説明

水洗トイレの流水システム

【課題】 既存のフラッシュバルブをそのまま利用する場合であってもフラッシュバルブの周辺構成の低コスト化及び小型コンパクト化の双方を満足させるとともに、実際の使用状態を的確かつ容易に把握できるようにする。
【解決手段】 駆動モータ5の回転を運動変換機構6により運動変換して、操作ハンドル3を開位置Xo又は閉位置Xcに選択的に変位させる駆動部4と、この駆動部4の出力部4oに係合する係合部3sを形成した操作ハンドル3とを有する駆動機構Udを備えるとともに、少なくとも、予め設定した条件により擬音を発生させ、かつ駆動部4を駆動制御する制御手段7と、この制御手段7の制御に係わるデータDを記憶するデータ記憶手段8とを有するコントロールユニットUcを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュバルブの操作ハンドルを少なくとも開位置に操作して便器に洗浄水を流す水洗トイレの流水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オフィスビルや公共施設等の水洗トイレ、特に、和式大便器を用いた水洗トイレの場合、一回に使用する洗浄水の量は、通常、12リットル程度となり、大量の水道水が使用される。このため、無駄な流水をできるだけ排することが、節水対策において重要な課題となり、従来より、様々な節水機能を施した水洗トイレも知られている。
【0003】
例えば、特開平8−326117号公報には、水洗便器に対して洗浄水を放水するための放水経路上にフラッシュバルブを設け、フラッシュバルブの圧力室内の圧力を変化させることにより、フラッシュバルブ内の弁体を開弁位置及び閉弁位置に移動させて放水経路を開閉するとともに、放水経路とフラッシュバルブの圧力室との間を接続するバイパス経路と、バイパス経路上に設けられ、圧力室内の圧力を変化させるべくバイパス経路を開閉する電磁弁と、フラッシュバルブの圧力室内に水を供給するための給水経路と、電磁弁駆動のための開閉信号を出力する開閉信号出力手段と、開閉信号出力手段からの開閉信号に基づいて、電磁弁を開閉駆動制御する制御手段とを備え、通常は、電磁弁(ソレノイド)の励磁時間(放水時間)を3秒とするとともに、人体感知センサによる使用者の検出時間が120秒を越えたときは、電磁弁(ソレノイド)の励磁時間(放水時間)を10秒に変更して節水効果を得れるようにした水洗便所の節水装置が開示されている。
【特許文献1】特開平8−326117号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来における水洗便所の節水装置(水洗トイレの流水システム)は、次のような問題点があった。
【0005】
第一に、フラッシュバルブ全体を専用のユニットとして構成するため、ユニット単価の高コスト化を強いられる。一方、既存のフラッシュバルブをそのまま利用して構成する場合、コスト面では有利になるものの、フラッシュバルブの外部に追加機構を付加する構成となるため、フラッシュバルブ全体の大型化が強いられ、この対策が課題となる。
【0006】
第二に、一定の節水効果は得れるものの、更なる発展させた節水対策を行ったり節水意識を高めにくい。即ち、実際の使用状態を的確かつ容易に把握できないため、例えば、データ解析を行うなどにより、流水システムの本来の機能や利便性を確保しつつ、更なる発展させた節水対策を行ったり節水意識を高めにくく、結局、節水効果や節水意識を高めるにも限界がある。
【0007】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した水洗トイレの流水システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するため、フラッシュバルブ2の操作ハンドル3を少なくとも開位置に操作して便器Mに洗浄水を流す水洗トイレTの流水システム1を構成するに際して、駆動モータ5の回転を運動変換機構6により運動変換して、操作ハンドル3を開位置Xo又は閉位置Xcに選択的に変位させる駆動部4と、この駆動部4の出力部4oに係合する係合部3sを形成した操作ハンドル3とを有する駆動機構Udを備えるとともに、少なくとも、予め設定した条件により擬音を発生させ、かつ駆動部4を駆動制御する制御手段7と、この制御手段7の制御に係わるデータDを記憶するデータ記憶手段8とを有するコントロールユニットUcを備えることを特徴とする。
