説明

水添石油樹脂を含有するスキン層を有する発泡壁紙

【課題】押出し成形により好適に製造できる、発泡樹脂層のおもて面に分子量の大きな樹脂層を有し、しかもカールの発生が抑制された発泡壁紙を提供する。
【解決手段】紙質基材上に、発泡樹脂層を有する発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層の表面であって、紙質基材の存在する側とは逆面には、分子量50000以上の樹脂をマトリックス樹脂とするスキン層が形成されており、
(2)スキン層は、前記マトリックス樹脂100重量部に対して10〜35重量部の水添石油樹脂を含有する、
ことを特徴とする発泡壁紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水添石油樹脂を含有するスキン層を有する発泡壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡壁紙としては、紙質基材(裏打紙)に塩化ビニル樹脂からなる発泡樹脂層を形成したものが知られている。近年では、環境に配慮し、発泡樹脂層には、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂等のハロゲンを含有しない樹脂が用いられてきている(特許文献1〜3等)。
【0003】
具体的には、アクリル樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とを含むエマルションにマイクロカプセル型発泡剤を配合した塗料を、紙質基材上に塗工・乾燥後、表面に絵柄模様層を印刷し、次いで樹脂層を発泡後、エンボス版により凹凸模様を賦型してなる発泡壁紙が知られている。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂と熱分解型発泡剤とを含有する組成物からなる未発泡樹脂層を、Tダイ押出し機により紙質基材上に押出し形成後、表面に絵柄模様層を印刷し、次いで未発泡樹脂層を発泡後、エンボス版により凹凸模様を賦型してなる発泡壁紙が知られている。
【0004】
発泡壁紙は耐スクラッチ性が高いことが望ましい。そのため、耐スクラッチ性を担保するため、従来から発泡樹脂層のおもて面に分子量の大きな樹脂層(硬度の高い樹脂層)を形成することが行われている。
【0005】
しかしながら、分子量の大きな樹脂層は、当該分子量の大きな樹脂の結晶化による収縮影響が大きく、発泡壁紙がカールし易いという問題がある。
【0006】
また、分子量の大きな樹脂層は、押出し成形により形成するには適していない。これは、分子量の大きな樹脂は、流動性が低い(換言するとメルトフローレートが小さい)ため、押出し成形機内で良好な流動性を確保できないからである。しかしながら、押出し成形が容易に実施できれば、発泡樹脂層と前記分子量の大きな樹脂層とを同時成形できるため、発泡壁紙の製造効率を考慮すると、押出し成形できることが望ましい。
【0007】
従って、押出し成形により好適に製造できる、発泡樹脂層のおもて面に分子量の大きな樹脂層を有し、しかもカールの発生が抑制された発泡壁紙の開発が望まれている。
【特許文献1】特開平6−47875号公報
【特許文献2】特開2000−255011号公報
【特許文献3】特開2001−347611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、押出し成形により好適に製造できる、発泡樹脂層のおもて面に分子量の大きな樹脂層を有し、しかもカールの発生が抑制された発泡壁紙を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、押出し成形工程を含む、上記発泡壁紙の好適な製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、分子量の大きな樹脂層に特定の樹脂を共存させる
場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の発泡壁紙及びその製造方法に関する。
【0012】
1.紙質基材上に、発泡樹脂層を有する発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層の表面であって、紙質基材の存在する側とは逆面には、分子量50000以上の樹脂をマトリックス樹脂とするスキン層が形成されており、
(2)スキン層は、前記マトリックス樹脂100重量部に対して10〜35重量部の水添石油樹脂を含有する、
ことを特徴とする発泡壁紙。
【0013】
2.前記マトリックス樹脂のメルトフローレートが、2〜30g/10分である、上記項1に記載の発泡壁紙。
【0014】
3.前記マトリックス樹脂が、高密度ポリエチレン樹脂である、上記項1に記載の発泡壁紙。
【0015】
4.発泡樹脂層を構成する樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂である、上記項1〜3のいずれかに記載の発泡壁紙。
【0016】
5.紙質基材と発泡樹脂層との間に、さらに非発泡樹脂層を有する、上記項1〜4のいずれかに記載の発泡壁紙。
【0017】
