説明

水性顔料分散組成物の製造方法、該製造方法で得られる水性顔料分散組成物およびその用途

【課題】効率よく、着色力、流動性などが優れた水性顔料分散組成物を製造する方法を提供する。
【解決手段】水性媒体と有機顔料と分散剤とを含む混合物を分散処理することにより、水性媒体中に有機顔料を分散させる水性顔料分散組成物の製造方法において、前記混合物は、さらに有機顔料100質量部に対して、平均一次粒子径0.05〜1μm、比重3〜6の水不溶性または水難溶性の金属化合物を2〜20質量部の割合で含み、粘度が0.2〜10Pa・sの混合液であり、前記分散処理は、少なくとも一組のロータとステータ、または少なくとも一組のロータとロータとの間隙を高速で通過させ、混合物に高いせん断応力が付加できる高速せん断攪拌装置を用いて分散処理した後、さらにメディア型分散装置で分散処理する工程からなることを特徴とする水性顔料分散組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性顔料分散組成物の製造方法に関し、特に、水性印刷インキなどの分野に有用である流動性が極めて高い水性顔料分散組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性有機顔料分散組成物は、古くから、水性印刷インキなどの着色材料のベース組成物として利用されており、鮮明な発色性と高い着色力を有すること、さらに流動性が良好であることが基本性能とされてきた。そして、この様な水性有機顔料分散組成物の製造方法として、通常、水性媒体中へ有機顔料と分散剤とを添加し、プロペラタイプ、パドルタイプ、タービンタイプなどのロータを有する装置を用いて、プレミックスと称される攪拌混合処理を行った後、パールミル、ダイノミルなどのメディア型分散装置を用いて、有機顔料をより微細に分散させる練肉処理を行う方法が利用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、顔料分散組成物の基本性能としての発色性や流動性を良好にするためには、まず、顔料の粗大粒子を少なくすことが不可欠であることが知られている。さらに、その顔料分散に利用するメディア型分散装置では、球体であるメディア同士が点で接触することから、接触点の近傍では高い応力がかかり、遠くなるにつれて応力が低くなるという機械的な特性があることも知られている。従って、これまでは分散効率を考慮して、接触点から離れた部分でも、顔料を微細に分散するのに十分な応力がかかるように分散条件が設定されてきた。この様な顔料の分散処理は、利用する顔料が難分散性であっても、効率よく水性媒体中に分散することができる代表的な方法である。
【0004】
一方、印刷インキに求められる性能レベルは年々高くなり、最近では顔料の粗大粒子を少なくするばかりでなく、平均粒子径もだんだんと小さくする、微粒子化の方向に移行している。しかし、疎水性の表面を有する有機顔料は、微粒子化すればするほど水性媒体中で安定な分散状態を維持することが困難となり、凝集を起こして流動性や発色性の低下の原因となる。そこで、従来より、印刷インキの分野では、有機顔料と比較して分散剤との濡れ性が良好な体質顔料を併用することにより、流動性の低下を防止する技術などで対応が図られて来た。さらに良好な流動性と発色性が要求されるインクジェット記録液の分野などでは、有機顔料のソルトミリングの際に微粒子の硫酸バリウムなどを混合することにより、有機顔料をより微細に分散させても分散安定性が良好であり、長期にわたって吐出安定性や鮮明性に優れたインクジェット記録液が得られることも知られている(例えば、特許文献2)。しかしながら、これらの技術は、流動性を低下させる根本的な原因を取り除くわけではなく、低下のレベルを軽減するものであるにすぎない。
【0005】
ところで、メディア型分散装置を利用して顔料を微粒子化するためには、当然、分散処理時に、より大きな力を顔料に与えることが必要となる。それに対して、従来のように分散効率を優先した分散条件(メディアの接触点から離れた部分でも十分な応力がかかる条件)を設定すると、今度は接触点近傍の部分で応力がかかり過ぎて、顔料が過剰に分散した状態となって凝集し、初期および保存期間中に沈降や流動性の低下が起こるという問題が発生する。将来にわたって、インキに要求される性能レベルがますます高くなることを考えると、顔料のさらなる微粒子化は不可欠であるが、それに伴って、より過剰に分散した顔料が増加することになる。そして、この様な顔料の過剰分散が生じる条件では、先に記載したような体質顔料や微粒子を含有するソルトミリング顔料の利用だけで、流動性の低下などを解決することは到底不可能であり、流動性低下の根本的な原因を取り除くことが必要である。
【0006】
そこで、顔料が過剰分散状態とならないように、メディアの接触点近傍の部分で適正な応力がかかる条件を設定すると、分散効率が極めて低くなり、水性有機顔料分散組成物の製造に必要な時間やエネルギーが大幅に増加することになる。
【0007】