【0009】
この場合、発明の好適な態様により、操作ハンドル3は、操作入力側3iと操作出力側3oをオフセットさせた形状Zに形成できる。また、操作ハンドル3を閉位置Xcに戻すリターンスプリング11を備えるとともに、リターンスプリング11の弾性力は、駆動部4を使用しないときの弾性力よりも小さく設定できる。さらに、運動変換機構6には、開位置Xo及び閉位置Xcに対応する出力部4oの位置を検出する位置検出部12を設けることができる。一方、コントロールユニットUcには、データ記憶手段8により記憶したデータDを外部機器Uoに転送可能なデータ通信手段13を設けることができ、このデータDには、少なくとも操作ハンドル3に対する操作の回数に係わるデータDt及び操作時の条件に係わるデータDrを含ませることができる。
【発明の効果】
【0010】
このような構成を有する本発明に係る水洗トイレTの流水システム1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0011】
(1) 開位置Xo又は閉位置Xcに選択的に変位させる駆動部4の出力部4oに係合する係合部3sを有する操作ハンドル3を用いたため、既存のフラッシュバルブ2をそのまま利用する場合であっても、操作ハンドル3の交換により容易に対応することができ、フラッシュバルブ2の周辺構成の低コスト化及び小型コンパクト化の双方を満足させることができる。
【0012】
(2) 駆動機構Udに加え、予め設定した条件により擬音を発生させ、かつ駆動部4を駆動制御する制御手段7と、この制御手段7の制御に係わるデータDを記憶するデータ記憶手段8とを有するコントロールユニットUcを設けたため、実際の使用状態を的確かつ容易に把握できる。したがって、例えば、データ解析を行うなどにより、流水システム1の本来の機能や利便性を確保しつつ、より発展させた節水対策を行ったり節水意識を高めることができる。
【0013】
(3) 好適な態様により、操作ハンドル3を、操作入力側3iと操作出力側3oをオフセットさせた形状Zに形成すれば、フラッシュバルブ2の周辺構成の更なる小型コンパクト化に寄与することができる。
【0014】
(4) 好適な態様により、操作ハンドル3を閉位置Xcに戻すリターンスプリング11を設けるとともに、リターンスプリング11の弾性力を、駆動部4を使用しないときの弾性力よりも小さく設定すれば、駆動モータ5を含む駆動部4の低能力化により、フラッシュバルブ2の周辺構成の更なる低コスト化及び小型化に寄与することができる。
【0015】
(5) 好適な態様により、運動変換機構6に、開位置Xo及び閉位置Xcに対応する出力部4oの位置を検出する位置検出部12を設ければ、フラッシュバルブ2を開位置Xo及び閉位置Xcに確実に切換えることができる。
【0016】
(6) 好適な態様により、コントロールユニットUcに、データ記憶手段8により記憶したデータDを外部機器Uoに転送可能なデータ通信手段13を設ければ、携帯端末等により容易かつ確実にデータ収集を行うことができる。
【0017】
(7) 好適な態様により、データDに、少なくとも操作ハンドル3に対する操作の回数に係わるデータDt及び操作時の条件に係わるデータDrを含ませれば、実際の使用状態をより的確に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
まず、本実施形態に係る水洗トイレTの流水システム1の構成について、図1〜図4を参照して説明する。
【0020】
図1は、水洗トイレTを示し、Mは和式の便器(大便器)である。また、1は、この水洗トイレTに備える流水システムを示す。この流水システム1は、基本構成として、フラッシュバルブユニットUf及びコントロールユニットUcを備える。
【0021】
フラッシュバルブユニットUfは、図2に示すように、ハウジング32を有し、このハウジング32に、フラッシュバルブ2と駆動機構Udを内蔵する。そして、フラッシュバルブ2の左側の側面には流水入口を有し、この流水入口はハウジング32から突出させ、図1に示すように、止水栓21を介して上流側の水道管22に接続するとともに、フラッシュバルブ2の底面は、流水出口となり、この流水出口はバキュームブレーカ23を介して便器M側に接続する。したがって、フラッシュバルブユニットUfを用いるも、水道管22,止水栓21,フラッシュバルブ2,バキュームブレーカ23,便器Mに至る流水経路は、既存の流水経路と実質同じとなる。
