH2 または−OCH2−φ−CR1=CH2が好ましく、(メタ)アクリレート類の残基としては−OC(O)CR1=CH2 、ビニルエーテル類の残基としては−OCR1=CH2 、ビニルエステル類の残基としては−C(O)OCR1=CH2 、スチレン類の残基としては−φ−CH=CH2または−O−φ−CH=CH2が好ましい。ただし、R1は水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり、φはフェニレン基である。これらのうち、X1としては(メタ)アクリレート類の残基が好ましく、特にR1が水素原子またはメチル基である場合の−OC(O)CR1=CH2 、すなわち、アクリロキシ基あるいはメタアクリロキシ基が好ましい。Rf基含有モノマーとしては、他のモノマーとの重合性、および繊維上に形成する皮膜の柔軟性、基材に対する接着性、溶媒に対する溶解性、乳化重合の容易性等の観点から、特に(メタ)アクリレート類が好ましい。
Rf基含有モノマーは1種あるいは2種以上を用いることができる。通常の場合、Rf基含有モノマーはRf基の炭素数が異なる化合物の2種以上の混合物として用いられる。
【0031】
Rf基含有モノマーの例は、次の一般式のものであってよい。
一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
CH(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CCH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)、
Rfは、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキルである。]
で示される化合物。
【0032】
Rf基含有モノマーの具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−C6H4−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−CH3) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−C2H5) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OH) CH2−Rf
【0034】
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OCOCH3) CH2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0035】
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0036】
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0037】
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)3−Rf
【0038】
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
【0039】
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1〜21、特に1〜6のフルオロアルキルである。]
Rf基含有モノマーは、2種類以上の混合物であってもよい。
Rf基含有モノマーの量は、含フッ素重合体に対して、5〜95重量%、例えば20〜80重量%であってよい。
【0040】
第2重合体は、含フッ素モノマー以外の、他のモノマー(すなわち、共重合性モノマー)を含んでもよい。他のモノマーは、一般に、フッ素原子を含まない。
【0041】
共重合性モノマーが炭化水素基を有する場合、特に制限はないが、炭化水素基としては炭素数が2以上である炭化水素基が好ましく、特に炭素数4〜24の炭化水素基が好ましい。また、炭化水素基は直鎖、分岐、環を有する構造のいずれであってもよい。直鎖の炭化水素基としては、(飽和)アルキル基が好ましい。
【0042】
他のモノマーは、非架橋性モノマーまたは架橋性モノマーであってよい。
非架橋性モノマーは、フッ素を含有せず、炭素-炭素二重結合を有するモノマーであることが好ましい。非架橋性モノマーは、フッ素を含有しないビニル性モノマーであることが好ましい。非架橋性モノマーは、一般に、1つの炭素-炭素二重結合を有する化合物である。
【0043】
非架橋性モノマーとしては、ブタジエン、クロロプレン、マレイン酸誘導体、塩化ビニルのようなハロゲン化ビニル、エチレン、塩化ビニリデンのようなハロゲン化ビニリデン、ビニルアルキルエーテル、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、などが例示されるが、これらに限定されるものでない。
洗濯耐性が向上するので、塩化ビニルのようなハロゲン化ビニル、または塩化ビニリデンのようなハロゲン化ビニリデンを用いることが好ましい。
他のモノマーが塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデンを含むモノマー混合物であることが好ましい。塩化ビニルおよび塩化ビニリデンの好ましい含量は、他のモノマーに対して、80重量%以下、例えば1〜50重量%、特に5〜40重量%である。
【0044】
非架橋性モノマーは、アルキル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルであってよい。アルキル基の炭素数は、1〜30、例えば、6〜30、例示すれば、10〜30であってよい。例えば、非架橋性モノマーは一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは水素原子またはメチル基、AはC2n+1(n=1〜30)で示されるアルキル基である。]
