説明

水栓装置

【課題】使用者に違和感を与えることなく吐水条件を自動的に変更することができる水栓装置を提供する。
【解決手段】本発明は、複数の吐水形態を切替えることができる水栓装置であって、吐水部と、選択されている吐水形態を検出する吐水形態検出手段(14)と、吐水形態に対応した吐水条件を記憶した記憶手段(22a)と、各吐水形態における吐水条件を変更するための単一の操作部(8、10)と、吐水条件に応じた吐水を形成する吐水条件形成手段(16)と、吐水形態、記憶吐水条件、及び操作部の操作に基づいて吐水させる制御手段(22)と、を有し、制御手段は、吐水形態が切替られたとき、吐水条件形成手段を制御して、切替後の吐水形態について記憶手段に記憶されている記憶吐水条件の吐水に変更するが、所定の場合には切替前の吐水条件を維持することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水栓装置に関し、特に、複数の吐水形態を切替えて吐水することが可能であり、所定の吐水条件を設定することができる水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第2623545号公報(特許文献1)には、給湯装置が記載されている。この給湯装置は、給湯温度を調節する温度調節手段と、この温度調節手段で調節された給湯温度範囲の異なる湯を供給する複数の給湯口と、これら複数の給湯口を切替える切替弁と、給湯口の選択を行なう給湯口設定部と、温度調節手段の給湯温度の設定変更を行なう給湯温度変更部と、給湯開始時の給湯温度を給湯口ごとに定めた異なる給湯温度範囲内の所定温度に設定する給湯温度予設定部と、給湯口設定部の設定に従って切替弁と温度調節手段を制御し給湯温度を選択された給湯口に対応した給湯温度予設定部の所定温度に制御し、給湯温度変更部の設定変更に従って温度調節手段を制御し給湯温度を選択された給湯口の給湯温度範囲内で変更する制御器を備えている。
【0003】
この給湯装置では、給湯開始時の給湯温度を給湯口ごとに定めておき、選択された給湯口に対応した所定温度に制御された湯が、選択された給湯口から吐出されるので、各給湯口において想定される使用に適した温度の湯を自動的に供給することができる。
【0004】
【特許文献1】特許第2623545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許第2623545号公報に記載された給湯装置においても、所定の場合には、使用者の期待とは異なる温度の湯が吐出され、使用者に違和感を与える場合があるという問題がある。例えば、浴室でシャワーを浴びている使用者が、給湯器はシャワーヘッドから吐出されている湯水の温度に設定されていると信じて湯水の吐出先を浴槽の給湯口に切替えた場合、高温に設定されていた浴槽の給湯口から突然高温の湯が吐出されると使用者に不快感を与えることになる。
【0006】
また、特許第2623545号公報に記載された給湯装置においては、自動的に温度設定が変更されるのは、吐水形態として給湯口を切替えた場合のみであり、十分に使い勝手が良いものではない。
さらに、特許第2623545号公報に記載された給湯装置においては、自動的に変更される吐水条件は吐水温度のみであり、十分に使い勝手が良いものではない。
【0007】
従って、本発明は、様々な使用場面において、使用者に違和感を与えることなく吐水条件を自動的に変更することができる水栓装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、複数の吐水形態を切替えて吐水することが可能であり、所定の吐水条件を設定することができる水栓装置であって、吐水口を備えた吐水部と、複数の吐水形態のうちのどの吐水形態が選択されているかを検出する吐水形態検出手段と、複数の吐水形態に対応した複数の吐水条件を記憶した記憶手段と、各吐水形態における吐水条件を変更するための単一の操作部と、吐水条件に応じた吐水を形成する吐水条件形成手段と、吐水形態検出手段によって検出された吐水形態、記憶手段に記憶された記憶吐水条件、及び操作部の操作に基づいて、吐水条件形成手段を制御して吐水させる制御手段と、を有し、制御手段は、吐水形態が切替られたとき、吐水条件形成手段を制御して、切替後の吐水形態について記憶手段に記憶されている記憶吐水条件の吐水に変更するが、所定の場合には切替前の吐水条件を維持することを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、吐水形態検出手段が複数の吐水形態のうちのどの吐水形態が選択されているかを検出する。記憶手段には、複数の吐水形態に対応した複数の吐水条件が記憶されており、各吐水形態における吐水条件は、操作部により変更される。制御手段は、吐水形態が切替られたとき、吐水条件形成手段を制御して、切替後の吐水形態について記憶手段に記憶されている記憶吐水条件の吐水に変更するが、所定の場合には切替前の吐水条件を維持する。
【0010】
このように構成された本発明によれば、吐水形態が切替えられたとき、切替前の吐水条件が、自動的に、切替え後の吐水形態について記憶手段に記憶されている吐水条件に変更されるため、吐水形態を切替える毎に吐水条件を設定する必要がないので使い勝手を向上させることができる。加えて、所定の場合には切替前の吐水条件が維持されるので、吐水条件が自動的に変更されることにより使用者が戸惑うのを防止することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、記憶吐水条件の少なくとも一部は、操作部の操作により変更される可変吐水条件である。
このように構成された本発明によれば、記憶吐水条件を操作部の操作により変更することができるので、各吐水形態に応じた吐水条件を使用者の好みに応じて設定することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、記憶吐水条件の少なくとも一部は、予め設定され、固定された固定吐水条件であり、操作部による操作は、固定吐水条件が設定された吐水形態に対しては、吐水中の吐水条件のみを変更する。
このように構成された本発明によれば、記憶吐水条件が固定されているので、水栓装置が公共の場に設置された場合等の悪戯を防止することができると共に、使用者が固定された吐水条件を変更したい場合には、吐水中に操作部を操作することにより好みに応じて吐水条件を変更することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、吐水条件は吐水温度を含んでおり、制御手段は、吐水形態の切替前の吐水温度が、切替後の吐水形態に対応した記憶吐水条件である吐水温度よりも低い場合には、切替前の吐水温度を維持する。
【0014】
このように構成された本発明によれば、吐水条件の自動的な変更により吐水温度が上昇することがないので、不必要な高温で吐水が行われることが無く、エネルギーの無駄を省くことができると共に、不意に高温の吐水が行われる不都合を回避することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、吐水条件は吐水流量を含んでおり、制御手段は、吐水形態の切替前の吐水流量が、切替後の吐水形態に対応した記憶吐水条件である吐水流量よりも少ない場合には、切替前の吐水流量を維持する。
【0016】
このように構成された本発明によれば、吐水条件の自動的な変更により吐水流量が増加することがないので、不必要な大流量で吐水が行われることが無く、節水することができると共に、不意の大流量吐水が行われることによる水跳ねを防止することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、制御手段は、吐水形態の切替が吐水中に行われた場合には、切替前の吐水条件を維持する。
このように構成された本発明によれば、吐水中の吐水形態の切替えにより、吐水条件が自動的に変更されることがないので、吐水中の吐水条件のまま吐水形態を切替えようとする使用者の意図を裏切ることがなく、使い勝手を向上させることができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、吐水条件は吐水温度及び吐水流量を含んでおり、制御手段は、吐水形態の切替が吐水中に行われた場合、吐水流量は切替後の吐水形態に対応した記憶吐水条件である吐水流量に変更し、吐水温度は切替前の吐水温度を維持する。
【0019】
このように構成された本発明によれば、使用者が視覚的に認識できない吐水温度が、吐水中に自動的に変更されることがないので、使用者は自動変更を確実に認識することができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、制御手段は、操作部が操作されている間に吐水形態が切替られた場合には、切替前の吐水条件を維持する。
このように構成された本発明によれば、操作部の操作中に吐水条件が自動的に変更されることがないので、使用者が吐水条件を調整している間に吐水条件が自動的に変更されることがなく、使い勝手を向上させることができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、吐水部は、吐水口の位置を変更できるように可動に構成され、吐水形態の切替は、吐水口の位置の変更である。
このように構成された本発明によれば、吐水口の位置に応じた適正な吐水条件に自動的に変更することができる。
【0022】
本発明において、好ましくは、吐水部はシャワーヘッド及びカランであり、吐水形態の切替は、シャワーヘッドからの吐水とカランからの吐水の切替である。
このように構成された本発明によれば、シャワーヘッド及びカランの通常の用途に応じた適切な吐水条件に自動的に変更することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の水栓装置によれば、様々な使用場面において、使用者に違和感を与えることなく吐水条件を自動的に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
まず、図1乃至図10を参照して、本発明の第1実施形態による水栓装置を説明する。図1及び図2は、本実施形態による水栓装置全体を示す斜視図であり、図1は吐水ヘッドを水栓本体に装着した状態を示し、図2は吐水ヘッドを水栓本体から引き出した状態を示す。図3は、本実施形態による水栓装置の構成を示すブロック図である。さらに、図4は本実施形態の水栓装置の作用を示すタイムチャートであり、図5乃至10は水栓装置の作用を示す制御のフローチャートである。
【0025】
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態による水栓装置1は、吐水口2aが設けられた吐水部である吐水ヘッド2と、洗面ボウル4に取り付けられた水栓本体6と、洗面ボウル4に配置された操作部である流調操作部8及び温調操作部10と、洗面ボウル4の下側に配置された水栓装置機能部12(図3)と、を有する。
【0026】
本実施形態による水栓装置1は、流調操作部8及び温調操作部10を操作することにより、水栓装置機能部12に電気信号が送られ、各機能を実行することができる。即ち、水栓装置1は、流調操作部8を押圧操作することにより吐水ヘッド2の吐水口2aからの吐水、止水の切り換えを行うことができ、流調操作部8を回転操作することにより吐水流量の調整を行うことができる。また、水栓装置1は、温調操作部10を回転操作することにより、吐水温度の調整を行うことができるように構成されている。
【0027】