この様に、従来から効率よく大量に水性有機顔料分散組成物を製造する方法として知られているメディア型分散装置では、機械的な特性から、より高い分散条件が必要となった時に、顔料の分散効率を低下させずに、過剰に分散した状態を回避することは極めて困難であり、根本的な有機顔料の分散方法の見直しが迫られている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−147252号公報
【特許文献2】特開平09−194773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、上述した問題を解決し、効率よく、着色力、流動性などが優れた水性顔料分散組成物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、有機顔料、分散剤、水性媒体を含有する混合液に、さらに微細金属化合物を加えた混合液を、高速回転するロータと静止状態のステータなどとの間隙を通過させ混合物に高いせん断応力が付加できる高速せん断攪拌装置で分散処理した後、さらにメディア型分散装置で分散処理する工程からなる分散処理を行うことにより、問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到ったものである。
【0011】
すなわち、本発明はつぎの水性顔料分散組成物の製造方法、水性顔料分散組成物およびその用途を提供する。
(1)水性媒体と有機顔料と分散剤とを含む混合物を分散処理することにより、水性媒体中に有機顔料を分散させる水性顔料分散組成物の製造方法において、前記混合物は、さらに有機顔料100質量部に対して、平均一次粒子径0.05〜1μm、比重3〜6の水不溶性または水難溶性の金属化合物を2〜20質量部の割合で含み、粘度が0.2〜10Pa・sの混合液であり、前記分散処理は、少なくとも一組のロータとステータ、または少なくとも一組のロータとロータとの間隙を高速で通過させ、混合物に高いせん断応力が付加できる高速せん断攪拌装置を用いて分散処理した後、さらにメディア型分散装置で分散処理する工程からなることを特徴とする水性顔料分散組成物の製造方法。
(2)前記分散剤が、界面活性剤、水性樹脂および顔料誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(1)項記載の水性顔料分散組成物の製造方法。
(3)前記高速せん断攪拌装置のロータを、周速15〜25m/secで回転させて分散処理する前記(1)または(2)項記載の水性顔料分散組成物の製造方法。
(4)前記高速せん断攪拌装置のロータの外径と、前記混合物を収納する容器内径との関係において、ロータの外径/容器内径の比が0.1以上である前記(1)〜(3)項のいずれかに記載の水性顔料分散組成物の製造方法。
(5)前記(1)〜(4)項のいずれかに記載の水性顔料分散組成物の製造方法によって得られることを特徴とする水性顔料分散組成物。
(6)前記(5)項記載の水性顔料分散組成物を含有することを特徴とする水性顔料インキ組成物。
【0012】
つぎに本発明の課題が如何にして達成されるかについて説明する。
【0013】
本発明は、水性媒体と有機顔料と分散剤とを含む混合物を分散処理することにより、水性媒体中に有機顔料を分散させて水性顔料分散組成物を製造するものである。
【0014】
まず、従来の顔料分散技術の考え方について説明する。
【0015】
微細な一次粒子が凝集した状態で存在する顔料は、分散が進むにしたがって新たな表面が露出する。そして、その露出した表面に分散剤が速やかに吸着・湿潤しなければ、顔料混合液の流動性が損なわれてしまうが、顔料の分散処理中にそのような状態になると、例えばメディア型分散装置ではロック現象(メディアと顔料混合液とが一体化して流動しない現象)などが発生する。そこで、ある程度の微細な粒子径となるまでゆるやかな力で顔料を分散させ、顔料表面に分散剤を吸着・湿潤させるプレミックス処理を行うことにより、分散装置内で顔料混合液の流動性が維持できて、顔料に十分なせん断応力がかかる方法が利用されている。
【0016】
さらに、後の練肉処理では顔料をより微細に分散させるが、顔料を一次粒子の近くまで分散させるためには、粒子同士の凝集力より大きな応力を付加することが必要である。この様な顔料に応力を付加する装置として、ビーズミルなどに代表されるメディア型分散装置がある。ビーズミルは、球体のメディアをベッセルと呼ばれる筒状の槽内で攪拌させて応力を発生させる機構を有し、プレミックス処理された顔料混合物がベッセル内を通過する間に、メディア同士の衝突やずりによって発生する衝撃力やせん断力を顔料凝集体に付加して分散させるようになっている。しかし、球体のメディアの接触は一点で起こるため、衝突やずりによって発生する応力も接触点の部分が最も強く、その点から離れるにしたがってメディア間の隙間が大きくなり、かかる応力が低下するという機械的特性がある。メディア型分散装置では、メディアの攪拌速度を可変にして応力の調節ができるようになっているが、メディアの接触点でのみ顔料凝集体の凝集力より大きな応力が得られるような設定では、分散効率が極めて悪くなる。そこで、通常、接触点から少し離れた部分でも、顔料を分散させるのに必要な応力がかかるように分散条件が設定されている。