で示されるアクリレート類であってよい。
【0045】
第2重合体は、架橋性モノマーを含んでもよい。架橋性モノマーは、少なくとも2つの反応性基および/または炭素−炭素二重結合を有し、フッ素を含有しない化合物であってよい。架橋性モノマーは、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する化合物、あるいは少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する化合物であってよい。反応性基の例は、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックドイソシアネート、アミノ基、カルボキシル基、などである。
【0046】
架橋性モノマーの例としては、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
架橋性モノマーの他の例としては、グリセロール(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナートエチルメタクリレートのようなイソシアネート基含有(メタ)アクリレートまたはメチルエチルケトオキシム等のブロック化剤でイソシアネート基がブロックされたそれらの(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0047】
第2重合体は、分子内に反応性基を含有する反応性モノマーを含んでもよい。反応性を有する基としては、エポキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、アルコキシシリル基、N−メチロール基、N−アルキルオキシ基、イミノ基ブロック化されたイソシアナート基等が挙げられる。これらの例としては、第1重合体おける重合性不飽和結合以外の反応性基を含有するモノマーとして例示したものと同様の例が挙げられる。該反応性モノマーを含ませた場合には、繊維処理時に繊維表面との接着性を改善し、洗濯や、ドライクリーニング中に加工剤の脱落を防止できる利点がある。
【0048】
また、第2重合体における他のモノマーとしては、第1重合体におけるモノマーとして例示したものと同様の例があげられる。第1重合体において必須成分である主鎖にハロゲン原子を含むモノマーについても使用することができる。主鎖にハロゲン原子を含むモノマーとしては第1重合体において例示したものと同様の例があげられる。
第2重合体において、Rf基含有モノマーの割合は、第2重合体に対して30〜100重量%、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%であってよい。Rf基含有モノマーの割合は50〜100重量%であることが特に好ましい。第1重合体および第2重合体を含む多層構造重合体粒子において、Rf基含有モノマーの割合は、多層構造重合体粒子に対して25〜65重量%、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは35〜55重量%であってよい。
Rf基含有モノマー以外の他のモノマーにおいて、非架橋性モノマーの量は、他のモノマーに対して50重量%以上、例えば、80重量%以上、特に90重量%以上、特別には100%であってよい。
【0049】
第2重合体を合成する方法としては、Rf基含有モノマーを含む第2モノマーを重合するのが好ましい。ここで、第2モノマーは、Rf基含有モノマーの1種あるいは2種以上のみからなるか、またはRf基含有モノマーの1種あるいは2種以上と他のモノマーの1種または2種以上を含む混合物を意味する。
第1重合体の存在下に第2モノマーを重合する方法としては、特に限定されないが、第1重合体が微粒子として存在する乳濁液または分散液に、第2モノマーを、一括、もしくは数段階に分割して加え、重合開始剤を加えて重合させる方法(いわゆるシード乳化重合法)が好ましい。重合方法は一般的なシード重合法によるが、特にどのような手法を用いても良い。2段目滴下、2段目モノマーを添加後に再乳化してもよく、さらに2段目モノマーを添加した後に所定温度にて一定時間、1段目樹脂に含浸させた後に重合しても良い。重合開始剤としては特に限定されず、有機過酸化物、アゾ系化合物、過硫酸塩等の重合開始剤、またはγ−線のような電離性放射線等が挙げられるが、アゾ系化合物またはアゾ系化合物の塩が好ましい。
【0050】
重合の際、第1重合体の乳濁液または分散液に、水や有機溶媒等を含ませてもよい。水や有機溶媒を含ませることにより、最終的な固形分濃度を調整したり、第2モノマーの重合収率を高めることができる。有機溶剤としては、水溶性の有機溶剤が好ましく、エステル系、ケトン系、エーテル系、アルコール系等の有機溶剤が好ましく、特にエーテル系、アルコール系の有機溶剤が好ましい。エーテル系またはアルコール系の有機溶剤としては、第1重合体におけるものと同様の有機溶剤が好ましい。水と有機溶剤の比率は特に限定されず、いずれの割合であってもよい。
第2モノマーの重合を開始する前に、第1重合体と第2モノマーを含む混合物をよく撹拌するのが好ましく、これにより、最終的な収率を向上させることもできる。また、第2モノマーの重合においても、連鎖移動剤を存在させてもよい。該連鎖移動剤としては、第1重合体におけるものと同様のものが例示され得る。
【0051】
第2モノマーと第1重合体の重量比、すなわち、(第2モノマーの重量)/(第1重合体の固形分重量)が0.05:1〜10:1、例えば0.1:1〜8:1であることが好ましい。また、重合温度は特に限定されないが、20℃〜150℃が好ましい。
【0052】