流調操作部8及び温調操作部10の内部には、表示手段であるLED(図示せず)が内蔵されており、このLEDからの照射光により各操作部の周りに概ね扇形の光照射部8a、10aが形成される。各光照射部の扇形の中心角は、設定流量及び設定温度に応じて夫々大きくなるように構成されており、使用者は、各光照射部の形状により、設定流量、設定温度を視覚的に認識できるようになっている。
【0028】
また、図2に示すように、吐水ヘッド2は、水栓本体6から外して引き出し、吐水口2aの位置を変更できるように構成されている。これにより、吐水ヘッド2をシャワーホース2bに接続されたシャワーヘッドのように使用することができる。さらに、水栓本体6には、吐水ヘッド2との接続部に吐水形態検出手段である着脱センサ14が設けられている。この着脱センサ14により、吐水形態の切替え、即ち、吐水ヘッド2が水栓本体6に装着されて使用されているか、或いは、吐水ヘッド2が水栓本体6から外されて使用されているかを検出することができる。なお、本実施形態においては、着脱センサ14として、ホール素子が使用されている。このホール素子が吐水ヘッド2に取り付けられた磁石(図示せず)の磁気を検出することにより、複数の吐水形態のうちどの吐水形態が選択されているか、即ち、吐水ヘッド2の着脱を検出することができる。
【0029】
さらに、水栓装置1の吐水条件の1つである吐出流量は、吐水ヘッド2の着脱に関わらず流調操作部8により調整されるので、流調操作部8は各吐水形態における吐水条件を変更する単一の操作部である。また、水栓装置1のもう1つの吐水条件である吐出温度は、吐水ヘッド2の着脱に関わらず温調操作部10により調整されるので、温調操作部10は各吐水形態における吐水条件を変更する単一の操作部である。
【0030】
図3に示すように、水栓装置機能部12は、給湯管16a及び給水管16bに接続された温調バルブ16と、この温調バルブ16の下流側に接続された流量調整弁18と、この流量調整弁18の下流側に接続された電磁弁20と、温調バルブ16、流量調整弁18及び電磁弁20を制御する制御手段であるコントローラ22と、を有する。温調バルブ16の出口管路には流量調整弁18が接続され、流量調整弁18の出口管路には電磁弁20が接続され、電磁弁20の出口管路にはシャワーホース2b(図2)を介して吐水ヘッド2が接続されている。この構成により、電磁弁20が開放されると、温調バルブ16から流出した湯水は流量調整弁18を通って電磁弁20に流入し、吐水ヘッド2の吐水口2aから吐出される。
【0031】
なお、本実施形態においては、吐水条件である湯水の吐出流量及び吐出温度は、夫々流量調整弁18及び温調バルブ16により調整されるので、流量調整弁18及び温調バルブ16は夫々、吐水条件に応じた吐水を形成する吐水条件形成手段として機能する。
【0032】
温調バルブ16は、温度設定に従って、給湯管16aから流入した湯、及び給水管16bから流入した水を混合して流出させるように構成されている。本実施形態においては、温調バルブ16として、主弁体を形状記憶合金バネ及びバイアスバネの付勢力により駆動して温度を調整するタイプのサーモバルブが使用されている。また、温調バルブ16から吐出される湯水の設定温度は、温調バルブ16に連結されたモータ16cを駆動することにより変更することができる。
【0033】
コントローラ22は、流調操作部8及び温調操作部10から入力された電気信号に基づいて、電磁弁20、温調バルブ16及び流量調整弁18に信号を送って、これらを制御するように構成されている。具体的には、コントローラ22は、各操作部からの信号を入力するための入力インターフェイス、制御プログラム、記憶吐水条件である各吐水形態における設定温度、設定流量を記憶する記憶手段であるメモリ22a、プログラムを実行するマイクロプロセッサ、電磁弁及び温調バルブを駆動するための出力インターフェイス等から構成される(メモリ22aのみ図示)。コントローラ22による制御の詳細は、後述する。
【0034】
次に、図4乃至図10を参照して、本発明の第1実施形態による水栓装置1の作用を説明する。
図4は、吐水ヘッド2からの吐水流量を上段に、吐水温度を中段に、吐水形態の切替えである吐水ヘッド2の着脱を下段に示したタイムチャートである。図5は、水栓装置機能部12に内蔵されたコントローラ22による制御のフローチャートである。図6乃至10は、図5のフローチャートから呼び出されるサブルーチンのフローチャートである。
【0035】
まず、図5のステップS1において電源が投入されると、ステップS2において、電磁弁20がOFF、即ち閉鎖される。さらに、ステップS3においては、各変数、フラグの初期値が設定される。即ち、吐止水モードフラグFpmの値を止水状態を表す0に、流調操作部操作状態フラグFkrqの値を非操作中を表す0に、温調操作部操作状態フラグFkrtの値を非操作中を表す0に、直前吐水形態フラグFtkpの値を吐水ヘッド2の装着状態を表す0に、夫々設定する。さらに、吐出流量目標値Qm及び吐水ヘッド2の装着状態における可変記憶吐出流量Qm(0)を夫々3L/minに、吐水ヘッド2の引き出し状態における可変記憶吐出流量Qm(1)を5L/minに設定する。また、吐出温度目標値tm及び吐水ヘッド2の装着状態における可変記憶吐出温度tm(0)を夫々38゜Cに、吐水ヘッド2の引き出し状態における可変記憶吐出温度tm(1)を20゜Cに設定する。さらに、吐水ヘッド2の装着状態における吐出流量上限値QL(0)を10L/minに、吐水ヘッド2の引き出し状態における吐出流量上限値QL(1)を6L/minに設定する。また、吐水ヘッド2の装着状態における吐出温度上限値tL(0)を60゜Cに、吐水ヘッド2の引き出し状態における吐出温度上限値tL(1)を40゜Cに設定する。さらに、流調操作部操作中判定用タイマーTkrq及び温調操作部操作中判定用タイマーTkrtの値を0にリセットする。
【0036】
なお、本実施形態における可変記憶吐出流量及び可変記憶吐出温度は、ステップS3において設定された後、流調操作部8及び温調操作部10の操作により夫々変更される可変吐水条件である。
【0037】
続くステップS4以下、水栓装置1の電源投入後、流調操作部8が押圧操作されて吐水が開始されるまでの止水状態においては、図5のステップS4→S5→S6→S13→S14→S4の処理が繰り返される。この処理の中のステップS13においては、図8に示す吐水条件変更サブルーチンが呼び出される。
【0038】
まず、図8のステップS301においては、現在の吐水形態に対応した可変記憶吐出温度tm(Ftk)と、直前の吐水形態の切替え前の吐水形態に対応した可変記憶吐出温度tm(Ftkp)が比較され、tm(Ftk)がtm(Ftkp)よりも小さい場合にはステップS302に進み、tm(Ftk)がtm(Ftkp)以上の場合にはステップS303に進む。なお、現在の吐水形態を表す吐水形態フラグFtkは、後述するように、図6に示すフローチャートにおいて設定された値である。
【0039】
次に、ステップS304においては、現在の吐水形態に対応した可変記憶吐出流量Qm(Ftk)と、直前の吐水形態の切替え前の吐水形態に対応した可変記憶吐出流量Qm(Ftkp)が比較され、Qm(Ftk)がQm(Ftkp)よりも小さい場合にはステップS305に進み、Qm(Ftk)がQm(Ftkp)以上の場合にはステップS306に進む。
【0040】
上述したように、時刻t0においては、吐水形態フラグFtk、直前吐水形態フラグFtkpとも0に設定されているため、Qm(Ftk)=Qm(Ftkp)となり、ステップS306に進む。ステップS306においては、吐出流量目標値Qmの値が、吐水ヘッド2が水栓本体6に装着された吐水形態に対応した可変記憶吐出流量Qm(0)の値に設定される。電源投入直後においては、この値は、図5のステップS3において設定された3L/minである。
【0041】
一方、止水状態において、流調操作部8が押圧操作されると、コントローラ22における処理はステップS14からステップS15に移行し、ステップS15→S16→S17の処理が実行されて吐水状態となる。以後、吐水状態において流調操作部8が押圧操作されるまでは、ステップS4→S5→S6→S7→S8→S9→S10→S4の処理が繰り返される。吐水状態において流調操作部8が押圧操作されると、コントローラ22における処理はステップS10からステップS11に移行し、ステップS11→S12の処理が実行されて再び止水状態となる。
【0042】
なお、図5のステップS4においては、図6に示す吐水目標設定サブルーチンが実行され、ステップS5においては図7に示す設定手段操作確認サブルーチンが実行され、ステップS7、S13においては図8に示す吐水条件変更サブルーチンが実行され、ステップS8においては図9に示す流量温度調整サブルーチンが実行される。
【0043】
図4に示すタイムチャートの時刻t0において、流調操作部8が押圧操作されると、上述したように、コントローラ22における処理は、図5のステップS14からステップS15に移行し、ステップS15においては、図10に示す吐水状態記憶サブルーチンが呼び出される。
【0044】
図10のステップS501においては、図8のステップS306において設定された吐出流量目標値Qmの値が、吐水ヘッド2が水栓本体6に装着された吐水形態に対応した可変記憶吐出流量Qm(0)の値に設定される。即ち、吐出流量目標値Qmの値である3L/minが、吐水ヘッド2が水栓本体6に装着された吐水形態に対応した可変記憶吐出流量としてメモリ22aに記憶される。
【0045】
次いで、ステップS502においては、図8のステップS303において設定された吐出温度目標値tmの値が、吐水ヘッド2が水栓本体6に装着された吐水形態に対応した可変記憶吐出流量tm(0)の値に設定される。即ち、吐出流量目標値tmの値である38゜Cが、吐水ヘッド2が水栓本体6に装着された吐水形態に対応した可変記憶吐出温度としてメモリ22aに記憶される。
【0046】
さらに、ステップS503においては、吐水形態フラグFtkの値である、吐水ヘッド2が水栓本体6に装着された吐水形態を表す0が、直前吐水形態フラグFtkpの値に代入され、図10に示すサブルーチンの処理を終了する。
【0047】
次に、図5のステップS16においては、吐止水モードフラグFpmの値が、吐水状態を表す値1にセットされる。さらに、ステップS17においては、コントローラ22は、電磁弁20に信号を送り、これを開放させる。これにより、図4の時刻t0において、吐水が開始される。
【0048】
次いで、コントローラ22における処理は、ステップS4に戻り、図6のサブルーチンが実行される。
まず、図6のステップS101においては、選択されている吐水形態が判定される。即ち、コントローラ22は、着脱センサ14から送られた信号に基づいて、吐水ヘッド2が水栓本体6に装着されているか否かを判定する。吐水ヘッド2が水栓本体6に装着されている場合には、ステップS103に進み、吐水形態フラグFtkの値が装着状態を表す0にされ、吐水ヘッド2が水栓本体6から引き出されている場合には、ステップS102に進み、吐水形態フラグFtkの値が引き出し状態を表す1にされる。
【0049】
図4の時刻t0においては、吐水ヘッド2は水栓本体6に装着されているため、ステップS103において吐水形態フラグFtkの値が装着状態を表す0にされる。
次いで、ステップS104においては、吐出流量目標値Qmの値と、現在の吐水形態における吐出流量上限値QL(Ftk)の値が比較される。即ち、吐水ヘッド2が水栓本体6に装着されている場合には、吐出流量目標値Qmと吐出流量上限値QL(0)が比較され、吐水ヘッド2が引き出されている場合には、吐出流量目標値Qmと吐出流量上限値QL(1)が比較される。吐出流量目標値Qmが吐出流量上限値QL(Ftk)を超えている場合には、ステップS105に進み、吐出流量目標値Qmの値を吐出流量上限値QL(Ftk)に変更する。吐出流量目標値Qmが吐出流量上限値QL(Ftk)以下の場合には、そのままステップS106に進む。