【0017】
最近の水性顔料分散組成物に対する要求性能を満足するためには、より多くの顔料を一次粒子の近くまで分散させることが必要で、それに伴って、ベッセル内を通過する間に、より多くの顔料凝集体が、凝集力より大きな応力を受けることが必要となる。顔料凝集体がメディア間のどの位置で捕捉されるかは確率の問題であるため、顔料凝集体が凝集力より大きな応力のかかる位置で捕捉される確率を高くすること、とりわけ、分散効率を考慮すると、メディアの攪拌速度をより速くして、全体的にメディア間にかかる応力を高くすることが肝要である。しかし、この様な方法で顔料を分散させた場合、今度はメディアの接触点付近での応力が高くなり過ぎて、その位置で捕捉された顔料は過剰分散状態となるため、経時で凝集体を形成して性能を低下させる結果となる。
【0018】
一方、顔料が過剰分散にならない機械的条件で、より多くの顔料を一次粒子の近くまで分散させるには、顔料凝集体のベッセル内での移動速度を遅くするか、あるいは何度も通過させるなどといった、トータル的に高い応力のかかる回数を増加させる方法があるが、この方法では分散効率が低下して、分散装置の動力コストや作業時間などの増大を招く結果となる。
【0019】
次に、本発明による、高い分散効率で、顔料が過分散状態になることなく、一次粒子径に近くまで分散できる方法の考え方について説明する。
【0020】
上記の様に、メディア型分散装置は、顔料に高い応力を付加することが可能で、短時間のうちに微細に分散できるという特徴がある。しかしながら、応力のかかり方が不均一であるため、従来の分散効率を重視した分散方法では、得られる顔料分散物の粒度分布が広く、分散の進んでいない粗大粒子と、過剰に分散した状態の粒子の両方が多く存在し、それが最終組成物における性能の低下につながっていた。
【0021】
一方、他の顔料分散装置として、細いオリフィスやノズルを高圧・高速で通過させ、衝突やせん断力を利用する高圧分散処理装置、ロータの回転により処理物を移送するタイプであって、ロータとステータなどとの間隙を通過させて、処理物に高いせん断応力を付加する高速せん断攪拌装置などが知られている。そして、これらの分散装置では、メディア型分散装置と比較して、顔料に付加できる応力が均一である反面、一般的に高い応力を付加するのが困難である。また、高圧分散処理装置では、低粘度の処理物でなければ利用できず、一方、高速せん断攪拌装置では、ロータの回転によって処理物を吸引し、狭い間隙に導くという装置の構造から、処理液の流動性がより一層良好でなければならないという問題がある。
【0022】
この様に、それぞれ分散装置はそれらの構造に由来する何らかの欠点がある。本発明の課題は、顔料に応力を均一に付加して、粗大粒子や過剰に分散した粒子がない状態で、微粒子化を効率的に行うことを目的とするものであるが、いずれの分散装置を用いても、高いレベルで実現できるものではない。
【0023】
そこで、本発明者らは、上記の目的のかなう顔料分散方法について検討を重ねた結果、まず、高速せん断攪拌装置を用いて、顔料の軟らかい凝集体を微細に分散させた後、残った顔料の硬い凝集体(粗大粒子)を、メディア型分散装置を用いて、微細に分散できる最低限に近い応力がかかる設定で分散させることにより、粗大粒子や過剰に分散した粒子を発生させることなく、最も効率的に顔料を微細に分散できる方法を見出した。しかしながら、有機顔料は水性媒体中では難分散性の顔料であるため、上記の分散方法だけでは、十分な効率化は困難という問題があった。
【0024】
そこで、本発明者らは、さらに分散処方などについても検討した結果、高速せん断攪拌装置による分散処理時に、有機顔料と高比重成分で微粒子である水不溶性または水難溶性の金属化合物を併用することにより、粗大粒子を格段に減少させることに成功し、本発明を完成させたものである。この高比重成分である金属化合物の併用は、高速せん断攪拌装置の処理時に、非常に微細なメディアとして作用し、その摩砕効果により、多くの粗大粒子を分散させる効果につながったものと推察される。
【0025】
このような高速せん断攪拌装置とメディア型分散装置で分散処理を行うと、より少ないエネルギーで、効率よく顔料を一次粒子の近くまで分散でき、さらに過分散状態の顔料が発生しないという、極めて有用な水性顔料分散組成物の製造方法が実現できるものである。
【発明の効果】
【0026】
現在行われている一般的な顔料の分散処理では、目的とする水性顔料分散組成物を得ようとすると、ディスパーなどの攪拌装置で長時間プレミックス処理後、ビーズミルなどで十分に有機顔料に応力がかかるように、例えば、ビーズの攪拌速度を速く、顔料混合物のベッセル内の通過速度を遅く設定して練肉を行い、目的とする水性顔料分散組成物を得ていた。また、機械的な特性から、得られる水性顔料分散組成物は、顔料の粗大粒子を多く含むものとなっていた。