【0022】
また、フラッシュバルブ2の右側の側面には突出した操作ハンドル3を備える。本実施形態では、既存のフラッシュバルブ2をそのまま利用するも、この操作ハンドル3及び図3に示すフラッシュバルブ2に内蔵するリターンスプリング11のみ、新たな操作ハンドル3とリターンスプリング11に交換する。この場合、操作ハンドル3は、図3に示すように、操作入力側3iと操作出力側3oをオフセットさせた形状Zとなるように合成樹脂等により一体成形し、操作入力側3iには、後述する駆動部4の出力部4oに係合する長孔による係合部3sを形成する。リターンスプリング11は、フラッシュバルブ2に内蔵するプッシュバー24に装填することにより、このプッシュバー24、更にこのプッシュバー24に当接する操作ハンドル3を閉位置Xc、即ち、フラッシュバルブ2が閉じる位置に戻す機能を有し、特に、弾性力を、駆動部4を使用しないときの弾性力よりも小さくなるように選定する。
【0023】
このような形状Zの操作ハンドル3を用いれば、フラッシュバルブ2の周辺構成の更なる小型コンパクト化に寄与できるとともに、弾性力を小さくしたリターンスプリング11を用いれば、駆動モータ5を含む駆動部4の低能力化により、フラッシュバルブ2の周辺構成の更なる低コスト化及び小型化に寄与できる利点がある。
【0024】
一方、駆動機構Udは、図3に示すように、駆動モータ5の回転を運動変換機構6により運動変換して、操作ハンドル3を、フラッシュバルブ2が開く開位置Xo又はフラッシュバルブ2が閉じる閉位置Xcに選択的に変位させる駆動部4を備える。この駆動部4は、フラッシュバルブ2に係止させた取付プレート35により支持される。なお、駆動部4と操作ハンドル3により駆動機構Udを構成する。この場合、駆動モータ5は、特に種類を問わないが、後述するコントロールユニットUcにより正回転制御及び逆回転制御可能な駆動モータを選定する。例示の駆動モータ5はDCモータである。
【0025】
また、運動変換機構6は、駆動モータ5の出力シャフトに固定したピニオン36,このピニオン36に噛合する減速歯車37,この減速歯車37に噛合する平歯車38,この平歯車38に一端(上端)を固定したスクリュ歯車39,このスクリュ歯車39に螺合するナット歯車40を有し、このナット歯車40は、プランジャ41に固定する。これにより、駆動モータ5における出力シャフトの回転は、ピニオン36,減速歯車37,平歯車38,スクリュ歯車39を介して減速伝達され、スクリュ歯車39に螺合するナット歯車40及びこれに一体のプランジャ41を昇降させる。
【0026】
この場合、プランジャ41の下端は、駆動部4の出力部4oとなり、プランジャ41の下端に設けた係合ピン部42が、操作ハンドル3に形成した係合部3s、即ち、長孔に係合する。さらに、プランジャ41は、図2に示すように、取付プレート35に固定した補助プレート43を用いて構成した上下一対のガイド部44u,44dにより上下方向へ平行移動可能に支持される。また、プランジャ41には、シャッタプレート45を取付けるとともに、補助プレート43には、シャッタプレート45を検出可能な光学センサを用いた上下一対の上位置センサ12uと下位置センサ12dを取付ける。これにより、上位置センサ12u及び下位置センサ12dは、閉位置Xc及び開位置Xoに対応する出力部4oの位置を検出する位置検出部12を構成する。このような位置検出部12を設ければ、フラッシュバルブ2を開位置Xo及び閉位置Xcに確実に切換えることができる利点がある。
【0027】
他方、コントロールユニットUcは、図1に示すように、トイレブースR内の壁面に取付けるケーシング51を備える。ケーシング51の前面には、音声及び擬音を出力するスピーカ52を配設するとともに、使用者の存在を検知する人検知センサ54,非接触スイッチを用いた手動操作スイッチ55及び後述する外部機器Uoに対して交信を行う赤外線送受のための送受信部56等を配した入出力パネル53を設ける。手動操作スイッチ55は前方に手を翳すことによりONさせることができる。なお、入出力パネル53は半透明カバーにより覆われている。そして、このコントロールユニットUcは、ケーブル81を介してフラッシュバルブユニットUfに接続する。
【0028】
