説明

水溶性チタンオリゴマー組成物

【課題】水に対して安定で、水に可溶なチタンオリゴマー組成物を提供することにあり、水系樹脂の架橋剤として用いたときに架橋性能が高く、表面処理剤としてプラスチックフィルム等に対して塗布・乾燥した際にクラックの発生等が無く、濡れ性がよく均一な塗工面が得られる水溶性チタンオリゴマー組成物を提供すること。
【解決手段】少なくとも、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するチタン複合組成物を含有することを特徴とする水溶性チタンオリゴマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性チタンオリゴマー組成物に関し、更に詳細には、特定の化学構造と組成とを有するチタン複合組成物を含有する水溶性のチタンオリゴマー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チタンアルコキシドや、チタンアルコキシドを出発物質としβ−ジケトン類等と反応したチタンキレート化合物は、プラスチックフィルムの表面処理剤、有機樹脂の架橋剤、ゾルゲル法による酸化チタン合成時の原料、エステル化の触媒等として広く使用されている。しかしながら、これら化合物は、加水分解性が高く、チタンアルコキシドでは空気中に含まれる水分によって加水分解し、チタンキレート化合物においても、長期にわたり水蒸気に暴露されることによって加水分解してしまう。
【0003】
そこで、これらチタン化合物の加水分解性の抑制や塗布性を高めるために、水を用いてオリゴマー化したチタン化合物を使用することがある。しかしながら、オリゴマー化するのみでは、加水分解性に対する抑制効果は十分ではなく、長期にわたり水蒸気等に暴露されると、白濁や白色沈殿物を生じてしまうという問題点があった。
【0004】
一方、水への安定性を高めるために、水溶性の置換基であるトリエタノールアミンや乳酸を用いたチタンキレート化合物や、チタンアルコキシドにグリコールやアミンを反応若しくは混合した化合物も知られている。しかしながら、これらの化合物はモノマー体の水溶性化合物であり、プラスチックフィルムの表面処理剤に用いた場合、濡れ性が悪く、クラックが発生しやすく、一回の塗工ではクラックが発生するため厚膜の膜を形成することができないという問題点があった。更に、トリエタノールアミンを使用したチタンキレート化合物では、トリエタノールアミンの残存により、低温の乾燥では表面にべたつきが残り、プラスチックフィルムにおいてブロッキング現象を生ずるといった問題もあった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−256505号公報
【非特許文献1】杉山岩吉「含有金属有機化合物とその利用」、M.R.機能性物質シリーズNo.5、p.112〜p.116(日本シーエムアイ株式会社)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、水又は水蒸気に対して安定な、水に可溶なチタンオリゴマー組成物を提供することにあり、水系樹脂の架橋剤として用いたときに架橋性能が高く、表面処理剤としてプラスチックフィルム等に対して塗布、乾燥した際に、クラックの発生等が無く、濡れ性がよく、均一な塗工面が得られる水溶性チタンオリゴマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、チタンアルコキシドやチタンキレート化合物を、水を用いてオリゴマー化したチタンオリゴマー化合物に対し、アミン化合物及びグリコール化合物を反応又は混合させて得られる「化学構造及び混合された組成」であるチタン複合組成物が、水に対して安定であり、水への溶解が可能であることを見出し、また、上記課題も解決できるものであることを見出して本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するチタン複合組成物を含有することを特徴とする水溶性チタンオリゴマー組成物に存する。
【0009】
また、本発明は、上記の水溶性チタンオリゴマー組成物を含有することを特徴とする水系樹脂の架橋剤に存する。また、本発明は、上記の水溶性チタンオリゴマー組成物を含有することを特徴とする表面処理剤に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水溶性チタンオリゴマー組成物は、水溶性であるにもかかわらず、水や水蒸気に対して極めて安定である。また、水系樹脂の架橋剤として使用した場合は、水系樹脂を架橋し、水系樹脂の耐熱性、耐水性等を高めることができ、プラスチックフィルム等に塗布、乾燥、要すれば硬化等により、クラック等が生じない均一な塗工面が得ることができる。
【0011】
また、本発明の水溶性チタンオリゴマー組成物を表面処理剤として使用した場合には、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記する)、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、「OPP」と略記する)等のプラスチックフィルム等の被着材に対し、有機樹脂等の接着性を高めることができ、クラック等の発生しない膜を作製することができる。また、各種被着材へのぬれ性、均一製膜性、密着性、表面改質性等に優れるため、接着しにくい被着材に対して、極めて高い接着性をもって接着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0013】
[チタン複合組成物]
本発明の水溶性チタンオリゴマー組成物は、「少なくとも、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)」を、「反応及び/又は混合」させてなる「化学構造と組成」を有するチタン複合組成物を含有する。
【0014】
[[チタン化合物オリゴマー(a)]]