【0050】
本実施形態においては、吐水ヘッド2の装着状態における吐出流量上限値QL(0)は、10L/minに設定されており、引き出し状態における吐出流量上限値QL(1)は、6L/minに設定されている。これは、吐水ヘッド2の装着状態においては洗面ボウル4に湯水を溜める場合等大流量が必要とされる場合があり、引き出し状態においては、あまり大きな流量で吐出されると水跳ね等の問題を生じるためである。このように、吐水形態に応じて吐出流量上限値を設定しておくことにより、過大な吐出流量を防止しながら、大流量が必要とされる場面では、十分な流量を吐出させることができる。
図4の時刻t0においては、吐出流量目標値Qmは、吐出流量上限値QL(0)よりも小さいため、吐出流量目標値Qmは変更されることなくステップS106に進む。
【0051】
ステップS106においては、吐出温度目標値tmの値と、現在の吐水形態における吐出温度上限値tL(Ftk)の値が比較される。即ち、吐水ヘッド2が水栓本体6に装着されている場合には、吐出温度目標値tmと吐出温度上限値tL(0)が比較され、吐水ヘッド2が引き出されている場合には、吐出温度目標値tmと吐出温度上限値tL(1)が比較される。吐出温度目標値tmが吐出温度上限値tL(Ftk)を超えている場合には、ステップS107に進み、吐出温度目標値tmの値を吐出温度上限値tL(Ftk)に変更する。吐出温度目標値tmが吐出温度上限値tL(Ftk)以下の場合には、そのままステップS108に進む。
【0052】
本実施形態においては、吐水ヘッド2の装着状態における吐出温度上限値tL(0)は、60゜Cに設定されており、引き出し状態における吐出温度上限値tL(1)は、40゜Cに設定されている。これは、吐水ヘッド2の装着状態においては高温の湯水が必要とされる場合があり、引き出し状態においては、高温の湯水を誤って洗髪に使用してしまう等の問題の発生を防止するためである。このように、吐水形態に応じて吐出温度上限値を設定しておくことにより、誤使用による問題の発生を防止しながら、高温の湯水が必要とされる場面では、十分に高い温度の湯水を吐出させることができる。
【0053】
図4の時刻t0においては、吐出温度目標値tmは、吐出温度上限値tL(0)よりも低いため、吐出温度目標値tmは変更されることなくステップS108に進む。
【0054】
ステップS108においては、コントローラ22は、表示手段に吐出流量目標値Qm及び吐出温度目標値tmの値を送り、表示手段はそれらの値を表示する。次に、ステップS109においては、吐止水モードフラグFpmの値が判断される。吐止水モードフラグFpm=1、即ち、吐水中である場合にはステップS110に進み、吐止水モードフラグFpm=0、即ち、止水中である場合には、図6に示すサブルーチンの処理を終了する。ステップS110においては、コントローラ22は、流量調整弁18に信号を送り、吐出流量が吐出流量目標値Qmになるように流量調整弁18を制御する。さらに、ステップS111においては、コントローラ22は、温調バルブ16に信号を送り、吐出温度が吐出温度目標値tmになるように温調バルブ16を制御し、図6に示すサブルーチンの処理を終了する。
【0055】
図4の時刻t0においては、吐止水モードフラグFpmの値は、ステップS16において1に設定されているので、ステップS110、S111の処理が行われる。ステップS110においては、コントローラ22は、図8のステップS306において設定された吐出流量目標値Qmの信号を送り、この流量による吐水がなされるように流量調整弁18を制御する。これにより、時刻t0の後、吐水流量は、3L/minに調整される。さらに、ステップS111においては、コントローラ22は、図8のステップS303において設定された吐出温度目標値tmの信号を送り、この温度による吐水がなされるように温調バルブ16を制御する。これにより、時刻t0の後、吐水温度は38゜Cに制御される。
【0056】
次に、コントローラ22における処理は、ステップS5に進み、図7のサブルーチンが実行される。
まず、図7のステップS201においては、流調操作部8が使用者により操作されたか否かが判断される。流調操作部8が操作されている場合には、ステップS202に進み、ステップS202においては、流調操作部操作中判定用タイマーTkrqがリセットされる。さらに、ステップS203においては、流調操作部操作状態フラグFkrqを操作中を表す1にして、ステップS206に進む。
【0057】
一方、ステップS201において、流調操作部8が操作されていないと判断された場合には、ステップS204に進み、流調操作部操作中判定用タイマーTkrqの値が所定の操作中判定時間TKR未満か否かが判断される。流調操作部操作中判定用タイマーTkrqの値が操作中判定時間TKR未満である場合には、ステップS206に進む。また、ステップS204において、流調操作部操作中判定用タイマーTkrqの値が操作中判定時間TKR以上である場合には、ステップS205に進み、ステップS205においては、流調操作部操作状態フラグFkrqを、操作中でないことを表す0にして、ステップS206に進む。
【0058】
次に、ステップS206においては、温調操作部10が使用者により操作されたか否かが判断される。温調操作部10が操作されている場合には、ステップS207に進み、ステップS207においては、温調操作部操作中判定用タイマーTkrtがリセットされる。さらに、ステップS208においては、温調操作部操作状態フラグFkrtを操作中を表す1にして、図7に示すサブルーチンの処理を終了する。
【0059】
一方、ステップS206において、温調操作部10が操作されていないと判断された場合には、ステップS209に進み、温調操作部操作中判定用タイマーTkrtの値が所定の操作中判定時間TKR未満か否かが判断される。温調操作部操作中判定用タイマーTkrtの値が操作中判定時間TKR未満である場合には、図7に示すサブルーチンの処理を終了する。また、ステップS209において、温調操作部操作中判定用タイマーTkrtの値が操作中判定時間TKR以上である場合には、ステップS210に進み、ステップS210においては、温調操作部操作状態フラグFkrtを、操作中でないことを表す0にして、図7に示すサブルーチンの処理を終了する。
【0060】
このように、図7に示すサブルーチンにおいては、流調操作部8が使用者により操作されている間は、流調操作部操作状態フラグFkrqの値を1に設定し、流調操作部8が操作されていない場合には、操作終了後、操作中判定時間TKR経過までは流調操作部操作状態フラグFkrqの値を1に保持し、所定の操作中判定時間TKRが経過すると、流調操作部操作状態フラグFkrqの値を0に復帰させる。同様に、温調操作部10が使用者により操作されている間は、温調操作部操作状態フラグFkrtの値を1に設定し、温調操作部10が操作されていない場合には、操作終了後、操作中判定時間TKR経過までは温調操作部操作状態フラグFkrtの値を1に保持し、所定の操作中判定時間TKRが経過すると、温調操作部操作状態フラグFkrtの値を0に復帰させる。なお、本実施形態においては、操作中判定時間TKRは、約2秒に設定されている。即ち、各操作部の操作が途切れた後、約2秒間は、操作が継続される可能性があるため、各操作部操作状態フラグが1に保持される。
【0061】
図4の時刻t0の後、何も操作がなされていない間は、図7に示すサブルーチンにが実行されても、流調操作部操作状態フラグFkrq及び温調操作部操作状態フラグFkrtは0のままである。
【0062】
次いで、コントローラ22による処理は、図5のステップS6に移行する。
ステップS6においては、吐水状態か否か、即ち、吐止水モードフラグFpmの値が判断される。吐水状態である吐止水モードフラグFpm=1の場合にはステップS7に進み、止水状態である吐止水モードフラグFpm=0の場合にはステップS13に進む。
【0063】
水栓装置1の電源投入後、何も操作されていない場合には、止水状態であり、吐止水モードフラグFpm=0であるためステップS13に進み、以後、ステップS14→S4→S5→S6→S13→S14の処理が繰り返される。
【0064】
一方、図4の時刻t0においては、ステップS16で吐止水モードフラグFpmが1に変更されているため、コントローラ22による処理は、ステップS6からステップS7に移行する。
ステップS7においては、上述した図8に示すサブルーチンが再び実行されるが、図4の時刻t0の後、吐水形態が変更されるまでは、このサブルーチンにおいて、各フラグ及び変数が変更されることはない。
【0065】
次に、ステップS8においては、図9に示すサブルーチンが実行される。
まず、図9のステップS401においては、流調操作部8が操作されたか否かが判断される。操作されている場合にはステップS402に進み、操作されていない場合にはステップS404に進む。ステップS402においては、流調操作部8の操作角度Q0aが取得される。次いで、ステップS403においては、吐出流量目標値Qmが流調操作部8の操作角度Q0aに応じて変更される。即ち、流調操作部8が時計回りに回転された場合には吐出流量目標値Qmは増加され、反時計回りに回転された場合には吐出流量目標値Qmは減少される。変更された吐出流量目標値Qmは、次に図6のステップS110が実行されたとき、吐水流量に反映される。
【0066】
次に、ステップS404においては、温調操作部10が操作されたか否かが判断される。操作されている場合にはステップS405に進み、操作されていない場合には図4に示すサブルーチンの処理を終了する。ステップS405においては、温調操作部10の操作角度t0aが取得される。次いで、ステップS406においては、吐出流量目標値tmが温調操作部10の操作角度t0aに応じて変更され、図9に示すサブルーチンの処理を終了する。なお、温調操作部10が時計回りに回転された場合には吐出温度目標値tmは増加され、反時計回りに回転された場合には吐出温度目標値tmは減少される。変更された吐出温度目標値tmは、次に図6のステップS111が実行されたとき、吐水温度に反映される。
【0067】
次いで、コントローラ22による処理はステップS9に移行し、ステップS9においては、上述した図10に示すフローチャートが再び呼び出される。
図4の時刻t0の後、流調操作部8又は温調操作部10が回転操作されるまでは、図10に示すサブルーチンにおいて、各フラグ及び変数が変更されることはない。
【0068】
ステップS9の処理が実行された後、コントローラ22による処理は、ステップS10に移行する。時刻t0の後、流調操作部8が押圧操作されるまでは、ステップS4→S5→S6→S7→S8→S9→S10→S4の処理が繰り返される。また、これらのステップの処理を繰り返す間、使用者による何らかの操作が検知されるまでは、各フラグ及び変数が変更されることはない。
【0069】
次に、図4の時刻t1において、使用者が吐水ヘッド2を水栓本体6から引き出すと、これを着脱センサ14が検出し、コントローラ22に検出信号を送る。この検出信号は、図6のステップS101において処理され、ステップS102により吐水形態フラグFtkの値が1に変更される。
【0070】