本発明における重合体粒子は、少なくとも第1重合体と第2重合体を含む重合体粒子であるが、その他の重合体を含んでいてもよい。また、第1重合体および第2重合体は、それぞれ1種あるいは2種以上であってもよい。第1重合体および第2重合体が、それぞれ2種以上含まれる場合は、上記のシード乳化重合法を逐次実施することにより合成する方法が望ましい。
【0053】
第1重合体と第2重合体を含む重合体粒子において、第2重合体の存在形態は、第1重合体微粒子分散液に共存する乳化剤量や、第1重合体と第2モノマーの疎水性の大小関係、あるいは第2モノマーの水相への分配係数によりにより変化するものであるが、第1重合体の微粒子表面、または内部に第2重合体が存在した形態の重合体粒子が好ましい。重合体粒子においては、第1重合体と第2重合体が層状に層分離したコア−シェル型が性能上好ましいが、層分離形態が海−島構造や、重合体の1部が局在化しているもの、あるいは、他の重合体分子鎖等がからみあった形態であってもよい。そして、このような形態をとることにより、Rf基含有モノマーの使用量を大きく減少させてもなお第1重合体の分散液と第2重合体の分散液をそれぞれ製造して混合する手法では到底得ることができない優れた撥水撥油性能が得られると推定される。
【0054】
重合体粒子が、第1重合体と第2重合体が層状に層分離したコア−シェル型である場合、コア部には、ハロゲン原子を主鎖に持つモノマーを含有する第1重合体が存在し、シェル部にはRf含有モノマーを含有する第2重合体が存在するのが好ましい。第1重合体は、Rf基を含有しない場合が好ましいが、Rf基が存在する場合には、第2重合体と比較して、Rf基の量(重量部)が相対的に少ない場合が好ましく、第2重合体のRf基100重量部と比較して、第1重合体のRf基の重量部の値が10重量部以上少ないことが好ましく、特に30重量部以上少ないことが好ましい。
第1重合体と第2重合体を含む多層構造重合体粒子の粒径は、0.001〜1μm、例えば、0.01〜0.50μmであってよい。
【0055】
本発明の水分散型撥水撥油剤組成物は、上記の重合体粒子が水を含む媒体中に分散した組成物である。該組成物は、重合体粒子を水を含む所望の媒体中に分散させて調製してもよいが、通常は重合反応において、重合媒体を所望の媒体とすることによりそのまま水分散型撥水撥油剤組成物が調製され得る。媒体としては、水を含む媒体であり、水、または水と有機溶剤を含む媒体が好ましい。有機溶剤を用いる場合の量は、上記の重合体粒子の100重量部に対して0〜40重量部程度が好ましい。
【0056】
さらに、本発明の水分散型撥水撥油剤組成物においては、上記の重合体粒子の量が、媒体の100重量部に対して1〜50重量部程度の濃度である場合が好ましく、該濃度となるように水や有機溶媒で調整するのが好ましい。また、濃度は目的や組成物の形態によって適宜変更され得る。さらに、本発明の撥水撥油剤組成物には、他の添加成分を配合することもできる。必要ならば、ブレンダーを併用することも可能である。例えば、撥水撥油剤、防シワ剤、防縮剤、難燃剤、架橋剤、帯電防止剤、柔軟剤、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコール等の水溶性高分子、ワックスエマルション、抗菌剤、顔料、塗料などである。これらのブレンダーは被処理物、処理時に処理浴に添加して使用しても良いし、あらかじめ、可能なら、本発明の組成物と混合して使用しても良い。
【0057】
本発明の水分散型撥水撥油剤組成物は、被処理物品の種類や前記調製形態などに応じて、任意の方法で被処理物品に適用される。例えば、浸漬塗布等の被覆加工方法により被処理物の表面に付着させ乾燥する方法が採用される。また、本発明の撥水撥油剤で処理した製品は、180℃以下の温和な条件での熱処理した場合にも高い撥水撥油性を示し、その耐久性にも優れている。通常の場合、熱処理温度は100〜170℃程度が好ましい。また、熱処理時間は、5分以内が好ましく、特に30秒〜2分程度が好ましい。また、熱処理は150℃以上の高温処理であってもよく、高温で処理する場合には処理時間を、通常の場合よりも短縮できる。
【0058】
被処理物品としては、特に限定されないが繊維製品の他、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、ガラス、紙、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属および酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、およびプラスターなどを挙げることができる。特に繊維製品に対して有用である。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。繊維製品は、繊維、糸、布等の形態のいずれであってもよい。特に、本発明の水分散型撥水撥油剤組成物は繊維製品の処理に適している。繊維製品に処理した場合には、温和な熱処理条件、すなわち低温キュア条件下、布帛類に撥水撥油性、防汚性、耐摩擦性、耐洗濯性、耐ドライクリーニング性、耐降雨性等の実用的な撥水撥油機能を付与し得る。
【0059】
本発明においては、被処理物品を汚れ脱離剤で処理する。「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である含フッ素重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【実施例】
【0060】
以下に実施例および比較例を示し、本発明を更に詳しく説明する。
特性は、次のようにして測定した。
撥水撥油性