さらに、Usは任意の場所に取付けることができる外部操作スイッチであり、無線によりコントロールユニットUcに接続される。この外部操作スイッチUsは、オプションにより設置することができ、必ずしも設置を要するものではない。上述したように、コントロールユニットUcには、外部操作スイッチUsと同様の機能を有する手動操作スイッチ55を備えているが、通常、コントロールユニットUcは、トイレブースRの入口から見て、奥の壁面下寄り位置に配するため、必ずしも操作しやすい場所(位置)に存在するものではない。しかし、外部操作スイッチUsは、任意の場所に取付けることができるため、例えば、清掃者が、自分の操作しやすい位置であって、使用者が無闇に操作できない位置を選定して取付けることができる。外部操作スイッチUsは、上述した手動操作スイッチ55と同じ非接触スイッチを用いることができる。したがって、外部操作スイッチUsの前に手を翳すことによりONさせることができる。なお、Useは他の位置に取付けた場合の外部操作スイッチを示す。一方、仮想線で示すUoは、管理者が携帯可能な携帯端末等の外部機器であり、コントロールユニットUcに対して無線により交信することができる。この外部機器Uoは、表示部57及び操作部58等を備えている。
【0029】
図4に、上述した駆動機構Ud,コントロールユニットUc,外部操作スイッチUs及び外部機器Uoの電気系統ブロック図を示す。同図中、Ucはコントロールユニットであり、マイクロコンピュータ(マイコン)等を利用した制御部61を内蔵する。制御部61には内部メモリ62が付属する。内部メモリ62は、予め設定したシーケンスプログラムを格納するとともに、各種データDを記憶するデータ記憶手段8を構成する。また、63はメモリに登録した音声データを用いてスピーカ52から音声を出力する音声発生部、64はメモリに登録した擬音データを用いてスピーカ52から擬音を出力する擬音発生部であり、それぞれ制御部61に接続する。この場合、音声データにはガイダンスデータが含まれるとともに、擬音データには流水音データが含まれる。その他、コントロールユニットUcにおいて、54は人検知センサ、55は手動操作スイッチ、65は無線送信部及び無線受信部を含む無線通信部であり、それぞれ制御部61に接続する。この無線通信部65には、上述した送受信部56が含まれる。なお、66は、AC100〔V〕電源に接続して直流出力を得る直流電源部である。
【0030】
このような構成を有するコントロールユニットUcは、予め設定した条件により擬音を発生させ、かつ駆動部4を駆動制御する制御手段7を構成するとともに、メモリ62(データ記憶手段8)に記憶したデータDを無線により外部機器Uoに転送可能なデータ通信手段13を構成する。このデータDには、操作ハンドル3に対する操作の回数に係わるデータDt及び操作時の条件に係わるデータDrが含まれる。
【0031】
一方、Udは駆動機構であり、上述した駆動モータ5,上位置センサ12u及び下位置センサ12dを備え、それぞれケーブル81を介して制御部61に接続される。また、Usは外部操作スイッチであり、制御部67を備えるとともに、この制御部67に接続した無線送信機能を有する無線通信部68及び非接触スイッチ69を備える。なお、70は電池等を用いた電源部である。さらに、Uoは外部機器であり、制御部71を備えるとともに、この制御部71に接続したメモリ72,無線送信部及び無線受信部を含む無線通信部73,入出力ポート74,バッテリ等を用いた電源部75を備える。
【0032】
次に、本実施形態に係る流水システム1の使用方法及び動作について、図1〜図7を参照して説明する。
【0033】
まず、流水システム1の全体動作について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。水洗トイレTを使用していない状態であれば、人検知センサ54は非検知状態にあり、コントロールユニットUcは待機モードを維持する(ステップS1)。この場合、操作ハンドル3は閉位置Xcにある。
【0034】
今、使用者(女性)がトイレブースRに入り、水洗トイレTを使用する場合を想定する。使用者が人検知センサ54の検知エリアに入れば、人検知センサ54により使用者が検出され、この検出結果は、制御部61に付与される(ステップS2)。そして、検出状態のまま2秒間が経過すれば、音声発生部63が制御され、スピーカ52から音声ガイダンス、例えば、「このトイレは自動で水が流れます」等の音声ガイダンスが出力する(ステップS3,S4)。したがって、人検知センサ54が検出状態になった後、2秒間が経過する前に非検出状態になったときは、一時的な外乱と考えられるため、待機モードを維持する(ステップS3)。
