説明

水性重合体被覆組成物

【目的】 塗料やコーティング用として使用される水分散液組成物の泡立ちが少なく、貯蔵安定性に優れ、しかも長期の保存後も塗膜の耐水性、耐候性、および基材への付着性が低下することの少ない水性重合体被覆組成物の提供。
【構成】 特定の不飽和基含有高分子量乳化剤0.1〜10重量部の存在下にビニル重合性単量体99.9〜90重量%と、カルボキシル基含有ビニル単量体0.1〜10重量%からなる単量体混合物100重量部を乳化共重合させて得られる共重合体水分散液と、非ビニル重合性シランカップリング剤0.1〜10重量部とからなる水性重合体被覆組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、塗料、コーティング用に適した低起泡性で貯蔵安定性が極めて良く、耐水性、耐候性、付着性に優れた塗膜を与える水性重合体被覆組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】乳化重合により得られる水分散液組成物は、従来の有機溶剤型の組成物に比べて、引火性や毒性が少なく、安全かつ経済的であり、取扱いが容易なため、塗料、接着剤、各種のコーティング剤として広範囲な分野に使用されている。
【0003】しかし、水分散液組成物を上記用途に使用する際に大きな欠点がある。水分散液組成物は、製造時に乳化剤を使用することが必須であるため、耐水性の低下や、起泡性に起因するピンホ−ルの問題等が生じる。そこでこれらの問題を解決するため、各種の共重合性乳化剤が使用されている。例えば、特公昭51−44157号公報では、水酸基とスルホン酸塩を有する不飽和カルボン酸エステルを乳化剤として乳化重合する方法。特公昭51−44158号公報では、乳化剤としてアルキルスルホン酸基を有するマレイン酸アルキルエステルを使用する方法。特開昭51−30285号公報では、フマ−ル酸誘導体の共重合性アニオン乳化剤の存在下にエチレン性不飽和単量体を重合して得られる重合体。特開昭60−181111号公報では、(メタ)アクリル酸スルホアルキルエステル塩なるアニオン性の重合性乳化剤の存在下で、エチレン性不飽和単量体を重合してなる組成物。特開昭61−223011号公報では、アリルアルコ−ルのアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩の存在下で、エチレン性不飽和単量体を重合してなる組成物等がそれぞれ開示されている。これらの共重合性乳化剤は、必ずしも単量体との共重合性が十分でないため、未重合物は、通常の非重合性乳化剤を使用した場合と同じように塗膜の耐水性低下や起泡の原因となり、満足できるものではなかった。
【0004】一方、水分散液組成物中にシリコ−ンを導入することは、被塗物の耐水性、付着性、耐候性、耐薬品性を高めるため望ましいものである。例えば、特開昭57−63316号公報では、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはスチレン、エチレン性不飽和カルボン酸および加水分解型ビニルシランからなる共重合体。特開昭60−181175号公報では、加水分解性ビニルシラン単量体とエチレン性不飽和単量体を水性媒体中で重合することにより得られる被覆組成物。特開昭62−267374号公報では、飽和脂肪族アルコキシシランの存在下にエチレン性不飽和単量体を乳化重合せしめて得られる水性エマルジョン。特開平2−308801号公報では、ビニル基とシロキサン基を含有する単量体と界面活性ビニル単量体を使用して得られる水性分散物等が開示されているが、いずれも水分散液の経時変化が有り、保存期間が長くなるにつれて塗膜物性(耐水性、造膜性、付着性等)が低下する問題がある。
【0005】
【発明の解決しようとする課題】従って、本発明は、水分散液の泡立ちが少なく、貯蔵安定性に優れ、しかも長期の保存後も塗膜の耐水性、耐候性、および、基材への付着性が低下することの少ない水性重合体被覆組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特公昭62−61049号公報に開示されている不飽和基含有高分子量乳化剤の存在下にビニル重合性単量体混合物を乳化共重合させて得られる共重合体水分散液が、極めて低起泡性で、耐水性に優れた塗膜を与えることを見い出し、更に、非ビニル重合性シランカップリング剤を使用することで、塗料などの各種コ−ティング用として貯蔵安定性が良く、耐水性、耐候性、付着性に優れた塗膜性能を与え得る本発明の被覆組成物を完成させた。
【0007】即ち、本発明は、主成分が一般式