チタン化合物オリゴマー(a)は特に限定はないが、「下記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物」が縮合した構造を有するものが好ましい。
【化1】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【0015】
縮合前の出発物質である「式(1)で表されるチタンアルコキシド」は、上記式(1)中のR〜Rが、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基であるものであるが、それぞれ独立に炭素数1〜8個のアルキル基であるものが好ましく、それぞれ独立に炭素数1〜5個のアルキル基であるものが特に好ましい。
【0016】
「式(1)で表されるチタンアルコキシド」としては、具体的には例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、ジイソプロポキシジn−ブトキシチタン、ジtert−ブトキシジイソプロポキシチタン、テトラtert−ブトキシチタン、テトライソオクトキシチタン、テトラステアロキシチタン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0017】
縮合前の出発物質としては、上記した「式(1)で表されるチタンアルコキシド」の他に、「式(1)で表されるチタンアルコキシド」にキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物も好ましいものとして挙げられる。かかるキレート化剤としては特に限定はないが、β−ジケトン、β−ケトエステル、多価アルコール、アルカノールアミン及びオキシカルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが、チタン化合物の加水分解等に対する安定性を向上する点で好ましい。
【0018】
β−ジケトン化合物としては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、例えば具体的には、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、ジベンゾイルメタン、テノイルトリフルオロアセトン、1,3−シクロヘキサンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0019】
β−ケトエステルとしては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、例えば具体的には、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、メチルピバロイルアセテート、メチルイソブチロイルアセテート、カプロイル酢酸メチル、ラウロイル酢酸メチル等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0020】
多価アルコールとしては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0021】
アルカノールアミンとしては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−tert−ブチルエタノールアミン、N−tert−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0022】
オキシカルボン酸としては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0023】
上記「式(1)で表されるチタンアルコキシド」又は「該チタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物」が縮合することによってチタン化合物オリゴマー(a)が得られる。ここで縮合させる方法としては特に限定はないが、該チタンアルコキシド又は該チタンキレート化合物を、アルコール溶液中で水を反応させることにより行う方法、又は、アルコール溶液中で後述のアミン化合物(b)と水が共存している状態で反応させる方法が好ましい。
【0024】
縮合させてオリゴマー化するために用いる水の量については、チタンアルコキシド及び/又はチタンキレート化合物の合計量1モルに対し、すなわちチタン原子1モルに対して、水のモル数が0.2〜2モルであることが、水に対する安定性、製膜性、塗布性等の点で好ましく、0.3〜1.7モルであることがより好ましく、0.5〜1.6モルであることが特に好ましく、1.0〜1.5モルであることが更に好ましい。
【0025】
なお、上記は、本発明におけるチタン化合物オリゴマー(a)の製造方法を限定しているものではなく、該チタン化合物オリゴマー(a)の縮合度等の化学構造を、縮合方法等の製造方法によって特定しているものである。該チタン化合物オリゴマー(a)は、2次元的又は3次元的な化学構造を有する場合があるため、その化学構造は製造方法によってしか特定できないためであり、従って、異なる製造方法で製造された同様の化学構造を有するチタン化合物オリゴマー(a)も本発明においては用いられる。
【0026】
該チタン化合物オリゴマー(a)を組成式で表わすと、チタン原子2モルに対して、反応する水のモル数がxモルのとき、下記式(2)で表わされるチタン化合物オリゴマー(a)が、通常、縮合によって得られる。
TiOx/2(OR)4−x (2)
[式(2)中、Rは、式(1)におけるR〜Rの何れかを表す。]
【0027】
チタン原子1モルに対して、水1モルを反応させた場合、すなわち、チタン原子2モルに対して水2モルを反応させた場合、x=2であるので、式(2)は、
TiO(OR) (3)となり、
チタン原子1モルに対して、水1.5モルを反応させた場合、すなわち、チタン原子2モルに対して水3モルを反応させた場合、x=3であるので、式(2)は、