【0035】
一方、音声ガイダンスの出力が終了したなら続いて擬音発生部64が制御され、スピーカ52から流水音(擬音)が出力する(ステップS5)。女性の場合、一般的な水洗トイレでは、トイレ使用中の音を消すために、洗浄水を流し続ける場合も少なくなく、水道水のかなりの無駄を生じている。したがって、流水音(擬音)を流すことによりトイレ使用中の音を消すようにすれば、かなりの節水効果を得ることができる。なお、擬音の音量は設定可能であり、必要により擬音の種類を選択することもできる。そして、使用者が水洗トイレTの使用を終え、人検知センサ54の検知エリアから離れれば、人検知センサ54は非検出状態となるため、この非検出結果は、制御部61に付与され、擬音の出力が停止する(ステップS6,S7)。このように、擬音は、人検知センサ54が検知状態になってから非検出状態になるまでの間継続することになる。
【0036】
また、制御部61では、内蔵タイマにより、人検知センサ54が検出状態になった時点から非検出状態になる時点までの時間を計時することにより人検知時間Tdを求め、この人検知時間Tdの判定処理を行う(ステップS8)。具体的には、人検知時間Tdを、予め設定した判定時間Ts(通常、90〜120秒)と比較し、Td<Tsであれば、「小」と判定し、Ts≦Tdであれば、「大」と判定する。制御部61では、この判定結果により流水時間を選択して洗浄水を流す時間を制御する(ステップS9,S10)。この場合、「小」と判定した場合の流水時間は、1〜4秒に設定できるとともに、「大」と判定した場合の流水時間は、2〜8秒に設定でき、これらの流水時間の長さは予め設定することができる。なお、人検知センサ54が検出状態になってから所定時間経過しても非検出状態にならないときは、使用者に何らかの異常が発生したことが考えられるため、ステップS8における判定処理では、異常発生と判定し、アラーム音を発生させたり、管理室に通報するなどの異常処理を行わせることができる。そして、選択した流水時間が経過したなら洗浄水を停止する制御を行う(ステップS11,S12)。
【0037】
洗浄水を流す制御と停止する制御は、次のように行われる。まず、洗浄水を流す制御は、制御部61から駆動モータ5に対して正回転駆動信号を供給する。これにより、駆動モータ5が正回転し、スクリュ歯車39が正回転することによりナット歯車40が下降する。ナット歯車40の下降により、これと一体のプランジャ41も下降し、出力部4oに係合する操作ハンドル3が押し下げられる。そして、図3に示すように、操作ハンドル3が閉位置Xcから開位置Xoまで変位すれば、シャッタプレート45が下位置センサ12dにより検出され、制御部61は駆動モータ5を停止制御する。操作ハンドル3が開位置Xoに変位すれば、操作ハンドル3の操作出力側3oがプッシュバー24を、図3中、左方向に押し出すため、フラッシュバルブ3は開状態となり、洗浄水が便器Mに流れる。この際、プッシュバー24はリターンスプリング11の弾性に抗して変位する。
【0038】
他方、洗浄水を停止する制御は、制御部61から駆動モータ5に対して逆回転駆動信号を供給し、駆動モータ5を逆回転させる。これにより、スクリュ歯車39が逆回転し、ナット歯車40が上昇する。ナット歯車40の上昇によりプランジャ41も上昇し、出力部4oに係合する操作ハンドル3が引き上げられる。そして、操作ハンドル3が開位置Xoから図2に示す閉位置Xcまで変位すれば、シャッタプレート45が上位置センサ12uにより検出され、制御部61は駆動モータ5を停止制御する。また、この際、操作ハンドル3に対する操作の回数に係わるデータDtと、操作時の条件、即ち、流水時間に係わるデータDrは、メモリ62に記憶される(ステップS13)。このように、データDに、操作ハンドル3に対する操作の回数に係わるデータDt及び操作時の条件に係わるデータDrを含ませれば、実際の使用状態をより的確に把握することができる。この後は、システム1を停止させない限り、同様の動作(処理)が繰り返される(ステップS14)。
【0039】