【0027】
しかし、本発明の水性顔料分散組成物の製造方法では、プレミックス処理を行うとしても、ディスパーなどで数分攪拌混合した後、先にハイシアーミキサーなどの高速せん断分散装置で十分な分散処理を行えば、次のビーズミルなどの分散の段階では、分散処理物の吐出量を従来よりもずっと多くして(顔料混合物のベッセル内の通過速度を速くすることで、高速せん断分散装置で分散処理した効果により、プレミックス処理だけより3〜5倍程度まで吐出量を多くすることができる)、目的とする水性顔料分散組成物が得られる。その結果として、従来の製造方法よりも分散処理にかかる時間が短かくなり、トータルでの製造時間の短縮が可能となる。
【0028】
また、ビーズミルは、重量のあるビーズを高速で攪拌する機構であるため、通常、ロータを回転させるタイプの分散装置と比較して多くのエネルギーを必要とする。したがって、ビーズミルによる練肉処理時間の短縮は、トータルでの消費エネルギーの削減にもつながるものである。
【0029】
さらに、本発明の特徴である金属化合物の使用により、高速せん断分散装置での処理において、粗大粒子の数を減少させることができるため、得られる水性顔料分散組成物では、顔料が過分散状態まで顔料を分散させることなく、粗大粒子の数を大幅に減少させることができる。
【0030】
その結果、本発明の製造方法で得られる水性顔料分散組成物は、流動性、着色力に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の水性顔料分散組成物の製造方法について説明する。
【0032】
本発明は、有機顔料、分散剤、金属化合物および水性媒体を含む粘度0.2〜10Pa・sの混合液を、少なくとも一組の高速回転するロータと静止状態のステータとの間隙、または少なくとも一組の高速回転するロータと反対回転するロータとの間隙を通過させ混合物に高いせん断応力が付加できる高速せん断攪拌装置で分散処理した後、さらにメディア型分散装置で分散処理することにより、水性媒体中に有機顔料を分散させる水性顔料分散組成物の製造方法である。
【0033】
ここで本発明の水性顔料分散組成物の製造方法で使用可能な有機顔料としては、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、アゾ系顔料などの有機顔料を挙げることができる。
【0034】
また、本発明の水性顔料分散組成物の製造方法で使用可能な分散剤としては、界面活性剤、水性樹脂、顔料誘導体などが例示できる。
【0035】
界面活性剤としてはアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤またはカチオン性活性剤のいずれも使用できる。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステルなどが例示でき、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコーン系などの非イオン性活性剤が例示でき、カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが例示できる。
【0036】
また、水性樹脂としては、既知の顔料を分散するために利用される、カチオン性基含有またはアニオン性基含有のビニル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系などの水に溶解する樹脂が用いられ、その中でも好ましいのは、アクリル系、スチレン−アクリル系、スチレン−マレイン酸系、スチレン−アクリル−マレイン酸系樹脂のアニオン性基を含有するビニル系樹脂で、さらに好ましくは、芳香環を有する単量体の少なくとも1種を20〜70質量%含有するビニル系樹脂である(なお、アクリル系樹脂とは少なくとも2種のアクリル系単量体を、スチレン−アクリル系樹脂とは少なくとも1種のスチレン系単量体と少なくとも1種のアクリル系単量体を、スチレン−マレイン酸系樹脂とは少なくとも1種のスチレン系単量体と少なくとも1種のマレイン酸系単量体を、そしてスチレン−アクリル−マレイン酸系樹脂とは少なくとも1種のスチレン系単量体、少なくとも1種のマレイン酸系単量体および少なくとも1種のアクリル系単量体を共重合成分とする共重合体樹脂である)。
【0037】