吐水形態フラグFtkの値が変更されると、図8に示すサブルーチンの処理が変化する。まず、ステップS301において、可変記憶吐出温度tm(Ftk=1)とtm(Ftkp=0)の値が比較される。時刻t1において、tm(1)=20゜C、tm(0)=38゜Cであるため、ステップS302に進む。ステップS302においては、吐出温度目標値tmがtm(1)=20゜Cに設定される。
【0071】
次いで、ステップS304において、可変記憶吐出流量Qm(Ftk=1)とQm(Ftkp=0)の値が比較される。時刻t1において、Qm(1)=5L/min、Qm(0)=3L/minであるため、ステップS306に進む。ステップS306においては、吐出温度目標値QmはQm(0)=3L/minに維持される。
【0072】
これらの吐出温度目標値tm=20゜C及び吐出温度目標値Qm=3L/minの値は、メインルーチンのステップS9から呼び出される図10に示すサブルーチンにおいて、吐水ヘッド2を引き出した吐水形態に対応した可変記憶吐出温度tm(1)、可変記憶吐出流量Qm(1)として、夫々メモリ22aに記憶される。また、これらの吐出温度目標値tm及び吐出温度目標値Qmは、次に図6のステップS110、S111が実行された時点で、吐水温度、吐水流量に反映され、これらの吐水条件による吐水が開始される。以後、各フラグ及び変数が変更されることなく、ステップS4→S5→S6→S7→S8→S9→S10→S4の処理が繰り返される。
【0073】
次に、図4の時刻t2において、使用者が流調操作部8の回転操作を開始すると、この操作は、図5のステップS8において呼び出される図9に示すサブルーチンにより処理される。
【0074】
まず、図9のステップS401において、流調操作部8が回転操作されたと判断され、処理は、ステップS402に移行する。ステップS402おいては、回転操作の操作角度Q0aが、コントローラ22に取り込まれる。次いで、ステップS403においては、吐出流量目標値Qmの値が、操作角度Q0aに応じて変更される。図4の時刻t2においては流調操作部8は反時計回りに回転されているので、操作角度Q0aはマイナスであり、吐出流量目標値Qmの値は減少される。
【0075】
次に、ステップS404においては、温調操作部10は回転操作されていないと判断され、図9のサブルーチンの処理が終了する。続いて、図5のステップS9から呼び出される図10に示すサブルーチンにおいては、ステップS403において変更された吐出流量目標値Qmの値が、吐水ヘッド2を引き出した吐水形態に対応した可変記憶吐出流量Qm(1)として、新たにメモリ22aに記憶される。
【0076】
また、この吐出流量目標値Qmの変化は、次に図6のステップS110が実行された時点で吐水流量に反映される。同様の処理が、使用者による流調操作部8の回転操作が終了する時刻t3まで繰り返され、吐水流量は、使用者の回転操作に応じて減少される。図4の例においては、吐出流量目標値Qmは、時刻t3において1L/minまで減少され、この値は、吐水ヘッド2の引き出し状態に対応した可変記憶吐出流量Qm(1)としてメモリ22aに記憶される。使用者による流調操作部8の回転操作終了後、各フラグ及び変数は変更されることなく、ステップS4→S5→S6→S7→S8→S9→S10→S4の処理が繰り返される。
【0077】
また、図4の時刻t4において、使用者が温調操作部10の回転操作を開始すると、この操作も同様に、図5のステップS8において呼び出される図9に示すサブルーチンにより処理される。
まず、ステップS401においては、流調操作部8は回転操作されていないと判断され、処理は、ステップS404に移行する。
【0078】
次に、ステップS404において、温調操作部10が回転操作されたと判断され、処理は、ステップS405に移行する。ステップS405おいては、回転操作の操作角度t0aが、コントローラ22に取り込まれる。次いで、ステップS406においては、吐出温度目標値tmの値が、操作角度t0aに応じて変更される。図4の時刻t4においては温調操作部10は反時計回りに回転されているので、操作角度t0aはマイナスであり、吐出温度目標値tmの値は減少される。
【0079】
次に、図5のステップS9から呼び出される図10に示すサブルーチンにおいては、ステップS406において変更された吐出温度目標値tmの値が、吐水ヘッド2を引き出した吐水形態に対応した可変記憶吐出流量tm(1)として、新たにメモリ22aに記憶される。
【0080】
また、この吐出温度目標値tmの変化は、次に図6のステップS111が実行された時点で吐水温度に反映される。同様の処理が、使用者による温調操作部10の回転操作が終了する時刻t5まで繰り返され、吐水温度は、使用者の回転操作に応じて低下される。図4の例においては、吐出温度目標値Qmは、時刻t5において15゜Cまで減少され、この値は、吐水ヘッド2の引き出し状態に対応した可変記憶吐出温度tm(1)としてメモリ22aに記憶される。使用者による温調操作部10の回転操作終了後、各フラグ及び変数は変更されることなく、ステップS4→S5→S6→S7→S8→S9→S10→S4の処理が繰り返される。
【0081】
次に、図4の時刻t6において、使用者が吐水ヘッド2を水栓本体6に装着すると、これを着脱センサ14が検出し、コントローラ22に検出信号を送る。この検出信号は、図6のステップS101において処理され、ステップS103により吐水形態フラグFtkの値が0に変更される。
吐水形態フラグFtkの値が変更されると、図8に示すサブルーチンの処理が変化する。まず、ステップS301において、可変記憶吐出温度tm(Ftk=0)とtm(Ftkp=1)の値が比較される。時刻t6において、tm(0)=38゜C(時刻t1における吐水ヘッド2の装着状態に応じた記憶吐水温度が保持されている)、tm(1)=15゜C(時刻t5における吐水ヘッド2の引き出し状態に応じた記憶吐水温度が保持されている)であるため、ステップS303に進む。ステップS303においては、吐出温度目標値tmは、吐水ヘッド2の装着状態に応じた記憶吐水温度tm(0)=38゜Cに変更されることなく、吐水形態を切替える前、即ち、吐水ヘッド2の引き出し状態における吐出温度目標値tm=15゜Cのままに維持される。
【0082】
次いで、ステップS304において、可変記憶吐出流量Qm(Ftk=0)とQm(Ftkp=1)の値が比較される。時刻t6において、Qm(0)=3L/min(時刻t1における吐水ヘッド2の装着状態に応じた記憶吐水流量が保持されている)、Qm(1)=1L/min(時刻t3における吐水ヘッド2の引き出し状態に応じた記憶吐水温度が保持されている)であるため、ステップS306に進む。ステップS306においては、吐出流量目標値Qmは、吐水ヘッド2の装着状態に応じた記憶吐水流量Qm(0)=3L/minに変更されることなく、吐水形態を切替える前、即ち、吐水ヘッド2の引き出し状態における吐出流量目標値Qm=1L/minのままに維持される。
【0083】
これらの吐出温度目標値tm=15゜C及び吐出温度目標値Qm=1L/minの値は、ステップS9において呼び出される図10に示すサブルーチンにおいて、吐水ヘッド2を装着した吐水形態に対応した可変記憶吐出温度tm(0)、可変記憶吐出流量Qm(0)として、夫々メモリ22aに記憶される。また、これらの吐出温度目標値tm及び吐出流量目標値Qmは、次に図6のステップS110、S111が実行された時点で、吐水温度、吐水流量に反映され、これらの吐水条件による吐水が開始される。以後、各フラグ及び変数が変更されることなく、ステップS4→S5→S6→S7→S8→S9→S10→S4の処理が繰り返される。
【0084】
次に、図4の時刻t7において、使用者が吐水ヘッド2を水栓本体6から引き出すと、コントローラ22に検出信号が送られる。この検出信号により、ステップS102において、吐水形態フラグFtkの値が1に変更される。ここで、時刻t7においては、各吐水形態における可変記憶吐出温度tm(0)及びtm(1)は共に15゜Cであり、可変記憶吐出流量Qm(0)及びQm(1)は共に1L/minである。従って、時刻t7における吐水形態の変更が、吐出温度目標値tm及び吐出流量目標値Qmの値に影響を及ぼすことはなく、吐水ヘッド2を引き出した後も同一の温度及び流量の吐水が継続される。
【0085】
次いで、図4の時刻t8において、使用者が流調操作部8及び温調操作部10を時計回りに回転操作すると、図4の時刻t2〜t3及び時刻t4〜t5と同様の作用により、吐水流量は増加し、吐水温度は上昇する。使用者による回転操作が終了する時刻t9においては、吐出流量目標値Qm及び吐水ヘッド2を引き出した吐水形態における可変記憶吐出流量Qm(1)は2L/minに変更され、吐出温度目標値tm及び吐水ヘッド2を引き出した吐水形態における可変記憶吐出温度tm(1)は30゜Cに変更される。
【0086】
さらに、時刻t10において、使用者が吐水ヘッド2を水栓本体6に装着すると、コントローラ22に検出信号が送られ、図6のステップS103により吐水形態フラグFtkの値が0に変更される。
【0087】
吐水形態フラグFtkの値が変更されると、図8に示すサブルーチンの処理が変化する。まず、ステップS301において、可変記憶吐出温度tm(Ftk=0)とtm(Ftkp=1)の値が比較される。時刻t10において、tm(0)=15゜C(時刻t7における吐水ヘッド2の装着状態に応じた記憶吐水温度が保持されている)、tm(1)=30゜C(時刻t9における吐水ヘッド2の引き出し状態に応じた記憶吐水温度が保持されている)であるため、ステップS302に進む。ステップS302においては、吐出温度目標値tmは、吐水ヘッド2の装着状態に応じた記憶吐水温度tm(0)=15゜Cに変更される。
【0088】
次いで、ステップS304において、可変記憶吐出流量Qm(Ftk=0)とQm(Ftkp=1)の値が比較される。時刻t10において、Qm(0)=1L/min(時刻t7における吐水ヘッド2の装着状態に応じた記憶吐水流量が保持されている)、Qm(1)=2L/min(時刻t9における吐水ヘッド2の引き出し状態に応じた記憶吐水温度が保持されている)であるため、ステップS305に進む。ステップS306においては、吐出流量目標値Qmは、吐水ヘッド2の装着状態に応じた記憶吐水流量Qm(0)=1L/minに変更される。
【0089】
このように、本発明の第1実施形態による水栓装置1においては、コントローラ22は、吐水形態が切替えられたとき、切替え後の吐水形態についてメモリ22aに記憶されている吐水流量、吐水温度に吐水条件を変更するが、所定の場合には、切替え前の吐水条件が維持される。
【0090】
即ち、吐水形態が装着状態から引き出し状態に切替えられた時刻t1においては、切替え後の吐水形態について記憶されている記憶吐水温度の方が、切替え前の吐水形態について記憶されている記憶吐水温度よりも低いため、吐水形態の切替えに応じて吐水温度が変更される。また、時刻t1においては、切替え後の吐水形態について記憶されている記憶吐水流量の方が、切替え前の吐水形態について記憶されている記憶吐水流量よりも多いため、吐水形態の切替えに応じた吐水流量の変更は行われず、切替え前の吐水流量が維持される。
【0091】
また、時刻t6における吐水形態の切替では、吐水温度、吐水流量とも切替え後の方が高いので、吐水温度、吐水流量とも切替え前の吐水条件が維持される。さらに、時刻t10における吐水形態の切替では、吐水温度、吐水流量とも切替え後の方が低いので、吐水温度、吐水流量とも吐水形態の切替えに伴って吐水条件が変更される。
【0092】
本発明の第1実施形態の水栓装置によれば、吐水ヘッドが引き出されたとき、吐水ヘッドの装着時における吐水条件が、自動的に、メモリーに記憶されている前回の吐水ヘッド引き出し時における吐水条件に変更され、また、吐水ヘッドが装着されたときにも自動的に吐水条件が変更されるため、吐水形態を切替える毎に吐水条件を設定する必要がなく、使い勝手を向上させることができる。
