説明

水溶性フェニレンジアミン組成物並びにエチレン性不飽和化合物及びモノマーを安定化する方法

【課題】 エチレン性不飽和モノマーの重合を低減及び/又は防止する水溶性組成物の提供。【解決手段】
次式の1種以上の化合物を含む組成物。
【化1】


式中、R、R及びRは独立にH、アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−C(O)R、−C(S)R、−N−(R)(R)、アリール及び−CH−C(R)OHから選択されるが、R、R及びRの少なくともいずれかは−CH−C(R)OHであり、RはH、アルキル、ヒドロキシアルキル、O、S、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択され、Zは水素又は置換基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性フェニレンジアミン組成物及びエチレン性不飽和炭化水素の重合を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精製プロセス中炭化水素流はしばしば高温にさらされ、その結果所望モノマーの早期重合が起こる可能性がある。この早期重合の結果、所望モノマー最終生成物の量が低減すると共に、加工処理設備内の汚損及び沈着形成によって効率の損失が生じる。
【0003】
ポリマーの生成を低減又は防止するために、従来、蒸留を行う部分のような重合が起こり得る位置又はその上流で炭化水素流中に安定化又は防止剤組成物を導入している。
【0004】
フェニレンジアミン(PDA)は酸化防止剤及び重合防止剤として広く使用されている。しかし、その用途はPDAが可溶な炭化水素流に限られている。多くの特許が、様々なPDA、様々なPDAの組合せ、及びPDAと他の防止剤との組合せを用いて炭化水素流体を安定化することを開示している。
【0005】
これらの特許の中には、アミノフェノール化合物とPDA又はヒドロキシルアミンとの組合せを添加することによって加工処理時及び貯蔵条件下においてエチレン性不飽和炭化水素の重合を抑制するための方法と組成物について記載しているEldinの米国特許第6200461号がある。その他の組合せも使用されている。これらには、Arhancetの米国特許第5489718号に示されているようなPDAとオキシム化合物及びヒドロキシルアミンを含有する防止剤の組合せがある。その他の例として、Arhancetの米国特許第5396004号に示されているようなPDAとヒドロキシルアミンの組合せ、及びArhancetらの米国特許第5416258号に示されているようなPDAとヒドロキシトルエン化合物の組合せがある。
【0006】
特定のPDA化合物の例は、高温加工処理、貯蔵及び輸送時のスチレンの重合を抑制するのに有用なヒンダードフェノールと1以上のN−H結合を有するPDA化合物を含む組成物について記載しているRolingの米国特許第4929778号に見られる。Abruscatoらの米国特許第4774374号には、酸素とN−アリール−N′−アルキル−p−フェニレンジアミンの反応により生成する酸素含有種が開示されている。
【0007】
これらの文献は各々エチレン性不飽和モノマーの早期重合を低減する組成物と方法を提供しているが、一般にそれら組成物が可溶な炭化水素の加工処理と貯蔵に限られており、水が存在する場合は含まれない。従って、現在利用できるPDA防止剤は、水相が存在する場合の水溶性モノマーの早期重合を防止するという問題に適切に対処していない。
【特許文献1】米国特許第6200461号明細書
【特許文献2】米国特許第5489718号明細書
【特許文献3】米国特許第5396004号明細書
【特許文献4】米国特許第5416258号明細書
【特許文献5】米国特許第4929778号明細書
【特許文献6】米国特許第4774374号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、エチレン性不飽和モノマーの重合を低減及び/又は防止する水溶性組成物を提供することができれば望ましい。組成物は、酸化防止剤/ラジカル重合防止剤として機能する水溶性フェニレンジアミン組成物を含むのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酸化防止剤/ラジカル重合防止剤としても機能する水溶性フェニレンジアミン組成物を提供する。これらの化合物は次式で表される。
【0010】
【化1】