例えば、この様なアニオン性基を含有するビニル系樹脂で使用できるアクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、および、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレートなどの芳香族環を含む(メタ)アクリル酸エステル化合物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物が利用できる。使用できるスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンとそれらの誘導体が利用できる。使用できるマレイン酸系単量体としては、(無水)マレイン酸、および、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノヘキシル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノ2−エチルヘキシル、マレイン酸モノラウリル、マレイン酸モノステアリルなどのマレイン酸モノアルキルエステルが利用でき、さらに、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸ジアルキルエステル化合物も利用できる。また、これらの共重合体樹脂は、必要に応じて、(メタ)アクリルアミド、クロトン酸とそのエステル化合物、イタコン酸とそのエステル化合物、シトラコン酸とそのエステル化合物、アクリロニトリル、オレフィン化合物などの他の共重合可能な単量体を共重合成分としてもよい。
【0038】
そして、アニオン性基含有樹脂を水に溶解させる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基性化合物や、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、N、N−ジメチルエタノールアミン、N、N−ジエチルエタノールアミン、N、N−ジブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンのような有機塩基性化合物などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。カチオン性基含有樹脂を水に溶解させる酸性化合物としては、塩酸、硫酸、燐酸、硝酸などの無機酸類、蟻酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸などの有機酸類などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
さらに、顔料誘導体としては、例えば、有機顔料に発煙硫酸、濃硫酸などのスルホン化剤を作用させてスルホン酸基を導入したもの、有機顔料に三酸化硫黄ガスを用いて気相−固相状態でスルホン酸基を導入したものなどが挙げられ、具体的には、アントラキノン、キナクリドン、ジケトピロロピロール、銅フタロシアニン、イソインドリノンなどの顔料骨格にスルホン酸基を導入した化合物などが挙げられる。
【0040】
本発明の水性顔料分散組成物の製造方法で使用される金属化合物としては、水に不溶性または難溶性で、水性媒体中でほとんどが不溶成分として存在するものが好適である。このような金属化合物としては、硫酸バリウムなどの金属塩、酸化亜鉛などの金属酸化物などが例示できる。これら金属化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。そして、金属化合物の比重は3〜6で、平均一次粒子径は0.05μm〜1μであり、好ましくは0.06〜0.1μmである。使用する金属化合物の比重が3より小さいと本発明の効果がえられず、6より大きいと水性媒体中で分散できずに沈降するといった問題が発生する。また、同様に金属化合物の平均一次粒子径が前記範囲より小さいと本発明の効果がえられず、前記範囲より大きいと沈降の問題が発生する。
【0041】
本発明の水性顔料分散組成物の製造方法で使用される水性媒体としては、水、または水と水混和性有機溶剤との混合物が使用できる。
【0042】
水混和性有機溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコールなどの低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、エチレングリコーモノメチルエーテル、エチレングリコーモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールのものアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテートなどの(ポリ)アルキレングリコ−ルのモノ脂肪酸エステル類などが挙げられる。これら水混和性有機溶剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0043】
以上の材料を混合して得られる混合物における各材料の組成として、有機顔料は概ね混合物100質量部中に1〜45質量部程度であるのが好ましく、より好ましくは10〜40質量部程度である。また、分散剤の使用量は、顔料100質量部に対して2〜25質量部程度であることが好ましい。さらに、金属化合物の含有量は、有機顔料100質量部に対して、2〜20質量部、好ましくは3〜10質量部、より好ましくは5〜10質量部となるように加えられる。金属化合物の含有量が前記範囲より少ないと、高速せん断攪拌装置による分散処理が終了しても粗大粒子が残る傾向があり、その後に行われるメディア装置による分散処理の前記の問題点の解消が困難となる。一方、金属化合物の含有量を前記範囲より多くしても、分散効果はそれ以上良好にならない。