【化1】(式中、kは、2〜6の整数、mは、2〜12の整数、nは、2〜12の整数を示す。)で示される不飽和基含有高分子量乳化剤0.1〜10重量部の存在下にビニル重合性単量体99.9〜90重量%とカルボキシル基含有ビニル単量体0.1〜10重量%からなる単量体混合物100重量部を乳化共重合させて得られる共重合体水分散液と、非ビニル重合性シランカップリング剤0.1〜10重量部とからなる水性重合体被覆組成物である。更に、該シランカップリング剤がエポキシ系シラン化合物、または、アミノ系シラン化合物であり、更にまた、該シランカップリング剤を単量体混合物に溶解させて乳化重合させてなる水性重合体被覆組成物である。
【0008】本発明に使用される不飽和基含有高分子量乳化剤は以下の三段階の反応により合成できる。先ず、炭素数が8または9個のアルキル基を有するアルキルフェノ−ルのエチレンオキサイド付加物(2〜12モルのエチレンオキサイド鎖を有する)と、無水マレイン酸とを等モル反応させて不飽和カルボン酸のモノエステルを合成する。次にこのモノエステル2モルに、炭素数2〜6個の1級アルコ−ルのジオ−ル1モルを反応させてジエステル化合物を合成する。最後に、このジエステル化合物1モルに対して、酸性亜硫酸塩を1モル付加反応させて本発明に使用する不飽和基含有高分子量乳化剤を得る。該乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部当たり、0.1〜10重量部である。0.1重量部より少ない場合には、乳化重合の安定性が悪く、またその他の公知の乳化剤を併用した場合にも泡立ち易くなり好ましくない。10重量部より多い場合には、塗膜の耐水性が低下する。より好ましい使用量は、0.5〜5重量部である。その他の公知の重合性乳化剤や通常のアニオン性乳化剤との併用もできるが、その他の乳化剤の使用量は、該乳化剤の量を超えてはならず、その他の乳化剤と該乳化剤の合計量は10重量部以下である。
【0009】本発明に使用されるカルボキシル基含有ビニル単量体は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、および、マレイン酸、イタコン酸の炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖を有するアルコ−ルとのハ−フエステル等が挙げられ、これらの群より選ばれた1種または2種以上を使用できる。好ましいカルボキシル基含有ビニル単量体は、アクリル酸またはメタクリル酸である。該ビニル単量体の使用量は単量体混合物の0.1〜10重量%である。その使用量が、0.1重量%より少ない場合は、乳化重合の安定性が低下し、塗膜の付着性も低下する。10重量%より多い場合には、塗膜の耐水性が低下する。より好ましい使用量は、0.5〜7重量%である。
【0010】本発明に使用されるビニル重合性単量体は、主成分が、スチレンおよび/または(メタ)アクリル酸エステル系単量体よりなる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、各種の単量体が使用でき、例えば、メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、n−ブチル(メタ)アクリレ−ト、イソブチル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチル(メタ)アクリレ−ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ−トオ、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、ラウリル(メタ)アクリレ−ト、ステアリル(メタ)アクリレ−ト、イソボニル(メタ)アクリレ−ト、ベンジル(メタ)アクリレ−ト等が挙げられ、これらの群より選ばれた1種または2種以上を用いる。
【0011】本発明において、必要に応じてその他のビニル重合性単量体を使用することも可能である。その他のビニル重合性単量体としては、親水性基含有ビニル単量体である(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの酸アミド基またはN−アルキル基置換アミド基を含有するビニル単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、グリセロ−ル(メタ)アクリレ−ト、平均付加モル数4から100モルのポリオキシアルキレン鎖を有するポリエチレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト類またはポリプロピレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト類などのヒドロキシル基を含有するビニル単量体等が挙げられる。また上記以外のビニル単量体としてα−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バ−サチック酸ビニル等も挙げられる。更にジビニルベンゼン、ジアリルフタレ−ト、エチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト等の2〜3個の二重結合を有するビニル単量体;グリシジル(メタ)アクリレ−ト、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、N−メチロ−ルアクリルアミドなどの反応性ビニル単量体等も挙げられる。
