説明

水添石油樹脂の製造方法

【課題】水添石油樹脂ペレットを容易に製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】水素化溶媒除去工程で水素化溶媒を分離した後の溶融樹脂である水素化化合物(水添石油樹脂)の近赤外吸収スペクトルを測定し、検量線データに基づいて水素化化合物の物性値であるアロマ含有率と臭素価と軟化点とを算出する。近赤外分析で測定したアロマ含有率と臭素価と、製造目的の水添石油樹脂ペレットのアロマ含有率と臭素価との差分が小さくなるように、水素化反応部3における温度と、圧力と、反応時間と、水素量とのうちの少なくともいずれか1つの運転条件を制御する。近赤外分析で測定した軟化点と、製造目的の水添石油樹脂ペレットの軟化点との差分が小さくなるように、薄膜蒸発機42の温度と圧力とのうちの少なくともいずれか一方を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水添石油樹脂を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつの製造や製本、各種包装などにホットメルト接着剤が広く普及している。例えば、ホットメルト接着剤として、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(Styrene-Butadiene-Styrene block copolymer:以下、SBSと称す。)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(Styrene-Isoprene-Styrene block copolymer:以下、SISと称す。)、エチレン酢酸ビニル共重合体(Ethylene Vinyl Acetate block copolymer:以下、EVAと称す。)、非晶性ポリアルファオレフィン(Amorphous PolyAlpha-Olefin:以下、APAOと称す。)などが挙げられる。該ベースポリマーに、粘着性付与剤としての水添石油樹脂が配合されている。
水添石油樹脂は、例えば特許文献1に記載のように、シクロペンタジエンにスチレンモノマーを重合させて得られた重合物を水素化する水添処理により生成される。取り扱いの点から、半球状ペレットに製造されることがある。
水添石油樹脂の製造においては、造粒された水添石油樹脂を分析し、分析結果に基づいて重合条件や水素化条件を調整するバッチ処理により、所定の物性の水添石油樹脂を製造している。
しかしながら、所望の物性の水添石油樹脂ペレットを製造するために、製品ペレットの分析結果に基づいて製造条件を調整する作業を適宜繰り返すバッチ処理では、作業に時間が掛かり、かつ、煩雑であることから、生産管理の容易化が望まれている。
例えば、特許文献2〜4に示されているように、合成樹脂の製造において、近赤外分光分析装置を用いて、製造中の樹脂の吸収スペクトルを測定し、最終製品の物性を予測して製造工程を制御する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/056882号
【特許文献2】特開2002−145966号公報
【特許文献3】特許第4385433号公報
【特許文献4】特許第2865755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、所望の物性の水添石油樹脂ペレットを製造するため、特許文献2〜4に記載のような近赤外分光分析により製造工程を制御する方法を適用することが考えられる。
しかしながら、水添石油樹脂ペレットは、水素化溶媒中で水添反応をした後、適宜水素化溶媒や低分子量体を除去することで、所望の物性となる水添石油樹脂が得られるため、製造工程を適切に制御することは困難である。
本発明の目的は、水添石油樹脂を容易に製造できる水添石油樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水添石油樹脂の製造方法は、水素化溶媒を分離した後の溶融樹脂の近赤外吸収スペクトルを測定し、測定された結果に基づいて、水添石油樹脂を製造する方法を制御することを特徴とする。
【0006】
本発明では、前記水添石油樹脂ペレットを製造する方法の制御としては、測定された結果が、前記溶融樹脂中のアロマ含有率と臭素価とのうちの少なくともいずれか一方の物性値を示し、該物性値と、製造目的とする水添石油樹脂ペレットの物性値との差が小さくなるように水素化反応の温度と、圧力と、反応時間と、水素量のうちの少なくともいずれか1つを制御する構成とすることが好ましい。