TiO3/2(OR) (4)となる。
【0028】
前記した「縮合させてオリゴマー化するために用いる好ましい水の量」に対応するxの値を式(2)に代入して得られた組成式を有するものが、チタン化合物オリゴマー(a)の縮合度としては好ましい。
【0029】
本発明におけるチタン化合物オリゴマー(a)は、オリゴマーであれば特に限定はないが、平均で、1.5〜20量体が好ましく、2〜15量体がより好ましく、4〜13量体が特に好ましく、5〜12量体が更に好ましい。水に対する安定性、製膜性、塗布性等の点で、縮合度は大きいものの方が好ましい。上記式(3)は、原理的には1次元的に無限の縮合度を有するものを表すが、製造される実際のチタン化合物オリゴマー(a)は有限の縮合度を有する。本発明におけるチタン化合物オリゴマー(a)は、原理的には無限の縮合度を有するような水の量を用いて製造される化学構造を有するものが更に好ましい。
【0030】
縮合時には、アルコール等の溶剤を用い、該チタンアルコキシド又は該チタンキレート化合物をアルコール溶液とし、場合により還流等の熱処理を経由し、チタン化合物オリゴマー(a)を得てもよい。このとき用いられるアルコールとしては特に限定はないが、前記式(1)中のアルキル基R〜Rを有する1価アルコールが、チタン化合物オリゴマー(a)の反応性を変化させない点で好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0031】
かかるアルコールの使用量は特に限定はないが、縮合してオリゴマー化するために用いる水の量を、水と該アルコールの合計量に対して0.5〜20質量%の濃度になるように該アルコールを用いて希釈することが、薬液の白濁や白色沈殿物の発生を抑制する点で好ましく、0.7〜15質量%の濃度になるように希釈することがより好ましく、1.0〜10質量%の濃度になるように希釈することが特に好ましい。
【0032】
チタン化合物オリゴマー(a)は、上記したチタン化合物オリゴマーに、更にキレート化剤を配位させてなる構造を有するものであることも好ましい。すなわち、前記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、それにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物が縮合した構造を有するものに、更にキレート化剤を配位させてなる構造を有するものも好ましい。すなわち、縮合前及び/又は縮合後に、キレート化剤を反応させた構造のものは、チタン化合物オリゴマー(a)の加水分解等に対する安定性を高める点で好ましい。
【0033】
縮合後に用いるキレート化剤としては特に限定はないが、前記したキレート化剤が好適に使用できる。特に好ましくは、β−ジケトン、β−ケトエステル又はアルカノールアミンである。
【0034】
[[アミン化合物(b)]]
チタン複合組成物を得るための、上記チタン化合物オリゴマー(a)と反応及び/又は混合させるアミン化合物(b)については特に限定はないが、置換若しくは非置換の脂肪族アミン又は第四級アンモニウム水酸化物であることが、チタンオリゴマー化合物(a)の加水分解等に対する安定性を向上させ、水溶化させる点で好ましい。
【0035】
「置換若しくは非置換の脂肪族アミン」における置換基としては、アルコール性水酸基が好ましい。置換の脂肪族アミンとしてはアルカノールアミンが特に好ましい。
【0036】
非置換の脂肪族アミンとしては、具体的には例えば、脂肪族アルキルアミンであるメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、アミルアミン、sec−アミルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン;脂肪族環状アミンであるピペリジン、ピロリジン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0037】
アルカノールアミンとしては、具体的には例えば、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−tert−ブチルエタノールアミン、N−tert−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0038】
第四級アンモニウム水酸化物としては、具体的には例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0039】
[[グリコール化合物(c)]]
チタン複合組成物を得るための、上記チタン化合物オリゴマー(a)と反応及び/又は混合させるグリコール化合物(c)としては特に限定はないが、隣り合った炭素原子にそれぞれ水酸基を有するグリコール化合物が好ましく、具体的には例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、グリセリン等が挙げられる。中でも、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール又は2,3−ブタンジオールが、チタンオリゴマー化合物の加水分解等に対する安定性の向上、水溶化する点で特に好ましい。
【0040】
グリコール化合物(c)を用いることによって、チタンオリゴマー化合物(a)の加水分解等に対する安定性を向上させ、水溶化させることができる。
【0041】
[[チタン複合組成物における各成分の比率]]
「チタン化合物オリゴマー(a)」と「アミン化合物(b)」と「グリコール化合物(c)」の使用割合は特に限定はないが、(b)と(a)のモル比は、(b)/(a)=0.1/10〜10/0.1が好ましく、(b)/(a)=0.3/10〜10/0.3がより好ましく、0.5/10〜10/0.5が特に好ましい。(a)と(b)の合計量に対して(a)が少なすぎると、架橋性、製膜性、接着性等を低下させる原因となり、一方、(a)が多すぎると、水に対する溶解性や加水分解する等の安定性が不足する場合がある。