【0093】
また、本実施形態の水栓装置によれば、メモリーに記憶された記憶吐水流量、記憶吐水温度を各操作部の操作により変更することができるので、各吐水形態に応じた吐水条件を使用者の好みに応じて設定することができる。
【0094】
さらに、本実施形態の水栓装置によれば、コントローラによる自動的な変更により吐水温度が上昇することがないので、不必要な高温で吐水が行われることが無く、エネルギーの無駄を省くことができると共に、不意に高温の吐水が行われる不都合を回避することができる。
【0095】
また、本実施形態の水栓装置によれば、コントローラによる自動的な変更により吐水流量が増加することがないので、不必要な大流量で吐水が行われることが無く、節水することができると共に、不意の大流量吐水が行われることによる水跳ねを防止することができる。
【0096】
上述した本発明の第1実施形態による水栓装置においては、吐水形態の切替え前後における吐水条件が所定の関係にある場合には、吐水条件を変更せず、切替え前の吐水条件が維持されるが、変形例として、吐止水の状態に基づいて、吐水条件の変更を行うことができる。
【0097】
図11は第1変形例の作用を示すタイムチャートであり、図12は、本変形例において使用されるサブルーチンのフローチャートを示す。図12に示すサブルーチンは、図8に示すサブルーチンに代えて、図5に示すフローチャートのステップS7及びS13において呼び出されるサブルーチンである。第1変形例による水栓装置は、コントローラ22における処理を、このように変更することにより実現することができる。
【0098】
次に、本発明の実施形態の第1変形例による水栓装置の作用を説明する。まず、図11の時刻t100において吐水が開始される前には、コントローラ22においては、図5のステップS4→S5→S6→S13→S14→S4の処理が繰り返されている。時刻t100において、吐水が開始されると、コントローラ22における処理は、ステップS14からステップS15に移行し、ステップS16→S17→S4と進んだ後、ステップS4→S5→S6→S7→S8→S9→S10→S4が繰り返されるようになる。
【0099】
図11の時刻t101において、吐水形態が吐水ヘッド2の装着状態から引き出し状態に切替えられる。吐水形態が切替えられた後、図5のステップS7から呼び出される図12に示すサブルーチンが実行されると、まず、ステップS601においては、吐水状態か否かが判断される。時刻t101においては吐水状態であるため、ステップS603に進む。ステップS603においては、切替え前の吐水形態(吐水ヘッド2の装着状態、即ち、Ftkp=0)に対応した可変記憶吐出流量Qm(0)が吐出流量目標値Qmとして設定され、切替え前の吐水形態に対応した可変記憶吐出温度tm(0)が吐出温度目標値tmとして設定される。このように、本変形例では、吐水状態において吐水形態の切替が行われた場合には、吐出流量目標値Qm、吐出温度目標値tmとして設定される値は、切替え前の吐水形態に対応した記憶吐水条件であり、吐水形態の切替によって吐水条件が変更されることはない。
【0100】
次いで、図11の時刻t102〜t103において、使用者が温調操作部10を操作することにより吐水温度を変更すると、時刻t103における吐水温度が、吐水ヘッド2の引き出し状態に対応した可変記憶吐出温度tm(1)としてメモリ22aに記憶される。
【0101】
さらに、時刻t104において、吐水形態が吐水ヘッド2の装着状態に切替えられ、時刻t103に設定された吐水温度が吐水ヘッド2の装着状態に対応した可変記憶吐出温度tm(0)としてメモリ22aに記憶される。また、時刻t104においても吐水状態であるため、吐水条件は変更されない。
【0102】
次いで、時刻t105において、吐水形態が吐水ヘッド2の引き出し状態に切替えられ、時刻t106〜t107において、使用者による温調操作部10の操作により吐水温度が元に戻される。さらに、時刻t108において、流調操作部8が使用者により押圧操作され、止水状態にされる。これにより、図5のステップS4→S5→S6→S7→S8→S9→S10→S4を繰り返していたコントローラ22における処理は、ステップS10からステップS11に移行し、ステップS11→S12→S4と進んだ後、S4→S5→S6→S13→S14→S4の処理が繰り返されるようになる。
【0103】
次に、時刻t109において、吐水形態が吐水ヘッド2の装着状態に切替えられる。吐水形態が切替えられた後、図5のステップS13から呼び出される図12に示すサブルーチンが実行されると、ステップS601において、吐水状態か否かが判断される。時刻t109においては止水状態であるため、ステップS602に進む。ステップS602においては、切替え後の吐水形態(吐水ヘッド2の装着状態、即ち、Ftk=0)に対応した可変記憶吐出流量Qm(0)が吐出流量目標値Qmとして設定され、切替え後の吐水形態に対応した可変記憶吐出温度tm(0)(時刻t105において記憶された値)が吐出温度目標値tmとして設定される。このように、本変形例では、止水状態において吐水形態の切替が行われた場合には、吐出流量目標値Qm、吐出温度目標値tmとして設定される値は、切替え後の吐水形態に対応したものに変更される。
【0104】
次いで、時刻t110において、使用者の押圧操作により吐水が再開されると、止水直前(時刻t108)における吐水条件ではなく、前回の吐水ヘッド2の装着状態における吐水条件(時刻t105における吐水条件)により吐水が再開される。
【0105】
第1変形例の水栓装置によれば、吐水中に吐水形態が切替えられることにより自動的に吐水条件が変更されて使用者が戸惑うのを防止しながら、止水状態において吐水形態が切替えられた場合には、自動的に吐水条件を変更して、切替え後の吐水形態に適する吐水条件で吐水を開始させることができる。
【0106】
また、上述した第1変形例においては、吐水状態においては、常に、吐水条件の自動的な変更が禁止されていたが、第2変形例として、一部の吐水条件の自動的な変更のみを禁止するように構成することもできる。
【0107】
図13は第2変形例の作用を示すタイムチャートである。また、図14は、図8に示すフローチャートに代えて、本変形例において図5のステップS7、S13から呼び出されるサブルーチンである。
【0108】
まず、図13の時刻t200において吐水が開始される。次いで、時刻t201において吐水形態が切替えられると、図5のステップS7から図14に示すサブルーチンが呼び出される。図14のステップS701においては、吐止水モードフラグFpmの値が判断され、ステップS702に進む。ステップS702においては、吐出温度目標値tmが、切替え前の吐水形態に対応した可変記憶吐出温度tm(0)に設定される。このため、時刻t201における吐水形態の切替え後にも切替え前の吐水温度が維持される。さらに、ステップS704においては、吐出流量目標値Qmが、切替え後の吐水形態に対応した可変記憶吐出流量Qm(1)に設定される。このように、吐出流量については、吐水形態の切替えに応じて吐出流量目標値Qmが設定されるが、図13に示す例では、各吐水形態に対応した可変記憶吐出流量が同一であるため、吐水形態の切替え後にも流量は変化していない。
【0109】
次いで、時刻t202〜t203において、使用者の操作により吐水流量及び吐水温度が変更される。次に、時刻t204において、吐水形態が吐水ヘッド2の装着状態に切替えられると、図14に示すサブルーチンが実行される。これにより、吐出流量目標値Qmは、装着状態に対応した可変記憶吐出流量Qm(0)に変更され、吐出温度目標値tmは、引き出し状態に対応した可変記憶吐出温度tm(1)の値のまま維持される。
【0110】
次に、時刻t205において、吐水形態が引き出し状態に変更された場合にも、同様に、吐出流量目標値Qmは、引き出し状態に対応した可変記憶吐出流量Qm(1)に変更され、吐出温度目標値tmは、装着状態に対応した可変記憶吐出温度tm(0)の値のまま維持される。さらに、時刻t206〜t207において、使用者の操作により吐水温度が変更され、時刻t208において、止水状態にされる。
【0111】
止水状態の時刻t209において、使用者が吐水形態を装着状態に変更すると、図5のステップS13から図14に示すサブルーチンが呼び出され、そのステップS703において、吐出温度目標値tmが吐水形態切替え後の可変記憶吐出温度tm(0)に変更される。また、ステップS704において、吐出流量目標値Qmも、装着状態に対応した可変記憶吐出流量Qm(0)に変更される。その後、時刻t210において吐水を開始させると、可変記憶吐出流量Qm(0)、可変記憶吐出温度tm(0)の吐水条件に自動的に変更された吐水が開始される。
【0112】
第2変形例の水栓装置によれば、吐水中に吐水形態が切替えられることにより、視覚的に認識できない吐水温度が自動的に変更されて使用者が戸惑うのを防止しながら、止水状態において吐水形態が切替えられた場合には、温度、流量とも自動的に吐水条件を変更して、切替え後の吐水形態に適する吐水条件で吐水を開始させることができる。
【0113】
さらに、上述した変形例においては、吐水条件において、一部又は全部の吐水条件の変更が禁止されていたが、変形例として、操作部の操作中における吐水条件の自動変更を禁止することもできる。
【0114】
図15は、第3変形例による水栓装置1の作用を示すタイムチャートであり、上段に吐出流量を、中段に吐水形態の切替え状態を、下段に流調操作部操作状態フラグFkrqの値を示している。また、図16は、図8に示すフローチャートに代えて、本変形例において図5のステップS7、S13から呼び出されるサブルーチンである。
【0115】
まず、図15の時刻t300において吐水が開始される前には、コントローラ22においては、図5のステップS4→S5→S6→S13→S14→S4の処理が繰り返されている。時刻t300において、吐水が開始されると、コントローラ22における処理は、ステップS14からステップS15に移行し、ステップS16→S17→S4と進んだ後、ステップS4→S5→S6→S7→S8→S9→S10→S4が繰り返されるようになる。
【0116】
図15の時刻t301において、吐水形態が吐水ヘッド2の装着状態から引き出し状態に切替えられる。吐水形態が切替えられた後、時刻t302において、使用者が流調操作部8を操作して流量を減少させ始めると、図5のステップS5から呼び出される図7に示すサブルーチンにおいて、処理はステップS201からステップS202に移行し、ここで、流調操作部操作中判定用タイマーTkrqがリセットされ、新たな積算が開始される。次いで、ステップS203においては、流調操作部操作状態フラグFkrqの値が1にされる。
【0117】
また、温調操作部10は操作されていないため、ステップS206以下の処理においては、温調操作部操作状態フラグFkrtの値は0にされたまま図7に示すサブルーチンの処理が終了する。時刻t302以降、使用者による流調操作部8の操作が終了する時刻t304まで、図7に示すサブルーチンは同様の処理を繰り返す。
【0118】
一方、流調操作部8操作中の時刻t303においては、吐水形態が引き出し状態から装着状態に切替えられる。吐水形態が切替えられ、図5のステップS7から図16に示すサブルーチンが呼び出されると、まず、ステップS801において、流調操作部操作状態フラグFkrqの値が判断される。時刻t303においては、流調操作部操作状態フラグFkrq=1であるため、処理は、ステップS803に進む。ステップS803においては、吐出流量目標値Qmとして、切替え前の吐水形態に対応した可変記憶吐出流量Qm(1)が設定される。