6.前記非発泡樹脂層を構成する樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂である、上記項5に記載の発泡壁紙。
【0018】
7.少なくとも発泡樹脂層を構成する樹脂が架橋している、上記項4又は6に記載の発泡壁紙。
【0019】
8.押出し成形により、分子量50000以上の樹脂をマトリックス樹脂とするスキン層を形成する工程を有する発泡壁紙の製造方法であって、
押出し成形に供するスキン層形成用組成物が、分子量50000以上のマトリックス樹脂と当該マトリックス樹脂100重量部に対して10〜35重量部の水添石油樹脂とを含有する、
ことを特徴とする製造方法。
【0020】
9.前記マトリックス樹脂のメルトフローレートが、2〜30g/10分である、上記項8に記載の製造方法。

以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
1.発泡壁紙
本発明の発泡壁紙は、紙質基材上に、発泡樹脂層を有する発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層の表面であって、紙質基材の存在する側とは逆面には、分子量50000以上の樹脂をマトリックス樹脂とするスキン層が形成されており、
(2)スキン層は、前記マトリックス樹脂100重量部に対して10〜35重量部の水添石油樹脂を含有する、
ことを特徴とする。
【0022】
本発明の発泡壁紙は、発泡樹脂層の表面であって、紙質基材の存在する側とは逆面(以
下、紙質基材の存在する側とは逆面を「おもて面」と称する)には、分子量50000以上の樹脂をマトリックス樹脂とするスキン層が形成されている。
【0023】
当該スキン層を有することにより、発泡壁紙は良好な耐スクラッチ性を有する。より良好な耐スクラッチ性を考慮すると、分子量100000以上が好ましい。分子量の上限としては、500000程度が好ましい。
【0024】
前記マトリックス樹脂のメルトフローレート(以下「MFR」と略記する)は限定的ではないが、2〜30g/10分程度が好ましく、5〜20g/10分程度がより好ましい。
【0025】
なお、本明細書のMFRは、JIS K 7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験方法)記載の試験方法により測定した値である。試験条件は、JIS K 6760記載の「190℃、21.18N(2.16kgf)」採用したものである。
【0026】
このような特性を有する限り、マトリックス樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0027】
当該スキン層は、前記マトリックス樹脂100重量部に対して10〜35重量部の水添石油樹脂を含有する。この中でも、15〜20重量部が好ましい。かかる範囲の水添石油樹脂を含有することにより、マトリックス樹脂の分子量が大きいにも関わらず、マトリックス樹脂の結晶化が抑制できる。そのため、樹脂の結晶化に基づくスキン層の収縮を抑制でき、発泡壁紙のカールを防止できる。水添石油樹脂には、部分水添型と完全水添型とがあるが、部分水添型は極性が比較的強い。そのため、樹脂が無極性であることを考えると、完全水添型の水添石油樹脂が好適である。
【0028】
本発明の発泡壁紙は、発泡壁紙のおもて面に当該スキン層を有する限りその構造は特に限定されない。以下、紙質基材、発泡樹脂層及び発泡壁紙の具体的構成について説明する。
【0029】
(紙質基材)
紙質基材は、壁紙基材として適した機械強度、耐熱性等を有する限り特に限定されず、繊維質シートが一般に使用できる。
【0030】
具体的には、繊維質シートの中でも、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
【0031】
紙質基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m程度が好ましく、50〜80g/m程度がより好ましい。
【0032】
(発泡樹脂層)
本発明の発泡壁紙は、紙質基材上に、発泡樹脂層を有する。
【0033】
発泡樹脂層を構成する樹脂は限定的ではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂が好適である。
【0034】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ポリオレフ
ィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)が好ましい。EVAは、電子線照射により架橋する特性がある。
【0035】
EVAを用いる場合には、酢酸ビニル含有量が10〜25重量%のものが好ましい。かかる範囲内の酢酸ビニル含有量のEVAを用いる場合には、発泡壁紙により良好な耐スクラッチ性を付与できる。
【0036】
発泡樹脂層の発泡状態(例えば、発泡セルの大きさ、発泡セル密度等)は限定されず、発泡壁紙の種類に応じて適宜設定できる。
【0037】
発泡樹脂層は、無機充填剤、顔料、難燃剤、熱安定剤等の添加剤を含んでもよい。
【0038】