【0042】
(c)と(a)のモル比は、(c)/(a)=0.1/10〜10/0.1が好ましく、(c)/(a)=0.5/10〜10/0.5がより好ましく、1/10〜10/1が特に好ましい。(a)と(c)の合計量に対して(a)が少なすぎると、架橋性、製膜性、接着性等を低下させる原因となり、一方、(a)が多すぎると、水に対する溶解性や加水分解する等の安定性が不足する場合がある。
【0043】
チタン複合組成物中の、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)の反応によって得られる構造を有する化合物(以下、「化合物A」と略記する)の化学構造については、前記製造方法で得られる構造を有するものであれば、特定の製造方法で製造されたものには限定されない。
【0044】
化合物Aの化学構造としては、チタン化合物オリゴマー(a)が、アミン化合物(b)及びグリコール(c)によって反応し、チタン化合物オリゴマーのグリコールキレートや、アミノ基がチタンに配位した構造が好ましい。特に、チタン化合物オリゴマー(a)の末端であるアルコキシル基と、アミン化合物(b)及び/又はグリコール化合物(c)とが反応し、キレート化した構造やアミン化合物に存在するアミノ基やグリコール化合物に存在する水酸基がチタン原子に配位した構造が好ましい。
【0045】
本発明におけるチタン複合組成物は、上記化合物A、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及び/又はグリコール(c)を含有する。チタン複合組成物は、チタン化合物オリゴマー(a)に対し、アミン化合物(b)とグリコール化合物(c)とを室温で混合させた組成を有するものであってもよいし、チタン化合物オリゴマー(a)に対し、アミン化合物(b)とグリコール化合物(c)とを加熱還流させて得られる組成を有するものであってもよい。上記「混合させた組成」には、全量反応が進まず未反応のまま残ったものが混合している場合も、一部のみが反応した場合も含まれる。
【0046】
本発明におけるチタン複合組成物は、上記方法で得られる組成のものであれば特に限定はないが、以下の5形態が好ましい。
(1)化合物A;
(2)化合物A及びチタン化合物オリゴマー(a)の混合物;
(3)化合物A及びグリコール化合物(c)の混合物;
(4)化合物A、チタン化合物オリゴマー(a)及びグリコール化合物(c)の混合物;
(5)チタン化合物オリゴマー(a)とアミン化合物(b)とグリコール化合物(c)の混合物;
このうち、形態(1)及び形態(5)が、前記した本発明の効果を好適に得られる点で好ましい。
【0047】
[シリコン化合物(d)]
本発明の水溶性チタンオリゴマー組成物は、上記チタン複合組成物だけでなるものであってもよいが、上記チタン複合組成物に、更に「分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)」(以下、「シリコン化合物(d)」と略記する)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するものであってもよい。
【0048】
シリコン化合物(d)としては特に限定はないが、シランカップリング剤や、ケイ素原子に4個のアルコキシ基が結合したシリコン化合物等が、製膜性を高める点で好ましい。このうち、アミノ基、メルカプト基又はエポキシ基を含有するものが、更に、製膜性を高める点で好ましい。また、ケイ素原子にアルキル基が直接結合した構造を有するものも製膜性を高める点で好ましい。このときのアルキル基としてはメチル基が好ましい。また、上記化合物の部分加水分解縮合物も好適に使用できる。
【0049】
シリコン化合物(d)としては、具体的には例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラノルマルプロポキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシシラン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0050】
前記したチタン複合組成物に、シリコン化合物(d)を併用し、水溶性チタンオリゴマー組成物を得る場合は、該チタン複合組成物にシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させることによって得られる構造を有するものであることが好ましい。ここで、反応方法は特に限定はないが、チタン複合組成物とシリコン化合物(d)を混合した後、使用した溶剤の沸点にて還流して反応を進行させることが好ましい。なお、配合の順序に規定はない。
【0051】
前記チタン複合組成物と上記シリコン化合物(d)との使用割合は特に限定はないが、チタン複合組成物とシリコン化合物(d)の質量比が、0.1/10〜10/0.1であることが好ましく、0.5/10〜10/0.5であることがより好ましく、1/10〜10/1であることが特に好ましい。チタン複合組成物とシリコン化合物(d)の合計量に対してチタン複合組成物が少なすぎると、製膜性を低下させる原因となり、一方、チタン複合組成物が多すぎると、製膜性を低下させ、加水分解性等の安定性が不足する場合がある。
【0052】
本発明の水溶性チタンオリゴマー組成物は、上記した製造方法で製造されたものには限定されず、上記した製造方法で製造される化学構造と組成とを有する組成物であれば、製造方法が異なっていても本発明に含まれる。ただし、本発明の水溶性チタンオリゴマー組成物は、上記した製造方法で製造されたものが好ましい。すなわち、少なくとも、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させることが、チタン複合組成物の製造方法、水溶性チタンオリゴマー組成物の製造方法として好ましい。また、チタン複合組成物に、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させることが、水溶性チタンオリゴマー組成物の製造方法として好ましい。