【0044】
上記のような組成で水性媒体中に各材料が添加混合され、ほぼ均一に混合された状態において、混合液の調整時の温度下で0.2〜10Pa・sとなるように混合液の粘度が調整される。混合液の粘度が上記の範囲より低い場合は、分散処理において十分な分散応力がかからず、顔料を十分に分散させることができない傾向がある。一方、上記の範囲より高い場合は、混合物の流動性が低下して、分散処理が困難になる傾向があり、好ましくない。なお、前記混合物の調製は、プロペラタイプ、パドルタイプ、タービンタイプなどのロータを有する装置を利用して、3〜30分間程度攪拌・混合して行うことが好ましい。
【0045】
本発明の水性顔料分散組成物の製造方法で使用される高速せん断攪拌装置としては、少なくとも一組の高速回転するロータと静止状態のステータとの間隙、または、少なくとも一組の高速回転するロータと通常反対方向に回転するロータとの間隙を通過させ、混合液に高いせん断応力が付加できる装置が利用できる。
【0046】
この様な装置の代表的なものとしては、例えば、ハイシアーミキサーBX、CX、DX、EX、FX、GX10、GX20、700X、HX10、HX30、JX、KX(以上シルバーソン社製)、ハイシアーミキサーIKA2000シリーズ(IKA社製)、T.K.ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)、ウルトラホモミキサー(みずほ工業(株)製)、クレアミックス(エム・テクニック社製)、キャビトロン(太平洋機工(株)製)などが挙げられる。なかでも、特にロータとステータを有するハイシアーミキサーやそれに類似する構造のものが好ましい。
【0047】
図面に基づいて本発明で使用する高速せん断攪拌装置を説明する。図1は高速せん断攪拌装置の一実施例を示す概略説明図であり、図2はその要部拡大図である。図1〜2に示される高速せん断攪拌装置はロータとステータを有するハイシアーミキサーの一例である。このハイシアーミキサーでは、ロータとステータとから構成される分散部1が容器10に収容された分散処理に付される混合物11中に浸漬されるように構成されている。ロータ2は原動機3の回転軸4に取り付けられ、高速回転するように構成されている。5は固定されたステータであり、ステータ5には多数の孔6が設けられている。12は分散部1を支持するための支持具である。ステータ5内におけるロータ2の高速回転により、容器10の底部の混合物11は分散部1内に引き込まれる。分散部1に引き込まれた混合物11はロータの生み出す遠心力によって、ステータ5の方向に振り出され、そのときロータ2のブレード部とステータの内壁との間隙で高いせん断応力を受ける。高速で高いせん断応力を加えられた混合物はステータ5に設けられた孔6から外側に押し出される。分散部1の外側に押し出された混合物は、容器10の内壁に沿って循環し、同時に新しい材料が分散部1の下側から連続的に供給されてこの作業が繰り返される。
【0048】
そして、ロータの回転速度は、動力装置やロータとステータとの間隙(通常0.1〜1mm程度)、ロータ径などの機械的条件の他、分散させる材料の粘度、投入電力量などに依存するが、本発明においては、ロータの周速を15m/sec以上で回転させることが可能なタイプのものから選択することが好ましく、さらにロータの周速が速くなればなるほど高いせん断応力を付加できるという点から有利である。なお、顔料の分散処理の効率の面から、概ね、周速としては15〜25m/sec程度で処理を行うことが好ましい。さらに、容器内の混合物が全体として均一に分散処理を受けやすくするため、ロータと混合物を収納する容器との関係において、ロータの外径/容器内径の比が0.1以上であるのが好ましい。ロータの外径/容器内径の比が前記範囲より小さいと、混合物の循環が悪くなる場所が発生し、顔料分散が低下する傾向がある。ロータの外径/容器内径の比の上限値は特に限定されないが、装置の操作性の点からは、ロータの外径/容器内径の比の上限値は0.4程度である。
【0049】
本発明の高速せん断攪拌装置を用いて行う分散処理は、終点(それ以上分散処理を行っても分散がほとんど進行しないところまで達した状態)まで分散処理を行うことが好ましい(高速せん断攪拌装置の処理能力、分散処理量などにより終点までの時間は異なる)。
【0050】
本発明の水性顔料分散組成物の製造方法で使用されるメディア型分散装置としては、通常、利用されるパールミル、ダイノミルなどのビーズミル型分散装置、アトライター、ボールミルなどのメディア型分散装置が挙げられる。使用するメディアも特に制限されず、通常のものがいずれも使用可能であり、たとえば、ジルコニアビーズ、磁性ビーズ、ガラスビーズ、ステンレス製ビーズなどの材質のもので、大きさが0.1〜3mm程度のものが挙げられる。
【0051】