【0007】
本発明では、前記水添石油樹脂ペレットを製造する方法の制御としては、測定された結果が、前記溶融樹脂の軟化点を示し、該軟化点と、製造目的とする水添石油樹脂ペレットの軟化点との差が小さくなるように前記水素化溶媒または低分子量体を分離する工程の温度と圧力とのうちの少なくともいずれか一方を制御する構成とすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の水添石油樹脂の製造方法に係る水添石油樹脂ペレットの製造プラントの概略構成を示すブロック図。
【図2】前記水添石油樹脂ペレットの製造プラントにおける近赤外分析部の検量データーベースに記憶されたアロマ含有率に関する検量線データをグラフで示す説明図。
【図3】前記近赤外分析部の検量データーベースに記憶された臭素価に関する検量線データをグラフで示す説明図。
【図4】前記近赤外分析部の検量データーベースに記憶された軟化点に関する検量線データをグラフで示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の造粒物の搬送装置として、水添石油樹脂ペレットの搬送装置に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
本発明では、粒状物として水添石油樹脂ペレットを例示するが、これに限らず、各種粒状物にも適用でき、特に衝撃により破損し易い粒状物を対象とすることができる。
まず、水添石油樹脂ペレットの搬送装置を備えた水添石油樹脂ペレットを製造する製造プラントの構成について、以下に説明する。
【0010】
[水添石油樹脂ペレットの製造プラントの構成]
図1に示すように、水添石油樹脂ペレットの製造プラント1は、水添石油樹脂原料から水添石油樹脂ペレットを製造するプラントである。
該製造プラント1は、重合反応部2と、水素化反応部3と、水素化溶媒回収部4と、造粒部5と、搬送部6と、貯蔵部7と、図示しない制御部と、を備えている。
【0011】
(重合反応)
重合反応部2は、シクロペンタジエン系化合物とビニル芳香族系化合物とを熱重合させて共重合物を得る重合反応を実施する。
該重合反応部2は、溶媒を用いて水添石油樹脂原料であるシクロペンタジエン系化合物とビニル芳香族系化合物と熱重合反応を実施する重合反応槽などを備えている。
シクロペンタジエン系化合物としては、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエンの他、これらの二量体や共二量体などが例示できる。
ビニル芳香族系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどが例示できる。
溶媒としては、芳香族系溶媒、ナフテン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒などが例示できる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどが好適に使用できる。溶媒は、重合反応槽から適宜回収されて再利用される。
回収された溶媒の中には、通常、分子量200〜350程度の低分子量体が含まれる。
物性低下を防ぐために、熱重合用の溶媒として再使用される場合の溶媒の低分子量体の濃度は、少なくとも4質量%以下にする。回収溶媒中の低分子量体の含有量によっては、低分子量体を別途分離除去したり、あるいは新溶媒で希釈したりして、4質量%以下の低分子量体濃度とし、重合反応の開始時の重合用の溶媒として使用する。
【0012】
重合反応槽は、加圧および加熱下で重合を実施する反応器で、図示しない攪拌装置と加熱装置とを備えている。そして、重合反応槽には、第一原料タンク、第二原料タンクおよび溶媒回収部の溶媒タンクが接続され、シクロペンタジエン系化合物、ビニル芳香族系化合物および溶媒が適宜流入される。また、重合反応槽の底部は、得られた共重合物を流出し、次の水添反応に供する。
ここで、シクロペンタジエン系化合物とビニル芳香族化合物との混合割合に特に制限はないが、通常は質量比でシクロペンタジエン系化合物:ビニル芳香族化合物=70:30〜20:80の割合である。
また、重合溶媒の使用量は、モノマー混合物100質量部に対して、50〜500質量部の割合である。
【0013】
そして、重合反応槽では、熱重合の開始時、溶媒の温度を100℃、好ましくは150℃以上に加熱しておくことが望ましい。重合反応器21では、加熱された溶媒中にシクロペンタジエン系化合物とビニル芳香族化合物との混合物が分割添加されながら共重合を行う。