【0053】
[架橋剤]
本発明の水溶性チタンオリゴマー組成物は、水系樹脂に配合させて水系の架橋剤として好適に使用できる。また、表面処理剤に好適に使用できる。すなわち、水系の塗料や表面処理剤等に本発明の水溶性チタンオリゴマー組成物を添加することが好ましい。本発明において、「水系樹脂」とは、水を主体とする溶媒又は分散媒に、溶解又は懸濁分散若しくは乳化分散している樹脂をいう。また、「水系の塗料」とは、水溶性樹脂の塗料の他に、水溶性でない樹脂の水エマルジョン塗料等も含まれる。
【0054】
水系樹脂のうち水溶性樹脂としては特に限定はないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニルの加水分解物等が挙げられる。また、水に懸濁又は乳化している樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。架橋条件としては、通常、塗料の架橋に用いられている条件であれば特に限定はないが、加熱硬化させる場合は30〜100℃が好ましく、40〜80℃が特に好ましい。硬化時間は10秒以上が好ましく、1分以上が特に好ましい。
【0055】
[表面処理剤]
また、表面処理剤に関しては、有機溶剤を使用せず、水で希釈し塗布することができるため、作業環境の点で好ましい。本発明の水溶性チタンオリゴマー組成物が好適に使用される表面としては特に限定はないが、PET、OPP、ポリエチレン等のプラスチック表面;金属表面;エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム等のゴムの表面等が挙げられる。本発明の水溶性チタンオリゴマー組成物を含有する表面処理剤は、上記表面に乾燥膜厚が、好ましくは0.01μm〜1μm、特に好ましくは0.02μm〜0.5μmとなるように塗布される。その後、常法に従って乾燥されて処理表面が得られる。
【実施例】
【0056】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
製造例1
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)をイソプロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とイソプロパノール50.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌して「チタン化合物オリゴマー(a)A」を得た。次に、N,N−ジメチルモノエタノールアミン8.9g(0.10モル)を添加後、1時間攪拌した後、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物A」を得た。チタン複合組成物Aからなるものを「水溶性チタンオリゴマー組成物A」とする。
【0058】
製造例2
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)をイソプロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とイソプロパノール50.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌して「チタン化合物オリゴマー(a)B」を得た。次に、N−n−ブチルエタノールアミン5.9g(0.05モル)を添加後、1時間攪拌した後、グリセリン36.8g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物B」を得た。チタン複合組成物Bからなるものを「水溶性チタンオリゴマー組成物B」とする。
【0059】
製造例3
テトラn−ブトキシチタン34.0g(0.10モル)をn−ブタノール30.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とn−ブタノール60.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌して「チタン化合物オリゴマー(a)C」を得た。次に、ジエチルアミン3.7g(0.05モル)を添加後、1時間攪拌した後、1,2−ブタンジオール36.0g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物C」を得た。チタン複合組成物Cからなるものを「水溶性チタンオリゴマー組成物C」とする。
【0060】
製造例4
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)をイソプロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とイソプロパノール50.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌して「チタン化合物オリゴマー(a)D」を得た。次に、N,N−ジメチルモノエタノールアミン8.9g(0.10モル)を添加後、1時間攪拌した後、2,3−ブタンジオール36.0g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物D」を得た。チタン複合組成物Dからなるものを「水溶性チタンオリゴマー組成物D」とする。
【0061】
製造例5
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)に対する水の量を、水2.2g(0.12モル)とした以外は、製造例4と同様の方法で、「チタン化合物オリゴマー(a)E」及び「チタン複合組成物E」を得た。チタン複合組成物Eからなるものを「水溶性チタンオリゴマー組成物E」とする。
【0062】
製造例6
ジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタン36.4g(0.1モル)をイソプロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とイソプロパノール100.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌し、更に1時間還流して「チタン化合物オリゴマー(a)F」を得た。次に、トリエチルアミン5.1g(0.05モル)を添加後、1時間攪拌した後、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物F」を得た。チタン複合組成物Fからなるものを「水溶性チタンオリゴマー組成物F」とする。
【0063】
製造例7
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)をイソプロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とイソプロパノール50.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌して「チタン化合物オリゴマー(a)G」を得た。次に、N,N−ジメチルモノエタノールアミン8.9g(0.10モル)を添加後、1時間攪拌した後、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し、「チタン複合組成物G」を得た。
【0064】
チタン複合組成物Gに、γ−アミノプロピルアミノエチルメチルジエトキシシラン44.4g(0.20モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流した。これを「水溶性チタンオリゴマー組成物G」とする。
【0065】
製造例8
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.10モル)に、N,N−ジメチルモノエタノールアミン8.9g(0.10モル)を添加した。添加後、1時間攪拌した。更に、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し「チタン化合物a」を得た。
【0066】
製造例9
テトラn−ブトキシチタン34.0g(0.10モル)に、トリエチルアミン5.1g(0.05モル)を添加後、1時間攪拌した。その後、1,2−プロパンジオール30.4g(0.40モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し「チタン化合物b」を得た。
【0067】
製造例10
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.1モル)に、トリエチルアミン10.1g(0.1モル)を30分かけて添加した。続いて、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを46.8g(0.2モル)を加え、その後、1,2−エタンジオールを49.6g(0.8モル)を添加し、1時間攪拌し、更に1時間還流し「チタン化合物c」を得た。
【0068】
実施例1〜7、比較例1〜13
[水に対する安定性と溶解性の評価]
テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラn−ブトキシチタンダイマー、製造例1〜7で製造した「チタン化合物オリゴマー(a)A〜G」、「水溶性チタンオリゴマー組成物A〜G」、製造例8〜10で製造した「チタン化合物a〜c」、それぞれ10質量部を、水90質量部に添加し、水に対する安定性と水への溶解性を確認した。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
製造例1〜7で製造した水溶性チタンオリゴマー組成物A〜Gは、上記表1の実施例1〜7の結果から分かるように、水に対して溶解し、また、水に対する安定性も優れていた。一方、比較例1〜3のチタン化合物、製造例1〜7において、アミン化合物(b)とグリコール化合物(c)を加える前のチタン化合物オリゴマー(a)A〜G(比較例4〜10)では、何れも白色沈澱が生じ、水に対する安定性、水への溶解性が劣っていた。
【0071】
実施例8〜14、比較例14
[ポリビニルアルコールに対する架橋性能の評価]
製造例1〜7で製造した水溶性チタンオリゴマー組成物A〜Gを2質量部、水系樹脂として、ポリビニルアルコール(「ゴーセノール」N−300(日本合成化学工業株式会社製))の5質量%水溶液100質量部を混合し樹脂溶液を得た。
【0072】
また、水溶性チタンオリゴマー組成物A〜Gの2質量部の代わりに、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)(マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTC−400」)2質量部を用いた以外は実施例8〜14と同様にして比較例14の樹脂溶液を得た。
【0073】
実施例8〜14および比較例4の樹脂溶液を、底面積70cmのアルミカップに5g秤取り、40℃の熱風循環乾燥機にて12時間乾燥した。乾燥した膜を100mLのビーカー入れ、100mLの水を入れ、1時間煮沸した。その後、濾紙を使用し不溶分を濾過し、105℃にて2時間乾燥し、濾紙と不溶分の質量を秤量し、下記式から不溶化率(質量%)を計算した。結果を下記の表2に示す。
不溶化率(質量%)=[(C−B)/A]×100
ここで、A=試験前の膜の質量(g)
B=濾紙の質量(g)
C=濾紙+不溶分の質量(g)
【0074】
【表2】

【0075】
実施例8〜14の本発明の「水溶性チタンオリゴマー組成物A〜G」は、ポリビニルアルコールに対して高い架橋性を示した。一方、比較例14のチタン化合物は、ポリビニルアルコールに対して高い架橋性を示さなかった。