T/C布を処理する場合、重合体分散液を固形分濃度が30重量%になるよう水で希釈し、30重量%分散液の濃度が3.2%になるように水で希釈して処理液を調製する。T/C布(ツイル、200g/m、未染色布)を処理液に浸漬し、マングルで4kg/cm、4m/分で絞って、170℃で1分間熱処理した後に、処理布の撥水撥油性を評価する。同様に、30重量%分散液の濃度が4.8%になるように水で希釈して処理液を調製する。コットン布を処理する場合、コットン布(ツイル、160g/m、未染色布)を処理液に浸漬し、マングルで4kg/cm、4m/分で絞って、170℃で2分間熱処理した後に、処理布の撥水撥油性を評価する。同様に、30重量%分散液の濃度が4.8%になるように水で希釈して処理液を調製する。ポリエステル布を処理する場合、ポリエステル布(microfiber navy)を処理液に浸漬し、マングルで4kg/cm、4m/分で絞って、170℃で2分間熱処理した後に、処理布の撥水撥油性を評価する。撥水性はAATCC−21のスプレー法による撥水性No.(下記表1参照)をもって表す。撥油性はAATCC−118によって下記表2に示す試験溶液を試験布上に3滴たらし、30秒後の浸透状態を観察し、浸漬を示さない試験溶液が与える撥油性の最高点を撥油性とする。同じ等級である場合、撥水撥油性がより高い場合は+、低い場合は−で評価する。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
撥水撥油性の洗濯耐久性
JIS L-0217-103法に準じて、40℃の洗濯液で25分(5分×HL、連続5回)洗濯、脱水3分、すすぎ2分、脱水3分、すすぎ2分、脱水3分、タンブラー乾燥を行い、その後の撥水撥油性を評価する(HL-5)。
【0064】
貯蔵安定性
水性分散液(固形分30重量%)を、40℃で1ヶ月保存し、沈降の発生を観察する。
○: 全く沈降なし
□: わずかに沈降あり
×: 多く沈降あり
【0065】
平均粒子径
分散粒子の平均粒子径は、レーザー式光散乱法(大塚電子社製 Fiber-Optics Particle Analyzer FPAR-1000)を用いて測定する。
【0066】
[コア・シェルポリマー]
合成例1
500mLの容器に、重合性単量体として、n-ブチルアクリレート(以下n-BAと記す。)11.16g、N−メチロールアクリルアミド(以下N−MAMと記す。)1.07g、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(以下T−Mと記す。)0.53g、ラウリルメルカプタン(以下L−SHと記す。)0.49g、乳化剤のジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド(以下C2ABTと記す)1.41gとソルビタンモノパルミテート(以下PP−40Rと記す)1.89g、ポリエチレングリコールラウリルエーテル(以下K220と記す)8.15g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(以下BO50と記す)2.02g、水87.56g、トリプロピレングリコール(以下TPGと記す。)12.60gを入れ、ホモミキサーで前分散した後、超音波乳化機を用いて、5分間冷却しながら処理し、第1モノマーの乳化液を得た。
この乳化液を500mLのステンレス製オートクレーブに入れ、窒素置換した後に塩化ビニル(以下VClと示す。)44.04gを仕込んだ。次に、開始剤の2,2’-アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(以下、NC−32Wと記す)0.65gを水4gに溶解させて加えた後、60℃に昇温後、3時間重合させて固形分34.2%、平均粒子径0.159μmの第1重合体粒子の分散液を得た(167.5g)。
【0067】
合成例2〜15
合成例1と同様の方法で表3〜5に示す第1モノマーの組成からなる第1重合体粒子の分散液を得た。VClを用いた重合についてはステンレス製オートクレーブを用いた。VClを用いなかった重合についてはセパラブルフラスコを用いた。セパラブルフラスコを用いて重合を行った時は冷却管、温度計、窒素導入管を備え付けた。
以下、2−エチルヘキシルメタクリレートはHEMA、n-ブチルメタクリレートはn-BMA、シクロヘキシルメタクリレートはCHMA、t−ブチルメタクリレートはTBMA、ステアリルアクリレートはStA、ラウリルアクリレートはLA、2−エチルヘキシルアクリレートは2EHA、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルメタクリレートは13FMAと記した。2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロ-ノニルアクリレートは17FAと記した。
【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
実施例1
500mL容器に合成例1で製造した第1重合体粒子の分散液(固形分濃度34.2%、110.29g)に対して第2モノマーとして13FMA(28.59g)、StA(3.61g)、N−MAM(0.89g)、T−M(0.42g)、さらにTPG(12.6g)、水(69.97g)を加え、混合物を60℃で5分間撹拌した後、ホモミキサーで前分散した後、超音波乳化機を用いて、3分間冷却しながら処理し、乳化液を得た。
この乳化液を500mLのステンレス製オートクレーブに入れ、窒素置換した後にVCl(10.48g)を仕込んだ。その後、NC−32W(0.2g)を水(4g)に溶解させて加え、60℃で3時間重合させた。冷却後の水系溶媒分散液は、固形分濃度32.7%、平均粒子径0.154μmであった。水系溶媒分散液の透過型電子顕微鏡による観察の結果、第2重合体は第1重合体粒子の表面に存在するコア/シェル型の微粒子を形成していた。
【0072】
実施例2〜6
実施例1と同様の方法で表6〜7に示す第2モノマーの組成からなる第2モノマー混合液と第1重合体粒子分散液の組み合わせを使用して重合体粒子の分散液を得た。
【0073】
【表6】