上記のうち、無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。無機充填剤の含有量は、発泡樹脂層を構成するEVA樹脂100重量部に対して、0〜100重量部程度が好ましく、20〜70重量部程度がより好ましい。
【0039】
顔料については、次のものが挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムエロー、ニッケルチタンエロー、クロムチタンエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。
【0040】
添加剤としては、上記のものに限定されず、他の公知の添加剤も使用できる。添加量は、発泡壁紙の種類に応じて幅広い範囲から選択できる。
【0041】
発泡樹脂層の厚みは限定的ではないが、300〜1000μm程度が好ましく、400〜800μm程度がより好ましい。
【0042】
(発泡壁紙の具体的構成)
本発明の発泡壁紙は、前記発泡樹脂層以外に非発泡樹脂層を有してもよい。例えば、紙質基材と発泡樹脂層との間に、さらに非発泡樹脂層を有してもよい。このような構成は、発泡樹脂層と紙質基材との密着性を高められる観点から好ましい。
【0043】
非発泡樹脂層を構成する樹脂の種類は限定的ではないが、発泡樹脂層と同様に、例えば、ポリオレフィン系樹脂が使用できる。その中でも、EVAが好ましい。EVAは、電子線照射により架橋する特性がある。
【0044】
非発泡樹脂層を構成する樹脂としてEVAを採用する場合には、EVAの説明は、前記発泡樹脂層の場合と同じである。本発明の発泡壁紙の好適な構成形態では、発泡樹脂層と非発泡樹脂層の両方の構成樹脂としてEVAを使用し、少なくとも発泡樹脂層のEVAが架橋されていることが好ましい。EVAの架橋により硬度が増すため、耐スクラッチ性の強化に有利となる。
【0045】
非発泡樹脂層の厚みは限定的ではないが、0.5〜50μm程度が好ましく、5〜20μm程度がより好ましい。
【0046】
本発明の発泡壁紙は、前記スキン層のおもて面に絵柄模様層を有してもよい。
【0047】
絵柄模様層は、発泡壁紙に意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
【0048】
絵柄模様層は、例えば、前記の構造例では、樹脂層のおもて面に絵柄模様を印刷することにより形成できる。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、ビヒクル、溶剤を含む公知の印刷インキが使用できる。
【0049】
着色剤としては、前記顔料が使用できる。
【0050】
ビヒクルは、基材シートの種類に応じて設定できるが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0051】
印刷インキに含まれる溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。
【0052】
絵柄模様層の厚みは絵柄模様の種類より異なるが、0.1〜10μm程度が好ましい。
【0053】
本発明の発泡壁紙は、発泡樹脂層を有することに基づく発泡凹凸模様に加えて、おもて面に任意のエンボス模様をさらに有してもよい。
【0054】
エンボス模様は、例えば、公知のエンボス版により付与できる。例えば、前記樹脂層の表面から加熱しながらエンボス版を押圧することにより、発泡壁紙に任意のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
【0055】
2.発泡壁紙の製造方法
本発明の発泡壁紙の製造方法は特に限定されないが、押出し成形により、分子量50000以上の樹脂をマトリックス樹脂とするスキン層を形成する工程を有する発泡壁紙の製造方法であって、
押出し成形に供するスキン層形成用組成物が、分子量50000以上のマトリックス樹脂と当該マトリックス樹脂100重量部に対して10〜35重量部の水添石油樹脂とを含有する、
ことを特徴とする製造方法により好適に製造できる。
【0056】
当該製造方法は、押出し成形により、分子量50000以上の樹脂をマトリックス樹脂とするスキン層を形成する工程を有する。押出し成形方法は特に限定されないが、例えば、スキン層形成用組成物をTダイ押出し機により押出しする方法が挙げられる。押出し温度は、前記組成物中に含まれる樹脂成分の溶融温度以上の温度範囲で適宜設定できる。具体的には、シリンダー温度120〜180℃程度、ダイス温度120〜140℃程度が好ましい。
【0057】
スキン層形成用組成物は、前記マトリックス樹脂と水添石油樹脂とを含む混合物である。水添石油樹脂の含有量は、マトリックス樹脂100重量部に対して10〜35重量部、好ましくは15〜20重量部程度である。かかる範囲の水添石油樹脂を含有することにより、分子量50000以上という樹脂をマトリックスとする組成物であるにも関わらず、押出し時に良好な流動性が確保できる。具体的には、MFRが2〜30g/10分の樹脂であっても、押出し時に良好な流動性を確保できるため、容易に押出し成形できる。
【0058】
次に、具体的に、紙質基材上に非発泡樹脂層、発泡樹脂層及びスキン層を順に形成した発泡壁紙の好適な製造方法を例示する。なお、当該例示では、非発泡樹脂層及び発泡樹脂層を構成する樹脂としては、好適な樹脂であるEVAを用いる。