【0012】本発明の水性重合体被覆組成物のガラス転移温度(以下Tgと称する。)は、−40〜70℃であることが望ましい。Tgが−40℃より低い場合は、耐ブロッキング性が乏しく、塗膜物性を満たすことは困難である。一般に、Tgが高い重合体水分散液には適性温度で成膜させるため、成膜助剤が使用されている。Tgが70℃より高い場合には、使用する成膜助剤の量が多くなるため、塗膜強度の低下や経時で塗膜にクラックが発生し易いなどの欠点がある。より好ましいTgは、−20〜50℃である。ここで、水性重合体組成物のTgは、該重合体が形成されるそれぞれの単量体の重量分率を、それぞれの単量体から誘導される単一重合体のTg(K:ケルビンで表す)値で割ることによって得られるそれぞれの商の合計の逆数として計算される。
【0013】本発明に使用される非ビニル重合性シランカップリング剤は、公知のエポキシ系シラン化合物、または、アミノ系シラン化合物から選ばれた1種または2種以上が使用できるが、その中でも特に、エポキシ系シラン化合物が好ましい。エポキシ系シランカップリング剤としては、例えばβ−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が、またアミノ系シランカップリング剤としては、例えばN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等があり、これらの群から選ばれた1種または2種以上を使用できる。該シランカップリング剤の使用量は、上記単量体混合物100重量部当たり0.1〜10重量部であり、0.1重量部より少ない場合は、塗膜の耐水性、耐候性、付着性が不足し、10重量部を多い場合は、本発明組成物の貯蔵安定性が悪くなる。
【0014】該シランカップリング剤は上記の単量体混合物に溶解して乳化重合させても良く、また該共重合体分散液に配合して被覆組成物とすることもできる。好ましくは、単量体混合物に溶解して乳化重合させる方法である。上記の方法にて得た水性重合体被覆組成物は、配合する方法よりも耐水性、付着性がさらに向上する。
【0015】上記の不飽和基含有高分子量乳化剤の存在下における単量体混合物の乳化共重合は、単量体混合物にラジカル重合開始剤を用いて通常の乳化重合の方法で行うことができる。また必要に応じて重合度調整剤、粒子径調整剤等を使用することもできる。ラジカル重合開始剤としては、熱または還元性物質等によってラジカルを生成してビニル重合性単量体の付加重合を起こさせるもので、水溶性または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等がある。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2.2−アゾビスイソブチロニトリル、2.2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2.2−アゾビス(2.4−ジメチルバレロニトリル)等があり、より好ましくは水溶性のものである。その使用量は、単量体混合物に対して通常0.05〜2重量部である。なお、重合速度の促進、さらに低温での重合を望む場合には、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合開始剤と組み合わせて用いることもできる。
【0016】更に、本発明の水性重合体被覆組成物には、流動性改良、ブロッキング防止等のため、必要に応じて公知の添加物である成膜助剤、可塑剤、充填剤、顔料、粘性調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、分散剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、凍結防止剤、防炎剤、難燃剤、防錆剤等を本発明の効果を損なわない範囲で配合して使用することもできる。
【0017】
【実施例】以下に、本発明を実施例において詳しく説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。なお、実施例および比較例における部もしくは%とあるのは、特にことわりない限り、重量部または重量%を示す。