【0074】
【表7】

【0075】
比較例1〜11
実施例1と同様の方法で表8〜10に示す第2モノマーの組成からなる第2モノマー混合液と第1重合体粒子分散液の組み合わせを使用して重合体粒子の分散液を得た。
【表8】

【0076】
【表9】

【0077】
【表10】

【0078】
試験例1〜6および比較試験例1〜11
上記の例で得られた重合体粒子分散液について、撥水撥油性および貯蔵安定性を評価した。評価結果は表11〜12に示した。
【0079】
【表11】

【0080】
【表12】


表11と表12を比較すると、1段目(コア)にVClを含有したエマルジョンを用いると良好な結果が得られることがわかる。
【0081】
合成例16
500mLの容器に、重合性単量体として、n-BA(23.25g)、N−MAM(1.88g)、T−M(0.93g)、L−SH(0.72g)、乳化剤のC2ABT(4.15g)とPP−40R(5.64g)、K220(23.66g)、BO50(6.02g)、水(157.23g)、TPG(28.13g)を入れ、ホモミキサーで前分散した後、超音波乳化機を用いて、5分間冷却しながら処理し、第1モノマーの乳化液を得た。
この乳化液を500mLのステンレス製オートクレーブに入れ、窒素置換した後にVCl(73.00g)を仕込んだ。次に、開始剤のNC−32W(1.16g)を水(4g)に溶解させて加えた後、60℃に昇温後、3時間重合させて固形分40.4%、平均粒子径0.226μmの第1重合体粒子の分散液を得た(299.4g)。
【0082】
合成例17
合成例16と同様の方法で表13に示す第1モノマーの組成からなる第1重合体粒子の分散液を得た。
【0083】
【表13】