分割添加時間は通常、0.5〜5時間であり、等分に添加することが望ましい。該共重合反応は、シクロペンタジエン系化合物とビニル芳香族化合物との混合物を分割添加し終わった後も引き続き反応を行わせることが望ましい。その時の反応条件に特に制限はないが、通常は反応温度150℃以上350℃以下、反応圧力は、0MPa以上2MPa以下、反応時間は、1時間以上10時間以下である。
そして、重合反応槽は、これらの熱重合の条件により、軟化点が60℃以上130℃以下、ビニル芳香族系化合物の含有量が30質量%以上90質量%以下、臭素価が30g/100g以上90g/100g以下、数平均分子量が400以上1000以下の共重合物を得る。
【0014】
(水素化反応)
水素化反応部3は、重合反応部2で熱重合により生成された共重合物に水素を添加し水素化反応物を得る水素化反応を実施する。
該水素化反応部3は、重合反応部2で熱重合により生成された共重合物に水素化溶媒の存在下で水素を添加して水素化反応を実施する複数の水素化反応塔などを備えている。
水素化溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、テトラヒドロフランなどが用いられる。
水素化反応塔は、水素化反応触媒がそれぞれ充填された塔であり、多段に用いても良い。水素化反応触媒としては、ニッケル、パラジウム、コバルト、白金、ロジウム系触媒などが用いられる。そして、水素化反応塔31は、水素化反応触媒の存在下で、水素と共重合物を、120〜300℃の温度、1〜6MPaの反応圧力、1〜7時間の反応時間で水素化反応させる。
上記水素化反応の条件により、軟化点が70℃以上140℃以下、ビニル芳香族系化合物の含有量が0質量%以上35質量%以下、臭素価が0g/100g以上30g/100g以下、数平均分子量が400以上1000以下の水素化反応物を得る。
水素化反応部3では、水素化反応塔による水素化反応後、未反応の水素を含む気相分を分離して適宜回収し系外にて処理する。
【0015】
(水素化溶媒除去)
水素化溶媒回収部4は、水素化反応物から水素化溶媒を分離除去する。該水素化溶媒回収部4は、第一蒸発器である溶媒蒸発槽41と、第二蒸発器である薄膜蒸発機42と、などを備えている。
溶媒蒸発槽41は、水素化反応部3に接続され、水素化反応部3で得られた水素化反応物から水素化溶媒を蒸発させて分離回収する。蒸発させた水素化溶媒は、別途回収され、水素化反応部3における水素化反応で利用する水素化溶媒として再利用される。
薄膜蒸発機42は、溶媒蒸発槽41に接続され、水素化反応物に残留する水素化溶媒を蒸発させて分離回収する。蒸発させた水素化溶媒および低分子量体は、別途回収され、製造する水添石油樹脂ペレットの物性値に対応して、水素化反応部3における水素化反応で利用する水素化溶媒として適宜再利用される。
【0016】
水素化溶媒回収部4の溶媒蒸発槽41と薄膜蒸発機42との間には、酸化防止剤を添加する添加部が設けられている。
酸化防止剤の添加部は、溶媒蒸発槽41で大半の水素化溶媒が除去された水素化反応物に、酸化防止剤を添加する。
酸化防止剤を溶解する溶媒としては、後段の薄膜蒸発機42による蒸発処理で、酸化防止剤を溶解した溶媒とともに残留する水素化溶媒を分離し、回収した水素化溶媒を水素化反応に再利用することができる。水素化反応に影響を及ぼさないためである。
そして、酸化防止剤を溶解した溶媒は、下流側の薄膜蒸発機42により、水素化溶媒とともに水素化反応物から分離回収される。
【0017】
水素化溶媒回収部4と後段の造粒部との間には、水素化溶媒および低分子量体が除去された水素化反応物である溶融樹脂、すなわち造粒前の溶融した水添石油樹脂の物性を測定する近赤外分析部45が設けられている。
この近赤外分析部45は、溶融樹脂を供給ポンプ44により造粒部5へ供給される水添石油樹脂の溶融樹脂の物性を近赤外線により測定する。具体的には、近赤外分析部45は、溶融樹脂が流通する透光性の透光性配管と、透光性配管を流通する溶融樹脂に近赤外線を照射して近赤外吸収スペクトルを検出するスペクトル検出部と、スペクトル検出部で検出された近赤外吸収スペクトルから検量データベースに基づいて溶融樹脂の物性を演算する演算部を備えている。
【0018】
ここで、検量データベースは、製造された各種水添石油樹脂ペレットの近赤外吸収スペクトルを測定し、その水添石油樹脂ペレットの物性を実際に測定した結果に基づく検量線データが構築されている。