式中、R、R及びRは独立にH、アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−C(O)R、−C(S)R、−N−(R)(R)、アリール及び次式の基から選択されるが、
【0011】
【化2】

、R及びRの少なくともいずれかは次式の基であり、
【0012】
【化3】

はH、アルキル、ヒドロキシアルキル、O、S、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択され、
Zは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクロ、−CN、−NO、−O−R、−S−R及び−N(R)(R)からなる群から選択される1種以上の置換基からなり、
、R及びRは独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール及びヘテロシクロからなる群から選択される。望ましくは、この化合物は次式に対応する。
【0013】
【化4】

上記式(I)の化合物は、エチレン性不飽和モノマーを含む組成物に添加して、重合に抵抗性の組成物とすることができる。本発明の水溶性フェニレンジアミン組成物のモノマー組成物への添加は当該組成物の合成又は加工処理又は貯蔵時に行うことができる。
【0014】
本発明の化合物は、次式のフェニレンジアミン化合物と、以下の式の複素環式化合物との反応生成物を含む。
【0015】
【化5】

(式中、R、R及びRは独立にアルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−C(O)R、−C(S)R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択されるが、R、R及びRの少なくともいずれかはHであり、Zは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクロ、−CN−NO、−O−R、−S−R及び−N(R)(R)からなる群から選択される1種以上の置換基からなり、R、R及びRは独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール及びヘテロシクロからなる群から選択される。)
【0016】
【化6】

(式中、RはH、アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択される。)。
【0017】
本発明の別の態様は、次式のフェニレンジアミン化合物を、以下の式の複素環式化合物と反応させる工程を含む、水溶性フェニレンジアミン組成物の製造方法を提供する。
【0018】
【化7】

(式中、R、R及びRは独立にアルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−C(O)R、−C(S)R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択されるが、R、R及びRの少なくともいずれかはHであり、Zは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクロ、−CN、−NO、−O−R、−S−R及び−N(R)(R)からなる群から選択される1種以上の置換基からなり、R、R及びRは独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール及びヘテロシクロからなる群から選択される。)
【0019】
【化8】

(式中、RはH、アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択される。)。望ましくは、フェニレンジアミン化合物が1,4−フェニレンジアミンである。
【0020】
本発明の別の態様は、炭化水素の加工処理時の汚損及び沈着形成を低減又は抑制するための方法であって、汚損及び/又は沈着形成が起こり得る位置又はその上流で次式の1種以上の水溶性化合物を有効量で炭化水素流に投入する工程を含む方法を提供する。
【0021】
【化9】

式中、R、R及びRは独立にH、C〜C18アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)、アリール及び次式の基から選択されるが、
【0022】
【化10】

、R及びRの少なくともいずれかは次式の基であり、
【0023】
【化11】

はH、アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択され、
Zは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクロ、−CN、−NO、−O−R、−S−R及び−N(R)(R)からなる群から選択される1種以上の置換基からなり、
、R及びRは独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール及びヘテロシクロからなる群から選択される。なお、上述の組成物は水溶性である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は次式の化合物を含む。
【0025】
【化12】

式中、NHR基はオルト、パラ、及びメタ位のいずれに存在していてもよく、R、R及びRの少なくともいずれかは次式の基であり、
【0026】
【化13】

、R及びRは独立にH、アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−C(O)R、−C(S)R、−N−(R)(R)、アリール及び次式の基から選択され、
【0027】
【化14】

はH、アルキル、ヒドロキシアルキル、O、S、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択され、
Zは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクロ、−CN、−NO、−O−R、−S−R及び−N(R)(R)からなる群から選択される1種以上の置換基からなり、
、R及びRは独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール及びヘテロシクロからなる群から選択される。望ましくは、第二アミン基はパラ位にあり、次式に対応する。
【0028】
【化15】