【0018】(不飽和基含有高分子量乳化剤(A)の製造例)無水マレイン酸98g(1モル)にノニルフェノ−ルのエチレンオキサイド5モル付加物440g(1モル)を混合して約55℃に加熱し、マレイン酸のモノエステルを生成せしめる。次いで該マレイン酸のモノエステル538g(1モル)とエチレングリコ−ル31g(1/2モル)を約180℃に加熱して脱水反応を行わせ、不飽和ラジカルを2個含有するジエステルを生成させる。その後、該ジエステル551g(1/2モル)に酸性亜硫酸のナトリウム塩52g(1/2モル)を含む水溶液(50%濃度)を加えて、約100℃に加熱することによって不飽和ラジカル1個とスルホン酸ナトリウム塩1個を含有する不飽和基含有高分子量乳化剤を得た。該乳化剤のケン化価は179.2、酸価は2.5、エステル価は176.7(計算値186.1)でエプトン法による結合硫酸は6.1%(計算値6.6%)であった。
【0019】実施例1予め、ビ−カ−にスチレン30部、メチルメタアクリレ−ト36部、2−エチルヘキシルアクリレ−ト29部、メタクリル酸5部、および前述の不飽和基含有高分子量乳化剤(A)2部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名 信越シリコ−ンKBM−403 信越化学工業(株)製)3部、脱イオン水45部をとり攪拌して乳化する。攪拌機、環流冷却器、および滴下ロ−トを付した反応装置に、脱イオン水58.5部を仕込み、内温を80℃まで昇温させる。予めビ−カ−に調整した乳化物を5時間で滴下する。並行して脱イオン水で10%に溶解した過硫酸アンモニウム3部を滴下する。滴下終了後、2時間その温度に保った後、30℃まで冷却し、25%アンモニア水を、1.5部添加し、固形分濃度50%の水性重合体被覆組成物を得た。該組成物についての性能結果を表1に示す。その結果、該組成物は泡立ちが少なく、貯蔵安定性も優れていた。また、塗膜の耐水性、耐候性、基材への付着性も良く、保存後の性能の低下も見られないことが明らかである。
【0020】
【表1】


【0021】表中、単量体の種類を下記の略号で示し、また共重合体の計算Tgは括弧内に示すそれぞれの単一重合体のTgを用いた。
St : スチレン (Tg:100℃)
MMA : メチルメタクリレート (Tg:105℃)
CHMA: シクロヘキシルメタクリレート (Tg:83℃)
IBMA: イソブチルメタクリレ−ト (Tg:48℃)
2EHA: 2−エチルヘキシルアクリレ−ト (Tg:−70℃)
MAAc: メタクリル酸 (Tg:185℃)
表中、乳化剤を下記の略号で示す。
A : 上記の不飽和基含有高分子量乳化剤(A)
B : 反応性乳化剤として商品名 エレミノ−ルJS−2(三洋化成工業(株)製)
C : 非反応性乳化剤として商品名 レベノ−ルWZ(花王(株)製)
表中、シリコンは下記のシランカップリング剤である。
エポキシ系: 商品名 信越シリコ−ンKBM−403(信越化学工業(株)製)
ア ミ ノ系: 商品名 信越シリコ−ンKBE−903(信越化学工業(株)製)
アクリル系: 商品名 信越シリコ−ンKBM−503(信越化学工業(株)製)
【0022】実施例2〜3実施例1の単量体混合物を表1に示すように変更した以外は、実施例1とまったく同様にして水性重合体被覆組成物を作成した。結果は表1に示す。
【0023】実施例4実施例1のメタクリル酸を3部、前述の不飽和基含有高分子量乳化剤(A)を5部に変更し、計算Tgが30℃になるように単量体組成物を組合せて、実施例とまったく同様にして水性重合体被覆組成物を作成した。結果は表1に示す。
【0024】実施例5実施例1のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名 信越シリコ−ンKBM−403 信越化学工業(株)製)を6部に変更した以外は、実施例とまったく同様にして水性重合体被覆組成物を作成した。
【0025】実施例6実施例1のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名 信越シリコ−ンKBM−403 信越化学工業(株)製)をγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名 信越シリコ−ンKBE−903 信越化学工業(株)製)に変更した以外は、実施例とまったく同様にして水性重合体被覆組成物を作成した。
【0026】実施例7実施例2のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名 信越シリコ−ンKBM−403 信越化学工業(株)製)を単量体混合物に溶解するかわりに、水性重合体被覆組成物に後添加する以外は、実施例1とまったく同様にして水性重合体被覆組成物を作成した。シランカップリング剤を反応中に使用しても配合しても同様な結果が得られ、その結果を表1に示す。
【0027】比較例1実施例1のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名 信越シリコ−ンKBM−403信越化学工業(株)製)を除く以外は、実施例1とまったく同様にして水性重合体被覆組成物を作成した。シランカップリング剤を使用しないため、貯蔵安定性は良好であるが皮膜性能が劣った。結果は表1に示す。