検量線データは、例えば図2のグラフにて示されるように、溶融樹脂のアロマ含有率の検量線のデータ、例えば図3のグラフにて示されるように、溶融樹脂の臭素価の検量線のデータ、例えば図4のグラフにて示されるように、製造する水添石油樹脂ペレットの軟化点の検量線のデータ、を記憶する。
これら検量線は、既に製造された各種水添石油樹脂ペレットのアロマ含有率、臭素価、および軟化点を測定した図2〜4中の点で示す測定結果に基づいて作成される。これら検量線の作成は、従来利用されている各種演算方法で求められる。
【0019】
演算部は、スペクトル検出部で検出した水素化反応物の近赤外吸収スペクトルの測定結果から、検量データベースの検量線データに基づいて、測定した溶融樹脂の物性、すなわち水添化合物のアロマ含有率、臭素価、および軟化点を演算する。
そして、演算部は、検出した水添石油樹脂ペレットの物性を制御部に送信し、製造中の水添石油樹脂ペレットが所望の物性となるように、製造プラント1の運転状況を調整させる。
【0020】
(造粒)
造粒部5は、水素化溶媒が除去され酸化防止剤が添加された水素化反応物である溶融樹脂を、半球状のペレット状の水添石油樹脂ペレットに造粒する。造粒部5は、図示しない造粒機と、造粒空冷部などを備えている。
造粒機は、例えば溶融樹脂を冷却コンベヤ上に滴下して半球状の水添石油樹脂ペレットを造粒する。造粒された水添石油樹脂ペレットは、冷却コンベヤから掻き取られ、貯蔵部7へ搬送する搬送部6へ供給される。
【0021】
(搬送)
搬送部6は、造粒部5で造粒された水添石油樹脂ペレットを、貯蔵部7へ搬送する。
該搬送部6は、造粒部5に接続されたシュート、搬送コンベヤ、バケットコンベヤなどを備え、水添石油樹脂ペレットを搬送する。
なお、搬送部6は、このような構成に限らず、各種搬送装置や構造物を利用できる。特に、水添石油樹脂ペレットが比較的に脆いため、搬送時の衝撃により水添石油樹脂ペレットが損傷しない構成としたものが好ましい。
【0022】
(貯蔵)
貯蔵部7は、搬送部6で搬送された水添石油樹脂ペレットを適宜取り出し可能に貯蔵する。
該貯蔵部7は、図示しない貯蔵ホッパーと、搬送部6のバケットコンベヤで搬送された水添石油樹脂ペレットを所定の貯蔵ホッパーに投入する図示しない切替部を備えている。
【0023】
(制御)
制御部は、製造プラント1全体の工程を制御する。この制御部は、各種プログラムやデータベースを記憶する記憶装置と、プログラムを実行し各種演算を実施する演算装置とを備え、製造プラント1全体の工程を制御する。具体的には、重合部2における重合反応や水素化反応部3における水素化反応の温度、圧力、反応時間の制御、水素化溶媒回収部4の水素化溶媒の回収、酸化防止剤の添加部における酸化防止剤の添加、造粒部5における水添石油樹脂ペレットの造粒、搬送部6における搬送動作や吸排気、各種バルブやブロワ、ポンプの運転状況の制御などである。
また、制御部は、近赤外分析部の演算部から送信される製造中の水素化化合物における特性値と、製造目的の水添石油樹脂ペレットの物性値とを比較し、近赤外線分析により検出した特性が製造目的の物性となるように、製造プラント1の運転状況を制御する。具体的には、測定したアロマ含有率と製造目的のアロマ含有率との差分、測定した臭素価値と製造目的の臭素価値との差分に応じて、水素化反応の条件である温度、圧力、反応時間、水素量のうちの少なくともいずれか1つの運転条件を変更する制御をする。また、測定した軟化点と製造目的の軟化点との差分に応じて水素化溶媒または分子量体を分離する水素化溶媒除去工程における薄膜蒸発機42の温度と圧力とのうちの少なくともいずれか一方の運転条件を変更する制御をする。
【0024】
[実施形態の作用効果]
上述したように、上記実施形態では、水素化溶媒除去工程で水素化溶媒を分離した後の溶融樹脂である水素化化合物(水添石油樹脂)の近赤外吸収スペクトルを測定し、検量線データに基づいて水素化化合物の物性値を算出し、得られた物性値に基づいて水添石油樹脂ペレットを製造する一連の工程を制御している。
このため、製造している水添石油樹脂の物性を、製造プラント外で分析する必要がなく自動的に検出でき、自動的に検出した物性に基づいて運転を制御することが可能となり、容易に所望の物性の水添石油樹脂を製造できる。
【0025】
また、上記実施形態では、測定した近赤外吸収スペクトルの測定結果から示されるアロマ含有率と臭素価との少なくともいずれか一方の物性値と、製造目的とする水添石油樹脂ペレットのこれらの物性値との差が小さくなる状態に、アロマ含有率と臭素価とに影響する水素化反応の温度と、圧力と、反応時間と、水素量とのうちの少なくともいずれか1つを制御している。