用語「アルキル」は、望ましくは主鎖中に1〜20個の炭素を有する置換又は非置換、直鎖又は枝分れ飽和炭化水素基を含めて意味する。非置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどがある。置換基として、ハロゲン、ヒドロキシ、又はアリール基もある。
【0029】
用語「ヒドロキシアルキル」は、上記のアルキル基で、1以上のヒドロキシ置換基を有するものを含めて意味する。
【0030】
用語「アルケニル」は、鎖中に1以上の炭素−炭素二重結合を含み、望ましくは直鎖中に2〜10個の炭素を含む置換又は非置換、直鎖又は枝分れ炭化水素基を含めて意味する。かかる非置換アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、イソブテニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルなどがある。置換基としては上記のものを挙げることができる。
【0031】
用語「アルキニル」は、鎖中に1以上の炭素−炭素三重結合を含み、好ましくは直鎖中に2〜10個の炭素を有する置換又は非置換、直鎖及び枝分れ炭化水素基を含めて意味する。かかる非置換基の例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルなどがある。置換基としては上記のものを挙げることができる。
【0032】
用語「シクロアルキル」は、好ましくは1〜3個の環をを含有し環当たり3〜7個の炭素を含有する置換又は非置換、飽和環式炭化水素環系を含めて意味する。かかる非置換基の代表例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル、及びアダマンチルがある。置換基の代表例としては、上記アルキル基の1種以上、又はアルキル置換基として上記した1種以上の基がある。
【0033】
用語「シクロアルケニル」は、シクロアルキルについて上記したように置換でも非置換でもよい炭化水素環系であって、さらに1以上の炭素−炭素二重結合を含有していて部分的に不飽和の環を形成しているものを含めて意味する。これらはまた上記のように置換基を含んでいてもよい。
【0034】
用語「ヘテロシクロ」又は「複素環式」は、1以上の環内に1以上のヘテロ原子(例えば、N、O、及びS)を有する置換又は非置換、完全に飽和又は不飽和、芳香族又は非芳香族環式基、望ましくは各環内に3〜6個の原子を有する単環式又は二環式基を含めて意味する。ヘテロシクロ基はその環系のいずれの炭素又はヘテロ原子を介して結合してもよい。複素環式基の例としては、特に限定されないが、チエニル、フリル、ピロリル、ピリジル、イミダゾリル、ピロリジニル、ピペリジニル、アゼピニル、インドリル、イソインドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、及びベンゾフラザニルがある。これらはまた上記したような置換基を含んでいてもよい。
【0035】
用語「アリール」は、望ましくは炭素環原子のみを含有し6〜12個の環炭素を含有する1又は2個の環を含む置換又は非置換単環式、二環式又は三環式芳香族基を含めて意味する。この用語「アリール」はまた、結合点が芳香族部分にある単環式シクロアルキル又は単環式複素環に縮合したアリール基も指すことができる。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、及びナフチルがある。シクロアルキルに縮合したアリール環としては、インダニル、インデニル、及びテトラヒドロナフチルがある。複素環式基に縮合したアリール基の例としては、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾピラニル、1,4−ベンゾジオキサニルなどがある。置換基としては上記のもの並びにニトロ基を挙げることができる。
【0036】
本発明の水溶性フェニレンジアミン化合物は、次式のフェニレンジアミン化合物と、以下の式の複素環式化合物との反応によって形成することができる。
【0037】
【化16】

式中、R、R及びRは独立にアルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−C(O)R、−C(S)R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択されるが、R、R及びRの少なくともいずれかはHであり、Zは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクロ、−CN、−NO、−O−R、−S−R及び−N(R)(R)からなる群から選択される1種以上の置換基からなり、R、R及びRは独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール及びヘテロシクロからなる群から選択される。
【0038】
【化17】