【0059】
このように、樹脂層が複数(3層)積層された構造の発泡壁紙の場合には、Tダイ押出機を用いた同時押出し形成を好適に利用できる。具体的には、EVA溶融物を含む非発泡樹脂層形成用組成物、熱分解型発泡剤を含む未発泡樹脂層形成用組成物、及び前記スキン層形成用組成物を別々のシリンダー中に収容し、同時押出し成形することにより、3層を同時積層できる。適宜、各組成物中には、公知の添加物を含めることができる。
【0060】
非発泡樹脂層形成用組成物及び未発泡樹脂層形成用組成物に含まれるEVAは、押出し成形性を考慮して、MFRが40〜75g/10分程度のものが好ましい。
【0061】
熱分解型発泡剤は、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡剤の含有量は、未発泡樹脂層形成用組成物に含まれるEVA100重量部に対して、1〜20重量部程度が好ましい。
【0062】
未発泡樹脂層形成用組成物は、無機充填剤を含有してもよい。無機充填剤については前記の通りである。その他、発泡セル調整剤、熱安定剤、難燃剤等を配合できる。これらの配合量については、発泡壁紙の種類に応じて適宜設定できる。
【0063】
前記押出し成形により形成した3層の積層体は、直接に紙質基材上に押出ししてもよく、紙質基材上とは別に形成してもよい。前者の場合には、樹脂層は溶融熱により良好な接着性を有するため、紙質基材と密着する。後者の場合には、紙質基材上に積層体を載せて、熱ラミネートすることにより接着できる。
【0064】
紙質基材上に積層体を形成した後は、発泡剤を加熱することにより未発泡樹脂層を発泡樹脂層とする。
【0065】
加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される限り限定されない。加熱温度は、180〜240℃程度が好ましく、210〜230℃程度がより好ましい。加熱時間は、20〜60秒程度が好ましく、25〜40秒程度がより好ましい。
【0066】
前記加熱処理の前に、樹脂層に電子線照射を行ってもよい。これにより、EVAを架橋できるため、発泡程度を制御することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、1〜7Mrad程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
【0067】
電子線照射を行う場合には、前記組成物中に架橋助剤を含有してもよい。
【0068】
架橋助剤としては、電子線照射による架橋を促進するものであればよく、例えば、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマー、オリゴマーなどが挙げられる。架橋助剤は、EVA100重量部に対して、0〜10重量部程度が好ましく、1〜4重量部がより好ましい。
【0069】
絵柄模様層を有する発泡壁紙を製造する場合には、加熱前にスキン層のおもて面に形成すればよい。絵柄模様層の具体的な形成方法は、前記の通りである。
【0070】
エンボス模様を賦型する場合には、発泡壁紙のおもて面から公知のエンボス版を押圧することにより賦型すればよい。
【発明の効果】
【0071】
本発明の発泡壁紙は、スキン層が、マトリックス樹脂100重量部に対して10〜35重量部の水添石油樹脂を含有する。かかる範囲の水添石油樹脂を含有することにより、マトリックス樹脂の分子量が大きいにも関わらず、マトリックス樹脂の結晶化が抑制できる。そのため、樹脂の結晶化に基づくスキン層の収縮を抑制でき、発泡壁紙のカールを防止できる。また、前記マトリックス樹脂は分子量が大きいため、発泡壁紙に良好な耐スクラッチ性を付与できる。
【0072】
本発明の発泡壁紙の製造方法は、スキン層形成用組成物が水添石油樹脂を特定量含有するため、当該組成物に含まれるマトリックス樹脂の分子量が大きいにも関わらず、押出し成形時の樹脂流動性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0074】
実施例1
非発泡樹脂層を形成するために、EVA(製品名「エバテートCV5053」、MFR:70g/10分、酢酸ビニル含有量:20重量%、住友化学製)を用意した。
【0075】
スキン層(水添石油樹脂含有層)を形成するために、下記表1に記載の成分を含む組成物を用意した。
【0076】
【表1】

【0077】
未発泡樹脂層を形成するために、下記表2に記載の成分を含む組成物を用意した。
【0078】
【表2】

【0079】
上記樹脂及び樹脂含有組成物を溶融し、3種3層マルチマニホールドTダイ押出し機を用いて厚み110μmの紙質基材(坪量70g)上に3層同時押出し積層した。Tダイ押出し機は、スキン層用押出しシリンダーの温度を150℃に設定し、未発泡層、非発泡層用押出しシリンダーは共に120℃に設定し、ダイス温度は120℃とした。
【0080】
同時押出し積層は、紙質基材と非発泡樹脂層とが接するように、非発泡樹脂層/未発泡樹脂層/スキン層の順に積層した。各層の厚みは、前記の順に15μm/100μm/10μmとした。
【0081】
積層後、スキン層の上から電子線(175kV、5Mrad)を照射して樹脂架橋後、スキン層のおもて面にコロナ放電処理を施した。