【0119】
次いで、ステップS804においては、温調操作部操作状態フラグFkrtの値が判断される。時刻t303において温調操作部10が操作されていなければ、温調操作部操作状態フラグFkrt=0であるため、処理は、ステップS805に進む。ステップS805においては、吐出温度目標値tmとして、切替え後の吐水形態に対応した可変記憶吐出温度tm(0)が設定される。
【0120】
この処理により、時刻t303においては、使用者が操作中の流量については吐水条件の自動変更は行われず、温度については、切替え後の吐水形態に対応した可変記憶吐出温度に自動的に変更される。なお、時刻t303における吐出流量目標値Qmの値は、図5のステップS9から呼び出される図10に示すサブルーチンのステップS501において、引き出し状態の吐水形態に対応した可変記憶吐出流量Qm(1)としてメモリ22aに記憶される。
【0121】
次いで、時刻t304において、使用者による流調操作部8の操作が終了する。使用者の操作が終了した後、図5のステップS5から呼び出される図7に示すサブルーチンのステップS201の処理が行われると、処理はステップS204に移行する。ステップS204においては、流調操作部操作中判定用タイマーTkrqの積算時間が判定される。流調操作部操作中判定用タイマーは、使用者による操作が終了した時刻t304の直前にリセットされ、時刻t304からの経過時間を積算している。図7に示すサブルーチンにおける処理は、時刻t304から所定の操作中判定時間TKR(本実施形態においては2秒)が経過している場合にはステップS205に進み、経過していない場合にはステップS206に進む。ステップS205においては、流調操作部8の操作中1にされていた流調操作部操作状態フラグFkrqの値が0に戻される。
【0122】
このため、流調操作部操作状態フラグFkrqの値は、使用者による流調操作部8の操作が終了した時刻t304の後、操作中判定時間TKRが経過する時刻t305まで1に保持される。流調操作部操作状態フラグFkrqの値が1である期間に図5のステップS7から図16に示すサブルーチンが呼び出された場合には、このサブルーチンにおける処理はステップS801からステップS803に移行する。ステップS803においては、吐出流量目標値Qmとして、切替え前の吐水形態に対応した可変記憶吐出流量が設定される。このため、操作中判定時間TKR経過前に吐水形態が切替えられた場合には、吐水条件は変更されず、切替え前の吐水形態に対応した吐水条件が維持される。
【0123】
一方、使用者による流調操作部8の操作が終了した時刻t304から操作中判定時間TKRが経過した時刻t306において吐水形態が切替えられると、図16における処理はステップS801からステップS802に移行する。ステップS802においては、吐出流量目標値Qmとして、切替え後の吐水形態に対応した可変記憶吐出流量が設定され、切替え後の吐水形態に対応した吐水条件に自動的に変更される。図15に示す例では、時刻t306において、吐出流量目標値Qmとして、時刻t303にメモリ22aに記憶された可変記憶吐出流量が設定される。
【0124】
さらに、流調操作部操作状態フラグFkrqの値が0である時刻t307において吐水形態が切替えられると、切替え後の吐水形態に対応した吐水条件に自動的に変更される。
【0125】
第3変形例の水栓装置によれば、操作部の操作中に吐水温度や吐水流量が自動的に変更されることがないので、使用者が吐水条件を調整している間に吐水条件が自動的に変更されることがなく、使い勝手を向上させることができる。
【0126】
次に、図17乃至図21を参照して、本発明の第2実施形態による水栓装置を説明する。本実施形態の水栓装置は、吐水ヘッドが回転式である点、及びコントローラにおける制御を除き、上述した第1実施形態による水栓装置と同様である。従って、ここでは本実施形態による水栓装置の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の点については説明を省略する。
【0127】
図17及び図18は、本発明の第2実施形態による水栓装置の斜視図である。図19及び図20は、本実施形態の水栓装置におけるコントローラによる制御のフローチャートである。また、図21は、本実施形態による水栓装置の作用を示すタイムチャートである。
【0128】
図17及び図18に示すように、本発明の第2実施形態による水栓装置100は、吐水口102aが設けられた吐水部である吐水ヘッド102と、洗面ボウル4に取り付けられた水栓本体106と、洗面ボウル4に配置された操作部である流調操作部8及び温調操作部10と、洗面ボウル4の下側に配置された水栓装置機能部12と、を有する。
【0129】
本実施形態による水栓装置100は、水栓本体106の先端に設けられた吐水ヘッド102が、所定の軸線を中心に回転可能に構成されており、図17に示す吐水口102aを下方に向けた吐水形態と、図18に示す吐水口102aを上方に向けた吐水形態との間で、吐水口102aを移動させることができる。このように、吐水口102aを上方に向けることにより、眼の洗浄等を容易に行うことができる。
【0130】
次に、図19乃至図21を参照して、本実施形態の水栓装置におけるコントローラによる制御を説明する。図19は、水栓装置機能部に内蔵されたコントローラによる制御のフローチャートである。図20は、図19のフローチャートから呼び出されるサブルーチンのフローチャートである。図21は、吐水ヘッド102からの吐水流量を上段に、吐水温度を中段に、吐水形態の切替えである吐水ヘッド102の回転を下段に示したタイムチャートである。
【0131】
まず、図19のステップS1001において電源が投入されると、ステップS1002において、電磁弁20が閉鎖される。さらに、ステップS1003においては、各変数、フラグの初期値が設定される。即ち、吐止水モードフラグFpmの値を0に、流調操作部操作状態フラグFkrqの値を0に、温調操作部操作状態フラグFkrtの値を0に、夫々設定する。さらに、吐出流量目標値Qm及び吐水ヘッド102を下方に向けた状態における固定記憶吐出流量QM(0)を夫々5L/minに、吐水ヘッド102を上方に向けた状態における固定記憶吐出流量QM(1)を3L/minに設定する。また、吐出温度目標値tm及び吐水ヘッド102を下方に向けた状態における固定記憶吐出温度tM(0)を夫々38゜Cに、吐水ヘッド102を上方に向けた状態における固定記憶吐出温度tM(1)を20゜Cに設定する。さらに、吐水ヘッド102を下方に向けた状態における吐出流量上限値QL(0)を10L/minに、吐水ヘッド102を上方に向けた状態における吐出流量上限値QL(1)を6L/minに設定する。また、吐水ヘッド102を下方に向けた状態における吐出温度上限値tL(0)を60゜Cに、吐水ヘッド102を上方に向けた状態における吐出温度上限値tL(1)を40゜Cに設定する。さらに、流調操作部操作中判定用タイマーTkrq及び温調操作部操作中判定用タイマーTkrtの値を0にリセットする。
【0132】
なお、本実施形態における固定記憶吐出流量及び固定記憶吐出温度は、ステップS1003において予め設定された値に固定され、変更されることのない固定吐水条件である。
【0133】
続くステップS1004以下、水栓装置100の電源投入後、流調操作部8が押圧操作されて吐水が開始されるまでの止水状態においては、図19のステップS1004→S1005→S1006→S1012→S1013→S1004の処理が繰り返される。
【0134】
図19のステップS1004において呼び出されるサブルーチンは、第1実施形態において図6に示したサブルーチンと同様であるので、説明を省略する。ただし、本実施形態では、図6のステップS101において、吐水ヘッド102を上方に向けた状態か、下方に向けた状態かが判断され、下方に向けた状態である場合には吐水形態フラグFtk=0、上方に向けた状態である場合には吐水形態フラグFtk=1が設定される。
【0135】
また、図19のステップS1005において呼び出されるサブルーチンは、第1実施形態において図7に示したサブルーチンと同様であるので、説明を省略する。さらに、ステップS1012においては、図20に示すサブルーチンが呼び出される。
【0136】
一方、止水状態において、流調操作部8が押圧操作されると、コントローラ22における処理はステップS1013からステップS1014に移行し、ステップS1014→S1015の処理が実行されて吐水状態となる。以後、吐水状態において流調操作部8が押圧操作されるまでは、ステップS1004→S1005→S1006→S1007→S1008→S1009→S1004の処理が繰り返される。吐水状態において流調操作部8が押圧操作されると、コントローラ22における処理はステップS1009からステップS1010に移行し、ステップS1010→S1011の処理が実行されて再び止水状態となる。
【0137】
図19のステップS1008において呼び出されるサブルーチンは、第1実施形態において図9に示したサブルーチンと同様であるので、説明を省略する。
図21に示すタイムチャートの時刻t400において、流調操作部8が押圧操作されると、上述したように、コントローラ22における処理は、図19のステップS1013からステップS1014に移行し、吐水が開始される。
【0138】
次いで、コントローラ22における処理は、ステップS1004に戻り、図6のサブルーチンが実行される。
まず、図6のステップS101においては、選択されている吐水形態が判定される。即ち、コントローラ22は、水栓本体106に設けられた回転センサ(図示せず)から送られた信号に基づいて、吐水ヘッド102が下方に向けられているか否かを判定する。吐水ヘッド102が下方に向けられている場合には、ステップS103に進み、吐水形態フラグFtkの値が下方に向けた状態を表す0にされ、吐水ヘッド2が上方に向けられている場合には、ステップS102に進み、吐水形態フラグFtkの値が上方に向けられた状態を表す1にされる。
【0139】
図21の時刻t400においては、吐水ヘッド102は下方に向けられているため、ステップS103において吐水形態フラグFtkの値が0にされる。
図6に示すサブルーチンにおけるステップS104以下の処理は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0140】
次に、コントローラ22における処理は、図19のステップS1005に進み、図7のサブルーチンが実行される。図19のステップS1005において呼び出されるサブルーチンは、第1実施形態において図7に示したサブルーチンと同様であるので、説明を省略する。
【0141】
次いで、コントローラ22による処理は、図19のステップS1006に移行する。
ステップS1006においては、吐水状態か否か、即ち、吐止水モードフラグFpmの値が判断される。吐水状態である吐止水モードフラグFpm=1の場合にはステップS1007に進み、止水状態である吐止水モードフラグFpm=0の場合にはステップS1012に進む。
【0142】
一方、図4の時刻t400においては、ステップS1014で吐止水モードフラグFpmが1に変更されているため、コントローラ22による処理は、ステップS1006からステップS1007に移行する。
ステップS1007においては、図20に示すサブルーチンが実行されるが、図21の時刻t400の後、吐水形態が変更されるまでは、このサブルーチンにおいて、各フラグ及び変数が変更されることはない。
【0143】