式中、RはH、アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択される。望ましくは、複素環式化合物はプロピレンオキシド又はブチレンオキシドである。
【0039】
この反応で反応生成物の混合物が生成するが、これはクロマトグラフィーを始めとする当技術分野で公知の様々な手段のいずれかで分離することができる。例えば、1,4−フェニレンジアミンと置換複素環式化合物との反応では、次の反応式に示すように5種類の異なる生成物の混合物が生成し得る。
【0040】
【化18】

同様に、フェニレンジアミン出発物質が水素でない置換を含んでいる場合、置換複素環式化合物との反応の生成物は下記反応式に示される。
【0041】
【化19】

1,4−フェニレンジアミンとプロピレンオキシドとの反応では、N,N′−ジヒドロキシプロピルフェニレンジアミン、N,N−ジヒドロキシプロピルフェニレンジアミン、N−ヒドロキシプロピルフェニレンジアミン、N,N,N′−トリヒドロキシプロピルフェニレンジアミン、及びN,N,N′,N′−テトラヒドロキシプロピルフェニレンジアミンを含む生成物の混合物が生成する。
【0042】
本発明のフェニレンジアミン化合物は酸化防止剤/ラジカル重合防止剤として有用である。換言すれば、これらは、重合を抑制することによって、エチレン性不飽和モノマーを含む炭化水素組成物を安定化するのに有用である。これらは、モノマーが高温、例えば約125℃までの温度にさらされる場合を含めて加工処理及び貯蔵条件下の両方で防止剤として有用である。
【0043】
本発明の水溶性フェニレンジアミン組成物は様々なエチレン性不飽和モノマーに対して有用である。これらには、特に限定されないが、スチレン、置換スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、及びビニルナフタレンのようなビニル芳香族化合物、並びにアクリル酸、アクリル酸アルキル、アクリロニトリル、ブタジエン、ジシクロペンタジエン、シアノアクリレート、イソプレン、及びプロピレンのような他のエチレン性不飽和モノマーが含まれる。
【0044】
本発明の方法において、有用な水溶性フェニレンジアミン組成物は有効な重合抑制のために1以上の「−NH」基を保持する。重合防止剤として本発明の方法で使用する1以上の「−NH」基を有する水溶性フェニレンジアミン組成物の有効な量は、重合の抑制に作用するのに充分な量であり、モノマーを合成、加工処理、及び/又は貯蔵する条件に従って変わる。必要とされる防止剤の量に影響する要因が幾つかある。防止剤の量の増大を必要とする要因はモノマー濃度の増大及び温度の上昇である。
【0045】
一般に、本発明の水溶性フェニレンジアミン組成物の有効な濃度は約0.5〜約2000ppm、より望ましくは約1〜約50ppmの範囲である。本発明の組成物は、早期の重合が起こり得る多くの炭化水素加工処理プロセスで、例えば炭化水素の加熱分解プロセス、予熱、蒸留、水素化、抽出などで使用できる。本発明の水溶性フェニレンジアミン組成物はこれらのプロセス位置の上流で添加してもよい。
【0046】
水溶性フェニレンジアミン組成物は水流、炭化水素流又はモノマー組成物単独に添加してもよいし、或いは最初に溶媒と予備混合した後に添加してもよい。水溶性フェニレンジアミン組成物のプリミックスが望ましい場合、まず最初に水又は有機溶媒のような溶媒と混合することができ、有機溶媒としては特に限定されないがメタノール、エタノール、アセトン、ピリジン、ニトロベンゼン、n−ヘキサデカン、n−ヘキサン、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、グリコール、エステル及びエーテルがある。
【0047】
当技術分野で公知の他の防止剤又は防汚剤を本発明の水溶性フェニレンジアミン化合物と組み合わせてもよい。これらとしては、他のフェニレンジアミン、ヒドロキシルアミン、ニトロキシド、及びヒンダードフェノールを挙げることができる。追加のフェニレンジアミン組成物を含有する組成物が望まれる場合、その追加のフェニレンジアミンは次式に対応し得る。
【0048】
【化20】