【0082】
次いで、スキン層のおもて面にEVA系水性エマルションを2g/m塗工してプライマー層を形成後、グラビア印刷により布目絵柄の絵柄印刷層を形成した。印刷インクは、水性インク(製品名「ハイドリック」大日精化工業製)を用いた。
【0083】
次いで、当該積層体をギアオーブン中、220℃で30秒間加熱した。これにより、熱分解型発泡剤が分解し、未発泡樹脂層を発泡樹脂層とした。
【0084】
次いで、スキン層のおもて面から、発泡体に対してエンボス加工を施して、布目模様パ
ターンを賦型した。
【0085】
以上の過程を経て、発泡壁紙を作製した。
【0086】
比較例1
水添石油樹脂の含有量を50重量部とした以外は、実施例1と同様にして発泡壁紙を作製した。
【0087】
比較例2
水添石油樹脂の含有量を5重量部とした以外は、実施例1と同様にして発泡壁紙を作製した。
【0088】
試験例1(押出し加工性)
実施例及び比較例において、3層同時積層する際の押出し加工性を評価した。
【0089】
製膜断面を顕微鏡観察し、3層が巾方向に均一に形成できているものを○と評価し、不均一であるものを×と評価した。
【0090】
試験例2(耐カール性)
実施例及び比較例で作製した発泡壁紙の耐カール性を評価した。
【0091】
肉眼でカールが確認できないものを○と評価した。また、肉眼でカールが確認できるものを×と評価した。
【0092】
試験例3(耐スクラッチ性)
実施例及び比較例で作製した発泡壁紙の耐スクラッチ性を評価した。
【0093】
試験・評価は、日本ビニル工業会ビニル建装部会制定の「表面強化壁紙性能規定」に準拠して行った。具体的には、次の手順に従って試験・評価を行った。
【0094】
学振摩耗試験機(JIS L0849 摩耗試験機II型)に試験片(発泡壁紙)を取り付けた。試験機の摩擦子として同部会指定の金属製爪を用いて、金属爪先端に200g荷重をかけて試験片上を5往復させた。試験片の試験後の表面状態を肉眼観察した。
【0095】
前記規定における耐スクラッチ性の評価は、5級:変化なし、4級:表面に少し変化あり、3級:表面が破けて見える、2級:表面が破けて紙等の裏打材が見える(長さ1cm未満)、1級:表面が破けて紙等の裏打材が見える(長さ1cm以上)の5段階である。
【0096】
試験例3では、上記5〜4級に該当するものを○と評価し、3級に該当するものを△と評価し、2〜1級に該当するものを×と評価した。
【0097】
上記試験の結果を下記表3に示す。
【0098】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙質基材上に、発泡樹脂層を有する発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層の表面であって、紙質基材の存在する側とは逆面には、分子量50000以上の樹脂をマトリックス樹脂とするスキン層が形成されており、
(2)スキン層は、前記マトリックス樹脂100重量部に対して10〜35重量部の水添石油樹脂を含有する、
ことを特徴とする発泡壁紙。
【請求項2】
前記マトリックス樹脂のメルトフローレートが、2〜30g/10分である、請求項1に記載の発泡壁紙。
【請求項3】
前記マトリックス樹脂が、高密度ポリエチレン樹脂である、請求項1に記載の発泡壁紙。
【請求項4】
発泡樹脂層を構成する樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡壁紙。
【請求項5】
紙質基材と発泡樹脂層との間に、さらに非発泡樹脂層を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡壁紙。
【請求項6】
前記非発泡樹脂層を構成する樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂である、請求項5に記載の発泡壁紙。
【請求項7】
少なくとも発泡樹脂層を構成する樹脂が架橋している、請求項4又は6に記載の発泡壁紙。
【請求項8】
押出し成形により、分子量50000以上の樹脂をマトリックス樹脂とするスキン層を形成する工程を有する発泡壁紙の製造方法であって、
押出し成形に供するスキン層形成用組成物が、分子量50000以上のマトリックス樹脂と当該マトリックス樹脂100重量部に対して10〜35重量部の水添石油樹脂とを含有する、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
前記マトリックス樹脂のメルトフローレートが、2〜30g/10分である、請求項8に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−17119(P2011−17119A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209016(P2010−209016)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【分割の表示】特願2005−101926(P2005−101926)の分割
【原出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】