【0076】
[製膜性及び硬化性の評価]
製造例1〜7で製造した水溶性チタンオリゴマー組成物A〜G5質量部を、水95質量部に添加、混合し、実施例15〜21の表面処理剤を得た。また、比較例15として、製造例8で製造したチタン化合物aを用い、比較例16として、製造例9で製造したチタン化合物bを用いて、製造例1〜7と同様にして表面処理剤を得た。
【0077】
実施例15〜21および比較例15〜16の表面処理剤を、厚さが50μmの未処理PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム表面に、バーコーターNo.4で塗布した後、150℃の熱風循環乾燥機にて30秒乾燥した。乾燥した膜の表面をレーザー顕微鏡にてクラックの発生の有無を観察し、クラックの発生がないものを○、クラックの発生があるものを×として評価した。また、同時に、乾燥した膜表面を指で擦った後、目視にて表面を観察し、透明な膜であったものを○、擦った後に膜が白化したものを×として評価した。結果を以下の表3に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
製造例1〜7で製造した本発明の水溶性チタンオリゴマー組成物A〜Gは、上記表3の実施例15〜21の結果から分かるように、150℃で30秒の乾燥でもクラックの発生がない均一な膜が調製できた。更に、指で擦過しても透明な状態を維持する膜を得ることができた。一方、製造例8〜10で、チタン化合物モノマーにアミン化合物(b)とグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させて得たチタン化合物a〜cでは、同様の評価でクラックが生じ、擦過後に膜が白化した(比較例15〜17)。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の水に可溶な水溶性チタンオリゴマー組成物は、水系の塗料や樹脂に添加することで架橋し耐水性や耐溶剤性等の機能を付与することでき、また、表面処理剤として用いることで、均一な表面を得ることができることから、塗料分野や表面処理分野等の産業分野に広く利用されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、チタン化合物オリゴマー(a)、アミン化合物(b)及びグリコール化合物(c)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有するチタン複合組成物を含有することを特徴とする水溶性チタンオリゴマー組成物。
【請求項2】
該チタン化合物オリゴマー(a)が、下記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物が縮合した構造を有するものである請求項1記載の水溶性チタンオリゴマー組成物。
【化1】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【請求項3】
該チタン化合物オリゴマー(a)が、下記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物が縮合した構造を有するものに、更にキレート化剤を配位させてなる化学構造を有するものである請求項1記載のチタン化合物。
【化2】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【請求項4】
上記縮合が、該チタンアルコキシド又は該チタンキレート化合物を、アルコール溶液中で水を反応させることにより行われるものである請求項2又は請求項3記載の水溶性チタンオリゴマー組成物。
【請求項5】
上記縮合が、チタンアルコキシド及び/又はチタンキレート化合物1モルに対し、アルコール溶液中で、水0.2〜2モルを反応させることにより行われるものである請求項2ないし請求項4の何れかの請求項記載の水溶性チタンオリゴマー組成物。
【請求項6】
該キレート化剤が、β−ジケトン、β−ケトエステル、多価アルコール、アルカノールアミン及びオキシカルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項2ないし請求項5の何れかの請求項記載の水溶性チタンオリゴマー組成物。
【請求項7】
該アミン化合物(b)が、置換若しくは非置換の脂肪族アミン又は第四級アンモニウム水酸化物である請求項1ないし請求項6の何れかの請求項記載の水溶性チタンオリゴマー組成物。
【請求項8】
該グリコール化合物(c)が、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール又は2,3−ブタンジオールである請求項1ないし請求項7の何れかの請求項記載の水溶性チタンオリゴマー組成物。
【請求項9】
上記チタン複合組成物に、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(d)を反応及び/又は混合させてなる化学構造と組成とを有する請求項1ないし請求項8の何れかの請求項記載の水溶性チタンオリゴマー組成物。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9の何れかの請求項記載の水溶性チタンオリゴマー組成物を含有することを特徴とする水系樹脂の架橋剤。
【請求項11】
請求項1ないし請求項9の何れかの請求項記載の水溶性チタンオリゴマー組成物を含有することを特徴とする表面処理剤。

【公開番号】特開2009−132762(P2009−132762A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308245(P2007−308245)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000188939)マツモトファインケミカル株式会社 (26)
【Fターム(参考)】