次に、ステップS1008においては、図9に示すサブルーチンが呼び出される。図19のステップS1008において呼び出されるサブルーチンは、第1実施形態において図9に示したサブルーチンと同様であるので、説明を省略する。
ステップS1008の処理が実行された後、コントローラ22による処理は、ステップS1009に移行する。時刻t400の後、流調操作部8が押圧操作されるまでは、ステップS1004→S1005→S1006→S1007→S1008→S1009→S1004の処理が繰り返される。
【0144】
次に、図21の時刻t401において、使用者が吐水ヘッド102を上方に向けると、これを回転センサ(図示せず)が検出し、コントローラ22に検出信号を送る。この検出信号は、図6のステップS101において処理され、ステップS102により吐水形態フラグFtkの値が1に変更される。
【0145】
吐水形態フラグFtkの値が変更されると、図20に示すサブルーチンの処理が変化する。まず、ステップS1101において、固定記憶吐出温度tM(Ftk=1)と吐出温度目標値tmの値が比較される。時刻t401において、tM(1)=20゜C、tm=38゜Cであるため、ステップS1102に進む。ステップS1102においては、吐出温度目標値tmがtM(1)=20゜Cに設定され、ステップS1103に進む。また、吐出温度目標値tmよりも固定記憶吐出温度tM(Ftk)の方が高い場合には、吐出温度目標値tmを変更することなくステップS1103に進む。
【0146】
次いで、ステップS1103において、固定記憶吐出流量QM(Ftk=1)と吐出流量目標値Qmの値が比較される。時刻t401において、QM(1)=3L/min、Qm=5L/minであるため、ステップS1104に進む。ステップS1104においては、吐出流量目標値QmはQM(1)=3L/minに設定され、図20に示すサブルーチンの処理が終了する。また、吐出流量目標値Qmよりも固定記憶吐出流量QM(Ftk)の方が大きい場合には、吐出温度目標値Qmを変更することなく図20に示すサブルーチンの処理を終了する。
【0147】
図20に示すサブルーチンにおいて設定された吐出温度目標値tm及び吐出流量目標値Qmは、次に図6のステップS110、S111が実行された時点で、吐水温度、吐水流量に反映され、これらの吐水条件による吐水が開始される。以後、各フラグ及び変数が変更されることなく、ステップS1004→S1005→S1006→S1007→S1008→S1009→S1004の処理が繰り返される。
【0148】
さらに、図21の時刻t402から使用者が流調操作部8及び温調操作部10を操作すると、この操作は、図19のステップS1008から呼び出される図9に示すサブルーチンによって処理され、吐出流量目標値Qm及び吐出温度目標値tmの値が変更され、吐出流量は減少され、吐出温度は上昇される。
【0149】
次いで、時刻t403において、吐水形態が吐水ヘッド102を下方に向けた状態に切替えられると、図19のステップS1004から呼び出される図6に示すサブルーチンにより吐水形態フラグFtkが0に変更される。次いで、ステップS1007から呼び出される図20に示すサブルーチンのステップS1101においては、固定記憶吐出温度tM(0)と吐出温度目標値tmが比較される。固定記憶吐出温度tM(0)は38゜Cに固定されており、時刻t403における吐出温度目標値tmはこれよりも低いため、吐出温度目標値tmを変更することなくステップS1103に進む。
【0150】
ステップS1103においては、固定記憶吐出流量QM(0)と吐出流量目標値Qmが比較される。固定記憶吐出流量QM(0)は5L/minに固定されており、時刻t403における吐出流量目標値Qmはこれよりも少ないため、吐出流量目標値Qmを変更することなく図20に示すサブルーチンの処理を終了する。
【0151】
さらに、時刻t404において、吐水形態が吐水ヘッド102を上方に向けた状態に切替えられると、吐水形態フラグFtkが1に変更される。次いで、ステップS1007から呼び出される図20に示すサブルーチンのステップS1101においては、固定記憶吐出温度tM(1)と吐出温度目標値tmが比較される。固定記憶吐出温度tM(1)は20゜Cに固定されており、時刻t404における吐出温度目標値tmはこれよりも高いため、ステップS1102に進み、吐出温度目標値tmが固定記憶吐出温度tM(1)の20゜Cに変更され、この温度での吐水が開始される。
【0152】
次に、ステップS1103においては、固定記憶吐出流量QM(1)と吐出流量目標値Qmが比較される。固定記憶吐出流量QM(1)は3L/minに固定されており、時刻t404における吐出流量目標値Qmはこれよりも少ないため、吐出流量目標値Qmを変更することなく図20に示すサブルーチンの処理を終了する。
【0153】
次いで、時刻t405〜t406において、使用者が流調操作部8及び温調操作部10を操作することにより、吐出流量が増え、吐出温度が上昇される。さらに、時刻t407において、吐水形態が吐水ヘッド102を下方に向けた状態に切替えられると、吐水形態フラグFtkが0に変更される。時刻t407における吐出流量及び吐出温度は、固定記憶吐出流量QM(0)及び固定記憶吐出温度tM(0)よりも夫々大きいので、吐出流量目標値Qmは5L/minに、吐出温度目標値tmは38゜Cに夫々自動的に変更される。
【0154】
本発明の第2実施形態の水栓装置によれば、記憶吐出温度、記憶吐出流量が固定されているので、水栓装置が公共の場に設置された場合等の悪戯を防止することができると共に、使用者が固定された吐水条件を変更したい場合には、吐水中に操作部を操作することにより好みに応じて吐水条件を変更することができる。
【0155】
上述した本発明の第2実施形態による水栓装置においては、吐水形態の切替え前後における吐水条件に基づいて、吐水条件の変更又は維持を行っていたが、変形例として、吐止水の状態に基づいて、吐水条件の変更を行うことができる。
【0156】
図22は第4変形例の作用を示すタイムチャートであり、図23は、本変形例において使用されるサブルーチンのフローチャートを示す。図23に示すサブルーチンは、図20に示すサブルーチンに代えて、図19に示すフローチャートのステップS1007及びS1012において呼び出されるサブルーチンである。第4変形例による水栓装置は、コントローラ22における処理を、このように変更することにより実現することができる。
【0157】
まず、図22の時刻t500において吐水ヘッド102を下方に向けた状態で吐水が開始された後、時刻t501において吐水形態が切替えられる。時刻t501において、図19のステップS1007から図23に示すサブルーチンが呼び出されると、図23のステップS1201において吐水状態か否かが判断され、吐水状態である場合には、吐水条件を変更することなくサブルーチンの処理を終了する。
【0158】
次いで、時刻t501〜t502において、使用者の操作により吐水温度が変更される。さらに、時刻t502、t503において吐水形態が切替えられた際にも、吐水中であるため吐水条件の自動変更は行われない。次いで、時刻t503〜t504において、使用者の操作により吐水温度が変更された後、時刻t504において、使用者により止水される。
【0159】
次に、時刻t505において、吐水形態が、吐水ヘッド102を下方に向けた状態に切替えられる。これにより、ステップS1004から呼び出される図6に示すサブルーチンにおいて吐水形態フラグFtkが0に変更される。さらに、ステップS1012から図23に示すサブルーチンが呼び出されると、図23のステップS1202において、吐出流量目標値Qm、吐出温度目標値tmとして、固定記憶吐出流量QM(0)、固定記憶吐出温度tM(0)の値が夫々設定される。これにより、時刻t506において吐水が再開されると、吐水ヘッド102を下方に向けた吐水形態に対応した吐水条件に自動的に変更される。
【0160】
上述した第4変形例においては、吐水状態では常に吐水条件が維持されていたが、第5変形例として、吐水状態において吐水温度のみが常に維持されるように構成することもできる。
【0161】
図24は第5変形例の作用を示すタイムチャートであり、図25は、本変形例において使用されるサブルーチンのフローチャートを示す。図25に示すサブルーチンは、図20に示すサブルーチンに代えて、図19に示すフローチャートのステップS1007及びS1012において呼び出されるサブルーチンである。第5変形例による水栓装置は、コントローラ22における処理を、このように変更することにより実現することができる。
【0162】
まず、図24の時刻t600において吐水ヘッド102を下方に向けた状態で吐水が開始された後、時刻t601において吐水形態が切替えられる。時刻t601において、図19のステップS1007から図25に示すサブルーチンが呼び出されると、図25のステップS1301において吐水状態か否かが判断され、吐水状態である場合には、吐出温度目標値tmを変更することなくステップS1303に進む。次に、ステップS1303においては、吐出流量目標値Qmとして、固定記憶吐出流量QM(1)の値が設定される。
【0163】
次いで、時刻t601〜t602において、使用者の操作により吐水温度が変更される。さらに、時刻t602、t603において吐水形態が切替えられた際にも、吐出温度目標値tmは維持され、吐出流量目標値Qmは自動的に変更される。次いで、時刻t603〜t604において、使用者の操作により吐水流量、吐水温度が変更された後、時刻t604において、使用者により止水される。
【0164】
次に、時刻t605において、吐水形態が、吐水ヘッド102を下方に向けた状態に切替えられる。これにより、ステップS1004から呼び出される図6に示すサブルーチンにおいて吐水形態フラグFtkが0に変更される。さらに、ステップS1012から図25に示すサブルーチンが呼び出されると、図25のステップS1302において、吐出温度目標値tmとして固定記憶吐出温度tM(0)の値が設定され、ステップS1303において、吐出流量目標値Qmとして固定記憶吐出流量QM(0)の値が設定される。これにより、時刻t606において吐水が再開されると、吐水ヘッド102を下方に向けた吐水形態に対応した吐水条件に自動的に変更される。
【0165】
さらに、上述した変形例においては、吐水条件において、一部又は全部の吐水条件の変更が禁止されていたが、変形例として、操作部の操作中における吐水条件の自動変更を禁止することもできる。
【0166】
図26は、第6変形例による水栓装置100の作用を示すタイムチャートであり、上段に吐出流量を、中段に吐水形態の切替え状態を、下段に流調操作部操作状態フラグFkrqの値を示している。また、図27は、図20に示すフローチャートに代えて、本変形例において図19のステップS1007、S1012から呼び出されるサブルーチンである。
【0167】
まず、図26の時刻t700において吐水ヘッド102を下方に向けた状態で吐水が開始された後、時刻t701において吐水形態が切替えられると共に、使用者による吐水流量の操作が開始される。これにより、図19のステップS1005から呼び出される図7に示すサブルーチンのステップS203において、流調操作部操作状態フラグFkrqの値が1にされる。次に、使用者による操作途中の時刻t703において、図19のステップS1007から図27に示すサブルーチンが呼び出されると、図27のステップS1401において吐出流量の操作中か否かが判断され、操作中である場合には、吐出流量目標値Qmを変更することなくステップS1403に進む。このため、時刻t703においては、吐出流量目標値Qmは変更されずに元の値が維持される。