【0084】
実施例7
500mL容器に合成例1で製造した第1重合体粒子の分散液(固形分濃度34.3%)110.29gに対して第2モノマーとして13FMA(28.59g)、StA(3.61g)、N−MAM(0.89g)、T−M(0.42g)、さらにTPG(12.6g)、水(62.96g)を加え、混合物を60℃で5分間撹拌した後、ホモミキサーで前分散した後、超音波乳化機を用いて、3分間冷却しながら処理し、乳化液を得た。
この乳化液を500mLのステンレス製オートクレーブに入れ、窒素置換した後にVCl(10.48g)を仕込んだ。その後、NC−32W(0.2g)を水4gに溶解させて加え、60℃で3時間重合させた。冷却後の水系溶媒分散液は、固形分濃度32.7%、平均粒子径0.154μmであった。水系溶媒分散液の透過型電子顕微鏡による観察の結果、第2重合体は第1重合体粒子の表面に存在するコア/シェル型の微粒子であった。
【0085】
実施例8〜13
実施例7と同様の方法で表14〜15に示す第2モノマーの組成からなる第2モノマー混合液と第1重合体粒子分散液の組み合わせを使用して重合体粒子の分散液を得た。
メルカプト基変性アミノジメチルシリコーンはSi-SHと記した。
【0086】
【表14】

【0087】
【表15】

【0088】
試験例7〜13
上記の実施例7〜13で得られた重合体粒子分散液について、撥水撥油性および貯蔵安定性を評価した。
評価結果は表16に示した。
【0089】
【表16】

【0090】
実施例14
500mLステンレス製オートクレーブに合成例1で製造した第1重合体粒子の分散液(固形分濃度34.3%)117.36gに対して第2モノマーとして13FMA(30.19g)、StA(3.86g)、N−MAM(0.95g)、T−M(0.45g)、さらにTPG(13.38g)、水(74.27g)を加え、窒素置換した後にVCl(11.23g)を仕込んだ。その後、混合物を60℃で1時間撹拌した後、40℃まで冷却後にNC−32W(0.25g)を水(4g)に溶解させて加え、60℃で3時間重合させた。冷却後の水系溶媒分散液は、固形分濃度33.6%、平均粒子径0.229μmであった。水系溶媒分散液の透過型電子顕微鏡による観察の結果、第2重合体は第1重合体粒子の表面に存在するコア/シェル型の微粒子であった。
【0091】
合成例18
500mLの容器に、重合性単量体として、n-BA(12.78g)、N−MAM(1.06g)、T−M(0.53g)、L−SH(0.38g)、乳化剤のC2ABT(0.64g)とPP−40R(0.85g)、K220(3.68g)、BO50(0.91g)、水(87.00g)、TPG(15.67g)を入れ、ホモミキサーで前分散した後、超音波乳化機を用いて、5分間冷却しながら処理し、第1モノマーの乳化液を得た。
この乳化液を500mLのステンレス製オートクレーブに入れ、窒素置換した後にVCl(40.32g)を仕込んだ。次に、開始剤のNC−32W(0.64g)を水(4g)に溶解させて加えた後、60℃に昇温後、3時間重合させて固形分34.3%、平均粒子径0.184μmの第1重合体粒子の分散液を得た(156.3g)。
【0092】
実施例15
500mLステンレス製オートクレーブに合成例18で製造した第1重合体粒子の分散液(固形分濃度34.1%)117.48gに対して第2モノマーとして13FMA(30.00g)、StA(3.84g)、N−MAM(0.94g)、T−M(0.45g)、乳化剤のC2ABT(0.54g)とPP−40R(0.72g)、K220(3.12g)、BO50(0.77g)、水(73.8g)、TPG(13.29g)を入れ、ホモミキサーで前分散した後、超音波乳化機を用いて、5分間冷却しながら処理し、第2モノマーの乳化液を得た。この乳化液を500mLステンレス製オートクレーブに入れ、窒素置換した後にVCl(11.16g)を仕込んだ。その後、第1重合体粒子分散液にNC−32W(0.27g)を水(4g)に溶解させて加え、60℃に加熱後、第2モノマーの乳化液を1時間かけて滴下して仕込んだ。滴下終了後、さらに3時間重合させた。冷却後の水系溶媒分散液は、固形分濃度34.1%、平均粒子径0.187μmであった。水系溶媒分散液の透過型電子顕微鏡による観察の結果、第2重合体は第1重合体粒子の表面に存在するコア/シェル型の微粒子であった。
【0093】
試験例14〜15
上記の実施例14〜15で得られた重合体粒子分散液について、撥水撥油性および貯蔵安定性を評価した。
評価結果は表17に示した。
【0094】
【表17】