このようなメディア型分散装置では、従来のプレミックス処理を行った場合、残存する顔料の粗大粒子を分散させるために、より高い応力がかかる条件で練肉処理を行なう必要があった。例えば、ビーズミル型分散装置では、メディアの攪拌速度を高くしたり、プレミックス処理物のベッセル内の通過速度を遅く設定したりする必要があった。しかしながら、本発明に係る上記の高速せん断攪拌装置で分散処理を行った場合は、メディア型分散装置において、従来よりも低い応力の発生する条件、あるいは混合物が速い速度でベッセル内を通過する条件での練肉処理においても、良好な顔料分散組成物が得られるものである。そこで、メディアの攪拌速度や混合物のベッセル内通過時間などについては、有機顔料の過剰に分散された状態を発生させないという条件を第一義として、それぞれ利用する材料、高速せん断攪拌装置での処理条件などを加味して、適宜、最良の条件となるように設定することが好ましい。
【0052】
本発明の水性顔料分散組成物の製造方法によれば、得られる有機顔料分散体の粒子径は特に制限されないが、平均一次粒子径が1μm以下である有機顔料分散体を得る際に好適に適用される。
【0053】
最後に本発明の水性顔料分散組成物の用途について説明する。本発明の水性顔料分散組成物は、用途に応じて、さらに各種樹脂、水性媒体や、ブロッキング防止剤、湿潤剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、一般の界面活性剤などの種々の添加剤を適宜加えて、例えば、フレキソ印刷インキ、水性グラビアインキ、水性塗料、水性インクッジェト用インクなどに使用できるものである。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、表1における各材料の使用比率は、「質量%」を表す。
【0055】
[水性樹脂ワニス1の調製]
分散剤として酸価210、質量平均分子量16,000のスチレン−アクリル酸共重合体25質量部を、当該共重合体全量を中和するのに必要な量の塩基性化合物(アンモニア/ジメチルエタノールアミン=9/1(当量比))を含む水75質量部中に加熱溶解させて水性樹脂ワニス1(前記共重合体濃度:25質量%)を得た。
【0056】
実施例1〜4
表1に示した配合組成の混合物をディスパーで5分攪拌した後、下記の条件の高速せん断攪拌装置で分散処理し、次いで練肉用のメディア型分散装置を用いて分散処理を行い、さらに残余の成分を添加して実施例1〜4の水性顔料分散組成物を得た。ディスパーで攪拌後の混合物についておよび最終の水性顔料分散組成物について粘度を(株)トキメック製B型粘度計(25℃、60rpm)で測定した。
【0057】
<高速せん断攪拌装置>
機種 : ハイシアーミキサーEXタイプ(シルバーソン社製)
モーター容量 : 4kw
回転数 : 3600rpm
ロータ周速 : 19.14m/sec
容器内径 : 600mm
ロータ外径 : 101.16mm
評価スケール : 200kg
処理時間 : 60分
【0058】
<練肉用メディア分散装置>
機種 : ビーズミル
メディア材質 : ジルコニアビーズ
メディア径 : 1.0mm
ベッセル容量 : 15リットル
吐出量 : 200kg/hr
【0059】
比較例1〜2
表1に示した配合組成の混合物をディスパーで60分攪拌した後、下記の条件の練肉用メディア分散装置を用いて分散処理を行い、さらに残余の成分を添加して比較例1および2の水性顔料分散組成物を得た(従来行われている分散処理)。得られた水性顔料分散組成物について粘度をB型粘度計で測定した。
【0060】
<練肉用メディア分散装置>
機種 : ビーズミル
メディア材質 : ジルコニアビーズ
メディア径 : 1.0mm
ベッセル容量 : 15リットル
吐出量 : 100kg/hr
【0061】
比較例3〜6
表1に示した配合組成の混合物をディスパーで5分攪拌した後、下記の条件の高速せん断攪拌装置のみで分散処理を行い、さらに残余の成分を添加して比較例3〜6の水性顔料分散組成物を得た。ディスパーで攪拌後の混合物についておよび最終の水性顔料分散組成物について粘度をB型粘度計で測定した。
【0062】
<高速せん断攪拌装置>
機種 : ハイシアーミキサーEXタイプ(シルバーソン社製)
モーター容量 : 4kw
回転数 : 3600rpm
周速 : 19.14m/sec
容器内径 : 600mm
ロータ外径 : 101.16mm
評価スケール : 100kg
処理時間 : 90分
【0063】
高速せん断攪拌装置のみで分散処理を行う比較例3〜6においては、60分で分散が終了に近い状態になり、それ以上分散処理を行ってもほとんど分散は進まなかったが、念のため90分間分散処理したものについて性能評価した。
【0064】
前記実施例1〜4および比較例1〜6の水性顔料分散組成物の製造について、下記の項目を評価した。結果を表1および図3〜4に示す。
【0065】
[製造時間]
表1に示すように、本発明の製造方法では、比較例1、2で挙げた従来技術に比べて短い製造時間で、高い性能を有する水性顔料分散組成物を得ることが可能となった。