【0168】
また、ステップS1403においては、吐出温度の操作中か否かが判断される。操作中である場合には、吐出温度目標値tmを変更することなく図27に示すサブルーチンの処理を終了し、操作中でない場合には、ステップS1404において、吐出温度目標値tmとして吐水形態に応じた固定記憶吐出温度tM(X)が設定される。
【0169】
次いで、使用者による操作が時刻t704において終了した後、所定の操作中判定時間TKRが経過する時刻t705まで、流調操作部操作状態フラグFkrqの値は1に維持される。
【0170】
時刻t706において、吐水形態が、吐水ヘッド102を上方に向けた状態に切替えられると、図27のステップS1402において、吐出流量目標値Qmとして固定記憶吐出流量QM(1)の値が設定される。これにより、吐出流量が自動的に変更される。さらに、時刻t707において、吐水形態が、吐水ヘッド102を下方に向けた状態に切替えられると、図27のステップS1402において、吐出流量目標値Qmとして固定記憶吐出流量QM(0)の値が設定される。
【0171】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、吐水形態の変更として、吐水ヘッドの装着、引き出し、及び吐水ヘッドの回転を例示したが、「吐水形態の変更」には、以下に例示するように、吐水口の位置が変更される任意の態様、吐水される吐水口が切り替わる任意の態様が含まれるものとする。
【0172】
図28に示す例においては、ハンガー202に掛けられたシャワーヘッド200が正面に向けられた状態を第1の吐水形態、シャワーヘッド200が側方に向けられた状態を第2の吐水形態として、吐水条件を変更するように構成されている。また、この例においては、シャワーヘッド200に埋め込まれた磁石200a、及びこの磁石200aの磁気を検出するハンガー202に埋め込まれたホール素子202aにより吐水形態検出手段を構成している。
【0173】
図28に示す例においては、シャワーヘッド200が側方に向けられた吐水形態において、自動的に吐出流量を減少させることにより、シャワーヘッド200からの吐水が意図しない壁面等にかかるのを防止することができる。
【0174】
さらに、図29に示す水栓装置300は、シャワーヘッド302と、カラン304と、流調操作部306と、温調操作部308と、シャワー吐水スイッチ310と、カラン吐水スイッチ312と、を有する。この水栓装置300は、シャワー吐水スイッチ310及びカラン吐水スイッチ312を押圧することにより、第1の吐水形態であるシャワー吐水と第2の吐水形態であるカラン吐水を切替えることができるように構成されている。シャワー吐水、カラン吐水に応じて適正な吐出流量、吐出温度に自動的に変更することにより、水栓装置の使い勝手を向上させることができる。
【0175】
或いは、図28に示す例と図29に示す例を組合せ、シャワーヘッドを側方に向けた状態を第1の吐水形態、それ以外の状態におけるシャワー吐水を第2の吐水形態、カラン吐水を第3の吐水形態として、夫々に適正な吐出流量、吐出温度に自動的に変更されるように水栓装置を構成することもできる。
【0176】
また、上述した実施形態においては、2つの吐水形態夫々に吐水条件が記憶されていたが、吐水条件を記憶しておく吐水形態は、複数の吐水形態のうちの一部であっても良い。
【0177】
さらに、上述した第1実施形態においては、全ての記憶吐水条件が可変吐水条件であり、第2実施形態においては、全ての記憶吐水条件が固定吐水条件であったが、可変吐水条件と固定吐水条件を、吐水形態毎に混在させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明の第1実施形態による水栓装置全体を示す斜視図であり、吐水ヘッドを水栓本体に装着した状態を示す。
【図2】本発明の第1実施形態による水栓装置全体を示す斜視図であり、吐水ヘッドを水栓本体から引き出した状態を示す。
【図3】本発明の第1実施形態による水栓装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態による水栓装置の作用を示すタイムチャートである。
【図5】水栓装置機能部に内蔵されたコントローラによる制御のフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートから呼び出されるサブルーチンのフローチャートである。
【図7】図5のフローチャートから呼び出されるサブルーチンのフローチャートである。
【図8】図5のフローチャートから呼び出されるサブルーチンのフローチャートである。
【図9】図5のフローチャートから呼び出されるサブルーチンのフローチャートである。
【図10】図5のフローチャートから呼び出されるサブルーチンのフローチャートである。
【図11】第1変形例の作用を示すタイムチャートである。
【図12】第1変形例において使用されるサブルーチンのフローチャートである。
【図13】第2変形例の作用を示すタイムチャートである。
【図14】第2変形例において図5のステップS7、S13から呼び出されるサブルーチンである。
【図15】第3変形例による水栓装置1の作用を示すタイムチャートである。
【図16】第3変形例において図5のステップS7、S13から呼び出されるサブルーチンである。
【図17】本発明の第2実施形態による水栓装置の斜視図であり、吐水口を下方に向けた吐水形態を示す。
【図18】本発明の第2実施形態による水栓装置の斜視図であり、吐水口を上方に向けた吐水形態を示す。
【図19】水栓装置機能部に内蔵されたコントローラによる制御のフローチャートである。
【図20】図19のフローチャートから呼び出されるサブルーチンのフローチャートである。
【図21】吐水ヘッドからの吐水流量を上段に、吐水温度を中段に、吐水ヘッドの回転を下段に示したタイムチャートである。
【図22】第4変形例の作用を示すタイムチャートである。
【図23】第4変形例において使用されるサブルーチンのフローチャートを示す。
【図24】第5変形例の作用を示すタイムチャートである。
【図25】第5変形例において図19に示すフローチャートのステップS1007及びS1012から呼び出されるサブルーチンである。
【図26】第6変形例による水栓装置の作用を示すタイムチャートである。
【図27】第6変形例において、図19のステップS1007、S1012から呼び出されるサブルーチンである。
【図28】吐水形態の一例を示すシャワーヘッドの斜視図である。
【図29】吐水形態の一例を示す水栓装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0179】
Ftk 吐水形態フラグ
Ftkp 直前吐水形態フラグ
Fpm 吐止水モードフラグ
Fkrq 流調操作部操作状態フラグ
Fkrt 温調操作部操作状態フラグ
Qm 吐出流量目標値
Qm(X) 可変記憶吐出流量
QM(X) 固定記憶吐出流量
tm 吐出温度目標値
tm(X) 可変記憶吐出温度
tM(X) 固定記憶吐出温度
QL(X) 吐出流量上限値
tL(X) 吐出温度上限値
Tkrq 流調操作部操作中判定用タイマー
Tkrt 温調操作部操作中判定用タイマー
TKR 操作中判定時間
1 本発明の第1実施形態による水栓装置
2 吐水ヘッド(吐水部)
2a 吐水口
2b シャワーホース
4 洗面ボウル
6 水栓本体
8 流調操作部(操作部)
8a 光照射部
10 温調操作部(操作部)
10a 光照射部
12 水栓装置機能部
14 着脱センサ(吐水形態検出手段)
16 温調バルブ(吐水条件形成手段)
16a 給湯管
16b 給水管
16c モータ
18 流量調整弁(吐水条件形成手段)
20 電磁弁
22 コントローラ(制御手段)
22a メモリ(記憶手段)
100 本発明の第2実施形態による水栓装置
102 吐水ヘッド
102a 吐水口
106 水栓本体
200 シャワーヘッド
200a 磁石
202 ハンガー
202a ホール素子
300 水栓装置
302 シャワーヘッド
304 カラン
306 流調操作部
308 温調操作部
310 シャワー吐水スイッチ
312 カラン吐水スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐水形態を切替えて吐水することが可能であり、所定の吐水条件を設定することができる水栓装置であって、
吐水口を備えた吐水部と、
上記複数の吐水形態のうちのどの吐水形態が選択されているかを検出する吐水形態検出手段と、
複数の吐水形態に対応した複数の吐水条件を記憶した記憶手段と、
上記各吐水形態における吐水条件を変更するための単一の操作部と、
吐水条件に応じた吐水を形成する吐水条件形成手段と、
上記吐水形態検出手段によって検出された吐水形態、上記記憶手段に記憶された記憶吐水条件、及び上記操作部の操作に基づいて、上記吐水条件形成手段を制御して吐水させる制御手段と、を有し、
上記制御手段は、吐水形態が切替られたとき、上記吐水条件形成手段を制御して、切替後の吐水形態について上記記憶手段に記憶されている記憶吐水条件の吐水に変更するが、所定の場合には切替前の吐水条件を維持することを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
上記記憶吐水条件の少なくとも一部は、上記操作部の操作により変更される可変吐水条件である請求項1記載の水栓装置。
【請求項3】
上記記憶吐水条件の少なくとも一部は、予め設定され、固定された固定吐水条件であり、上記操作部による操作は、固定吐水条件が設定された吐水形態に対しては、吐水中の吐水条件のみを変更する請求項1又は2記載の水栓装置。
【請求項4】
吐水条件は吐水温度を含んでおり、上記制御手段は、吐水形態の切替前の吐水温度が、切替後の吐水形態に対応した記憶吐水条件である吐水温度よりも低い場合には、切替前の吐水温度を維持する請求項1乃至3の何れか1項に記載の水栓装置。
【請求項5】
吐水条件は吐水流量を含んでおり、上記制御手段は、吐水形態の切替前の吐水流量が、切替後の吐水形態に対応した記憶吐水条件である吐水流量よりも少ない場合には、切替前の吐水流量を維持する請求項1乃至4の何れか1項に記載の水栓装置。
【請求項6】
上記制御手段は、吐水形態の切替が吐水中に行われた場合には、切替前の吐水条件を維持する請求項1乃至3の何れか1項に記載の水栓装置。
【請求項7】
吐水条件は吐水温度及び吐水流量を含んでおり、上記制御手段は、吐水形態の切替が吐水中に行われた場合、吐水流量は切替後の吐水形態に対応した記憶吐水条件である吐水流量に変更し、吐水温度は切替前の吐水温度を維持する請求項1乃至3の何れか1項に記載の水栓装置。
【請求項8】
上記制御手段は、上記操作部が操作されている間に吐水形態が切替られた場合には、切替前の吐水条件を維持する請求項1乃至3の何れか1項に記載の水栓装置。
【請求項9】
上記吐水部は、吐水口の位置を変更できるように可動に構成され、上記吐水形態の切替は、吐水口の位置の変更である請求項1乃至8の何れか1項に記載の水栓装置。
【請求項10】
上記吐水部はシャワーヘッド及びカランであり、上記吐水形態の切替は、シャワーヘッドからの吐水とカランからの吐水の切替である請求項1乃至8の何れか1項に記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−43465(P2010−43465A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208077(P2008−208077)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】