式中、R、R及びRは独立にH、C〜C18アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択される。
【0049】
本発明の水溶性フェニレンジアミン組成物は従来のフェニレンジアミン防止剤と比較してそれより広い様々な用途を有する。例えば、アクリロニトリルの加工処理時、水と接触し、その結果その水の区域で汚損や沈着形成が起こる。この状況では、水溶性でないフェニレンジアミン組成物は防止剤として有効ではない。
【0050】
N−(1,4−ジメチルペンチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン及びN−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミンのようなPDAは水と混和性ではない。従って、これらを水に添加すると、これらは分離し、PDA層と水層の2つの明確な層を形成する。しかし、本発明のPDAは水と完全に混和性である。これらを水に添加すると、本発明のPDAは別個の層を形成しない、すなわち、水性相と炭化水素相に分配され、そこでビニルモノマーのラジカル重合を抑制する。
【実施例】
【0051】
例示の目的で挙げる以下の実施例で本発明の特徴と利点をさらに詳細に示すが、これらの実施例はいかなる意味でも本発明を限定するものではない。
【0052】
反応性ビニルモノマーの代表としてアクリロニトリルを選択した。本発明の水溶性フェニレンジアミン(PDA)をアクリロニトリル中で試験した。従来の重合防止剤を用いて比較試験も行った。比較防止剤組成物を表1に示し、一方試験した本発明の防止剤組成物を表2に示す。防止剤の名称の後のかっこ内の数字は組成物中の2種以上の防止剤の重量比を示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

各実験において、不活性雰囲気下ガラス管中でアクリロニトリルを加熱した。各管に単一の防止剤組成物(A〜L)を加えた。第1の実験では、アクリロニトリルを含有する管に2ppmの様々な防止剤を入れ、110℃に加熱した。
【0055】
第2の実験では、35ppmのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、すなわちラジカル重合開始剤も各管に添加して、フリーラジカル濃度が比較的高い条件をシミュレートした。この第2の実験は66℃で行った。
【0056】
各実験で、重合、すなわち目に見えるポリマーの形成の誘導時間の長さにより、反応混合物が混濁し白色のポリアクリロニトリルが沈着し始めたときによって、防止剤の性能を判定した。両方の実験の結果を下記表3に示す。
【0057】
【表3】

表3から分かるように、本発明の組成物J、K及びLは、公知の重合防止剤であるヒドロキノン、N−(1,4−ジメチルペンチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン及びN−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミンを含む比較組成物よりも性能が優れていた。加えて、本発明の組成物Jは水溶性であるという利点を有しており、このため潜在的な用途の幅が増大する。
【0058】
現状で本発明の好ましい実施形態と考えられるものについて説明してきたが、当業者には了解されるように本発明の思想から逸脱することなく変更や修正が可能であり、本発明の真の範囲に入るかかる変更や修正は本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の1種以上の化合物を含む組成物。
【化1】

式中、R、R及びRは独立にH、アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−C(O)R、−C(S)R、−N−(R)(R)、アリール及び次式の基から選択されるが、
【化2】

、R及びRの少なくともいずれかは次式の基であり、
【化3】

はH、アルキル、ヒドロキシアルキル、O、S、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択され、
Zは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクロ、−CN、−NO、−O−R、−S−R及び−N(R)(R)からなる群から選択される1以上の置換基からなり、
、R及びRは独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール及びヘテロシクロからなる群から選択される。
【請求項2】
前記化合物の少なくともいずれかが次式に対応する、請求項1記載の組成物。
【化4】

【請求項3】
当該組成物が水溶性である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
さらに溶媒を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
さらに、水及び有機溶媒からなる群から選択される溶媒を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
さらに、第2の重合防止剤組成物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記第2の重合防止剤組成物が次式のフェニレンジアミンである、請求項6記載の組成物。
【化5】

式中、R、R及びRは独立にH、C〜C18アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択される。
【請求項8】
当該組成物が次式の化合物を含む、請求項1記載の組成物。
【化6】