このため、容易に所望の物性の水添石油樹脂を製造できる。
【0026】
さらに、上記実施形態では、測定した近赤外吸収スペクトルの測定結果から示される軟化点と、製造目的とする水添石油樹脂ペレットの軟化点との差が小さくなる状態に、軟化点に影響する水素化溶媒または低分子量体を分離する工程の温度と圧力とのうちの少なくともいずれかを制御している。
このため、容易に所望の物性の水添石油樹脂を製造できる。
【0027】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
具体的には、制御部が、製造プラントの運転条件をプログラムなどにより制御する場合に限らず、例えば測定結果に基づいて製造プラントの運転条件を制御する旨を作業者に報知して、報知結果に基づいて作業者が運転条件を変更する構成としてもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、アロマ含有率と臭素価と軟化点とをそれぞれ測定し、水素化反応工程の運転条件および水素化溶媒除去工程の運転条件を制御する構成を例示したが、アロマ含有率と臭素価と軟化点とのうちのいずれか1つもしくは2つの物性値のみを測定してもよい。また、アロマ含有率あるいは臭素価に基づく水素化反応工程の運転条件の制御としては、水素化反応における温度と、圧力と、反応時間と、水素量との全てを制御する場合に限らず、少なくともいずれか1つの運転条件を制御する構成であればよい。同様に、軟化点に基づく水素化溶媒除去工程の運転条件の制御としては、薄膜蒸発機42の温度と圧力との双方を制御する場合に限らず、温度と圧力とのうちの少なくともいずれか一方の運転条件を制御する構成であればよい。
また、水素化反応工程では、溶媒蒸発槽41と薄膜蒸発機42との二段処理で説明したが、一段のみ、もしくは三段以上で水素化溶媒さらには低分子量体を分離させるなどしてもよい。この様な場合、特に軟化点に影響する低分子量体を分離する工程における温度と圧力とのうちの少なくともいずれか一方の運転条件を制御する構成であればよい。
【0029】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構成に変更するなどしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、水素化溶媒を分離して溶融樹脂を得る水添石油樹脂ペレットの製造に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
3…水素化反応部
4…水素化溶媒回収部
42…薄膜蒸発機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化溶媒を分離した後の溶融樹脂の近赤外吸収スペクトルを測定し、
測定された結果に基づいて、水添石油樹脂ペレットを製造する方法を制御する
ことを特徴とする水添石油樹脂の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水添石油樹脂の製造方法において、
前記水添石油樹脂を製造する方法の制御としては、
測定された結果が、前記溶融樹脂中のアロマ含有率と臭素価とのうちの少なくともいずれか一方の物性値を示し、
該物性値と、製造目的とする水添石油樹脂ペレットの物性値との差が小さくなるように水素化反応の温度と、圧力と、反応時間と、水素量とのうちの少なくともいずれか1つを制御する
ことを特徴とする水添石油樹脂の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の水添石油樹脂の製造方法において、
前記水添石油樹脂を製造する方法の制御としては、
測定された結果が、前記溶融樹脂の軟化点を示し、
該軟化点と、製造目的とする水添石油樹脂ペレットの軟化点との差が小さくなるように前記水素化溶媒または低分子量体を分離する工程の温度と圧力とのうちの少なくともいずれか一方を制御する
ことを特徴とする水添石油樹脂の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−251050(P2012−251050A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123664(P2011−123664)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】