【0095】
[ポリマーブレンド]
合成例19
500mLの容器に、重合性単量体として、n-BA(63.11g)、N−MAM(1.26g)、T−M(0.63g)、L−SH(0.9g)、乳化剤のC2ABT(0.91g)とPP−40R(1.22g)、K220(5.25g)、BO50(1.3g)、水(103.4g)、TPG(18.62g)を入れ、ホモミキサーで前分散した後、超音波乳化機を用いて、5分間冷却しながら処理し、モノマー混合物の乳化液を得た。
この乳化液を冷却管、窒素導入管、温度計を備えた500mLのセパラブルフラスコに入れ、窒素置換した後に、開始剤のNC−32W(0.38g)を水(4g)に溶解させて加えた後、60℃に昇温後、3時間重合させて固形分35.3%、平均粒子径0.109μmの非フッ素重合体粒子の分散液を得た(207.1g)。
【0096】
合成例20〜23
合成例19と同様の方法で表18に示すモノマー混合物を乳化させ、500mLステンレス製オートクレーブあるいは冷却管、窒素導入管、温度計を備えた500mLのセパラブルフラスコに入れて重合させ、各種非フッ素重合体粒子を得た。
【0097】
【表18】

【0098】
合成例24
500mL容器に重合性単量体として13FMA(49.98g)、StA(12.97g)、N−MAM(1.39g)、T−M(0.66g)、乳化剤のC2ABT(0.47g)とPP−40R(0.63g)、K220(2.74g)、BO50(0.68g)、さらにTPG(18.62g)、水(103.4g)を加え、混合物を60℃で5分間撹拌した後、ホモミキサーで前分散した後、超音波乳化機を用いて、3分間冷却しながら処理し、乳化液を得た。
この乳化液を500mLのセパラブルフラスコに入れ、窒素置換した後に、開始剤のNC−32W(0.38g)を水(4g)に溶解させて加えた後、60℃に昇温後、3時間重合させて固形分34.4%、平均粒子径0.134μmの含フッ素重合体粒子の分散液を得た(195.0g)。
【0099】
合成例25
合成例24と同様の方法で表19に示す仕込みにおいてVCl以外のモノマー混合液を乳化させ、500mLステンレス製オートクレーブに入れ、窒素置換後にVClを所定量仕込んだ。その後、開始剤であるNC−32Wを水に溶解させて加え、60℃に加熱して3時間重合させて含フッ素の重合体粒子の分散液を得た。
【0100】
合成例26
合成例25と同様の方法で表19に示す仕込みにおいてVCl以外のモノマー混合液を乳化させ、500mLステンレス製オートクレーブに入れ、窒素置換後にVClを所定量仕込んだ。その後、開始剤であるNC−32Wを水に溶解させて加え、60℃に加熱して3時間重合させて含フッ素の重合体粒子の分散液を得た。
【0101】
【表19】

【0102】
比較例12〜19
合成例19〜23で得られた非フッ素重合体粒子分散液と合成例24〜26で得られた含フッ素重合体粒子分散液を固形分濃度が30重量%になるように水で希釈した分散液を、表20および表21で示す混合比でブレンドした分散液混合物を得た。
【0103】
【表20】

【0104】
【表21】


【0105】
比較試験例12〜19
上記の比較例12〜19で得られた重合体粒子分散液について、撥水撥油性および貯蔵安定性を評価した。
評価結果は表22に示した。
【0106】
【表22】


【0107】
[ランダムコポリマー]
比較例20
500mLの容器に、重合性単量体として、13FMA(37.68g)、StA(25.15g)、乳化剤のC2ABT(0.74g)とPP40R(0.98g)、K220(4.39g)、BO50(1.08g)、水(102.12g)、TPG(18.51g)を入れ、ホモミキサーで前分散した後、超音波乳化機を用いて、5分間冷却しながら処理し、乳化液を得た。
この乳化液を500mLのセパラブルフラスコに入れ、窒素置換した後に、開始剤のNC−32W(0.38g)を水(4g)に溶解させて加えた後、60℃に昇温後、3時間重合させた。その結果、固形分36.6%、平均粒子径0.118μmのランダム共重合体粒子分散液を得た(190.6g)。
【0108】
比較例21〜26
比較例20と同様の方法で表23および表24に示すモノマー混合物を乳化させ、VClを用いないものについてはセパラブルフラスコを用いて重合させてランダム共重合体粒子の分散液を得た。VClを用いるものについてはステンレス製オートクレーブに乳化液を入れ、窒素置換した後にVClを導入し、水に溶解させた開始剤を加えた後に60℃にて3時間重合を行い、ランダム共重合体粒子の分散液を得た。
【0109】
【表23】