【0028】比較例2実施例1の不飽和基含有高分子量乳化剤(A)を反応性乳化剤アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(商品名 エレミノ−ルJS−2 三洋化成工業(株)製)に変更する以外は、実施例1とまったく同様にして水性重合体被覆組成物を作成した。結果は表1に示す。
【0029】比較例3実施例1の不飽和基含有高分子量乳化剤(A)をポリオキシエチレンノニルフェニルエ−テル硫酸ナトリウム(商品名 レベノ−ルWZ 花王(株)製)に変更する以外は、実施例1とまったく同様にして水性重合体被覆組成物を作成した。結果は表1に示す。
【0030】比較例4実施例1のエポキシ系シランであるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名 信越シリコ−ンKBM−403 信越化学工業(株)製)をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名 信越シリコ−ンKBM−503 信越化学工業(株)製)に変更する以外は、実施例1とまったく同様にして水性重合体被覆組成物を作成した。結果は表1に示す。
【0031】[試験方法]
1.耐水性:JIS K−5400に準じ試験する。試験塗膜作成方法は、クリヤ−で塗膜厚が20μなるようにガラス板に塗布後、室温20℃、湿度60%で1週間乾燥させて試験片とする。上記で得た試験片を、水道水に24時間浸漬後、塗膜状態を観察する。
○:変化なし △:ブル−イング(半透明) ×:白化またはブリスタ−(不透明)
2.耐アルカリ性:JIS K−5400に準じ試験する。試験塗膜作成方法は、耐水性に同じ。室温にて3%NaOH水溶液に24時間浸漬後の塗膜状態を観察する。
○:変化なし △:ブル−イング(半透明) ×:白化またはブリスタ−(不透明)
3.耐候性:QUV試験機(ATLAS−UVCON:東洋精機製作所製)にて試験。条件は、50℃で4時間照射60℃で4時間湿潤を1サイクルとして、1、000時間後のグロスリテンションを調べる。試験塗膜作成方法は、耐水性に同じ。
○:80%以上 △:80〜50% ×:50%以下4.付着性:JIS K−5400碁盤目法に準じ試験する。試験塗膜はガラス板とフレキシブルボ−ド(塗工面をアクリル有機溶剤型シ−ラ−で下地処理)に塗布する。表中、保存後の付着性は基材フレキシルボ−ドへの付着性について観察する。
○:100/100 △:95/100以上 ×:95/100以下5.耐泡立ち性:水性重合体被覆組成物を 100mlの共栓比色管に10mlをとり、脱イオン水を10ml入れて、10回上下に強振させ、泡立ち具合を観察する。
○:泡立ち少ない ×:泡立ち多い6.貯蔵安定性:水性重合体被覆組成物を300mlガラス容器に入れ密栓して、50℃の恒温槽に1週間保管し、塗膜の性能、液状態、粘度変化を観察する。
○:異常なし △:粘度値が1.5倍以上に上昇
【0032】
【発明の効果】実施例および比較例より明らかなように、不飽和基含有高分子量乳化剤存在の下にビニル重合性単量体とカルボキシル基含有ビニル単量体を乳化共重合させて得られる共重合体水分散液と、非ビニル重合性シランカップリング剤とからなる本発明の水性重合体被覆組成物は、泡立ちが少なく、貯蔵安定性が極めて優れ、長期の保存後に形成された塗膜においても耐水性、耐候性、基材への付着性の低下がみられない優れた性能を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 主成分が一般式
【化1】


(式中、kは2〜6の整数、mは2〜12の整数、nは8または9の整数を示す。)で示される不飽和基含有高分子量乳化剤0.1〜10重量部の存在下にビニル重合性単量体99.9〜90重量%とカルボキシル基含有ビニル単量体0.1〜10重量%からなる単量体混合物100重量部を乳化共重合させて得られる共重合体水分散液と、非ビニル重合性シランカップリング剤0.1〜10重量部とからなる水性重合体被覆組成物。
【請求項2】 非ビニル重合性シランカップリング剤が、エポキシ系シラン化合物、または、アミノ系シラン化合物である請求項1記載の水性重合体被覆組成物。
【請求項3】 非ビニル重合性シランカップリング剤を単量体混合物に溶解させて乳化重合させてなる請求項1または2に記載の水性重合体被覆組成物。

【公開番号】特開平11−152439
【公開日】平成11年(1999)6月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−335087
【出願日】平成9年(1997)11月19日
【出願人】(000105877)サイデン化学株式会社 (39)