【0066】
[粒径分布]
実施例2および比較例2で得られた水性顔料分散組成物について、光散乱による粒度分布計(MICROTRAC UPA:MODEL9340、UPA日機装(株)製)を用いて、粒径分布を測定した。結果を図3(実施例2)および図4(比較例2)に示す。
【0067】
図3と図4の対比から明らかなように、微細な金属化合物を使用する高速せん断攪拌装置とメディア型分散装置を併用する実施例2では、粗大粒子の含有量が低減されているのに対して、高速せん断攪拌装置のみを使用しメディア型分散装置を併用しない比較例2では粗大粒子の含有量が多い。
【0068】
[着色力]
着色力評価用白色水性顔料分散組成物として、酸化チタンの30質量部と水性バインダー樹脂1の6質量部とを攪拌混合してビーズミル分散装置で練肉した後、さらに水性バインダー樹脂1および水の合計64質量部で、系の粘度が0.5Pa・sとなるように希釈して白色水性顔料分散組成物を得た。
【0069】
比較例1の水性顔料分散組成物10質量部を前記着色力評価用白色水性顔料分散組成物100質量部で希釈した時の色濃度と同一になるまで、実施例1、比較例3、5の各水性顔料分散組成物10部を希釈するのに要した白色水性顔料分散組成物の量(質量部)により、着色力を評価した。
【0070】
また、比較例2の水性顔料分散組成物10質量部に着色力評価用白色水性顔料分散組成物100質量部で希釈した時の色濃度と同一になるまで実施例2〜4、比較例4、6の各水性顔料分散組成物10部を希釈するのに要した白色水性顔料分散組成物の量(質量部)により、着色力を評価した。
【0071】
なお、同一の色濃度となるまでに、より多くの白色水性顔料分散組成物での希釈を必要とするものを、着色力が高いと判定する。
【0072】
[流動性]
実施例1〜4、比較例1〜6の水性顔料分散組成物について、水性顔料分散組成物の初期粘度と、40℃で7日間保存後の粘度の比率から粘度安定性を評価した。
A:粘度比が2.0以下のもの
B:粘度比が2.0を超えるもの
【0073】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の水性顔料分散組成物の製造方法で使用する高速せん断攪拌装置の一実施例を示す概略説明図である。
【図2】図1に示す高速せん断攪拌装置の要部拡大図である。
【図3】本明細書の実施例2で得られた水性顔料分散組成物の粒径分布を示すグラフである。
【図4】本明細書の比較例2で得られた水性顔料分散組成物の粒径分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 分散部
2 ロータ
3 原動機
4 回転軸
5 ステータ
6 孔
10 容器
11 混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体と有機顔料と分散剤とを含む混合物を分散処理することにより、水性媒体中に有機顔料を分散させる水性顔料分散組成物の製造方法において、前記混合物は、さらに有機顔料100質量部に対して、平均一次粒子径0.05〜1μm、比重3〜6の水不溶性または水難溶性の金属化合物を2〜20質量部の割合で含み、粘度が0.2〜10Pa・sの混合液であり、前記分散処理は、少なくとも一組のロータとステータ、または少なくとも一組のロータとロータとの間隙を高速で通過させ、混合物に高いせん断応力が付加できる高速せん断攪拌装置を用いて分散処理した後、さらにメディア型分散装置で分散処理する工程からなることを特徴とする水性顔料分散組成物の製造方法。
【請求項2】
前記分散剤が、界面活性剤、水性樹脂および顔料誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の水性顔料分散組成物の製造方法。
【請求項3】
前記高速せん断攪拌装置のロータを、周速15〜25m/secで回転させて分散処理する請求項1または2に記載の水性顔料分散組成物の製造方法。
【請求項4】
前記高速せん断攪拌装置のロータの外径と、前記混合物を収納する容器内径との関係として、ロータの外径/容器内径の比が0.1以上である請求項1〜3のいずれかに記載の水性顔料分散組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の水性顔料分散組成物の製造方法によって得られることを特徴とする水性顔料分散組成物。
【請求項6】
請求項5記載の水性顔料分散組成物を含有することを特徴とする水性顔料インキ組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−36857(P2006−36857A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216283(P2004−216283)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000105947)サカタインクス株式会社 (123)
【Fターム(参考)】