なお、コントロールユニットUcに備える手動操作スイッチ55を手動で操作することにより任意に洗浄水を流すことができる。したがって、例えば、清掃者が清掃時等に任意に洗浄水を流すことができる。図6は、手動操作スイッチ55を操作した際の動作をフローチャートで示す。今、コントロールユニットUcは待機モードにあるものとする(ステップS21)。この状態において、清掃者が入出力パネル53(手動操作スイッチ55)の前に手を翳せば、手動操作スイッチ55がONする(ステップS22)。これにより、制御部61は、駆動モータ5に対して正回転駆動信号を供給し、操作ハンドル3を開位置Xoに変位させることにより、フラッシュバルブ3を開状態にして便器Mに洗浄水を流す(ステップS23)。そして、予め設定した流水時間が経過したなら、制御部61は、駆動モータ5に対して逆回転駆動信号を供給し、操作ハンドル3を閉位置Xcに変位させることにより、フラッシュバルブ3を閉状態にして洗浄水を停止させる(ステップS24,S25)。この際、操作ハンドル3に対する操作及び流水時間は、手動操作に基づくデータDt,Drとしてメモリ62に記憶される。手動操作スイッチ55による動作の態様は、例示のように、予め設定した流水時間により行ってもよいし、その他、手を翳している間だけ洗浄水が流れるようにする態様、或いは手を瞬間的に翳して小流量の洗浄水を流し、手を2秒以上翳して大流量の洗浄水を流す態様など、任意の態様を採用できる。
【0040】
また、外部操作スイッチUsの場合も、基本的な動作は手動操作スイッチ55の場合と同じである。外部操作スイッチUsの異なる点は、外部操作スイッチUsの前に手を翳せば、外部操作スイッチUsがONし、このON結果は、制御部67を介して無線通信部68に付与される。そして、無線通信部68から無線によりコントロールユニットUcの無線通信部65に送信され、制御部61に付与される点であり、以後の動作は、手動操作スイッチ55の場合と同じである。
【0041】
一方、外部機器Uoを用いて、各種条件設定やデータ収集等を行うことができる。図7は、一例としてメモリ62に記憶されたデータDを外部機器Uoにより収集する際の動作をフローチャートを示す。データDを収集する際には、まず、図1に示すように、仮想線で示す外部機器Uo(携帯端末)の上端(送受信部)をコントロールユニットUcに向け、データDを収集するための所定のキー操作を行う(ステップS31)。これにより、外部機器UoからデータDを収集するための指令信号が無線通信部73から送信される(ステップS32)。そして、コントロールユニットUcは、送受信部56により指令信号を受信する(ステップS33)。これにより、制御部61はメモリ62に記憶されているデータDを読み出すとともに、無線通信部65を介して外部機器Uoに送信する(ステップS34)。外部機器Uoは、無線通信部73によりデータDを受信するとともに、このデータDは外部機器Uoのメモリ72に記憶される(ステップS35,S36)。
【0042】
このように、コントロールユニットUcには、メモリ62に記憶したデータDを無線により外部機器Uoに転送可能なデータ通信手段13を備えている。このようなデータ通信手段13を備えることにより、携帯端末等により容易かつ確実にデータ収集を行うことができる利点がある。なお、各種条件設定を行う場合も基本的には同様の動作となる。この場合、予め外部機器Uoにおいて各種条件を設定し、設定した各種条件に係わる設定データを外部機器UoからコントロールユニットUcに無線で転送できる。したがって、コントロールユニットUcにおいて直接設定する煩わしさを解消できる。
【0043】
よって、このような本実施形態に係る水洗トイレTの流水システム1によれば、開位置Xo又は閉位置Xcに選択的に変位させる駆動部4の出力部4oに係合する係合部3sを有する操作ハンドル3を用いたため、既存のフラッシュバルブ2をそのまま利用する場合であっても、操作ハンドル3の交換により容易に対応することができ、フラッシュバルブ2の周辺構成の低コスト化及び小型コンパクト化の双方を満足させることができる。また、駆動機構Udに加え、予め設定した条件により擬音を発生させ、かつ駆動部4を駆動制御する制御手段7と、この制御手段7の制御に係わるデータDを記憶するデータ記憶手段8とを有するコントロールユニットUcを設けたため、実際の使用状態を的確かつ容易に把握できる。したがって、例えば、データ解析を行うなどにより、流水システム1の本来の機能や利便性を確保しつつ、より発展させた節水対策を行ったり節水意識を高めることができる。
【0044】
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,手法,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0045】