【0110】
【表24】

【0111】
比較試験例20〜26
上記の比較例20〜26で得られた重合体粒子分散液について、撥水撥油性および貯蔵安定性を評価した。
評価結果は表25に示した。
【0112】
【表25】

【0113】
試験例16〜23および比較試験例27〜40
表26に示した樹脂水性分散液を試験例1で示した方法により処理した各種生地について、撥水撥油性の洗濯耐久性を評価した。
評価結果は表26〜27に示した。
【0114】
【表26】

【0115】
【表27】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1重合体と第2重合体の少なくとも2種の重合体を含む多層構造重合体粒子であり、かつ、第1重合体は主鎖にハロゲン原子を含有する重合体であり、第2重合体はフルオロアルキル基を含有する重合体である多層構造重合体粒子を含む水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項2】
第1重合体が塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデンを重合単位として含む請求項1の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項3】
第1重合体が塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデンの重合単位を10〜100重量%含む重合体である請求項2に記載の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項4】
第1重合体がフルオロアルキルを含まない請求項1〜3のいずれかに記載の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項5】
第1重合体がフッ素原子を有しない請求項1〜4のいずれかに記載の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項6】
第2重合体が、フルオロアルキル基含有モノマーの重合単位を含む重合体である請求項1〜5のいずれかに記載の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項7】
第2重合体が、フルオロアルキル基含有モノマーの重合単位を50〜100重量%含む重合体である請求項6に記載の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項8】
フルオロアルキル基が、一般式Cm2m+1−(ただし、mは、2〜20の整数である。)あるいは(CF32CF(CF2CF2−(ただし、nは、0〜10の整数である。)で表される請求項1〜7のいずれかに記載の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項9】
フルオロアルキル基含有モノマーは、一般式:
Rf−Q1 −X
[式中、Rfはフルオロアルキル基を、Q1 は2価の有機基を、X1は重合性不飽和基を含有する1価の有機基を示す。]
で表される請求項6または7に記載の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項10】
フルオロアルキル基含有モノマーは、一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)、Rfは、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキルである。]
で示される化合物である請求項6または7に記載の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項11】
第2重合体が、フルオロアルキル含有モノマー以外の他のモノマーを10〜50重量%含む請求項6または7に記載の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項12】
他のモノマーが塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデンを含むモノマー混合物である請求項11に記載の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項13】
多層構造重合体粒子が、第1重合体の粒子の表面または内部に第2重合体が存在する重合体粒子である請求項1〜12のいずれかに記載の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項14】
第1重合体の粒径が0.001〜1μmである請求項13の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項15】
多層構造重合体粒子の粒径が0.001〜1μmである請求項1〜14のいずれかに記載の水分散型撥水撥油剤組成物。
【請求項16】
第2モノマーを、第1重合体の粒子の存在下で重合することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の水分散型撥水撥油剤組成物の製造方法。
【請求項17】
第1重合体の粒径が、0.001〜1μmである請求項16の製造方法。
【請求項18】
第2重合体を形成する重合反応を連鎖移動剤の存在下に実施する請求項16または17に記載の製造方法。
【請求項19】
不飽和二重結合にハロゲン原子が結合したモノマーを含む重合性モノマーを連鎖移動剤の存在下に重合することにより第1重合体の粒子を得る請求項16〜18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
第1重合体と第2重合体の少なくとも2種の重合体を含む多層構造重合体粒子であり、かつ、第1重合体は主鎖にハロゲン原子を含有する重合体であり、第2重合体はフルオロアルキル基を含有する重合体である多層構造重合体粒子。

【公開番号】特開2009−155591(P2009−155591A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338506(P2007−338506)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】