【請求項9】
当該組成物が以下の化合物の1種以上を含む、請求項1記載の組成物。
【化7】

【請求項10】
当該組成物が以下の化合物の1種以上を含む、請求項1記載の組成物。
【化8】

【請求項11】
以下の成分を含んでなる、重合に抵抗性の水溶性組成物。
(a)エチレン性不飽和モノマー、及び
(b)次式で表される1種以上の水溶性化合物
【化9】

式中、R、R及びRは独立にH、C〜C18アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)、アリール及び次式の基から選択されるが、
【化10】

、R及びRの少なくともいずれかは次式の基であり、
【化11】

はH、アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択され、
Zは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクロ、−CN、−NO、−O−R、−S−R及び−N(R)(R)からなる群から選択される1種以上の置換基からなり、
、R及びRは独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール及びヘテロシクロからなる群から選択される。
【請求項12】
さらに溶媒を含む、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
次式のフェニレンジアミン化合物を以下の式の複素環式化合物と反応させる工程を含んでなる、水溶性フェニレンジアミン組成物の製造方法。
【化12】

(式中、R、R及びRは独立にアルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−C(O)R、−C(S)R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択されるが、R、R及びRの少なくともいずれかはHであり、Zは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクロ、−CN、−NO、−O−R、−S−R及び−N(R)(R)からなる群から選択される1種以上の置換基からなり、R、R及びRは独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール及びヘテロシクロからなる群から選択される。)
【化13】

(式中、RはH、アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択される。)
【請求項14】
1,4−フェニレンジアミンを次式の複素環式化合物と反応させる工程を含んでなる水溶性フェニレンジアミン組成物の製造方法。
【化14】

(式中、RはH、アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択される。)
【請求項15】
前記複素環式化合物がプロピレンオキシド及びブチレンオキシドからなる群から選択されるものからなる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記水溶性フェニレンジアミンが1以上の非置換「−NH」基を保持している、請求項14記載の方法。
【請求項17】
炭化水素の加工処理時の汚損及び沈着形成を低減又は抑制する方法であって、汚損及び/又は前記沈着形成が起こり得る位置又はその上流で有効量の1種以上の次式の水溶性化合物を炭化水素流に投入する工程を含んでなる、方法。
【化15】

式中、R、R及びRは独立にH、C〜C18アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)、アリール及び次式の基から選択されるが、
【化16】

、R及びRの少なくともいずれかは次式の基であり、
【化17】

はH、アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択され、
Zは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクロ、−CN、−NO、−O−R、−S−R及び−N(R)(R)からなる群から選択される1種以上の置換基からなり、
、R及びRは独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール及びヘテロシクロからなる群から選択される。
【請求項18】
さらに、前記投入に先立って、前記水溶性化合物を溶媒と混合する工程を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
次式のフェニレンジアミン化合物と以下の式の複素環式化合物との反応生成物。
【化18】

(式中、R、R及びRは独立にアルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−C(O)R、−C(S)R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択されるが、R、R及びRの少なくともいずれかはHであり、Zは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクロ、−CN、−NO、−O−R、−S−R及び−N(R)(R)からなる群から選択される1種以上の置換基からなり、R、R及びRは独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール及びヘテロシクロからなる群から選択される。)
【化19】

(式中、RはH、アルキル、ヒドロキシアルキル、−O−R、−S−R、−N−(R)(R)及びアリールからなる群から選択される。)
【請求項20】
前記フェニレンジアミン化合物が1,4−フェニレンジアミンである、請求項19記載の反応生成物。
【請求項21】
当該生成物が1以上の非置換「−NH」基を保持している、請求項19記載の生成物。

【公表番号】特表2006−524231(P2006−524231A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507016(P2006−507016)
【出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/007227
【国際公開番号】WO2004/096951
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】