例えば、駆動部4(運動変換機構6)の構成は例示の機能と同様の機能を有する他の形態により置換できる。また、操作ハンドル3は、操作入力側3iと操作出力側3oをオフセットさせたクランク形の形状Zを例示したが、他の形状Zを排除するものではない。一方、データ通信手段13として無線手段を例示したが有線手段を排除するものではない。さらに、外部機器Uoとして、携帯端末を例示したが、ノートパソコンや多機能携帯電話等を利用できる。なお、携帯端末は専用端末であるか汎用端末であるかを問わない。また、データDとして、操作ハンドル3に対する操作の回数に係わるデータDt及び操作時の条件に係わるデータDrを例示したが、使用者の滞在時間(使用時間)等の各種データを適用できる。さらに、操作スイッチ55…も押ボタンスイッチ等の各種形態のスイッチを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る流水システム全体の外観構成図、
【図2】同流水システムにおけるフラッシュバルブユニットの断面構成図、
【図3】同流水システムにおける要部の原理構成図、
【図4】同流水システムの電気系統ブロック図、
【図5】同流水システムの全体動作を説明するためのフローチャート、
【図6】同流水システムにおける手動操作スイッチを操作した際の動作を説明するためのフローチャート、
【図7】同流水システムにおけるデータを外部機器により収集する際の動作を説明するためのフローチャート、
【符号の説明】
【0047】
1 流水システム
2 フラッシュバルブ
3 操作ハンドル
3s 係合部
3i 操作ハンドルの操作入力側
3o 操作ハンドルの操作出力側
4 駆動部
4o 出力部
5 駆動モータ
6 運動変換機構
7 制御手段
8 データ記憶手段
11 リターンスプリング
12 位置検出部
13 データ通信手段
M 便器
T 水洗トイレ
D データ
Dt 操作の回数に係わるデータ
Dr 操作時の条件に係わるデータ
Uc コントロールユニット
Ud 駆動機構
Uo 外部機器
Xo 開位置
Xc 閉位置
Z 操作ハンドルの形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッシュバルブの操作ハンドルを少なくとも開位置に操作して便器に洗浄水を流す水洗トイレの流水システムにおいて、駆動モータの回転を運動変換機構により運動変換して、前記操作ハンドルを開位置又は閉位置に選択的に変位させる駆動部と、この駆動部の出力部に係合する係合部を形成した前記操作ハンドルとを有する駆動機構を備えるとともに、少なくとも、予め設定した条件により擬音を発生させ、かつ前記駆動部を駆動制御する制御手段と、この制御手段の制御に係わるデータを記憶するデータ記憶手段とを有するコントロールユニットを備えることを特徴とする水洗トイレの流水システム。
【請求項2】
前記操作ハンドルは、操作入力側と操作出力側をオフセットさせた形状に形成することを特徴とする請求項1記載の水洗トイレの流水システム。
【請求項3】
前記操作ハンドルを前記閉位置に戻すリターンスプリングを備えるとともに、前記リターンスプリングの弾性力は、前記駆動部を使用しないときの弾性力よりも小さく設定することを特徴とする請求項1記載の水洗トイレの流水システム。
【請求項4】
前記運動変換機構には、前記開位置及び前記閉位置に対応する前記出力部の位置を検出する位置検出部を備えることを特徴とする請求項1記載の水洗トイレの流水システム。
【請求項5】
前記コントロールユニットは、前記データ記憶手段により記憶したデータを外部機器に転送可能なデータ通信手段を備えることを特徴とする請求項1記載の水洗トイレの流水システム。
【請求項6】
前記データには、少なくとも前記操作ハンドルに対する操作の回数に係わるデータ及び操作時の条件に係わるデータを含むことを特徴とする請求項1又は5記載の水洗トイレの流水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−92348(P2007−92348A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281273(P2005−281273)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(504133291)株式会社ヒューネット・ジャパン (9)
【出願人】(390034153)株式会社バイタル (6)
【Fターム(参考)】